説明

カルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末の処理方法

【課題】カルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末から、カルシウム成分と鉛成分とを高い分離性能を伴って分離することのできる処理方法を提供する。
【解決手段】本発明の処理方法は、(A)処理対象物である微粉末と水を混合して、スラリーを調製する工程と、(B)得られたスラリーに対し、硫酸を加えて、液性をpH4以下に調整し、固体分であるカルシウム含有物を含む酸性スラリーを調製する工程と、(C)工程(B)で得られた酸性スラリーに対し、アルカリ剤を加えて、pHが4を超えるスラリーを得る工程と、(D)工程(C)で得られたスラリーを、500rpm以上の撹拌回転数を有する撹拌機を用いて撹拌して、該スラリー中のカルシウム含有物の表面改質を行う工程と、(E)表面改質処理後のスラリーに対し、捕収剤を加えて浮遊選鉱処理を行い、カルシウム含有物を主成分とする浮鉱と、鉛含有物を含む沈鉱を得る工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメントキルンの排ガスの一部を抽気する塩素バイパス技術で得られる微粉末などのカルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭ごみ等の廃棄物を原料の一部として用いるセメントキルンにおいては、塩素の含有率が高い排ガスが発生する。この排ガスは、塩素バイパス技術によって処理される。具体的には、セメントキルンの排ガスの一部を抽気した後、この抽気した高温の排ガス中の粗粉(塩素含有量が少ない固体分)をサイクロンで捕集し、セメント原料としてセメントキルンに戻す一方、サイクロンを通過した排ガスを冷却して生じる微粉末(塩素含有量が多い固体分)を、バグフィルター等の集塵機で捕集して、塩素成分を除去するものである。捕集した微粉末は、カルシウム成分、鉛成分、塩素成分等を含むものであり、鉛成分、塩素成分等を除去すれば、カルシウム成分を含むセメント原料としてセメントキルンに戻すことができる。
【0003】
一方、塩素成分、カルシウム成分、鉛成分等を含む微粉末に対して、浮遊選鉱を行い、カルシウム成分、鉛成分等を分別して回収する技術が知られている。
例えば、廃棄物を焼却した際に発生する飛灰を処理する方法であって、炭酸ガスを吹送しながら水を用いて飛灰を洗浄する洗浄工程と、該洗浄工程で得られた固形残渣に対して、炭酸カルシウム用浮選剤を用いて浮遊選鉱を行い、フロス(浮鉱)として炭酸カルシウムを回収する第1浮遊選鉱工程と、該第1浮遊選鉱工程の沈降残渣(沈鉱)に硫酸を加えるなどして、金属銅、硫酸鉛等を含む混合物を生成させた後、この混合物を濾過等によって濾滓として回収する浸出工程と、該浸出工程で回収した濾滓に対して、金属用浮選剤を用いて浮遊選鉱を行い、フロス(浮鉱)として金属銅及び硫酸鉛を回収する第2浮遊選鉱工程とを有する飛灰の処理方法が、提案されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開平8−323321号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
塩素バイパス技術で得られる微粉末は、上述のようにカルシウム成分、カリウム成分、鉛成分、塩素成分等を含むものである。このうち、カリウム成分、塩素成分等は、水洗処理後の濾液中の成分として回収することができる。
しかし、セメント原料として利用可能なカルシウム成分と、非鉄精錬原料として利用可能な鉛成分を、例えば、上述の文献に記載された技術を用いて分別して回収しようとすると、工程や薬剤の数が多いため、多大の手間を要し、かつ高コストになる。
また、カルシウム成分、鉛成分、塩素成分等を含有する微粉末から、カルシウム成分と鉛成分とを分別回収するにあたり、カルシウム成分と鉛成分との分離性能をさらに向上させることができれば、好都合である。
そこで、本発明は、カルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末から、カルシウム成分と鉛成分とを分別回収することのできる処理方法であって、工程数及び薬剤の量が少なく、しかも簡易な操作によって、前記カルシウム成分と鉛成分とを高い分離性能を伴って分離することのできる処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、カルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末をスラリー化し、得られたスラリーに対しpHを2段階で調整した後、特定の表面改質処理を行い、その後、浮遊選鉱処理を行い、カルシウム成分を主成分とする浮鉱と鉛成分を含む沈鉱とを回収するようにすれば、本発明の上記目的を達成することができることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[3]を提供するものである。
[1] (A)カルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末と水とを混合して、スラリーを調製するスラリー化工程と、(B)前記スラリーに対し、硫酸を加えて、液性をpH4以下に調整し、固体分であるカルシウム含有物を含む酸性スラリーを調製する第一のpH調整工程と、(C)工程(B)で得られた酸性スラリーに対し、アルカリ剤を加えて、pHが4を超えるスラリーを得る第二のpH調整工程と、(D)工程(C)で得られたスラリーを、500rpm以上の撹拌回転数を有する撹拌機を用いて撹拌して、該スラリー中のカルシウム含有物の表面改質を行う表面改質処理工程と、(E)表面改質処理後のスラリーに対し、捕収剤を加えて浮遊選鉱処理を行い、カルシウム含有物を主成分とする浮鉱と、鉛含有物を含む沈鉱を得る鉛・カルシウム分離工程とを含むことを特徴とするカルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末の処理方法。
[2] 工程(D)の撹拌時間が、1分間以上である前記[1]に記載のカルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末の処理方法。
[3] 工程(C)と工程(D)の間に、(F)前記スラリーに捕収剤の一部を加える捕収剤添加工程、を含み、かつ、工程(E)において捕収剤の残部を加える前記[1]又は[2]に記載のカルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末の処理方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の処理方法によれば、特定の表面改質処理を行っているため、浮鉱中のカルシウム量と沈鉱中のカルシウム量の合計量に占める浮鉱中のカルシウム量の質量割合(分配率)が増大し、処理対象物である微粉末からのカルシウムの回収率を大幅に増大させることができる。回収されたカルシウムは、セメント原料等として用いることができる。
また、本発明の処理方法によれば、沈鉱中の鉛の質量割合が増大し、非鉄精錬原料としての沈鉱の価値を高めることができる。
さらに、本発明の処理方法によれば、工程の数、並びに薬剤の数及び量が少なく、しかも簡易な操作によって、カルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末から、カルシウム成分と鉛成分とを高い分離性能を伴って分別して回収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照しつつ、本発明のカルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末の処理方法を説明する。図1は、本発明のカルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末の処理方法の一例を示すフロー図である。
[工程(A);スラリー化工程]
工程(A)は、カルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末と水とを混合して、スラリーを調製する工程である。
カルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末の一例としては、家庭ごみ等の廃棄物を原料の一部とするセメントキルンで発生する排ガス中に高濃度で含まれる塩素を除去するための塩素バイパス技術において、セメントキルンの排ガスの一部を抽気して得た高温のガスを、サイクロンで処理して、粗粉を除去した後、処理後のガス分を冷却することによって析出する塩素含有率の高い微粉末が挙げられる。なお、この微粉末は、サイクロンの後流側に設けられたバグフィルター等の集塵手段によって捕集される。この微粉末の一例の成分組成(質量基準)は、カルシウム(CaO)18.7%、カリウム(KO)32.7%、ナトリウム(NaO)2.7%、硫黄(SO)10.6%、鉛(PbO)5.5%、ケイ素(SiO)2.6%、塩素(Cl)23.0%である。
本工程において、水1リットル当たりのカルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末の量は、好ましくは5〜200g、より好ましくは20〜160g、特に好ましくは40〜120gである。該量が5g未満では、カルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末の単位質量当たりの水量が大きくなり、処理の効率が低下する。該量が200gを超えると、鉛成分とカルシウム成分の分離性能が低下する。
本工程で用いられる水は、通常、系外から供給される新たな水である。
本工程における混合手段の例としては、撹拌翼を有する液槽が挙げられる。
【0008】
[工程(B);第一のpH調整工程]
工程(B)は、工程(A)の前記スラリーに対し、硫酸を加えて、液性をpH4以下に調整し、固体分であるカルシウム含有物を含む酸性スラリーを調製する工程である。
工程(B)で得られるスラリーのpHは、4以下、好ましくは3.5以下である。該pHの下限値は、特に限定されないが、硫酸の使用量の節減等の観点から、通常、2以上である。該pHが4を超えると、固体分であるカルシウム含有物が十分に生成せず、工程(E)(鉛・カルシウム分離工程)におけるカルシウムの回収率が低下することがある。
なお、本発明においては、工程(A)と工程(B)を同時に行うことができる。この場合、カルシウム成分及び鉛成分を含むスラリーと、水と、硫酸を混合して、pHが4以下でありかつ固体分であるカルシウム含有物を含むスラリーを調製する。
【0009】
[工程(C);第二のpH調整工程]
本工程は、工程(B)で得られた酸性スラリーに対し、アルカリ剤を加えて、pHが4を超えるスラリーを得る工程である。
アルカリ剤は、スラリーのpHを高めるための薬剤であり、その具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物や、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物や、炭酸ナトリウム等が挙げられる。
アルカリ剤の添加後のスラリーのpHの下限値は、工程(E)(鉛・カルシウム分離工程)における鉛成分とカルシウム成分の分離性能の向上等の観点から、4を超えるものであり、好ましくは5以上、より好ましくは5.5以上である。該pHの上限値は、工程(E)(鉛・カルシウム分離工程)における処理効率や、アルカリ剤の使用量の削減等の観点から、好ましくは8以下、より好ましくは7以下である。
【0010】
[工程(D);表面改質処理工程]
本工程は、工程(C)で得られたスラリーを、500rpm以上の撹拌回転数を有する撹拌機を用いて撹拌して、該スラリー中のカルシウム含有物の表面改質を行う工程である。
撹拌機としては、例えば、スラリーを収容するための空洞部内に、1つまたは複数の撹拌翼を配設し、この撹拌翼によってスラリー全体を高速で撹拌することのできるように構成したものが挙げられる。この場合、撹拌翼は、空洞部の空洞全体(空洞の少なくとも50体積%以上)を対象にして回転しうるものであることが好ましい。
本発明では、撹拌機を用いた高速撹拌によって、スラリー中の固体分であるカルシウム含有物の粒子を、撹拌機のスラリー収容手段を構成する壁面や、撹拌翼等に接触させて、剪断力を付与し、カルシウム含有物の粒子の表面改質を行うものである。
撹拌機のより具体的な構成例としては、円筒形状のドラムの内側に、流通路を中心に有する仕切板(ドラムの軸線に対して垂直に延びるドーナツ形の板状体であって、ドラムの内壁に固着されたもの)を複数設けて、中心部で連通する複数の撹拌室を形成すると共に、撹拌手段として、該撹拌室内で回転してドラム内のスラリーを高速撹拌するための撹拌翼を、撹拌室毎に有し、かつこれらの複数の撹拌翼を回転させるための回転軸を前記の流通路の中央に有するものを配設してなる装置が挙げられる。この場合、撹拌翼は、ドラムの軸線方向に延びる板状部と、ドラムの軸線に対して垂直の方向に延びる板状部の両方を備えていることが望ましい。また、前記の仕切板には、ドラムの軸線方向に突出して延びる板状の固定翼が設けられていることが望ましい。
このような撹拌機としては、M−COL(三井造船社製)等が挙げられる。
撹拌機の撹拌回転数(具体的には、撹拌翼の回転数)は、500rpm以上、好ましくは600rpm以上、より好ましくは700rpm以上である。
撹拌回転数の上限値は、特に限定されないが、撹拌機の性能等の観点から、好ましくは1,500rpm、より好ましくは1,200rpmである。
撹拌時間は、好ましくは1分間以上、より好ましくは2分間以上、さらに好ましくは3分間以上、特に好ましくは4分間以上である。
撹拌時間の上限は、特に限定されないが、長すぎても本発明の効果(分離性能の向上)が頭打ちになることから、通常、10分間、好ましくは8分間である。
撹拌機の運転時におけるスラリーの単位体積当たりの撹拌エネルギーは、好ましくは10kW/m以上、より好ましくは25〜100kW/mである。
【0011】
[工程(E);鉛・カルシウム分離工程(浮遊選鉱処理工程)]
本工程は、表面改質処理後のスラリーに対し、捕収剤を加えて浮遊選鉱処理を行い、カルシウム含有物を主成分とする浮鉱と、鉛含有物を含む沈鉱を得る工程である。
浮遊選鉱とは、疎水性の表面を有する粒子、及び親水性の表面を有する粒子を含む水中にガスを供給して、このガスからなる泡の表面に、疎水性の表面を有する粒子を付着させ、該粒子が付着している泡を、水中で浮力により浮上させることによって、沈鉱である親水性の表面を有する粒子と、浮鉱である疎水性の表面を有する粒子とに分離するものである。なお、通常、粒子の表面の疎水性または親水性を人為的に調節して、分離性能を高めるために、捕収剤と呼ばれる種々の化学薬剤が用いられる。従来知られている個々の捕収剤は、粒子の種類によってその効果(適否)が異なることが知られている。
【0012】
本発明で好適に用いられる捕収剤の例としては、n−ドデシル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩や、オレイン酸ナトリウム等の不飽和脂肪族カルボン酸塩や、ドデシルアミン酢酸塩等のアミン塩類等が挙げられる。
捕収剤の添加量は、スラリー1リットルに対して、好ましくは3〜200mg、より好ましくは5〜100mg、特に好ましくは10〜50mgである。該量が3mg未満では、カルシウム含有物を浮鉱として十分に浮上させることが困難となる。該量が200mgを超えると、カルシウム含有物を浮鉱として浮上させる効果が頭打ちとなる一方、捕収剤の薬剤コストが増大する。
なお、捕収剤は、その一部を、表面改質処理を行う前(工程(D)の前)に添加し、残部を、本工程(E)において添加することができる。この場合、工程(D)の前に添加される捕収剤の量は、添加される捕収剤の全量(すなわち、工程(D)の前に添加される捕収剤と、本工程(E)において添加される捕収剤との合計量)を100質量%として、好ましくは60質量%以下、より好ましくは20〜50質量%である。
【0013】
本発明においては、浮遊選鉱の気泡を安定化し、良い泡立ちを与えるために、起泡剤を添加してもよい。起泡剤の例としては、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールメチルエーテル、エチレングリコール等が挙げられる。起泡剤の添加量は、スラリー1リットルに対して、通常、0.1〜3g、好ましくは0.5〜2gである。
また、本発明において、捕収剤と共に抑制剤を用いることができる。
抑制剤は、親水性の表面を有する粒子(硫酸鉛)の親水性を高めて、浮遊を抑制するためのものである。抑制剤を用いることによって、本工程における鉛成分とカルシウム成分の分離性能を高めることができる。
抑制剤の例としては、タンニン、ケイ酸ソーダ、リグニン、デンプン等が挙げられる。
抑制剤の添加量は、スラリー1リットルに対して、好ましくは10〜150mg、より好ましくは20〜130mg、特に好ましくは30〜120mgである。該量が60mg未満では、抑制剤の添加効果が十分に得られないことがある。該量が150mgを超えると、抑制剤の薬剤コストが増大するなどの欠点がある。
【0014】
浮遊選鉱の手段としては、ファーレンワルド型浮選機(FW型)、MS型浮選機、フェジャーグレン型浮選機、アジテヤ型浮選機、ワーマン型浮選機等の浮選機が挙げられる。
カルシウム含有物を主成分とする浮鉱は、スラリーの液中の上部領域(特に液面付近)に存在する固体分を回収することによって、スラリーの他の成分(液分、沈鉱)から分離することができる。
本発明の処理方法により得られる浮鉱には、カルシウムが高い分配率で含まれる。浮鉱中のカルシウムの分配率は、好ましくは85質量%以上、より好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上である。
浮鉱中のカルシウム(CaO換算)の質量割合は、例えば、20〜30質量%である。
浮鉱は、塩素及び鉛の含有率が小さく、かつカルシウム含有物を主成分として含むので、セメント原料等として用いることができる。
鉛を含む沈鉱は、スラリーの液中の下部領域(特に底面上)に存在する固体分を回収することによって、スラリーの他の成分(液分、浮鉱)から分離することができる。
沈鉱は、鉛を含むので、山元還元による非鉄精錬原料として用いることができる。
沈鉱中の鉛(PbO換算)の質量割合は、例えば、18〜30質量%である。
浮鉱中の鉛の分配率は、例えば、45〜70質量%である。
【実施例】
【0015】
以下、本発明を実施例によって説明する。なお、以下の文中の「%」は、特に断らない限り、質量基準である。
[実施例1]
カルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末として、下記の表1に示す成分組成を有するものを用意した。
撹拌翼付きの液槽内に、水1.3リットルと、水1リットル当たり55gの量のカルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末(塩素バイパス技術で得たもの)を投入して撹拌し、スラリーを得た後、このスラリーに対し、撹拌しながら硫酸を添加して、スラリーのpHを3に調整した。
次いで、このスラリーに水酸化ナトリウムを添加して、スラリーのpHを6に調整した。
その後、得られたスラリーを表面改質処理装置「M−COL」(三井造船社製)に投入し、撹拌回転数880rpmで5分間処理を行った。
処理後のスラリーを、MS型浮選機を用いて浮遊選鉱し、浮鉱及び沈鉱を得た。この際、捕収剤として、スラリー1リットル当たり15.9mgの量のn−ドデシル硫酸ナトリウム(具体的には、スラリー1リットル当たり15.9gの量の0.1%n−ドデシル硫酸ナトリウム)を用いた。
浮鉱及び沈鉱の質量比、及びこれらの成分組成を、表2に示す。
【0016】
[実施例2]
表面改質処理における回転数、捕収剤の添加量を表2に示すように変えたこと以外は、実施例1と同様にして行った。
[実施例3]
捕収剤の添加量及び添加方法を変えたこと以外は、実施例1と同様にして行なった。具体的には、捕収剤の添加は、その一部(スラリー1リットル当たり10.2mgの量のn−ドデシル硫酸ナトリウム)を表面改質処理の前に添加し、残部(スラリー1リットル当たり14.7mgの量のn−ドデシル硫酸ナトリウム)を、浮遊選鉱処理の際に添加することにより行った。
[比較例1]
M−COLによる表面改質処理を行わなかったことと、捕収剤の添加量を表2に示すように変えたこと以外は、実施例1と同様にして行った。
以上の結果を表2に示す。
なお、実施例2、3、比較例1のいずれにおいても、捕収剤の添加は、0.1%n−ドデシル硫酸ナトリウムを用いて行った。表2中の捕収剤の添加量は、n−ドデシル硫酸ナトリウムとしての添加量である。
【0017】
【表1】

【0018】
【表2】

【0019】
表1から、本発明の処理方法によると、カルシウム成分及び鉛成分を含む微粉末から、浮鉱としてカルシウムを高い回収率で回収しうること、及び、カルシウム成分と鉛成分とを高い分離性能を伴って分離しうることがわかる(実施例1〜3)。一方、表面改質処理を含まない比較例1の方法によると、浮鉱中のカルシウムの分配率が低く、カルシウム成分と鉛成分との分離性能に劣ることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のカルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末の処理方法の一例を示すフロー図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末と水とを混合して、スラリーを調製するスラリー化工程と、
(B)前記スラリーに対し、硫酸を加えて、液性をpH4以下に調整し、固体分であるカルシウム含有物を含む酸性スラリーを調製する第一のpH調整工程と、
(C)工程(B)で得られた酸性スラリーに対し、アルカリ剤を加えて、pHが4を超えるスラリーを得る第二のpH調整工程と、
(D)工程(C)で得られたスラリーを、500rpm以上の撹拌回転数を有する撹拌機を用いて撹拌して、該スラリー中のカルシウム含有物の表面改質を行う表面改質処理工程と、
(E)表面改質処理後のスラリーに対し、捕収剤を加えて浮遊選鉱処理を行い、カルシウム含有物を主成分とする浮鉱と、鉛含有物を含む沈鉱を得る鉛・カルシウム分離工程と、
を含むことを特徴とするカルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末の処理方法。
【請求項2】
工程(D)の撹拌時間が、1分間以上である請求項1に記載のカルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末の処理方法。
【請求項3】
工程(C)と工程(D)の間に、(F)前記スラリーに捕収剤の一部を加える捕収剤添加工程、を含み、かつ、工程(E)において捕収剤の残部を加える請求項1又は2に記載のカルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末の処理方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−235484(P2009−235484A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−82581(P2008−82581)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】