説明

カンジダ抗原に対する抗体

本発明によれば、ドメイン抗体が提供される。特に、病原性形質のカンジダ属の種を認識し、かつカンジダ症に対する受動的防御を付与するドメイン抗体(dAb)が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドメイン抗体に関する。特に、カンジダ属の種(Candida spp.)の病原性形質を認識しかつカンジダ症に対する受動的防御を付与するドメイン抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
受動的なワクチン接種、抗体または抗原反応性抗体フラグメントの治療的もしくは予防的な使用は、感染因子の新興および再興、抗微生物剤耐性の脅威の増大、ならびに新薬および予防ワクチンの不足の時代の中で、感染性疾患を抑制するためのきわめて魅力的な手段である。受動的なワクチン接種は、衰弱した宿主において免疫機能不全に依存して疾患を引き起こす日和見感染症因子を抑制するのにとくに魅力的である。免疫適格性の不在または低下は、宿主に対して抗微生物剤との必要な協同作用を無効にし、防御ワクチンの生成をとくに困難なものにする。カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)は、受動的なワクチン接種がとくに有望であると思われるそのような日和見因子の1つである。それは、免疫無防備状態の宿主、特定的には、AIDS被験者および骨髄移植を受けている好中球減少症、血液疾患の患者の場合の主要な粘膜性および全身性の病原体である。それはまた、腟カンジダ症および他の粘膜皮膚病変の場合の重要な病原体である。実際には、妊娠可能年齢の全正常女性の3/4は、急性腟カンジダ症を少なくとも1回経験し、さらに重要なことに、その約5%は、その後、慢性的再発を患っていると推定されている。慢性腟カンジダ症は、抗真菌剤ではほとんど治癒不能であるため、関心が高まっており、カンジダ(Candida)が反復治療下で抗真菌剤不応性になる可能性があるといういくつかの臨床的知見が存在する。
【0003】
C.アルビカンス(C.albicans)は、本質的に、いくつかの既知の病原性形質を有する細胞外病原体である。感染の実験動物モデルを用いた研究から、適正な特異性を有する抗体およびそのアイソタイプを用いて、実際に、重度の粘膜性実験感染も全身性実験感染も同様に防御しうることが実証されている。研究では、真菌の分泌性アスパラギン酸プロテアーゼの一メンバー(SAP2)および推定マンノプロテインアドヘシン(MP65)の病原特性がとくに強調され、それらに対する特定のポリクロナール抗体、モノクローナル抗体、およびペプチド断片による効果的な免疫防御の基礎が築かれた。
【0004】
ヒトの粘膜性カンジダ症の免疫療法の観点からみると、ヒト化抗体またはヒト抗体の生成は、最近では組換えDNA技術を用いることによりさらに対処可能になっている重要な問題である。特定的には、ファージ発現ライブラリーを用いることにより、所定の特異性を有する比較的大量のかつ容易に標準化可能なヒト一本鎖可変フラグメント(scFv)または単一ドメイン抗体(dAb)の選択および生成が可能である。
【0005】
治療用抗カンジダscFv抗体は、すでに生成が行われている(Magliani, W., et al., 1995 Nat. Biotechnol. 15: 155-158)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、当技術分野では、依然として、カンジダ属の種の感染の治療に有効な他の選択肢の抗カンジダ抗体が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の概要
本発明者らは、カンジダ属の種の感染の治療、特定的には腟カンジダ症の治療に有効であることが明らかにされたいくつかの単一ドメイン抗体(dAb)の生成を行った。これらの単一ドメイン抗体は、カンジダ属の種の特定の病原性因子に結合しかつ/またはその機能的活性を阻害することが明らかにされた。
【0008】
したがって、第1の態様において、本発明は、カンジダ属の種に由来する分泌性アスパラギン酸プロテアーゼ(Sap)に結合しかつ/またはその機能的活性を阻害しうる単一ドメイン抗体(dAb)を提供する。
【0009】
本明細書に記載の本発明によれば、本明細書に提供される配列表中にADR4-Xで示されるアミノ酸配列は、Sap2結合性dAbのアミノ酸配列を表す。
【0010】
1種以上の本発明に係るdAb(dAb)による結合に適した分泌性アスパラギン酸プロテアーゼとしては、Sap1、Sap2、Sap3、Sap4、Sap5およびSap6、Sap7、Sap8、Sap9およびSap10分泌性アスパラギン酸プロテアーゼが挙げられる。本発明の上記の態様の好ましい実施形態では、dAbは、Sap2結合性dAb(Sap2結合性dAb)である。
【0011】
好ましくは、それは、本明細書に提供される配列表に示され、かつ配列番号14で示されるADR4-2から配列番号35で示されるADR4-23までにより示される1つ以上の配列を含み、好ましくは該1つ以上の配列からなる、Sap2結合性dAbである。
【0012】
本発明の上記の態様の最も好ましい実施形態では、dAbは、本明細書に提供される配列表に示され、かつ本明細書中で配列番号18により表されるADR4-6および配列番号25により表されるADR4-13で示される1つ以上の配列を含み、好ましくは該1つ以上の配列からなる、Sap2結合性dAbである。
【0013】
有利には、本発明に係るdAbは、1種以上の本明細書中に規定されるSAPに5×10-1〜1×10-7 s-1のkoff速度定数で結合する。
【0014】
より有利には、本発明に係るdAbは、少なくとも100μM〜1pMの解離定数(Kd)でSap2に結合する。
【0015】
1種以上の本発明に係るdAbを用いて任意の種のカンジダ感染を治療することが可能である。本発明に係るdAbを用いて治療するのに好適なカンジダ属の種の感染としては、次の種:カンジダ・シフェリ(Candida ciferrii)、カンジダ・ファマタ(Candida famata)、カンジダ・ランビカ(Candida lambica)、カンジダ・リポリチカ(Candida lipolytica)、カンジダ・ノルベゲンシス(Candida norvegensis)、カンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)、カンジダ・ビスワナチ(Candida viswanathii)、カンジダ・ゼイラノイデス(Candida zeylanoides)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、カンジダ・グラブラータ(Candida glabrata)、カンジダ・パラプシロシス(Candida parapsilosis)、カンジダ・クルセイ(Candida krusei)、カンジダ・ルシタニエ(Candida lusitaniae)、カンジダ・ケフィア(Candida kefyr)、カンジダ・ギリエルモンディ(Candida guilliermondii)、およびカンジダ・デュブリニエンシス(Candida dubliniensis)からなる群に含まれる任意の種の感染が挙げられる。
【0016】
本発明に従って治療するのに好ましいカンジダ属の種としては、次の種:カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、カンジダ・グラブラータ(Candida glabrata)、カンジダ・パラプシロシス(Candida parapsilosis)、カンジダ・クルセイ(Candida krusei)、およびカンジダ・ルシタニエ(Candida lusitaniae)からなる群に含まれる任意の種が挙げられる。
【0017】
本発明の上記の態様の最も好ましい実施形態では、カンジダ属の種は、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)である。
【0018】
さらなる態様において、本発明は、カンジダ属の種に由来する分泌性アスパラギン酸プロテアーゼ(Sap)に結合しかつ/またはその機能的活性を阻害しうる、しかも1種以上の本明細書に提供されるSap dAbに対して80%の同一性を呈する、単一ドメイン抗体(dAb)を提供する。
【0019】
本発明の上記の態様の好ましい実施形態では、dAbは、1種以上の本明細書に提供されるSap2 dAbに対して、82、84、86、88、90、92、94、96、98、または99%の同一性を呈する。
【0020】
本発明の上記の態様の好ましい実施形態では、本発明に係るdAbは、1種以上の本明細書中に規定されるSapタンパク質に5×10-1〜1×10-7 s-1のkoff速度定数で結合しうる。
【0021】
より有利には、本発明の上記の態様に係るdAbは、少なくとも100μM〜1pMの解離定数(Kd)および/または5×10-1〜1×10-7 s-1のkoff速度定数でSap2に結合しうる。
【0022】
さらなる態様において、本発明は、カンジダ属の種に由来するマンノプロテインアドヘシン(MP)に結合しかつ/またはその機能的活性を阻害しうる単一ドメイン抗体(dAb)を提供する。
【0023】
本発明によれば、ADR3-Xで示される配列は、マンノプロテインアドヘシン(MP)結合性dAb(MP dAb)の配列を表す。
【0024】
本発明の上記の態様によれば、有利には、dAbは、本明細書に提供される配列表に示され、かつADR3-1、ADR3-2、ADR3-3、ADR3-4、ADR3-5、ADR3-6、ADR3-7、ADR3-8、ADR3-9で示され、かつそれぞれ配列番号5〜配列番号13として表される1つ以上の配列を含み、好ましくは該1つ以上の配列からなる、MP65結合性dAbである。
【0025】
本発明の上記の態様によれば、有利には、dAbは、本明細書に提供される配列表に示され、かつADR3-1、ADR3-2、およびADR3-6で示され、かつそれぞれ配列番号5、6、および10で示される1つ以上の配列を含み、好ましくは該1つ以上の配列からなる、MP65結合性dAbである。
【0026】
有利には、本発明に係るdAbは、1種以上の本明細書中に規定されるMPに5×10-1〜1×10-7 s-1のkoff速度定数で結合しうる。
【0027】
より有利には、本発明に係るdAbは、少なくとも100μM〜1pMの解離定数(Kd)でMP65に結合しうる。
【0028】
1種以上の本発明に係るdAbを用いて任意の種のカンジダ感染を治療することが可能である。本発明に従って治療するのに好ましいカンジダ属の種としては、次の種:カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、カンジダ・グラブラータ(Candida glabrata)、カンジダ・パラプシロシス(Candida parapsilosis)、カンジダ・クルセイ(Candida krusei)、およびカンジダ・ルシタニエ(Candida lusitaniae)からなる群に含まれる任意の種が挙げられる。本発明の上記の態様の最も好ましい実施形態では、カンジダ属の種は、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)である。
【0029】
さらなる態様において、本発明は、カンジダ属の種に由来するマンノプロテインアドヘシン(MP)に結合しかつ/またはその機能的活性を阻害しうる、しかもADR3-1、ADR3-2、およびADR3-6として同定されかつそれぞれ配列番号5、6、および10で示されるdAbに対して80%の同一性を呈する、単一ドメイン抗体(dAb)を提供する。
【0030】
本発明の上記の態様の好ましい実施形態では、dAbは、ADR3-1、ADR3-2、およびADR3-6として同定されかつそれぞれ配列番号5、6、および10で示されるdAbのうちの1つ以上に対して、82、84、86、88、90、92、94、96、98、または99%の同一性を呈する。
【0031】
このほかのさらなる態様において、本発明は、任意の1種以上の本発明に係るdAbと、製薬上許容される担体、希釈剤、および/または賦形剤とを含む医薬組成物を提供する。
【0032】
本発明の上記の態様の好ましい実施形態では、医薬組成物は、MP65結合性dAbとSap2結合性dAbとを含み、好ましくはそれらからなる。
【0033】
本発明の上記の態様の他の実施形態では、医薬組成物は、MP65およびSap2の機能的活性を阻害する1種以上のdAbを含み、好ましくは該1種以上のdAbからなる。
【0034】
このほかのさらなる態様において、本発明は、治療を必要とする患者に1種以上の本発明に係るdAbまたは組成物を投与することにより患者においてカンジダ属の種の感染を予防および/または治療する方法を提供する。
【0035】
このほかのさらなる態様において、本発明は、カンジダ属の種の感染の予防および/または治療に使用するための本発明に係るdAbを提供する。
【0036】
さらなる態様において、本発明は、治療を必要とする患者にSAP2 dAbおよび/またはMP65 dAbを投与することにより患者においてアゾール耐性のカンジダ属の種の感染を予防および/または治療する方法を提供する。ただし、該カンジダは、次の薬剤:イトラコナゾール、フルコナゾール、およびボリコナゾールからなる群に含まれるいずれか1つ以上の薬剤に対して耐性である。
【0037】
さらにこのほかのさらなる態様において、本発明は、治療を必要とする患者にSap2 dAbおよび/またはMP65 dAbを投与することにより患者においてイミダゾール耐性のカンジダ属の種の感染を治療する方法を提供する。ただし、該カンジダ属の種の感染は、次の薬剤:クロトリマゾール、エコナゾール、フェンチコナゾール、スルコナゾール、およびチオコナゾールからなる群に含まれるいずれか1つ以上の薬剤に対して耐性である。
【0038】
本発明の上記の態様によれば、Sap2「dAb」またはMP65「dAb」は、本明細書に記載のSap2および/もしくはMP65に結合しかつ/またはその機能的活性を阻害しうる本明細書に記載の単一ドメイン抗体を意味する。
【0039】
本明細書に記載の本発明に係る方法および医薬によれば、1種以上の本明細書に記載のdAb/dAbを用いて治療するのに好ましいカンジダ属の種の感染としては、次の種:カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、カンジダ・グラブラータ(Candida glabrata)、カンジダ・パラプシロシス(Candida parapsilosis)、カンジダ・クルセイ(Candida krusei)、およびカンジダ・ルシタニエ(Candida lusitaniae)からなる群に含まれる任意のカンジダ属の種の感染が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
当業者であればわかるであろうが、カンジダ属の種の感染は、全身性、膣性、真皮性、口腔性、粘膜性、気管支性、および肺性でありうる。さらに、酵母感染は、爪真菌症(爪感染)、口腔咽頭カンジダ症、食道カンジダ症、または外陰膣炎として現れうる。
【0041】
本発明の好ましい実施形態では、1種以上の本発明に係るdAb/dAbは、カンジダ属の種による膣性もしくは全身性の感染を予防および/または治療するために使用される。
【0042】
本明細書に記載の本発明に係る方法および医薬を用いれば、本発明に係るdAb/dAbを投与することにより患者においてカンジダ属の種による感染の効果的な治療が行われる結果として、真菌感染のクリアランスが促進され、好ましくは、dAbによる治療の開始後21日目〜28日目に感染の治癒/消散が達成される。
【0043】
本発明者らは、本発明に係る方法、dAb、および組成物を用いてカンジダ属の種の治療を行っても、感染部位または罹患領域においてカンジダ属の種の完全(100%)根絶が達成されない可能性があると考えている。さらに、本発明者らは、罹患領域に残存するいくらかのカンジダ属の種が被験体に有益である可能性があると考えている。本発明の上記の態様の好ましい実施形態では、1種以上の本発明に係るdAbまたはその組成物を用いて治療することにより、カンジダ属の種のレベルは、共生レベル(すなわち、通常の健常な個体に見いだされるレベル)に低減される。
【0044】
本発明者らは、本発明に係るdAbおよび組成物は、免疫無防備状態の患者の予防および/または治療にとくに有用であると考えている。
【0045】
したがって、さらなる態様において、本発明は、免疫無防備状態の個体が呈する1種以上の状態を予防および/または治療するための医薬の調製における本発明に係るdAbおよび組成物の使用を提供する。
【0046】
とくにカンジダ症の危険にさらされている患者としては、AIDS患者またはHIV感染患者をはじめとする免疫無防備状態の患者が挙げられる。他の危険因子としては、顆粒球減少症、骨髄移植、化学療法のタイプ/継続期間、移植片対宿主病、化学療法関連粘膜炎の程度、カンジダによるコロニー形成、広域スペクトル抗生物質の使用、血液透析および/または高窒素血症、中心血管カテーテル、ヘロイン常用者、疾病の重症度、高栄養、再発性もしくは持続性の胃腸穿孔、先行手術、固形臓器移植、ならびに新生児が挙げられる。
【0047】
1種以上の本発明に係るdAbを用いて以上に列挙された患者群のうちのいずれか1つ以上においてカンジダ属の種の感染を治療することは、本発明に包含されるものとみなされる。
【0048】
本発明の上記の態様の好ましい実施形態では、免疫無防備状態の患者は、AIDS、HIV感染、および酵母感染からなる群に含まれる1つ以上の病状を患っている。
【0049】
本発明に係るdAbを投与する方法については、発明の詳細な説明に記載されている。好ましくは、dAbは、局所投与および/または全身投与のいずれかにより投与される。本発明の上記の態様の好ましい実施形態では、カンジダ症を患っている患者を治療するためのdAbを含む医薬組成物の投与としては、ある時間にわたる持続注入または単回用量投与もしくはボーラス投与が挙げられる。さらに、単回用量投与もしくはボーラス投与の後、第2のボーラス用量を投与しうるかまたは持続注入を施しうると考えられる。
【0050】
本発明の好ましい実施形態では、dAbは、ヒト可変ドメインであるか、またはヒトフレームワーク領域(FW)と、1種以上の本明細書に記載のSapタンパク質および/またはMPタンパク質に特異的に結合する1種以上の異種CDRとを含む。CDRおよびフレームワーク領域は、免疫学的関心の対象となるタンパク質の配列のカバット(Kabat)データベースに定義される免疫グロブリン可変ドメインの領域である。
【0051】
好ましいヒトフレームワーク領域は、生殖系列遺伝子セグメントDP47およびDPK9によりコードされる領域である。有利には、VHドメインまたはVLドメインのFW1、FW2、およびFW3は、DP47またはDPK9に由来するFW1、FW2、またはFW3の配列を有する。ヒトフレームワークは、場合により、本発明に係るdAbに使用されるヒトフレームワーク中に突然変異(たとえば、合計で約5個までのアミノ酸変化または約10個までのアミノ酸変化)を含有しうる。
【0052】
さらなる態様において、本発明は、患者においてカンジダ属の種による全身性感染を予防および/または治療する方法を提供する。この方法は、そのような治療を必要とする患者に、
(i) Sapタンパク質および/またはMPタンパク質に結合する抗体
(ii) Sapタンパク質および/またはMPタンパク質に結合する抗体フラグメント
(iii) Sapタンパク質および/またはMPタンパク質に結合するdAb
のうちの1つ以上を投与するステップを含む。
【0053】
最後の態様において、本発明は、患者においてカンジダ属の種による全身性感染を予防および/または治療する方法を提供する。この方法は、そのような治療を必要とする患者に、
(i) Sapタンパク質および/またはMPタンパク質の機能的活性を阻害する抗体
(ii) Sapタンパク質および/またはMPタンパク質の機能的活性を阻害する抗体フラグメント
(iii) Sapタンパク質および/またはMPタンパク質の機能的活性を阻害するdAb
のうちの1つ以上を投与するステップを含む。
【0054】
本発明の上記の態様の好ましい実施形態では、好ましくは、抗体またはそのフラグメントは、単一特異性である。有利には、SapはSap2であり、かつMPタンパク質はMP65である。
【0055】
本発明のさらなる態様において、dAbは、多量体形で使用可能である。ただし、dAbは、直接的にもしくは好適なリンカーにより(たとえば、dAb間のアミド結合のような化学結合の形成により直接的に)コンジュゲートもしくは融合されて一体化されるか、またはリンカーとコンジュゲートもしくは融合される。好適なリンカーは、当技術分野で公知であり、アミノ酸の単鎖、たとえば、Ala-Ala-Ala、Gly4Ser、もしくはそれらの多重体(たとえば、(Gly4Ser)5)でありうるか、またはN-ヒドロキシルスクシンイミド結合やマレイミド結合などのように化学に基づきうる。
【0056】
さらに、多量体dAbは、同種、すなわち1種のdAb種であってもよいし、または異種、すなわち2種以上のdAb種、いわゆるヘテロ多量体であってもよい。
【0057】
好ましい実施形態では、本発明に係るdAbは、二量体の形態に構成可能であり、この二量体は、同種、すなわちSAP dAbのみでありうるか、または異種、すなわちSAP dAbとMP dAbでありうる。
【0058】
本発明のさらなる態様は、医療器具の真菌感染または真菌コロニー形成の予防または処置に関する。たとえば、疾患の治療におけるカテーテルまたはカニューレ(たとえば、血管カニューレ、中心静脈カテーテル、尿道カテーテル、腹膜透析カテーテル、および透析カニューレ)の使用は、真菌の感染、とくにカンジダ属の種などの酵母の感染の危険にさらされている。カンジダ属の種は、医療器具上にバイオフィルムを生成する可能性があり、このバイオフィルムは、多くの場合、抗真菌剤に対してきわめて耐性があるので、多くの場合、器具からの除去が必要になる。本発明に係るドメイン抗体は、プラスチックの真菌感染を排除または処置することが明らかにされた。
【0059】
本発明のさらなる態様において、本発明に係るdAbは、SapまたはMPに結合し、このdAbは、それぞれ配列番号14〜配列番号35で示される、ADR4-2、ADR4-3、ADR4-4、ADR4-5、ADR4-6、ADR4-7、ADR4-8、ADR4-9、ADR4-10、ADR4-11、ADR4-12、ADR4-13、ADR4-14、ADR4-15、ADR4-16、ADR4-17、ADR4-18、ADR4-19、ADR4-21、ADR4-22、およびADR4-23、もしくはそれぞれ配列番号5〜配列番号13で示される、ADR3-1、ADR3-2、ADR3-3、ADR3-4、ADR3-5、ADR3-6、ADR3-7、ADR3-8、およびADR3-9のアミノ酸配列と同一であるか、またはそれぞれ配列番号14〜配列番号35で示される、ADR4-2、ADR4-3、ADR4-4、ADR4-5、ADR4-6、ADR4-7、ADR4-8、ADR4-9、ADR4-10、ADR4-11、ADR4-12、ADR4-13、ADR4-14、ADR4-15、ADR4-16、ADR4-17、ADR4-18、ADR4-19、ADR4-21、ADR4-22、およびADR4-23、もしくはそれぞれ配列番号5〜配列番号13で示される、ADR3-1、ADR3-2、ADR3-3、ADR3-4、ADR3-5、ADR3-6、ADR3-7、ADR3-8、およびADR3-9のアミノ酸配列と25ヵ所以下のアミノ酸位置で異なるアミノ酸配列を有し、かつそれぞれ配列番号14〜配列番号35で示される、ADR4-2、ADR4-3、ADR4-4、ADR4-5、ADR4-6、ADR4-7、ADR4-8、ADR4-9、ADR4-10、ADR4-11、ADR4-12、ADR4-13、ADR4-14、ADR4-15、ADR4-16、ADR4-17、ADR4-18、ADR4-19、ADR4-21、ADR4-22、およびADR4-23、もしくはそれぞれ配列番号5〜配列番号13で示される、ADR3-1、ADR3-2、ADR3-3、ADR3-4、ADR3-5、ADR3-6、ADR3-7、ADR3-8、およびADR3-9のCDR1配列に対して少なくとも50%の同一性を有するCDR1配列を有する。
【0060】
本発明のさらなる態様において、本発明に係るdAbは、SapまたはMPに結合し、このdAbは、それぞれ配列番号14〜配列番号35で示される、ADR4-2、ADR4-3、ADR4-4、ADR4-5、ADR4-6、ADR4-7、ADR4-8、ADR4-9、ADR4-10、ADR4-11、ADR4-12、ADR4-13、ADR4-14、ADR4-15、ADR4-16、ADR4-17、ADR4-18、ADR4-19、ADR4-21、ADR4-22、およびADR4-23、もしくはそれぞれ配列番号5〜配列番号13で示される、ADR3-1、ADR3-2、ADR3-3、ADR3-4、ADR3-5、ADR3-6、ADR3-7、ADR3-8、およびADR3-9のアミノ酸配列と同一であるか、またはそれぞれ配列番号14〜配列番号35で示される、ADR4-2、ADR4-3、ADR4-4、ADR4-5、ADR4-6、ADR4-7、ADR4-8、ADR4-9、ADR4-10、ADR4-11、ADR4-12、ADR4-13、ADR4-14、ADR4-15、ADR4-16、ADR4-17、ADR4-18、ADR4-19、ADR4-21、ADR4-22、およびADR4-23、もしくはそれぞれ配列番号5〜配列番号13で示される、ADR3-1、ADR3-2、ADR3-3、ADR3-4、ADR3-5、ADR3-6、ADR3-7、ADR3-8、およびADR3-9のアミノ酸配列と25ヵ所以下のアミノ酸位置で異なるアミノ酸配列を有し、かつそれぞれ配列番号14〜配列番号35で示される、ADR4-2、ADR4-3、ADR4-4、ADR4-5、ADR4-6、ADR4-7、ADR4-8、ADR4-9、ADR4-10、ADR4-11、ADR4-12、ADR4-13、ADR4-14、ADR4-15、ADR4-16、ADR4-17、ADR4-18、ADR4-19、ADR4-21、ADR4-22、およびADR4-23、もしくはそれぞれ配列番号5〜配列番号13で示される、ADR3-1、ADR3-2、ADR3-3、ADR3-4、ADR3-5、ADR3-6、ADR3-7、ADR3-8、およびADR3-9のCDR2配列に対して少なくとも50%の同一性を有するCDR2配列を有する。
【0061】
本発明のさらなる態様において、本発明に係るdAbは、SapまたはMPに結合し、このdAbは、それぞれ配列番号14〜配列番号35で示される、ADR4-2、ADR4-3、ADR4-4、ADR4-5、ADR4-6、ADR4-7、ADR4-8、ADR4-9、ADR4-10、ADR4-11、ADR4-12、ADR4-13、ADR4-14、ADR4-15、ADR4-16、ADR4-17、ADR4-18、ADR4-19、ADR4-21、ADR4-22、およびADR4-23、もしくはそれぞれ配列番号5〜配列番号13で示される、ADR3-1、ADR3-2、ADR3-3、ADR3-4、ADR3-5、ADR3-6、ADR3-7、ADR3-8、およびADR3-9のアミノ酸配列と同一であるか、またはそれぞれ配列番号14〜配列番号35で示される、ADR4-2、ADR4-3、ADR4-4、ADR4-5、ADR4-6、ADR4-7、ADR4-8、ADR4-9、ADR4-10、ADR4-11、ADR4-12、ADR4-13、ADR4-14、ADR4-15、ADR4-16、ADR4-17、ADR4-18、ADR4-19、ADR4-21、ADR4-22、およびADR4-23、もしくはそれぞれ配列番号5〜配列番号13で示される、ADR3-1、ADR3-2、ADR3-3、ADR3-4、ADR3-5、ADR3-6、ADR3-7、ADR3-8、およびADR3-9のアミノ酸配列と25ヵ所以下のアミノ酸位置で異なるアミノ酸配列を有し、かつそれぞれ配列番号14〜配列番号35で示される、ADR4-2、ADR4-3、ADR4-4、ADR4-5、ADR4-6、ADR4-7、ADR4-8、ADR4-9、ADR4-10、ADR4-11、ADR4-12、ADR4-13、ADR4-14、ADR4-15、ADR4-16、ADR4-17、ADR4-18、ADR4-19、ADR4-21、ADR4-22、およびADR4-23、もしくはそれぞれ配列番号5〜配列番号13で示される、ADR3-1、ADR3-2、ADR3-3、ADR3-4、ADR3-5、ADR3-6、ADR3-7、ADR3-8、およびADR3-9のCDR3配列に対して少なくとも50%の同一性を有するCDR3配列を有する。
【0062】
本発明のさらなる態様において、本発明に係るdAbは、SapまたはMPに結合し、このdAbは、それぞれ配列番号14〜配列番号35で示される、ADR4-2、ADR4-3、ADR4-4、ADR4-5、ADR4-6、ADR4-7、ADR4-8、ADR4-9、ADR4-10、ADR4-11、ADR4-12、ADR4-13、ADR4-14、ADR4-15、ADR4-16、ADR4-17、ADR4-18、ADR4-19、ADR4-21、ADR4-22、およびADR4-23、もしくはそれぞれ配列番号5〜配列番号13で示される、ADR3-1、ADR3-2、ADR3-3、ADR3-4、ADR3-5、ADR3-6、ADR3-7、ADR3-8、およびADR3-9のアミノ酸配列と同一であるか、またはそれぞれ配列番号14〜配列番号35で示される、ADR4-2、ADR4-3、ADR4-4、ADR4-5、ADR4-6、ADR4-7、ADR4-8、ADR4-9、ADR4-10、ADR4-11、ADR4-12、ADR4-13、ADR4-14、ADR4-15、ADR4-16、ADR4-17、ADR4-18、ADR4-19、ADR4-21、ADR4-22、およびADR4-23、もしくはそれぞれ配列番号5〜配列番号13で示される、ADR3-1、ADR3-2、ADR3-3、ADR3-4、ADR3-5、ADR3-6、ADR3-7、ADR3-8、およびADR3-9のアミノ酸配列と25ヵ所以下のアミノ酸位置で異なるアミノ酸配列を有し、かつそれぞれ配列番号14〜配列番号35で示される、ADR4-2、ADR4-3、ADR4-4、ADR4-5、ADR4-6、ADR4-7、ADR4-8、ADR4-9、ADR4-10、ADR4-11、ADR4-12、ADR4-13、ADR4-14、ADR4-15、ADR4-16、ADR4-17、ADR4-18、ADR4-19、ADR4-21、ADR4-22、およびADR4-23、もしくはそれぞれ配列番号5〜配列番号13で示される、ADR3-1、ADR3-2、ADR3-3、ADR3-4、ADR3-5、ADR3-6、ADR3-7、ADR3-8、およびADR3-9のCDR1配列に対して少なくとも50%の同一性を有するCDR1配列を有し、かつそれぞれ配列番号14〜配列番号35で示される、ADR4-2、ADR4-3、ADR4-4、ADR4-5、ADR4-6、ADR4-7、ADR4-8、ADR4-9、ADR4-10、ADR4-11、ADR4-12、ADR4-13、ADR4-14、ADR4-15、ADR4-16、ADR4-17、ADR4-18、ADR4-19、ADR4-21、ADR4-22、およびADR4-23、もしくはそれぞれ配列番号5〜配列番号13で示される、ADR3-1、ADR3-2、ADR3-3、ADR3-4、ADR3-5、ADR3-6、ADR3-7、ADR3-8、およびADR3-9のCDR2配列に対して少なくとも50%の同一性を有するCDR2配列を有する。
【0063】
本発明のさらなる態様において、本発明に係るdAbは、SapまたはMPに結合し、このdAbは、それぞれ配列番号14〜配列番号35で示される、ADR4-2、ADR4-3、ADR4-4、ADR4-5、ADR4-6、ADR4-7、ADR4-8、ADR4-9、ADR4-10、ADR4-11、ADR4-12、ADR4-13、ADR4-14、ADR4-15、ADR4-16、ADR4-17、ADR4-18、ADR4-19、ADR4-21、ADR4-22、およびADR4-23、もしくはそれぞれ配列番号5〜配列番号13で示される、ADR3-1、ADR3-2、ADR3-3、ADR3-4、ADR3-5、ADR3-6、ADR3-7、ADR3-8、およびADR3-9のアミノ酸配列と同一であるか、またはそれぞれ配列番号14〜配列番号35で示される、ADR4-2、ADR4-3、ADR4-4、ADR4-5、ADR4-6、ADR4-7、ADR4-8、ADR4-9、ADR4-10、ADR4-11、ADR4-12、ADR4-13、ADR4-14、ADR4-15、ADR4-16、ADR4-17、ADR4-18、ADR4-19、ADR4-21、ADR4-22、およびADR4-23、もしくはそれぞれ配列番号5〜配列番号13で示される、ADR3-1、ADR3-2、ADR3-3、ADR3-4、ADR3-5、ADR3-6、ADR3-7、ADR3-8、およびADR3-9のアミノ酸配列と25ヵ所以下のアミノ酸位置で異なるアミノ酸配列を有し、かつそれぞれ配列番号14〜配列番号35で示される、ADR4-2、ADR4-3、ADR4-4、ADR4-5、ADR4-6、ADR4-7、ADR4-8、ADR4-9、ADR4-10、ADR4-11、ADR4-12、ADR4-13、ADR4-14、ADR4-15、ADR4-16、ADR4-17、ADR4-18、ADR4-19、ADR4-21、ADR4-22、およびADR4-23、もしくはそれぞれ配列番号5〜配列番号13で示される、ADR3-1、ADR3-2、ADR3-3、ADR3-4、ADR3-5、ADR3-6、ADR3-7、ADR3-8、およびADR3-9のCDR2配列に対して少なくとも50%の同一性を有するCDR2配列を有し、かつそれぞれ配列番号14〜配列番号35で示される、ADR4-2、ADR4-3、ADR4-4、ADR4-5、ADR4-6、ADR4-7、ADR4-8、ADR4-9、ADR4-10、ADR4-11、ADR4-12、ADR4-13、ADR4-14、ADR4-15、ADR4-16、ADR4-17、ADR4-18、ADR4-19、ADR4-21、ADR4-22、およびADR4-23、もしくはそれぞれ配列番号5〜配列番号13で示される、ADR3-1、ADR3-2、ADR3-3、ADR3-4、ADR3-5、ADR3-6、ADR3-7、ADR3-8、およびADR3-9のCDR3配列に対して少なくとも50%の同一性を有するCDR3配列を有する。
【0064】
本発明のさらなる態様において、本発明に係るdAbは、SapまたはMPに結合し、このdAbは、それぞれ配列番号14〜配列番号35で示される、ADR4-2、ADR4-3、ADR4-4、ADR4-5、ADR4-6、ADR4-7、ADR4-8、ADR4-9、ADR4-10、ADR4-11、ADR4-12、ADR4-13、ADR4-14、ADR4-15、ADR4-16、ADR4-17、ADR4-18、ADR4-19、ADR4-21、ADR4-22、およびADR4-23、もしくはそれぞれ配列番号5〜配列番号13で示される、ADR3-1、ADR3-2、ADR3-3、ADR3-4、ADR3-5、ADR3-6、ADR3-7、ADR3-8、およびADR3-9のアミノ酸配列と同一であるか、またはそれぞれ配列番号14〜配列番号35で示される、ADR4-2、ADR4-3、ADR4-4、ADR4-5、ADR4-6、ADR4-7、ADR4-8、ADR4-9、ADR4-10、ADR4-11、ADR4-12、ADR4-13、ADR4-14、ADR4-15、ADR4-16、ADR4-17、ADR4-18、ADR4-19、ADR4-21、ADR4-22、およびADR4-23、もしくはそれぞれ配列番号5〜配列番号13で示される、ADR3-1、ADR3-2、ADR3-3、ADR3-4、ADR3-5、ADR3-6、ADR3-7、ADR3-8、およびADR3-9のアミノ酸配列と25ヵ所以下のアミノ酸位置で異なるアミノ酸配列を有し、かつそれぞれ配列番号14〜配列番号35で示される、ADR4-2、ADR4-3、ADR4-4、ADR4-5、ADR4-6、ADR4-7、ADR4-8、ADR4-9、ADR4-10、ADR4-11、ADR4-12、ADR4-13、ADR4-14、ADR4-15、ADR4-16、ADR4-17、ADR4-18、ADR4-19、ADR4-21、ADR4-22、およびADR4-23、もしくはそれぞれ配列番号5〜配列番号13で示される、ADR3-1、ADR3-2、ADR3-3、ADR3-4、ADR3-5、ADR3-6、ADR3-7、ADR3-8、およびADR3-9のCDR1配列に対して少なくとも50%の同一性を有するCDR1配列を有し、かつそれぞれ配列番号14〜配列番号35で示される、ADR4-2、ADR4-3、ADR4-4、ADR4-5、ADR4-6、ADR4-7、ADR4-8、ADR4-9、ADR4-10、ADR4-11、ADR4-12、ADR4-13、ADR4-14、ADR4-15、ADR4-16、ADR4-17、ADR4-18、ADR4-19、ADR4-21、ADR4-22、およびADR4-23、もしくはそれぞれ配列番号5〜配列番号13で示される、ADR3-1、ADR3-2、ADR3-3、ADR3-4、ADR3-5、ADR3-6、ADR3-7、ADR3-8、およびADR3-9のCDR3配列に対して少なくとも50%の同一性を有するCDR3配列を有する。
【0065】
本発明のさらなる態様において、本発明に係るdAbは、SapまたはMPに結合し、このdAbは、それぞれ配列番号14〜配列番号35で示される、ADR4-2、ADR4-3、ADR4-4、ADR4-5、ADR4-6、ADR4-7、ADR4-8、ADR4-9、ADR4-10、ADR4-11、ADR4-12、ADR4-13、ADR4-14、ADR4-15、ADR4-16、ADR4-17、ADR4-18、ADR4-19、ADR4-21、ADR4-22、およびADR4-23、もしくはそれぞれ配列番号5〜配列番号13で示される、ADR3-1、ADR3-2、ADR3-3、ADR3-4、ADR3-5、ADR3-6、ADR3-7、ADR3-8、およびADR3-9のアミノ酸配列と同一であるか、またはそれぞれ配列番号14〜配列番号35で示される、ADR4-2、ADR4-3、ADR4-4、ADR4-5、ADR4-6、ADR4-7、ADR4-8、ADR4-9、ADR4-10、ADR4-11、ADR4-12、ADR4-13、ADR4-14、ADR4-15、ADR4-16、ADR4-17、ADR4-18、ADR4-19、ADR4-21、ADR4-22、およびADR4-23、もしくはそれぞれ配列番号5〜配列番号13で示される、ADR3-1、ADR3-2、ADR3-3、ADR3-4、ADR3-5、ADR3-6、ADR3-7、ADR3-8、およびADR3-9のアミノ酸配列と25ヵ所以下のアミノ酸位置で異なるアミノ酸配列を有し、かつそれぞれ配列番号14〜配列番号35で示される、ADR4-2、ADR4-3、ADR4-4、ADR4-5、ADR4-6、ADR4-7、ADR4-8、ADR4-9、ADR4-10、ADR4-11、ADR4-12、ADR4-13、ADR4-14、ADR4-15、ADR4-16、ADR4-17、ADR4-18、ADR4-19、ADR4-21、ADR4-22、およびADR4-23、もしくはそれぞれ配列番号5〜配列番号13で示される、ADR3-1、ADR3-2、ADR3-3、ADR3-4、ADR3-5、ADR3-6、ADR3-7、ADR3-8、およびADR3-9のCDR1配列に対して少なくとも50%の同一性を有するCDR1配列を有し、かつそれぞれ配列番号14〜配列番号35で示される、ADR4-2、ADR4-3、ADR4-4、ADR4-5、ADR4-6、ADR4-7、ADR4-8、ADR4-9、ADR4-10、ADR4-11、ADR4-12、ADR4-13、ADR4-14、ADR4-15、ADR4-16、ADR4-17、ADR4-18、ADR4-19、ADR4-21、ADR4-22、およびADR4-23、もしくはそれぞれ配列番号5〜配列番号13で示される、ADR3-1、ADR3-2、ADR3-3、ADR3-4、ADR3-5、ADR3-6、ADR3-7、ADR3-8、およびADR3-9のCDR2配列に対して少なくとも50%の同一性を有するCDR2配列を有し、かつそれぞれ配列番号14〜配列番号35で示される、ADR4-2、ADR4-3、ADR4-4、ADR4-5、ADR4-6、ADR4-7、ADR4-8、ADR4-9、ADR4-10、ADR4-11、ADR4-12、ADR4-13、ADR4-14、ADR4-15、ADR4-16、ADR4-17、ADR4-18、ADR4-19、ADR4-21、ADR4-22、およびADR4-23、もしくはそれぞれ配列番号5〜配列番号13で示される、ADR3-1、ADR3-2、ADR3-3、ADR3-4、ADR3-5、ADR3-6、ADR3-7、ADR3-8、およびADR3-9のCDR3配列に対して少なくとも50%の同一性を有するCDR3配列を有する。
【0066】
本発明のさらなる態様において、本発明に係るdAbは、SapまたはMPに結合し、このdAbは、それぞれ配列番号14〜配列番号35で示される、ADR4-2、ADR4-3、ADR4-4、ADR4-5、ADR4-6、ADR4-7、ADR4-8、ADR4-9、ADR4-10、ADR4-11、ADR4-12、ADR4-13、ADR4-14、ADR4-15、ADR4-16、ADR4-17、ADR4-18、ADR4-19、ADR4-21、ADR4-22、およびADR4-23、もしくはそれぞれ配列番号5〜配列番号13で示される、ADR3-1、ADR3-2、ADR3-3、ADR3-4、ADR3-5、ADR3-6、ADR3-7、ADR3-8、およびADR3-9のCDR1配列に対して少なくとも50%の同一性を有するCDR1配列を有する。
【0067】
本発明のさらなる態様において、本発明に係るdAbは、SapまたはMPに結合し、このdAbは、それぞれ配列番号14〜配列番号35で示される、ADR4-2、ADR4-3、ADR4-4、ADR4-5、ADR4-6、ADR4-7、ADR4-8、ADR4-9、ADR4-10、ADR4-11、ADR4-12、ADR4-13、ADR4-14、ADR4-15、ADR4-16、ADR4-17、ADR4-18、ADR4-19、ADR4-21、ADR4-22、およびADR4-23、もしくはそれぞれ配列番号5〜配列番号13で示される、ADR3-1、ADR3-2、ADR3-3、ADR3-4、ADR3-5、ADR3-6、ADR3-7、ADR3-8、およびADR3-9のCDR2配列に対して少なくとも50%の同一性を有するCDR2配列を有する。
【0068】
本発明のさらなる態様において、本発明に係るdAbは、SapまたはMPに結合し、このdAbは、それぞれ配列番号14〜配列番号35で示される、ADR4-2、ADR4-3、ADR4-4、ADR4-5、ADR4-6、ADR4-7、ADR4-8、ADR4-9、ADR4-10、ADR4-11、ADR4-12、ADR4-13、ADR4-14、ADR4-15、ADR4-16、ADR4-17、ADR4-18、ADR4-19、ADR4-21、ADR4-22、およびADR4-23、もしくはそれぞれ配列番号5〜配列番号13で示される、ADR3-1、ADR3-2、ADR3-3、ADR3-4、ADR3-5、ADR3-6、ADR3-7、ADR3-8、およびADR3-9のCDR3配列に対して少なくとも50%の同一性を有するCDR3配列を有する。
【0069】
本発明のさらなる態様において、本発明に係るdAbは、SapまたはMPに結合し、このdAbは、DOM16-39(配列番号345)、DOM16-39-87(配列番号420)、DOM16-39-100(配列番号423)、DOM16-39-107(配列番号430)、DOM16-39-109(配列番号432)、DOM16-39-115(配列番号438)、およびDOM16-39-200(配列番号441)のCDR1配列に対して少なくとも50%の同一性を有するCDR1配列と、DOM16-39(配列番号345)、DOM16-39-87(配列番号420)、DOM16-39-100(配列番号423)、DOM16-39-107(配列番号430)、DOM16-39-109(配列番号432)、DOM16-39-115(配列番号438)、およびDOM16-39-200(配列番号441)のCDR2配列に対して少なくとも50%の同一性を有するCDR2配列とを有する。
【0070】
本発明のさらなる態様において、本発明に係るdAbは、SapまたはMPに結合し、このdAbは、DOM16-39(配列番号345)、DOM16-39-87(配列番号420)、DOM16-39-100(配列番号423)、DOM16-39-107(配列番号430)、DOM16-39-109(配列番号432)、DOM16-39-115(配列番号438)、およびDOM16-39-200(配列番号441)のCDR2配列に対して少なくとも50%の同一性を有するCDR2配列と、DOM16-39(配列番号345)、DOM16-39-87(配列番号420)、DOM16-39-100(配列番号423)、DOM16-39-107(配列番号430)、DOM16-39-109(配列番号432)、DOM16-39-115(配列番号438)、およびDOM16-39-200(配列番号441)のCDR3配列に対して少なくとも50%の同一性を有するCDR3配列とを有する。
【0071】
本発明のさらなる態様において、本発明に係るdAbは、SapまたはMPに結合し、このdAbは、DOM16-39(配列番号345)、DOM16-39-87(配列番号420)、DOM16-39-100(配列番号423)、DOM16-39-107(配列番号430)、DOM16-39-109(配列番号432)、DOM16-39-115(配列番号438)、およびDOM16-39-200(配列番号441)のCDR1配列に対して少なくとも50%の同一性を有するCDR1配列と、DOM16-39(配列番号345)、DOM16-39-87(配列番号420)、DOM16-39-100(配列番号423)、DOM16-39-107(配列番号430)、DOM16-39-109(配列番号432)、DOM16-39-115(配列番号438)、およびDOM16-39-200(配列番号441)のCDR3配列に対して少なくとも50%の同一性を有するCDR3配列とを有する。
【0072】
本発明のさらなる態様において、本発明に係るdAbは、SapまたはMPに結合し、このdAbは、DOM16-39(配列番号345)、DOM16-39-87(配列番号420)、DOM16-39-100(配列番号423)、DOM16-39-107(配列番号430)、DOM16-39-109(配列番号432)、DOM16-39-115(配列番号438)、およびDOM16-39-200(配列番号441)のCDR1配列に対して少なくとも50%の同一性を有するCDR1配列と、DOM16-39(配列番号345)、DOM16-39-87(配列番号420)、DOM16-39-100(配列番号423)、DOM16-39-107(配列番号430)、DOM16-39-109(配列番号432)、DOM16-39-115(配列番号438)、およびDOM16-39-200(配列番号441)のCDR2配列に対して少なくとも50%の同一性を有するCDR2配列と、DOM16-39(配列番号345)、DOM16-39-87(配列番号420)、DOM16-39-100(配列番号423)、DOM16-39-107(配列番号430)、DOM16-39-109(配列番号432)、DOM16-39-115(配列番号438)、およびDOM16-39-200(配列番号441)のCDR3配列に対して少なくとも50%の同一性を有するCDR3配列とを有する。
【0073】
さらなる態様において、半減期延長部分を用いて本発明に係るdAbの血清中半減期を増大させることが可能である。好ましい実施形態では、半減期延長部分はPEGである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0074】
定義
免疫グロブリン: これは、2つのβシートと通常は1つの保存されたジスルフィド結合とを含有する抗体分子に特有な免疫グロブリンフォールディングを保持するポリペプチドファミリーを意味する。免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーは、免疫系(たとえば、抗体、T細胞受容体分子など)における広範な役割、細胞接着(たとえばICAM分子)および細胞内シグナリング(たとえば、PDGF受容体のような受容体分子)への関与を含めて、in vivoにおける細胞相互作用および非細胞相互作用の多くの側面に関与する。本発明は、結合ドメインを有するすべての免疫グロブリンスーパーファミリー分子に適用可能である。好ましくは、本発明は、抗体に関する。
【0075】
ドメイン: ドメインとは、タンパク質の残りの部分とは独立してその三次構造を保持する折畳みタンパク質構造のことである。一般的には、ドメインは、タンパク質の個別の機能特性に関与し、多くの場合、タンパク質の残りの部分および/またはドメインの機能を損なうことなく、追加、除去、または他のタンパク質への移入が可能である。
【0076】
本明細書中で使用される「単一の抗体可変ドメイン」(dAb)という用語は、抗体可変ドメインに特有な配列を含む折畳みポリペプチドドメインを意味する。したがって、それは、完全な抗体可変ドメインおよび改変された可変ドメイン、たとえば、1つ以上のループがさらなる配列で置き換えられた可変ドメイン、あるいはトランケートされているかまたはN末端もしくはC末端の伸長を含んでいる抗体可変ドメイン、さらには全長ドメインの結合活性および特異性を少なくとも部分的に保持する折畳み可変ドメインフラグメントを包含する。さらに、dAbという用語は、1つ以上の超可変ループおよび/またはCDRを同一のもしくは異なる起源に由来しうる第2の可変ドメインに由来するもので置き換えてなる単一の抗体可変ドメインをその範囲内に包含する。
【0077】
ライブラリー: ライブラリーという用語は、異種のポリペプチドまたは核酸の混合物を意味する。ライブラリーは、メンバーで構成され、各メンバーは、単一のポリペプチド配列または核酸配列を有する。この範囲内では、ライブラリーは、レパートリーと同義である。ライブラリーメンバー間の配列差は、ライブラリー中に存在する多様性に関与する。ライブラリーは、ポリペプチドもしくは核酸の単純な混合物の形態をとりうるか、または核酸のライブラリーで形質転換された生物もしくは細胞、たとえば、細菌、ウイルス、動物もしくは植物の細胞などの形態をとりうる。好ましくは、個々の生物または細胞は、ただ1つもしくは限られた数のライブラリーメンバーを含有する。有利には、核酸は、核酸によりコードされるポリペプチドの発現を可能にすべく発現ベクター中に組み込まれる。したがって、好ましい態様において、ライブラリーは、宿主生物の集団の形態をとりうる。ただし、各生物は、対応するポリペプチドメンバーを産生するように発現されうる核酸の形態でライブラリーの単一メンバーを担持する発現ベクターの1つ以上のコピーを含有する。このため、宿主生物の集団は、遺伝的に多様なポリペプチド変異体の大きなレパートリーをコードする可能性を有する。
【0078】
抗体: 抗体(たとえば、IgG、IgM、IgA、IgD、もしくはIgE)または抗体フラグメント(たとえば、Fab、F(ab')2、Fv、ジスルフィド結合Fv、scFv、閉じたコンフォメーションの多重特異性抗体、ジスルフィド結合scFv、ダイアボディ、dAb)。抗体は、天然で産生するいずれかの種に由来するかもしくは組換えDNA技術により生成されるかを問わず、血清、B細胞、ハイブリドーマ、トランスフェクトーマ、酵母、もしくは細菌から単離されるかを問わない。
【0079】
抗原: 本発明に係るリガンドにより結合される分子。典型的には、抗原は、抗体リガンドにより結合され、in vivoで抗体応答を惹起しうる。それは、ポリペプチド、タンパク質、核酸、または他の分子でありうる。一般的には、本発明に係るdAbは、特定の抗原に対する標的特異性に関して選択される。通常の抗体およびそのフラグメントの場合、可変ループ(L1、L2、L3、およびH1、H2、H3)により規定される抗体結合部位が、抗原に結合しうる。
【0080】
エピトープ: 通常は免疫グロブリンVH/VL対により結合される構造ユニット。エピトープは、抗体に対する最小結合部位を規定するので、抗体の特異性の標的を表す。単一ドメイン抗体の場合、エピトープは、独立した可変ドメインにより結合される構造ユニットを表す。
【0081】
普遍的フレームワーク: カバット(Kabat)("Sequences of Proteins of Immunological Interest", US Department of Health and Human Services)により定義される配列中に保存される抗体領域に対応するかまたはChothia and Lesk, (1987) J. Mol. Biol. 196:910-917により定義されるヒト生殖系列免疫グロブリンレパートリーもしくは構造に対応する単一の抗体フレームワーク配列。本発明は、超可変領域だけの変異を介して事実上任意の結合特異性の誘導を可能にする単一のフレームワークまたは一連のそのようなフレームワークの使用を提供する。
【0082】
実質的に同一: 第1および第2のアミノ酸配列またはヌクレオチド配列が類似の活性を有するように、第2のアミノ酸配列またはヌクレオチド配列に対して十分な数の同一のアミノ酸残基またはヌクレオチドを含有する第1のアミノ酸配列またはヌクレオチド配列。抗体の場合、第2の抗体は、同一の結合特異性を有し、かつ同一の親和性の少なくとも50%を有する。
【0083】
全身性カンジダ症: 本出願では、全身性カンジダ症という用語が使用されるが、「侵襲性カンジダ症」、「播種性カンジダ症」、および「血行性カンジダ症」という用語と同義である。
【0084】
発明の詳細な説明
とくに定義がないかぎり、本明細書中で使用される科学技術用語はすべて、当技術分野(たとえば、細胞培養、分子遺伝学、核酸化学、ハイブリダイゼーション技術、および生化学)の当業者により一般に理解されるのと同一の意味を有する。分子的、遺伝的、および生化学的な方法(一般的には、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版 (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. および Ausubel et al., Short Protocols in Molecular Biology (1999) 第4版, John Wiley & Sons, Inc.(参照により本明細書に組み入れられるものとする)を参照されたい)ならびに化学的方法のための標準的技術が使用される。
【0085】
(A) カンジダ属の種の感染
酵母感染は、通常、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)と呼ばれる真菌の種の過剰増殖の結果として生じる。それらは、皮膚、爪下、または口腔、膣、気管支、および肺の粘膜で生じる可能性がある。
【0086】
膣酵母感染は、膣炎の一種である。酵母感染の顕著な特徴的症状は、粘稠状および/または凝乳状になることもある白色漏出物(カッテージチーズのような漏出物)を伴うことの多い外性器掻痒および内性器掻痒である。重度の感染が起こると、組織が炎症を生じ、続いて、潮紅、腫脹、さらには点状出血を生じる。
【0087】
1種以上の本発明に係るdAbを用いて任意の種のカンジダ感染を治療することが可能である。本発明に従って治療するのに好ましいカンジダ属の種としては、次の種:カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、カンジダ・グラブラータ(Candida glabrata)、カンジダ・パラプシロシス(Candida parapsilosis)、カンジダ・クルセイ(Candida krusei)、およびカンジダ・ルシタニエ(Candida lusitaniae)からなる群に含まれる任意の種が挙げられる。本発明の上記の態様の最も好ましい実施形態では、カンジダ属の種は、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)である。
【0088】
現在の内科的治療
カンジダにより引き起こされる酵母感染の治療に利用しうる一般薬としては、クロトリマゾール(ギネ-ロトリミン(Gyne-Lotrimin)(登録商標)、マイセレックス(Mycelex)(登録商標))、ミコナゾール(モニスタット(Monistat)(登録商標))、およびブトコナゾール(フェムスタット(Femstat)(登録商標))が挙げられる。
【0089】
処方薬としては、経口フルコナゾール(ジフルカン(Diflucan)(登録商標))、ナイスタチン(マイコスタチン(Mycostatin)(登録商標))腟錠剤、テルコナゾール(テラゾール(Terazol)(登録商標))膣クリーム剤、およびブトコナゾール(ギナゾール(Gynazole)(登録商標))膣クリーム剤が挙げられる。痒みの軽減に役立てるべく、抗真菌クリーム剤を外陰(外性器)に局所適用することも可能である。
【0090】
膣炎
膣炎は、膣の炎症である。
【0091】
膣炎の3つの一般的原因は、ホルモンの不均衡、刺激、および感染である。感染性膣炎は、生殖可能年齢の女性に最も多く見受けられ、一般的には、3つのタイプの感染症、すなわち、細菌性膣炎(BV)、カンジダ属の種の感染により引き起こされるカンジダ症(たとえば、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)感染症)、またはトリコモナス症のうちの1つが原因である。
【0092】
(B) 本発明に係るdAbに結合するカンジダ属の種の病原性因子
第1の態様において、本発明は、カンジダ属の種に由来する分泌性アスパラギン酸プロテアーゼ(Sap)に結合しかつ/またはその機能的活性を阻害しうる単一ドメイン抗体(dAb)を提供する。
【0093】
さらなる態様において、本発明は、カンジダ属の種に由来するマンノプロテインアドヘシン(MP)に結合しかつ/またはその機能的活性を阻害しうる単一ドメイン抗体(dAb)を提供する。
【0094】
(Bi) カンジダ属の種の病原性因子
(i) SAP
一群の10種のSAP遺伝子によりコードされる分泌性アスパルチルプロテイナーゼ(Sap)は、カンジダファミリーの病原性メンバーの主要な病原性決定因子(determinant)である。C.アルビカンス(C. albicans)のものが最も多く研究されている。C.アルビカンス(C. albicans)の10種のSAP遺伝子はすべて、成熟酵素よりも約60アミノ酸長いプレプロ酵素をコードし、分泌経路を介して輸送される際にプロセシングを受ける。成熟酵素は、35〜50kDaのサイズであり、すべてのアスパルチルプロテイナーゼに特有な配列モチーフ(活性部位の2つの保存アスパラギン酸残基および三次元構造の維持に関与する保存システイン残基を含む)を含有する。ほとんどのSapタンパク質は、推定N-グリコシル化部位を含有する。現在のところ、C.アルビカンス(C. albicans)プロテイナーゼの主要な役割は、細胞に栄養を供給すること、浸透および浸潤を支援すること、ならびに免疫応答を回避することであると考えられる(Naglik, J., R. 2003 Microbiology and Molecular Biology Reviews, 67. 3. 400-428)。
【0095】
(ii) マンノプロテインアドヘシン
病原性のカンジダ属の種による宿主組織の効果的なコロニー形成および感染は、こうした生物が粘膜表面に接着する能力に依存する。種が異なれば、その接着能力も異なり、接着性と病原性の間には、明確な相関関係が存在する。最も病原性の高い種であるカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)が上皮細胞に接着するメカニズムは、詳細に研究されており、酵母表面上の特異的結合性分子(アドヘシン)と上皮細胞表面上の相補的受容体分子との間のレクチン様相互作用を含むと考えられている。現在の情報によれば、酵母表面上のフィブリル中に位置するマンノプロテインのタンパク質部分は、アドヘシンとして作用し、上皮細胞上のグリコシド受容体と相互作用することが示唆される。
【0096】
(Bii) 本発明に係るSap結合性dAb
1種以上の本発明に係るdAbによる結合に適した分泌性アスパラギン酸プロテアーゼとしては、Sap1、Sap2、Sap3、Sap4、Sap5およびSap6、Sap8、Sap9およびSap10分泌性アスパラギン酸プロテアーゼが挙げられる。本発明の上記の態様の好ましい実施形態では、dAbは、Sap2結合性dAb(Sap2結合性dAb)である。好ましくは、それは、本明細書に提供される配列表に示され、かつ配列番号14で示されるADR4-2から配列番号35で示されるADR4-23までにより示される1つ以上の配列を含み、好ましくは該1つ以上の配列からなる、Sap2結合性dAbである。本明細書に記載の本発明によれば、ADR4-Xで示されるアミノ酸配列は、Sap2アミノ酸配列を表す。
【0097】
有利には、本発明に係るdAbは、1種以上の本明細書中に規定されるSapに5×10-1〜1×10-7 s-1のkoff速度定数で結合しうる。
【0098】
より有利には、本発明に係るdAbは、少なくとも100μM〜1pMの解離定数(Kd)でSap2に結合しうる。
【0099】
(Biii) 本発明に係るMP結合性dAb
本発明によれば、本明細書に提供される配列表中のADR3-Xで示される配列は、マンノプロテインアドヘシン(MP)結合性dAb(dAb)の配列を表す。
【0100】
本発明によれば、有利には、dAbは、本明細書に提供される配列表に示され、かつADR3-1、ADR3-2、ADR3-3、ADR3-4、ADR3-5、ADR3-6、ADR3-7、ADR3-8、ADR3-9で示され、かつそれぞれ配列番号5〜配列番号13として表される1つ以上の配列を含み、好ましくは該1つ以上の配列からなる、MP65結合性dAbである。
【0101】
本発明の上記の態様によれば、より有利には、dAbは、本明細書に提供される配列表に示され、かつADR3-1、ADR3-2、およびADR3-6で示され、かつそれぞれ配列番号5、6、および10で示される、1つ以上の配列を含み、好ましくは該1つ以上の配列からなる、MP65結合性dAbである。
【0102】
有利には、本発明に係るdAbは、1種以上の本明細書中に規定されるMPに5×10-1〜1×10-7 s-1のkoff速度定数で結合しうる。
【0103】
より有利には、本発明に係るdAbは、少なくとも100μM〜1pMの解離定数(Kd)でMP65に結合しうる。
【0104】
さらなる態様において、本発明は、カンジダ属の種に由来するマンノプロテインアドヘシン(MP)に結合しかつ/またはその機能的活性を阻害しうる、しかもADR3-1、ADR3-2、およびADR3-6として同定されかつそれぞれ配列番号5、6、および10で示されるdAbに対して80%の同一性を呈する、単一ドメイン抗体(dAb)を提供する。
【0105】
本発明の上記の態様の好ましい実施形態では、dAbは、ADR3-1、ADR3-2、およびADR3-6として同定されかつそれぞれ配列番号5、6、および10で示されるdAbのうちの1つ以上に対して、82、84、86、88、90、92、94、96、98、または99%の同一性を呈する。
【0106】
アミノ酸配列同一性の計算
本明細書に開示されている配列に類似しているかまたは該配列と相同である(たとえば、少なくとも約80%の配列同一性である)配列もまた、本発明の一部である。いくつかの実施形態では、アミノ酸レベルでの配列同一性は、約85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上でありうる。核酸レベルでは、配列同一性は、約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上でありうる。他の選択肢として、選択的ハイブリダイゼーション条件下(たとえば、非常に高いストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件下)で核酸セグメントが鎖の相補体にハイブリダイズする場合、実質的な同一性が存在する。核酸は、全細胞中に、細胞溶解物中に、または部分精製された形態もしくは実質的に純粋な形態で存在しうる。
【0107】
2つの配列間の「相同性」または「配列同一性」または「類似性」(これらの用語は、本明細書中では同義的に使用される)の計算は、次のように行われる。最適比較が行われるように配列をアライメントする(たとえば、最適アライメントになるように第1および第2のアミノ酸配列または核酸配列の一方または両方にギャップを導入することが可能であり、比較目的では非相同的配列を無視することが可能である)。好ましい実施形態では、比較目的でアライメントされる参照配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも60%、さらにより好ましくは少なくとも70%、80%、90%、100%である。次に、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置のアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。第1の配列中の位置が第2の配列中の対応する位置と同一のアミノ酸残基またはヌクレオチドにより占有されている場合、分子は、その位置で同一である(本明細書中で使用する場合、アミノ酸または核酸の「相同性」は、アミノ酸または核酸の「同一性」と等価である)。2つの配列間の同一性パーセントは、2つの配列が最適アライメントになるように導入する必要のあるギャップの数および各ギャップの長さを考慮して、配列により共有される同一位置の数の関数である。
【0108】
有利には、パラメータをデフォルト値に設定してBLASTアルゴリズム(バージョン2.0)を配列アライメントに利用する。BLASTアルゴリズムについては、米国政府(「.gov」)の国立衛生研究所(the National Institutes of Health)(「nih」)の国立バイオテクノロジー情報センター(the National Center for Biotechnology Information )(「.ncbi」)のワールドワイドウェブサイト(「www」)にある「/Blast/」ディレクトリの「blast_help.html」ファイルに詳細に記載されている。検索パラメータは、以下のように定義され、有利には、既定のデフォルトパラメータに設定される。
【0109】
BLAST(Basic Local Alignment Search Tool)は、プログラムblastp、blastn、blastx、tblastn、およびtblastxにより利用されるヒューリスティック検索アルゴリズムであり、これらのプログラムでは、若干の機能強化を行ってKarlin and Altschul, 1990, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87(6):2264-8(以上に記載した「blast_help.html」ファイルを参照されたい)の統計的手法を用いて探索することに重点を置く。BLASTプログラムは、たとえば、クエリー配列に対する相同体を同定するために、配列類似性検索が行えるように適合化されたものである。これらのプログラムは、一般的には、モチーフ式検索に有用ではない。配列データベースの類似性検索の基本的事項に関する考察については、Altschul et al. (1994)を参照されたい。
【0110】
国立バイオテクノロジー情報センター(the National Center for Biotechnology Information)のウェブサイトで利用可能な5つのBLASTプログラムは、以下のタスクを実行する:
「blastp」は、タンパク質配列データベースと対比してアミノ酸クエリー配列を比較し;
「blastn」は、ヌクレオチド配列データベースと対比してヌクレオチドクエリー配列を比較し;
「blastx」は、タンパク質配列データベースと対比してヌクレオチドクエリー配列(両方の鎖)の6つのフレームの概念上の翻訳産物を比較し;
「tblastn」は、6つのリーディングフレーム(両方の鎖)すべてにおいて動的に翻訳されたヌクレオチド配列データベースと対比してタンパク質クエリー配列を比較し;
「tblastx」は、ヌクレオチド配列データベースの6つのフレームの翻訳結果と対比してヌクレオチドクエリー配列の6つのフレームの翻訳結果を比較する。
【0111】
BLASTは、次の検索パラメータを使用する:
HISTOGRAMは、各検索に対するスコアのヒストグラムを表示する。デフォルトは、yesである(BLASTマニュアル中のパラメータHを参照されたい)。
【0112】
DESCRIPTIONSは、報告されるマッチング配列に関する簡単な記述の数を指定の数に制限する。デフォルト限度値は、100件の記述である(マニュアルページ中のパラメータVを参照されたい)。EXPECTおよびCUTOFFも参照されたい。
【0113】
ALIGNMENTSは、高スコアセグメントペア(HSP)の報告の対象となるデータベース配列を指定の数に制限する。デフォルト限度値は、50である。これよりも多くのデータベース配列が報告のための統計的有意性の閾値を満たした場合(下記のEXPECTおよびCUTOFFを参照されたい)、最大の統計的有意性に割り当てられたマッチだけが報告される(BLASTマニュアル中のパラメータBを参照されたい)。
【0114】
EXPECTは、データベース配列と対比してマッチを報告するための統計的有意性の閾値である。Karlin and Altschul (1990)の確率モデルによれば、10件のマッチは、単に偶然に見いだされると予想されることから、デフォルト値は10である。マッチに割り当てられる統計的有意性がEXPECT閾値よりも大きい場合、マッチは報告されないであろう。EXPECT閾値を小さくするほど、ストリンジェントになり、偶然のマッチの報告は低減されるであろう。小数値が許容される(BLASTマニュアル中のパラメータEを参照されたい)。
【0115】
CUTOFFは、高スコアセグメントペアを報告するためのカットオフスコアである。デフォルト値は、EXPECT値(上記参照)から計算される。割り当てられた統計的有意性が、CUTOFF値に等しいスコアを有する単一HSPに割り当てられたものと少なくとも同程度に高い場合のみ、データベース配列に対してHSPが報告される。CUTOFF値を大きくするほど、ストリンジェントになり、偶然のマッチの報告は低減されるであろう(BLASTマニュアル中のパラメータSを参照されたい)。典型的には、EXPECTを用いて、より直観的に有意性の閾値を管理することが可能である。
【0116】
MATRIXは、BLASTP、BLASTX、TBLASTN、およびTBLASTXのためのスコア行列の選択肢を指定する。デフォルト行列は、BLOSUM62(Henikoff & Henikoff, 1992, Proc. Natl. Aacad. Sci. USA 89(22):10915-9)である。妥当な代替的選択肢としては、PAM40、PAM120、PAM250、およびIDENTITYが挙げられる。BLASTNの場合、スコア行列の選択肢は利用できないので、BLASTNリクエストでMATRIX指示語を指定すると、エラーの応答が返ってくる。
【0117】
STRANDは、TBLASTN検索をデータベース配列のトップ鎖だけもしくはボトム鎖だけに制限するか、またはBLASTN、BLASTX、もしくはTBLASTX検索をクエリー配列のトップ鎖上またはボトム鎖上のリーディングフレームだけに制限する。
【0118】
FILTERは、Wootton & Federhen (1993) Computers and Chemistry 17:149-163のSEGプログラムにより決定したときに低い組成複雑性を有するクエリー配列セグメントまたはClaverie & States, 1993, Computers and Chemistry 17:191-201のXNUプログラムによりもしくはBLASTNの場合にはTatusov and Lipman(NCBIのワールドワイドウェブサイトを参照されたい)のDUSTプログラムにより決定したときに短周期性内部反復配列からなるセグメントをマスキングして除外する。フィルタリングを行うことにより、統計学的には有意であるが生物学的には関心の対象にならない報告(たとえば、一般的な酸性領域、塩基性領域、またはプロリンリッチ領域と対比されるヒット)をblast出力から除外し、データベース配列と対比して特定のマッチングに利用可能であるさらに生物学的関心度の高いクエリー配列領域を残すようにすることが可能である。
【0119】
フィルタープログラムにより見いだされた低複雑性配列は、ヌクレオチド配列中の文字「N」(たとえば、13回反復された「N」)およびタンパク質配列中の文字「X」(たとえば、9回反復された「X」)で置き換えられる。
【0120】
フィルタリングは、データベース配列にではなくクエリー配列(またはその翻訳産物)にのみ適用される。デフォルトのフィルタリングは、BLASTNの場合にはDUST、他のプログラムの場合にはSEGである。
【0121】
SWISS-PROT中の配列に適用した場合、何の理由もなくSEG、XNU、またはその両方によりマスキングされることが珍しいことではないので、フィルタリングを行ったとしても必ずしも効果を生じることを期待してはならない。さらに、いくつかの場合には、配列全体がマスキングされることから、フィルタリングされていないクエリー配列と対比して報告されたいかなるマッチの統計的有意性も疑う必要があろう。
【0122】
NCBI-giは、寄託名および/または遺伝子座名に加えてNCBI gi識別子を出力中に提示させる。
【0123】
最も好ましくは、配列比較は、以上に記載したNCBIワールドワイドウェブサイトにある「/BLAST」ディレクトリーに提供されている単純BLAST検索アルゴリズムを用いて行われる。
【0124】
(C) 本発明に係るdAbの調製
本発明に係るdAbは、scFv、「ファージ」抗体、および他の遺伝子操作された抗体分子を調製するために抗体操作分野で使用されるすでに確立された技術に従って調製可能である。抗体を調製するための技術については、たとえば、次の総説およびそこに引用されている参考文献に記載されている:Winter & Milstein, (1991) Nature 349:293-299;Plueckthun (1992) Immunological Reviews 130:151-188;Wright et al., (1992) Crti. Rev. Immunol.12:125-168;Holliger, P. & Winter, G. (1993) Curr. Op. Biotechn. 4, 446-449;Carter, et al. (1995) J. Hematother. 4, 463-470;Chester, K.A. & Hawkins, R.E. (1995) Trends Biotechn. 13, 294-300;Hoogenboom, H.R. (1997) Nature Biotechnol. 15, 125-126;Fearon, D. (1997) Nature Biotechnol. 15, 618-619;Plueckthun, A. & Pack, P. (1997) Immunotechnology 3, 83-105;Carter, P. & Merchant, A.M. (1997) Curr. Opin. Biotechnol. 8, 449-454;Holliger, P. & Winter, G. (1997) Cancer Immunol. Immunother. 45,128-130。
【0125】
可変ドメインの選択に利用される技術は、当技術分野で公知のライブラリーおよび選択手順を利用する。ヒトB細胞から採取された再配列V遺伝子を使用する天然ライブラリー(Marks et al. (1991) J. Mol. Biol., 222: 581;Vaughan et al. (1996) Nature Biotech., 14: 309)は、当業者に周知である。合成ライブラリー(Hoogenboom & Winter (1992) J. Mol. Biol., 227: 381;Barbas et al. (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89: 4457;Nissim et al. (1994) EMBO J., 13: 692;Griffiths et al. (1994) EMBO J., 13: 3245;De Kruif et al. (1995) J. Mol. Biol., 248: 97)は、通常はPCRを用いて、免疫グロブリンV遺伝子のクローニングにより調製される。PCRプロセスにおけるエラーにより、高い程度のランダム化が可能である。VHおよび/またはVLライブラリーは、標的の抗原またはエピトープに対して個別に選択可能である。
【0126】
ライブラリーベクター系
本発明で使用するのに好適なさまざまな選択系が、当技術分野で公知である。そのような系の例を以下に記載する。
【0127】
バクテリオファージλ発現系は、バクテリオファージのプラークまたは溶原菌のコロニーとして直接スクリーニングすることが可能であり、いずれもすでに報告されているとおりであり(Huse et al. (1989) Science, 246: 1275; Caton and Koprowski (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 87;Mullinax et al. (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 87: 8095;Persson et al. (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 88: 2432)、本発明に有用である。そのような発現系を用いて106種までの異なるライブラリーメンバーをスクリーニングすることが可能であるが、実際上、さらに多数のメンバー(106種よりも多いメンバー)をスクリーニングするには適していない。
【0128】
ライブラリーの構築にとくに有用なのは、選択ディスプレイ系であり、これを用いれば、核酸をそれが発現するポリペプチドに関連付けることが可能になる。本明細書中で使用する場合、選択ディスプレイ系とは、一般的リガンドおよび/または標的リガンドに結合させることによってライブラリーの個々のメンバーを好適なディスプレイ手段により選択可能にする系のことである。
【0129】
大きなライブラリーの所望のメンバーを単離するための選択プロトコルは、ファージディスプレイ技術により代表されるように、当技術分野で公知である。糸状バクテリオファージの表面上にさまざまなペプチド配列がディスプレイされるような系(Scott and Smith (1990) Science, 249: 386)は、標的抗原に結合する特異的抗体フラグメントの選択および増幅をin vitroで行うための抗体フラグメント(およびそれをコードするヌクレオチド配列)のライブラリーを作製するのに有用であることが実証されている(McCafferty et al., WO 92/01047)。VH領域およびVL領域をコードするヌクレオチド配列は、それらを大腸菌の細胞膜周辺腔に誘導するリーダーシグナルをコードする遺伝子断片に結合され、その結果として、得られる抗体フラグメントは、典型的にはバクテリオファージコートタンパク質(たとえば、pIIIまたはpVIII)との融合体として、バクテリオファージの表面上にディスプレイされる。あるいはまた、抗体フラグメントは、λファージキャプシド(ファージ体)上に外部にディスプレイされる。ファージに基づくディスプレイ系の利点は、生体系であることから、選択されたライブラリーメンバーを含有するファージを細菌細胞中で増殖させることにより、選択されたライブラリーメンバーを簡単に増幅できる点である。さらに、ポリペプチドライブラリーメンバーをコードするヌクレオチド配列は、ファージベクターまたはファージミドベクターに含まれるので、配列決定、発現、および後続の遺伝子操作は、比較的容易である。
【0130】
バクテリオファージ抗体ディスプレイライブラリーおよびλファージ発現ライブラリーを構築する方法は、当技術分野で周知である(McCafferty et al. (1990) Nature, 348: 552;Kang et al. (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 88: 4363;Clackson et al. (1991) Nature, 352: 624;Lowman et al. (1991) Biochemistry, 30: 10832;Burton et al. (1991) Proc. Natl. Acad. Sci U.S.A., 88: 10134;Hoogenboom et al. (1991) Nucleic Acids Res., 19: 4133;Chang et al. (1991) J. Immunol., 147: 3610;Breitling et al. (1991) Gene, 104: 147;Marks et al. (1991) 上掲;Barbas et al. (1992) 上掲;Hawkins and Winter (1992) J. Immunol., 22: 867;Marks et al., 1992, J. Biol. Chem., 267: 16007;Lerner et al. (1992) Science, 258: 1313(参照により本明細書に組み入れられるものとする))。
【0131】
とくに有利な手法の1つは、ファージライブラリーの使用である(Huston et al., 1988, Proc. Natl. Acad. Sci U.S.A., 85: 5879-5883;Chaudhary et al. (1990) Proc. Natl. Acad. Sci U.S.A., 87: 1066-1070;McCafferty et al. (1990) 上掲;Clackson et al. (1991) Nature, 352: 624;Marks et al. (1991) J. Mol. Biol., 222: 581;Chiswell et al. (1992) Trends Biotech., 10: 80;Marks et al. (1992) J. Biol. Chem., 267)。バクテリオファージコートタンパク質上にディスプレイされるscFvライブラリーの種々の実施形態が記載されている。ファージディスプレイ法の改良についても、たとえば、WO96/06213およびWO92/01047(Medical Research Council et al.)ならびにWO97/08320(Morphosys)(参照により本明細書に組み入れられるものとする)に記載されるように、公知である。
【0132】
ポリペプチドのライブラリーを作製するための他の系では、ライブラリーメンバーをin vitro合成するために無細胞酵素機構を使用することが必要とされる。一方法では、RNA分子は、標的リガンドと対比した選択のラウンドとPCR増幅のラウンドとを交互に行うことにより選択される(Tuerk and Gold (1990) Science, 249: 505;Ellington and Szostak (1990) Nature, 346: 818)。類似の技術を用いて、所定のヒト転写因子に結合するDNA配列を同定することが可能である(Thiesen and Bach (1990) Nucleic Acids Res., 18: 3203;Beaudry and Joyce (1992) Science, 257: 635;WO92/05258およびWO92/14843)。同様に、大きなライブラリーを作製する方法としてin vitro翻訳を用いてポリペプチドを合成することが可能である。一般に安定化ポリソーム複合体を含むこれらの方法については、WO88/08453、WO90/05785、WO90/07003、WO91/02076、WO91/05058、およびWO92/02536にさらに記載されている。ファージに基づくものではない他の選択肢のディスプレイ系、たとえば、WO95/22625およびWO95/11922(Affymax)に開示されているものでは、選択のためにポリソームを用いてポリペプチドをディスプレイする。
【0133】
他のさらなるカテゴリーの技術では、遺伝子とその遺伝子産物との関連付けを可能にする人工区画内でレパートリーの選択を行うことが必要とされる。たとえば、望ましい遺伝子産物をコードする核酸を油中水型エマルジョンにより形成されたマイクロカプセル内で選択しうる選択系が、WO99/02671、WO00/40712、およびTawfik & Griffiths (1998) Nature Biotechnol 16(7), 652-6に記載されている。所望の活性を有する遺伝子産物をコードする遺伝因子は、マイクロカプセル内に区画化され、次に、マイクロカプセル内で転写および/または翻訳が行われてその対応する遺伝子産物(RNAまたはタンパク質)を産生する。続いて、所望の活性を有する遺伝子産物を産生する遺伝因子が選別される。この手法では、さまざまな手段で所望の活性を検出することにより、対象の遺伝子産物が選択される。
【0134】
ライブラリーの構築
選択を目的としたライブラリーは、たとえば以上に記載したように、当技術分野で公知の技術を用いて構築可能であるか、または供給業者から購入可能である。本発明に有用なライブラリーについては、たとえばWO99/20749に記載されている。ベクター系を選択して、対象のポリペプチドをコードする1種以上の核酸配列をライブラリーベクター中にクローニングした後、発現前に突然変異誘発を行うことによりクローン化分子内に多様性を生成することが可能である。あるいはまた、突然変異誘発ラウンドおよび追加の選択ラウンドの前に、上記のようにコードタンパク質を発現させて選択することが可能である。構造的に最適化されたポリペプチドをコードする核酸配列の突然変異誘発は、標準的分子法により行われる。とくに有用なのは、ポリメラーゼ連鎖反応、すなわちPCR(Mullis and Faloona (1987) Methods Enzymol., 155: 335(参照により本明細書に組み入れられるものとする))である。PCRは、対象の標的配列を増幅するために熱安定性DNA依存性DNAポリメラーゼにより触媒されるDNA複製の多重サイクルを使用するものであり、当技術分野で周知である。種々の抗体ライブラリーの構築については、Winter et al. (1994) Ann. Rev. Immunology 12, 433-55およびそこに引用されている参考文献で考察されている。
【0135】
PCRは、鋳型DNA(少なくとも1fg;より効果的には1〜1000ng)と少なくとも25pmolのオリゴヌクレオチドプライマーとを用いて行われる。プライマープールがきわめて不均一である場合、各配列はプールの分子のごく一部分により代表されるにすぎず、後続の増幅サイクルでは量が律速因子になるので、より多量のプライマーを使用することが有利なこともある。典型的な反応混合物は、25μlの全体積に対して、2μlのDNA、25pmolのオリゴヌクレオチドプライマー、2.5μlの10×PCRバッファー1(Perkin-Elmer, Foster City, CA)、0.4μlの1.25μM dNTP、0.15μl(または2.5単位)のTaq DNAポリメラーゼ(Perkin Elmer, Foster City, CA)、および脱イオン水を含む。ミネラルオイルで表面を覆って、PCRは、プログラム可能なサーマルサイクラーを用いて行われる。PCRサイクルの各ステップの時間および温度ならびにサイクル数は、有効なストリンジェンシー条件に基づいて調整される。アニーリングの温度およびタイミングは、プライマーを鋳型にアニーリングする際の期待される効率および許容しうるミスマッチの程度の両方により決定されるが、自明のことながら、核酸分子の増幅および突然変異誘発を同時に行う場合、少なくとも合成の第1ラウンドで、ミスマッチが必要とされる。プライマーアニーリング条件のストリンジェンシーを最適化する能力は、十分に標準的当業者の知識の範囲内にある。30℃〜72℃のアニーリング温度が使用される。鋳型分子の初期変性は、通常、92℃〜99℃で4分間行われ、続いて、変性(94〜99℃;15秒間〜1分間)とアニーリング(上記のように決定される温度;1〜2分間)と伸長(72℃;増幅産物の長さに応じて1〜5分間)とからなるサイクルが20〜40回行われる。最終伸長は、一般的には72℃で4分間であり、4℃の未確定(0〜24時間)のステップが続くこともある。
【0136】
i. 主鎖コンフォメーションの選択
免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーはすべて、それらのポリペプチド鎖に関して類似のフォールディングを共有する。たとえば、抗体はその一次配列に関してきわめて多様であるが、配列と結晶構造との比較により、予想に反して、抗体の6つの抗原結合性ループのうちの5つ(H1、H2、L1、L2、L3)は、限られた数の主鎖コンフォメーションすなわちカノニカル構造をとることが明らかにされている(Chothia and Lesk (1987) J. Mol. Biol., 196: 901;Chothia et al. (1989) Nature, 342: 877)。したがって、ループ長および主要残基の分析をすれば、大多数のヒト抗体で見いだされるH1、H2、L1、L2、およびL3の主鎖コンフォメーションを予測することが可能である(Chothia et al. (1992) J. Mol. Biol., 227: 799;Tomlinson et al. (1995) EMBO J., 14: 4628;Williams et al. (1996) J. Mol. Biol., 264: 220)。H3領域は、配列、長さ、および構造に関してはるかに多様であるが(Dセグメントの使用に基づく)、同様に、短いループ長に関して限られた数の主鎖コンフォメーションを形成し、この主鎖コンフォメーションは、ループ中および抗体フレームワーク中の主要位置における特定残基の長さおよび存在または残基のタイプに依存する(Martin et al. (1996) J. Mol. Biol., 263: 800;Shirai et al. (1996) FEBS Letters, 399: 1)。
【0137】
本発明に係るdAb自体は、ライブラリーの形態で提供可能である。本発明の一態様において、メンバーの主鎖コンフォメーションがわかるように特定のループ長および主要残基が選択されたdAbおよび/またはドメインのライブラリーがデザインされる。有利には、これらは、上記のように、非機能性である可能性を最小限に抑えるべく、天然に見いだされる免疫グロブリンスーパーファミリー分子の実際のコンフォメーションである。生殖系列V遺伝子セグメントは、抗体またはT細胞受容体のライブラリーの構築に好適な基本フレームワークの1つとして機能するが、他の配列もまた、有用である。変異が低頻度で起こる可能性があるので、少数の機能性メンバーは、その機能に影響を及ぼさない改変主鎖コンフォメーションを有する可能性がある。
【0138】
カノニカル構造理論はまた、リガンドによりコードされる異なる主鎖コンフォメーションの数を評価したり、リガンド配列に基づいて主鎖コンフォメーションを予測したり、多様化のために、カノニカル構造に影響を及ぼさない残基を選択したりするうえでも有用である。ヒトVκドメインにおいて、L1ループは、4つのカノニカル構造のうちの1つをとる可能性があり、L2ループは、単一のカノニカル構造を有し、かつヒトVκドメインの90%は、L3ループに関して4つもしくは5つのカノニカル構造のうちの1つをとることが知られているので(Tomlinson et al. (1995) 上掲)、Vκドメインだけでも、さまざまなカノニカル構造が組み合わされて、一連のさまざまな主鎖コンフォメーションを生成する可能性がある。Vλドメインが、L1、L2、およびL3ループに関してさまざまな一連のカノニカル構造をコードし、かつVκおよびVλドメインが、H1およびH2ループに関していくつかのカノニカル構造をコードしうるいずれかのVHドメインとペアを形成する可能性があることを考慮すると、これらの5つのループで観測されるカノニカル構造の組合せの数は、非常に大きい。このことは、広範にわたる結合特異性を形成するうえで主鎖コンフォメーションの多様性の生成が不可欠であることを暗示する。しかしながら、単一の既知の主鎖コンフォメーションに基づく抗体ライブラリーを構築することにより、予想に反して、実質的にすべての抗原を標的にするのに十分な多様性を生成するうえで主鎖コンフォメーションの多様性は必要でないことが判明した。さらに驚くべきことに、単一の主鎖コンフォメーションは、コンセンサス構造である必要はなく、天然に存在する単一のコンフォメーションをライブラリー全体のベースとして使用することが可能である。このため、好ましい態様において、本発明に係るdAbは、単一の既知の主鎖コンフォメーションを有する。
【0139】
選択される単一の主鎖コンフォメーションは、好ましくは、対象の免疫グロブリンスーパーファミリータイプの分子にごく普通にみられるものである。コンフォメーションは、かなりの数の天然に存在する分子がそれをとることが観測により確認される場合、ごく普通にみられるものである。したがって、本発明の好ましい態様において、免疫グロブリンドメインの各結合性ループに関してさまざまな主鎖コンフォメーションの天然の存在率が個別に考慮され、次に、さまざまなループに関して主鎖コンフォメーションの所望の組合せを有する天然に存在する可変ドメインが選択される。利用可能なものがない場合、最も近い等価なものを選択してもよい。所望の主鎖コンフォメーションをコードする生殖系列遺伝子セグメントを選択することにより、さまざまなループに関して主鎖コンフォメーションの所望の組合せを生成させることが好ましい。選択される生殖系列遺伝子セグメントは、天然で高頻度で発現されることがより好ましく、すべての天然の生殖系列遺伝子セグメントのうちでに最も高頻度で発現されることが最も好ましい。
【0140】
dAbまたはそのライブラリーをデザインする場合、6つの抗原結合性ループのそれぞれに関してさまざまな主鎖コンフォメーションの出現率を個別に考慮しうる。H1、H2、L1、L2、およびL3に関しては、天然に存在する分子の抗原結合性ループの20%〜100%がとる所与のコンフォメーションが選択される。典型的には、その観察される出現率は、35%超(すなわち、35%〜100%)であり、理想的には、50%超、さらには65%超である。H3ループの大多数は、カノニカル構造を有していないので、カノニカル構造を確実に呈するループのうちでごく普通にみられる主鎖コンフォメーションを選択することが好ましい。したがって、各ループに関して、天然のレパートリーで最も頻繁に観測されるコンフォメーションが選択される。ヒト抗体の場合、各ループに関して最も一般的なカノニカル構造(CS)は、次のとおりである:H1 - CS 1 (発現されるレパートリーの79%)、H2 - CS 3 (46%)、VκのL1 - CS 2 (39%)、L2 - CS 1 (100%)、VκのL3 - CS 1 (36%)(計算では、70:30のκ:λ比を仮定している、Hood et al. (1967) Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol., 48: 133)。カノニカル構造を有するH3ループに関しては、残基94〜残基101のCDR3長の塩橋を有する7つの残基(Kabat et al. (1991) Sequences of proteins of immunological interest, U.S. Department of Health and Human Services)が、最も多く見受けられるように思われる。このコンフォメーションを形成するのに必要なH3長と主要残基とを有する少なくとも16種のヒト抗体配列がEMBLデータライブラリー中に存在し、抗体モデリングの基礎として使用しうる少なくとも2種の結晶構造(2cgrおよび1tet)がタンパク質データバンク中に存在する。この組合せのカノニカル構造をコードする最も頻繁に発現される生殖系列遺伝子セグメントは、VHセグメント3-23(DP-47)、JHセグメントJH4b、VκセグメントO2/O12(DPK9)、およびJκセグメントJκ1である。VHセグメントDP45およびDP38もまた、好適である。したがって、これらのセグメントは、所望の単一の主鎖コンフォメーションを有するライブラリーを構築する基礎として組み合わせて使用されることが可能である。
【0141】
あるいはまた、各結合性ループに関して独立してさまざまな主鎖コンフォメーションの天然の存在率に基づいて単一の主鎖コンフォメーションを選択する代わりに、主鎖コンフォメーションの組合せの天然の存在率が、単一の主鎖コンフォメーションを選択する基礎として使用される。たとえば、抗体の場合、抗原結合性ループのうちの任意の2つ、3つ、4つ、5つに関して、または6つすべてに関して、カノニカル構造の組合せの天然の存在率を決定することが可能である。この際、選択されるコンフォメーションは、天然に存在する抗体にごく普通にみられるものであることが好ましく、天然のレパートリーに最も頻繁に観測されるものであることが最も好ましい。このため、ヒト抗体では、たとえば、5つの抗原結合性ループ(H1、H2、L1、L2、およびL3)の天然の組合せを考慮の対象とする場合、カノニカル構造の最大頻度の組合せが決定され、次に、単一の主鎖コンフォメーションを選択する基礎として、H3ループに関して最も一般的なコンフォメーションと組み合わされる。
【0142】
ii. カノニカル配列の多様化
いくつかの既知の主鎖コンフォメーションまたは好ましくは単一の既知の主鎖コンフォメーションを選択した場合、構造および/または機能の多様性を有するレパートリーを生成するために、分子の結合性部位を変化させることにより、本発明に係るdAbまたは本発明に使用するためのライブラリーを構築することが可能である。このことは、構造および/または機能に関して十分な多様性を有するように変異体を生成することにより、一連の活性を提供しうるようにすることを意味する。
【0143】
所望の多様性は、典型的には、選択された分子を1ヵ所以上の位置で変化させることにより生成される。変化させる位置は、ランダムに選択されうるかまたは好ましく選択される。次に、ランダム化を行って既存のアミノ酸を任意のアミノ酸または天然もしくは合成のその類似体で置き換えることにより変異を達成して、きわめて多数の変異体を作製するか、あるいは既存のアミノ酸を1種以上の既定の一部のアミノ酸で置き換えることにより変異を達成して、より限られた数の変異体を作製する。
【0144】
そのような多様性を導入する種々の方法が報告されている。エラープローンPCR(Hawkins et al. (1992) J. Mol. Biol., 226: 889)、化学的突然変異誘発(Deng et al. (1994) J. Biol. Chem., 269: 9533)、または細菌ミューテーター株(Low et al. (1996) J. Mol. Biol., 260: 359)を用いて、分子をコードする遺伝子中にランダム突然変異を導入することが可能である。選択された位置を突然変異させる方法もまた、当技術分野で周知であり、PCRを併用してまたは併用せずにミスマッチオリゴヌクレオチドまたは縮重オリゴヌクレオチドを使用することが含まれる。たとえば、突然変異を抗原結合性ループに標的化することにより、いくつかの合成抗体ライブラリーが作製されている。ヒト破傷風トキソイド結合性FabのH3領域をランダム化して一連の新しい結合特異性が生成されている(Barbas et al. (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89: 4457)。ランダムもしくはセミランダムなH3およびL3領域を生殖系列V遺伝子セグメントに追加して、突然変異されていないフレームワーク領域を有する大きいライブラリーが作製されている(Hoogenboom & Winter (1992) J. Mol. Biol., 227: 381;Barbas et al. (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89: 4457;Nissim et al. (1994) EMBO J., 13: 692;Griffiths et al. (1994) EMBO J., 13: 3245;De Kruif et al. (1995) J. Mol. Biol., 248: 97)。そのような多様化は、他方の抗原結合性ループの一部もしくは全部を含むように拡張されている(Crameri et al. (1996) Nature Med., 2: 100;Riechmann et al. (1995) Bio/Technology, 13: 475; Morphosys, WO97/08320, 上掲)。
【0145】
ループのランダム化によりH3だけに関して約1015個超の構造および他の5つのループに関しても同様に多数の変異体を生成できる可能性があるとはいえ、現在の形質転換技術を用いても、さらには無細胞系を用いても、すべての可能な組合せを発現するライブラリーの作製は実現できていない。たとえば、現在までに構築された最大のライブラリーのうちの1つでは、6×1010個の異なる抗体が作製されているが、これは、このデザインのライブラリーに関して可能な多様性のごく一部にすぎない(Griffiths et al. (1994), 上掲)。
【0146】
好ましい実施形態では、分子の所望の機能の生成または改変に直接関与する残基だけが多様化される。多くの分子では、機能は、標的に結合することであろう。したがって、分子の全体的パッキングまたは選択された主鎖コンフォメーションの保持にきわめて重要な残基の変化を回避しつつ、多様性を標的結合性部位に集中させなければならない。
【0147】
抗体ドメインに適用する際のカノニカル配列の多様化
抗体dAbの場合、標的に対する結合性部位は、ほとんどの場合、抗原結合性部位である。これらの残基は、ヒト抗体レパートリーではきわめて多様であり、高い識別能の抗体/抗原複合体の状態で接触することが知られている。たとえば、L2では、位置50および53は、天然に存在する抗体では多様であり、抗原との接触が観測されることが知られている。これとは対照的に、従来の手法では、Kabat et al. (1991, 上掲)により定義される対応する相補性決定領域(CDR1)のすべての残基(本発明に従って使用されるライブラリーで多様化されるのは2個であるのに対して約7個の残基)が多様化されることになろう。このことは、一連の抗原結合特異性を生成するのに必要な機能多様性に関して顕著な改良がなされることを表す。
【0148】
天然では、抗体多様性は、2つのプロセス(すなわち、ナイーブ一次レパートリーを生成する生殖系列V、D、およびJ遺伝子セグメントの体細胞組換え(いわゆる、生殖系列および結合部の多様性)ならびに得られた再配列V遺伝子の体細胞超突然変異(hypermutation))の結果である。ヒト抗体配列の分析の結果、一次レパートリーの多様性は、抗原結合性部位の中心に集中するが、体細胞超突然変異では、多様性は、抗原結合性部位の周縁部の領域(一次レパートリーでは高度に保存されている)に拡がることが明らかにされている(Tomlinson et al. (1996) J. Mol. Biol., 256: 813を参照されたい)。この補完性は、おそらく、配列空間を探索する効率的なストラテジーとして進化してきたものであろう。それは、見掛け上は抗体に特有なものであるが、他のポリペプチドレパートリーにも容易に適用可能である。変化させる残基は、標的に対して結合性部位を形成する残基のうちの一部である。所望により、選択中のさまざまな段階で、標的結合性部位の残基のうちのさまざまな部分(たとえば、オーバーラップ部分)が多様化される。
【0149】
抗体レパートリーの場合、初期「ナイーブ」レパートリーは、抗原結合性部位の残基のうちの全部ではなく一部が多様化された形で生成される。これとの関連で本明細書中で使用する場合、「ナイーブ」という用語は、所定の標的を有していない抗体分子を意味する。この分子は、免疫系が多種多様な抗原刺激によりまだチャレンジされていない胎児や新生児の個体にみられるように、免疫多様化を受けていない個体の免疫グロブリン遺伝子によりコードされるものに類似している。次に、このレパートリーは、一連の抗原またはエピトープに対して選択される。次に、必要であれば、初期レパートリーで多様化された領域の外部にさらなる多様性を導入することが可能である。この成熟レパートリーは、改変された機能、特異性、または親和性に関して選択可能である。
【0150】
本発明で使用するためのライブラリーを構築する際、選択された位置の多様化は、典型的には、いくつかの可能なアミノ酸(20種全部またはその一部)をその位置に組み込むことができるように、ポリペプチドの配列を規定するコード配列を変化させることにより、核酸レベルで達成される。IUPAC命名法を用いた場合、最も可変性の大きいコドンは、すべてのアミノ酸さらにはTAG停止コドンをコードするNNKである。所要の多様性を導入するために、好ましくは、NNKコドンが使用される。同一の目的を達成する他のコドンもまた有用であり、例としては、追加の停止コドンTGAおよびTAAの生成をもたらすNNNコドンが挙げられる。
【0151】
ヒト抗体の抗原結合性部位の側鎖多様性の特徴は、特定のアミノ酸残基を優先する顕著な偏りである。VH、Vκ、およびVλ領域のそれぞれにおける10ヵ所の最も多様性の大きい位置のアミノ酸組成を合計した場合、側鎖多様性の76%超は、わずか7種の異なる残基に由来するにすぎない。これらは、セリン(24%)、チロシン(14%)、アスパラギン(11%)、グリシン(9%)、アラニン(7%)、アスパラギン酸(6%)、およびトレオニン(6%)である。主鎖の柔軟性を提供しうる親水性残基および低分子残基へのこの偏りは、おそらく、広範にわたる抗原またはエピトープに結合する傾向を決定する表面の進化を反映するものであり、一次レパートリー中の抗体の所要の無差別性を説明するのに役立つであろう。
【0152】
このアミノ酸分布を模倣することが好ましいので、変化させる位置におけるアミノ酸分布は、好ましくは、抗体の抗原結合性部位に見られる分布を模倣する。一連の標的抗原に対して特定のポリペプチド(抗体ポリペプチドに限らない)の選択を可能にするアミノ酸置換のそのような偏りは、任意のポリペプチドレパートリーに容易に適用される。変化させる位置におけるアミノ酸分布を偏らせる種々の方法が存在する(たとえば、トリヌクレオチド突然変異誘発など、WO97/08320参照)。なかでも好ましい方法は、合成が容易であることから、通常の縮重コドンの使用である。縮重コドンのすべての組合せ(各位置において等しい比率で一重、二重、三重、および四重の縮重を有する)によりコードされるアミノ酸プロファイルを天然のアミノ酸使用頻度と比較することにより、最も代表的なコドンを計算することが可能である。コドン(AGT)(AGC)T、(AGT)(AGC)C、および(AGT)(AGC)(CT)(すなわち、IUPAC命名法を用いた場合、それぞれ、DVT、DVC、DVY)は、所望のアミノ酸プロファイルに最も近いコドンであり、それらは、22%のセリンおよび11%のチロシン、アスパラギン、グリシン、アラニン、アスパラギン酸、トレオニン、ならびにシステインをコードする。したがって、好ましくは、多様化される各位置において、DVT、DVC、またはDVYコドンのいずれかを用いて、ライブラリーが構築される。
【0153】
D. 本発明に係るdAbの特徴付け
本発明に係るdAbとその特異的抗原(カンジダ属の種の病原性因子)またはエピトープとの結合は、当業者の熟知するところであろうELISAなどの方法により試験可能である。好ましい実施形態では、結合は、モノクローナルファージELISAを用いて試験される。
【0154】
ファージELISAは、任意の好適な手順に従って実施可能である。代表的なプロトコルを以下に示す。
【0155】
選択の各ラウンドで生成されたファージ集団を、抗原またはエピトープへの結合に関してELISAによりスクリーニングすることにより、「ポリクロナール」ファージ抗体を同定することが可能である。次に、これらの集団に由来する単一の感染細菌コロニーのファージをELISAによりスクリーニングすることにより、「モノクローナル」ファージ抗体を同定することが可能である。また、抗原またはエピトープへの結合に関して可溶性抗体フラグメントをスクリーニングすることが望ましい。これもまた、たとえばC末端もしくはN末端のタグに対して試薬を用いてELISAにより実施可能である(たとえば、Winter et al. (1994) Ann. Rev. Immunology 12, 433-55およびそこに引用されている参考文献を参照されたい)。
【0156】
また、選択されたファージモノクローナル抗体の多様性は、PCR産物のゲル電気泳動(Marks et al. 1991, 上掲;Nissim et al. 1994 上掲)、プローブ付け(Tomlinson et al., 1992 J. Mol. Biol. 227, 776)、またはベクターDNAの配列決定により、評価可能である。
【0157】
E. 本発明に係るdAbを用いるカンジダ属の種の感染の治療
本発明に係る方法に従って選択されたdAbは、in vivoの治療用途および予防用途、in vitroおよびin vivoの診断用途、in vitroのアッセイ用途および試薬用途などに利用可能である。たとえば、dAbは、当業者に公知の方法に従って、ELISA技術のような抗体に基づくアッセイ技術で使用可能である。
【0158】
上記で触れたように、本発明に係るdAbは、診断、予防、および治療の手順に有用である。本発明に従って選択された単一ドメインエフェクター基抗体(dAb)は、ウェスタン分析および標準的免疫組織化学的手順によるin situタンパク質検出において診断上有用であり、これらの用途に使用する場合、選択されたレパートリーの抗体は、当技術分野で公知の技術に従って標識化可能である。そのほかに、そのような抗体ポリペプチドは、樹脂のようなクロマトグラフィー担体に複合化させた場合、アフィニティークロマトグラフィー手順で分取用として使用可能である。そのような技術はすべて、当業者に周知である。
【0159】
哺乳動物に投与するには、少なくとも90〜95%の均一性を有する実質的に純粋な本発明に係るdAbが好ましく、とくに哺乳動物がヒトである場合、医薬用途では、98〜99%もしくはそれ以上の均一性が最も好ましい。部分的にもしくは所望の均一度で精製した後、選択されたdAbは、診断および/もしくは治療(体外治療を含む)、またはアッセイ手順、免疫蛍光染色などの開発および実施に使用可能である(Lefkovite and Pernis, (1979 and 1981) Immunological Methods, Volumes I and II, Academic Press, NY)。
【0160】
本発明に係るdAbは、典型的には、個体において、カンジダ属の種の感染、特定的にはカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)の感染の予防、抑制、または治療に使用されるであろう。
【0161】
本出願において、「予防」という用語は、疾患の誘導前に防御組成物を投与することを包含する。「抑制」とは、疾患の誘導事象後かつ臨床出現前に組成物を投与することを意味する。「治療」は、疾患症状が顕在化した後に防御組成物を投与することを包含する。
【0162】
カンジダ属の種の感染の防御または治療に関してdAbをスクリーニングするために使用しうる動物モデル系は、入手可能であり、当業者の熟知するところであろう。使用されるいくつかのモデル系の詳細は、実施例に提供されている。カンジダ属の種の感染は、全身、粘膜、気管支、肺、爪下、口腔、または膣で起こりうる。本明細書に記載の本発明の好ましい実施形態では、1種以上の本発明に係るdAbは、カンジダ属の種による膣性もしくは全身性の感染、特定的には、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)による膣性もしくは全身性の感染を予防および/または治療するために使用される。
【0163】
本明細書に開示されているdAbは、そのin vivo血清中半減期を延長するように構成可能である。in vivo半減期の増大は、免疫グロブリン、とくに小サイズの抗体、なかでもとくにdAbのような小サイズの抗体フラグメントのin vivo適用に有用である。そのようなフラグメント(Fv、ジスルフィド結合Fv、Fab、scFv、dAb)は、身体から急速に排除され、臨床用途を著しく制限する可能性がある。
【0164】
dAbは、より大きい抗原結合性抗体フラグメントとしてまたはより大きい流体力学的サイズを有する抗体として構成可能である(たとえば、Fab、Fab'、F(ab)2、F(ab')2、IgG、scFvとして構成可能である)。dAbはまた、たとえば、ポリアルキレングリコール基(たとえば、ポリエチレングリコール(PEG)基、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール)、血清アルブミン、トランスフェリン、トランスフェリン受容体もしくは少なくともそのトランスフェリン結合性部分、または抗体Fc領域に結合させることにより、あるいは抗体ドメインにコンジュゲートさせることにより、より大きい流体力学的サイズを有するように構成可能である。いくつかの実施形態では、dAbは、PEG化される。好ましくは、PEG化dAbは、PEG化されてない同一のdAbと実質的に同一の親和性または結合活性でSAPおよびMPに結合する。たとえば、dAbは、約1000倍以下、好ましくは約100倍以下、より好ましくは約10倍以下で非PEG化形態のdAbの結合活性と異なる結合活性でまたは非PEG化形態と対比して実質的に不変の親和性でSAPおよびMPに結合するdAbを含むPEG化dAbでありうる。PEG化された単一可変ドメインおよびdAb、それらの好適な調製方法、PEG化された単一可変ドメインおよびdAbの単量体および多量体のin vivo半減期の増大、好適なPEG、PEGの好ましい流体力学的サイズ、ならびにPEG化された単一可変ドメインおよびdAbの単量体および多量体の好ましい流体力学的サイズに関しては、2003年6月30日出願のPCT/GB03/002804(WO 2004/081026)を参照されたい。上記で言及した部分を含めてPCT/GB03/002804(WO 2004/081026)の教示はすべて、参照により本明細書に組み入れられるものとする。
【0165】
本発明に係るdAb(たとえば、dAbの単量体および多量体)の流体力学的サイズは、当技術分野で周知の方法を用いて決定可能である。たとえば、ゲル濾過クロマトグラフィーを用いてdAbの流体力学的サイズを決定することが可能である。dAbの流体力学的サイズを決定するのに好適なゲル濾過マトリックス、たとえば、架橋型アガロースマトリックスは、周知であり、容易に入手可能である。
【0166】
dAb構成体のサイズ(たとえば、dAbに結合されたPEG部分のサイズ)は、所望の用途に応じて変化させることが可能である。たとえば、dAbを循環から離脱させて末梢組織に導入しようとする場合、血流からの血管外遊出を促進すべくリガンドの流体力学的サイズを小さく保つことが望ましい。あるいはまた、より長時間にわたりdAbを体循環中に残存させることが望まれる場合、dAbのサイズは、たとえば、Ig様タンパク質として構成することにより、または30〜60kDaのPEG部分(たとえば、線状もしくは分岐状のPEGである30〜40kDaのPEG、たとえば、20kDaのPEG部分を2つ追加する)を追加することにより、増大させることが可能である。dAb構成体のサイズは、たとえば、毒素への暴露の制御および/または毒性薬剤の副作用の低減のために、所望のin vivo血清中半減期が達成されるように調整可能である。
【0167】
dAbの流体力学的サイズおよびその血清中半減期はまた、本明細書に記載されるように、in vivoで半減期を増大させる抗原またはエピトープに結合する結合性ドメイン(たとえば、抗体または抗体フラグメント)にdAbをコンジュゲートまたは結合させることにより、増大させることも可能である。たとえば、dAbは、抗血清アルブミンまたは抗新生児Fc受容体の抗体または抗体フラグメント、たとえば、抗SAもしくは抗新生児Fc受容体のdAb、Fab、Fab'、もしくはscFv、または抗SA抗体もしくは抗新生児Fc受容体抗体にコンジュゲートまたは結合させることが可能である。
【0168】
本発明に係るリガンドに使用するのに好適なアルブミン、アルブミン断片、またはアルブミン変異体の例については、WO 2005/077042A2(その全体が参照により本明細書に組み入れられるものとする)に記載されている。特定的には、以下のアルブミン、アルブミン断片、またはアルブミン変異体を本発明に使用することが可能である:
・ 配列番号1(WO 2005/077042A2に開示されている配列(この配列は、参照により本開示に明示的に組み入れられるものとする));
・ WO 2005/077042A2中の配列番号1のアミノ酸1〜387を含むかもしくはそれからなるアルブミン断片または変異体;
・ 次のものからなる群から選択されるアミノ酸配列を含むアルブミンまたはその断片もしくは変異体:(a)WO 2005/077042A2中の配列番号1のアミノ酸54〜61;(b)WO 2005/077042A2中の配列番号1のアミノ酸76〜89;(c)WO 2005/077042A2中の配列番号1のアミノ酸92〜100;(d)WO 2005/077042A2中の配列番号1のアミノ酸170〜176;(e)WO 2005/077042A2中の配列番号1のアミノ酸247〜252;(f)WO 2005/077042A2中の配列番号1のアミノ酸266〜277;(g)WO 2005/077042A2中の配列番号1のアミノ酸280〜288;(h)WO 2005/077042A2中の配列番号1のアミノ酸362〜368;(i)WO 2005/077042A2中の配列番号1のアミノ酸439〜447;(j)WO 2005/077042A2中の配列番号1のアミノ酸462〜475;(k)WO 2005/077042A2中の配列番号1のアミノ酸478〜486;および(l)WO 2005/077042A2中の配列番号1のアミノ酸560〜566。
【0169】
本発明に係るdAb組成物に使用するのに好適なアルブミン、断片、および類似体のさらなる例については、WO 03/076567A2(その全体が参照により本明細書に組み入れられるものとする)に記載されている。特定的には、以下のアルブミン、断片、または変異体を本発明に使用することが可能である:
・ WO 03/076567A2のたとえば図3に記載されるようなヒト血清アルブミン(この配列情報は、参照により本開示に明示的に組み入れられるものとする);
・ 66,500の式分子量を有する585個のアミノ酸の単一非グリコシル化ポリペプチド鎖からなるヒト血清アルブミン(HA)(Meloun, et al, FEBS Letters 58:136 (1975);Behrens, et al, Fed. Proc. 34:591 (1975);Lawn, et al, Nucleic Acids Research 9:6102-6114 (1981);Minghetti, et al, J. Biol. Chem. 261:6747 (1986)を参照されたい);
・ Weitkamp, et al, Ann. Hum. Genet. 37:219 (1973)に記載されるようなアルブミンの多型変異体または類似体または断片;
・ EP 322094に記載されるようなアルブミン断片または変異体、たとえば、HA(1-373)、HA(1-388)、HA(1-389)、HA(1-369)、およびHA(1-419)、ならびに断片1-369〜1-419;
・ EP 399666に記載されるようなアルブミン断片または変異体、たとえば、HA(1-177)およびHA(1-200)ならびに断片HA(1-X)、ただし、Xは、178〜199の任意の数である。
【0170】
(1つ以上の)半減期延長部分(たとえば、アルブミン、トランスフェリン、ならびにそれらの断片および類似体)を本発明に係るdAbで使用する場合、任意の好適な方法を用いて、たとえば、dAbに直接融合することにより、たとえば、融合タンパク質をコードする単一ヌクレオチド構築物を用いることにより、dAbにコンジュゲートさせることが可能である。ただし、この融合タンパク質は、細胞表面標的結合性部分のN末端側もしくはC末端側に位置する半減期延長部分を有する単一ポリペプチド鎖としてコードされる。あるいはまた、dAb間でペプチドリンカーを用いることにより、たとえば、WO 03/076567A2またはWO 2004/003019(これらのリンカーの開示は、本発明で使用するための例を提供すべく参照により本開示に組み入れられるものとする)に記載されるようなペプチドリンカーを用いることにより、コンジュゲーションを達成することが可能である。
【0171】
in vivoで血清中半減期を増大させるポリペプチドは、典型的には、in vivoで天然に存在するポリペプチドであり、かつ生物(たとえばヒト)から不要な物質を除去する内在性メカニズムによる分解または除去に耐えるポリペプチドである。たとえば、in vivoで血清中半減期を増大させるポリペプチドは、細胞外マトリックスに由来するタンパク質、血液中に見いだされるタンパク質、血液脳関門もしくは神経組織に見いだされるタンパク質、腎臓、肝臓、肺、心臓、皮膚、もしくは骨に局在するタンパク質、ストレスタンパク質、疾患特異的タンパク質、またはFc輸送に関与するタンパク質から選択可能である。
【0172】
in vivoで血清中半減期を増大させる好適なポリペプチドとしては、たとえば、トランスフェリン受容体特異的リガンド-神経医薬剤融合タンパク質(米国特許第5,977,307号(その教示は、参照により本明細書に組み入れられるものとする)を参照されたい)、脳毛細血管内皮細胞受容体、トランスフェリン、トランスフェリン受容体(たとえば、可溶性トランスフェリン受容体)、インスリン、インスリン様増殖因子1(IGF 1)受容体、インスリン様増殖因子2(IGF 2)受容体、インスリン受容体、第X血液凝固因子、α1-アンチトリプシンおよびHNF 1αが挙げられる。同様に、血清中半減期を増大させる好適なポリペプチドとしては、α-1糖タンパク質(オロソムコイド;AAG)、α-1アンチキモトリプシン(ACT)、α-1ミクログロブリン(プロテインHC;AIM)、アンチトロンビンIII(AT III)、アポリポタンパク質A-1(アポA-1)、アポリポタンパク質B(アポB)、セルロプラスミン(Cp)、補体成分C3(C3)、補体成分C4(C4)、C1エステラーゼ阻害剤(C1 INH)、C反応性タンパク質(CRP)、フェリチン(FER)、ヘモペキシン(HPX)、リポタンパク質(a)(Lp(a))、マンノース結合性タンパク質(MBP)、ミオグロビン(Myo)、プレアルブミン(トランスチレチン;PAL)、レチノール結合性タンパク質(RBP)、およびリウマチ因子(RF)が挙げられる。
【0173】
細胞外マトリックスに由来する好適なタンパク質としては、たとえば、コラーゲン、ラミニン、インテグリン、およびフィブロネクチンが挙げられる。コラーゲンは、細胞外マトリックスの主要なタンパク質である。約15種類のコラーゲン分子が現在知られており、身体のさまざまな部分に見いだされる。例としては、骨、皮膚、腱、靭帯、角膜、および内部器官に見いだされるI型コラーゲン(生体コラーゲンの90%を占める)、または軟骨、椎間板、脊索、および眼の硝子体液に見いだされるII型コラーゲンが挙げられる。
【0174】
血液に由来する好適なタンパク質としては、たとえば、血漿タンパク質(たとえば、フィブリン、α-2ミクログロブリン、血清アルブミン、フィブリノーゲン(たとえば、フィブリノーゲンA、フィブリノーゲンB)、血清アミロイドタンパク質A、ハプトグロビン、プロフィリン、ユビキチン、ウテログロブリン、およびβ-2-ミクログロブリン)、酵素および酵素阻害剤(たとえば、プラスミノーゲン、リゾチーム、シスタチンC、α-1-アンチトリプシン、および膵臓トリプシン阻害剤)、免疫系のタンパク質、たとえば、免疫グロブリンタンパク質(たとえば、IgA、IgD、IgE、IgG、IgM、免疫グロブリン軽鎖(κ/λ))、輸送タンパク質(たとえば、レチノール結合性タンパク質、α-1ミクログロブリン)、デフェンシン(たとえば、βデフェンシン1、好中球デフェンシン1、好中球デフェンシン2、および好中球デフェンシン3)などが挙げられる。
【0175】
血液脳関門または神経組織に見いだされる好適なタンパク質としては、たとえば、メラノコルチン受容体、ミエリン、アスコルビン酸トランスポーターなどが挙げられる。
【0176】
同様に、in vivoで血清中半減期を増大させる好適なポリペプチドとしては、腎臓に局在するタンパク質(たとえば、ポリシスチン、IV型コラーゲン、有機陰イオントランスポーターK1、ハイマン(Heymann)抗原)、肝臓に局在するタンパク質(たとえば、アルコールデヒドロゲナーゼ、G250)、肺に局在するタンパク質(たとえば、IgAに結合する分泌成分)、心臓に局在するタンパク質(たとえば、拡張型心筋症に関連するHSP 27)、皮膚に局在するタンパク質(たとえば、ケラチン)、骨特異的タンパク質、たとえば、造骨活性を示すタンパク質のトランスフォーミング増殖因子βスーパーファミリーの一部である形態形成タンパク質(BMP)(たとえば、BMP-2、BMP-4、BMP-5、BMP-6、BMP-7、BMP-8)、腫瘍特異的タンパク質(たとえば、トロホブラスト抗原、ハーセプチン受容体、エストロゲン受容体、カテプシン(たとえば、肝臓や脾臓に見いだしうるカテプシンB))が挙げられる。
【0177】
好適な疾患特異的タンパク質としては、たとえば、活性化T細胞上にのみ発現される抗原、たとえば、LAG-3(リンパ球活性化遺伝子)、オステオプロテゲリンリガンド(OPGL;Nature 402, 304-309 (1999)を参照されたい)、OX40(活性化T細胞上で発現され、かつヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV-I)産生細胞内で特異的にアップレギュレートされるTNF受容体ファミリーのメンバー;Immunol. 165 (l):263-70 (2000)を参照されたい)が挙げられる。同様に、好適な疾患特異的タンパク質としては、たとえば、メタロプロテアーゼ(関節炎/癌に関連する)、たとえば、ショウジョウバエCG6512、ヒトパラプレギン、ヒトFtsH、ヒトAFG3L2、ネズミftsH;ならびに血管新生増殖因子、たとえば、酸性線維芽細胞増殖因子(FGF-1)、塩基性線維芽細胞増殖因子(FGF-2)、血管内皮増殖因子/血管透過性因子(VEGF/VPF)、トランスフォーミング増殖因子-α(TGFα)、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、アンギオゲニン、インターロイキン-3(IL-3)、インターロイキン-8(IL-8)、血小板由来内皮増殖因子(PD-ECGF)、胎盤増殖因子(P1GF)、ミッドカイン血小板由来増殖因子-BB(PDGF)、およびフラクタルカインが挙げられる。
【0178】
同様に、in vivoで血清中半減期を増大させる好適なポリペプチドとしては、熱ショックタンパク質(HSP)のようなストレスタンパク質が挙げられる。HSPは、通常、細胞内に見いだされる。細胞外に見いだされる場合、それは、細胞が死滅して内容物を溢出したことを示す指標である。外傷、疾患、または損傷の結果として細胞外HSPが免疫系からの応答を開始させた場合、この非プログラム細胞死(壊死)が起こる。細胞外HSPに結合させることにより、本発明に係る組成物を疾患部位に局在化させることが可能である。
【0179】
Fc輸送に関与する好適なタンパク質としては、たとえば、ブランベル(Brambell)受容体(FcRBとしても知られる)が挙げられる。このFc受容体は、2つの機能を有し、いずれの機能も、潜在的に送達に有用である。これらの機能は、(1)胎盤を介して母体から子供にIgGを輸送すること、(2)IgGを分解から保護してその血清中半減期を延長することである。受容体は、エンドソームからIgGを再循環させると考えられる(Holliger et al, Nat Biotechnol 15(7):632-6 (1997)を参照されたい)。
【0180】
dAb半減期の薬動学的分析および測定の方法については、当業者の熟知するところであろう。詳細は、Kenneth, A et al: Chemical Stability of Pharmaceuticals: A Handbook for Pharmacists and in Peters et al, Pharmacokinetic analysis: A Practical Approach (1996)に見いだしうる。tαおよびtβ半減期ならびに曲線下面積(AUC)のような薬動学的パラメータが記載されている"Pharmacokinetics", M Gibaldi & D Perron, Marcel Dekker, 第2版 (1982)も参照されたい。
【0181】
一般的には、dAbは、精製された形態で薬理学的に適切な担体と一緒に利用されるであろう。典型的には、こうした担体としては、水性もしくはアルコール性/水性の溶液、エマルジョン、またはサスペンジョンが挙げられ、いずれも、生理食塩水および/または緩衝化媒体を含む。非経口ビヒクルとしては、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースと塩化ナトリウム、および乳酸加リンゲルが挙げられる。ポリペプチド複合体を懸濁状態に保持することが必要な場合に好適な生理学的に許容される佐剤は、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、およびアルギネートのような増粘剤から選択可能である。
【0182】
静脈内ビヒクルとしては、液体および栄養素の補充液ならびに電解質補充液、たとえば、リンゲルデキストロースをベースとする補充液が挙げられる。保存剤および他の添加剤、たとえば、抗微生物剤、抗酸化剤、キレート化剤、および不活性ガスもまた、存在させてもよい(Mack (1982) Remington's Pharmaceutical Sciences, 第16版)。
【0183】
本発明に係るdAbは、個別に投与される組成物としてまたは他の薬剤と併用して使用可能である。こうした薬剤としては、種々の免疫療法剤、たとえば、シクロスポリン、メトトレキセート、アドリアマイシン、またはシスプラチナム、およびイムノトキシンが挙げられる。医薬組成物は、本発明に係るdAbと併用された種々の細胞傷害剤もしくは他の薬剤の「カクテル」を含みうるか、さらにはさまざまな特異性を有する本発明に係るdAbの組合せを含みうる。
【0184】
本発明に係る医薬組成物の投与経路は、当業者に一般に知られる経路のいずれかでありうる。限定されるものではないが免疫療法などの療法では、標準的技術に基づいて本発明に係るdAbおよび組成物を任意の患者に投与することが可能である。投与は、任意の適切な形態で、たとえば、非経口的に、静脈内に、筋肉内に、腹腔内に、経皮的に、肺経路を介して、または同様に適切には、カテーテルを用いて直接注入することにより、行いうる。用量および投与頻度は、患者の年齢、性別、および病状、他の薬剤の併行投与、禁忌、ならびに臨床医により考慮される他のパラメータに依存するであろう。
【0185】
本発明の好ましい実施形態では、本明細書に記載の治療用組成物は、局所的もしくは全身的のいずれかにより投与される。
【0186】
本発明の好ましい実施形態では、カンジダ症を患っている患者を治療するためのdAbを含む医薬組成物の投与としては、ある時間にわたる持続注入または単回用量投与もしくはボーラス投与が挙げられる。さらに、単回用量投与もしくはボーラス投与の後、第2のボーラス用量を投与しうるかまたは持続注入を施しうると考えられる。
【0187】
本発明に係るdAbは、保存のために凍結乾燥して使用前に好適な担体中に再調製することが可能である。この技術は、従来の免疫グロブリンを用いて有効であることが明らかにされおり、当技術分野で公知の凍結乾燥および再調製の技術が利用可能である。当業者であればわかるであろうが、凍結乾燥および再調製は、さまざまな程度で抗体活性の損失を招く可能性があるので(たとえば、従来の免疫グロブリンを用いた場合、IgM抗体は、IgG抗体よりも大きい活性損失を有する傾向がある)、補償のために使用レベルを上方に調整しなければならないこともある。
【0188】
dAbまたはそのカクテルを含有する組成物は、予防処置および/または治療処置のために投与することが可能である。特定の治療用途において、選択された細胞の集団の少なくとも部分的な阻害、抑制、調節、死滅、またはなんらかの他の測定可能なパラメータを達成するための適正量は、「治療上有効な用量」として定義される。この用量を達成するために必要とされる量は、疾患の重症度および患者自身の免疫系の一般的状態に依存するであろうが、一般的には、選択されたdAbが体重1キログラムあたり0.005〜5.0mgの範囲内であり、0.05〜2.0mg/kg/回の用量がより一般に使用される。予防用途では、dAbまたはそのカクテルを含有する組成物は、類似のもしくはわずかに少ない用量で投与可能である。
【0189】
本発明に係るdAbまたはそのカクテルを含有する組成物は、哺乳動物において、選択された標的細胞集団の変化、不活性化、死滅、または除去を支援するために、予防および治療の場で利用可能である。そのほかに、本明細書に記載のdAbは、選択的に標的細胞集団を死滅させたり、枯渇させたり、さもなければ不均一細胞集合体から効果的に除去したりするために、体外もしくはin vitroで使用可能である。哺乳動物に由来する血液は、選択された抗体、細胞表面受容体、またはそれらの結合性タンパク質と体外で組み合わせることにより、望ましくない細胞を死滅させるかさもなければ標準的技術に基づいて血液から除去して哺乳動物に戻すようにすることが可能である。
【実施例】
【0190】
以下の実施例において、単に例示することだけを目的として、本発明についてさらに説明する。
【0191】
実施例1: 材料および方法
微生物および増殖条件
この試験全体を通して、一般的な実験用の酵母カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)を使用した。しかしながら、トロピカリス(tropicalis)、グラブラータ(glabrata)、クルセイ(krusei)、ノルベゲンシス(norvegensis)、またはインコンスピクア(inconspicua)のような他の酵母の予防または治療に本発明を使用しうることが意図される。
【0192】
この試験全体を通してカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)菌株SA40およびAIDS68を使用した。SA40は、フルコナゾールおよび他のトリアゾール薬剤に対して十分に感受性があったが、菌株AIDS68は、フルコナゾール耐性(すなわち、NCLLS法により規定したときにMIC>64μg/ml)としてAIDS患者から単離された。両菌株は、28℃において、酵母-ペプトン-デキストロース培地(YPD;1%酵母抽出物、2%バクトペプトン、2%グルコース、すべてw/v)、または酵母窒素源培地(YNB;2%グルコース、0.17%酵母窒素源(アミノ酸および硫酸アンモニウムを含まない)、0.5%硫酸アンモニウム、w/v)、またはウインゲ(Winge)培地(0.3%酵母抽出物、0.2%グルコース)、またはSDB培地(1%バクトペプトン、2%デキストロース)で慣例に従って増殖させた。培地は、すべて2%寒天で固化させた。
【0193】
静止期細胞を水で2×108細胞/mlに希釈し、199培地、リー(Lee)培地、スパイダー(Spider)培地、および血清培地のプレート上に1×106個の細胞をスポッティングし、そしてそれらを37℃で7日間インキュベートすることにより、寒天固化培地上で糸形成(菌糸形成)を行った。既に報告されているように、固形199培地(M199、カタログ番号31100-019、Invitrogen Corporation, Carlsbad, CA.)を150mM Tris(pH7)で緩衝化した(Sharkey, L. L., et al., 1999. J Bacteriol 181:5273-9)。既に報告されているように、固形のスパイダー(Spider)培地、血清培地、および改変リー(Lee)培地を調製した(Liu, H., J., et al., 1994. Science 266:1723-6)。
【0194】
予備加温されたブロス中に108細胞/mlの密度で静止期細胞を接種した後、M199培地中、改変リー(Lee)培地中、スパイダー(Spider)培地中、および血清培地中、37℃で、発芽管形成を評価した。同一の培地中、28℃で、陰性対照をインキュベートした。
【0195】
化学物質および抗生物質はすべて、Roche Diagnostic(Perkin Elmer Roche, Branchburg, NJ.)製およびSigma-Aldrich(Milano, Italy)製であった。微生物学用粉末(M199を除く)は、Becton Dickinson(Becton Dickinson & Co., Sparks, MD)製であった。
【0196】
組換えタンパク質の生成
他で詳述されているように、エノラーゼおよびMP65を分子クローニングするために、プラスミドpRLV126およびpRLV130を使用した(La Valle, R., S. et al., 2000. Infect Immun 68:6777-84; Sandini, S., et al., 2002. Med Mycol 40:471-8)。
【0197】
大腸菌においてCaMP65の成熟形をクローニングするために、Ca69およびCa65オリゴヌクレオチドを用いることにより、CaMP65の分泌N末端配列から停止コドンまでの範囲をカバーする1200bpのDNA断片を増幅した。BamHIおよびHindIIIで消化した後、pDS56-RBSIIの対応する部位にPCR産物をクローニングしてpRLV148を得た。
【0198】
プロテイナーゼSAP2コード配列を分子クローニングするために、Ca70およびCa71オリゴヌクレオチドを用いることにより、全長SAP2コード配列を増幅した。BamHIおよびPstIで部分消化した後、SAP2の成熟形をpDS56-RBSIIの対応する部位にクローニングしてpRLV143を得た。
【表1】

【0199】
使用前、pRLV143およびpRLV148のすべてのDNAインサートの配列決定を行って既知の遺伝子との相同性を確認した。わずかな差異が観測されたが、それらはいずれも、コードされた産物にアミノ酸変化を与えるものではない。
【0200】
組換えC.アルビカンス(C. albicans)タンパク質の発現および精製
lacリプレッサー産生pUHA1プラスミドを有する大腸菌M15により組換えタンパク質の発現を行った(Hochuli, et al., 1988. J Chromatogr., 444:293-302)。0.7のO.D.600を有する培養物に1mMの最終濃度でイソプロピル-β-D-チオ-ガラクトピラノシド(IPTG;Boehringer)を添加することにより、カナマイシンおよびアンピシリンを含有するLB培地中で誘導を行い、続いて、37℃でさらに5時間インキュベートした。製造業者の使用説明書(Qiagen;変性条件)に従ってニッケルキレートアフィニティクロマトグラフィーにより組換え6×hisタグ付きタンパク質を精製した。精製ポリペプチドを含有する画分をプールし、3倍体積の無水エタノールを用いて沈殿させ、水中に再懸濁させ、そして-20℃で貯蔵した。
【0201】
組換えC.アルビカンス(C. albicans)タンパク質の再フォールディング
サンプルを各尿素濃度で6時間インキュベートすることで、4℃においてPBS中の漸減濃度の尿素(4M、2M、1M、0.5M)で透析することにより、8M尿素に溶解された精製タンパク質を再フォールディングさせ、続いて、PBS(Sigma-Aldrich)(10mMリン酸バッファー;2.7mM KCl;137mM NaCl;pH7.4)で最終透析を行った。
【0202】
ファージディスプレイdAbライブラリーの作製
dAbファージライブラリーは、VH(V3-23[遺伝子座]DP47[V Base登録]およびJH4b)ならびにVL(012/02[遺伝子座]DPκ9[V Base登録]およびJκ1)に対して単一のヒト抗体フレームワークをベースとして、タンパク質が既知の分子構造で抗原と接触することが知られおりかつ成熟ヒトレパートリー中で天然で多様化されている位置においてアミノ酸側鎖の多様性を生成するように、DNAヌクレオチド多様化を用いて多様性が組み込まれたものであった。ファージベクターpDOM4(fdファージゲノムをベースとし、したがって、選択プロセスの際に使用される感染性ファージ粒子を生成するのに必要なファージ遺伝子をすべて含有する)にdAb可変ドメインをクローニングした。
【0203】
ファージディスプレイによるdAbの選択
マキシソープ・イムノTMチューブ(Maxisorp ImmunoTM Tube)イムノチューブ(Nunc)上に静的にコーティングされたMP65およびSAP2に対して選択を行った。BupH炭酸-重炭酸バッファー(0.2M炭酸-重炭酸バッファー、pH9.4)(Perbio, UK)中10μg/mlの両抗原4mlを用いてイムノチューブに4℃で一晩コーティングした。続いて、室温で1時間かけて2%脱脂乳粉末を含有するPBS(PBSM)でイムノチューブをブロッキングし、そしてPBSで3回洗浄した。50rpmで回転させることにより、抗原コーティング付きチューブ中、室温(RT)で、全体積1mlの2% PBSM中の各dAbライブラリーからの約1×1011個のファージを1時間インキュベートした。ラウンド1の選択で、0.1%Tween-20(Sigma-Aldrich)が添加されたPBS(PBST)で10回洗浄し、かつPBSで10回洗浄した後(ラウンド2および3の選択ではそれぞれ20回の洗浄)、結合されたファージを、50rpmで回転させながら室温で10分間かけて、0.1mM CaCl2(Sigma-Aldrich)が添加された1mg/mlトリプシン(Sigma-Aldrich)を含有する500μLのPBSで溶出させた。溶出されたファージを含有するトリプシン溶液を回収し、250μlを37℃で30分間かけて1.75mlの対数期大腸菌TG1細胞に感染させた。15μg/mlのテトラサイクリン(Sigma-Aldrich)が添加された2×TYE寒天プレート(1リットルの水中、15gバクトアガー(Bacto-Agar)、8g NaCl、10gトリプトン、5g酵母抽出物)上で、ライブラリープレーティングおよび逐次対数希釈(ファージ力価に関して)を行った。後続の選択ラウンドでは、20%のグリセロール(Sigma-Aldrich)が添加された2mlの2×TY(1リットルの水中、16gトリプトン、10g酵母抽出物、および5g NaCl)培地中に掻き取ることにより増殖プレートから細胞を回収し、そのうちの50μlを用いて、ファージ増幅のために37℃で50mlの2×TYE-Tetに接種した。
【0204】
所望の回数の選択ラウンド(典型的には2〜3回)の後、NEB3バッファー(1μg/ml BSA、100mM NaCl、50mM Tris-HCl、10mM MgCl2、1mMジチオトレイトール、pH7.9、25℃)中でSalIおよびNotI(NEB)制限酵素を用いて所望の選択産物からの20μgの精製(QIAgen Midiprep)dAbファージDNAを消化することにより、富化されたdAb遺伝子を回収した。切り出されたdAb遺伝子を150Vで1時間かけてTBE(Sigma-Aldrich)(44.5mM Tris-ホウ酸および1mM EDTA、pH8.3)中の1%アガロース(Sigma-Aldrich)ゲルで電気泳動した。電気泳動の後、dAb遺伝子を切り出し、QIAgenゲル精製キット(QIAgen)を用いて精製した。次に、室温で1時間かけてライゲーションバッファー(50mM Tris-HCl、10mM MgCl2、1mM ATP、10mMジチオトレイトール、25μg/ml BSA、pH7.5、25℃)中のT4 DNAリガーゼ(New England Biolabs)を用いて100ngの精製済み消化dAb遺伝子を400ngのSalI/NotI消化可溶性発現ベクターとライゲーションした。3μlのライゲーション産物を用いて50μlのエレクトロコンピテント大腸菌HB2151に形質転換し(200Ω、25μFd、2.5kV、0.2cmギャップキュベット)、所望の量の形質転換細胞を5%グルコースおよび50μg/mlカルベニシリン(Sigma-Aldrich)が添加された寒天プレート上にプレーティングし、続いて、37℃で一晩インキュベートした。
【0205】
ELISAによる特異的dAb結合分子のスクリーニング
MP65結合性およびSAP2結合性のdAbに関して新たな大腸菌HB2151クローンをELISAにより分析した。37℃において250rpmで振盪しながら96ウェルマイクロタイタープレート(Corning)中の50μg/mlカルベニシリン、0.1%グルコースを含有する200μlの2×TY中で個々のクローンを6時間増殖させ、1mMの最終濃度のIPTGで誘導し、30℃/250rpmでインキュベーションを一晩継続し、可溶性dAbを発現させた。室温において870×gでプレートを10分間遠心分離し、次のようにELISAにより上清を分析した(指定がないかぎり、体積はすべて50μl/ウェルであった)。4℃で一晩かけてBupH炭酸-重炭酸バッファー中の1μg/mlのMP65またはSAP2で96ウェルELISAプレート(Nunc Maxisorp)にコーティングを施し、次に、PBST中に浸漬することにより3回洗浄した。次に、2%(v/v)Tween-20が添加された200μl/ウェルのPBSでプレートを室温で1時間かけてブロッキングし、次に、PBSTで3回洗浄した。一晩培養物から得た25μlの上清をPBSTで1:1希釈して各ウェル中に添加し、室温で1時間インキュベートした。PBSTで3回洗浄した後、結合されたSAP2特異的dAbをPBST中の1:2000希釈のプロテインA西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲートと共に室温で1時間インキュベートした。一方、1:2000希釈のマウス9E10抗体(抗myc, Sigma-Aldrich, Cat No M5546)を用いて、MP65に対して選択されたdAbを、PBST中、室温で1時間かけて検出し、PBSTで3回洗浄し、次に、PBST中の1:2000希釈の抗マウスFc特異的西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲート(Sigma-Aldrich、カタログ番号A0168)を添加し、室温で1時間インキュベートした。適切な検出リガンドと共にインキュベートした後、SAP2およびMP65の両アッセイ系をPBSTで3回洗浄し、続いて、PBSで3回洗浄した。次に、50μl/ウェルのTMB基質(SureBlue, KPL, MD. USA)を添加することにより、すべてのプレートを発色させた。対照ウェルと比べて十分なシグナルが現れるまで数分間かけて反応系を発色させ、次に、100μl/ウェルの1M HClを添加することにより、反応を停止させた。ビクター2(Victor2)マイクロタイタープレートリーダー(Perkin Elmer)を用いて450nmで吸光度を読み取った。
【0206】
dAbタンパク質の発現および精製
それぞれの可溶性dAb ELISA陽性クローンに対応する個別の新たなコロニーを50μg/mlカルベニシリンおよび5%グルコースが添加された5mlの2×TYに接種し、250rpmで振盪しながら37℃で一晩インキュベートした。5mlのこの培養物を用いて500mlの新たな予備加温された培地(50μg/mlカルベニシリンおよび0.1%グルコースが添加された2×TY)に接種し、OD600が0.8に達するまで250rpmで振盪しながら37℃でインキュベートし、この時点で1mMの最終濃度になるようにIPTGを添加することにより培養物を誘導し、250rpmで振盪しながら30℃で一晩インキュベートした。次に、3450×gで10分間遠心分離することにより細胞をペレット化し、得られた清澄化上清を0.45μm滅菌フィルターに通して濾過した。次に、50rpmで回転させることにより、室温で1時間かけて50mlのこの上清をVL dAbの場合には200μlのプロテインL-セファロース(Sigma-Aldrich)と、VH dAbの場合にはプロテインAストリームライン(Protein-A Streamline)(Amersham Pharmacia)と混合した。220×gで1分間遠心分離することにより樹脂を回収し、続いて、96ウェル濾紙プレート(Whatman)を用いてPBS中の1mlの0.5M NaClで2回、1mlのPBSで2回洗浄し、次に、210μlの0.1Mグリシン(pH2.0)でdAbを溶出させ、そして40μlの1M Tris-HCl(pH8.0)を添加することにより中和した。MESバッファー中の12%ニューページ(NuPAGE)ビス-トリスゲル泳動(ノベックス(Novex)ゲルシステム、Invitrogen)を用いて還元性条件下で行われるSDS-PAGEにより、dAbの純度を決定した。ゲルをクーマシー(Coomassie)ブルー(シンプリー・ブルー・セーフステイン(Simply Blue Safestain)、Invitrogen)で染色した。dAbサンプルの濃度を280nmの吸光度により決定した。
【0207】
内皮細胞またはプラスチックへの接着アッセイ
YPD寒天斜面(2.0% wt/volグルコース、1.0% wt/vol酵母抽出物、2.0% wt/volバクトペプトン(Difco, Detroit, Mich.))を用いて28℃で真菌細胞を増殖させた。Rotrosenの手順(Rotrosen, D., et al. 1986. Rev Infect Dis.; 8:73-85)に変更を加えて各生物のシングレット(singlet)サスペンジョンを調製した。簡潔に述べると、YBDブロスpH5.0(0.2% wt/vol酵母抽出物、2.0% wt/vol BSA、および2.0% wt/volデキストロース、(Difco, Detroit, Mich.))を用いて回転ドラム上、28℃で細胞を24時間増殖させた。遠心分離により採取した後、C.アルビカンス(C. albicans)細胞を生理的溶液(0.85% NaCl)中で洗浄した。トーマ(Thoma)カメラで分芽胞子をカウントし、カルシウムおよびマグネシウムを有するハンクス平衡塩類溶液(Hyclone, Logan, Utah)で所望の濃度(108細胞/ml)に調整した。
【0208】
Jaffeらの方法(Jaffe, et al., 1989. J. Immunol. 15;143:3961-6)に変更を加えてヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)を調製した。簡潔に述べると、0.5mg/mlのコラゲナーゼH消化(Boehringer-Mannheim, Mannheim, Germany)により臍帯静脈からHUVECを取得した。20%のウシ胎仔血清(Hyclone, Logan, Utah)、50ng/mlのヘパリン(Sigma)、および50μg/mlのECGF(Becton Dickinson)が添加された50%の199培地、50%のD最少必須培地(EuroClone, Yorkshire, United Kingdom)を用いて、慣例に従って細胞を増殖させた。
【0209】
カンジダ接着試験のために、0.5%のバクトゼラチン(Difco, Detroit, Mich.)のコーティングが施された12ウェル組織培養プレート(Corning Incorporated, Corning, NY, USA)中でコンフルエントになるまで細胞を増殖させた。加湿された95%空気、5%CO2の雰囲気中、37℃で、すべてのインキュベーションを行った。
【0210】
プラスチックへの接着のために、上記のごとく増殖させた真菌細胞を水で2回洗浄し、そして1.5×103細胞/mlで改変リー(Lee)液体培地中またはM199液体培地中に懸濁させた。6ウェルポリスチレンプレート(Corning Incorporated, Corning, NY.)中37℃で1.5×103個の細胞を3時間インキュベートした。十分な洗浄の後、1mlのサブロー(Sabouraud)デキストロース寒天を各ウェル中に注ぎ、固化させた。37℃で24時間インキュベートした後、コロニーをカウントし、結果を種菌に対するパーセントとして表した。サブロー(Sabouraud)デキストロース寒天プレート中に培養物のアリコートを直接プレーティングすることにより、各細胞懸濁液の種菌サイズを確認した。
【0211】
ELISA
酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)により結合を測定した。簡潔に述べると、100μlの0.05M炭酸ナトリウム(pH9.6)に溶解された200ngの抗原を用いて4℃で一晩かけてポリスチレンマイクロタイタープレート(Dynatech, PBI, Milan, Italy)にコーティングを施した。ウシ血清アルブミン-リン酸緩衝食塩水(PBS)のブロッキング溶液中で洗浄した後、免疫化動物に由来する腹水のPBS-0.05%Tween 20中の100μlの2倍希釈液を希釈して、37℃で2時間インキュベートした。
【0212】
非免疫化マウスに由来するプール血清(1:2希釈)を陰性対照として使用した。400μlのPBS-Tween20で3回洗浄した後、二次抗体として使用される抗マウス多価アルカリホスファターゼコンジュゲート(Sigma)のPBS中の1:1.000希釈液をウェルに37℃で1時間添加し、基質としてニトロフェニルリン酸二ナトリウム(Sigma)を用いて反応系を発色させた。陰性対照の読取り値の少なくとも2倍の光学的読取り値を与えたマウス血清の最大希釈率として力価を定義した。イムノブロッティングのために、IPTG誘導M15(pUHA1、pDS56/RBSH6xhis-ca)細胞に由来する精製組換えタンパク質を1μlあたり約1μgのタンパク質としてサンプルバッファー中に再懸濁させ、10分間煮沸し、そしてSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE(5〜15%ポリアクリルアミド勾配))にかけた。25mM Tris、192mMグリシン、0.1% SDS、および20%メタノールを含有するバッファー中で、ニトロセルロースフィルター上に、電気泳動させた物質をエレクトロブロッティングした。一段階実験のところで詳述されるようにフィルターを腹水と共にインキュベートした。いずれの場合においても、室温で2時間かけてリン酸緩衝食塩水(PBS)中の1%ウシ血清アルブミンでフィルターをブロッキングすることにより、ニトロセルロースへの腹水の非特異的結合を防止した。PBS-Tween20で十分に洗浄した後、二次抗体として使用される抗マウス多価アルカリホスファターゼコンジュゲート(Sigma)のPBS中の1:1000希釈液により、結合された抗体を検出した。
【0213】
プロテイナーゼ酵素アッセイ
これは、基本的にはRossらにより報告されているように、天然の高精製SAP2調製物によるウシ血清アルブミン分解に基づくものであった。簡潔に述べると、各アッセイ系は、50mMクエン酸ナトリウムpH3.2および0.15酵素溶液(100μg/ml)中に0.6mlの1%(w/v)BSA(Sigma Chem. Co., Detroit, MI)を含有していた。37℃で30分間置いた後、0.4mlの10%(w/v)トリクロロ酢酸を添加した。試験管を氷中に30分間置き、次に、10分間遠心分離した(1600×g)。上清の吸光度を280nmで読み取った。対照は、酵素を含まないクエン酸バッファー中の1% BSAであった。1単位の酵素は、毎分1ΔODを触媒した。我々の精製SAP2調製物を用いた場合、アッセイは、0.1〜0.4のΔOD範囲にわたり酵素濃度に比例し、1μgの検出限界であった。
【0214】
ラット膣感染
この試験全体を通して、卵巣摘出雌ウィスター(Wistar)ラット(80〜100g、Charles River Breeding Laboratories, Calco, Italy)を使用した。ラットはすべて、安息香酸エストラジオール(Amsa Farmaceutici srl、Rome、Italy)を注射することにより偽発情下に保持された。第1回目のエストラジオール投与の6日後、0.1mlの生理食塩溶液中の107個の酵母細胞を動物の膣内に接種した。既に報告されているように(De Bernardis, et al. 1999. J Infect Dis. 179:201-8)、クロラムフェニコール(50μg/ml)を含有するサブロー(Sabouraud)寒天プレート上で、各動物から採取された10μlのサンプル(校正プラスチックループ(Disponoic, PBI, Milan, Italy)を使用した)を培養することにより、膣液中の細胞の数をカウントした。膣洗浄液中に少なくとも1 CFUが検出された場合、すなわち、>103 CFU/mlのカウント数である場合、ラットを感染したとみなした。また、顕微鏡検査のために、他の膣内サンプルを過ヨウ素酸シッフ-ファンギーソン(Schiff-van Gieson)法により染色した。
【0215】
実施例2: 結果
1. dAbの作製、スクリーニング、および特徴付け
ファージディスプレイによるdAb選択の前に、再フォールディングさせた組換えC.アルビカンス(C. albicans)タンパク質の機能的活性を試験した。プロテイナーゼ酵素アッセイによりSAP2を試験し、良好な機能が明らかにされたことから、正確にフォールディングした構造であることが示唆された。SAP2の場合と同一の方法を用いてMP65の再フォールディングを行ったが、確実なアッセイが得られなかっため、機能を試験しなかった。1×1010種を超えるユニークなdAbを組み合わせたサイズを有する4つのファージライブラリーを選択のために使用し、少なくとも1×1011種の個別のファージを各選択ラウンドのために使用した(ライブラリー多様性の少なくとも10倍の数を有する)。3回の選択ラウンドの後、ファージのアウトプット力価は、5log超増加した。静的に吸着された抗原への結合に関して、発現されたdAbを含有する細菌培養物上清をELISAによりスクリーニングすることにより、MP65特異的dAbおよびSAP2特異的dAbの両方を第3ラウンドの選択産物から単離した。10種のユニークなMP65特異的結合分子(3種のVHおよび7種のVK)および27種のユニークなSAP2特異的結合分子(22種のVHおよび5種のVK)が同定された。対応する抗原に対する各dAbの阻害活性を決定するために、スクリーニングで得られたそれぞれのユニークな陽性クローンの数mgの精製dAbを作製した。
【0216】
2. dAbの結合特性および機能特性
免疫酵素的方法(上記参照)により適切なスクリーニングを行った後、SAP2またはMP65に対して選択されたVHおよびVkのサブライブラリーを含む2つの異なるファージ発現ライブラリーに由来するクローンを機能に関してさらにスクリーニングした。SAP2の場合、天然タンパク質調製物の酵素活性を阻害するdAbの能力についてさらに評価し、一方、MP65では、プラスチックへのカンジダの接着の阻害に関して各dAb結合分子を試験した。したがって、これらの予備アッセイの終了時、組換えタンパク質への強力な結合と接着および酵素活性の機能的阻害能力との両方に基づいて、限られた数の各dAbファミリーを選択した。しかしながら、dAbはすべて、結合アッセイと機能アッセイとの両方で機能するであろうと考えられた。
【0217】
たとえば、表2は、アスパラギン酸プロテアーゼの基本的阻害分子ペプスタチンAと比較して、酸性条件下でBSA分解を阻害する選択された単独の各SAP2結合剤の能力を示している。
【表2】

【0218】
最強のペプスタチンに近いdAb ADR4-13およびADR4-6をさらなる試験のために選択し精製した。MP65結合分子の場合、その代わりに、プラスチックへの接着を阻害する能力に基づいて、dAb ADR3-1、ADR3-2、およびADR3-6を選択した。
【0219】
3. ラット腟カンジダ症モデルにおけるdAb活性
病原性膣疾患関連カンジダ菌株によりチャレンジされたラット膣腔からの真菌クリアランスを促進する能力に関して、上記のように選択されたdAbをアッセイした。対照は、無関係のdAbと、陰性対照としての抗エノラーゼ抗体と、陽性対照としての抗真菌剤フルコナゾールおよびペプスタチンA(基本的Sap阻害剤)との使用であった。
【0220】
結果の解釈は、2つの主要な基準:1. 初期治療時、すなわち、腟内チャレンジの3〜6日後のクリアランスの促進;2. チャレンジ後21日目における感染の治癒(<1 CFU/μl膣液);に基づく。パラメトリック(スチューデント(Student)のt検定)統計およびノンパラメトリック(マン・ホイットニー(Mann-Whitney)のU検定)統計の両方により、差を評価した。2つのタイプの実験を行った(3回反復)。1つは予防タイプであり、1つは治療タイプである。前者の実験では、腟内カンジダチャレンジの30分前に単独dAb(タンパク質として20μg)投与を膣内に行い、後者では、チャレンジの1、24、および48時間後に同一のdAb量を投与した。
【0221】
4. dAbの予防活性
抗MP65 dAb(ADR3-2)もしくは抗SAP2 dAb(ADR4-6)のいずれかでラットを前処置したか(図1)またはフルコナゾールもしくはペプスタチンのいずれかで処置した最初の実験では、dAbはいずれも、抗真菌剤およびペプスタチンの両方の速度論的挙動と実質的に等価な速度論的挙動を呈して膣からのカンジダ排除を促進することが明らかにされた(図1)。処置はすべて、21日目に感染を消散させることが判明したが、対照(未処置)のラットはすべて、28日目に依然として感染状態であった。後続の実験は、単独の各dAbの活性を分析的に調べること、さらにはdAbが治療活性(すなわち、チャレンジ後に与えたときの活性)を発揮するかどうか調べることを意図したものであった。
【0222】
図2に示されるように、抗SAP2 dAb(ADR4-6またはADR4-13)はいずれも、対照の未処置のラットまたは無関係のdAbで処置されたラットと比較して、より迅速な初期真菌クリアランスおよび期待される感染クリアランス(21日目)により例示されるように、真菌チャレンジに対して高い予防的防護を付与した。これらの2種のdAbを比較したところ、それらの間に統計学的有意差は存在しなかった。たとえば、図2に示される実験では、これらの2種のdAbを与えた動物において、腟カンジダCFU間に14日目で境界線上の統計学的有意差(P=0.048;スチューデント(Student)のt検定)が存在したが、追加の実験で再現されなかった。
【0223】
3種の選択された抗MP65 dAbもまた、ラット腟カンジダ症モデルにおいて著しく活性であり、膣からの真菌のクリアランスを促進する挙動および能力は、ほぼ類似していた。dAb ADR3-2で前処置されたラットは、第21日目では依然として感染状態であったが、観測の後続日(第28日目)では、他方の2種の抗MP65 dAbで前処置されたすべての他のラットの場合と同様に治癒した(図3)。
【0224】
そのほかに、dAbの推定作用メカニズム(SAP2活性の阻害)から予想されるように、ADR4-6およびADR4-13はいずれも、フルコナゾール耐性カンジダ菌株AIDS68により引き起こされる感染に対してさえもきわめて効果的であり、真菌クリアランスの強力な促進および感染の早期治癒を示した(図4)。
【0225】
dAbの治療活性
カンジダチャレンジの後に投与したときに治癒効果を発揮するdAbの能力を評価するために、さらなる実験を行った。したがって、感染の1、24、および48時間後に各dAbを投与した。図5に示されるように、この処置もまた、未処置のラットまたは無関係のdAbで処置されたラットと比較して、膣からの真菌のクリアランスの促進をもたらした。この場合、クリアランスの速度は劣っていることが判明したが、それにもかかわらず、どのdAbを使用した場合にも、第28日目ではあるとはいえ、対応するdAb前処置で達成された程度まで対照よりも先に感染の完全治癒が達成された。この療法では、抗SAP2 dAbと抗MP65 dAbとの間に統計学的有意差は観測されなかったが、フルコナゾールは、試験したすべての時点で膣内CFU数の減少に関して有意により活性であった。また、抗SAP2 dAbと抗MP65 dAbとの混合物で処置した場合、明らかな利点はみられなかった。それにもかかわらず、処置されたラットはすべて、28日目に感染が治癒した。
【0226】
カンジダ感染の全身的防御
C.アルビカンス(C. albicans)の全身感染を防御する抗SAP2 dAbおよび抗MP65 dAbの能力を標準的な方法により評価した。
【0227】
簡潔に述べると、外側尾静脈を介してマウス1匹あたり1×106個の細胞を注射することにより(0.2mlの生理食塩水中)、マウスにC.アルビカンス(C. albicans)を慢性的に感染させた。抗SAP2 dAbまたは抗MP65 dAbを先の場合と同様に投与した。対照動物と比較した生存率を測定した。
【0228】
さらに、可能性のある任意の感染の前に有効用量を投与することにより、罹患しやすい被験体において真菌感染に対する受動的防御を付与するためにdAbを使用しうると考えられる。当業者に公知の手段により有効用量を決定することが可能である。
【0229】
抗SAP2 dAbまたは抗MP65 dAbのいずれかを1mg/kgまたは2.5mg/kgのいずれかでマウスに投与し、続いて、外側尾静脈を介してマウス1匹あたり1×106個の細胞を注射することによりC.アルビカンス(C. albicans)を投与する(0.2mlの生理食塩水中)。対照と比較して真菌感染率および生存率を測定した。抗SAP2 dAbおよびMP65 dAbはいずれも、対照と比較して真菌感染からマウスを防御することが観測された。
【0230】
実施例3 ヘテロ二量体の構築:
dAb ADR3-6およびADR4-6をコードするDNAを発現ベクターpDOM5D-5U中に両方向に連続的にクローニングして、2種の独立した構築物(ADR3-6/ADR4-6およびADR4-6/ADR3-6)を作製した。このベクターは、pDOM5(単量体生成のための実施例に記載のpDOM4と同様であるが、ファージ発現コードを有していない)をベースとするものであり、dAbクローニング部位間に位置するリンカーを含有していた。
【0231】
タンパク質の発現
単量体dAbに関連して述べたのと同様な発現および精製(プロテインAを用いる)。タンパク質純度の確認は、クーマシー染色を用いるSDS-PAGEによるものとした。
【0232】
in vivo分析
1グループあたり5匹の卵巣摘出雌ウィスター(Wistar)ラット(80〜100g、Charles River Breeding Laboratories, Calco, Italy)を使用した。動物の維持管理および全体的な世話は、他に報告されているとおりとした(De Bernardis, F. , et al. J. Infect. Dis. 161, 1276-1283 (1990))。ラットはすべて、50mgの安息香酸エストラジオール(Amsa Farmaceutici srl, Rome, Italy)の皮下注射を1日おきに行うことにより偽発情下に保持された。最初のエストラジオール投与の6日後、0.1mlの生理食塩溶液中の107個のカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)細胞(菌株SA-40)で腟内チャレンジを行う30分前、20μg(0.1mlの生理食塩水中)の各二量体分子をラットの膣内に投与した。クロラムフェニコール(50μg/ml)を含有するサブロー(Sabouraud)寒天プレート上で、各動物から採取された10μlのサンプル(校正プラスチックループ(Disponoic, PBI, Milan, Italy)を使用した)を培養することにより、膣液中の細胞の数をカウントした。膣洗浄液中に少なくとも1 CFUが検出された場合、すなわち、>103 CFU/mlのカウント数である場合、ラットを感染したとみなした。
【0233】
結果
ヘテロ二量体は両方とも、カンジダのクリアランスを促進することが可能であった(図6)。ヘテロ二量体ADR3-6/ADR4-6は、約10日目までに検出可能限界未満まで感染を排除した。ヘテロ二量体ADR4-6/ADR3-6は、15日目までに感染を排除した。
【0234】
本明細書に挙げられている出版物および該出版物に引用されている参考文献はすべて、参照により本明細書に組み入れられるものとする。記載した本発明に係る方法および系の種々の修正形態および変更形態は、本発明の範囲および精神から逸脱することなく当業者に自明なものであろう。特定の好ましい実施形態に関連させて本発明について説明してきたが、当然のことながら、特許を受けようとする発明は、そのような特定の実施形態になんら限定されるものではない。実際上、本発明を実施するための記載の形態の種々の修正形態のうち当該分野または関連分野の当業者に自明な修正形態は、次の特許請求の範囲内に含まれるものとみなされる。
【0235】
実施例4 PEG化された単一特異性dAb構成体およびヘテロ二量体dAb構成体の作製
発現ベクターpDOM5中にクローニングされた個々のdAbをコードするDNA配列をPCRにより突然変異させて、最終dAbフレームワーク4のアミノ酸をコードするコドン(典型的には、VH dAbではセリンであり、VK dAbではアルギニンである)をシステイン(...TGC... コドン)に変化させた。TGCコドンのすぐ3'側に2つの停止コドン(... TAATAA...)を組み込んだ。類似の手法を用いてヘテロ二量体構築物の3'側dAb中にシステインを導入した。
【0236】
タンパク質の発現
突然変異単量体構築物の発現および精製は、単量体dAbに関連して記載したとおりであり、VHクローンではプロテインAを使用し、VKクローンではプロテインLを使用した。突然変異二量体構築物の発現および精製は、単量体dAbに関連して記載したとおりであり、プロテインAを使用した。突然変異単量体構築物および突然変異二量体構築物のいずれについても、クーマシー染色を用いるSDS-PAGEによりタンパク質純度を評価した。
【0237】
PEG化
単量体形のdAbおよび二量体形のdAbの両方を標準的マレイミドリンカー化学によりPEG化した。天然のものまたはdAbに追加されたもののいずれかであるシステインまたはリシンのいずれかにPEGを結合させた。システインまたはリシンが追加されたものである場合、dAbのN末端もしくはC末端またはdAbのフレームワーク内にPEGを追加した。
【0238】
PEG化した後、使用前に標準的SEC精製技術を用いることによりdAbを精製し単離した。
【0239】
結果
以上に記載したネズミ全身モデルに類似したプロトコルを用いて、Balb/cマウスにおける全身C.アルビカンス(C. albicans)感染の防御の効力に関して、PEG化形態の単量体構築物および二量体構築物の両方をアッセイした。感染の2時間後、6時間後、および24時間後、8匹のマウスからなるグループに1mg/kgのPEG化dAbタンパク質またはフルコナゾールを投与した。二重特異的ヘテロ二量体構築物ADR4-6/ADR3-6-PEGは、最も強力な活性を呈した。この分子は、その構成要素の単量体またはフルコナゾールよりも効果的であった。
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0240】
【図1】dAbで膣内処置されたラットにおけるC.アルビカンス(C. albicans)の膣感染(白三角:ADR4-6+SA40;X:ADR3-2+SA40;黒四角:SA40(対照);黒丸:SA40+フルコナゾール;黒三角:SA40+ペプスタチン)。
【図2】抗SAP2 dAb ADR4-6(三角)またはADR4-13(菱形)で膣内処置されたラットにおけるC.アルビカンス(C. albicans)の膣感染。対照は、無関係のdAb Hel4(丸)、またはC.アルビカンス(C. albicans)でチャレンジされただけの未処置のもの(四角)とした。
【図3】抗mp65ドメインで膣内処置されたラットにおけるC.アルビカンス(C. albicans)の膣感染(黒三角:ADR3-1;丸:ADR3-2;白三角:ADR3-6;菱形:Hel4;黒四角:SA40(対照))。
【図4】抗SAP2 dAbで処置された、C.アルビカンス(C. albicans)のフルコナゾール耐性株(AIDS 68)の膣感染;菱形:AIDS68+ADR4-6;三角:AIDS68+ADR4-13;四角:AIDS68;丸:AIDS68+フルコナゾール。
【図5】チャレンジの(1、24、48時間)後にdAbで膣内処置されたラットにおけるC.アルビカンス(C. albicans)SA40の膣感染(黒四角:SA40真菌チャレンジのみ;菱形:ADR4-6;白四角:ADR3-6 dAb;三角:ADR4-6 dAbおよびADR3-6 dAb;丸:フルコナゾール)。
【図6】ヘテロ二量体dAbで処置されたC.アルビカンス(C. albicans)感染(丸:ADR3-6/ADR4-6;菱形:ADR4-6/ADR3-6;四角:SA40(対照);四角:ヘテロ二量体dAb VH-VL(対照))。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カンジダ属の種(Candida spp.)に由来する分泌性アスパラギン酸プロテアーゼ(Sap)に結合する、単一ドメイン抗体(dAb)。
【請求項2】
Sap2に結合する、請求項1に記載の単一ドメイン抗体(dAb)。
【請求項3】
以下のもの:それぞれ配列番号14〜配列番号35に示される、ADR4-2、ADR4-3、ADR4-4、ADR4-5、ADR4-6、ADR4-7、ADR4-8、ADR4-9、ADR4-10、ADR4-11、ADR4-12、ADR4-13、ADR4-14、ADR4-15、ADR4-16、ADR4-17、ADR4-18、ADR4-19、ADR4-21、ADR4-22およびADR4-23からなる群に含まれるいずれかの配列を含み、好ましくは該配列からなる、請求項2に記載の単一ドメイン抗体(dAb)。
【請求項4】
配列番号18に示されるADR4-6または配列番号25に示されるADR4-13により示される配列を含み、好ましくは該配列からなる、請求項2または3に記載の単一ドメイン抗体(dAb)。
【請求項5】
5×10-1〜1×10-7s-1のKoff速度定数によって本明細書中に規定されるSapに結合する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の単一ドメイン抗体(dAb)。
【請求項6】
少なくとも100μM〜1pMの解離定数(Kd)によってSapに結合する、請求項1に記載の単一ドメイン抗体(dAb)。
【請求項7】
Sap2に結合する、請求項4〜6のいずれか1項に記載の単一ドメイン抗体(dAb)。
【請求項8】
カンジダ属の種に由来する分泌性アスパラギン酸プロテアーゼ(Sap)に結合し、かつ配列番号18に示されるADR4-6または配列番号25に示されるADR4-13により示される配列に対して少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を示す、単一ドメイン抗体(dAb)。
【請求項9】
カンジダ属の種に由来する分泌性アスパラギン酸プロテアーゼ(Sap)の機能的活性を阻害する、単一ドメイン抗体(dAb)。
【請求項10】
Sap2の機能的活性を阻害する、請求項9に記載の単一ドメイン抗体(dAb)。
【請求項11】
以下のもの:それぞれ配列番号14〜配列番号35に示される、ADR4-2、ADR4-3、ADR4-4、ADR4-5、ADR4-6、ADR4-7、ADR4-8、ADR4-9、ADR4-10、ADR4-11、ADR4-12、ADR4-13、ADR4-14、ADR4-15、ADR4-16、ADR4-17、ADR4-18、ADR4-19、ADR4-21、ADR4-22およびADR4-23からなる群に含まれるいずれかの配列を含み、好ましくは該配列からなる、請求項10に記載の単一ドメイン抗体(dAb)。
【請求項12】
配列番号18に示されるADR4-6または配列番号25に示されるADR4-13により示される配列を含み、好ましくは該配列からなる、請求項1〜11のいずれか1項に記載の単一ドメイン抗体(dAb)。
【請求項13】
カンジダ属の種に由来する分泌性アスパラギン酸プロテアーゼ(Sap)の機能的活性を阻害し、かつ配列番号18に示されるADR4-6または配列番号25に示されるADR4-13により示される配列に対して少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を示す、単一ドメイン抗体(dAb)。
【請求項14】
カンジダ属の種に由来するマンノプロテイン(mannoprotein)アドヘシン(MP)に結合する、単一ドメイン抗体(dAb)。
【請求項15】
MP65に結合する、請求項14に記載の単一ドメイン抗体(dAb)。
【請求項16】
以下のもの:それぞれ配列番号5〜配列番号13に示される、ADR3-1、ADR3-2、ADR3-3、ADR3-4、ADR3-5、ADR3-6、ADR3-7、ADR3-8およびADR3-9からなる群に含まれるいずれかの配列を含み、好ましくは該配列からなる、請求項15に記載の単一ドメイン抗体(dAb)。
【請求項17】
5×10-1〜1×10-7s-1のKoff速度定数によってMPに結合する、請求項15または16に記載の単一ドメイン抗体(dAb)。
【請求項18】
少なくとも100μM〜1pMの解離定数(Kd)によってMPに結合する、請求項15〜17のいずれか1項に記載の単一ドメイン抗体(dAb)。
【請求項19】
MP65に結合する、請求項18に記載の単一ドメイン抗体。
【請求項20】
カンジダ属の種に由来するマンノプロテイン(mannoprotein)アドヘシン(MP)に結合し、かつ以下のもの:それぞれ配列番号5〜配列番号13に示される、ADR3-1、ADR3-2、ADR3-3、ADR3-4、ADR3-5、ADR3-6、ADR3-7、ADR3-8およびADR3-9からなる群に含まれるdAbに対して80%の同一性を示す、単一ドメイン抗体(dAb)。
【請求項21】
カンジダ属の種に由来するマンノプロテイン(mannoprotein)アドヘシン(MP)の機能的活性を阻害する、単一ドメイン抗体(dAb)。
【請求項22】
MP65の機能的活性を阻害する、請求項21に記載の単一ドメイン抗体(dAb)。
【請求項23】
以下のもの:それぞれ配列番号5〜配列番号13に示される、ADR3-1、ADR3-2、ADR3-3、ADR3-4、ADR3-5、ADR3-6、ADR3-7、ADR3-8およびADR3-9からなる群に含まれるいずれかの配列を含み、好ましくは該配列からなる、請求項22に記載の単一ドメイン抗体(dAb)。
【請求項24】
カンジダ属の種に由来するマンノプロテイン(mannoprotein)アドヘシン(MP)の機能的活性を阻害し、かつ以下のもの:それぞれ配列番号5〜配列番号13に示される、ADR3-1、ADR3-2、ADR3-3、ADR3-4、ADR3-5、ADR3-6、ADR3-7、ADR3-8およびADR3-9からなる群に含まれるdAbに対して80%の同一性を示す、単一ドメイン抗体(dAb)。
【請求項25】
請求項1〜24に記載の1以上のdAbと、製薬上許容される担体、希釈剤および/または賦形剤とを含んでなる、医薬組成物。
【請求項26】
1以上の、MP65結合性dAbおよびSap2結合性dAbを含んでなる、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項27】
MP65の機能的活性を阻害する1以上のdAbと、Sap2の機能的活性を阻害する1以上のdAbとを含んでなる、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項28】
治療を必要とする患者に、請求項1〜27のいずれか1項に記載の1以上のdAbまたはその組成物を投与することによる、患者でのカンジダ属の種による感染を予防および/または治療するための方法。
【請求項29】
カンジダ属の種による感染の予防および/または治療での使用のための、請求項1〜24のいずれか1項に記載のdAbまたは請求項25〜28のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項30】
治療を必要とする患者に、請求項1〜24のいずれか1項に記載のdAbまたは請求項25〜28のいずれか1項に記載の組成物を投与することによる、患者でのアゾール耐性のカンジダ属の種による感染を予防および/または治療するための方法。
【請求項31】
アゾールがトリアゾールである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
治療を必要とする患者に、請求項1〜24のいずれか1項に記載のdAbまたは請求項25〜28のいずれか1項に記載の組成物を投与することによる、トリアゾール耐性のカンジダ属の種による感染を予防および/または治療するための請求項31に記載の方法であって、該カンジダ属の種による感染が、以下のもの:イトラコナゾール、フルコナゾールおよびボリコナゾールからなる群に含まれるいずれか1以上の薬剤に耐性である、上記方法。
【請求項33】
治療を必要とする患者に、請求項1〜24のいずれか1項に記載のdAbまたは請求項25〜28のいずれか1項に記載の組成物を投与することによる、イミダゾール耐性のカンジダ属の種による感染を治療するための請求項30に記載の方法であって、該カンジダ属の種による感染が、以下のもの:クロトリマゾール、エコナゾール、フェンチコナゾール、スルコナゾールおよびチオコナゾールからなる群に含まれるいずれか1以上の薬剤に耐性である、上記方法。
【請求項34】
カンジダ属の種による感染が、以下のもの:カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、カンジダ・グラブラータ(Candida glabrata)、カンジダ・パラプシロシス(Candida parapsilosis)、カンジダ・クルセイ(Candida krusei)およびカンジダ・ルシタニエ(Candida lusitaniae)からなる群に含まれるもののうち1以上によるものである、請求項1〜33のいずれか1項に記載のdAb、方法または組成物。
【請求項35】
カンジダ属の種による感染が、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)によるものである、請求項34に記載のdAb、方法または組成物。
【請求項36】
カンジダ属の種による感染が、以下のもの:全身、粘膜、口腔内、爪下、気管支、肺、膣(外陰膣を含む)、食道および咽頭からなる群に含まれるいずれか1以上の部位でのものである、請求項1〜35のいずれか1項に記載のdAb、方法または組成物。
【請求項37】
カンジダ属の種による感染が、全身性または粘膜性である、請求項36に記載の方法またはdAb。
【請求項38】
カンジダ属の種による感染が、全身性である、請求項37に記載の方法またはdAb。
【請求項39】
dAbを、以下のもの:全身投与、局所投与、経口投与、鼻内投与および粘膜投与からなるリストに含まれるいずれかの経路により被験体に投与する、請求項29〜38のいずれか1項に記載の方法またはdAb。
【請求項40】
dAbを、経口投与により被験体に投与する、請求項39に記載の方法または使用。
【請求項41】
dAbを、全身投与により被験体に投与する、請求項40に記載の方法または使用。
【請求項42】
免疫不全患者に関連した1以上の状態の予防および/または治療のための医薬の調製における、請求項1〜24のいずれか1項に記載のdAbまたは請求項25〜28のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項43】
免疫不全患者が、以下のもの:HIV感染、AIDSおよび酵母感染からなる群に含まれるいずれか1以上の状態に罹患している、請求項42に記載の使用。
【請求項44】
dAbまたはその組成物を、単回用量の形態で患者に投与する、請求項42または43に記載の使用。
【請求項45】
dAbまたはその組成物を、単回用量と、それに続く複数回用量投与の形態で患者に投与する、請求項44に記載の使用。
【請求項46】
患者でのカンジダ属の種による全身性感染を予防および/または治療するための方法であって、治療を必要をする患者に、以下のもの:
(i) Sapおよび/またはMPタンパク質に結合する抗体
(ii) Sapおよび/またはMPタンパク質に結合する抗体のフラグメント
(iii) Sapおよび/またはMPタンパク質に結合するdAb
のうち1以上を投与するステップを含む、上記方法。
【請求項47】
患者でのカンジダ属の種による全身性感染を予防および/または治療するための方法であって、治療を必要をする患者に、以下のもの:
(i) Sapおよび/またはMPタンパク質の機能的活性を阻害する抗体
(ii) Sapおよび/またはMPタンパク質の機能的活性を阻害する抗体のフラグメント
(iii) Sapおよび/またはMPタンパク質の機能的活性を阻害するdAb
のうち1以上を投与するステップを含む、上記方法。
【請求項48】
dAbを全身投与する、請求項46または47に記載の方法。
【請求項49】
抗体が単一特異性である、請求項46〜48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
SapがSap2である、請求項46〜49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
MPタンパク質がMP65である、請求項46〜49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
請求項14〜24のいずれか1項に記載のdAbに結合した請求項1〜13のいずれか1項に記載のdAbを含む多量体dAbを含んでなる組成物。
【請求項53】
多量体dAbが二量体である、請求項52に記載の組成物。
【請求項54】
dAb同士が直接的に結合している、請求項52または53に記載の組成物。
【請求項55】
dAb同士がリンカーにより結合している、請求項52または53に記載の組成物。
【請求項56】
請求項52〜55のいずれか1項に記載の多量体dAbと、製薬上許容される担体、希釈剤および/または賦形剤を含んでなる、医薬組成物。
【請求項57】
請求項1〜28および52〜55のいずれか1項に記載の1以上のdAbまたは組成物での治療を必要とする医療用デバイスの、カンジダ属の種による感染を予防および/または治療するための方法。
【請求項58】
それぞれ配列番号14〜配列番号35に示される、ADR4-2、ADR4-3、ADR4-4、ADR4-5、ADR4-6、ADR4-7、ADR4-8、ADR4-9、ADR4-10、ADR4-11、ADR4-12、ADR4-13、ADR4-14、ADR4-15、ADR4-16、ADR4-17、ADR4-18、ADR4-19、ADR4-21、ADR4-22およびADR4-23、もしくはそれぞれ配列番号5〜配列番号13に示される、ADR3-1、ADR3-2、ADR3-3、ADR3-4、ADR3-5、ADR3-6、ADR3-7、ADR3-8およびADR3-9のアミノ酸配列と同一であるか、またはそれぞれ配列番号14〜配列番号35に示される、ADR4-2、ADR4-3、ADR4-4、ADR4-5、ADR4-6、ADR4-7、ADR4-8、ADR4-9、ADR4-10、ADR4-11、ADR4-12、ADR4-13、ADR4-14、ADR4-15、ADR4-16、ADR4-17、ADR4-18、ADR4-19、ADR4-21、ADR4-22およびADR4-23、もしくはそれぞれ配列番号5〜配列番号13に示される、ADR3-1、ADR3-2、ADR3-3、ADR3-4、ADR3-5、ADR3-6、ADR3-7、ADR3-8およびADR3-9のアミノ酸配列と25ヵ所以下のアミノ酸位置で異なるアミノ酸配列を有し、かつ、それぞれ配列番号14〜配列番号35に示される、ADR4-2、ADR4-3、ADR4-4、ADR4-5、ADR4-6、ADR4-7、ADR4-8、ADR4-9、ADR4-10、ADR4-11、ADR4-12、ADR4-13、ADR4-14、ADR4-15、ADR4-16、ADR4-17、ADR4-18、ADR4-19、ADR4-21、ADR4-22およびADR4-23、もしくはそれぞれ配列番号5〜配列番号13に示される、ADR3-1、ADR3-2、ADR3-3、ADR3-4、ADR3-5、ADR3-6、ADR3-7、ADR3-8およびADR3-9のCDR1配列に対して少なくとも50%の同一性を有するCDR1配列を有する、SapまたはMPに結合するdAb。
【請求項59】
それぞれ配列番号14〜配列番号35に示される、ADR4-2、ADR4-3、ADR4-4、ADR4-5、ADR4-6、ADR4-7、ADR4-8、ADR4-9、ADR4-10、ADR4-11、ADR4-12、ADR4-13、ADR4-14、ADR4-15、ADR4-16、ADR4-17、ADR4-18、ADR4-19、ADR4-21、ADR4-22およびADR4-23、もしくはそれぞれ配列番号5〜配列番号13に示される、ADR3-1、ADR3-2、ADR3-3、ADR3-4、ADR3-5、ADR3-6、ADR3-7、ADR3-8およびADR3-9のアミノ酸配列と同一であるか、またはそれぞれ配列番号14〜配列番号35に示される、ADR4-2、ADR4-3、ADR4-4、ADR4-5、ADR4-6、ADR4-7、ADR4-8、ADR4-9、ADR4-10、ADR4-11、ADR4-12、ADR4-13、ADR4-14、ADR4-15、ADR4-16、ADR4-17、ADR4-18、ADR4-19、ADR4-21、ADR4-22およびADR4-23、もしくはそれぞれ配列番号5〜配列番号13に示される、ADR3-1、ADR3-2、ADR3-3、ADR3-4、ADR3-5、ADR3-6、ADR3-7、ADR3-8およびADR3-9のアミノ酸配列と25ヵ所以下のアミノ酸位置で異なるアミノ酸配列を有し、かつ、それぞれ配列番号14〜配列番号35に示される、ADR4-2、ADR4-3、ADR4-4、ADR4-5、ADR4-6、ADR4-7、ADR4-8、ADR4-9、ADR4-10、ADR4-11、ADR4-12、ADR4-13、ADR4-14、ADR4-15、ADR4-16、ADR4-17、ADR4-18、ADR4-19、ADR4-21、ADR4-22およびADR4-23、もしくはそれぞれ配列番号5〜配列番号13に示される、ADR3-1、ADR3-2、ADR3-3、ADR3-4、ADR3-5、ADR3-6、ADR3-7、ADR3-8およびADR3-9のCDR2配列に対して少なくとも50%の同一性を有するCDR2配列を有する、SapまたはMPに結合するdAb。
【請求項60】
それぞれ配列番号14〜配列番号35に示される、ADR4-2、ADR4-3、ADR4-4、ADR4-5、ADR4-6、ADR4-7、ADR4-8、ADR4-9、ADR4-10、ADR4-11、ADR4-12、ADR4-13、ADR4-14、ADR4-15、ADR4-16、ADR4-17、ADR4-18、ADR4-19、ADR4-21、ADR4-22およびADR4-23、もしくはそれぞれ配列番号5〜配列番号13に示される、ADR3-1、ADR3-2、ADR3-3、ADR3-4、ADR3-5、ADR3-6、ADR3-7、ADR3-8およびADR3-9のアミノ酸配列と同一であるか、またはそれぞれ配列番号14〜配列番号35に示される、ADR4-2、ADR4-3、ADR4-4、ADR4-5、ADR4-6、ADR4-7、ADR4-8、ADR4-9、ADR4-10、ADR4-11、ADR4-12、ADR4-13、ADR4-14、ADR4-15、ADR4-16、ADR4-17、ADR4-18、ADR4-19、ADR4-21、ADR4-22およびADR4-23、もしくはそれぞれ配列番号5〜配列番号13に示される、ADR3-1、ADR3-2、ADR3-3、ADR3-4、ADR3-5、ADR3-6、ADR3-7、ADR3-8およびADR3-9のアミノ酸配列と25ヵ所以下のアミノ酸位置で異なるアミノ酸配列を有し、かつ、それぞれ配列番号14〜配列番号35に示される、ADR4-2、ADR4-3、ADR4-4、ADR4-5、ADR4-6、ADR4-7、ADR4-8、ADR4-9、ADR4-10、ADR4-11、ADR4-12、ADR4-13、ADR4-14、ADR4-15、ADR4-16、ADR4-17、ADR4-18、ADR4-19、ADR4-21、ADR4-22およびADR4-23、もしくはそれぞれ配列番号5〜配列番号13に示される、ADR3-1、ADR3-2、ADR3-3、ADR3-4、ADR3-5、ADR3-6、ADR3-7、ADR3-8およびADR3-9のCDR3配列に対して少なくとも50%の同一性を有するCDR3配列を有する、SapまたはMPに結合するdAb。
【請求項61】
それぞれ配列番号14〜配列番号35に示される、ADR4-2、ADR4-3、ADR4-4、ADR4-5、ADR4-6、ADR4-7、ADR4-8、ADR4-9、ADR4-10、ADR4-11、ADR4-12、ADR4-13、ADR4-14、ADR4-15、ADR4-16、ADR4-17、ADR4-18、ADR4-19、ADR4-21、ADR4-22およびADR4-23、もしくはそれぞれ配列番号5〜配列番号13に示される、ADR3-1、ADR3-2、ADR3-3、ADR3-4、ADR3-5、ADR3-6、ADR3-7、ADR3-8およびADR3-9のアミノ酸配列と同一であるか、またはそれぞれ配列番号14〜配列番号35に示される、ADR4-2、ADR4-3、ADR4-4、ADR4-5、ADR4-6、ADR4-7、ADR4-8、ADR4-9、ADR4-10、ADR4-11、ADR4-12、ADR4-13、ADR4-14、ADR4-15、ADR4-16、ADR4-17、ADR4-18、ADR4-19、ADR4-21、ADR4-22およびADR4-23、もしくはそれぞれ配列番号5〜配列番号13に示される、ADR3-1、ADR3-2、ADR3-3、ADR3-4、ADR3-5、ADR3-6、ADR3-7、ADR3-8およびADR3-9のアミノ酸配列と25ヵ所以下のアミノ酸位置で異なるアミノ酸配列を有し、かつ、それぞれ配列番号14〜配列番号35に示される、ADR4-2、ADR4-3、ADR4-4、ADR4-5、ADR4-6、ADR4-7、ADR4-8、ADR4-9、ADR4-10、ADR4-11、ADR4-12、ADR4-13、ADR4-14、ADR4-15、ADR4-16、ADR4-17、ADR4-18、ADR4-19、ADR4-21、ADR4-22およびADR4-23、もしくはそれぞれ配列番号5〜配列番号13に示される、ADR3-1、ADR3-2、ADR3-3、ADR3-4、ADR3-5、ADR3-6、ADR3-7、ADR3-8およびADR3-9のCDR1配列に対して少なくとも50%の同一性を有するCDR1配列を有し、かつ、それぞれ配列番号14〜配列番号35に示される、ADR4-2、ADR4-3、ADR4-4、ADR4-5、ADR4-6、ADR4-7、ADR4-8、ADR4-9、ADR4-10、ADR4-11、ADR4-12、ADR4-13、ADR4-14、ADR4-15、ADR4-16、ADR4-17、ADR4-18、ADR4-19、ADR4-21、ADR4-22およびADR4-23、もしくはそれぞれ配列番号5〜配列番号13に示される、ADR3-1、ADR3-2、ADR3-3、ADR3-4、ADR3-5、ADR3-6、ADR3-7、ADR3-8およびADR3-9のCDR2配列に対して少なくとも50%の同一性を有するCDR2配列を有する、SapまたはMPに結合するdAb。
【請求項62】
それぞれ配列番号14〜配列番号35に示される、ADR4-2、ADR4-3、ADR4-4、ADR4-5、ADR4-6、ADR4-7、ADR4-8、ADR4-9、ADR4-10、ADR4-11、ADR4-12、ADR4-13、ADR4-14、ADR4-15、ADR4-16、ADR4-17、ADR4-18、ADR4-19、ADR4-21、ADR4-22およびADR4-23、もしくはそれぞれ配列番号5〜配列番号13に示される、ADR3-1、ADR3-2、ADR3-3、ADR3-4、ADR3-5、ADR3-6、ADR3-7、ADR3-8およびADR3-9のアミノ酸配列と同一であるか、またはそれぞれ配列番号14〜配列番号35に示される、ADR4-2、ADR4-3、ADR4-4、ADR4-5、ADR4-6、ADR4-7、ADR4-8、ADR4-9、ADR4-10、ADR4-11、ADR4-12、ADR4-13、ADR4-14、ADR4-15、ADR4-16、ADR4-17、ADR4-18、ADR4-19、ADR4-21、ADR4-22およびADR4-23、もしくはそれぞれ配列番号5〜配列番号13に示される、ADR3-1、ADR3-2、ADR3-3、ADR3-4、ADR3-5、ADR3-6、ADR3-7、ADR3-8およびADR3-9のアミノ酸配列と25ヵ所以下のアミノ酸位置で異なるアミノ酸配列を有し、かつ、それぞれ配列番号14〜配列番号35に示される、ADR4-2、ADR4-3、ADR4-4、ADR4-5、ADR4-6、ADR4-7、ADR4-8、ADR4-9、ADR4-10、ADR4-11、ADR4-12、ADR4-13、ADR4-14、ADR4-15、ADR4-16、ADR4-17、ADR4-18、ADR4-19、ADR4-21、ADR4-22およびADR4-23、もしくはそれぞれ配列番号5〜配列番号13に示される、ADR3-1、ADR3-2、ADR3-3、ADR3-4、ADR3-5、ADR3-6、ADR3-7、ADR3-8およびADR3-9のCDR2配列に対して少なくとも50%の同一性を有するCDR2配列を有し、かつ、それぞれ配列番号14〜配列番号35に示される、ADR4-2、ADR4-3、ADR4-4、ADR4-5、ADR4-6、ADR4-7、ADR4-8、ADR4-9、ADR4-10、ADR4-11、ADR4-12、ADR4-13、ADR4-14、ADR4-15、ADR4-16、ADR4-17、ADR4-18、ADR4-19、ADR4-21、ADR4-22およびADR4-23、もしくはそれぞれ配列番号5〜配列番号13に示される、ADR3-1、ADR3-2、ADR3-3、ADR3-4、ADR3-5、ADR3-6、ADR3-7、ADR3-8およびADR3-9のCDR3配列に対して少なくとも50%の同一性を有するCDR3配列を有する、SapまたはMPに結合するdAb。
【請求項63】
それぞれ配列番号14〜配列番号35に示される、ADR4-2、ADR4-3、ADR4-4、ADR4-5、ADR4-6、ADR4-7、ADR4-8、ADR4-9、ADR4-10、ADR4-11、ADR4-12、ADR4-13、ADR4-14、ADR4-15、ADR4-16、ADR4-17、ADR4-18、ADR4-19、ADR4-21、ADR4-22およびADR4-23、もしくはそれぞれ配列番号5〜配列番号13に示される、ADR3-1、ADR3-2、ADR3-3、ADR3-4、ADR3-5、ADR3-6、ADR3-7、ADR3-8およびADR3-9のアミノ酸配列と同一であるか、またはそれぞれ配列番号14〜配列番号35に示される、ADR4-2、ADR4-3、ADR4-4、ADR4-5、ADR4-6、ADR4-7、ADR4-8、ADR4-9、ADR4-10、ADR4-11、ADR4-12、ADR4-13、ADR4-14、ADR4-15、ADR4-16、ADR4-17、ADR4-18、ADR4-19、ADR4-21、ADR4-22およびADR4-23、もしくはそれぞれ配列番号5〜配列番号13に示される、ADR3-1、ADR3-2、ADR3-3、ADR3-4、ADR3-5、ADR3-6、ADR3-7、ADR3-8およびADR3-9のアミノ酸配列と25ヵ所以下のアミノ酸位置で異なるアミノ酸配列を有し、かつ、それぞれ配列番号14〜配列番号35に示される、ADR4-2、ADR4-3、ADR4-4、ADR4-5、ADR4-6、ADR4-7、ADR4-8、ADR4-9、ADR4-10、ADR4-11、ADR4-12、ADR4-13、ADR4-14、ADR4-15、ADR4-16、ADR4-17、ADR4-18、ADR4-19、ADR4-21、ADR4-22およびADR4-23、もしくはそれぞれ配列番号5〜配列番号13に示される、ADR3-1、ADR3-2、ADR3-3、ADR3-4、ADR3-5、ADR3-6、ADR3-7、ADR3-8およびADR3-9のCDR1配列に対して少なくとも50%の同一性を有するCDR1配列を有し、かつ、それぞれ配列番号14〜配列番号35に示される、ADR4-2、ADR4-3、ADR4-4、ADR4-5、ADR4-6、ADR4-7、ADR4-8、ADR4-9、ADR4-10、ADR4-11、ADR4-12、ADR4-13、ADR4-14、ADR4-15、ADR4-16、ADR4-17、ADR4-18、ADR4-19、ADR4-21、ADR4-22およびADR4-23、もしくはそれぞれ配列番号5〜配列番号13に示される、ADR3-1、ADR3-2、ADR3-3、ADR3-4、ADR3-5、ADR3-6、ADR3-7、ADR3-8およびADR3-9のCDR3配列に対して少なくとも50%の同一性を有するCDR3配列を有する、SapまたはMPに結合するdAb。
【請求項64】
それぞれ配列番号14〜配列番号35に示される、ADR4-2、ADR4-3、ADR4-4、ADR4-5、ADR4-6、ADR4-7、ADR4-8、ADR4-9、ADR4-10、ADR4-11、ADR4-12、ADR4-13、ADR4-14、ADR4-15、ADR4-16、ADR4-17、ADR4-18、ADR4-19、ADR4-21、ADR4-22およびADR4-23、もしくはそれぞれ配列番号5〜配列番号13に示される、ADR3-1、ADR3-2、ADR3-3、ADR3-4、ADR3-5、ADR3-6、ADR3-7、ADR3-8およびADR3-9のアミノ酸配列と同一であるか、またはそれぞれ配列番号14〜配列番号35に示される、ADR4-2、ADR4-3、ADR4-4、ADR4-5、ADR4-6、ADR4-7、ADR4-8、ADR4-9、ADR4-10、ADR4-11、ADR4-12、ADR4-13、ADR4-14、ADR4-15、ADR4-16、ADR4-17、ADR4-18、ADR4-19、ADR4-21、ADR4-22およびADR4-23、もしくはそれぞれ配列番号5〜配列番号13に示される、ADR3-1、ADR3-2、ADR3-3、ADR3-4、ADR3-5、ADR3-6、ADR3-7、ADR3-8およびADR3-9のアミノ酸配列と25ヵ所以下のアミノ酸位置で異なるアミノ酸配列を有し、かつ、それぞれ配列番号14〜配列番号35に示される、ADR4-2、ADR4-3、ADR4-4、ADR4-5、ADR4-6、ADR4-7、ADR4-8、ADR4-9、ADR4-10、ADR4-11、ADR4-12、ADR4-13、ADR4-14、ADR4-15、ADR4-16、ADR4-17、ADR4-18、ADR4-19、ADR4-21、ADR4-22およびADR4-23、もしくはそれぞれ配列番号5〜配列番号13に示される、ADR3-1、ADR3-2、ADR3-3、ADR3-4、ADR3-5、ADR3-6、ADR3-7、ADR3-8およびADR3-9のCDR1配列に対して少なくとも50%の同一性を有するCDR1配列を有し、かつ、それぞれ配列番号14〜配列番号35に示される、ADR4-2、ADR4-3、ADR4-4、ADR4-5、ADR4-6、ADR4-7、ADR4-8、ADR4-9、ADR4-10、ADR4-11、ADR4-12、ADR4-13、ADR4-14、ADR4-15、ADR4-16、ADR4-17、ADR4-18、ADR4-19、ADR4-21、ADR4-22およびADR4-23、もしくはそれぞれ配列番号5〜配列番号13に示される、ADR3-1、ADR3-2、ADR3-3、ADR3-4、ADR3-5、ADR3-6、ADR3-7、ADR3-8およびADR3-9のCDR2配列に対して少なくとも50%の同一性を有するCDR2配列を有し、かつ、それぞれ配列番号14〜配列番号35に示される、ADR4-2、ADR4-3、ADR4-4、ADR4-5、ADR4-6、ADR4-7、ADR4-8、ADR4-9、ADR4-10、ADR4-11、ADR4-12、ADR4-13、ADR4-14、ADR4-15、ADR4-16、ADR4-17、ADR4-18、ADR4-19、ADR4-21、ADR4-22およびADR4-23、もしくはそれぞれ配列番号5〜配列番号13に示される、ADR3-1、ADR3-2、ADR3-3、ADR3-4、ADR3-5、ADR3-6、ADR3-7、ADR3-8およびADR3-9のCDR3配列に対して少なくとも50%の同一性を有するCDR3配列を有する、SapまたはMPに結合するdAb。
【請求項65】
それぞれ配列番号14〜配列番号35に示される、ADR4-2、ADR4-3、ADR4-4、ADR4-5、ADR4-6、ADR4-7、ADR4-8、ADR4-9、ADR4-10、ADR4-11、ADR4-12、ADR4-13、ADR4-14、ADR4-15、ADR4-16、ADR4-17、ADR4-18、ADR4-19、ADR4-21、ADR4-22およびADR4-23、またはそれぞれ配列番号5〜配列番号13に示される、ADR3-1、ADR3-2、ADR3-3、ADR3-4、ADR3-5、ADR3-6、ADR3-7、ADR3-8およびADR3-9のCDR1配列に対して少なくとも50%の同一性を有するCDR1配列を有する、SapまたはMPに結合するdAb。
【請求項66】
それぞれ配列番号14〜配列番号35に示される、ADR4-2、ADR4-3、ADR4-4、ADR4-5、ADR4-6、ADR4-7、ADR4-8、ADR4-9、ADR4-10、ADR4-11、ADR4-12、ADR4-13、ADR4-14、ADR4-15、ADR4-16、ADR4-17、ADR4-18、ADR4-19、ADR4-21、ADR4-22およびADR4-23、またはそれぞれ配列番号5〜配列番号13に示される、ADR3-1、ADR3-2、ADR3-3、ADR3-4、ADR3-5、ADR3-6、ADR3-7、ADR3-8およびADR3-9のCDR2配列に対して少なくとも50%の同一性を有するCDR2配列を有する、SapまたはMPに結合するdAb。
【請求項67】
それぞれ配列番号14〜配列番号35に示される、ADR4-2、ADR4-3、ADR4-4、ADR4-5、ADR4-6、ADR4-7、ADR4-8、ADR4-9、ADR4-10、ADR4-11、ADR4-12、ADR4-13、ADR4-14、ADR4-15、ADR4-16、ADR4-17、ADR4-18、ADR4-19、ADR4-21、ADR4-22およびADR4-23、またはそれぞれ配列番号5〜配列番号13に示される、ADR3-1、ADR3-2、ADR3-3、ADR3-4、ADR3-5、ADR3-6、ADR3-7、ADR3-8およびADR3-9のCDR3配列に対して少なくとも50%の同一性を有するCDR3配列を有する、SapまたはMPに結合するdAb。
【請求項68】
DOM16-39 (配列番号345)、DOM16-39-87 (配列番号420)、DOM16-39-100 (配列番号423)、DOM16-39-107 (配列番号430)、DOM16-39-109 (配列番号432)、DOM16-39-115 (配列番号438)、およびDOM16-39-200 (配列番号441)のCDR1配列に対して少なくとも50%の同一性を有するCDR1配列を有し、かつ、DOM16-39 (配列番号345)、DOM16-39-87 (配列番号420)、DOM16-39-100 (配列番号423)、DOM16-39-107 (配列番号430)、DOM16-39-109 (配列番号432)、DOM16-39-115 (配列番号438)、およびD0M16-39-200 (配列番号441)のCDR2配列に対して少なくとも50%の同一性を有するCDR2配列を有する、SapまたはMPに結合するdAb。
【請求項69】
DOM16-39 (配列番号345)、DOM16-39-87 (配列番号420)、DOM16-39-100 (配列番号423)、DOM16-39-107 (配列番号430)、DOM16-39-109 (配列番号432)、DOM16-39-115 (配列番号438)、およびDOM16-39-200 (配列番号441)のCDR2配列に対して少なくとも50%の同一性を有するCDR2配列を有し、かつ、DOM16-39 (配列番号345)、DOM16-39-87 (配列番号420)、DOM16-39-100 (配列番号423)、DOM16-39-107 (配列番号430)、DOM16-39-109 (配列番号432)、DOM16-39-115 (配列番号438)、およびD0M16-39-200 (配列番号441)のCDR3配列に対して少なくとも50%の同一性を有するCDR3配列を有する、SapまたはMPに結合するdAb。
【請求項70】
DOM16-39 (配列番号345)、DOM16-39-87 (配列番号420)、DOM16-39-100 (配列番号423)、DOM16-39-107 (配列番号430)、DOM16-39-109 (配列番号432)、DOM16-39-115 (配列番号438)、およびDOM16-39-200 (配列番号441)のCDR1配列に対して少なくとも50%の同一性を有するCDR1配列を有し、かつ、DOM16-39 (配列番号345)、DOM16-39-87 (配列番号420)、DOM16-39-100 (配列番号423)、DOM16-39-107 (配列番号430)、DOM16-39-109 (配列番号432)、DOM16-39-115 (配列番号438)、およびD0M16-39-200 (配列番号441)のCDR3配列に対して少なくとも50%の同一性を有するCDR3配列を有する、SapまたはMPに結合するdAb。
【請求項71】
DOM16-39 (配列番号345)、DOM16-39-87 (配列番号420)、DOM16-39-100 (配列番号423)、DOM16-39-107 (配列番号430)、DOM16-39-109 (配列番号432)、DOM16-39-115 (配列番号438)、およびDOM16-39-200 (配列番号441)のCDR1配列に対して少なくとも50%の同一性を有するCDR1配列を有し、かつ、DOM16-39 (配列番号345)、DOM16-39-87 (配列番号420)、DOM16-39-100 (配列番号423)、DOM16-39-107 (配列番号430)、DOM16-39-109 (配列番号432)、DOM16-39-115 (配列番号438)、およびD0M16-39-200 (配列番号441)のCDR2配列に対して少なくとも50%の同一性を有するCDR2配列を有し、かつ、DOM16-39 (配列番号345)、DOM16-39-87 (配列番号420)、DOM16-39-100 (配列番号423)、DOM16-39-107 (配列番号430)、DOM16-39-109 (配列番号432)、DOM16-39-115 (配列番号438)、およびD0M16-39-200 (配列番号441)のCDR3配列に対して少なくとも50%の同一性を有するCDR3配列を有する、SapまたはMPに結合するdAb。
【請求項72】
半減期延長部分を含んでいてもよい、請求項1〜24、29および58〜71のいずれか1項に記載のdAb、請求項25〜27および56のいずれか1項に記載の医薬組成物、または請求項52〜55のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項73】
半減期延長部分がPEGである、請求項72に記載のdAb、医薬組成物または組成物。
【請求項74】
半減期延長部分が血清アルブミンに結合する、請求項72に記載のdAb、医薬組成物または組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−533115(P2008−533115A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−501395(P2008−501395)
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【国際出願番号】PCT/GB2006/000843
【国際公開番号】WO2006/097689
【国際公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(502197046)ドマンティス リミテッド (47)
【出願人】(507308957)
【出願人】(507310581)
【Fターム(参考)】