カンチレバー、カンチレバーシステム、走査型プローブ顕微鏡、質量センサ装置、弾性計測装置及びマニピュレーション装置並びにカンチレバーの変位測定方法、カンチレバーの加振方法及びカンチレバーの変形方法
【課題】自ら積極的に撓んで変形できること。
【解決手段】基端側が本体部10cに支持されたレバー部10cと、該カンチレバーに形成され、電圧の印加によって発熱し、該発熱による熱膨張によってレバー部10cを変形させる抵抗体11と、を備えているカンチレバー2を提供する。
【解決手段】基端側が本体部10cに支持されたレバー部10cと、該カンチレバーに形成され、電圧の印加によって発熱し、該発熱による熱膨張によってレバー部10cを変形させる抵抗体11と、を備えているカンチレバー2を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カンチレバー、該カンチレバーを有するカンチレバーシステム、該システムを有する走査型プローブ顕微鏡、質量センサ装置、弾性計測装置及びマニピュレーション装置に関するものである。また、カンチレバーの変位を測定するカンチレバーの変位測定方法、カンチレバーを加振させるカンチレバーの加振方法及びカンチレバーを変形させるカンチレバーの変形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ナノテクノロジーの進歩により、カンチレバーを使用したセンサが提案され、形状観察、質量、濃度、粘弾性、磁気力、電位、電流、光情報測定、加工やマニピュレーションを行う技術が要求されている。この要求を実現するための装置の1つとして、走査型プローブ顕微鏡(SPM:Scanning Probe Microscope)が知られている。この走査型プローブ顕微鏡は、金属、半導体、セラミック、樹脂、高分子、生体材料、絶縁物等の各種の試料の表面を微小領域で観察し、試料の表面形状や粘弾性等の各種の物性を原子レベルの高分解能で観察することができる装置である。しかも走査型プローブ顕微鏡は、真空中、ガス中、大気中、液中等の様々な環境下で使用できることから、幅広い分野で好適に利用されている。
【0003】
また、走査型プローブ顕微鏡は、測定対象物に応じて様々な測定モードがあり、最適な測定モードをその都度選択する必要がある。その1つとして、カンチレバーホルダにセットしたカンチレバーを振動させて測定を行う振動モードSPMが知られている。
この振動モードSPMとしては、例えば、共振させたカンチレバーの振動振幅が一定になるように探針と試料との間の距離を制御しながら走査を行うDFM(共振モード測定−原子間力顕微鏡:Dynamic Force Mode Microscope)や、AFM動作中に、試料を試料表面に垂直なZ方向に微小振動、又は、カンチレバーを試料表面に垂直なZ方向に微小振動させて、周期的な力を加え、この際のカンチレバーの撓み振幅や、sin成分、cos成分を検出することで粘弾性分布を測定するVE−AFM(マイクロ粘弾性測定−原子間力顕微鏡:Viscoelastic AFM)や、AFM動作中に、試料を試料表面に平行な水平方向に横振動させ、又はカンチレバーを試料表面に平行な水平方向に横振動させ、この際のカンチレバーのねじれ振動振幅を検出することで摩擦力分布を測定するLM−FFM(横振動摩擦力顕微鏡:Lateral Force Modulation Friction Force Microscope)等がある。
【0004】
ところで、カンチレバーを振動させるには、カンチレバーの周辺(例えば、カンチレバーホルダ)に取り付けられた加振源を振動させ、該振動をカンチレバーに伝えることで、カンチレバーを所定の周波数及び振幅で振動させる方法が一般的である(特許文献1参照)。また、加振源ではなく、カンチレバーに磁性体を取り付け、該磁性体によって発生した磁場を利用してカンチレバーを振動させる方法も一部に採用されている。
【特許文献1】特許第3222410号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の振動モードSPMによる測定では、まだ以下の問題が残されていた。
即ち、加振源を利用してカンチレバーを振動させる方法では、加振源の振動がカンチレバー以外の周辺構造物にも伝わってしまい、これらを振動させてしまうものであった。そのため、カンチレバーの振動特性に影響を与えてしまい、理想的な振動状態とは異なった振動特性になってしまっていた。その結果、カンチレバーの共振特性を正確に識別することが難しく、振動周波数や振幅、位相の振動特性に対して、正確な設定をすることが困難であった。よって、試料を高精度に測定することが難しかった。
【0006】
一方、磁性体を利用してカンチレバーを振動させる方法では、以下に記載するいくつかの不都合があった。
まず、カンチレバーに磁性体を取り付ける必要があるため、カンチレバーの材質が限定されてしまうものであった。よって、多様な振動特性を有するカンチレバーの中から最適なものを幅広く選択するといったことができず、選択範囲が狭まってしまう不都合があった。
【0007】
また、装置構成として、磁場を発生させる機構がどうしても必要となってしまうので、該機構の分だけコストアップしてしまうものであった。また、磁場を発生させる際に、発熱してしまう。そのため、この発熱の影響でドリフトが発生してしまい、分解能が低下する恐れがあった。更に、磁場を発生させる機構を設置する必要があるので、装置構成が大型化してしまうと共に、全体的な剛性の低下、分解能の低下や操作速度の低下を招いてしまうものであった。加えて、磁場を発生させる機構の設置により、測定領域が狭くなる等のスペース的な制約を受けたり、可動範囲の制約を受けたり、カンチレバーの上下空間を塞いでしまうので、光学顕微鏡の併用を阻害したりする恐れがあった。
【0008】
ところで、カンチレバーを振動させるということは、カンチレバーを繰り返し周期的に変形させるということである。この変形について着目すると、一般的にカンチレバーは、自ら変形するものではなく外的要因によって変形させられるものである。即ち、カンチレバーは、試料からの斥力や引力を受けた時や微小物質等が付着した時等に撓んで変形するようになっている。ところが、近年、観察や測定をより多角的に行いたい等の観点から、カンチレバーを自ら積極的に変形させたいという要求が多々ある。この点、従来のカンチレバーは、このような要求に応えることができるものではなかった。
【0009】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その主目的は、自ら積極的に撓んで変形することができると共に、加振源や磁性体を利用せずに振動させることができるカンチレバー及びカンチレバーシステムを提供することである。
また、別の目的としては、上記カンチレバーシステムを有する走査型プローブ顕微鏡、質量センサ装置、弾性計測装置及びマニピュレーション装置、並びに、カンチレバーを加振させるカンチレバーの加振方法及びカンチレバーの変位を測定するカンチレバーの変位測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記課題を解決するために以下の手段を提供する。
本発明に係るカンチレバーは、基端側が本体部に支持されたレバー部と、該レバー部に形成され、電圧の印加によって発熱し、該発熱による熱膨張によってレバー部を変形させる抵抗体と、を備えていることを特徴とする。
【0011】
この発明に係るカンチレバーにおいては、電圧が印加されると抵抗体が発熱する。すると、この発熱によって抵抗体の周辺が局所的に熱膨張するので、レバー部が変形する。このように、熱膨張を利用してレバー部を自ら強制的に撓ませて変形させることができる。従って、従来にはないカンチレバーの使い方を行うことができる。例えば、レバー部の先端を試料に対して強制的に押し付けたり、これとは逆に強制的に引き離したりするといったことが可能である。このように、従来にはない多様な使い方を行うことができ、利便性に優れたカンチレバーとすることができる。
【0012】
また、本発明に係るカンチレバーは、上記本発明のカンチレバーにおいて、前記レバー部の一部に該レバー部よりも熱膨張係数が大きい素材による熱膨張部が前記抵抗体の近傍に形成されていることを特徴とする。
【0013】
この発明に係るカンチレバーにおいては、抵抗体の近傍に熱膨張部が形成されているので、抵抗体の発熱に影響を受けて熱膨張部が積極的に熱膨張する。そのため、少ない発熱量でレバー部をより効率良く変形させることができ、省電力化を図ることができる。
【0014】
また、本発明に係るカンチレバーは、上記本発明のカンチレバーにおいて、前記熱膨張部が、前記レバー部の両面のうち一方の面側に形成されていることを特徴とする。
【0015】
この発明に係るカンチレバーにおいては、レバー部の一方の面側に熱膨張部が形成されているので、一方の面側が発熱の影響により大きく伸縮して積極的に変位する。従って、レバー部をさらに効率良く変形させることができる。
【0016】
また、本発明に係るカンチレバーは、上記本発明のカンチレバーにおいて、前記熱膨張部が、絶縁性物質であることを特徴とする。
【0017】
この発明に係るカンチレバーにおいては、熱膨張部が絶縁性物質であるので、熱膨張部と抵抗体とを直接接触させたとしても電気的な特性に何ら影響を与えることがない。そのため、抵抗体の形成位置に関係なく熱膨張部を形成することができ、カンチレバーの設計の自由度を向上することができる。
【0018】
また、本発明に係るカンチレバーは、上記本発明のカンチレバーにおいて、前記レバー部が、自己変位検出型のレバーであることを特徴とする。
【0019】
この発明に係るカンチレバーにおいては、レバー部が自己変位検出型のレバーであるので、レバー部自身がどの程度変形したかを確実に把握することができる。従って、光てこ方式を利用せずにレバー部の変形状態を把握することができるので、光てこ方式特有のアライメント作業が不要であり、使い易い。
【0020】
また、本発明に係るカンチレバーは、上記本発明のカンチレバーにおいて、前記レバー部が、変位量に応じて抵抗値が変化する歪抵抗を有する自己変位検出型のレバーであることを特徴とする。
【0021】
この発明に係るカンチレバーにおいては、レバー部が撓んで変形すると、その変位量に応じて歪抵抗の抵抗値が変化する。よって、歪抵抗に流れる電流値をモニタすることで、レバー部がどの程度変形したかを確実に把握することができる。従って、レバー部の変形をより高精度に制御することができる。
特に、発熱を利用してレバー部を変形させる動作と、その変形による抵抗値変化からレバー部の変形を確認するという動作と、を両方同時に行うことができるので、非常に使い易い。
【0022】
また、本発明に係るカンチレバーシステムは、上記本発明のカンチレバーと、前記抵抗体に対して電圧を印加する電圧印加部と、前記レバー部の変位を測定する変位測定機構と、を備えていることを特徴とする。
【0023】
この発明に係るカンチレバーシステムにおいては、電圧印加部が抵抗体に対して電圧を印加することで、抵抗体の発熱を利用してレバー部を変形させることができる。また、変位測定機構が、レバー部の変位を測定するので、レバー部の変形を高精度に制御することができる。また、変位測定機構の測定結果に基づいて、各種の測定や観察(例えば、試料の表面形状観察や試料の磁気、電位分布測定等)を行うことができる。
【0024】
また、本発明に係るカンチレバーシステムは、上記本発明のカンチレバーと、前記抵抗体に対して電圧を印加する電圧印加部と、前記歪抵抗に流れる電流値の変化に基づいて前記レバー部の変位を測定する変位測定機構と、を備えていることを特徴とする。
【0025】
この発明に係るカンチレバーシステムにおいては、電圧印加部が抵抗体に対して電圧を印加することで、抵抗体の発熱を利用してレバー部を変形させることができる。また、レバー部が撓んで変位すると、その変位量に応じて歪抵抗の抵抗値が変化する。よって、変位測定機構は、歪抵抗に流れる電流値の変化に基づいてレバー部の変位を確実に測定することができる。よって、レバー部の変形を高精度に制御することができる。また、変位測定機構の測定結果に基づいて、各種の測定や観察(例えば、試料の表面形状観察や試料の磁気、電位分布測定等)を行うことができる。
特に、レバー部が自己変位型のレバーであるので、レバー部の変位を測定するにあたって、光てこ方式等の一般的な方法を採用する必要がない。従って、変位測定機構の構成を簡略化することができると共に、カンチレバーを利用して各種の測定をスピーディで簡便に行うことができる。
【0026】
また、本発明に係るカンチレバーシステムは、上記本発明のカンチレバーシステムにおいて、前記電圧印加部が、電圧値を平方根演算するルート回路を有し、変形させたい量に比例した電圧信号をルート回路にて変換した後、前記抵抗体に印加することを特徴とする。
【0027】
この発明に係るカンチレバーシステムにおいては、抵抗体に電圧を印加する際に、まず電圧印加部が、変形させたい量に比例した電圧信号を一旦ルート回路にて平方根演算(ルート演算)する。そして電圧印加部は、演算後の電圧信号に応じた電圧を抵抗体に印加する。ここで、上述したように、抵抗体を発熱させることでレバー部は変形するが、この変形量は発熱量である電力に比例する。つまり、電力を上げることで、変形量が大きくなる。この電力は、W=V2/R(V:電圧値、R:抵抗値)で表されるので、電圧値の2乗に比例して大きくなる。
ところで、電圧印加部は、上述したようにルート回路によって平方根演算された電圧信号に応じた電圧を、上記式のVに相当する印加電圧としている。そのため、見かけ上、入力する電圧に比例するようにレバー部を変形させることができる。従って、熱膨張を利用してカンチレバーを変形させる場合であっても、従来と同じ感覚で電圧調整を行うことができる。よって、扱い易くなり、操作性をより向上することができる。
【0028】
また、本発明に係るカンチレバーシステムは、上記本発明のカンチレバーシステムにおいて、前記電圧印加部が、前記電圧を、放熱による前記抵抗体の温度低下を補うように増加させた後に、抵抗体に印加することを特徴とする。
【0029】
この発明に係るカンチレバーシステムにおいては、抵抗体に電圧を印加する際に、電圧印加部が放熱による抵抗体の温度低下を予め考慮して、抵抗体に若干高めの電圧を印加する。これにより、放熱による温度低下があったとしても、抵抗体を所望する温度で熱膨張させることができ、狙い通りにレバー部を変形させることができる。
【0030】
また、本発明に係るカンチレバーシステムは、上記本発明のカンチレバーシステムにおいて、前記電圧印加部が、前記電圧を、熱伝導の遅れによる前記抵抗体の温度低下を補うように増加させた後に、抵抗体に印加することを特徴とする。
【0031】
この発明に係るカンチレバーシステムにおいては、抵抗体に電圧を印加する際に、電圧印加部が熱伝導の遅れによる抵抗体の温度低下を予め考慮して、抵抗体に若干高めの電圧を印加する。これにより、印加する電圧の波形の立ち上がりを急峻にすることができ、熱伝導の遅れがあったとしても、狙い通りにレバー部を変形させることができる。
【0032】
また、本発明に係るカンチレバーシステムは、上記本発明のカンチレバーシステムにおいて、前記電圧印加部が、前記歪抵抗に電圧を印加して発熱させ、該歪抵抗を前記抵抗体として動作させることを特徴とする。
【0033】
この発明に係るカンチレバーシステムにおいては、歪抵抗を抵抗体として動作させることができる。つまり、発熱によりレバー部を変形させる役割と、レバー部の変位を測定する役割という2つの役割を歪抵抗に兼用させることができる。そのため、カンチレバーの構成を簡略化することができるうえ、カンチレバーの製造に費やすコストを低減することができる。
【0034】
また、本発明に係るカンチレバーシステムは、上記本発明のカンチレバーシステムにおいて、前記変位測定機構が、前記電圧印加部が前記歪抵抗に印加した電圧とそれによって発生する電流とに基づく歪抵抗の抵抗値変化を検出して、前記レバー部の変位を測定することを特徴とする。
【0035】
この発明に係るカンチレバーシステムにおいては、歪抵抗に電圧を印加するだけで、発熱と測定とを同時に行うことができる。そのため、複雑な制御が不要であり、取り扱いが簡便となる。
【0036】
また、本発明に係るカンチレバーシステムは、上記本発明のカンチレバーシステムにおいて、前記カンチレバーが、前記歪抵抗が組み込まれた温度補償用レファレンス電極を有し、前記変位測定機構が、2つの前記歪抵抗にそれぞれ流れる電流値の差に基づいて、前記レバー部の変位を測定することを特徴とする。
【0037】
この発明に係るカンチレバーシステムにおいては、変位測定機構が、レバー部に形成された歪抵抗を流れる電流値と、温度補償用レファレンス電極に組み込まれた歪抵抗に流れる電流値とを比較して差を算出している。そして、これら2つの電流値の差に基づいて、レバー部の変位を測定している。
ここで、歪抵抗は、レバー部の変位とは別に温度変化によっても抵抗値が変化してしまう。しかしながら、変位測定機構は、温度補償用レファレンス電極側の歪抵抗に流れる電流値を参照しているので、温度変化による不要な抵抗値変化分をキャンセルすることができ、温度影響をなくすことができる。よって、カンチレバーを利用して、より高精度に各種の測定を行うことができる。
【0038】
また、本発明に係るカンチレバーシステムは、上記本発明のカンチレバーシステムにおいて、前記変位測定機構が、ホイートストンブリッジ回路を利用して2つの前記歪抵抗にそれぞれ流れる電流値の差を検出することを特徴とする。
【0039】
この発明に係るカンチレバーシステムにおいては、ホイートストンブリッジ回路を利用するので、レバー部に形成された歪抵抗を流れる電流値と、温度補償用レファレンス電極に組み込まれた歪抵抗を流れる電流値との差を簡単且つ正確に検出することができる。
【0040】
また、本発明に係るカンチレバーシステムは、上記本発明のカンチレバーシステムにおいて、前記変位測定機構が、差動増幅回路を利用して2つの前記歪抵抗にそれぞれ流れる電流値の差を検出することを特徴とする。
【0041】
この発明に係るカンチレバーシステムにおいては、オペアンプ等で用いられる作動増幅回路を利用するので、レバー部に形成された歪抵抗を流れる電流値と、温度補償用レファレンス電極に組み込まれた歪抵抗を流れる電流値との差を簡単且つ正確に検出することができる。
【0042】
また、本発明に係るカンチレバーシステムは、上記本発明のカンチレバーシステムにおいて、前記電圧印加部が、前記レバー部が共振周波数付近の周波数で、且つ、正電圧領域又は負電圧領域で周期するように、振幅中心ラインが電圧中心ラインからオフセットされた交流電圧を周期的に印加することを特徴とする。
【0043】
この発明に係るカンチレバーシステムにおいては、電圧印加部がレバー部に対して電圧を周期的に印加する。これにより、レバー部は単に変形するのではなく、変形が繰り返されるので振動した状態となる。しかもレバー部は、共振周波数(一次共振や高次の共振周波数)付近の周波数で振動する。従って、レバー部を振動させる振動モードで、各種の測定や観察(例えば、試料の表面形状観察や試料の磁気、電位分布測定等)を行うことができる。
加えて、正電圧領域又は負電圧領域で周期するように振幅中心ラインが電圧中心ラインからオフセットされた交流電圧を印加する。この場合には、交流電圧の正弦波のうち、+側の最大地点で抵抗体が最も発熱し、−側の最大地点で抵抗体の発熱が最小となる。つまり、+側の最大地点に達する度に、レバー部が最も変形して撓んだ状態となる。そのため、交流電圧と略同じ周期でレバー部を振動させることができる。その結果、カンチレバーを共振周波数付近の周波数で確実に振動させることができる。特に、交流電圧の周波数をオフセット調整するだけで、レバー部を共振周波数で確実に振動させることができるので、容易である。
【0044】
また、熱膨張を利用して振動させるので、加振源や磁場を利用してレバーを振動させる場合とは異なり、カンチレバーの周辺の構成品に振動を何ら伝えることなくレバー部自身を直接振動させることができる。よって、カンチレバー単独の共振特性を得ることができる。よって、Qカーブ測定の際に余分なノイズ等が含まれていない理想的なQカーブを得ることができ、カンチレバーの共振特性を正確に識別することができる。従って、カンチレバーの振動周波数や振幅、位相等の振動特性に対して正確な設定を行うことができる。
【0045】
また、本発明に係るカンチレバーシステムは、上記本発明のカンチレバーシステムにおいて、前記電圧印加部が、前記レバー部が共振周波数の略1/2倍の周波数で、且つ、正電圧領域と負電圧領域とで周期するように設定された交流電圧を周期的に印加することを特徴とする。
【0046】
この発明に係るカンチレバーシステムにおいては、電圧印加部がレバー部に対して電圧を周期的に印加する。これにより、レバー部は単に変形するのではなく、変形が繰り返されるので振動した状態となる。しかも電圧印加部は、レバー部の共振周波数の略1/2倍の周波数で、且つ、正電圧領域と負電圧領域とで周期するように設定された交流電圧を印加する。この場合には、交流電圧の正弦波のうち、+側の最大地点と−側の最大地点とで抵抗体は最も発熱する。つまり、これら両地点に達する度に、レバー部が同一方向に最も変形して撓んだ状態となる。そのため、交流電圧の2倍の周期でレバー部を振動させることができる。その結果、カンチレバーを共振周波数付近の周波数で振動させることができる。特に、交流電圧の周波数を調整するだけで、レバー部を共振周波数で確実に振動させることができるので、設定が容易である。
【0047】
また、本発明に係るカンチレバーシステムは、上記本発明のカンチレバーシステムにおいて、前記電圧印加部と前記変位測定機構とを、時間差を空けて交互に作動させることを特徴とする。
【0048】
この発明に係るカンチレバーシステムにおいては、レバー部の変形とレバー部の測定とを時間差を空けて交互に行うので、それぞれの作動を安定且つ確実に行うことができる。
【0049】
また、本発明に係るカンチレバーシステムは、上記本発明のカンチレバーシステムにおいて、前記電圧印加部と前記変位測定機構とを、下記式を満たす時間差を空けて交互に作動させることを特徴とする。
S≦q/f (S:時間差、q:Q値、f:カンチレバーの共振周波数)
【0050】
この発明に係るカンチレバーシステムにおいては、レバー部の加振とレバー部の測定とを時間差を空けて交互に行うので、それぞれの作動を安定且つ確実に行うことができる。特に、時間差Sが、(Q値/共振周波数)以下に設定されているので、レバー部を極端に減衰させることなく再度加振させることができる。従って、レバー部を共振させた状態に確実に維持することができる。
【0051】
また、本発明に係るカンチレバーシステムは、上記本発明のカンチレバーシステムにおいて、前記カンチレバーを複数有し、これら複数のカンチレバーが、前記レバー部の先端にそれぞれ試料に対向配置される探針を有し、前記電圧印加部が、複数の前記カンチレバーのうち任意に選択した1本以上のカンチレバーに形成された前記抵抗体に電圧を印加して発熱させ、前記探針を前記試料に対して強制的に接触又は離間させることを特徴とする。
【0052】
この発明に係るカンチレバーシステムにおいては、複数のカンチレバーの中から任意に選択したカンチレバーのレバー部だけを変形させて、該レバー部の先端に形成された探針を試料に対して強制的に接触又は離間させることができる。このように、熱膨張を利用した多様な使い方をすることができる。
【0053】
また、本発明に係る走査型プローブ顕微鏡は、上記本発明のカンチレバーシステムを備えていることを特徴とする。
また、本発明に係る質量センサ装置は、上記本発明のカンチレバーシステムを備えていることを特徴とする。
また、本発明に係る弾性計測装置は、上記本発明のカンチレバーシステムを備えていることを特徴とする。
また、本発明に係るマニピュレーション装置は、上記本発明のカンチレバーシステムを備えていることを特徴とする。
【0054】
この発明に係る走査型プローブ顕微鏡、質量センサ装置、弾性計測装置及びマニピュレーション装置においては、上述したカンチレバーシステムを備えているので、抵抗体の発熱を利用してレバー部を変形させることができる共に、変位測定機構の測定結果に基づいて各種の測定や観察を行うことができる。
【0055】
また、本発明に係るカンチレバーの変位測定方法は、上記本発明のカンチレバーの変位を測定する方法であって、前記抵抗体に対して電圧を印加し、前記歪抵抗に流れる電流値の変化に基づいて前記レバー部の変位を測定することを特徴とする。
【0056】
この発明に係るカンチレバーの変位測定方法においては、抵抗体に対して電圧を印加することでレバー部を変位させると、その変位量に応じて歪抵抗の抵抗値が変化する。そのため、歪抵抗に流れる電流値の変化に基づいてレバー部の変位を確実に測定することができる。これにより、レバー部の変形を高精度に制御することができる。特に、レバー部の変位を測定するにあたって、光てこ方式等の一般的な方法を採用する必要がない。
【0057】
また、本発明に係るカンチレバーの変位測定方法は、上記本発明のカンチレバーの変位測定方法において、前記歪抵抗に電圧を印加して発熱させ、該歪抵抗を前記抵抗体として動作させることを特徴とする。
【0058】
この発明に係るカンチレバーの変位測定方法においては、歪抵抗を抵抗体として動作させることができる。つまり、発熱によりレバー部を変形させる役割と、レバー部の変位を測定する役割という2つの役割を歪抵抗に兼用させることができる。
【0059】
また、本発明に係るカンチレバーの変位測定方法は、上記本発明のカンチレバーの変位測定方法において、前記歪抵抗に印加した電圧とそれによって発生する電流とに基づく歪抵抗の抵抗値変化を検出して、前記レバー部の変位を測定することを特徴とする。
【0060】
この発明に係るカンチレバーの変位測定方法においては、歪抵抗に電圧を印加するだけで、発熱と測定とを同時に行うことができる。そのため、複雑な制御が不要であり、取り扱いが簡便となる。
【0061】
また、本発明に係るカンチレバーの変位測定方法は、上記本発明のカンチレバーの変位測定方法において、前記歪抵抗が組み込まれた温度補償用レファレンス電極を参照し、2つの歪抵抗にそれぞれ流れる電流値の差に基づいて、前記レバー部の変位を測定することを特徴とする。
【0062】
この発明に係るカンチレバーの変位測定方法においては、レバー部に形成された歪抵抗を流れる電流値と、温度補償用レファレンス電極に組み込まれた歪抵抗に流れる電流値とを比較して差を算出する。そして、これら2つの電流値の差に基づいて、レバー部の変位を測定する。ここで、歪抵抗は、レバー部の変位とは別に温度変化によっても抵抗値が変化してしまう。しかしながら、温度補償用レファレンス電極側の歪抵抗に流れる電流値を参照しているので、温度変化による不要な抵抗値変化分をキャンセルすることができ、温度影響をなくすことができる。よって、より高精度にレバー部の変位を測定することができる。
【0063】
また、本発明に係るカンチレバーの変位測定方法は、上記本発明のカンチレバーの変位測定方法において、ホイートストンブリッジ回路を利用して2つの前記歪抵抗にそれぞれ流れる電流値の差を測定することを特徴とする。
【0064】
この発明に係るカンチレバーの変位測定方法においては、ホイートストンブリッジ回路を利用するので、レバー部に形成された歪抵抗を流れる電流値と、温度補償用レファレンス電極に組み込まれた歪抵抗を流れる電流値との差を簡単且つ正確に測定することができる。
【0065】
また、本発明に係るカンチレバーの変位測定方法は、上記本発明のカンチレバーの変位測定方法において、差動増幅回路を利用して2つの前記歪抵抗にそれぞれ流れる電流値の差を測定することを特徴とする。
【0066】
この発明に係るカンチレバーの変位測定方法においては、オペアンプ等で用いられる作動増幅回路を利用するので、レバー部に形成された歪抵抗を流れる電流値と、温度補償用レファレンス電極に組み込まれた歪抵抗を流れる電流値との差を簡単且つ正確に測定することができる。
【0067】
また、本発明に係るカンチレバーの加振方法は、上記本発明のカンチレバーを加振する方法であって、共振周波数付近の周波数で、且つ、正電圧領域又は負電圧領域で周期するように、振幅中心ラインが電圧中心ラインからオフセットされた交流電圧を前記レバー部に周期的に印加することを特徴とする。
【0068】
この発明に係るカンチレバーの加振方法においては、レバー部に対して電圧を周期的に印加する。これにより、レバー部は単に変形するのではなく、変形が繰り返されるので振動した状態となる。しかもレバー部は、共振周波数(一次共振や高次の共振周波数)付近の周波数で振動する。従って、レバー部を振動させる振動モードで、各種の測定や観察(例えば、試料の表面形状観察や試料の磁気、電位分布測定等)を行うことができる。
加えて、正電圧領域又は負電圧領域で周期するように振幅中心ラインが電圧中心ラインからオフセットされた交流電圧を印加する。この場合には、交流電圧の正弦波のうち、+側の最大地点で抵抗体が最も発熱し、−側の最大地点で抵抗体の発熱が最小となる。つまり、+側の最大地点に達する度に、レバー部が最も変形して撓んだ状態となる。そのため、交流電圧と略同じ周期でレバー部を振動させることができる。その結果、カンチレバーを共振周波数付近の周波数で確実に振動させることができる。特に、交流電圧の周波数をオフセット調整するだけで、レバー部を共振周波数で確実に振動させることができるので、容易である。
【0069】
また、熱膨張を利用して振動させるので、加振源や磁場を利用してレバーを振動させる場合とは異なり、カンチレバーの周辺の構成品に振動を何ら伝えることなくレバー部自身を直接振動させることができる。よって、カンチレバー単独の共振特性を得ることができる。よって、Qカーブ測定の際に余分なノイズ等が含まれていない理想的なQカーブを得ることができ、カンチレバーの共振特性を正確に識別することができる。従って、カンチレバーの振動周波数や振幅、位相等の振動特性に対して正確な設定を行うことができる。
【0070】
また、本発明に係るカンチレバーの加振方法は、上記本発明のカンチレバーを加振する方法であって、共振周波数の略1/2倍の周波数で、且つ、正電圧領域と負電圧領域とで周期するように設定された交流電圧を前記レバー部に周期的に印加することを特徴とする。
【0071】
この発明に係るカンチレバーの加振方法においては、レバー部に対して電圧を周期的に印加する。これにより、レバー部は単に変形するのではなく、変形が繰り返されるので振動した状態となる。しかも、レバー部の共振周波数の略1/2倍の周波数で、且つ、正電圧領域と負電圧領域とで周期するように設定された交流電圧を印加する。この場合には、交流電圧の正弦波のうち、+側の最大地点と−側の最大地点とで抵抗体は最も発熱する。つまり、これら両地点に達する度に、レバー部が同一方向に最も変形して撓んだ状態となる。そのため、交流電圧の2倍の周期でレバー部を振動させることができる。その結果、カンチレバーを共振周波数付近の周波数で振動させることができる。特に、交流電圧の周波数を調整するだけで、レバー部を共振周波数で確実に振動させることができるので、設定が容易である。
【0072】
また、本発明に係るカンチレバーの変形方法は、上記本発明のカンチレバーを変形させる方法であって、変形させたい量に比例した電圧信号を平方根演算した後、前記抵抗体に印加することを特徴とする。
【0073】
この発明に係るカンチレバーの変形方法においては、抵抗体に電圧を印加する際に、まず変形させたい量に比例した電圧信号を一旦平方根演算(ルート演算)する。そして、演算後の電圧信号に応じた電圧を抵抗体に印加する。ここで、抵抗体を発熱させることでレバー部は変形するが、この変形量は発熱量である電力に比例する。つまり、電力を上げることで、変形量が大きくなる。この電力は、W=V2/R(V:電圧値、R:抵抗値)で表されるので、電圧値の2乗に比例して大きくなる。
ところで、平方根演算された電圧信号に応じた電圧を上記式のVに相当する印加電圧としている。そのため、見かけ上、入力する電圧に比例するようにレバー部を変形させることができる。従って、熱膨張を利用してカンチレバーを変形させる場合であっても、従来と同じ感覚で電圧調整を行うことができる。よって、扱い易くなり、操作性をより向上することができる。
【0074】
また、本発明に係るカンチレバーの変形方法は、上記本発明のカンチレバーを変形させる方法であって、前記抵抗体に対して前記電圧を印加する際に、該電圧を、放熱による抵抗体の温度低下を補うように増加させた後に印加することを特徴とする。
【0075】
この発明に係るカンチレバーの変形方法においては、抵抗体に電圧を印加する際に、放熱による抵抗体の温度低下を予め考慮して、抵抗体に若干高めの電圧を印加する。これにより、放熱による温度低下があったとしても、抵抗体を所望する温度で熱膨張させることができ、狙い通りにレバー部を変形させることができる。
【0076】
また、本発明に係るカンチレバーの変形方法は、上記本発明のカンチレバーを変形させる方法であって、前記抵抗体に対して前記電圧を印加する際に、該電圧を、熱伝導の遅れによる抵抗体の温度低下を補うように増加させた後に印加することを特徴とする。
【0077】
この発明に係るカンチレバーの変形方法においては、抵抗体に電圧を印加する際に、熱伝導の遅れによる抵抗体の温度低下を予め考慮して、抵抗体に若干高めの電圧を印加する。これにより、印加する電圧の波形の立ち上がりを急峻にすることができ、熱伝導の遅れがあったとしても、狙い通りにレバー部を変形させることができる。
【発明の効果】
【0078】
本発明に係るカンチレバーによれば、抵抗体の熱膨張を利用してレバー部を自ら強制的に撓ませて変形させることができる。
また、本発明に係るカンチレバーシステム、走査型プローブ顕微鏡、質量センサ装置、弾性計測装置及びマニピュレーション装置によれば、レバー部の変形を高精度に制御することができると共に、各種の測定や観察を行うことができる。
また、本発明に係るカンチレバーの変位測定方法によれば、光てこ方式等の一般的な方法を採用することなく、レバー部の変位確実に測定することができる。
また、本発明に係るカンチレバーの加振方法によれば、加振源や磁場を利用することなくレバー部を振動させることができる。従って、カンチレバーの共振特性を正確に識別することができる。
また、本発明に係るカンチレバーの変形方法によれば、抵抗体の発熱を利用してレバー部を自ら積極的に撓ませて変形させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0079】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る第1実施形態を、図1から図5を参照して説明する。なお、本実施形態では、カンチレバー2を備えたカンチレバーシステム9を走査型プローブ顕微鏡1に適用した場合を例に挙げて説明する。また、レバー部10cを加振させ、光てこ方式で該レバー部10cの振動状態の変位を検出すると共に、試料S側を3次元方向に移動させる試料スキャン方式を例にして説明する。
【0080】
本実施形態の走査型プローブ顕微鏡1は、試料Sの表面形状や各種の物性を測定する装置であって、図1に示すように、カンチレバー2と、電圧印加部3と、ステージ4と、移動機構5と、変位測定機構6と、制御機構7と、を備えている。このうち、カンチレバー2、電圧印加部3及び変位測定機構6は、カンチレバーシステム9として機能する。
【0081】
上記カンチレバー2は、図2に示すように、先端に探針10aを有すると共に基端側が本体部10bによって片持ち状態で支持されたレバー部10cと、該レバー部10cに形成された発熱抵抗体(抵抗体)11と、発熱抵抗体11に電気接続された配線部12とを有している。このカンチレバー2は、例えば、シリコン支持層15a上に酸化層(シリコン酸化膜)15bを形成し、さらに該酸化層15b上にシリコン活性層15cを熱的に貼り合わせたSOI基板15を利用して製造されている。なお、SOI基板15に限られず、その他の材料や手法でカンチレバー2を製造しても構わない。
また、レバー部10cと本体部10bとの接合部であるレバー部10cの基端側には、開口10dが形成されており、レバー部10cが基端側でより屈曲して撓み易くなっている。なお、この開口10dの数は、1つに限定されるものではなく、自由に形成して構わないし、形成しなくても構わない。
【0082】
上記発熱抵抗体11は、レバー部10cの基端側において開口10dを両側から挟むように形成されている。この発熱抵抗体11は、半導体プロセスで一般的に用いられる不純物を熱拡散法やイオン注入法等により形成されたものである。そのため、低コストで容易に発熱抵抗体11を形成することができる。加えて、この発熱抵抗体11は、レバー部10cに一層だけ形成されているので、従来のものとは異なり、レバー部10cに膜応力がほとんど作用せず該レバー部10cが事前に撓んで変形してしまうといったことがない。よって、カンチレバー2の高品質化を図ることができる。
【0083】
上記配線部12は、アルミ等の金属配線であり、本体部10b及びレバー部10cの基端側に亘ってU字状になるように発熱抵抗体11に電気接続されている。また、本体部10bの端部に位置する配線部12の端末には、外部と電気接続可能な2つの外部接続端子12aが設けられている。
【0084】
このように構成されたカンチレバー2は、図1に示すように、本体部10bを介してホルダ本体20の下面に固定された斜面ブロック21に図示しないワイヤ等により着脱自在に固定されている。これにより、カンチレバー2は、試料Sに対向した状態で固定されている。この際、カンチレバー2は、斜面ブロック21によって試料表面S1に対してレバー部10cが所定角度傾くように固定されている。なお、ホルダ本体20及び斜面ブロック21は、カンチレバーホルダ22を構成している。
【0085】
上記電圧印加部3は、前記発熱抵抗体11に対して加振電圧V1を印加して発熱させ、該発熱による熱膨張によりレバー部10cを周期的に変形させて振動させている。具体的には、カンチレバーホルダ22に固定されたカンチレバー2の外部接続端子12aを介して加振電圧V1を印加している。この際、電圧印加部3は、レバー部10cが共振周波数f付近の周波数で振動するように、加振電圧V1を印加している。詳細には、加振電圧V1として、図3に示すように、共振周波数fの略1/2倍の周波数の交流電圧を印加するようになっている。
また、電圧印加部3には、図1に示すように、入力された電圧信号(レバー部10cを変形させたい量に比例した信号)V0を平方根演算するルート回路3aが組み込まれており、演算後の電圧信号に応じた電圧を上記加振電圧V1として印加するようになっている。
【0086】
上記ステージ4は、カンチレバーホルダ22にセットされたカンチレバー2の探針10aに対向配置するように試料Sを載置しており、XYスキャナ25上に載置されている。このXYスキャナ25は、図示しない防振台上に載置されたZスキャナ26上に載置されている。
これらXYスキャナ25及びZスキャナ26は、例えば、ピエゾ素子等の圧電素子であり、ドライブ回路27から電圧を印加されると、その電圧印加量及び極性に応じて、試料表面S1に平行なXY方向及び試料表面S1に垂直なZ方向にそれぞれ微小移動するようになっている。即ち、これらXYスキャナ25、Zスキャナ26及びドライブ回路27は、探針10aと試料表面S1とを、XY方向及びZ方向の3方向に対して相対的に移動させる上記移動機構5として機能する。
【0087】
また、カンチレバーホルダ22の上方には、ミラー30を利用して、レバー部10cの裏面に形成された図示しない反射面に向けてレーザ光Lを照射する光照射部31と、ミラー32を利用して、反射面で反射されたレーザ光Lを受光する光検出部33とが設けられている。なお、光照射部31から照射されたレーザ光Lは、ホルダ本体20の開口部20a内を通過しながら反射面に達し、反射面で反射された後、再度開口部20a内を通過して光検出部33に入射するようになっている。
【0088】
光検出部33は、例えば、フォトディテクタであり、レーザ光Lの入射位置からレバー部10cの振動状態を検出する。そして、光検出部33は、検出したレバー部10cの振動状態の変位をDIF信号としてプリアンプ34に出力している。即ち、これら光照射部31、ミラー30、32及び光検出部33は、レバー部10cの振動状態の変位を測定する上記変位測定機構6として機能する。
【0089】
また、光検出部33から出力されたDIF信号は、プリアンプ34によって増幅された後、交流−直流変換回路35に送られて直流変換され、Z電圧フィードバック回路36に送られる。Z電圧フィードバック回路36は、直流変換されたDIF信号が常に一定となるように、ドライブ回路27をフィードバック制御する。これにより、移動機構5により走査を行ったときに、探針10aと試料表面S1との距離を、レバー部10cの振動状態が一定になるように制御することができる。
【0090】
また、このZ電圧フィードバック回路36には、制御部37が接続されており、該制御部37が直流変換されたDIF信号に基づいて試料Sの表面形状を測定したり、位相の変化を検出して各種の物性情報(例えば、磁気力や電位等)を測定したりすることができるようになっている。
即ち、これらZ電圧フィードバック回路36及び制御部37は、走査時に、探針10aと試料表面S1との距離を、レバー部10cの振動状態が一定となるように移動機構5を制御すると共に、測定データを取得する上記制御機構7として機能する。なお制御部37は、上述した各構成品を総合的に制御している。
【0091】
次に、このように構成された走査型プローブ顕微鏡1により、試料Sを振動モードSPMの1つであるDFMで測定する試料測定方法について、以下に説明する。
まず始めに、カンチレバー2をカンチレバーホルダ22に固定して、該カンチレバー2を試料Sに対して対向配置させる設定工程を行う。これにより、レバー部10cの先端の探針10aと、ステージ4上に載置された試料Sとが対向した状態となる。
次いで、レバー部10cの反射面に確実にレーザ光Lが入射するように、また、反射したレーザ光Lが光検出部33に確実に入射するように、光照射部31及び光検出部33の位置や、レバー部10cの取付状態等を調整するアライメント作業を行う。
【0092】
次いで、レバー部10cを振動させる加振工程を行う。即ち、電圧印加部3にレバー部10cを変形させたい量に比例した電圧信号V0を入力する。すると、電圧印加部3は、ルート回路3aによりこの電圧信号V0を平方根演算して電圧信号V1を算出すると共に、該電圧信号V1に比例した電圧を加振電圧としてカンチレバー2の2つの外部接続端子12aに印加する。この際、図3に示すように、レバー部10cの共振周波数fの略1/2倍の周波数の交流電圧を印加する。
この電圧印加により、2つの外部接続端子12aに電気接続された発熱抵抗体11は発熱する。すると、この発熱によって発熱抵抗体11の周辺が局所的に熱膨張するので、レバー部10cが変形する。しかも、加振電圧V1が交流電圧なので、変形が周期的に繰り返される。その結果、レバー部10cは、振動した状態となる。
【0093】
特に、上述したようにレバー部10cの共振周波数fの略1/2倍の交流電圧を加振電圧V1として印加している。よって、正弦波のうち、+側の最大地点P1と、−側の最大地点P2とで発熱抵抗体11は、最も発熱する。つまり、この両地点P1、P2に達する度にレバー部10cが同一方向に最も変形して撓んだ状態となる。そのため、交流電圧の2倍の周期でレバー部10cを振動させることができる。その結果、レバー部10cを共振周波数fで振動させることができる。なお、図3では、若干周期が遅れた状態で、共振周波数fを図示している。
【0094】
特に、加振工程では熱膨張を利用してレバー部10cを振動させている。よって、従来の加振源や磁性体等の手段を用いずに、レバー部10cを振動させることができる。しかも、周辺の構成品に何ら影響を与えることなく、レバー部10c自身を直接振動させることができるので、該レバー部10c単独の振動特性を得ることができる。
【0095】
そして、レバー部10cを振動させた後、Qカーブの測定を行うと共に動作点(加振周波数の最適値)の設定を行う。この際、上述したように、レバー部10c単独の振動特性を得ることができるので、該レバー部10cの共振特性を正確に識別することができる。よって、レバー部10cの振動周波数や振幅、位相等の振動特性に対して正確な設定を行うことができる。
【0096】
次いで、測定工程を行う。即ち、探針10aと試料表面S1との距離を、振動状態が一定になるように制御した状態で、ドライブ回路27によりXYスキャナ25を移動させて、試料Sの走査を行う。この際、試料表面S1の凹凸に応じてレバー部10cの振動振幅が増減しようとするので、光検出部33に入射するレーザ光L(反射面で反射したレーザ光)の振幅が異なる。光検出部33は、この振幅に応じたDIF信号をプリアンプ34に出力する。出力されたDIF信号は、該プリアンプ34によって増幅されると共に、交流−直流変換回路35によって直流変換された後、Z電圧フィードバック回路36に送られる。
【0097】
Z電圧フィードバック回路36は、直流変換されたDIF信号が常に一定になるように(つまり、レバー部10cの振動状態が一定になるように)、ドライブ回路27によりZスキャナ26をZ方向に微小移動させて、フィードバック制御を行う。これにより、探針10aと試料表面S1との距離を、振動状態が一定になるように制御した状態で走査を行うことができる。また、制御部37は、Z電圧フィードバック回路36により上下させる信号に基づいて、試料Sの表面形状や各種の物性情報を取得することができる。これにより、試料Sの測定が終了する。
【0098】
特に、熱膨張を利用してレバー部10cを振動させているので、Qカーブ測定の際にレバー部10cの共振特性を正確に認識することができ、余分なノイズ等が含まれていない理想的なQカーブを得ることができる。従って、DFMでの測定を正確に行うことができ、測定精度を向上することができる。
【0099】
また、カンチレバーシステム9及び走査型プローブ顕微鏡1によれば、低コストで高品質化されたカンチレバー2を利用するので、同様にコストを下げることができると共に高品質化を図ることができる。
【0100】
ところで、本実施形態では発熱抵抗体11を発熱させることでレバー部10cを変形させて振動させているが、変形量は発熱量である電力に比例している。つまり、電力を上げることで、変形量が大きくなり振動振幅が大きくなる。この電力は、W=V2/R(V:電圧値、R:抵抗値)で表されるので、電圧値の2乗に比例して振動振幅が大きくなる。
しかしながら、本実施形態では、ルート回路3aによって平方根演算した電圧信号に応じた電圧を上記式のVに相当する加振電圧V1としている。そのため、見かけ上、入力した電圧に比例するように振動振幅を変化させることができる。従って、熱膨張を利用してレバー部10cを振動させる場合であっても、従来と同じ感覚で振動調整を行うことができる。よって、扱い易くなり、操作性に優れている。また、交流電圧である加振電圧の周波数を調整するだけで、レバー部10cを共振周波数で確実に振動させることができるので、加振工程時での設定が容易である。
【0101】
なお、上述した第1実施形態では、カンチレバー2をSOI基板15から製造された半導体として説明したが、この場合に限られず、金属材料で形成しても構わない。この場合であっても、発熱抵抗体11の発熱による熱膨張でレバー部10cを変形により振動させることができる。よって、同様の作用効果を奏することができる。
また、発熱抵抗体11としては、できるだけ熱膨張係数の大きい材料で形成することが好ましい。
【0102】
また、図4に示すように、レバー部10cよりも熱膨張係数が大きい素材で形成された熱膨張部38を発熱抵抗体11の近傍に形成しても構わない。なお、図4では、熱膨張部38として金属薄膜を例に挙げており、発熱抵抗体11上に成膜した場合を図示している。このようにすることで、発熱抵抗体11が発熱すると、該発熱の影響を受けて熱膨張部38が積極的に熱膨張する。そのため、少ない発熱量でレバー部10cをより効率良く変形させて振動させることができる。従って、測定精度を維持したまま、省電力化を図ることができる。
しかも、レバー部10cの両面のうち、探針が形成されている一方の面側にのみ熱膨張部38を形成している。そのため、レバー部10cは、一方の面側が発熱の影響により大きく伸縮して積極的に変位する。従って、この点においてもレバー部10cを効率よく変形させて振動させることができる。
【0103】
また、熱膨張部38を絶縁性物質より形成しても構わない。この場合には、熱膨張部38と発熱抵抗体11とを直接接触させたとしても、電気的な特性に何ら影響を与えることがない。そのため、信頼性の高い測定結果を得ることができる。また、電気的な特性に影響を与えないので、発熱抵抗体11の形成位置に関係なく熱膨張部38を形成できる。そのため、容易にカンチレバー2を製作することができる。これらの点において、熱膨張部38を絶縁性物質で形成することが好ましい。
【0104】
また、上記第1実施形態では、電圧印加部3が加振電圧V1として交流電圧を印加したが、交流に限定されるものではない。レバー部10cが周期的に変形するように、発熱抵抗体11を周期的に発熱させることができれば構わない。但し、上述したように、共振周波数fの略1/2倍の周波数の交流電圧を加振電圧V1として印加することで、レバー部10cを容易且つ確実に共振させることができるので、好ましい。
なお、加振電圧V1として、図5に示すように、共振周波数fと略等しい周波数で、且つ、正電圧領域又は負電圧領域で周期するように振幅中心ラインL1が電圧中心ラインL2からオフセットされた交流電圧を用いても構わない。なお、図5では、正電圧領域で周期するようにオフセットした場合を図示している。また、図5では、若干周期が遅れた状態で、共振周波数fを図示している。
【0105】
この場合には、交流電圧の正弦波のうち、+側の最大地点P1で発熱抵抗体11が最も発熱し、−側の最大地点P2で発熱抵抗体11の発熱が最小になる。つまり、+側の最大地点P1に達する度にレバー部10cが最も変形して撓んだ状態となる。そのため、交流電圧と略同じ周期でレバー部10cを振動させることができる。その結果、レバー部10cを共振周波数fで振動させることができる。
特に、交流電圧の周波数をオフセット調整するだけで、レバー部10cを共振周波数で容易且つ確実に振動させることができるので、設定が容易である。よって、加振電圧V1として、このような交流電圧であっても好ましい。
【0106】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態を、図6から図10を参照して説明する。なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では、光てこ方式によりレバー部10cの振動状態を測定したが、第2実施形態では自己検知方式によりレバー部10cの振動状態を測定する点である。
【0107】
即ち、本実施形態の走査型プローブ顕微鏡40は、レバー部10cに歪抵抗41が形成されたカンチレバー42を備えている。このカンチレバー42は、図7及び図8に示すように、発熱抵抗体11及び配線部12が形成されたシリコン活性層15cの上面に成膜された絶縁膜43と、該絶縁膜43上に形成された歪抵抗41と、該歪抵抗41に電気接続された配線部44と、を有している。なお、シリコン活性層15c上に歪抵抗41を形成すると共に、絶縁膜43上に発熱抵抗体11を形成しても構わない。
【0108】
歪抵抗41は、レバー部10cの変位量に応じて抵抗値が変化するものであって、例えば、ピエゾ抵抗である。この歪抵抗41は、絶縁膜43を挟んで発熱抵抗体11に対向するように形成されている。配線部44は、例えばアルミ配線であり、歪抵抗41と同様に絶縁膜43を挟んで配線部12に対向するように形成されている。また、配線部44の端末には、2つの外部接続端子44aが設けられている。
【0109】
また、図6に示すように、2つの外部接続端子44aには、歪抵抗41に検出電圧V2を印加して該歪抵抗41に流れる電流値を検出すると共に、検出した電流値に応じた出力信号を増幅して差分測定部46に出力する増幅回路45が接続されている。一方、差分測定部46には、増幅回路45から出力信号が入力されてくるだけでなく、基準発生部47から基準信号が入力されている。この基準信号は、例えば、レバー部10cの振動状態の変位量が“0”のときに、差分測定部46の出力を“0”とする信号である。そして、差分測定部46は、この基準信号と増幅回路45から送られてくる出力信号とを比較して、その差である誤差信号をZ電圧フィードバック回路36に出力するようになっている。即ち、この誤差信号は、レバー部10cの振動状態の変位量に対応する信号である。よって、この誤差信号をモニタすることで、レバー部10cの振動状態の変位を測定することができる。
【0110】
即ち、これら増幅回路45、差分測定部46及び基準発生部47は、歪抵抗41に検出電圧V2を印加すると共に、該歪抵抗41に流れる電流値の変化に基づいてレバー部10cの振動状態の変位を測定する変位測定部48として機能する。また、この変位測定部48と歪抵抗41とで、変位測定機構6として機能する。
【0111】
このように構成された走査型プローブ顕微鏡40により、測定を行う場合を説明する。
本実施形態の場合には、測定工程を行うにあたって、変位測定部48によって検出電圧V2を印加し、該歪抵抗41に流れる電流値をモニタしておく。そして、この状態で試料Sの走査を行う。すると、探針10aと試料Sとの間に働く原子間力の作用によりレバー部10cの振動状態が変位するので、その変位量に応じて歪抵抗41の抵抗値が変化する。よって、歪抵抗41に流れる電流値が変化する。すると増幅回路45は、この電流変化に応じた出力信号を差分測定部46に出力する。
【0112】
差分測定部46は、送られてきた出力信号と基準発生部47から送られてきた基準信号とを比較して、レバー部10cの振動状態の変位量に応じた誤差信号を算出すると共に、該誤差信号をZ電圧フィードバック回路36に出力する。これにより、Z電圧フィードバック回路36は、レバー部10cの振動状態の変位を測定することができる。そして、Z電圧フィードバック回路36は、誤差信号に基づいてステージ4をZ方向に移動させるようにドライブ回路27を制御し、探針10aと試料表面S1との距離を一定にさせる。つまり、誤差信号を“0”に近づけるようにステージ4を制御する。
その結果、検出されたレバー部10cの振動状態の変位が一定となるように高さ制御しながらカンチレバー42を走査させることができ、試料SをDFM測定することができる。
【0113】
特に、本実施形態の場合には、カンチレバー42を自己検知式(自己変位検出型)として機能させることができるので、レバー部10cの振動状態を測定するにあたって、第1実施形態のように光てこ方式特有のアライメント作業(レーザ光Lの光路調整作業)が不要である。従って、取り扱いがさらに簡単になり、試料Sの測定をよりスピーディで簡便に行うことができる。
【0114】
なお、上記第2実施形態において、図9に示すように、レバー部10cの近傍に温度補償用レファレンス電極50を配置しても構わない。
この温度補償用レファレンス電極50は、例えばレバー部10cに隣接した状態で本体部10bに片持ち支持されている。但し、カンチレバー42と一体的に温度補償用レファレンス電極50を形成する必要はなく、カンチレバー42とは関係なく単独のレバーで構成しても構わない。但し、一体的に形成することで、レバー部10cのより近傍に温度補償用レファレンス電極50を配置できるので好ましい。
【0115】
この温度補償用レファレンス電極50は、レバー部10cと同様に開口10dが形成されていると共に、歪抵抗41及び2つの外部接続端子44aを有する配線部44が形成されている。
そして、レバー部10c側の2つの外部接続端子44aと、温度補償用レファレンス電極50側の2つの外部接続端子44aとには、増幅回路45に代えてホイートストンブリッジ回路51が接続されている。このホイートストンブリッジ回路51は、2つの歪抵抗41に流れる電流値を比較して差分を算出し、算出した差分の電流値に応じた出力信号を増幅した後、差分測定部46に出力するようになっている。つまり、この場合の変位測定部48は、差分した電流値の変化に基づいて、レバー部10cの振動状態の変位を測定するようになっている。
【0116】
ここで、歪抵抗41は、レバー部10cの変位とは別に温度変化によっても抵抗値が変化してしまう。しかしながら、ホイートストンブリッジ回路51は、温度補償用レファレンス電極50側の歪抵抗41に流れる電流値を参照しているので、温度変化による不要な抵抗値変化分をキャンセルすることができ、温度影響をなくすことができる。従って、より高精度に試料Sを測定することができ、測定結果の信頼性を高めることができる。
【0117】
なお、2つの歪抵抗41に接続されている4つの外部接続端子44aのうち、2つはグランド端子であるが、この部分を共通の外部接続端子44aとなるように配線部44を途中で合流させても構わない。この場合には、図10に示すように、外部接続端子44aが3つとなる。この場合であっても、同様の作用効果を奏することができる。
【0118】
なお、温度補償用レファレンス電極50を用いる場合、レバー部10cよりも高い共振周波数を持つものを使用することが好ましい。このようにすることで、レバー部10cの共振周波数以下で温度補償用レファレンス電極50が共振してしまうことを防止することができる。従って、安定にした動作を行わせることができる。
また、温度補償用レファレンス電極50とレバー部10cとの厚みが同じ場合には、温度補償用レファレンス電極50の長さをレバー部10cよりも短くすると良い。但し、極端に短くしてしまうと、熱的な特性に差が出てしまうので、レバー部10cの長さの1/5〜4/5の間に収まる長さにすると良い。
【0119】
また、上記第2実施形態では、発熱抵抗体11と歪抵抗41とをレバー部10cに形成したが、発熱抵抗体11だけを形成し、該発熱抵抗体11に歪抵抗の機能を兼用させても構わない。この場合には、発熱抵抗体11に加振電圧V1を印加して発熱させ、レバー部10cを振動させると同時に、発熱抵抗体11を流れる電流値をモニタしておけば良い。この場合であっても、同様の作用効果を奏することができる。
特に、発熱抵抗体11だけで、レバー部10cを振動させる役割と、レバー部10cの振動状態を測定する役割と、いう2つの役割を兼用できるので、カンチレバーの構成を簡略化することができるうえ、カンチレバーの作製に費やす部品コストを低減することができる。
【0120】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0121】
例えば、上記各実施形態において、発熱抵抗体11に常に加振電圧V1を印加してレバー部10cを振動させ続けながら、レバー部10cの振動状態の変位を測定しても構わない。つまり、加振工程と測定工程とを同時に行っても構わない。この場合には、試料Sを常に正確に測定することができる。
また、同時ではなく、加振工程と測定工程とを、時間差を空けて交互に行っても構わない。この場合には、レバー部10cの加振と、レバー部10cの振動状態の測定とを交互に行えるので、それぞれの作動を安定且つ確実に制御し易い。
【0122】
特に、時間差を空ける場合には、下記式を満たすように設定することが好ましい。
即ち、S≦q/f(S:時間差、q:Q値、f:共振周波数)を満たすように設定すると良い。こうすることで、レバー部10cを極端に減衰させることなく、再度加振させることができる。従って、レバー部10cを共振させた状態に確実に維持することができる。
【0123】
また、上記各実施形態では、試料S側を三次元方向に移動させる試料スキャン方式を例にして説明したが、この方式に限られず、カンチレバー側を三次元方向に移動させるスキャン方式にしても構わない。この場合においても、スキャン方式が異なるだけで、試料スキャン方式と同様の作用効果を奏することができる。なお、試料S側及びカンチレバー側を共に三次元方向に移動できるように構成しても構わない。
【0124】
また、上記各実施形態では、振動モードSPMの一例として、DFM測定を行う場合を例にしたが、この場合に限られず、例えば、磁気を検知できる探針を有するカンチレバーを同様に振動させ、この際のカンチレバーの撓み振幅や位相を検出することで磁気試料Sの磁気分布や磁区構造等の測定を行うMFM(Magnetic Force Microscope:磁気力顕微鏡)においても同様の作用効果を奏することができる。
【0125】
更に、AFM動作中に、試料Sを試料表面S1に平行な水平方向に横振動させ、又はレバー部10cを試料表面S1に平行な水平方向に横振動させ、この際のレバー部10cのねじれ振動振幅を検出することで摩擦力分布を測定するLM−FFM(Lateral Force Modulation Friction Force Microscope:横振動摩擦力顕微鏡)や、AFM動作中に、試料Sを試料表面S1に垂直なZ方向に微小振動させて、又は、レバー部10cを試料表面S1に垂直なZ方向に微小移動させて、周期的な力を加え、この際のレバー部10cの撓み振幅や、sin成分、cos成分を検出することで粘弾性分布を測定するVE−AFM(Viscoelastic AFM:マイクロ粘弾性測定−原子間力顕微鏡)等においても同様の作用効果を奏することができる。
【0126】
また、上記各実施形態において、レバー部10cを振動させるのではなく、熱膨張を利用してレバー部10cを強制的に撓ませることも可能である。従って、レバー部10cの先端に形成された探針10aを、試料Sに対して強制的に押し付けたり、これとは逆に、強制的に引き離したりすることが可能である。このように、状況に応じてより複雑な操作を行うことができ、試料Sを多角的に測定することができる。
更には、複数本のレバー部10cが本体部10bに片持ち状態に支持されたマルチタイプのカンチレバーを採用し、使用するレバー部10cだけを強制的に試料S側に撓ませて測定に使用しても構わないし、使用するレバー部10c以外のものを強制的に試料Sから離間するように撓ませるようにすることも可能である。このように、熱膨張を利用することで、従来にはない多様な使い方を行うことができる。
【0127】
また、上記実施形態では、カンチレバーシステム9を走査型プローブ顕微鏡1に適用した場合を例に挙げて説明したが、この場合に限定されず、様々な装置に適用して構わない。
例えば、物質を吸着させて、その吸着量から物質の微小な重量を測定する質量センサにカンチレバーシステム9を適用しても構わない。また、試料の弾性を計測する弾性計測装置に適用しても構わないし、試料等を把持する等の各種の取り扱いを行うことができるマニピュレーション装置に適用しても構わない。また、このような各種装置にカンチレバーシステム9を適用する場合には、レバー部10cの先端に探針10aが形成されていないカンチレバーを採用しても構わない。つまり、本発明に係るカンチレバーは、探針が必須な構成ではない。
【0128】
(実施例)
次に、実際に抵抗体に周期的に電圧を印加して、レバー部を共振周波数付近の周波数で振動させた場合の実施例について以下に説明する。
初めに、従来から一般的に用いられている圧電素子を利用した加振源を用いてカンチレバーのレバー部を加振させ、そのときに測定したQカーブ(共振特性を示すカーブ)を図11に示す。なお、測定周波数の下限は1kHz、上限は100kHzに設定した。その結果、図11に示すように、39.485kHzにピークトップを確認することができた。しかしながら、これと同時にレバー部以外の振動(副次振動)の影響によってQカーブが乱れてしまっていることも確認することができた。この原因としては、加振源の振動がカンチレバー以外の周辺構造物に伝わってしまい、これらを振動させたことが原因とされる。その結果、カンチレバーの振動特性に影響を与えてしまい、理想的なQカーブを得ることができなかった。
【0129】
次に、上述したレバー部と同じ共振特性を有するレバー部に抵抗体を形成し、該抵抗体に交流電圧を印加して周期的に発熱させることで、レバー部を振動させた。なお、測定周波数の下限は1kHz、上限は100kHzに設定した。この際、0Vを中心とした交流電圧を印加した。
その結果、図12に示すように、レバー部の共振周波数(39.485kHz)の略1/2倍の周波数である19.743kHzで大きな振幅を確認することができた。このことから、図3で説明したように、レバー部の共振周波数の略1/2倍の周波数の交流電圧を抵抗体に印加することで、レバー部を共振周波数で振動させることができる点を実際に確認することができた。
【0130】
続いて、上述したレバー部と同じ共振特性を有するレバー部に抵抗体を形成し、該抵抗体に交流電圧を印加して周期的に発熱させることで、レバー部を振動させた。なお、測定周波数の下限は1kHz、上限は100kHzに設定した。この際、0Vを横切らないように、振幅中心ラインが電圧中心ライン(0Vライン)からオフセットされた正電圧領域で交流電圧を印加した。
その結果、図13に示すように、レバー部の共振周波数(39.485kHz)と略等しい周波数である39.500kHzで大きな振幅を確認することができた。このことから、図5で説明したように、周波数をオフセット調整しながらレバー部の共振周波数付近の周波数で交流電圧を印加することで、レバー部を共振周波数で振動させることができる点を実際に確認することができた。
特に、図12及び図13のいずれの場合であっても、図11に示す場合とは異なり、副次振動がない非常にきれいな(共振特性に忠実な)カーブを得ることができた。これは、加振源を用いた場合とは異なり、抵抗体の熱膨張を利用しているので、周辺構造物を振動させることなくレバー部だけを直接的に振動させることができた為である。このように、従来にはない、格別な効果を奏することを実際に確認することができた。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】本発明に係る第1実施形態を示す走査型プローブ顕微鏡の構成図である。
【図2】図1に示すカンチレバーシステムを構成するカンチレバーの斜視図である。
【図3】図2に示すカンチレバーの発熱抵抗体に加振電圧を印加してレバー部を振動させる際の、加振電圧の正弦波を示す図である。
【図4】本発明に係る第1実施形態の変形例を示す図であって、発熱抵抗体上に熱膨張部が形成されたカンチレバーの断面図である。
【図5】本発明に係る第1実施形態の変形例を示す図であって、図3とは異なる加振電圧の正弦波を示す図である。
【図6】本発明に係る第2実施形態を示す走査型プローブ顕微鏡の構成図である。
【図7】図6に示すカンチレバーの斜視図である。
【図8】図7に示すカンチレバーの断面図である。
【図9】本発明に係る第2実施形態の変形例を示す図であって、温度補償用レファレンス電極を有するカンチレバーとホイートストンブリッジ回路との関係を示す図である。
【図10】図9に示すカンチレバーの変形例を示す図である。
【図11】一般的に用いられている加振源を利用してレバー部を実際に振動させたときのQカーブである。
【図12】レバー部に形成された発熱抵抗体に0Vを中心とする交流電圧を印加することで、レバー部を振動させたときのQカーブである。
【図13】レバー部に形成された発熱抵抗体に、0Vを横切らないように振幅中心ラインが電圧中心ライン(0Vライン)からオフセットされた正電圧領域で交流電圧を印加することで、レバー部を振動させたときのQカーブである。
【符号の説明】
【0132】
L1…振幅中心ライン
L2…電圧中心ライン
S…試料
S1…試料表面
1、40…走査型プローブ顕微鏡
2、42…カンチレバー
3…電圧印加部
3a…ルート回路
4…ステージ
5…移動機構
6…変位測定機構
7…制御機構
9…カンチレバーシステム
10a…探針
10b…本体部
10c…レバー部
11…発熱抵抗体(抵抗体)
38…熱膨張部
41…歪抵抗
48…変位測定部
50…温度補償用レファレンス電極
51…ホイートストンブリッジ回路
【技術分野】
【0001】
本発明は、カンチレバー、該カンチレバーを有するカンチレバーシステム、該システムを有する走査型プローブ顕微鏡、質量センサ装置、弾性計測装置及びマニピュレーション装置に関するものである。また、カンチレバーの変位を測定するカンチレバーの変位測定方法、カンチレバーを加振させるカンチレバーの加振方法及びカンチレバーを変形させるカンチレバーの変形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ナノテクノロジーの進歩により、カンチレバーを使用したセンサが提案され、形状観察、質量、濃度、粘弾性、磁気力、電位、電流、光情報測定、加工やマニピュレーションを行う技術が要求されている。この要求を実現するための装置の1つとして、走査型プローブ顕微鏡(SPM:Scanning Probe Microscope)が知られている。この走査型プローブ顕微鏡は、金属、半導体、セラミック、樹脂、高分子、生体材料、絶縁物等の各種の試料の表面を微小領域で観察し、試料の表面形状や粘弾性等の各種の物性を原子レベルの高分解能で観察することができる装置である。しかも走査型プローブ顕微鏡は、真空中、ガス中、大気中、液中等の様々な環境下で使用できることから、幅広い分野で好適に利用されている。
【0003】
また、走査型プローブ顕微鏡は、測定対象物に応じて様々な測定モードがあり、最適な測定モードをその都度選択する必要がある。その1つとして、カンチレバーホルダにセットしたカンチレバーを振動させて測定を行う振動モードSPMが知られている。
この振動モードSPMとしては、例えば、共振させたカンチレバーの振動振幅が一定になるように探針と試料との間の距離を制御しながら走査を行うDFM(共振モード測定−原子間力顕微鏡:Dynamic Force Mode Microscope)や、AFM動作中に、試料を試料表面に垂直なZ方向に微小振動、又は、カンチレバーを試料表面に垂直なZ方向に微小振動させて、周期的な力を加え、この際のカンチレバーの撓み振幅や、sin成分、cos成分を検出することで粘弾性分布を測定するVE−AFM(マイクロ粘弾性測定−原子間力顕微鏡:Viscoelastic AFM)や、AFM動作中に、試料を試料表面に平行な水平方向に横振動させ、又はカンチレバーを試料表面に平行な水平方向に横振動させ、この際のカンチレバーのねじれ振動振幅を検出することで摩擦力分布を測定するLM−FFM(横振動摩擦力顕微鏡:Lateral Force Modulation Friction Force Microscope)等がある。
【0004】
ところで、カンチレバーを振動させるには、カンチレバーの周辺(例えば、カンチレバーホルダ)に取り付けられた加振源を振動させ、該振動をカンチレバーに伝えることで、カンチレバーを所定の周波数及び振幅で振動させる方法が一般的である(特許文献1参照)。また、加振源ではなく、カンチレバーに磁性体を取り付け、該磁性体によって発生した磁場を利用してカンチレバーを振動させる方法も一部に採用されている。
【特許文献1】特許第3222410号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の振動モードSPMによる測定では、まだ以下の問題が残されていた。
即ち、加振源を利用してカンチレバーを振動させる方法では、加振源の振動がカンチレバー以外の周辺構造物にも伝わってしまい、これらを振動させてしまうものであった。そのため、カンチレバーの振動特性に影響を与えてしまい、理想的な振動状態とは異なった振動特性になってしまっていた。その結果、カンチレバーの共振特性を正確に識別することが難しく、振動周波数や振幅、位相の振動特性に対して、正確な設定をすることが困難であった。よって、試料を高精度に測定することが難しかった。
【0006】
一方、磁性体を利用してカンチレバーを振動させる方法では、以下に記載するいくつかの不都合があった。
まず、カンチレバーに磁性体を取り付ける必要があるため、カンチレバーの材質が限定されてしまうものであった。よって、多様な振動特性を有するカンチレバーの中から最適なものを幅広く選択するといったことができず、選択範囲が狭まってしまう不都合があった。
【0007】
また、装置構成として、磁場を発生させる機構がどうしても必要となってしまうので、該機構の分だけコストアップしてしまうものであった。また、磁場を発生させる際に、発熱してしまう。そのため、この発熱の影響でドリフトが発生してしまい、分解能が低下する恐れがあった。更に、磁場を発生させる機構を設置する必要があるので、装置構成が大型化してしまうと共に、全体的な剛性の低下、分解能の低下や操作速度の低下を招いてしまうものであった。加えて、磁場を発生させる機構の設置により、測定領域が狭くなる等のスペース的な制約を受けたり、可動範囲の制約を受けたり、カンチレバーの上下空間を塞いでしまうので、光学顕微鏡の併用を阻害したりする恐れがあった。
【0008】
ところで、カンチレバーを振動させるということは、カンチレバーを繰り返し周期的に変形させるということである。この変形について着目すると、一般的にカンチレバーは、自ら変形するものではなく外的要因によって変形させられるものである。即ち、カンチレバーは、試料からの斥力や引力を受けた時や微小物質等が付着した時等に撓んで変形するようになっている。ところが、近年、観察や測定をより多角的に行いたい等の観点から、カンチレバーを自ら積極的に変形させたいという要求が多々ある。この点、従来のカンチレバーは、このような要求に応えることができるものではなかった。
【0009】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その主目的は、自ら積極的に撓んで変形することができると共に、加振源や磁性体を利用せずに振動させることができるカンチレバー及びカンチレバーシステムを提供することである。
また、別の目的としては、上記カンチレバーシステムを有する走査型プローブ顕微鏡、質量センサ装置、弾性計測装置及びマニピュレーション装置、並びに、カンチレバーを加振させるカンチレバーの加振方法及びカンチレバーの変位を測定するカンチレバーの変位測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記課題を解決するために以下の手段を提供する。
本発明に係るカンチレバーは、基端側が本体部に支持されたレバー部と、該レバー部に形成され、電圧の印加によって発熱し、該発熱による熱膨張によってレバー部を変形させる抵抗体と、を備えていることを特徴とする。
【0011】
この発明に係るカンチレバーにおいては、電圧が印加されると抵抗体が発熱する。すると、この発熱によって抵抗体の周辺が局所的に熱膨張するので、レバー部が変形する。このように、熱膨張を利用してレバー部を自ら強制的に撓ませて変形させることができる。従って、従来にはないカンチレバーの使い方を行うことができる。例えば、レバー部の先端を試料に対して強制的に押し付けたり、これとは逆に強制的に引き離したりするといったことが可能である。このように、従来にはない多様な使い方を行うことができ、利便性に優れたカンチレバーとすることができる。
【0012】
また、本発明に係るカンチレバーは、上記本発明のカンチレバーにおいて、前記レバー部の一部に該レバー部よりも熱膨張係数が大きい素材による熱膨張部が前記抵抗体の近傍に形成されていることを特徴とする。
【0013】
この発明に係るカンチレバーにおいては、抵抗体の近傍に熱膨張部が形成されているので、抵抗体の発熱に影響を受けて熱膨張部が積極的に熱膨張する。そのため、少ない発熱量でレバー部をより効率良く変形させることができ、省電力化を図ることができる。
【0014】
また、本発明に係るカンチレバーは、上記本発明のカンチレバーにおいて、前記熱膨張部が、前記レバー部の両面のうち一方の面側に形成されていることを特徴とする。
【0015】
この発明に係るカンチレバーにおいては、レバー部の一方の面側に熱膨張部が形成されているので、一方の面側が発熱の影響により大きく伸縮して積極的に変位する。従って、レバー部をさらに効率良く変形させることができる。
【0016】
また、本発明に係るカンチレバーは、上記本発明のカンチレバーにおいて、前記熱膨張部が、絶縁性物質であることを特徴とする。
【0017】
この発明に係るカンチレバーにおいては、熱膨張部が絶縁性物質であるので、熱膨張部と抵抗体とを直接接触させたとしても電気的な特性に何ら影響を与えることがない。そのため、抵抗体の形成位置に関係なく熱膨張部を形成することができ、カンチレバーの設計の自由度を向上することができる。
【0018】
また、本発明に係るカンチレバーは、上記本発明のカンチレバーにおいて、前記レバー部が、自己変位検出型のレバーであることを特徴とする。
【0019】
この発明に係るカンチレバーにおいては、レバー部が自己変位検出型のレバーであるので、レバー部自身がどの程度変形したかを確実に把握することができる。従って、光てこ方式を利用せずにレバー部の変形状態を把握することができるので、光てこ方式特有のアライメント作業が不要であり、使い易い。
【0020】
また、本発明に係るカンチレバーは、上記本発明のカンチレバーにおいて、前記レバー部が、変位量に応じて抵抗値が変化する歪抵抗を有する自己変位検出型のレバーであることを特徴とする。
【0021】
この発明に係るカンチレバーにおいては、レバー部が撓んで変形すると、その変位量に応じて歪抵抗の抵抗値が変化する。よって、歪抵抗に流れる電流値をモニタすることで、レバー部がどの程度変形したかを確実に把握することができる。従って、レバー部の変形をより高精度に制御することができる。
特に、発熱を利用してレバー部を変形させる動作と、その変形による抵抗値変化からレバー部の変形を確認するという動作と、を両方同時に行うことができるので、非常に使い易い。
【0022】
また、本発明に係るカンチレバーシステムは、上記本発明のカンチレバーと、前記抵抗体に対して電圧を印加する電圧印加部と、前記レバー部の変位を測定する変位測定機構と、を備えていることを特徴とする。
【0023】
この発明に係るカンチレバーシステムにおいては、電圧印加部が抵抗体に対して電圧を印加することで、抵抗体の発熱を利用してレバー部を変形させることができる。また、変位測定機構が、レバー部の変位を測定するので、レバー部の変形を高精度に制御することができる。また、変位測定機構の測定結果に基づいて、各種の測定や観察(例えば、試料の表面形状観察や試料の磁気、電位分布測定等)を行うことができる。
【0024】
また、本発明に係るカンチレバーシステムは、上記本発明のカンチレバーと、前記抵抗体に対して電圧を印加する電圧印加部と、前記歪抵抗に流れる電流値の変化に基づいて前記レバー部の変位を測定する変位測定機構と、を備えていることを特徴とする。
【0025】
この発明に係るカンチレバーシステムにおいては、電圧印加部が抵抗体に対して電圧を印加することで、抵抗体の発熱を利用してレバー部を変形させることができる。また、レバー部が撓んで変位すると、その変位量に応じて歪抵抗の抵抗値が変化する。よって、変位測定機構は、歪抵抗に流れる電流値の変化に基づいてレバー部の変位を確実に測定することができる。よって、レバー部の変形を高精度に制御することができる。また、変位測定機構の測定結果に基づいて、各種の測定や観察(例えば、試料の表面形状観察や試料の磁気、電位分布測定等)を行うことができる。
特に、レバー部が自己変位型のレバーであるので、レバー部の変位を測定するにあたって、光てこ方式等の一般的な方法を採用する必要がない。従って、変位測定機構の構成を簡略化することができると共に、カンチレバーを利用して各種の測定をスピーディで簡便に行うことができる。
【0026】
また、本発明に係るカンチレバーシステムは、上記本発明のカンチレバーシステムにおいて、前記電圧印加部が、電圧値を平方根演算するルート回路を有し、変形させたい量に比例した電圧信号をルート回路にて変換した後、前記抵抗体に印加することを特徴とする。
【0027】
この発明に係るカンチレバーシステムにおいては、抵抗体に電圧を印加する際に、まず電圧印加部が、変形させたい量に比例した電圧信号を一旦ルート回路にて平方根演算(ルート演算)する。そして電圧印加部は、演算後の電圧信号に応じた電圧を抵抗体に印加する。ここで、上述したように、抵抗体を発熱させることでレバー部は変形するが、この変形量は発熱量である電力に比例する。つまり、電力を上げることで、変形量が大きくなる。この電力は、W=V2/R(V:電圧値、R:抵抗値)で表されるので、電圧値の2乗に比例して大きくなる。
ところで、電圧印加部は、上述したようにルート回路によって平方根演算された電圧信号に応じた電圧を、上記式のVに相当する印加電圧としている。そのため、見かけ上、入力する電圧に比例するようにレバー部を変形させることができる。従って、熱膨張を利用してカンチレバーを変形させる場合であっても、従来と同じ感覚で電圧調整を行うことができる。よって、扱い易くなり、操作性をより向上することができる。
【0028】
また、本発明に係るカンチレバーシステムは、上記本発明のカンチレバーシステムにおいて、前記電圧印加部が、前記電圧を、放熱による前記抵抗体の温度低下を補うように増加させた後に、抵抗体に印加することを特徴とする。
【0029】
この発明に係るカンチレバーシステムにおいては、抵抗体に電圧を印加する際に、電圧印加部が放熱による抵抗体の温度低下を予め考慮して、抵抗体に若干高めの電圧を印加する。これにより、放熱による温度低下があったとしても、抵抗体を所望する温度で熱膨張させることができ、狙い通りにレバー部を変形させることができる。
【0030】
また、本発明に係るカンチレバーシステムは、上記本発明のカンチレバーシステムにおいて、前記電圧印加部が、前記電圧を、熱伝導の遅れによる前記抵抗体の温度低下を補うように増加させた後に、抵抗体に印加することを特徴とする。
【0031】
この発明に係るカンチレバーシステムにおいては、抵抗体に電圧を印加する際に、電圧印加部が熱伝導の遅れによる抵抗体の温度低下を予め考慮して、抵抗体に若干高めの電圧を印加する。これにより、印加する電圧の波形の立ち上がりを急峻にすることができ、熱伝導の遅れがあったとしても、狙い通りにレバー部を変形させることができる。
【0032】
また、本発明に係るカンチレバーシステムは、上記本発明のカンチレバーシステムにおいて、前記電圧印加部が、前記歪抵抗に電圧を印加して発熱させ、該歪抵抗を前記抵抗体として動作させることを特徴とする。
【0033】
この発明に係るカンチレバーシステムにおいては、歪抵抗を抵抗体として動作させることができる。つまり、発熱によりレバー部を変形させる役割と、レバー部の変位を測定する役割という2つの役割を歪抵抗に兼用させることができる。そのため、カンチレバーの構成を簡略化することができるうえ、カンチレバーの製造に費やすコストを低減することができる。
【0034】
また、本発明に係るカンチレバーシステムは、上記本発明のカンチレバーシステムにおいて、前記変位測定機構が、前記電圧印加部が前記歪抵抗に印加した電圧とそれによって発生する電流とに基づく歪抵抗の抵抗値変化を検出して、前記レバー部の変位を測定することを特徴とする。
【0035】
この発明に係るカンチレバーシステムにおいては、歪抵抗に電圧を印加するだけで、発熱と測定とを同時に行うことができる。そのため、複雑な制御が不要であり、取り扱いが簡便となる。
【0036】
また、本発明に係るカンチレバーシステムは、上記本発明のカンチレバーシステムにおいて、前記カンチレバーが、前記歪抵抗が組み込まれた温度補償用レファレンス電極を有し、前記変位測定機構が、2つの前記歪抵抗にそれぞれ流れる電流値の差に基づいて、前記レバー部の変位を測定することを特徴とする。
【0037】
この発明に係るカンチレバーシステムにおいては、変位測定機構が、レバー部に形成された歪抵抗を流れる電流値と、温度補償用レファレンス電極に組み込まれた歪抵抗に流れる電流値とを比較して差を算出している。そして、これら2つの電流値の差に基づいて、レバー部の変位を測定している。
ここで、歪抵抗は、レバー部の変位とは別に温度変化によっても抵抗値が変化してしまう。しかしながら、変位測定機構は、温度補償用レファレンス電極側の歪抵抗に流れる電流値を参照しているので、温度変化による不要な抵抗値変化分をキャンセルすることができ、温度影響をなくすことができる。よって、カンチレバーを利用して、より高精度に各種の測定を行うことができる。
【0038】
また、本発明に係るカンチレバーシステムは、上記本発明のカンチレバーシステムにおいて、前記変位測定機構が、ホイートストンブリッジ回路を利用して2つの前記歪抵抗にそれぞれ流れる電流値の差を検出することを特徴とする。
【0039】
この発明に係るカンチレバーシステムにおいては、ホイートストンブリッジ回路を利用するので、レバー部に形成された歪抵抗を流れる電流値と、温度補償用レファレンス電極に組み込まれた歪抵抗を流れる電流値との差を簡単且つ正確に検出することができる。
【0040】
また、本発明に係るカンチレバーシステムは、上記本発明のカンチレバーシステムにおいて、前記変位測定機構が、差動増幅回路を利用して2つの前記歪抵抗にそれぞれ流れる電流値の差を検出することを特徴とする。
【0041】
この発明に係るカンチレバーシステムにおいては、オペアンプ等で用いられる作動増幅回路を利用するので、レバー部に形成された歪抵抗を流れる電流値と、温度補償用レファレンス電極に組み込まれた歪抵抗を流れる電流値との差を簡単且つ正確に検出することができる。
【0042】
また、本発明に係るカンチレバーシステムは、上記本発明のカンチレバーシステムにおいて、前記電圧印加部が、前記レバー部が共振周波数付近の周波数で、且つ、正電圧領域又は負電圧領域で周期するように、振幅中心ラインが電圧中心ラインからオフセットされた交流電圧を周期的に印加することを特徴とする。
【0043】
この発明に係るカンチレバーシステムにおいては、電圧印加部がレバー部に対して電圧を周期的に印加する。これにより、レバー部は単に変形するのではなく、変形が繰り返されるので振動した状態となる。しかもレバー部は、共振周波数(一次共振や高次の共振周波数)付近の周波数で振動する。従って、レバー部を振動させる振動モードで、各種の測定や観察(例えば、試料の表面形状観察や試料の磁気、電位分布測定等)を行うことができる。
加えて、正電圧領域又は負電圧領域で周期するように振幅中心ラインが電圧中心ラインからオフセットされた交流電圧を印加する。この場合には、交流電圧の正弦波のうち、+側の最大地点で抵抗体が最も発熱し、−側の最大地点で抵抗体の発熱が最小となる。つまり、+側の最大地点に達する度に、レバー部が最も変形して撓んだ状態となる。そのため、交流電圧と略同じ周期でレバー部を振動させることができる。その結果、カンチレバーを共振周波数付近の周波数で確実に振動させることができる。特に、交流電圧の周波数をオフセット調整するだけで、レバー部を共振周波数で確実に振動させることができるので、容易である。
【0044】
また、熱膨張を利用して振動させるので、加振源や磁場を利用してレバーを振動させる場合とは異なり、カンチレバーの周辺の構成品に振動を何ら伝えることなくレバー部自身を直接振動させることができる。よって、カンチレバー単独の共振特性を得ることができる。よって、Qカーブ測定の際に余分なノイズ等が含まれていない理想的なQカーブを得ることができ、カンチレバーの共振特性を正確に識別することができる。従って、カンチレバーの振動周波数や振幅、位相等の振動特性に対して正確な設定を行うことができる。
【0045】
また、本発明に係るカンチレバーシステムは、上記本発明のカンチレバーシステムにおいて、前記電圧印加部が、前記レバー部が共振周波数の略1/2倍の周波数で、且つ、正電圧領域と負電圧領域とで周期するように設定された交流電圧を周期的に印加することを特徴とする。
【0046】
この発明に係るカンチレバーシステムにおいては、電圧印加部がレバー部に対して電圧を周期的に印加する。これにより、レバー部は単に変形するのではなく、変形が繰り返されるので振動した状態となる。しかも電圧印加部は、レバー部の共振周波数の略1/2倍の周波数で、且つ、正電圧領域と負電圧領域とで周期するように設定された交流電圧を印加する。この場合には、交流電圧の正弦波のうち、+側の最大地点と−側の最大地点とで抵抗体は最も発熱する。つまり、これら両地点に達する度に、レバー部が同一方向に最も変形して撓んだ状態となる。そのため、交流電圧の2倍の周期でレバー部を振動させることができる。その結果、カンチレバーを共振周波数付近の周波数で振動させることができる。特に、交流電圧の周波数を調整するだけで、レバー部を共振周波数で確実に振動させることができるので、設定が容易である。
【0047】
また、本発明に係るカンチレバーシステムは、上記本発明のカンチレバーシステムにおいて、前記電圧印加部と前記変位測定機構とを、時間差を空けて交互に作動させることを特徴とする。
【0048】
この発明に係るカンチレバーシステムにおいては、レバー部の変形とレバー部の測定とを時間差を空けて交互に行うので、それぞれの作動を安定且つ確実に行うことができる。
【0049】
また、本発明に係るカンチレバーシステムは、上記本発明のカンチレバーシステムにおいて、前記電圧印加部と前記変位測定機構とを、下記式を満たす時間差を空けて交互に作動させることを特徴とする。
S≦q/f (S:時間差、q:Q値、f:カンチレバーの共振周波数)
【0050】
この発明に係るカンチレバーシステムにおいては、レバー部の加振とレバー部の測定とを時間差を空けて交互に行うので、それぞれの作動を安定且つ確実に行うことができる。特に、時間差Sが、(Q値/共振周波数)以下に設定されているので、レバー部を極端に減衰させることなく再度加振させることができる。従って、レバー部を共振させた状態に確実に維持することができる。
【0051】
また、本発明に係るカンチレバーシステムは、上記本発明のカンチレバーシステムにおいて、前記カンチレバーを複数有し、これら複数のカンチレバーが、前記レバー部の先端にそれぞれ試料に対向配置される探針を有し、前記電圧印加部が、複数の前記カンチレバーのうち任意に選択した1本以上のカンチレバーに形成された前記抵抗体に電圧を印加して発熱させ、前記探針を前記試料に対して強制的に接触又は離間させることを特徴とする。
【0052】
この発明に係るカンチレバーシステムにおいては、複数のカンチレバーの中から任意に選択したカンチレバーのレバー部だけを変形させて、該レバー部の先端に形成された探針を試料に対して強制的に接触又は離間させることができる。このように、熱膨張を利用した多様な使い方をすることができる。
【0053】
また、本発明に係る走査型プローブ顕微鏡は、上記本発明のカンチレバーシステムを備えていることを特徴とする。
また、本発明に係る質量センサ装置は、上記本発明のカンチレバーシステムを備えていることを特徴とする。
また、本発明に係る弾性計測装置は、上記本発明のカンチレバーシステムを備えていることを特徴とする。
また、本発明に係るマニピュレーション装置は、上記本発明のカンチレバーシステムを備えていることを特徴とする。
【0054】
この発明に係る走査型プローブ顕微鏡、質量センサ装置、弾性計測装置及びマニピュレーション装置においては、上述したカンチレバーシステムを備えているので、抵抗体の発熱を利用してレバー部を変形させることができる共に、変位測定機構の測定結果に基づいて各種の測定や観察を行うことができる。
【0055】
また、本発明に係るカンチレバーの変位測定方法は、上記本発明のカンチレバーの変位を測定する方法であって、前記抵抗体に対して電圧を印加し、前記歪抵抗に流れる電流値の変化に基づいて前記レバー部の変位を測定することを特徴とする。
【0056】
この発明に係るカンチレバーの変位測定方法においては、抵抗体に対して電圧を印加することでレバー部を変位させると、その変位量に応じて歪抵抗の抵抗値が変化する。そのため、歪抵抗に流れる電流値の変化に基づいてレバー部の変位を確実に測定することができる。これにより、レバー部の変形を高精度に制御することができる。特に、レバー部の変位を測定するにあたって、光てこ方式等の一般的な方法を採用する必要がない。
【0057】
また、本発明に係るカンチレバーの変位測定方法は、上記本発明のカンチレバーの変位測定方法において、前記歪抵抗に電圧を印加して発熱させ、該歪抵抗を前記抵抗体として動作させることを特徴とする。
【0058】
この発明に係るカンチレバーの変位測定方法においては、歪抵抗を抵抗体として動作させることができる。つまり、発熱によりレバー部を変形させる役割と、レバー部の変位を測定する役割という2つの役割を歪抵抗に兼用させることができる。
【0059】
また、本発明に係るカンチレバーの変位測定方法は、上記本発明のカンチレバーの変位測定方法において、前記歪抵抗に印加した電圧とそれによって発生する電流とに基づく歪抵抗の抵抗値変化を検出して、前記レバー部の変位を測定することを特徴とする。
【0060】
この発明に係るカンチレバーの変位測定方法においては、歪抵抗に電圧を印加するだけで、発熱と測定とを同時に行うことができる。そのため、複雑な制御が不要であり、取り扱いが簡便となる。
【0061】
また、本発明に係るカンチレバーの変位測定方法は、上記本発明のカンチレバーの変位測定方法において、前記歪抵抗が組み込まれた温度補償用レファレンス電極を参照し、2つの歪抵抗にそれぞれ流れる電流値の差に基づいて、前記レバー部の変位を測定することを特徴とする。
【0062】
この発明に係るカンチレバーの変位測定方法においては、レバー部に形成された歪抵抗を流れる電流値と、温度補償用レファレンス電極に組み込まれた歪抵抗に流れる電流値とを比較して差を算出する。そして、これら2つの電流値の差に基づいて、レバー部の変位を測定する。ここで、歪抵抗は、レバー部の変位とは別に温度変化によっても抵抗値が変化してしまう。しかしながら、温度補償用レファレンス電極側の歪抵抗に流れる電流値を参照しているので、温度変化による不要な抵抗値変化分をキャンセルすることができ、温度影響をなくすことができる。よって、より高精度にレバー部の変位を測定することができる。
【0063】
また、本発明に係るカンチレバーの変位測定方法は、上記本発明のカンチレバーの変位測定方法において、ホイートストンブリッジ回路を利用して2つの前記歪抵抗にそれぞれ流れる電流値の差を測定することを特徴とする。
【0064】
この発明に係るカンチレバーの変位測定方法においては、ホイートストンブリッジ回路を利用するので、レバー部に形成された歪抵抗を流れる電流値と、温度補償用レファレンス電極に組み込まれた歪抵抗を流れる電流値との差を簡単且つ正確に測定することができる。
【0065】
また、本発明に係るカンチレバーの変位測定方法は、上記本発明のカンチレバーの変位測定方法において、差動増幅回路を利用して2つの前記歪抵抗にそれぞれ流れる電流値の差を測定することを特徴とする。
【0066】
この発明に係るカンチレバーの変位測定方法においては、オペアンプ等で用いられる作動増幅回路を利用するので、レバー部に形成された歪抵抗を流れる電流値と、温度補償用レファレンス電極に組み込まれた歪抵抗を流れる電流値との差を簡単且つ正確に測定することができる。
【0067】
また、本発明に係るカンチレバーの加振方法は、上記本発明のカンチレバーを加振する方法であって、共振周波数付近の周波数で、且つ、正電圧領域又は負電圧領域で周期するように、振幅中心ラインが電圧中心ラインからオフセットされた交流電圧を前記レバー部に周期的に印加することを特徴とする。
【0068】
この発明に係るカンチレバーの加振方法においては、レバー部に対して電圧を周期的に印加する。これにより、レバー部は単に変形するのではなく、変形が繰り返されるので振動した状態となる。しかもレバー部は、共振周波数(一次共振や高次の共振周波数)付近の周波数で振動する。従って、レバー部を振動させる振動モードで、各種の測定や観察(例えば、試料の表面形状観察や試料の磁気、電位分布測定等)を行うことができる。
加えて、正電圧領域又は負電圧領域で周期するように振幅中心ラインが電圧中心ラインからオフセットされた交流電圧を印加する。この場合には、交流電圧の正弦波のうち、+側の最大地点で抵抗体が最も発熱し、−側の最大地点で抵抗体の発熱が最小となる。つまり、+側の最大地点に達する度に、レバー部が最も変形して撓んだ状態となる。そのため、交流電圧と略同じ周期でレバー部を振動させることができる。その結果、カンチレバーを共振周波数付近の周波数で確実に振動させることができる。特に、交流電圧の周波数をオフセット調整するだけで、レバー部を共振周波数で確実に振動させることができるので、容易である。
【0069】
また、熱膨張を利用して振動させるので、加振源や磁場を利用してレバーを振動させる場合とは異なり、カンチレバーの周辺の構成品に振動を何ら伝えることなくレバー部自身を直接振動させることができる。よって、カンチレバー単独の共振特性を得ることができる。よって、Qカーブ測定の際に余分なノイズ等が含まれていない理想的なQカーブを得ることができ、カンチレバーの共振特性を正確に識別することができる。従って、カンチレバーの振動周波数や振幅、位相等の振動特性に対して正確な設定を行うことができる。
【0070】
また、本発明に係るカンチレバーの加振方法は、上記本発明のカンチレバーを加振する方法であって、共振周波数の略1/2倍の周波数で、且つ、正電圧領域と負電圧領域とで周期するように設定された交流電圧を前記レバー部に周期的に印加することを特徴とする。
【0071】
この発明に係るカンチレバーの加振方法においては、レバー部に対して電圧を周期的に印加する。これにより、レバー部は単に変形するのではなく、変形が繰り返されるので振動した状態となる。しかも、レバー部の共振周波数の略1/2倍の周波数で、且つ、正電圧領域と負電圧領域とで周期するように設定された交流電圧を印加する。この場合には、交流電圧の正弦波のうち、+側の最大地点と−側の最大地点とで抵抗体は最も発熱する。つまり、これら両地点に達する度に、レバー部が同一方向に最も変形して撓んだ状態となる。そのため、交流電圧の2倍の周期でレバー部を振動させることができる。その結果、カンチレバーを共振周波数付近の周波数で振動させることができる。特に、交流電圧の周波数を調整するだけで、レバー部を共振周波数で確実に振動させることができるので、設定が容易である。
【0072】
また、本発明に係るカンチレバーの変形方法は、上記本発明のカンチレバーを変形させる方法であって、変形させたい量に比例した電圧信号を平方根演算した後、前記抵抗体に印加することを特徴とする。
【0073】
この発明に係るカンチレバーの変形方法においては、抵抗体に電圧を印加する際に、まず変形させたい量に比例した電圧信号を一旦平方根演算(ルート演算)する。そして、演算後の電圧信号に応じた電圧を抵抗体に印加する。ここで、抵抗体を発熱させることでレバー部は変形するが、この変形量は発熱量である電力に比例する。つまり、電力を上げることで、変形量が大きくなる。この電力は、W=V2/R(V:電圧値、R:抵抗値)で表されるので、電圧値の2乗に比例して大きくなる。
ところで、平方根演算された電圧信号に応じた電圧を上記式のVに相当する印加電圧としている。そのため、見かけ上、入力する電圧に比例するようにレバー部を変形させることができる。従って、熱膨張を利用してカンチレバーを変形させる場合であっても、従来と同じ感覚で電圧調整を行うことができる。よって、扱い易くなり、操作性をより向上することができる。
【0074】
また、本発明に係るカンチレバーの変形方法は、上記本発明のカンチレバーを変形させる方法であって、前記抵抗体に対して前記電圧を印加する際に、該電圧を、放熱による抵抗体の温度低下を補うように増加させた後に印加することを特徴とする。
【0075】
この発明に係るカンチレバーの変形方法においては、抵抗体に電圧を印加する際に、放熱による抵抗体の温度低下を予め考慮して、抵抗体に若干高めの電圧を印加する。これにより、放熱による温度低下があったとしても、抵抗体を所望する温度で熱膨張させることができ、狙い通りにレバー部を変形させることができる。
【0076】
また、本発明に係るカンチレバーの変形方法は、上記本発明のカンチレバーを変形させる方法であって、前記抵抗体に対して前記電圧を印加する際に、該電圧を、熱伝導の遅れによる抵抗体の温度低下を補うように増加させた後に印加することを特徴とする。
【0077】
この発明に係るカンチレバーの変形方法においては、抵抗体に電圧を印加する際に、熱伝導の遅れによる抵抗体の温度低下を予め考慮して、抵抗体に若干高めの電圧を印加する。これにより、印加する電圧の波形の立ち上がりを急峻にすることができ、熱伝導の遅れがあったとしても、狙い通りにレバー部を変形させることができる。
【発明の効果】
【0078】
本発明に係るカンチレバーによれば、抵抗体の熱膨張を利用してレバー部を自ら強制的に撓ませて変形させることができる。
また、本発明に係るカンチレバーシステム、走査型プローブ顕微鏡、質量センサ装置、弾性計測装置及びマニピュレーション装置によれば、レバー部の変形を高精度に制御することができると共に、各種の測定や観察を行うことができる。
また、本発明に係るカンチレバーの変位測定方法によれば、光てこ方式等の一般的な方法を採用することなく、レバー部の変位確実に測定することができる。
また、本発明に係るカンチレバーの加振方法によれば、加振源や磁場を利用することなくレバー部を振動させることができる。従って、カンチレバーの共振特性を正確に識別することができる。
また、本発明に係るカンチレバーの変形方法によれば、抵抗体の発熱を利用してレバー部を自ら積極的に撓ませて変形させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0079】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る第1実施形態を、図1から図5を参照して説明する。なお、本実施形態では、カンチレバー2を備えたカンチレバーシステム9を走査型プローブ顕微鏡1に適用した場合を例に挙げて説明する。また、レバー部10cを加振させ、光てこ方式で該レバー部10cの振動状態の変位を検出すると共に、試料S側を3次元方向に移動させる試料スキャン方式を例にして説明する。
【0080】
本実施形態の走査型プローブ顕微鏡1は、試料Sの表面形状や各種の物性を測定する装置であって、図1に示すように、カンチレバー2と、電圧印加部3と、ステージ4と、移動機構5と、変位測定機構6と、制御機構7と、を備えている。このうち、カンチレバー2、電圧印加部3及び変位測定機構6は、カンチレバーシステム9として機能する。
【0081】
上記カンチレバー2は、図2に示すように、先端に探針10aを有すると共に基端側が本体部10bによって片持ち状態で支持されたレバー部10cと、該レバー部10cに形成された発熱抵抗体(抵抗体)11と、発熱抵抗体11に電気接続された配線部12とを有している。このカンチレバー2は、例えば、シリコン支持層15a上に酸化層(シリコン酸化膜)15bを形成し、さらに該酸化層15b上にシリコン活性層15cを熱的に貼り合わせたSOI基板15を利用して製造されている。なお、SOI基板15に限られず、その他の材料や手法でカンチレバー2を製造しても構わない。
また、レバー部10cと本体部10bとの接合部であるレバー部10cの基端側には、開口10dが形成されており、レバー部10cが基端側でより屈曲して撓み易くなっている。なお、この開口10dの数は、1つに限定されるものではなく、自由に形成して構わないし、形成しなくても構わない。
【0082】
上記発熱抵抗体11は、レバー部10cの基端側において開口10dを両側から挟むように形成されている。この発熱抵抗体11は、半導体プロセスで一般的に用いられる不純物を熱拡散法やイオン注入法等により形成されたものである。そのため、低コストで容易に発熱抵抗体11を形成することができる。加えて、この発熱抵抗体11は、レバー部10cに一層だけ形成されているので、従来のものとは異なり、レバー部10cに膜応力がほとんど作用せず該レバー部10cが事前に撓んで変形してしまうといったことがない。よって、カンチレバー2の高品質化を図ることができる。
【0083】
上記配線部12は、アルミ等の金属配線であり、本体部10b及びレバー部10cの基端側に亘ってU字状になるように発熱抵抗体11に電気接続されている。また、本体部10bの端部に位置する配線部12の端末には、外部と電気接続可能な2つの外部接続端子12aが設けられている。
【0084】
このように構成されたカンチレバー2は、図1に示すように、本体部10bを介してホルダ本体20の下面に固定された斜面ブロック21に図示しないワイヤ等により着脱自在に固定されている。これにより、カンチレバー2は、試料Sに対向した状態で固定されている。この際、カンチレバー2は、斜面ブロック21によって試料表面S1に対してレバー部10cが所定角度傾くように固定されている。なお、ホルダ本体20及び斜面ブロック21は、カンチレバーホルダ22を構成している。
【0085】
上記電圧印加部3は、前記発熱抵抗体11に対して加振電圧V1を印加して発熱させ、該発熱による熱膨張によりレバー部10cを周期的に変形させて振動させている。具体的には、カンチレバーホルダ22に固定されたカンチレバー2の外部接続端子12aを介して加振電圧V1を印加している。この際、電圧印加部3は、レバー部10cが共振周波数f付近の周波数で振動するように、加振電圧V1を印加している。詳細には、加振電圧V1として、図3に示すように、共振周波数fの略1/2倍の周波数の交流電圧を印加するようになっている。
また、電圧印加部3には、図1に示すように、入力された電圧信号(レバー部10cを変形させたい量に比例した信号)V0を平方根演算するルート回路3aが組み込まれており、演算後の電圧信号に応じた電圧を上記加振電圧V1として印加するようになっている。
【0086】
上記ステージ4は、カンチレバーホルダ22にセットされたカンチレバー2の探針10aに対向配置するように試料Sを載置しており、XYスキャナ25上に載置されている。このXYスキャナ25は、図示しない防振台上に載置されたZスキャナ26上に載置されている。
これらXYスキャナ25及びZスキャナ26は、例えば、ピエゾ素子等の圧電素子であり、ドライブ回路27から電圧を印加されると、その電圧印加量及び極性に応じて、試料表面S1に平行なXY方向及び試料表面S1に垂直なZ方向にそれぞれ微小移動するようになっている。即ち、これらXYスキャナ25、Zスキャナ26及びドライブ回路27は、探針10aと試料表面S1とを、XY方向及びZ方向の3方向に対して相対的に移動させる上記移動機構5として機能する。
【0087】
また、カンチレバーホルダ22の上方には、ミラー30を利用して、レバー部10cの裏面に形成された図示しない反射面に向けてレーザ光Lを照射する光照射部31と、ミラー32を利用して、反射面で反射されたレーザ光Lを受光する光検出部33とが設けられている。なお、光照射部31から照射されたレーザ光Lは、ホルダ本体20の開口部20a内を通過しながら反射面に達し、反射面で反射された後、再度開口部20a内を通過して光検出部33に入射するようになっている。
【0088】
光検出部33は、例えば、フォトディテクタであり、レーザ光Lの入射位置からレバー部10cの振動状態を検出する。そして、光検出部33は、検出したレバー部10cの振動状態の変位をDIF信号としてプリアンプ34に出力している。即ち、これら光照射部31、ミラー30、32及び光検出部33は、レバー部10cの振動状態の変位を測定する上記変位測定機構6として機能する。
【0089】
また、光検出部33から出力されたDIF信号は、プリアンプ34によって増幅された後、交流−直流変換回路35に送られて直流変換され、Z電圧フィードバック回路36に送られる。Z電圧フィードバック回路36は、直流変換されたDIF信号が常に一定となるように、ドライブ回路27をフィードバック制御する。これにより、移動機構5により走査を行ったときに、探針10aと試料表面S1との距離を、レバー部10cの振動状態が一定になるように制御することができる。
【0090】
また、このZ電圧フィードバック回路36には、制御部37が接続されており、該制御部37が直流変換されたDIF信号に基づいて試料Sの表面形状を測定したり、位相の変化を検出して各種の物性情報(例えば、磁気力や電位等)を測定したりすることができるようになっている。
即ち、これらZ電圧フィードバック回路36及び制御部37は、走査時に、探針10aと試料表面S1との距離を、レバー部10cの振動状態が一定となるように移動機構5を制御すると共に、測定データを取得する上記制御機構7として機能する。なお制御部37は、上述した各構成品を総合的に制御している。
【0091】
次に、このように構成された走査型プローブ顕微鏡1により、試料Sを振動モードSPMの1つであるDFMで測定する試料測定方法について、以下に説明する。
まず始めに、カンチレバー2をカンチレバーホルダ22に固定して、該カンチレバー2を試料Sに対して対向配置させる設定工程を行う。これにより、レバー部10cの先端の探針10aと、ステージ4上に載置された試料Sとが対向した状態となる。
次いで、レバー部10cの反射面に確実にレーザ光Lが入射するように、また、反射したレーザ光Lが光検出部33に確実に入射するように、光照射部31及び光検出部33の位置や、レバー部10cの取付状態等を調整するアライメント作業を行う。
【0092】
次いで、レバー部10cを振動させる加振工程を行う。即ち、電圧印加部3にレバー部10cを変形させたい量に比例した電圧信号V0を入力する。すると、電圧印加部3は、ルート回路3aによりこの電圧信号V0を平方根演算して電圧信号V1を算出すると共に、該電圧信号V1に比例した電圧を加振電圧としてカンチレバー2の2つの外部接続端子12aに印加する。この際、図3に示すように、レバー部10cの共振周波数fの略1/2倍の周波数の交流電圧を印加する。
この電圧印加により、2つの外部接続端子12aに電気接続された発熱抵抗体11は発熱する。すると、この発熱によって発熱抵抗体11の周辺が局所的に熱膨張するので、レバー部10cが変形する。しかも、加振電圧V1が交流電圧なので、変形が周期的に繰り返される。その結果、レバー部10cは、振動した状態となる。
【0093】
特に、上述したようにレバー部10cの共振周波数fの略1/2倍の交流電圧を加振電圧V1として印加している。よって、正弦波のうち、+側の最大地点P1と、−側の最大地点P2とで発熱抵抗体11は、最も発熱する。つまり、この両地点P1、P2に達する度にレバー部10cが同一方向に最も変形して撓んだ状態となる。そのため、交流電圧の2倍の周期でレバー部10cを振動させることができる。その結果、レバー部10cを共振周波数fで振動させることができる。なお、図3では、若干周期が遅れた状態で、共振周波数fを図示している。
【0094】
特に、加振工程では熱膨張を利用してレバー部10cを振動させている。よって、従来の加振源や磁性体等の手段を用いずに、レバー部10cを振動させることができる。しかも、周辺の構成品に何ら影響を与えることなく、レバー部10c自身を直接振動させることができるので、該レバー部10c単独の振動特性を得ることができる。
【0095】
そして、レバー部10cを振動させた後、Qカーブの測定を行うと共に動作点(加振周波数の最適値)の設定を行う。この際、上述したように、レバー部10c単独の振動特性を得ることができるので、該レバー部10cの共振特性を正確に識別することができる。よって、レバー部10cの振動周波数や振幅、位相等の振動特性に対して正確な設定を行うことができる。
【0096】
次いで、測定工程を行う。即ち、探針10aと試料表面S1との距離を、振動状態が一定になるように制御した状態で、ドライブ回路27によりXYスキャナ25を移動させて、試料Sの走査を行う。この際、試料表面S1の凹凸に応じてレバー部10cの振動振幅が増減しようとするので、光検出部33に入射するレーザ光L(反射面で反射したレーザ光)の振幅が異なる。光検出部33は、この振幅に応じたDIF信号をプリアンプ34に出力する。出力されたDIF信号は、該プリアンプ34によって増幅されると共に、交流−直流変換回路35によって直流変換された後、Z電圧フィードバック回路36に送られる。
【0097】
Z電圧フィードバック回路36は、直流変換されたDIF信号が常に一定になるように(つまり、レバー部10cの振動状態が一定になるように)、ドライブ回路27によりZスキャナ26をZ方向に微小移動させて、フィードバック制御を行う。これにより、探針10aと試料表面S1との距離を、振動状態が一定になるように制御した状態で走査を行うことができる。また、制御部37は、Z電圧フィードバック回路36により上下させる信号に基づいて、試料Sの表面形状や各種の物性情報を取得することができる。これにより、試料Sの測定が終了する。
【0098】
特に、熱膨張を利用してレバー部10cを振動させているので、Qカーブ測定の際にレバー部10cの共振特性を正確に認識することができ、余分なノイズ等が含まれていない理想的なQカーブを得ることができる。従って、DFMでの測定を正確に行うことができ、測定精度を向上することができる。
【0099】
また、カンチレバーシステム9及び走査型プローブ顕微鏡1によれば、低コストで高品質化されたカンチレバー2を利用するので、同様にコストを下げることができると共に高品質化を図ることができる。
【0100】
ところで、本実施形態では発熱抵抗体11を発熱させることでレバー部10cを変形させて振動させているが、変形量は発熱量である電力に比例している。つまり、電力を上げることで、変形量が大きくなり振動振幅が大きくなる。この電力は、W=V2/R(V:電圧値、R:抵抗値)で表されるので、電圧値の2乗に比例して振動振幅が大きくなる。
しかしながら、本実施形態では、ルート回路3aによって平方根演算した電圧信号に応じた電圧を上記式のVに相当する加振電圧V1としている。そのため、見かけ上、入力した電圧に比例するように振動振幅を変化させることができる。従って、熱膨張を利用してレバー部10cを振動させる場合であっても、従来と同じ感覚で振動調整を行うことができる。よって、扱い易くなり、操作性に優れている。また、交流電圧である加振電圧の周波数を調整するだけで、レバー部10cを共振周波数で確実に振動させることができるので、加振工程時での設定が容易である。
【0101】
なお、上述した第1実施形態では、カンチレバー2をSOI基板15から製造された半導体として説明したが、この場合に限られず、金属材料で形成しても構わない。この場合であっても、発熱抵抗体11の発熱による熱膨張でレバー部10cを変形により振動させることができる。よって、同様の作用効果を奏することができる。
また、発熱抵抗体11としては、できるだけ熱膨張係数の大きい材料で形成することが好ましい。
【0102】
また、図4に示すように、レバー部10cよりも熱膨張係数が大きい素材で形成された熱膨張部38を発熱抵抗体11の近傍に形成しても構わない。なお、図4では、熱膨張部38として金属薄膜を例に挙げており、発熱抵抗体11上に成膜した場合を図示している。このようにすることで、発熱抵抗体11が発熱すると、該発熱の影響を受けて熱膨張部38が積極的に熱膨張する。そのため、少ない発熱量でレバー部10cをより効率良く変形させて振動させることができる。従って、測定精度を維持したまま、省電力化を図ることができる。
しかも、レバー部10cの両面のうち、探針が形成されている一方の面側にのみ熱膨張部38を形成している。そのため、レバー部10cは、一方の面側が発熱の影響により大きく伸縮して積極的に変位する。従って、この点においてもレバー部10cを効率よく変形させて振動させることができる。
【0103】
また、熱膨張部38を絶縁性物質より形成しても構わない。この場合には、熱膨張部38と発熱抵抗体11とを直接接触させたとしても、電気的な特性に何ら影響を与えることがない。そのため、信頼性の高い測定結果を得ることができる。また、電気的な特性に影響を与えないので、発熱抵抗体11の形成位置に関係なく熱膨張部38を形成できる。そのため、容易にカンチレバー2を製作することができる。これらの点において、熱膨張部38を絶縁性物質で形成することが好ましい。
【0104】
また、上記第1実施形態では、電圧印加部3が加振電圧V1として交流電圧を印加したが、交流に限定されるものではない。レバー部10cが周期的に変形するように、発熱抵抗体11を周期的に発熱させることができれば構わない。但し、上述したように、共振周波数fの略1/2倍の周波数の交流電圧を加振電圧V1として印加することで、レバー部10cを容易且つ確実に共振させることができるので、好ましい。
なお、加振電圧V1として、図5に示すように、共振周波数fと略等しい周波数で、且つ、正電圧領域又は負電圧領域で周期するように振幅中心ラインL1が電圧中心ラインL2からオフセットされた交流電圧を用いても構わない。なお、図5では、正電圧領域で周期するようにオフセットした場合を図示している。また、図5では、若干周期が遅れた状態で、共振周波数fを図示している。
【0105】
この場合には、交流電圧の正弦波のうち、+側の最大地点P1で発熱抵抗体11が最も発熱し、−側の最大地点P2で発熱抵抗体11の発熱が最小になる。つまり、+側の最大地点P1に達する度にレバー部10cが最も変形して撓んだ状態となる。そのため、交流電圧と略同じ周期でレバー部10cを振動させることができる。その結果、レバー部10cを共振周波数fで振動させることができる。
特に、交流電圧の周波数をオフセット調整するだけで、レバー部10cを共振周波数で容易且つ確実に振動させることができるので、設定が容易である。よって、加振電圧V1として、このような交流電圧であっても好ましい。
【0106】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態を、図6から図10を参照して説明する。なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では、光てこ方式によりレバー部10cの振動状態を測定したが、第2実施形態では自己検知方式によりレバー部10cの振動状態を測定する点である。
【0107】
即ち、本実施形態の走査型プローブ顕微鏡40は、レバー部10cに歪抵抗41が形成されたカンチレバー42を備えている。このカンチレバー42は、図7及び図8に示すように、発熱抵抗体11及び配線部12が形成されたシリコン活性層15cの上面に成膜された絶縁膜43と、該絶縁膜43上に形成された歪抵抗41と、該歪抵抗41に電気接続された配線部44と、を有している。なお、シリコン活性層15c上に歪抵抗41を形成すると共に、絶縁膜43上に発熱抵抗体11を形成しても構わない。
【0108】
歪抵抗41は、レバー部10cの変位量に応じて抵抗値が変化するものであって、例えば、ピエゾ抵抗である。この歪抵抗41は、絶縁膜43を挟んで発熱抵抗体11に対向するように形成されている。配線部44は、例えばアルミ配線であり、歪抵抗41と同様に絶縁膜43を挟んで配線部12に対向するように形成されている。また、配線部44の端末には、2つの外部接続端子44aが設けられている。
【0109】
また、図6に示すように、2つの外部接続端子44aには、歪抵抗41に検出電圧V2を印加して該歪抵抗41に流れる電流値を検出すると共に、検出した電流値に応じた出力信号を増幅して差分測定部46に出力する増幅回路45が接続されている。一方、差分測定部46には、増幅回路45から出力信号が入力されてくるだけでなく、基準発生部47から基準信号が入力されている。この基準信号は、例えば、レバー部10cの振動状態の変位量が“0”のときに、差分測定部46の出力を“0”とする信号である。そして、差分測定部46は、この基準信号と増幅回路45から送られてくる出力信号とを比較して、その差である誤差信号をZ電圧フィードバック回路36に出力するようになっている。即ち、この誤差信号は、レバー部10cの振動状態の変位量に対応する信号である。よって、この誤差信号をモニタすることで、レバー部10cの振動状態の変位を測定することができる。
【0110】
即ち、これら増幅回路45、差分測定部46及び基準発生部47は、歪抵抗41に検出電圧V2を印加すると共に、該歪抵抗41に流れる電流値の変化に基づいてレバー部10cの振動状態の変位を測定する変位測定部48として機能する。また、この変位測定部48と歪抵抗41とで、変位測定機構6として機能する。
【0111】
このように構成された走査型プローブ顕微鏡40により、測定を行う場合を説明する。
本実施形態の場合には、測定工程を行うにあたって、変位測定部48によって検出電圧V2を印加し、該歪抵抗41に流れる電流値をモニタしておく。そして、この状態で試料Sの走査を行う。すると、探針10aと試料Sとの間に働く原子間力の作用によりレバー部10cの振動状態が変位するので、その変位量に応じて歪抵抗41の抵抗値が変化する。よって、歪抵抗41に流れる電流値が変化する。すると増幅回路45は、この電流変化に応じた出力信号を差分測定部46に出力する。
【0112】
差分測定部46は、送られてきた出力信号と基準発生部47から送られてきた基準信号とを比較して、レバー部10cの振動状態の変位量に応じた誤差信号を算出すると共に、該誤差信号をZ電圧フィードバック回路36に出力する。これにより、Z電圧フィードバック回路36は、レバー部10cの振動状態の変位を測定することができる。そして、Z電圧フィードバック回路36は、誤差信号に基づいてステージ4をZ方向に移動させるようにドライブ回路27を制御し、探針10aと試料表面S1との距離を一定にさせる。つまり、誤差信号を“0”に近づけるようにステージ4を制御する。
その結果、検出されたレバー部10cの振動状態の変位が一定となるように高さ制御しながらカンチレバー42を走査させることができ、試料SをDFM測定することができる。
【0113】
特に、本実施形態の場合には、カンチレバー42を自己検知式(自己変位検出型)として機能させることができるので、レバー部10cの振動状態を測定するにあたって、第1実施形態のように光てこ方式特有のアライメント作業(レーザ光Lの光路調整作業)が不要である。従って、取り扱いがさらに簡単になり、試料Sの測定をよりスピーディで簡便に行うことができる。
【0114】
なお、上記第2実施形態において、図9に示すように、レバー部10cの近傍に温度補償用レファレンス電極50を配置しても構わない。
この温度補償用レファレンス電極50は、例えばレバー部10cに隣接した状態で本体部10bに片持ち支持されている。但し、カンチレバー42と一体的に温度補償用レファレンス電極50を形成する必要はなく、カンチレバー42とは関係なく単独のレバーで構成しても構わない。但し、一体的に形成することで、レバー部10cのより近傍に温度補償用レファレンス電極50を配置できるので好ましい。
【0115】
この温度補償用レファレンス電極50は、レバー部10cと同様に開口10dが形成されていると共に、歪抵抗41及び2つの外部接続端子44aを有する配線部44が形成されている。
そして、レバー部10c側の2つの外部接続端子44aと、温度補償用レファレンス電極50側の2つの外部接続端子44aとには、増幅回路45に代えてホイートストンブリッジ回路51が接続されている。このホイートストンブリッジ回路51は、2つの歪抵抗41に流れる電流値を比較して差分を算出し、算出した差分の電流値に応じた出力信号を増幅した後、差分測定部46に出力するようになっている。つまり、この場合の変位測定部48は、差分した電流値の変化に基づいて、レバー部10cの振動状態の変位を測定するようになっている。
【0116】
ここで、歪抵抗41は、レバー部10cの変位とは別に温度変化によっても抵抗値が変化してしまう。しかしながら、ホイートストンブリッジ回路51は、温度補償用レファレンス電極50側の歪抵抗41に流れる電流値を参照しているので、温度変化による不要な抵抗値変化分をキャンセルすることができ、温度影響をなくすことができる。従って、より高精度に試料Sを測定することができ、測定結果の信頼性を高めることができる。
【0117】
なお、2つの歪抵抗41に接続されている4つの外部接続端子44aのうち、2つはグランド端子であるが、この部分を共通の外部接続端子44aとなるように配線部44を途中で合流させても構わない。この場合には、図10に示すように、外部接続端子44aが3つとなる。この場合であっても、同様の作用効果を奏することができる。
【0118】
なお、温度補償用レファレンス電極50を用いる場合、レバー部10cよりも高い共振周波数を持つものを使用することが好ましい。このようにすることで、レバー部10cの共振周波数以下で温度補償用レファレンス電極50が共振してしまうことを防止することができる。従って、安定にした動作を行わせることができる。
また、温度補償用レファレンス電極50とレバー部10cとの厚みが同じ場合には、温度補償用レファレンス電極50の長さをレバー部10cよりも短くすると良い。但し、極端に短くしてしまうと、熱的な特性に差が出てしまうので、レバー部10cの長さの1/5〜4/5の間に収まる長さにすると良い。
【0119】
また、上記第2実施形態では、発熱抵抗体11と歪抵抗41とをレバー部10cに形成したが、発熱抵抗体11だけを形成し、該発熱抵抗体11に歪抵抗の機能を兼用させても構わない。この場合には、発熱抵抗体11に加振電圧V1を印加して発熱させ、レバー部10cを振動させると同時に、発熱抵抗体11を流れる電流値をモニタしておけば良い。この場合であっても、同様の作用効果を奏することができる。
特に、発熱抵抗体11だけで、レバー部10cを振動させる役割と、レバー部10cの振動状態を測定する役割と、いう2つの役割を兼用できるので、カンチレバーの構成を簡略化することができるうえ、カンチレバーの作製に費やす部品コストを低減することができる。
【0120】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0121】
例えば、上記各実施形態において、発熱抵抗体11に常に加振電圧V1を印加してレバー部10cを振動させ続けながら、レバー部10cの振動状態の変位を測定しても構わない。つまり、加振工程と測定工程とを同時に行っても構わない。この場合には、試料Sを常に正確に測定することができる。
また、同時ではなく、加振工程と測定工程とを、時間差を空けて交互に行っても構わない。この場合には、レバー部10cの加振と、レバー部10cの振動状態の測定とを交互に行えるので、それぞれの作動を安定且つ確実に制御し易い。
【0122】
特に、時間差を空ける場合には、下記式を満たすように設定することが好ましい。
即ち、S≦q/f(S:時間差、q:Q値、f:共振周波数)を満たすように設定すると良い。こうすることで、レバー部10cを極端に減衰させることなく、再度加振させることができる。従って、レバー部10cを共振させた状態に確実に維持することができる。
【0123】
また、上記各実施形態では、試料S側を三次元方向に移動させる試料スキャン方式を例にして説明したが、この方式に限られず、カンチレバー側を三次元方向に移動させるスキャン方式にしても構わない。この場合においても、スキャン方式が異なるだけで、試料スキャン方式と同様の作用効果を奏することができる。なお、試料S側及びカンチレバー側を共に三次元方向に移動できるように構成しても構わない。
【0124】
また、上記各実施形態では、振動モードSPMの一例として、DFM測定を行う場合を例にしたが、この場合に限られず、例えば、磁気を検知できる探針を有するカンチレバーを同様に振動させ、この際のカンチレバーの撓み振幅や位相を検出することで磁気試料Sの磁気分布や磁区構造等の測定を行うMFM(Magnetic Force Microscope:磁気力顕微鏡)においても同様の作用効果を奏することができる。
【0125】
更に、AFM動作中に、試料Sを試料表面S1に平行な水平方向に横振動させ、又はレバー部10cを試料表面S1に平行な水平方向に横振動させ、この際のレバー部10cのねじれ振動振幅を検出することで摩擦力分布を測定するLM−FFM(Lateral Force Modulation Friction Force Microscope:横振動摩擦力顕微鏡)や、AFM動作中に、試料Sを試料表面S1に垂直なZ方向に微小振動させて、又は、レバー部10cを試料表面S1に垂直なZ方向に微小移動させて、周期的な力を加え、この際のレバー部10cの撓み振幅や、sin成分、cos成分を検出することで粘弾性分布を測定するVE−AFM(Viscoelastic AFM:マイクロ粘弾性測定−原子間力顕微鏡)等においても同様の作用効果を奏することができる。
【0126】
また、上記各実施形態において、レバー部10cを振動させるのではなく、熱膨張を利用してレバー部10cを強制的に撓ませることも可能である。従って、レバー部10cの先端に形成された探針10aを、試料Sに対して強制的に押し付けたり、これとは逆に、強制的に引き離したりすることが可能である。このように、状況に応じてより複雑な操作を行うことができ、試料Sを多角的に測定することができる。
更には、複数本のレバー部10cが本体部10bに片持ち状態に支持されたマルチタイプのカンチレバーを採用し、使用するレバー部10cだけを強制的に試料S側に撓ませて測定に使用しても構わないし、使用するレバー部10c以外のものを強制的に試料Sから離間するように撓ませるようにすることも可能である。このように、熱膨張を利用することで、従来にはない多様な使い方を行うことができる。
【0127】
また、上記実施形態では、カンチレバーシステム9を走査型プローブ顕微鏡1に適用した場合を例に挙げて説明したが、この場合に限定されず、様々な装置に適用して構わない。
例えば、物質を吸着させて、その吸着量から物質の微小な重量を測定する質量センサにカンチレバーシステム9を適用しても構わない。また、試料の弾性を計測する弾性計測装置に適用しても構わないし、試料等を把持する等の各種の取り扱いを行うことができるマニピュレーション装置に適用しても構わない。また、このような各種装置にカンチレバーシステム9を適用する場合には、レバー部10cの先端に探針10aが形成されていないカンチレバーを採用しても構わない。つまり、本発明に係るカンチレバーは、探針が必須な構成ではない。
【0128】
(実施例)
次に、実際に抵抗体に周期的に電圧を印加して、レバー部を共振周波数付近の周波数で振動させた場合の実施例について以下に説明する。
初めに、従来から一般的に用いられている圧電素子を利用した加振源を用いてカンチレバーのレバー部を加振させ、そのときに測定したQカーブ(共振特性を示すカーブ)を図11に示す。なお、測定周波数の下限は1kHz、上限は100kHzに設定した。その結果、図11に示すように、39.485kHzにピークトップを確認することができた。しかしながら、これと同時にレバー部以外の振動(副次振動)の影響によってQカーブが乱れてしまっていることも確認することができた。この原因としては、加振源の振動がカンチレバー以外の周辺構造物に伝わってしまい、これらを振動させたことが原因とされる。その結果、カンチレバーの振動特性に影響を与えてしまい、理想的なQカーブを得ることができなかった。
【0129】
次に、上述したレバー部と同じ共振特性を有するレバー部に抵抗体を形成し、該抵抗体に交流電圧を印加して周期的に発熱させることで、レバー部を振動させた。なお、測定周波数の下限は1kHz、上限は100kHzに設定した。この際、0Vを中心とした交流電圧を印加した。
その結果、図12に示すように、レバー部の共振周波数(39.485kHz)の略1/2倍の周波数である19.743kHzで大きな振幅を確認することができた。このことから、図3で説明したように、レバー部の共振周波数の略1/2倍の周波数の交流電圧を抵抗体に印加することで、レバー部を共振周波数で振動させることができる点を実際に確認することができた。
【0130】
続いて、上述したレバー部と同じ共振特性を有するレバー部に抵抗体を形成し、該抵抗体に交流電圧を印加して周期的に発熱させることで、レバー部を振動させた。なお、測定周波数の下限は1kHz、上限は100kHzに設定した。この際、0Vを横切らないように、振幅中心ラインが電圧中心ライン(0Vライン)からオフセットされた正電圧領域で交流電圧を印加した。
その結果、図13に示すように、レバー部の共振周波数(39.485kHz)と略等しい周波数である39.500kHzで大きな振幅を確認することができた。このことから、図5で説明したように、周波数をオフセット調整しながらレバー部の共振周波数付近の周波数で交流電圧を印加することで、レバー部を共振周波数で振動させることができる点を実際に確認することができた。
特に、図12及び図13のいずれの場合であっても、図11に示す場合とは異なり、副次振動がない非常にきれいな(共振特性に忠実な)カーブを得ることができた。これは、加振源を用いた場合とは異なり、抵抗体の熱膨張を利用しているので、周辺構造物を振動させることなくレバー部だけを直接的に振動させることができた為である。このように、従来にはない、格別な効果を奏することを実際に確認することができた。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】本発明に係る第1実施形態を示す走査型プローブ顕微鏡の構成図である。
【図2】図1に示すカンチレバーシステムを構成するカンチレバーの斜視図である。
【図3】図2に示すカンチレバーの発熱抵抗体に加振電圧を印加してレバー部を振動させる際の、加振電圧の正弦波を示す図である。
【図4】本発明に係る第1実施形態の変形例を示す図であって、発熱抵抗体上に熱膨張部が形成されたカンチレバーの断面図である。
【図5】本発明に係る第1実施形態の変形例を示す図であって、図3とは異なる加振電圧の正弦波を示す図である。
【図6】本発明に係る第2実施形態を示す走査型プローブ顕微鏡の構成図である。
【図7】図6に示すカンチレバーの斜視図である。
【図8】図7に示すカンチレバーの断面図である。
【図9】本発明に係る第2実施形態の変形例を示す図であって、温度補償用レファレンス電極を有するカンチレバーとホイートストンブリッジ回路との関係を示す図である。
【図10】図9に示すカンチレバーの変形例を示す図である。
【図11】一般的に用いられている加振源を利用してレバー部を実際に振動させたときのQカーブである。
【図12】レバー部に形成された発熱抵抗体に0Vを中心とする交流電圧を印加することで、レバー部を振動させたときのQカーブである。
【図13】レバー部に形成された発熱抵抗体に、0Vを横切らないように振幅中心ラインが電圧中心ライン(0Vライン)からオフセットされた正電圧領域で交流電圧を印加することで、レバー部を振動させたときのQカーブである。
【符号の説明】
【0132】
L1…振幅中心ライン
L2…電圧中心ライン
S…試料
S1…試料表面
1、40…走査型プローブ顕微鏡
2、42…カンチレバー
3…電圧印加部
3a…ルート回路
4…ステージ
5…移動機構
6…変位測定機構
7…制御機構
9…カンチレバーシステム
10a…探針
10b…本体部
10c…レバー部
11…発熱抵抗体(抵抗体)
38…熱膨張部
41…歪抵抗
48…変位測定部
50…温度補償用レファレンス電極
51…ホイートストンブリッジ回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端側が本体部に支持されたレバー部と、
該レバー部に形成され、電圧の印加によって発熱し、該発熱による熱膨張によってレバー部を変形させる抵抗体と、を備えていることを特徴とするカンチレバー。
【請求項2】
請求項1に記載のカンチレバーにおいて、
前記レバー部の一部に該レバー部よりも熱膨張係数が大きい素材による熱膨張部が前記抵抗体の近傍に形成されていることを特徴とするカンチレバー。
【請求項3】
請求項2に記載のカンチレバーにおいて、
前記熱膨張部は、前記レバー部の両面のうち一方の面側に形成されていることを特徴とするカンチレバー。
【請求項4】
請求項2に記載のカンチレバーにおいて、
前記熱膨張部は、絶縁性物質であることを特徴とするカンチレバー。
【請求項5】
請求項1に記載のカンチレバーにおいて、
前記レバー部は、自己変位検出型のレバーであることを特徴とするカンチレバー。
【請求項6】
請求項5に記載のカンチレバーにおいて、
前記レバー部は、変位量に応じて抵抗値が変化する歪抵抗を有する自己変位検出型のレバーであることを特徴とするカンチレバー。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか1項に記載のカンチレバーと、
前記抵抗体に対して電圧を印加する電圧印加部と、
前記レバー部の変位を測定する変位測定機構と、を備えていることを特徴とするカンチレバーシステム。
【請求項8】
請求項6に記載のカンチレバーと、
前記抵抗体に対して電圧を印加する電圧印加部と、
前記歪抵抗に流れる電流値の変化に基づいて前記レバー部の変位を測定する変位測定機構と、を備えていることを特徴とするカンチレバーシステム。
【請求項9】
請求項7又は8に記載のカンチレバーシステムにおいて、
前記電圧印加部は、電圧値を平方根演算するルート回路を有し、変形させたい量に比例した電圧信号をルート回路にて変換した後、前記抵抗体に印加することを特徴とするカンチレバーシステム。
【請求項10】
請求項7又は8に記載のカンチレバーシステムにおいて、
前記電圧印加部は、前記電圧を、放熱による前記抵抗体の温度低下を補うように増加させた後に、抵抗体に印加することを特徴とするカンチレバーシステム。
【請求項11】
請求項7又は8に記載のカンチレバーシステムにおいて、
前記電圧印加部は、前記電圧を、熱伝導の遅れによる前記抵抗体の温度低下を補うように増加させた後に、抵抗体に印加することを特徴とするカンチレバーシステム。
【請求項12】
請求項8に記載のカンチレバーシステムにおいて、
前記電圧印加部は、前記歪抵抗に電圧を印加して発熱させ、該歪抵抗を前記抵抗体として動作させることを特徴とするカンチレバーシステム。
【請求項13】
請求項12に記載のカンチレバーシステムにおいて、
前記変位測定機構は、前記電圧印加部が前記歪抵抗に印加した電圧とそれによって発生する電流とに基づく歪抵抗の抵抗値変化を検出して、前記レバー部の変位を測定することを特徴とするカンチレバーシステム。
【請求項14】
請求項8に記載のカンチレバーシステムにおいて、
前記カンチレバーは、前記歪抵抗が組み込まれた温度補償用レファレンス電極を有し、
前記変位測定機構が、2つの前記歪抵抗にそれぞれ流れる電流値の差に基づいて、前記レバー部の変位を測定することを特徴とするカンチレバーシステム。
【請求項15】
請求項14に記載のカンチレバーシステムにおいて、
前記変位測定機構は、ホイートストンブリッジ回路を利用して2つの前記歪抵抗にそれぞれ流れる電流値の差を検出することを特徴とするカンチレバーシステム。
【請求項16】
請求項14に記載のカンチレバーシステムにおいて、
前記変位測定機構は、差動増幅回路を利用して2つの前記歪抵抗にそれぞれ流れる電流値の差を検出することを特徴とするカンチレバーシステム。
【請求項17】
請求項7から16のいずれか1項に記載のカンチレバーシステムにおいて、
前記電圧印加部は、前記レバー部が共振周波数付近の周波数で、且つ、正電圧領域又は負電圧領域で周期するように、振幅中心ラインが電圧中心ラインからオフセットされた交流電圧を周期的に印加することを特徴とするカンチレバーシステム。
【請求項18】
請求項7から16のいずれか1項に記載のカンチレバーシステムにおいて、
前記電圧印加部は、前記レバー部が共振周波数の略1/2倍の周波数で、且つ、正電圧領域と負電圧領域とで周期するように設定された交流電圧を周期的に印加することを特徴とするカンチレバーシステム。
【請求項19】
請求項7から18のいずれか1項に記載のカンチレバーシステムにおいて、
前記電圧印加部と前記変位測定機構とを、時間差を空けて交互に作動させることを特徴とするカンチレバーシステム。
【請求項20】
請求項17又は18に記載のカンチレバーシステムにおいて、
前記電圧印加部と前記変位測定機構とを、下記式を満たす時間差を空けて交互に作動させることを特徴とするカンチレバーシステム。
S≦q/f (S:時間差、q:Q値、f:カンチレバーの共振周波数)
【請求項21】
請求項7又は8に記載のカンチレバーシステムにおいて、
前記カンチレバーを複数有し、
これら複数のカンチレバーは、前記レバー部の先端にそれぞれ試料に対向配置される探針を有し、
前記電圧印加部は、複数の前記カンチレバーのうち任意に選択した1本以上のカンチレバーに形成された前記抵抗体に電圧を印加して発熱させ、前記探針を前記試料に対して強制的に接触又は離間させることを特徴とするカンチレバーシステム。
【請求項22】
請求項7から21のいずれか1項に記載のカンチレバーシステムを備えていることを特徴とする走査型プローブ顕微鏡。
【請求項23】
請求項7から21のいずれか1項に記載のカンチレバーシステムを備えていることを特徴とする質量センサ装置。
【請求項24】
請求項7から21のいずれか1項に記載のカンチレバーシステムを備えていることを特徴とする弾性計測装置。
【請求項25】
請求項7から21のいずれか1項に記載のカンチレバーシステムを備えていることを特徴とするマニピュレーション装置。
【請求項26】
請求項6に記載のカンチレバーの変位を測定する方法であって、
前記抵抗体に対して電圧を印加し、前記歪抵抗に流れる電流値の変化に基づいて前記レバー部の変位を測定することを特徴とするカンチレバーの変位測定方法。
【請求項27】
請求項26に記載のカンチレバーの変位測定方法において、
前記歪抵抗に電圧を印加して発熱させ、該歪抵抗を前記抵抗体として動作させることを特徴とするカンチレバーの変位測定方法。
【請求項28】
請求項27に記載のカンチレバーの変位測定方法において、
前記歪抵抗に印加した電圧とそれによって発生する電流とに基づく歪抵抗の抵抗値変化を検出して、前記レバー部の変位を測定することを特徴とするカンチレバーの変位測定方法。
【請求項29】
請求項26に記載のカンチレバーの変位測定方法において、
前記歪抵抗が組み込まれた温度補償用レファレンス電極を参照し、2つの歪抵抗にそれぞれ流れる電流値の差に基づいて、前記レバー部の変位を測定することを特徴とするカンチレバーの変位測定方法。
【請求項30】
請求項29に記載のカンチレバーの変位測定方法において、
ホイートストンブリッジ回路を利用して2つの前記歪抵抗にそれぞれ流れる電流値の差を測定することを特徴とするカンチレバーの変位測定方法。
【請求項31】
請求項29に記載のカンチレバーの変位測定方法において、
差動増幅回路を利用して2つの前記歪抵抗にそれぞれ流れる電流値の差を測定することを特徴とするカンチレバーの変位測定方法。
【請求項32】
請求項7又は8に記載のカンチレバーを加振する方法であって、
共振周波数付近の周波数で、且つ、正電圧領域又は負電圧領域で周期するように、振幅中心ラインが電圧中心ラインからオフセットされた交流電圧を前記レバー部に周期的に印加することを特徴とするカンチレバーの加振方法。
【請求項33】
請求項7又は8に記載のカンチレバーを加振する方法であって、
共振周波数の略1/2倍の周波数で、且つ、正電圧領域と負電圧領域とで周期するように設定された交流電圧を前記レバー部に周期的に印加することを特徴とするカンチレバーの加振方法。
【請求項34】
請求項1に記載のカンチレバーを変形させる方法であって、
変形させたい量に比例した電圧信号を平方根演算した後、前記抵抗体に印加することを特徴とするカンチレバーの変形方法。
【請求項35】
請求項1に記載のカンチレバーを変形させる方法であって、
前記抵抗体に対して前記電圧を印加する際に、該電圧を、放熱による抵抗体の温度低下を補うように増加させた後に印加することを特徴とするカンチレバーの変形方法。
【請求項36】
請求項1に記載のカンチレバーを変形させる方法であって、
前記抵抗体に対して前記電圧を印加する際に、該電圧を、熱伝導の遅れによる抵抗体の温度低下を補うように増加させた後に印加することを特徴とするカンチレバーの変形方法。
【請求項1】
基端側が本体部に支持されたレバー部と、
該レバー部に形成され、電圧の印加によって発熱し、該発熱による熱膨張によってレバー部を変形させる抵抗体と、を備えていることを特徴とするカンチレバー。
【請求項2】
請求項1に記載のカンチレバーにおいて、
前記レバー部の一部に該レバー部よりも熱膨張係数が大きい素材による熱膨張部が前記抵抗体の近傍に形成されていることを特徴とするカンチレバー。
【請求項3】
請求項2に記載のカンチレバーにおいて、
前記熱膨張部は、前記レバー部の両面のうち一方の面側に形成されていることを特徴とするカンチレバー。
【請求項4】
請求項2に記載のカンチレバーにおいて、
前記熱膨張部は、絶縁性物質であることを特徴とするカンチレバー。
【請求項5】
請求項1に記載のカンチレバーにおいて、
前記レバー部は、自己変位検出型のレバーであることを特徴とするカンチレバー。
【請求項6】
請求項5に記載のカンチレバーにおいて、
前記レバー部は、変位量に応じて抵抗値が変化する歪抵抗を有する自己変位検出型のレバーであることを特徴とするカンチレバー。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか1項に記載のカンチレバーと、
前記抵抗体に対して電圧を印加する電圧印加部と、
前記レバー部の変位を測定する変位測定機構と、を備えていることを特徴とするカンチレバーシステム。
【請求項8】
請求項6に記載のカンチレバーと、
前記抵抗体に対して電圧を印加する電圧印加部と、
前記歪抵抗に流れる電流値の変化に基づいて前記レバー部の変位を測定する変位測定機構と、を備えていることを特徴とするカンチレバーシステム。
【請求項9】
請求項7又は8に記載のカンチレバーシステムにおいて、
前記電圧印加部は、電圧値を平方根演算するルート回路を有し、変形させたい量に比例した電圧信号をルート回路にて変換した後、前記抵抗体に印加することを特徴とするカンチレバーシステム。
【請求項10】
請求項7又は8に記載のカンチレバーシステムにおいて、
前記電圧印加部は、前記電圧を、放熱による前記抵抗体の温度低下を補うように増加させた後に、抵抗体に印加することを特徴とするカンチレバーシステム。
【請求項11】
請求項7又は8に記載のカンチレバーシステムにおいて、
前記電圧印加部は、前記電圧を、熱伝導の遅れによる前記抵抗体の温度低下を補うように増加させた後に、抵抗体に印加することを特徴とするカンチレバーシステム。
【請求項12】
請求項8に記載のカンチレバーシステムにおいて、
前記電圧印加部は、前記歪抵抗に電圧を印加して発熱させ、該歪抵抗を前記抵抗体として動作させることを特徴とするカンチレバーシステム。
【請求項13】
請求項12に記載のカンチレバーシステムにおいて、
前記変位測定機構は、前記電圧印加部が前記歪抵抗に印加した電圧とそれによって発生する電流とに基づく歪抵抗の抵抗値変化を検出して、前記レバー部の変位を測定することを特徴とするカンチレバーシステム。
【請求項14】
請求項8に記載のカンチレバーシステムにおいて、
前記カンチレバーは、前記歪抵抗が組み込まれた温度補償用レファレンス電極を有し、
前記変位測定機構が、2つの前記歪抵抗にそれぞれ流れる電流値の差に基づいて、前記レバー部の変位を測定することを特徴とするカンチレバーシステム。
【請求項15】
請求項14に記載のカンチレバーシステムにおいて、
前記変位測定機構は、ホイートストンブリッジ回路を利用して2つの前記歪抵抗にそれぞれ流れる電流値の差を検出することを特徴とするカンチレバーシステム。
【請求項16】
請求項14に記載のカンチレバーシステムにおいて、
前記変位測定機構は、差動増幅回路を利用して2つの前記歪抵抗にそれぞれ流れる電流値の差を検出することを特徴とするカンチレバーシステム。
【請求項17】
請求項7から16のいずれか1項に記載のカンチレバーシステムにおいて、
前記電圧印加部は、前記レバー部が共振周波数付近の周波数で、且つ、正電圧領域又は負電圧領域で周期するように、振幅中心ラインが電圧中心ラインからオフセットされた交流電圧を周期的に印加することを特徴とするカンチレバーシステム。
【請求項18】
請求項7から16のいずれか1項に記載のカンチレバーシステムにおいて、
前記電圧印加部は、前記レバー部が共振周波数の略1/2倍の周波数で、且つ、正電圧領域と負電圧領域とで周期するように設定された交流電圧を周期的に印加することを特徴とするカンチレバーシステム。
【請求項19】
請求項7から18のいずれか1項に記載のカンチレバーシステムにおいて、
前記電圧印加部と前記変位測定機構とを、時間差を空けて交互に作動させることを特徴とするカンチレバーシステム。
【請求項20】
請求項17又は18に記載のカンチレバーシステムにおいて、
前記電圧印加部と前記変位測定機構とを、下記式を満たす時間差を空けて交互に作動させることを特徴とするカンチレバーシステム。
S≦q/f (S:時間差、q:Q値、f:カンチレバーの共振周波数)
【請求項21】
請求項7又は8に記載のカンチレバーシステムにおいて、
前記カンチレバーを複数有し、
これら複数のカンチレバーは、前記レバー部の先端にそれぞれ試料に対向配置される探針を有し、
前記電圧印加部は、複数の前記カンチレバーのうち任意に選択した1本以上のカンチレバーに形成された前記抵抗体に電圧を印加して発熱させ、前記探針を前記試料に対して強制的に接触又は離間させることを特徴とするカンチレバーシステム。
【請求項22】
請求項7から21のいずれか1項に記載のカンチレバーシステムを備えていることを特徴とする走査型プローブ顕微鏡。
【請求項23】
請求項7から21のいずれか1項に記載のカンチレバーシステムを備えていることを特徴とする質量センサ装置。
【請求項24】
請求項7から21のいずれか1項に記載のカンチレバーシステムを備えていることを特徴とする弾性計測装置。
【請求項25】
請求項7から21のいずれか1項に記載のカンチレバーシステムを備えていることを特徴とするマニピュレーション装置。
【請求項26】
請求項6に記載のカンチレバーの変位を測定する方法であって、
前記抵抗体に対して電圧を印加し、前記歪抵抗に流れる電流値の変化に基づいて前記レバー部の変位を測定することを特徴とするカンチレバーの変位測定方法。
【請求項27】
請求項26に記載のカンチレバーの変位測定方法において、
前記歪抵抗に電圧を印加して発熱させ、該歪抵抗を前記抵抗体として動作させることを特徴とするカンチレバーの変位測定方法。
【請求項28】
請求項27に記載のカンチレバーの変位測定方法において、
前記歪抵抗に印加した電圧とそれによって発生する電流とに基づく歪抵抗の抵抗値変化を検出して、前記レバー部の変位を測定することを特徴とするカンチレバーの変位測定方法。
【請求項29】
請求項26に記載のカンチレバーの変位測定方法において、
前記歪抵抗が組み込まれた温度補償用レファレンス電極を参照し、2つの歪抵抗にそれぞれ流れる電流値の差に基づいて、前記レバー部の変位を測定することを特徴とするカンチレバーの変位測定方法。
【請求項30】
請求項29に記載のカンチレバーの変位測定方法において、
ホイートストンブリッジ回路を利用して2つの前記歪抵抗にそれぞれ流れる電流値の差を測定することを特徴とするカンチレバーの変位測定方法。
【請求項31】
請求項29に記載のカンチレバーの変位測定方法において、
差動増幅回路を利用して2つの前記歪抵抗にそれぞれ流れる電流値の差を測定することを特徴とするカンチレバーの変位測定方法。
【請求項32】
請求項7又は8に記載のカンチレバーを加振する方法であって、
共振周波数付近の周波数で、且つ、正電圧領域又は負電圧領域で周期するように、振幅中心ラインが電圧中心ラインからオフセットされた交流電圧を前記レバー部に周期的に印加することを特徴とするカンチレバーの加振方法。
【請求項33】
請求項7又は8に記載のカンチレバーを加振する方法であって、
共振周波数の略1/2倍の周波数で、且つ、正電圧領域と負電圧領域とで周期するように設定された交流電圧を前記レバー部に周期的に印加することを特徴とするカンチレバーの加振方法。
【請求項34】
請求項1に記載のカンチレバーを変形させる方法であって、
変形させたい量に比例した電圧信号を平方根演算した後、前記抵抗体に印加することを特徴とするカンチレバーの変形方法。
【請求項35】
請求項1に記載のカンチレバーを変形させる方法であって、
前記抵抗体に対して前記電圧を印加する際に、該電圧を、放熱による抵抗体の温度低下を補うように増加させた後に印加することを特徴とするカンチレバーの変形方法。
【請求項36】
請求項1に記載のカンチレバーを変形させる方法であって、
前記抵抗体に対して前記電圧を印加する際に、該電圧を、熱伝導の遅れによる抵抗体の温度低下を補うように増加させた後に印加することを特徴とするカンチレバーの変形方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−300116(P2009−300116A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−152127(P2008−152127)
【出願日】平成20年6月10日(2008.6.10)
【出願人】(503460323)エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社 (330)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月10日(2008.6.10)
【出願人】(503460323)エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社 (330)
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