説明

カートリッジ式化粧料収納容器

【課題】液状化粧料が充填される化粧料収納容器を、化粧料充填部分が収納容器本体から着脱自在なものであって、化粧料充填部分に設けられる押出し駒を中途使用位置に保持した状態で着脱するように構成する。
【解決手段】容器本体1と、容器本体1に着脱自在なカートリッジ体5と、容器本体1に内装され、容器本体に対して軸芯方向に移動自在な押出し棒6とを備え、容器本体からカートリッジ体を着脱するにあたり、カートリッジ体に設けられる押出し駒の押出し棒に対する係合を解除して押出し駒を中途使用位置に位置した状態で着脱可能に構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口紅、マニキュア、ファンデーション等の化粧料を収納するためのカートリッジ式化粧料収納容器に関する。
【背景技術】
【0002】
口紅やファンデーション等の化粧料の収納容器の中にあっては、化粧料を全て使い切った場合に、容器本体に対して化粧料の充填されたカートリッジ体のみを新しいものと交換することができる、所謂カートリッジ式に構成したものが知られている。このようなカートリッジ式の化粧料収納容器は、化粧料が充填されたカートリッジ体のみを容器本体から取り外して別のカートリッジ体を容器本体に取付ければ良いことになり、このようにすると使用者にとってはカートリッジ体のみを購入すればよいことになって、容器本体を無駄に廃棄することがなく、省資源化が図れることになる。
【0003】
このようなカートリッジ式の化粧料収納容器として、例えば、外筒と、該外筒内に装置され、繰出し操作によって進退する摺動軸を有する繰出し機構と、外筒内に交換可能に脱着され、内部に固形状の化粧料を充填したカートリッジ体と、該カートリッジ体内の化粧料を保持し、カートリッジ体先端部より出没させる皿材とを備え、最も繰り戻した状態でカートリッジ体の外筒開口部からの引き抜き操作によってカートリッジ体に内嵌する皿材と摺動軸との係合が解かれるように構成し、これによって化粧料収納容器を他のカートリッジ体と交換可能に構成したものが従来技術として知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭61‐151609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1に開示されるものは、カートリッジ体を容器本体から外す場合、皿材がカートリッジ体の組み込み初期位置まで戻った状態にしてから無理抜きすることで押出し棒と皿材を相対的に離間させて取外すようになっているため、中途まで使用して化粧料が初期充填量より少なくなっているカートリッジ体を一旦抜き取り、これを再使用すべく容器本体に取付けようとした場合、該カートリッジ体は皿材が初期位置まで下がった状態となっているため、化粧料を前記中途の使用位置まで押出す場合、最初から中途使用位置までの相対回動操作の抵抗が同じであり、このため特に化粧料が液体であった場合、カートリッジ体の内面に化粧料が付着していて内部の状態が見えないものでは、どこまで回動操作をして皿材の移動をすれば中途使用位置まで至るかの判断がつかず、そして、回動操作量が多すぎた場合には化粧料が無駄に吐出する惧れがあり、これを回避するにゆっくりと慎重に繰出し動作をする必要があり、しかもそのあいだ常に化粧料の吐出の有無を確認し続けなければならないことになって操作性に劣ると共に操作が煩雑であるという問題があり、ここに本発明が解決せんとする課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するための鋭意創作されたものであって、請求項1の発明は、化粧料が充填される筒状の充填ケース、および該充填ケース内に軸芯方向移動自在に組み込まれていて化粧料を移動させるための押出し駒を備えたカートリッジ体を容器本体に抜き差し自在に組み込むと共に、前記容器本体に内装された押出し棒が、容器本体に対するカートリッジ体の相対回動に基づいて充填ケース側へ移動することで押出し駒を共に移動させて化粧料を充填ケースから押出すように構成されるカートリッジ式化粧料容器において、
前記押出し駒と押出し棒とのあいだには、押出し駒が中途使用位置に位置する状態で押出し駒と押出し棒とが相対的に離間する方向に移動したとき、前記押出し駒の押出し棒に対する離間方向の移動を解除して押出し駒の押出し棒への追従をしないようにする解除手段が設けられていることを特徴とするカートリッジ式化粧料収納容器である。
請求項2の発明は、押出し駒と押出し棒とが相対的に離間する方向の移動は、カートリッジを容器本体から無理抜きするときの移動であることを特徴とする請求項1記載のカートリッジ式化粧料収納容器である。
請求項3の発明は、押出し駒と押出し棒とが相対的に離間する方向の移動は、容器本体に対するカートリッジ体の相対回動に基づく押出し棒の容器本体側への移動であることを特徴とする請求項1記載のカートリッジ式化粧料収納容器である。
請求項4の発明は、解除手段は、押出し棒に対する押出し駒の離間方向の移動解除を一時的に遅延させるための遅延手段が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1記載のカートリッジ式化粧料収納容器である。
請求項5の発明は、カートリッジ体は液状の化粧料が充填されたものであることを特徴とする請求項4記載のカートリッジ式化粧料収納容器である。
【発明の効果】
【0007】
そして請求項1の発明とすることにより、押出し駒に対して押出し棒を相対的に離間させて係合解除がなされると、押出し駒の押出し棒に対する追従が無くなって押出し駒はこの係合解除位置にとどまることになり、この結果、カートリッジ体と容器本体との相対回動をして押出し棒を再びカートリッジ体側に移動させた場合に、押出し棒が押出し駒に係合する以前の移動操作抵抗に対して、以後の移動操作抵抗は重くなることになって操作感覚が異なり、これによって中途使用状態に達したことを知ることになって、化粧料の押出し有無を確認し続けることを強いる操作が必要なくなって操作性に優れたものになる。
請求項2の発明とすることにより、中途使用のカートリッジ体を無理抜きした後に再使用する場合にも請求項1の発明の効果を達成できることになる。
請求項3の発明とすることにより、押出し棒を繰り戻した後に再使用する場合にも請求項1の発明の効果を達成できることになる。
請求項4の発明とすることにより、押出し駒に対して押出し棒を相対的に離間させたときの係合解除が一時的に遅延することになってこの遅延した分、押出し駒は化粧料と共にわずかばかり後退し、この結果、使用再開する際のカートリッジ体と容器本体との相対回動操作に余裕ができることになって操作性が向上する。
請求項5の発明とすることにより、液状化粧料に混入する空気が膨張したことによる化粧料の無駄な漏出が回避されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】カートリッジ式液状化粧料収納容器の全体断面図である。
【図2】(A)〜(D)は、それぞれ身筒の正面図、平面図、底面図、断面図である。
【図3】(A)〜(F)は、それぞれ押出し棒の正面図、平面図、底面図、正面断面図、要部拡大図、要部拡大断面図である。
【図4】(A)〜(E)は、それぞれ充填ケースの正面図、平面図、底面図、断面図、要部断面図である。
【図5】(A)〜(C)は、それぞれ中筒の正面図、平面図、要部拡大断面図である。
【図6】(A)は作動爪体の平面図、(B)は(A)のX−X断面図、(C)は底面図、(D)は(A)のY−Y断面図である。
【図7】(A)は押出し駒の正面図、(B)は平面図、(C)は(A)のX−X断面図、(D)は(A)の半断面図である。
【図8】(A)〜(C)は、それぞれスライダーの正面図、側面断面図、平面図である。
【図9】(A)〜(D)は、それぞれカートリッジ体に化粧料が充填される過程を示す説明図である。
【図10】(A)〜(C)は、それぞれカートリッジ体に化粧料が充填される過程を示す拡大説明図である。
【図11】カートリッジ体の容器本体への組付け過程を示す説明図である。
【図12】(A)、(B)は、それぞれカートリッジ体の容器本体への組付け過程を示す説明図である。
【図13】(A)、(B)は、それぞれカートリッジ体の容器本体への組付け過程を示す説明図である。
【図14】(A)、(B)は、それぞれカートリッジ体を容器本体から取り外す過程を示す説明図である。
【図15】(A)、(B)は、それぞれカートリッジ体を容器本体から取り外す過程を示す説明図である。
【図16】(A)、(B)は、それぞれカートリッジ体を容器本体に対して繰り戻す過程を示す説明図である。
【図17】(A)、(B)は、それぞれカートリッジ体を容器本体に対して繰り戻す過程を示す説明図である。
【図18】使用途中のカートリッジ体を容器本体に組付ける過程を示す説明図である。
【図19】使用途中のカートリッジ体を容器本体に組付ける過程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
図1において、1は容器本体であって、該容器本体1は、有底筒状の袴筒2と該袴筒2の内周面側に固着される円筒状の身筒3と、該身筒3の上端部に、下端部が袴筒2の上端部と身筒3の上端部に挟持状に嵌合する円筒状の中具4とを備えて構成される。
【0010】
前記身筒3の内周面側中央部には、図2に示すように、後述するカートリッジ体5の中筒8の下端部が当接する有底状の止め部3aが内径方向にリング状に突出し、該突出部分の縁部3bは、容器本体1の開口側(上側)に向けて先細りした截頭円錐筒形状に形成されている。そして、該止め部3aの下側の内周面には、身筒3の軸方向に平行な複数本(本実施の形態では2本)の溝3c、3cが互いに対向する位置に形成されており、この溝3c、3cには後述する押出し棒6に形成される係合突起6gが係合して、該押出し棒6を身筒3に対して軸方向に移動自在とするよう構成されている。
【0011】
該止め部3aの上部には、身筒3の内周方向に所定間隔を存して凸リブ3dが複数(本実施の形態では3つ)形成されており、該凸リブ3dに後述する充填ケース7に形成される凹部7dが係合するようになっている。また止め部3aの上端部には容器本体1に止着する際に逃げ変形するための切欠き3eが形成されている。
また、身筒3の下面には、止着片3fが複数個(本実施の形態では3個)突出形成され、この止着片3fが袴筒2の底面2aに当接した状態で身筒3が袴筒2に装着されるようになっている。
【0012】
一方、6は、有天円筒状の押出し棒であって、該押出し棒6は、図3に示すように、先頭部6aが円錐状に形成されており、該先頭部6aに至る直前の外周面には係合溝6bがリング状に形成された小径円筒部6cが形成され、該小径円筒部6cの下側には、小径円筒部6cよりも大径で、その外周面に螺旋溝6dが刻設された大径部6eが形成されている。該螺旋溝6dは押出し棒6の下端部に至るまで長く形成されており、該下端部には外径方向に向けて突出したフランジ部6fが形成されている。該フランジ部6fの外周面には、前述の身筒3に形成された溝3c、3cに摺動自在に係合する複数(本実施の形態では2個)の係合突起6g、6gが突出形成されている。また、フランジ部6fの下面には、下方に向けて複数本(本実施の形態では2個)の脚部6kが突出形成されており、該脚部6kが、袴筒2の底面2aに当接して組付けられることによって、押出し棒6の底面6mは袴筒2の底面2aには当接しない(離間する)ようになっており、これによって押出し棒6が下方に押圧されたときには脚部6kに対し底面6mが弾性変形することになって弾機の機能を呈するようになっている。
【0013】
螺旋溝6dは、押出し棒の最外径側面である山部6gと溝底である谷部6hとで形成されるが、該山部6gと谷部6hとを繋ぐ連結面は、押出し棒6の軸方向に対して略垂直な上側連結面6iと該上側連結面6iに対して上側に向けて所定の角度を有している下側連結面6jとで構成され、これによって螺旋溝6dは上方向には滑り可能だが下方向には滑り規制されたラチェット歯としての機能を呈するよう構成されている。
【0014】
5はカートリッジ体であって、該カートリッジ体5は、図4〜図8に示すように、化粧料が充填される充填ケース7、充填ケース7の下端部に一体的に内嵌する中筒8、該中筒8に回動規制された状態で内嵌する作動爪体9、該充填ケース7内を前記押出し棒6の押出しによって充填ケース7の軸方向に上下動する押出し駒10、該押出し駒10の下部に遊嵌するスライダー11を備えて構成される。
【0015】
充填ケース7は、図4に示すように、中に充填される化粧料が外部から視認されるようAS樹脂等の透明樹脂材(不透明でも可)で形成されており、上端部7aは、側面から見て、やや先細り状であって、上面は、傾斜状にカットされた平面部7bとなっており、該平面部7bには、適宜間隔を有して液状の化粧料が吐出される吐出孔7cが複数(本件実施例では6つ)穿設されている。また、充填ケース7の中央部には、中筒8を組みつける際に中筒8の上端部が当接する段差部7fが形成されている。さらに下方の外周面には、第一凹部7dが周回り方向に沿って形成され、この第一凹部7dに前述の凸リブ3dが係合するようになっている。また、充填ケース7の下端部の内周面側には、第二凹部7eが周回り方向に沿ってリング状に形成され、この第二凹部7eに後述する中筒8の凸部8hが係合するようになっている。さらにまた充填ケース7の内周面は、前記段差部7fを介して下側が大径で上側が小径となった大径部7g、小径部7hが形成されている。
【0016】
中筒8の内周面側には、内径方向に突出した鍔部8aが周回り方向に沿って形成され、該鍔部8aの上部には、軸方向に向けて複数本(本実施の形態では4本)の凸リブ8bが互いに所定角度(本実施の形態では90度)を存して形成され、さらに該凸リブ8bの上部には、中筒8の上端部にまで至るようにして凹溝8cが軸方向に向けて中筒8の上端部8gまで形成され、後述する化粧料充填時に余分な空気と液漏れをするための機能を呈するように設定されている。一方、鍔部8aの下部内周面には小径部8dと大径部8eとがあいだに傾斜部8fを存する状態で上下に形成されている。外周面の傾斜部8fと対向する部位には、前述の第二凹部7eと係合する凸部8hが形成されている。
【0017】
中筒8に内嵌する作動爪体9は、上部が環状体9aとなり、該環状体9aの外周面側には、互いに所定の角度(本実施の形態では90度)を存して切欠き部9bが複数形成され、さらに環状体9aにおいて互いに隣接する切欠き部9b同士のあいだからは脚部9cが下方に垂下するように形成されている。そして該脚部9cの外周側下端部には、外径方向に突出して、上下両端が中筒8の小径部8d、大径部8e、傾斜部8fを摺動しやすいよう面カットされた摺動突起9dが形成される一方、脚部9cの内周側下端部には、内径方向に突出して、前述の螺旋溝6dに係合する爪部9eが山形状に突出形成されている。該爪部9eには、上側に至るほどその頂部から脚部9cに至る上側テーパ面9fと逆に下側に至るほどその頂部から脚部9cに至る下側テーパ面9gとが形成されている。
【0018】
そして、中筒8に作動爪体9が内嵌した状態では、前記切欠き溝9bは中筒8に形成された凸リブ8bに係合しており、これによって、中筒8の周回り方向の回動に対しては作動爪体9は中筒8と一体に回動するが、中筒8の軸方向(縦方向)の移動に対しては作動爪体9は中筒8に対して相対移動ができるように構成されている。そしてこの相対移動は、摺動突起9dが鍔部8aの下面に当接する位置から環状体9aの下面が鍔部8aの上面に当接する位置まで可能となっている。
【0019】
押出し駒10の頭部10aは円錐状となっており、該頭部10aの大径となった下端部外周面には、充填ケース7の内周面に弾圧状に当接して密閉状に封止する第一O−リング12を取付けるためのリング溝10bが形成されている。一方、押し出し駒10は、頭部10aに続く状態で小径の首部10c、中径の胴部10dが形成されているが、首部10c、胴部10dは下端が開口する状態で胴部10dから首部10cに至るまで中空状になっており、その上端部には、前述した押出し棒6の先頭部6aが当接する押出し棒当接部10eが形成されている。首部10cと胴部10dの境界部外周面には、外径側に向けて鍔状に突出していて頭部10aの下端部と同径になった摺接部10fが形成される。この摺接部10fは充填ケース7の内周面に摺接しつつ移動するようになっている。首部10aの外周面には空間部10gが形成され、この空間部10gを、後述するスライダー11の係合突起片11dが軸方向に移動するようになっている。
【0020】
摺接部10fの外周面には、周回り方向互いに対向する位置に、スライダー11に形成される係合爪11cが係合する切欠き部10hが形成されている。そして、該切欠き部10hの真下の胴部10dの位置には、舌片状(冂字形)に切欠かれた舌片部10iが形成され、該舌片部10iの内周面側には、前述した押出し棒6に形成される突起係合溝6bに係合する押出し棒係合突起10jが形成され、外周面側には、該押出し棒係合突起10jの形成位置よりやや上側に位置してスライダー11の内周面側に摺接する摺接突起10kが形成されている。
【0021】
スライダー11は、下部が円環状の円環状体11aとなっており、該円環状体11aの外側面には、第二O−リング13が装着するためのリング溝11bが形成され、内側面には押出し駒10に形成される摺接突起10kを押圧するための傾斜面11eおよび小径部11fが形成されている。そして該円環状体11aの上面の互いに対向する位置には、前述の切欠き部10hに遊嵌状に係合するための係合爪11cが形成された係合突起片11dが上方に向けて突出形成されている。該係合爪11cは、円環状体の周回り方向外方に向けて対称状に突出している。
このように形成されていることから、スライダー11を押出し駒10に取り付けた状態では、係合爪11cは切欠き部10hに遊嵌状に係合することになり、スライダー11は、押出し駒10に対して、係合爪11cが空間部10gを軸方向に移動する範囲内で移動自在となるよう構成されている。
【0022】
尚、14は、容器本体1およびカートリッジ体5を密閉状に覆蓋するキャップであって、該キャップが覆蓋されることによって化粧料が乾燥することを防ぎ、また塵等の混入を防止している。
【0023】
叙述の如く構成された本発明の実施の形態において、まず化粧料Aを充填したカートリッジ体5を組み立てる過程を図9、10を用いて説明する。因みに、図9、10は、液体化粧料の充填であるため、他の図面と異なり、天地逆のものとして図示している。
充填ケース7には化粧料Aが充填されるが、ここで充填する化粧料Aは、計量の誤差等によって規定量以下の充填となることを防ぐため、規定量よりも少し多い量の化粧料Aが充填されている。
【0024】
図9(A)に示すように、まず、充填ケース7には、吐出孔7cがシール部材15によって封止された状態で化粧料Aが充填されることになるが、該充填された充填ケース7に、作動爪体9、押出し駒10、スライダー11、第一O−リング12、第二O−リング13が一体的に組みつけられた中筒8を充填ケース7の開口側端から挿入してカートリッジ体5を組み立てる。この場合において、作動爪体9は、脚部9cが垂直状態となっていて、摺動突起9dは中筒8の大径部8eからは離間しており、中筒8とスライダー11とは、中筒8の凸リブ8b上端部がスライダー11の円環状体11a下面(本図では上面)に当接した状態となっている。
【0025】
そして、図9(B)あるいは図10(A)に示すように、中筒8が充填ケース7に挿入されていくと、押出し駒10の先端が充填ケース7に充填された化粧料Aに浸っていくが、このとき、第一O−リング12は大径部7gに対して間隙を存した状態で対向しており、この結果、中筒8を挿入した当初は、充填ケース内の化粧料Aの上部にある空気は、矢印Xに示すように、前記充填ケース7の段差部7f、前記間隙および凹溝8cを通って押出し駒10の首部10cの外周面に形成された空間部10g側に流出していく。
そしてさらに、図9(C)あるいは図10(B)に示すように、押出し駒10が充填ケース内に挿入されていって、第一O−リング12が段差部7fに近接するまで挿入される段階では、充填ケース内の空気は全て矢印Xを通って空間部10gに流出し、その後さらに化粧料Aの一部も矢印Xを通って空間部10gに漏出する。
【0026】
ここからさらに、図9(D)あるいは図10(C)に示すように、第一O−リング12が段差部7fを越えて小径部7hに至り、中筒8の上端部8gが段差部7fに当接するまで中筒8が挿入されると、第一O−リング12は小径部7hに弾圧状に当接して変形し、これによって第一O−リング12は充填された化粧料Aを封止するように密着する。
ここで、空間部10gに漏出した化粧料Aは、スライダー11に取付けられた第二O−リング13が中筒8の内周面に密着していることから、前記空間部10g内の化粧料Aが容器本体内に漏出してしまうことはない。
【0027】
次に、前述したように化粧料Aが充填されたカートリッジ体5を容器本体1に装着する過程を説明する。
まず、図11に示すように、押出し棒6は外筒2の底部2aまで移動(落下)した状態になっており、この状態でカートリッジ体5を構成する充填ケース7を把持してカートリッジ体5の下端部を容器本体1の開口に向けて挿入する。
このとき、押出し駒10は、頭部10aの下面がスライダー11の係合爪11cに当接しているとともにスライダー11の円環状体11aは中筒8の凸リブ8bに当接している。そして、作動爪体9は、脚部9cが垂下して摺動突起9dと中筒8の大径部8eとは離間した状態となっている。
【0028】
このような状態でカートリッジ体5を容器本体1に挿入していくと、図12(A)に示すように、まず作動爪体9の脚部9cの下端部が縁部3bに当接することになって、作動爪体9はこれ以上の挿入が規制される。このとき、作動爪体9の爪部9eは、前記下側テーパ面9gを有することから、挿入することによって押出し棒6に形成される螺旋溝6dの山部6gを越える(山越えをする)弾性変形をする。この弾性変形によって、押出し棒6が下方に押し込まれる力を受けることになるが、これによって、押出し棒6の底面6mは袴筒2の底面2aに向けて撓み、この撓みが弾機として押出し棒を上方向に持上げる力として働く。これによって、螺旋溝6dには押出し棒が僅かに下方に移動したことに伴う反力によって上方に向かう力が発生して、爪部9eの山越えを容易にし、これによって爪部9eは山部6gから谷部6hまで到達することができる。そして、脚部9cの下端部が縁部3bに当接したときには、爪部9eが螺旋溝6dに螺合した状態となっている。
因みに、この脚部6kの弾機としての機能は、コイルバネや板バネ等の弾機を用いても実施することができ、要は弾機機能を持たせて爪部9eの螺旋溝6dに対する螺合を容易ならしめるようにしたものであれば良いのであって、特に本実施の形態に限定されるものではない。
【0029】
ここからさらに挿入していくと、図12(B)に示すように、前述したように作動爪体9は縁部3bに移動規制されたまま、中筒8、押出し駒10、スライダー11はさらに容器本体の奥へと挿入され、そして中筒8の下端部8iが止め部3aに当接すると、中筒8の容器本体軸方向への挿入も規制されることになってカートリッジ体5の容器本体1に対するこれ以上の挿入ができなくなる。この状態では、中筒8の小径部8dが作動爪体9の摺動突起9dを押出し棒6側に向けて押圧しており、これによって爪部9eが螺旋溝6dの螺合から外れないようになっている。
また、押出し棒6の先頭部6aは、押出し駒10の押出し棒当接部10eに軸回り方向に摺動自在に当接した状態となっている。そしてこの状態以上のカートリッジ体5の挿入はできないようになっており、これによって入れすぎがないように配慮されている。
【0030】
そして前記図12(B)の状態から図13(A)に示すように、容器本体1に対してカートリッジ体5を回転可能な方向に回転させると、脚部9cが螺旋溝6dに対して相対回動していき、容器本体1に対して軸方向のみに移動するよう溝3cによって周回り方向の移動規制がなされた押出し棒6が押出し駒10と共に容器本体1に対して上方に螺進することになる。このとき、押出し棒6と押出し駒10とは軸回り方向に相対回動する。そしてスライダー11は、係合爪11cが押出し駒10の空間部10gのあいだだけ上下方向に移動自在となっているため、スライダー11は移動せずに残ることになり、この結果、押出し駒10がスライダー11に対して相対上動して、傾斜面11eに対向していた摺接突起10kが傾斜面11eを上方に向けて摺動して小径部11f位置に移動する。
【0031】
そうすると、押出し棒係合突起10jが小径部11fに押圧されることになって舌片10iが内方に向けて弾性変形し、これによって、図13(A)に示すように、押出し駒10に形成の押出し棒係合突起10jが押出し棒6に形成される係合溝6bに係合し、これによって押出し棒6と押出し駒10とが一体化される。
さらに容器本体1に対してカートリッジ体5を前記回転方向に回転させると、図13(B)に示すように、前記一体化された押出し棒6と押出し駒10とはスライダー11と共に充填ケース7の上端部7aに向けて移動し、これによって液状化粧料Aが吐出孔7cから吐出することになる。
【0032】
次に、このように容器本体1にカートリッジ体5が装着された状態から、カートリッジ体5を無理に取り外し(無理抜き)する場合の第一の取り外し過程について説明する。
図14(A)(図13(B)と同じ状態の図面)に示す状態からカートリッジ体5を容器本体1に対して無理に引き抜くと、図14(B)に示すように、本発明の遅延手段の実施の形態であるところの、押出し駒10とスライダー11との相対移動とこれによる押出し棒6と押出し駒10との係合解除がなされる。つまり、スライダー11および中筒8は、充填ケース7と一体となって移動するが、押出し駒10は、スライダー11と遊嵌状に係合しているため、スライダー11の係合爪11cが押出し駒10の頭部下面に当接するまでは移動しない。このとき、押し出し駒10は、充填ケース7に対して相対的に下方移動し、この下方移動した分だけ吐出孔7cから空気Yが流入する。そして、スライダー11の上方への移動に対して押し出し駒10および押し出し棒6が移動しないため、押し出し駒10に形成されている摺接突起10kはスライダー11に形成された小径部11fから傾斜面11eへと摺接しながら移動していき、これによって、押出し棒係合突起10jの係合溝6bに対する係合は解除していく。
【0033】
一方で、作動爪体9は、螺旋溝6dに係合しているため移動規制されて中筒8と共に移動することはなく、従って、中筒8が作動爪体9に対して持ち上がる方向に移動していく。これによって作動爪体9に形成された摺動突起9dの中筒8に対する当接は、小径部8dから傾斜部8fを経て大径部8eへと移動していき、これによって、爪部9eの拡開が可能となり、爪部9eの螺旋溝6dに対する係合は解除した状態となる。
【0034】
この状態からさらにカートリッジ体5を容器本体1から引き抜いていくと、押出し棒係合突起10jが係合溝6bから離間しているため、押出し棒6と押出し駒10との係合は半ば解除した状態となってはいるが、まだ部分的に引っかかった状態であるため、押出し駒10およびスライダー11の上方移動に従動して押出し棒6も上方に移動する。また、爪部9eの螺旋溝6dに対する押圧状態も解除されており、ここでも押出し棒6と作動爪体9との係合は半ば解除された状態となっているが、やはりまだ部分的に爪部9eが螺旋溝6dに引っかかった状態であり、作動爪体9の上方移動に対して押出し棒6も従動して上方に移動する。
【0035】
しかしながら、カートリッジ体5がさらに上方に引張られていくと、押し出し棒6の上方への移動は、押し出し棒6に形成されたフランジ部6fが身筒3の止め部3aに当接することによってこれ以上の上方移動が規制され(図15(A)参照)、ここでカートリッジ体5と押し出し棒6は完全に係合が解除される。これによって押し出し棒6は外筒2の底面2aに向けて落下し、このようにしてカートリッジ体5は容器本体1から取り外されることになる(図15(B)参照)。
【0036】
次に、カートリッジ体5を容器本体1に繰り戻す場合の過程を説明する。
カートリッジ体5を容器本体1に対して繰り戻す場合、図16(A)(図14(A)と同じ状態を示している)に示すような、カートリッジ体5が容器本体1に装着された状態から、容器本体1に対してカートリッジ体5を繰り戻す方向に回転させていく。
すると、押出し棒6および該押出し棒6に係合している押出し駒10は下方に移動していき、押出し駒10の摺接部10fがスライダー11の円環状体11aに当接して、押出し駒10のこれ以上の下方移動が規制される。と同時に、押出し駒10の摺接突起10kはスライダー11の小径部11fから傾斜面11eに移動していき、これによって、押し出し棒係合突起10jの係合溝6bに対する係合が解除される(図16(B)参照)。
【0037】
ここからさらに、繰り戻しすると、押し出し棒係合突起10jの係合溝6bに対する係合が解除されているため、押し出し棒6は、押し出し駒10から離間していくが、作動爪体9の爪部9eの螺旋溝6dに対する係合はまだ解除されていないため、容器本体1のカートリッジ体5に対する相対回動によって押出し棒6だけが下方に移動していき(図17(A)参照)、フランジ部6fが外筒2の底面2aに当接することでこれ以上の繰り戻しが規制される(図17(B)参照)。
【0038】
さらに、既に使用されて化粧料が初期充填量より少なくなっているカートリッジ体5を容器本体に取付ける場合の過程を説明する。
使用済みのカートリッジ体5は、図18(A)に示すように、押し出し駒10と作動爪体9とが離間した状態となっており、押し出し駒10は、充填ケース7の上部には化粧料Aが充填され、下部には空間Sが形成された状態で充填ケース7の中間部に位置している。
このようなカートリッジ体5を容器本体1に取付けると、図18(B)に示すように、まず作動爪体9の脚部9c下端部が縁部3bに当接することになって、作動爪体9はこれ以上の挿入が規制され、次に中筒8の下端部8iが身筒3の止め部3aに当接して、カートリッジ体5のこれ以上の挿入が規制される。このとき、作動爪体9の爪部9eが下側テーパ面9gとなっていることから、挿入することによって爪部9eが押出し棒6に形成される螺旋溝6dに螺合することは、図12に示したように、カートリッジ体5を容器本体1に装着する場合と同様である。
そして、作動爪体9が押し出し棒6に係合することによって、容器本体1とカートリッジ体5との相対回動によって押し出し棒6が上方へ移動していき、充填ケース7の中間部に位置している押し出し駒6の先頭部6aが押し出し駒10の押出し棒当接部10eに当接するまで、繰出しをおこなう(図19(A)、(B)参照)。
【0039】
ここで、押し出し棒6の先頭部6aが押し出し駒10の押出し棒当接部10eに当接するまでは、繰出しによる移動操作に抵抗を感じないが、押出し棒6が押出し駒10に当接すると繰出し操作に摺動抵抗を感じることになって、それまでとは異なる感覚として使用者に意識させられるようになっている。そして、ここからさらに繰出し操作をおこなうことによって、押出し棒6の先端部6aが押出し駒10の押出し棒当接部10eを押し出していき、これに伴ってスライダー11の係合爪11cが押出し駒10の空間部10gを下方に相対移動して摺接部10fに当接したときには、押出し駒10の摺接突起10kがスライダー11の小径部11fから傾斜面11eに移動して押出し棒係合突起10jが押出し棒6の係合溝6bに係合する。この状態は、図16(A)と同じである。
【0040】
このように、本発明によれば、カートリッジ体5に化粧料を充填する際に、充填ケース7に混入している空気を化粧料充填部分から抜き取ることができて、吐出孔7cから吐出される化粧料を、空気の混入していない質の良い液状化粧料とし、このような液状化粧料を提供する化粧料収納容器とすることができる。
しかも、空気を確実に抜き取るために、液状化粧料を化粧料充填部分から少し液漏れさせるように構成されているが、この抜き取られた化粧料が容器本体に流出することのないように構成されているため、化粧料が容器本体内に漏れ出てしまって固まったり、カートリッジ体5を取り外す際に、飛び散って周囲を汚してしまったりすることがない。
【0041】
また、カートリッジ体5に収納される化粧料が液状のものでありながら、化粧料が使用済みとなった際には、カートリッジ体5を容器本体開口から容器本体軸方向に向けて引っ張りだすことで交換することができる。その際、容器本体1とカートリッジ体5との係合は、押出し棒6と押出し駒10との係合並びに作動爪体9と押出し棒6との2箇所の係合によってなされているが、この2箇所の係合が解除されることで押し出し棒は、外筒2の底面2aに向けて落下することになって、カートリッジ体5の交換時に押出し棒を最下位置まで繰り戻す必要がない。
【0042】
さらに、カートリッジ体5を使用途中で交換する場合、カートリッジ体5に内装される押出し駒10が交換時の位置に置かれたままの状態で交換できるため、次にこのカートリッジ体5を容器本体1に装着した後は、押出し駒10に押出し棒6が当接するまでの最初の繰出しは押出し棒6の先頭部6aに当接するものが何もないので繰出し操作に抵抗を感じることがないが、押出し棒6が押出し駒10と当接した後にはこれまでとは異なる摺動抵抗を感じることになって、使用者はこれによってもうすぐ吐出口7cから化粧料が吐出されるということを意識することができる。従って、繰出し操作を最初から慎重におこなう必要がなくなり、摺動抵抗を感じた後に化粧料の吐出を意識すればよいことになって操作性に優れたものになる。
【0043】
また、本発明によれば、カートリッジ体5を容器本体1の開口に向けて真っ直ぐに挿入するだけでよいので、係合部にセレーションを設けたもののように係合に際して凹部と凸部が嵌合するように位置合わせをする必要がない。従って、カートリッジ交換を非常に簡単なものとすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、口紅、マニキュア、ファンデーション等の化粧料を収納するためのカートリッジ式化粧料収納容器の分野に利用可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 容器本体
5 カートリッジ体
6 押出し棒
6d 螺旋溝
7 充填ケース
9 作動爪体
10 押出し駒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧料が充填される筒状の充填ケース、および該充填ケース内に軸芯方向移動自在に組み込まれていて化粧料を移動させるための押出し駒を備えたカートリッジ体を容器本体に抜き差し自在に組み込むと共に、前記容器本体に内装された押出し棒が、容器本体に対するカートリッジ体の相対回動に基づいて充填ケース側へ移動することで押出し駒を共に移動させて化粧料を充填ケースから押出すように構成されるカートリッジ式化粧料容器において、前記押出し駒と押出し棒とのあいだには、押出し駒が中途使用位置に位置する状態で押出し駒と押出し棒とが相対的に離間する方向に移動したとき、前記押出し駒の押出し棒に対する離間方向の移動を解除して押出し駒の押出し棒への追従をしないようにする解除手段が設けられていることを特徴とするカートリッジ式化粧料収納容器。
【請求項2】
押出し駒と押出し棒とが相対的に離間する方向の移動は、カートリッジを容器本体から無理抜きするときの移動であることを特徴とする請求項1記載のカートリッジ式化粧料収納容器。
【請求項3】
押出し駒と押出し棒とが相対的に離間する方向の移動は、容器本体に対するカートリッジ体の相対回動に基づく押出し棒の容器本体側への移動であることを特徴とする請求項1記載のカートリッジ式化粧料収納容器。
【請求項4】
解除手段は、押出し棒に対する押出し駒の離間方向の移動解除を一時的に遅延させるための遅延手段が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1記載のカートリッジ式化粧料収納容器。
【請求項5】
カートリッジ体は液状の化粧料が充填されたものであることを特徴とする請求項4記載のカートリッジ式化粧料収納容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−178826(P2010−178826A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−23527(P2009−23527)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【出願人】(000153926)株式会社ヒダン (16)