説明

カードの挟み込み搬送装置

【課題】 消費電流の増加やソレノイドの発熱といった問題がなく、搬送動作が安定したカードの挟み込み搬送装置を提供する。
【解決手段】 駆動ローラ13とアーム11に設けた従動ローラ12によって挿入されたカード20を挟持するとともに、回動可能なアーム11の側面に1本の板ばね16を固定して、プーリ18およびソレノイド19を設けてこの板ばね16を支持させる。ソレノイド19が動作すると板ばね16を押圧して撓ませる構成とする。この搬送装置にカード20が挿入されるとソレノイド19が動作し、板ばね16が撓んでアーム11を下方に押圧し、アーム11が回動して従動ローラ12を挿入されたカード20に押し付ける。これによって搬送装置内でカード20が駆動ローラ13と従動ローラ12によって挟持されることとなり、カード20の搬送が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カードリーダライタにおける、挿入されたカード形状の媒体を外部から受け入れてそのデータ処理を行う、カードの挟み込み搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ICカードなどのリーダライタでは、使用者が挿入口に差し込んだカードを挿入口に設けたローラにより挟持し、カードをこのローラの回転駆動によって装置の内部に搬入する構成とすることが一般的である。この場合、挿入口には2個のローラを配置して、この2個のローラの間隔を変化させることで、差し込まれたカードを確実に挟持することが行われている。つまり2個のローラのうち少なくとも一方を移動可能に構成しておき、カードの差し込みの待機の状態では2個のローラの隙間を広げて、使用者によるカードの差し込みを容易にする。カードが差し込まれた後は2個のローラの間の隙間を閉じてカードを挟持するとともに、駆動ローラの回転により差し込まれたカードを装置の内部に搬入するのである。このような挟み込み搬送装置の構成は、カードによる決済が可能な自動販売機など、様々な装置に搭載されている。
【0003】
前記の2個のローラを使用したカードの挟み込み搬送装置では、このうち少なくとも一方のローラを移動可能に構成して、カードの差し込みとともに2個のローラの間隔を即座に変化させる必要がある。このような装置では、一端を回動可能に固定したアームにローラを設置して、ソレノイドなどの可動装置を用いてこのアームを動作させる構成とすることが多い。この場合、単にソレノイドのみでアームを動作させるとローラへの付勢力が強くなりすぎることから、アームの支持装置などにばねを用いた構成とすることで、可動ローラの移動量や2個のローラによるカードを把持する力の大きさを、適切な範囲に調整するなどの方法がとられていた。用いられるばねはコイルばねや板ばねが多い。ばねを用いたカードの挟み込み搬送装置の従来の構成例について、図3〜図5をもとに説明する。
【0004】
特許文献1には、コイルばねを用いたカードなどのシート状部材の搬送装置の従来例が開示されている。図3はこのシート状部材の搬送装置の従来例の側面図であり、搬送装置がL字型アーム31と引っ張り駆動型のソレノイド37、および圧縮型の1本のコイルばね36を用いて構成されていることが特徴である。この搬送装置では、図の左側から挿入されたシート状部材38を、図の下側に配置された駆動ローラ33が回転駆動することにより、装置内に搬送する。搬送装置が非稼動状態、即ちソレノイド37が初期状態の場合には、L字型アーム31の左側の先端部に取り付けられている従動ローラ32は、コイルばね36による付勢力によって図の下方に向けて押し下げられており、駆動ローラ33と従動ローラ32は搬送ガイド34の近傍で互いに接触している。
【0005】
この搬送装置が稼動すると、引っ張り駆動型のソレノイド37が動作して可動部であるプランジャ(可動鉄芯)が図の右側に移動し、L字型アーム31の図の上方の先端部が図の右側に引っ張られて、アーム支点35を中心として時計回りの向きに回動する。これによってL字型アーム31の図の左側の先端部に設けられた従動ローラ32が、コイルばね36による付勢力に抗して図の上方に持ち上げられるため、搬送装置の挿入口である駆動ローラ33と従動ローラ32の間に隙間が生じる。
【0006】
シート状部材38をこの挿入口に挿入すると、図示しない検知装置がシート状部材38の存在を検知してソレノイド37を非動作状態とする。そのため圧縮型のコイルばね36の付勢力によって、L字型アーム31の先端部の従動ローラ32がシート状部材38を挟んで駆動ローラ33に押し付けられ、駆動ローラ33の回転によってシート状部材38が搬送装置の奥に搬入される。シート状部材38に対する処置が終わって挿入口から再び装置外に送り出されると、搬送装置は初期状態に戻って再びソレノイド37が動作して挿入口に隙間が形成される。
【0007】
また特許文献2には、図3とは異なるカードなどの搬送装置の従来例が開示されている。図4はこの搬送装置の従来例の側面図であり、搬送装置が棒状のアーム41と引っ張り駆動型のソレノイド49、および圧縮型の1本のコイルばね46を用いて構成されていることが特徴である。なお前記コイルばね46の他に1本の板ばね47が用いられているが、この板ばね47はカード50の挿入時や取り出し時に、カード50や搬送装置によって発行されたレシートが挿入口の隙間から脱落しないように、接触片48を介して常に駆動ローラ43を従動ローラ42に押し付けておくために設けられたものである。
【0008】
図3と同様に、この搬送装置では図の左側から挿入されたカード50を、図の下側のアーム41の先端部に配置された駆動ローラ43の回転駆動によって装置内に搬送する。カード50が未挿入の、搬送装置が稼動したばかりの状態では、ソレノイド49は非稼動であり、ソレノイド49のプランジャは圧縮型のコイルばね46の作用によって図の上方向に付勢力を与えられた状態となっている。そのためアーム41の先端部の駆動ローラ43とその上方の従動ローラ42の間には、隙間が生じる向きの作用を受けることとなる。実際には板ばね47が駆動ローラ43に対して図の上向きに常に付勢力を与えているために、この両者の間に隙間が生じることはないが、駆動ローラ43と従動ローラ42の間に生じる押し付け力は、ソレノイド49の稼動状態によって大きく変化することになる。
【0009】
カード50をこの挿入口に挿入すると、搬送ガイド44上の図示しない検知装置がカード50の存在を検知して、引っ張り駆動型のソレノイド49を動作させる。そのためコイルばね46の付勢力に抗して、駆動ローラ43がカード50を挟んで従動ローラ42に押し付けられ、その回転駆動によってカード50が搬送装置の奥に搬入される。搬送装置内での処置が終わってカード50が挿入口から再び装置外に送り出されると、駆動ローラ43に加えられる付勢力は板ばね47に依るもののみになり、付勢力が小さくなるので、使用者が挿入口からカード50を容易に取り出すことが可能になる。
【0010】
さらに特許文献3には、図3および図4と異なるカードの搬送装置の従来例が開示されている。図5はこのカードの搬送装置の側面図であり、図の右側からカードを挿入する。搬送装置は操作部材51と1本の板ばね55、駆動ローラ53および従動ローラ52などから構成されている。従動ローラ52は板ばね55上に回転可能に固定されており、その上方には対向する位置に駆動ローラ53が設けられて、搬送装置の挿入口を形成している。搬送装置内にソレノイドは設けられておらず、駆動ローラ53および従動ローラ52の間隔は、板ばね55の撓みによって僅かに変化するのみである。板ばね55は、従動ローラ52に対してその上方に設けられた駆動ローラ53に圧接するための付勢力を与えている。
【0011】
図3と同様に、この搬送装置に図の右側からカード56が挿入された場合には、駆動ローラ53および従動ローラ52の動作によってカード56を装置内の搬送ガイド54上に搬送する。操作部材51は装置内に挿入されたカード56を停電時などに緊急に取り出すためのものであり、操作部材51を装置内に押し込むと板ばね55が撓み、従動ローラ52に対する付勢力が解除される。そうするとばね仕掛けの押し出し機構57の作用によって、カード56の図の左側に位置するホルダ58が搬送ガイド54上を図の右側に移動し、カード56を搬送装置の挿入口から外へ押し出すことになる。これによって搬送装置が稼働していない場合でも、使用者がカード56を装置外に容易に取り出すことができる。
【0012】
【特許文献1】特開平4−94351号公報
【特許文献2】実開昭57−134151号公報
【特許文献3】特開平2−83791号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
以上の特許文献1に記載の搬送装置の従来例では、挿入口に設けられたカードの挟み込みを行う駆動ローラおよび従動ローラの間に隙間を開ける場合に、ソレノイドを動作させる構成としている。一般にカードの処理装置では、稼動時間のうちで使用者がカードを挿入可能な状態を維持する、待機時間の割合が圧倒的に長く、駆動ローラと従動ローラの隙間を閉じて、実際にカードを搬送し、処理する時間の割合は小さい。そのため、特許文献1に記載の従来例のように、カードの挿入口の隙間を開けているときにソレノイドを動作させる構成では、ソレノイドへの通電時間が長くなってしまい、消費電流の増加、ソレノイドの発熱といった問題が発生する。
【0014】
この問題はソレノイドおよびコイルばねの動作を変更して、押し出し駆動型のソレノイドと引っ張り型のコイルばねの組み合わせとすれば解消することができる。しかしその場合は、挿入されたカードを2つのローラが挟持するために、押し出し駆動型のソレノイドが動作する際の撃力が、アームおよび従動ローラを介するだけで、カードに加えられることとなる。ソレノイドの動作時の撃力は一般にかなり大きく、そのため、長期間使用した場合には搬送装置の駆動系の損耗が大きくなる危険があるほか、挿入されたカードに傷やダメージを与える可能性もある。またソレノイドでは、一般的に製品ごとの撃力の大きさのばらつきが小さくないため、他の素子と組み合わせても、搬送装置ごとの撃力の大きさを調整することも困難である。
【0015】
特許文献2に記載の搬送装置の従来例は、コイルばねとソレノイドの構成を特許文献1に記載の場合から変更したものである。これによって、引っ張り駆動型のソレノイドと圧縮型のコイルばねの組み合わせを用いたままで、装置内にカードが挿入されてから処理を行い、搬出するまでの間にソレノイドの動作時間を限定している。この場合は特許文献1に記載の場合のように、ソレノイドへの通電時間が長くなる問題は生じないが、上記の押し出し駆動型のソレノイドへ変更した場合と同様に、新たにソレノイドの動作時の撃力がアームと従動ローラのみを介してカードに加えられる問題が生じてしまう。特許文献2に記載の搬送装置では、駆動ローラには板ばねによって常に付勢力が与えられているので、この撃力による衝撃は若干和らげられると予想されるが、これによって長期使用時に駆動系が損耗する危険や、カードにダメージが加えられる可能性が解消されるものではない。
【0016】
特許文献3に記載の搬送装置は、コイルばねの代わりに板ばねを用いた従来例である。この搬送装置ではソレノイドは用いられていないが、使用者が手動で操作する操作部材の先に押し出し駆動型のソレノイドを仮に設置した場合は、特許文献1や特許文献2の場合と同様に、カードの挿入時に挿入口の2つのローラの隙間を開閉する構成と見なすことができる。この場合には、特許文献1の場合のように、ソレノイドへの通電時間が長くなる問題は起こらない。また、特許文献2の場合のように、ソレノイドの動作時の撃力がアームと従動ローラのみを介するだけでカードに加えられる問題も生じない。このように1本の板ばねを用いる構成とした場合には、それ以外の搬送装置の場合に生じていた従来技術の問題を、いずれも回避することが可能である。
【0017】
ただし、特許文献3に記載の搬送装置に押し出し駆動型のソレノイドを設けた構成の場合には、特許文献1および特許文献2の場合にはなかった新たな問題が発生する。それは、板ばねの上に従動ローラを直接設置することにより、カードの搬送動作が不安定になる問題である。従動ローラは搬送されるカードに直接接するために、様々な振動がカードや駆動ローラから伝えられる。一方、板ばねはその固定端を節とする振動を増幅しやすいという性質がある。図5に記載の例では、板ばねには図の左側の固定端を節とし、図の右側の解放端を腹もしくは節とする固有振動が発生しやすく、いずれの場合にも板ばねの上に設置された従動ローラは図の上下方向に激しく振動することとなる。こうなると2つのローラによって挿入されたカードを安定して挟持することが困難となり、搬送装置としての役割を果たすことができない。従って、特許文献3に記載の搬送装置に押し出し駆動型のソレノイドを設けても、カードの搬送装置として実際には安定して用いることができない。
【0018】
従って、本発明の目的は、ソレノイドと板ばねを用いたカードの搬送装置であって、カードを挿入する挿入口に設けられた駆動ローラなどがカードを挟み込んで搬送する際に激しく振動することなく、挿入されたカードを安定して挟持することができる搬送装置を提供することである。また、ソレノイドへの通電時間が長くなることで、消費電流の増加やソレノイドの発熱といった問題が発生することがなく、さらにソレノイドが動作する際の撃力によって、長期間使用した場合に搬送装置の駆動系の損耗が大きくなったり、挿入されるカードに傷やダメージが与えられることもないような、カードの挟み込み搬送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明におけるカードの搬送装置では、押し出し駆動型のソレノイドと1本の板ばねの他に1本のアームを用いて、このアームの一端に従動ローラを回転可能に取り付けることとする。アームのもう一方の端には搬送装置にアームを軸支するための支点を設け、アームはこの支点を中心として一定の範囲で回動可能となるように構成する。そして、このアームの側面には前記の1本の板ばねの端部を固定する。この板ばねの固定箇所では、板ばねがアームに対して回動もしないように固定されており、固定点付近でのアームの側面と板ばねとのなす角は常にほぼ一定である。アームの一端に設けられた従動ローラは、アームや板ばねとは独立して設けられた駆動ローラに対向して配置されており、この駆動ローラと従動ローラの組が搬送装置におけるカードの挿入口を構成している。なお、アーム上に設置するカードの搬送要素として、従動ローラを設けずに、代わりに例えばテフロン(登録商標)加工面などの低摩擦の滑り面を表面に持つ押さえ具などをアームの端部に設け、駆動ローラに対して挿入されたカードの摺動が容易な表面を対向させる構成としても構わない。
【0020】
板ばねは前記のアームの側面の固定点の他に、搬送装置に設けられたガイド装置やソレノイドによっても支えられる構成とする。このガイド装置は板ばねを固定することなく、ガイド装置上を板ばねが自在に摺動するように構成される。ガイド装置としては固定軸を中心に自在に回転するプーリや、表面の摺動性が高いピンなどが好適であるが、板ばねが搬送装置から外れずに確実に支持し続けることのできる装置であればどのような構成でも構わない。また用いられるプーリやピンにフランジやエッジが設けられている場合は、板ばねをより確実に支持することができる。板ばねにはこのガイド装置の他に、押し出し駆動型のソレノイドの可動部であるプランジャが当接している。このガイド装置による板ばねの支持点と、ソレノイドのプランジャの当接点には2種類の位置関係が考えられる。つまり、ガイド装置による支持点を、プランジャの当接点よりもアームの側面の板ばねの固定箇所の近くに設けるか、あるいはその逆にするかであるが、本発明ではそのいずれの構成としても構わない。
【0021】
いずれの場合であっても、搬送装置の挿入口にカードが挿入される前の待機状態では、押し出し駆動型のソレノイドを非動作とすることで、ガイド装置と板ばねによってアームをやや持ち上げた位置に保持し、それにより対向する駆動ローラと従動ローラの間に多少の隙間を開けておくことができる。一方、カードが挿入口に挿入されると検知手段によってカードの挿入が検知され、押し出し駆動型のソレノイドが動作してプランジャが突出し、板ばねを押圧することとなる。これによって板ばねは撓み、アームが駆動ローラの方向に押し下げられて、挿入されたカードは駆動ローラとアーム端部の従動ローラにより挟持される。この際のアームを押し下げる力の大きさはプランジャの突出量や、板ばねの材質や寸法、アームの長さを変えることによって任意に調整可能である。その後カードは2つのローラによって挟持されたまま、搬送装置内を搬送される。この状態はカードが搬送装置から吐き出されるまで継続し、カードが装置内にないことが検知されると押し出し駆動型のソレノイドの動作が解除され、当初のカードの挿入の待機状態に戻ることとなる。
【0022】
即ち、本発明は、少なくとも、回転駆動機能を有するローラと、回動可能なアームと、板ばねと、ガイド装置と、および押圧手段とを有するカードの搬送装置であって、前記回転駆動機能を有するローラと、前記回動可能なアームに設けられたカード搬送要素がそれぞれカードの挿入口に配置されており、前記アームの少なくとも1箇所には前記板ばねが固定されていて、前記板ばねは、少なくとも1つの前記ガイド装置、および少なくとも1つの前記押圧手段により、それぞれ固定されることなく保持されていて、カードが挿入される前には、前記アームに設けられたカード搬送要素と、前記回転駆動機能を有するローラとが、前記カードの挿入口で互いに隙間を開けて待機し、前記挿入口にカードが挿入されると、前記押圧手段が動作して前記板ばねが撓むことによって前記アームが回動して、前記アームに設けられたカード搬送要素と、前記回転駆動機能を有するローラとが、前記挿入口にて挿入された前記カードを挟んで保持し、搬送する機能を有することを特徴とするカードの挟み込み搬送装置である。
【0023】
また、本発明は、前記押圧手段がソレノイドであって、検知手段によって前記挿入口への前記カードの挿入が検知されると前記検知手段から挿入検知情報が前記ソレノイドに伝達され、それにより前記ソレノイドが駆動して、前記ソレノイドの可動部が前記板ばねを押圧する機能を有していることを特徴とするカードの挟み込み搬送装置である。
【0024】
さらに、本発明は、前記アームに設けられた前記カード搬送要素が回転可能なローラであり、該回転可能なローラと前記回転駆動機能を有するローラとにより、前記挿入口にカードが挿入された場合に、前記カードが挟み込まれて保持搬送されることを特徴とするカードの挟み込み搬送装置である。
【0025】
さらに、本発明は、前記ガイド装置が中心を固定された回転可能なプーリであって、前記板ばねが前記プーリの回転面に接触するように配置されていることを特徴とするカードの挟み込み搬送装置である。
【0026】
さらに、本発明は、前記ガイド装置が固定されたピンであって、前記板ばねが前記ピンの側面に接触しつつ摺動するように配置されていることを特徴とするカードの挟み込み搬送装置である。
【0027】
さらに、本発明は、前記アームと前記板ばねとの固定箇所が、前記アームの側面に対して前記板ばねの一方の端部を固定したものであって、前記板ばねは、カードの挟み込み搬送装置の構成装置に対する固定箇所を、前記一方の端部以外には有していないことを特徴とするカードの挟み込み搬送装置である。
【0028】
さらに、本発明は、前記押圧手段による前記板ばねへの押圧箇所が、前記アームに対する固定箇所と前記ガイド装置による保持位置の間に設けられていることを特徴とするカードの挟み込み搬送装置である。
【0029】
さらに、本発明は、前記ガイド装置による前記板ばねの保持位置が、前記アームに対する固定箇所と前記押圧手段による前記板ばねへの押圧箇所の間に設けられていることを特徴とするカードの挟み込み搬送装置である。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、カードの挟み込み搬送装置において、カードの挿入を待機している際にはソレノイドを非動作として、カードが挿入された場合のみにソレノイドが動作する構成としているために、特許文献1に記載の従来例の場合のように、ソレノイドへの通電時間が長くなって消費電流の増加やソレノイドの発熱といった問題が発生することはない。
【0031】
また、本発明では、押し出し駆動型のソレノイドのプランジャは動作時に板ばねのみを押圧する構成であるので、特許文献2に記載の従来例の場合のように、ソレノイドの動作時に生じる撃力が、アームおよび従動ローラのみを介して挿入されたカードに加えられることもない。ソレノイドによる撃力は、一度板ばねの撓みに変化することで緩やかな変位となり、次いでアームの側面の板ばねの固定箇所にてアームを押し下げる力となる。駆動ローラとアームの先端に設けられた従動ローラは、搬送ガイド上に挿入されたカードをこのアームを押し下げる力によって上下から挟持し、搬送装置内での確実な搬送を行う。以上の構成によってソレノイドによる搬送装置に対する撃力が和らげられるため、長期使用時に駆動系が損耗する危険や、カードへのダメージが生じる可能性も防ぐことができる。
【0032】
さらに、本発明は、搬送装置内に1本のアームを設け、従動ローラを板ばね上ではなく、このアームの端部に取り付ける構成としているので、特許文献3に記載の従来例の場合のように、カードの搬送動作が不安定になる問題もない。板ばねとは異なり、本発明にて従動ローラが設けられたアームは剛体と見なされるので、固有振動を生じてそこに搭載された各装置に大きな振動を与えることはない。以上記した通り、本発明によれば、従来のカードの挟み込み搬送装置において課題となっていたカード搬送のための各問題を解決することができ、消費電力が低く、長期間の使用によっても搬送されるカードや搬送装置にダメージを与えることがなく、さらにカードの搬送時にも大きな振動が生じることのない、搬送動作が安定した、カードの挟み込み搬送装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明の実施の形態によるカードの挟み込み搬送装置について、図1ないし図2に基づいてその構成を説明する。このうち図1は、本発明におけるカードの挟み込み搬送装置の第1の実施の形態の例について示す図である。図1(a)はカード未挿入の待機状態での側面図、図1(b)はカードが挿入された状態での側面図である。
【0034】
図1において、カードの挟み込み搬送装置の挿入口は、図1(a)および図1(b)の左側に設けられている。カード20が未挿入の状態では、アーム11の端部に設けられた従動ローラ12は、搬送ガイド14に接して設けられた駆動ローラ13との間に一定の間隔の隙間を設けて支えられており、アーム11によって図の上方に持ち上げられている。アーム11はアーム支点15を中心に回動可能に設置されており、その側面の固定箇所17には板ばね16の端部が固定されている。板ばね16は固定箇所17において、この点を中心に回動しないように固定されており、固定箇所17を頂点とするアーム11の側面と板ばね16のなす角は、固定箇所17の近傍ではアーム11が回動した場合でもほとんど変化しない。
【0035】
この板ばね16はその中央付近でプーリ18により摺動可能に支持されており、プーリ18が板ばね16を図の上方から支持することによって、アーム11と板ばね16はアーム支点15とプーリ18の2点で支えられる構成となっている。押し出し駆動型のソレノイド19は図の右端近く、プーリ18よりも右側で板ばね16に対してその下側から当接していて、その可動部であるプランジャはソレノイド19が非動作であるために内部に収納された状態となっている。図1(a)に示すカード20が未挿入の状態では、ソレノイド19は板ばね16を支持する役割を持たないので、プランジャの先端が板ばね16から多少離れていても構わない。アーム11と板ばね16が2点のみで支えられているので、板ばね16にはアーム11や従動ローラ12の自重以外の外力は作用しておらず、そのため板ばね16にはほとんど撓みが生じていない。図1では板ばね16として無加重では直線状となる板ばねを用いており、そのため図1(a)に記した板ばね16もほぼ直線状である。
【0036】
本発明の第1の実施の形態のカードの挟み込み搬送装置に、図の左側からカード20が挿入された場合の動作について図1(b)をもとに説明する。カード20が挿入口に挿入されると、図示していない検知装置によってカードの挿入が検知され、押し出し駆動型のソレノイド19が動作してプランジャが突出し、図の下側から、板ばね16を図の斜め左上の方向に大きく押し上げることになる。しかし板ばね16はプーリ18によって図の上方から支持されているために、プーリ18による支持点より上方に移動することができず、結果としてプーリ18よりも右側の領域では板ばね16が上方に大きく撓むことになる。プーリ18の支持点付近では、これによって板ばね16のプーリ18に対する角度が変わり、結果としてアーム11の固定箇所17は板ばね16によって図の下向きに押し下げられる。このため従動ローラ12は挿入されたカード20に一定の付勢力によって密着することとなり、カード20は駆動ローラ13と従動ローラ12により挟持されて、駆動ローラ13の回転によって、搬送装置内で搬送ガイド14上を搬送されることとなる。
【0037】
ソレノイド19の動作は、図示しない検知装置によりカードの挿入が検知されている間はずっと継続される。カード20に対する一連の処理が終わって挿入口からカード20が図の左側に排出されると、ソレノイド19の動作が解除されて非動作となり、プランジャがソレノイド19内に収納されて板ばね16の撓みが解消される。これによってアーム11はアーム支点15を中心として回動し、アーム11の端部に設置された従動ローラ12は再び図の上方に持ち上げられて、駆動ローラ13との間に再び一定の間隔の隙間が開くこととなる。なお、前記プーリ18に代えて、板ばね16の表面に対して摺動性の高いピンなどを用いてもよい。また、アーム11の端部に、従動ローラに代えて例えばテフロン(登録商標)加工面などの低摩擦の滑り面を表面に持つ押さえ具などを設けた場合にも、前記の説明と同様に好適なカードの挟み込み搬送装置を実現することができる。
【0038】
また、図2は、本発明におけるカードの挟み込み搬送装置の第2の実施の形態の例について示す図である。図2(a)はカード未挿入の待機状態での側面図、図2(b)はカードが挿入された状態での側面図である。
【0039】
図2において、カードの挟み込み搬送装置の挿入口は、本発明の第1の実施の形態の場合と同様に、図2(a)および図2(b)の左側に設けられている。本発明の第2の実施の形態におけるカードの挟み込み搬送装置の構成は、前記の第1の実施の形態の場合に類似しており、両者の違いはプーリ28とソレノイド29の相対的な位置関係のみである。図2(a)において、カード30が未挿入の状態ではアーム21はアーム支点25を回動の中心として図の上方に持ち上げられており、搬送ガイド24に接して設けられた駆動ローラ23と、アーム21の端部に設置された従動ローラ22の間には、一定の間隔の隙間が設けられている。板ばね26はその一端がアーム21の側面の固定箇所27に固定され、板ばね26の中央付近に設置されたソレノイド29のプランジャによって図の上方から支持されている。板ばね26の右端付近の斜め下側にはプーリ28が設置され、板ばね26とプーリ28はこの状態で互いにほぼ接触するように配置されている。
【0040】
図示しない検知装置によってカード30が搬送装置内に挿入されたことが検知されると、ソレノイド29からプランジャの先端が突出して、板ばね26を図の斜め右下の方向に向けて突き下げる。その状態は図2(b)に示す通りであり、板ばね26は、アーム21の側面の固定箇所27とプーリ28による支持点の間で右下の方向に弓なりに大きく撓むこととなる。この撓みによって、従動ローラ22は本発明の第1の実施の形態の場合と同じく、一定の付勢力とともに挿入されたカード30に密着する。これによって従動ローラ22と駆動ローラ23がカード30を挟持することとなり、駆動ローラ23の回転によってカード30は搬送ガイド24に沿って搬送装置内を移動する。カード30に対する一連の処理が終わって図の左側の挿入口から排出されると、ソレノイド29は非動作状態に戻ってプランジャがソレノイド29内に収納され、カードの挟み込み搬送装置は再び図2(a)に示された状態に戻る。
【実施例】
【0041】
本発明の第1および第2の実施の形態に基づくカードの挟み込み搬送装置を実際に作製し、挿入口からカードを挿入した場合の動作について検証した。
【0042】
(実施例1)
本発明の第1の実施の形態に基づくカードの挟み込み搬送装置として、図1に記載の形状の搬送装置を実際に組み立てて動作を確認した。挿入するカードとしては、一般的なクレジットカードと同じ寸法である、85.6×54.0×0.76mmのプラスチックカードを用いた。搬送ガイドはゴムベルトにて構成し、駆動ローラおよび従動ローラの直径は各々30mmである。なお駆動ローラと従動ローラは単独ではなく、複数のローラがそれぞれ同心に並列されている。アームは金属板からなり、アーム支点と従動ローラの中心軸との距離は60mm、アームの幅は20mm、アームの側面への板ばねの取り付け位置は従動ローラの中心軸から25mmの位置の側面部である。板ばねは鋼製であり、板ばねの長さは100mm、板ばねを上方から支えるプーリは直径10mmである。
【0043】
ソレノイドは押し出し駆動型で、動作時のプランジャの突出長さ(ストローク)は10mmである。搬送装置内でのプーリの設置位置を調整し、ソレノイドが非動作の状態では駆動ローラと従動ローラの間に隙間が5mm開く位置まで従動ローラが持ち上げられるようにした。このときのプーリは、板ばねのアーム側面への固定箇所から約50mm離れた位置に板ばねの上方から、またソレノイドは約80mm離れた位置に板ばねの下方からそれぞれ接触するように設けている。ソレノイドが非動作のときはプランジャの先端は板ばねの側面に接触しているのみで、応力を与えないように配置している。この他にカードの挿入の検知手段として光学式検知センサを設けている。
【0044】
前記のカードの挟み込み搬送装置の挿入口に前記寸法のプラスチックカードを挿入して、搬送装置の動作を確認した。光学式検知センサによってカードの挿入が検知されるとソレノイドが動作してプランジャが突出し、板ばねが撓んでアーム上の従動ローラがカードに押し付けられ、駆動ローラの動作によってカードが搬送ガイド上を搬送された。駆動ローラの動作によってカードが挿入口から排出されるとソレノイドが非動作となり、プランジャがソレノイド内に収納されて従動ローラの位置が再び初期状態に戻った。この動作を繰り返しても、カード表面にダメージが生じることはなく、また搬送装置の動作も最後までスムーズであり、搬送装置の駆動系に損耗が生じることも全くなかった。
【0045】
(実施例2)
本発明の第2の実施の形態に基づくカードの挟み込み搬送装置として、図2に記載の形状の搬送装置を実際に組み立てて動作を確認した。挿入するカードの材質と寸法、駆動ローラ、従動ローラ、搬送ガイド、アームおよび板ばねの寸法形状と設置位置や、カードの挿入の検知手段などは第1の実施の形態の場合と同一である。プーリおよびソレノイドの寸法形状も第1の実施の形態の場合と同一であるが、それらの設置位置は、ソレノイドが板ばねのアーム側面への固定箇所から約50mm離れた位置に板ばねの上方から、またプーリが約80mm離れた位置に板ばねの下方からそれぞれ接触するように設けている。ソレノイドが非動作のときはプランジャの先端は板ばねの側面に接触してアームが移動しないように支えているのみであり、特段の応力を与えていない。
【0046】
このカードの挟み込み搬送装置の挿入口にプラスチックカードを挿入した場合の動作も、本発明の第1の実施の形態に基づく場合と同様にスムーズであった。カードの挿入、排出の動作を繰り返してもカード表面にダメージが生じることはなく、また搬送装置の動作も最後まで安定していて損耗も見られず、とくに問題は生じなかった。
【0047】
以上示したように、本発明のカードの挟み込み搬送装置によれば、消費電流の増加やソレノイドの発熱といった問題は発生せず、また、ソレノイドの動作時の撃力によって挿入されたカードにダメージを与えることもなく、しかも従動ローラがアーム上に設置されているために、カードの搬送時に大きな振動が生じて搬送動作が不安定になる問題も生じない。従って板ばねとソレノイドを用いて、搬送動作が安定したカードの挟み込み搬送装置を提供することができる。また、上記実施例の説明は、本発明の実施の形態に係る場合の効果について説明するためのものであって、これによって特許請求の範囲に記載の発明を限定し、あるいは請求の範囲を減縮するものではない。また、本発明の各部構成は上記実施形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明のカードの挟み込み搬送装置の第1の実施の形態の例について示す図。図1(a)はカード未挿入の待機状態での側面図、図1(b)はカードが挿入された状態での側面図。
【図2】本発明のカードの挟み込み搬送装置の第2の実施の形態の例について示す図。図2(a)はカード未挿入の待機状態での側面図、図2(b)はカードが挿入された状態での側面図。
【図3】従来のカードの挟み込み搬送装置の例の側面図。
【図4】従来のカードの挟み込み搬送装置の例の側面図。
【図5】従来のカードの挟み込み搬送装置の例の側面図。
【符号の説明】
【0049】
11,21,41 アーム
12,22,32,42,52 従動ローラ
13,23,33,43,53 駆動ローラ
14,24,34,44,54 搬送ガイド
15,25,35,45 アーム支点
16,26,47,55 板ばね
17,27 固定箇所
18,28 プーリ
19,29,37,49 ソレノイド
20,30,50,56 カード
31 L字型アーム
36,46 コイルばね
38 シート状部材
48 接触片
51 操作部材
57 押し出し機構
58 ホルダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、回転駆動機能を有するローラと、回動可能なアームと、板ばねと、ガイド装置と、および押圧手段とを有するカードの搬送装置であって、
前記回転駆動機能を有するローラと、前記回動可能なアームに設けられたカード搬送要素がそれぞれカードの挿入口に配置されており、
前記アームの少なくとも1箇所には前記板ばねが固定されていて、
前記板ばねは、少なくとも1つの前記ガイド装置、および少なくとも1つの前記押圧手段により、それぞれ固定されることなく保持されていて、
カードが挿入される前には、前記アームに設けられたカード搬送要素と、前記回転駆動機能を有するローラとが、前記カードの挿入口で互いに隙間を開けて待機し、
前記挿入口にカードが挿入されると、前記押圧手段が動作して前記板ばねが撓むことによって前記アームが回動して、前記アームに設けられたカード搬送要素と、前記回転駆動機能を有するローラとが、前記挿入口にて挿入された前記カードを挟んで保持し、搬送する機能を有することを特徴とするカードの挟み込み搬送装置。
【請求項2】
前記押圧手段がソレノイドであって、検知手段によって前記挿入口への前記カードの挿入が検知されると前記検知手段から挿入検知情報が前記ソレノイドに伝達され、それにより前記ソレノイドが駆動して、前記ソレノイドの可動部が前記板ばねを押圧する機能を有していることを特徴とする請求項1に記載のカードの挟み込み搬送装置。
【請求項3】
前記アームに設けられた前記カード搬送要素が回転可能なローラであり、
該回転可能なローラと前記回転駆動機能を有するローラとにより、前記挿入口にカードが挿入された場合に、前記カードが挟み込まれて保持搬送されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のカードの挟み込み搬送装置。
【請求項4】
前記ガイド装置が中心を固定された回転可能なプーリであって、前記板ばねが前記プーリの回転面に接触するように配置されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のカードの挟み込み搬送装置。
【請求項5】
前記ガイド装置が固定されたピンであって、前記板ばねが前記ピンの側面に接触しつつ摺動するように配置されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のカードの挟み込み搬送装置。
【請求項6】
前記アームと前記板ばねとの固定箇所が、前記アームの側面に対して前記板ばねの一方の端部を固定したものであって、
前記板ばねは、カードの挟み込み搬送装置の構成装置に対する固定箇所を、前記一方の端部以外には有していないことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のカードの挟み込み搬送装置。
【請求項7】
前記押圧手段による前記板ばねへの押圧箇所が、前記アームに対する固定箇所と前記ガイド装置による保持位置の間に設けられていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載のカードの挟み込み搬送装置。
【請求項8】
前記ガイド装置による前記板ばねの保持位置が、前記アームに対する固定箇所と前記押圧手段による前記板ばねへの押圧箇所の間に設けられていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載のカードの挟み込み搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−15627(P2009−15627A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−177148(P2007−177148)
【出願日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【Fターム(参考)】