説明

カードソケットのカードロック機構

【課題】従来のカードソケットに確実性の高い飛び出し防止機構を設けて、更に、操作性を向上させる。
【解決手段】一端側開口部からシムカードを収納する収納部を有するソケット1の前記収納部1aにおける内側側面に、レバー基部2fが当該収納部の内側側面に固定され、前記レバー基部からレバー本体2dが前記収納部の内側側面に沿って伸び、該レバー本体のレバー先端部2eが、前記収納部に収納される前記シムカードの側面に弾性的に当接して当該シムカードが前記収納部に挿入されていることを検知する導電性弾性体の半差し検知レバー2iを有し、前記半差し検知レバー2iの先端部には、前記ソケットの一端開口部側の該シムカード10の隅部におけるカット部12のカット面に沿った形状に形成されて、前記シムカード10が収納部1aに完全に収納された時に前記シムカード10が前記収納部1aから抜け出すのを阻止する係合部2aが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーナビゲーション機器や携帯電話に使用される、SIM(シム)カードなどのICカードを装着するカードソケットにおけるカードロック機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記SIMカード(シムカード、Subscriber Identity Module Card:以下同じ)とは、GSMやW−CDMA等の方式の携帯電話で使われている電話番号を特定するための固有のID番号が記録されたICカードである。このシムカード10は、図5に示すように、ISO/IEC7816規格の接触型ICカードであり、その形状については、ISO7810のID−000で規定され幅15mm×奥行き25mm×厚み0.76mm程度である。図中の符号11は電極のパッドを示し、符号12は、形状特定用の切欠き部を示している。そして、図6に示すカードソケット13が前記シムカード10を装着するためのソケットである。カード抜き差し用に三日月型に形成された開口部が前側である。
【0003】
図7(A)に示すように、前記カードソケット13は、プリント基板等14に半田付けされて固定されており、このカードソケット13自体には、カード飛出し機構が備わっておらず、シムカード10をカードソケット13に挿入後に、筐体若しくはバッテリー15等で抑えて、シムカード10の飛び出しを防止している。
【0004】
また、他の例では、図7(B)に示すように、カード収納用の内部空間に、側面側若しくは下面側にシムカード10を押圧するようなカード保持部が設けられて、且つ、シムカード10のソケットからの飛び出しを防止するようにスロープ兼ストッパ16を設けた構造のものが知られている(特許文献1参照)。A方向に挿入したシムカード10がB方向に抜け出さないように、前記ストッパ16の端面が当接しているものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−126877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来のカードソケットのカードロック機構においては、カードソケット自体にカード飛び出し防止機構が備わっておらず、他の部品であるバッテリーなどによってカード飛び出しを防止するものであるので、カードソケットの自由配置に障害となり、同時に前記バッテリーなどの配置にも制約ができてしまう。このようにシムカードソケットにカード飛び出し防止機構を備えることと、他の備品等の配置を制限しないようにすることが従来の課題となっている。本発明に係るカードソケットのカードロック機構は、このような課題を解決するために提案されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るカードソケットのカードロック機構の上記課題を解決して目的を達成するための要旨は、一端側開口部からシムカードを収納する収納部を有するソケットの前記収納部における内側側面に、レバー基部が当該収納部の内側側面に固定され、前記レバー基部からレバー本体が前記収納部の内側側面に沿って伸び、該レバー本体のレバー先端部が、前記収納部に収納される前記シムカードの側面に弾性的に当接して当該シムカードが前記収納部に挿入されていることを検知する導電性弾性体の半差し検知レバーを有し、前記半差し検知レバーの先端部には、前記ソケットの一端開口部側の該シムカードの隅部におけるカット部のカット面に沿った形状に形成されて、前記シムカードが収納部に完全に収納された時に前記シムカードが前記収納部から抜け出すのを阻止する係合部が設けられていることである。
【0008】
また、前記レバー先端部の係合部は、シムカードのカット部におけるカット面に沿った形状の途中に、飛び出し防止作用とクリック感とが得られるように、前記カット部の角部が係合する段部が形成されていることを含むものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のカードソケットのカードロック機構によれば、シムカードのカット部を利用して弾性的に当接する係合部を有する半差し検知レバーにより、ソケットに収納されたシムカードの飛び出しを阻止することができる。
また、前記レバー先端部の係合部は、シムカードのカット部におけるカット面に沿った形状の途中に、前記カット部の角部が係合する段部が形成されているので、この段部に収納中のシムカードのカット部が落ち込んで、クリック感が得られると共に、抜け出し防止となる、と言う優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係るカードソケット1のカードロック機構の第1実施例における使用状態を示す説明図(A),(B)である。
【図2】同本発明のカードソケット1のカードロック機構の第2実施例を示す裏面から見た斜視図(A)と表から見た斜視図(B)とである。
【図3】第2実施例におけるレバー2の一部拡大斜視図である。
【図4】同第2実施例に係る使用状態の説明図(A),(B),(C)である。
【図5】シムカード10の表裏面の斜視図である。
【図6】従来例に係るカードソケット13の表裏面から見た斜視図である。
【図7】同従来例に係るカードソケット13を使用した例の説明図(A)と、その一部縦断面図(B)とである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係るカードソケット1のカードロック機構は、図1(A),(B)に示すように、弾性体の半差し検知レバー2iの先端部に設けた係合部2aで、ソケット1の収納部1aに収納されたシムカード10の飛び出しを防止するものである。
【実施例1】
【0012】
前記カードソケット1のカードロック機構は、図1(A),(B)に示すように、一端側開口部1bからシムカード10を収納する収納部1aを有するソケット1の前記収納部における内側側面に、レバー基部2fが当該収納部1aの内側側面に固定されている。該レバー基部2fから延設されて、レバー本体2dが前記収納部1aの内側側面に沿って伸びており、そのレバー先端部2eが、収納部1aに収納される前記シムカード10の側面10aに弾性的に当接して当該シムカード10が前記収納部1aに挿入されていることを検知する。このような導電性弾性体である半差し検知レバー2iを有している。
【0013】
この半差し検知レバー2iのレバー先端部2eには、前記シムカード10が収納部1aに完全に収納された時に該シムカード10の隅部におけるカット部12のカット面に沿って係合して、このシムカード10が前記収納部1aから抜け出すのを阻止する段部2cを有する係合部2aが設けられており、その先には導入部2bが設けられている。
【0014】
前記カードソケット1は、図2(A),(B)に示すように、矩形平板状のシムカード10を収納する収納部1aを有した、合成樹脂製のソケットであり、プリント基板に載置する際の位置決めボス1cと、電気信号伝達用のコンタクト1dと、基板固定用のホールドダウン1eと、検知用コンタクト3,4とを有している。
【0015】
前記検知用コンタクト3,4は、前記収納部1aの挿抜方向に直交する片側に位置していて、シムカード10が収納部に挿入されたか否かを電気的に導通させて、判断できるようにするためのコンタクトである。前記一端側開口部1bは、シムカード10の端部を指で捕まえ易くするために、円弧状に形成されている。
【0016】
前記半差し検知レバー2iは、図1(A),(B)に示すように、レバー基部2fが前記カードソケット1の側方において支持されるようになっており、そのレバー基部2fからレバー本体2dが抜き方向に延びている。そのレバー先端部2eには、前記係合部2aが斜めに屈曲されて形成され、その先端には、シムカード10に衝突した際に側方に逃げるように、導入部2bが屈曲され形成されている。前記係合部2aは、シムカード10のカット部12に収納状態において、所定形状に決められたカット面に沿うように角度が設定されている。
【0017】
前記レバー基部2fからは、挿入方向に伸びる差込完了の検知をする差込完了検知レバー2jを構成するレバー本体2hがある。該レバー本体2hの先端部にはシムカード10の奥側の隅部で外側に押し込まれる、屈曲した係合部2gが形成されている。
【0018】
この実施例では、前記半差し検知レバー2iと、差込完了検知レバー2jとを、一体の導電体金属製レバー2にしているが、これは、シムカード10が収納されたことによって、前記レバー基部2fを中心に外側に先端部の係合部2aおよび係合部2gが押されて撓み、それぞれ検知用コンタクト3,4とに当接することで電気的に導通して、検知するようにしているからである。よって、シムカード10が収納部1aの奥まで差し込まれて、両検知コンタクト3,4が前記検知レバー2i,2jを介して導通したときに、差込完了が検知される。
【0019】
また、前記検知レバー2i,2jを別体にして、それぞれ検知用コンタクト3,4と電気的に導通して、別々に検知するようにしても良い。この場合には、シムカード10が収納部1aに収納されると、最初は半差し検知レバー2iの係合部2aが検知用コンタクト4に当接して電気的に導通し、半差しが検知される。次に、シムカード10が奥まで差し込まれると差込完了検知レバー2jの係合部2gが検知用コンタクト3に当接して電気的に導通し差込完了が検知される。
【0020】
本発明の第2実施例は、図2乃至図3に示すように、前記レバー先端部2eにおける係合部2aの、カット面に沿った形状の途中において、凹ませた段部2cを設けたものである。
【0021】
前記段部2cは、レバー先端部2eにおいて、斜めに直線形状の係合部2aの中間部当たりに、シムカード10側から反対側に遠ざかるように曲線的な凹部を形成したものである。
【0022】
これにより、図3に示すように、収納しようとするシムカード10が最初に当接する導入部2bと前記段部2cとの間に一つ目の山2kができて、これにより半差し検知レバー2iが変位(カードソケット1の側面において外側に変位)する。そして、シムカード10が収納された状態で前記段部2cに前記カット部12が来ると、前記係合部2aが、二つめの山2mまで外側から内側へと変位が戻る。この戻る際に、クリック感が得られるものである。
【0023】
これを、図4を参照して説明する。同図4(A)に示すように、シムカード10(説明の便宜上、裏面を見せて示す)をカードソケット1の開口部1bから所定の面を向けて収納部1aに差し込む。前記収納部1aにおける側方の検知レバー2i,2jは検知用コンタクト3,4との接触が無く、導通がないので検知されていない。
【0024】
図4(B)に示すように、収納部1aにシムカード10を収納している途中では、シムカード10の片側面1fによって半差し検知レバー2iの先端部2eにおける一つ目の山2kが外側に押されて変位している。そして、検知用コンタクト4と接触している。しかし、差込完了検知レバー2jが検知用レバー3に当接していないので、電気的な導通が無く、基板状の検知回路がONにならないので、シムカード10を検知していない。
【0025】
次に、図4(C)に示すように、収納部1aにシムカード10が完全に収納されると、シムカード10の奥側の角部10bが、差込完了検知レバー2jの係合部2gに当たって外側に押し出す。それによって、差込完了検知レバー2jが検知用コンタクト3に当接する。又、シムカード10のカット部12が、段部2cに落ち込み、二つ目の山2mで止まる。これにより、シムカード10の外部への飛び出しが防止される。
【0026】
更に、前記段部2cに落ち込むときにクリック感が得られると共に、半差し検知レバー2iのレバー本体2dが、内側に戻ったものの、検知用コンタクト4に当接している。よって、半差し検知レバー2iと差込完了検知レバー2jとでなるレバー2が前記検知用コンタクト3,4に同時に当接して導通するので、プリント基板上の検知回路がONとなって、シムカード10が収納されたことが検知される。
【0027】
以上のように、シムカード10を収納するカードソケット1において、差込完了検知レバー2j以外に、半差し検知レバー2iを設けて半差し状態であること、若しくは、半差し状態でないことが検知できると共に、シムカード10の差込時にクリック感も得られるようにしたものである。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明に係るカードソケット1は、シムカードなどの平板状のカードに所定のカット部があるものを収納するカードソケットに広く適用できる。
【符号の説明】
【0029】
1 カードソケット、 1a 収納部、
1b 開口部、 1c ボス、
1d コンタクト、 1e ホールドダウン、
1f 片側面、
2 レバー、 2a 係合部、
2b 導入部、 2c 段部、
2d レバー本体、 2e レバー先端部、
2f レバー基部、 2g 係合部、
2h レバー本体、 2i 半差し検知レバー、
2j 差込完了検知レバー、 2k 一つ目の山、
2m 二つ目の山、
3,4 検知用コンタクト、
10 シムカード、 10a 側面、
11 パット部、
12 カット部、
13 カードソケット、
14 プリント基板、
15 筐体若しくはバッテリー、
16 スロープ兼ストッパ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側開口部からシムカードを収納する収納部を有するソケットの前記収納部における内側側面に、
レバー基部が当該収納部の内側側面に固定され、
前記レバー基部からレバー本体が前記収納部の内側側面に沿って伸び、
該レバー本体のレバー先端部が、前記収納部に収納される前記シムカードの側面に弾性的に当接して当該シムカードが前記収納部に挿入されていることを検知する導電性弾性体の半差し検知レバーを有し、
前記半差し検知レバーの先端部には、前記ソケットの一端開口部側の該シムカードの隅部におけるカット部のカット面に沿った形状に形成されて、前記シムカードが収納部に完全に収納された時に前記シムカードが前記収納部から抜け出すのを阻止する係合部が設けられていること、
を特徴とするカードソケットのカードロック機構。
【請求項2】
レバー先端部の係合部は、シムカードのカット部におけるカット面に沿った形状の途中に、飛び出し防止作用とクリック感とが得られるように、前記カット部の角部が係合する段部が形成されていること、
を特徴とする請求項1に記載のカードソケットのカードロック機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−79255(P2012−79255A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226425(P2010−226425)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(000243342)本多通信工業株式会社 (92)
【Fターム(参考)】