説明

カードリーダの磁気ヘッド保持機構およびカードリーダ

【課題】磁気ヘッドによる磁気データの読取、記録精度を高めることが可能で、かつ、製造工程を簡素化することが可能なカードリーダの磁気ヘッド保持機構を提供する。
【解決手段】磁気ヘッド保持機構1は、磁気ヘッド3と、磁気ヘッド3を保持するヘッド保持板4と、ヘッド保持板4を支持する第1支持部5および第2支持部6とを備えており、カード2の通過方向Xにおいて、磁気ヘッド3と第2支持部6と第1支持部5とは、この順番に配置されている。第1支持部5は、カード2の通過方向Xを揺動軸の軸方向とする磁気ヘッド3の揺動が可能となるようにヘッド保持板4を支持し、第2支持部6は、カード2に摺接していないときの磁気ヘッド3の先端部3aが、対向部材9と略平行になるようにヘッド保持板4を支持している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カードに対する磁気データの読取および/または磁気データの記録を行う磁気ヘッドを有するカードリーダの磁気ヘッド保持機構、および、この磁気ヘッド保持機構を備えるカードリーダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カードリーダに用いられる磁気ヘッドの保持機構として、磁気ヘッドを保持するヘッド保持板と、カードの進行方向の2箇所でヘッド支持板を支持する2個の支持部とを備える磁気ヘッド保持機構が知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の磁気ヘッド保持機構では、図6(B)に示すように、ヘッド保持板101は、カード102の進行方向から見たときの形状が略L形状となるように形成されており、カード102の表面に略平行な第1平面部101aと、第1平面部101aに直交する第2平面部101bとを備えている。磁気ヘッド103は、第2平面部101bの一端側に固定されており、磁気ギャップが形成される磁気ヘッド103の先端部(図6の下端部)は、パッドローラ104と対向している。なお、図6(B)では、図6(A)のH−H方向からヘッド保持機構を図示している。
【0003】
また、特許文献1に記載の磁気ヘッド保持機構は、第1平面部101aを付勢する板バネ105を備えており、板バネ105は、磁気ヘッド103の先端部がパッドローラ104側へ付勢されるように、第1平面部101aを付勢している。支持部106は、第1平面部101aに形成される貫通孔に挿通される軸部106aと、第1平面部101aが接触する平面状の接触面106bが形成される接触部106cとを備えている。
【0004】
接触面106bは、カード102の幅方向の幅が狭くカード102の進行方向の幅が広い長方形状に形成されている。そのため、ヘッド保持板101に固定された磁気ヘッド103は、カード102の通過方向を揺動軸の軸方向とする揺動(ローリング)が可能となっており、磁気ヘッド103とパッドローラ104との間を通過するカード102が曲がっていても、磁気ヘッド103はカード102の曲がりに追従する。したがって、磁気ヘッド103が摺接するカード102に記録された磁気データの適切な読取等が可能になる。なお、磁気ヘッド103の端子には、FPC(フレキシブルプリント基板)107が接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3602379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
磁気ヘッド103による磁気データの読取、記録精度を高めるためには、磁気ヘッド103とパッドローラ104との間にカード102が突入した直後の磁気ヘッド103のばたつきを抑えて、磁気ヘッド103とパッドローラ104との間にカード102が突入した直後から、磁気ヘッド103の先端部をカード102に適切に追従させながら摺接させることが好ましい。そのため、カード102に摺接する前の磁気ヘッド103の先端部とパッドローラ104とは、略平行になっていることが好ましい。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の磁気ヘッド支持機構では、接触面106bは、カード102の幅方向の幅が狭くカード102の進行方向の幅が広い長方形状に形成されている。また、この磁気ヘッド支持機構では、ヘッド保持板101は、カード102の進行方向から見たときの形状が略L形状となるように形成されている。そのため、第2平面部101bの自重で、パッドローラ104に対して、磁気ヘッド103の先端部が図6(B)の矢印Vの方向へ傾きやすくなる。したがって、従来は、FPC107の剛性(腰)を利用して、磁気ヘッド103の先端部とパッドローラ104とが略平行になるように、磁気ヘッド103の姿勢を保っている。具体的には、磁気ヘッド保持機構の組立時に、磁気ヘッド103の先端部とパッドローラ104とが略平行になるように、FPC107の引き回しを微調整している。そのため、従来は、磁気ヘッド保持機構の製造工程が煩雑になっている。
【0008】
そこで、本発明の課題は、磁気ヘッドによる磁気データの読取、記録精度を高めることが可能で、かつ、製造工程を簡素化することが可能なカードリーダの磁気ヘッド保持機構、および、この磁気ヘッド保持機構を備えるカードリーダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明のカードリーダの磁気ヘッド保持機構は、カードに摺接してカードに記録された磁気データの読取および/またはカードへの磁気データの記録を行う磁気ヘッドと、磁気ヘッドを保持するヘッド保持板と、ヘッド保持板を支持する第1支持部および第2支持部とを備え、カードの通過方向において、磁気ヘッドと第2支持部と第1支持部とは、この順番で配置され、磁気ヘッドは、磁気ギャップが形成されカードに摺接する先端部を備え、第1支持部は、カードの通過方向を揺動軸の軸方向とする磁気ヘッドの揺動が可能となるようにヘッド保持板を支持し、第2支持部は、カードに摺接していないときの磁気ヘッドの先端部が、この先端部に対向配置される対向部材と略平行になるようにヘッド保持板を支持していることを特徴とする。
【0010】
本発明のカードリーダの磁気ヘッド保持機構は、磁気ヘッドを保持するヘッド保持板を支持する第1支持部および第2支持部を備えており、第2支持部は、カードに摺接していないときの磁気ヘッドの先端部が対向部材と略平行になるようにヘッド保持板を支持している。そのため、磁気ヘッド保持機構の組立時に、磁気ヘッドの先端部と対向部材とを略平行にするための特別な調整をしなくても、カードに摺接する前の磁気ヘッドの先端部と対向部材とを略平行にすることが可能になる。したがって、本発明では、磁気ヘッド保持機構の製造工程を簡素化しつつ、磁気ヘッドの先端部がカードに摺接し始めた直後から磁気ヘッドの先端部をカードに適切に追従させることが可能になり、磁気ヘッドによる磁気データの読取、記録精度を高めることが可能になる。
【0011】
また、本発明では、カードの通過方向において、磁気ヘッドと第2支持部と第1支持部とがこの順番で配置されており、第1支持部は、カードの通過方向を揺動軸の軸方向とする磁気ヘッドの揺動が可能となるようにヘッド保持板を支持している。そのため、磁気ヘッドの先端部がカードに摺接しているときに、第2支持部の、ヘッド保持板を支持する箇所からヘッド保持板を浮かせて、カードの通過方向を揺動軸の軸方向として磁気ヘッドの揺動させることが可能になる。したがって、カードに摺接していないときの磁気ヘッドの先端部が対向部材と略平行になるように第2支持部がヘッド保持板を支持していても、磁気ヘッドの先端部がカードに摺接しているときには、第2支持部の影響を排除して、磁気ヘッドをカードに適切に追従させることが可能になる。したがって、本発明では、磁気ヘッドが摺接するカードが曲がっていても、磁気データの読取、記録時には、曲がりカードに磁気ヘッドを追従させて、磁気ヘッドによる磁気データの読取、記録精度を高めることが可能になる。
【0012】
また、本発明では、カードに摺接する前の磁気ヘッドの先端部と対向部材とを略平行にすることが可能になるため、磁気ヘッドの先端部がカードに摺接し始める際の、磁気ヘッドへのカードの片当たりを抑制することが可能になる。したがって、本発明では、磁気ヘッドの偏摩耗等の不具合を防止することが可能になる。
【0013】
本発明において、たとえば、磁気ヘッドと第1支持部と第2支持部とは、カードの通過方向において、略一直線上に配置されている。また、本発明において、たとえば、第1支持部および第2支持部は、磁気ヘッドの先端部と対向部材との対向方向にヘッド保持板が移動可能になるように、かつ、磁気ヘッドの先端部と対向部材との対向方向に直交する方向におけるヘッド保持板の移動を規制するように、ヘッド保持板を支持している。
【0014】
本発明において、磁気ヘッドがカードに摺接していないときの第2支持部とヘッド保持板との接触面積は、第1支持部とヘッド保持板との接触面積よりも広くなっていることが好ましい。また、この場合には、ヘッド保持板は、第1支持部および第2支持部に接触可能な平板状の被支持平面部を備え、第2支持部は、被支持平面部に接触可能な平面状の第2支持面を備えることが好ましい。このように構成すると、比較的簡易な構成によって、第2支持部で、カードに摺接していないときの磁気ヘッドの先端部が対向部材と略平行になるようにヘッド保持板を支持することが可能になる。
【0015】
本発明において、カードリーダの磁気ヘッド保持機構は、磁気ヘッドの先端部と対向部材とが接触する方向へヘッド保持板を付勢する付勢部材を備えることが好ましい。このように構成すると、付勢部材の付勢力を利用して、第2支持部の、ヘッド保持板を支持する箇所へヘッド保持板を確実に接触させることが可能になる。したがって、カードに摺接する前の磁気ヘッドの先端部と対向部材とを略平行に維持しやすくなる。
【0016】
本発明において、ヘッド保持板は、たとえば、第1支持部および第2支持部に接触可能な平板状の被支持平面部と、被支持平面部に直交する平板状のヘッド固定平面部とを備えるとともに、カードの通過方向から見たときに略L形状となるように形成され、ヘッド固定平面部に磁気ヘッドが固定されている。この場合には、ヘッド固定平面部の自重で、カードに摺接する前の磁気ヘッドの先端部が対向部材に対して傾きやすくなるが、本発明では、磁気ヘッドの傾きを抑制して、カードに摺接する前の磁気ヘッドの先端部と対向部材とを略平行にすることが可能になる。
【0017】
本発明において、第1支持部は、ヘッド保持板に形成された貫通孔に挿通される第1支持ピンと、第1支持ピンが固定されるとともにヘッド保持板が接触可能な第1接触部とを備え、第2支持部は、ヘッド保持板に形成された貫通孔に挿通される第2支持ピンと、第2支持ピンが固定されるとともにヘッド保持板が接触可能な第2接触部とを備え、第1接触部と第2接触部とが共通のフレームに形成されていることが好ましい。このように構成すると、形状の異なる第1接触部と第2接触部とがフレームに形成されているため、第1支持ピンおよび第2支持ピンとして同じ形状の支持ピンを使用することが可能になる。また、第1接触部と第2接触部とが共通のフレームに形成されている。したがって、磁気ヘッド保持機構の部品点数を削減することが可能になり、磁気ヘッド保持機構の構成を簡素化するとともに、磁気ヘッド保持機構の製造工程での煩雑さを低減することが可能になる。
【0018】
本発明の磁気ヘッド保持機構は、カードリーダに用いることができる。このカードリーダでは、磁気ヘッドによる磁気データの読取、記録精度を高めることが可能で、かつ、製造工程を簡素化することが可能になる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明のカードリーダの磁気ヘッド保持機構、および、カードリーダでは、磁気ヘッドによる磁気データの読取、記録精度を高めることが可能で、かつ、製造工程を簡素化することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態にかかるカードリーダの磁気ヘッド保持機構の側面図であり、(A)は磁気ヘッドがカードに摺接する前の状態を示す図、(B)は磁気ヘッドがカードに摺接している状態を示す図である。
【図2】図1のE−E方向から磁気ヘッド保持機構を示す図である。
【図3】(A)は図1のF−F方向から第1支持部を示す図、(B)は図1のG−G方向から第2支持部を示す図である。
【図4】図1に示す磁気ヘッド保持機構のカードリーダへの搭載例を説明するための斜視図である。
【図5】図4に示すフレーム、第1支持ピンおよび第2支持ピンを抜き出して示す斜視図である。
【図6】(A)は従来技術にかかるカードリーダの磁気ヘッド保持機構の側面図であり、(B)は(A)のH−H方向から磁気ヘッド保持機構を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0022】
(カードリーダの磁気ヘッド保持機構の構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるカードリーダの磁気ヘッド保持機構1の側面図であり、(A)は磁気ヘッド3がカード2に摺接する前の状態を示す図、(B)は磁気ヘッド3がカード2に摺接している状態を示す図である。図2は、図1のE−E方向から磁気ヘッド保持機構1を示す図である。図3(A)は、図1のF−F方向から第1支持部5を示す図、図3(B)は、図1のG−G方向から第2支持部6を示す図である。
【0023】
本形態のカードリーダの磁気ヘッド保持機構1(以下、「磁気ヘッド保持機構1」とする。)は、カード2に記録された磁気データの読取および/またはカード2への磁気データの記録を行うカードリーダに搭載されて使用されるものである。磁気ヘッド保持機構1が搭載されるカードリーダでは、図1のX方向にカード2が通過する。すなわち、X方向がカード2の通過方向である。また、X方向に直交する図1のY方向は、カードリーダに取り込まれたカード2の幅方向であり、X方向とY方向とに直交する図1のZ方向は、カードリーダに取り込まれたカード2の厚さ方向である。なお、磁気ヘッド保持機構1が搭載されるカードリーダでは、たとえば、図1の右側にカード2が挿入されるカード挿入口が配置されている。
【0024】
カード2は、たとえば、厚さが0.7〜0.8mm程度の矩形状の塩化ビニール製のカードである。このカード2の表面には、磁気データが記録される磁気ストライプ(図示省略)が形成されている。なお、カード2は、厚さが0.18〜0.36mm程度のPET(ポリエチレンテレフタレート)カードや、所定の厚さの紙カード等であっても良い。
【0025】
磁気ヘッド保持機構1は、カード2に摺接してカード2に記録された磁気データの読取および/またはカード2への磁気データの記録を行う磁気ヘッド3と、磁気ヘッド3を保持するヘッド保持板4と、ヘッド保持板4を支持する第1支持部5および第2支持部6とを備えている。磁気ヘッド3と第2支持部6と第1支持部5とは、カード2の通過方向において、この順番で配置されている。また、磁気ヘッド3と第2支持部6と第1支持部5とは、カード2の通過方向において、略一直線上に配置されている。
【0026】
磁気ヘッド3の端子には、FPC8が接続されている。磁気ヘッド3の先端部(図1の下端部)3aには、磁気ギャップが形成されており、磁気ヘッド3は、先端部3aがカード2に摺接するように配置されている。磁気ヘッド保持機構1が搭載されるカードリーダでは、磁気ヘッド3の先端部3aに対向するように、対向部材としてのパッドローラ9が配置されている。先端部3aとパッドローラ9とは、Z方向で対向配置されている。なお、以下の説明では、磁気ヘッド3が配置される側を「上」側とし、パッドローラ9が配置される側を「下」側とする。
【0027】
ヘッド保持板4は、第1支持部5および第2支持部6に接触可能な平板状の被支持平面部4aと、磁気ヘッド3が固定される平板状のヘッド固定平面部4bとを備えている。被支持平面部4aは、磁気ヘッド3とパッドローラ9との間にカード2がないときに、X方向とY方向とから構成されるXY平面と略平行になるように形成され、ヘッド固定平面部4bは、磁気ヘッド3とパッドローラ9との間にカード2がないときに、Z方向とX方向とから構成されるZX平面と略平行になるように形成されており、カード2の通過方向から見たときのヘッド保持板4の形状は略L形状となっている。また、ヘッド保持板4は、ステンレス鋼板等の薄い金属板を折り曲げることで形成されている。
【0028】
ヘッド固定平面部4bの一端側(図1の右端側)は、被支持平面部4aの一端(図1の右端)よりも図1の右方向へ突出しており、この突出した部分に磁気ヘッド3が接着等によって固定されている。ヘッド固定平面部4bの一端には、磁気ヘッド3の固定強度を高めるための接着用平面部4cがY方向へ折れ曲がるように形成されている。なお、本形態では、ヘッド保持板4にヘッド固定平面部4bが形成されているため、ヘッド保持板4が被支持平面部4aからなる平板状に形成されている場合と比較して、ヘッド保持板4への磁気ヘッド3の固定強度を高めることが可能となっている。
【0029】
ヘッド保持板4は、付勢部材としての板バネ10に付勢されている。具体的には、ヘッド保持板4は、板バネ10によって、磁気ヘッド3の先端部3aとパッドローラ9とが接触する方向へ付勢されている。また、ヘッド保持板4の、第1支持部5が配置される部分と第2支持部6が配置される部分との間であって、第2支持部6に近い部分が、板バネ10によって付勢されている。板バネ10の一端側(図1の右端側)は、被支持平面部4aの上面に形成された突起部4d(図2参照)に接触している。また、板バネ10の他端側は、カードリーダを構成するフレームに固定されている。なお、突起部4dは、ヘッド保持板4に形成される後述の貫通孔4e(図3(A)参照)と貫通孔4f(図3(B)参照)とを結ぶ直線上、または、この直線の近傍に形成されている。
【0030】
第1支持部5は、被支持平面部4aの他端側(図1の左端側)を支持している。この第1支持部5は、被支持平面部4aに形成された貫通孔4e(図3(A)参照)に挿通される第1支持ピン12と、第1支持ピン12が固定されるとともに被支持平面部4aの下面が接触する第1接触部13とを備えている。本形態では、第1支持ピン12と第1接触部13とは、別部材で形成されている。
【0031】
第1支持ピン12は、細長い円柱状に形成されている。第1支持ピン12の外径は、貫通孔4eの内径よりも小さくなっている。第1接触部13は、略円錐台状に形成される円錐台部13aと、円錐台部13aの上面に形成される扁平な略直方体状の直方体部13bとから構成されている。直方体部13bの上面は、被支持平面部4aの下面が接触する第1支持面13cとなっている。第1支持面13cは、XY平面と略平行に形成されている。また、第1支持面13cは、Y方向の幅が狭くX方向の幅の広い長方形状に形成されている。
【0032】
第2支持部6は、被支持平面部4aの一端側(図1の右端側)を支持している。この第2支持部6は、被支持平面部4aに形成された貫通孔4f(図3(B)参照)に挿通される第2支持ピン14と、第2支持ピン14が固定されるとともに被支持平面部4aの下面が接触する第2接触部15とを備えている。本形態では、第2支持ピン14と第2接触部15とは、別部材で形成されている。
【0033】
第2支持ピン14は、第1支持ピン12と同様に、細長い円柱状に形成されている。第2支持ピン14の外径は、貫通孔4fの内径よりも小さくなっている。本形態では、第1支持ピン12と第2支持ピン14とは同形状に形成され、貫通孔4eと貫通孔4fとは同形状に形成されている。第2接触部15は、扁平な略円柱状に形成されており、第2接触部15の上面は、被支持平面部4aの下面が接触する第2支持面15cとなっている。第2支持面15cは、XY平面と略平行に形成されている。また、第2支持面15cは、円形状に形成されている。
【0034】
第2支持面15cの面積は、第1支持面13cの面積よりも広くなっている。すなわち、第2支持面15cと被支持平面部4aとの接触面積は、第1支持面13cと被支持平面部4aとの接触面積よりも広くなっている。
【0035】
第1支持ピン12は、その上端側が突出するように第1接触部13に固定され、第2支持ピン14は、その上端側が突出するように第2接触部15に固定されている。また、第1接触部13から突出した第1支持ピン12の上端側部分は、被支持平面部4aの貫通孔4eに挿通され、第2接触部15から突出した第2支持ピン14の上端側部分は、被支持平面部4aの貫通孔4fに挿通されている。そのため、第1支持ピン12および貫通孔4eと、第2支持ピン14および貫通孔4fとによって、Z方向に直交する方向における被支持平面部4aの移動が規制されている。また、被支持平面部4aの下面に力を加えれば、被支持平面部4aは、上方向へ移動する。
【0036】
本形態では、上述のように、第1支持面13cは、Y方向の幅が狭くX方向の幅の広い長方形状に形成されている。具体的には、本形態では、第1支持面13cは、カード2の通過方向(X方向)を揺動軸の軸方向とするヘッド保持板4の揺動(ローリング)が可能となる形状および広さに形成されており、第1接触部13は、カード2の通過方向を揺動軸の軸方向とする磁気ヘッド3の揺動が可能となるようにヘッド保持板4を支持している。
【0037】
また、本形態では、第2支持面15cは、上述のように、円形状に形成されている。具体的には、第2支持面15cは、磁気ヘッド3がカード2に摺接していないときの被支持平面部4aがXY平面と略平行になる形状および広さに形成されており、第2接触部15は、カード2に摺接していないときの磁気ヘッド3の先端部3aがパッドローラ9の上端と略平行になるようにヘッド保持板4を支持している。すなわち、第2接触部15は、カード2に摺接していないときの磁気ヘッド3の先端部3aがパッドローラ9の上端と正対するようにヘッド保持板4を支持している。
【0038】
以上のように構成された磁気ヘッド保持機構1では、カード2が磁気ヘッド3とパッドローラ9との間に突入する前(磁気ヘッド3がカード2に摺接する前)には、図1(A)に示すように、板バネ10の付勢力で、被支持平面部4aの下面が第1支持面13cおよび第2支持面15cに接触している。被支持平面部4aの下面が第2支持面15cに接触しているため、磁気ヘッド3がカード2に摺接する前には、図1(A)、図2に示すように、磁気ヘッド3の先端部3aは、パッドローラ9の上面と略平行になっている。また、被支持平面部4aの下面が第2支持面15cに接触しているため、磁気ヘッド3は、カード2の通過方向を揺動軸の軸方向とする揺動をしない。
【0039】
一方、カード2が磁気ヘッド3とパッドローラ9との間に突入すると(磁気ヘッド3がカード2に摺接しているときには)、図1(B)に示すように、被支持平面部4aの下面は、板バネ10の付勢力で、第1支持面13cに接触しているが、第2支持面15cから離れる。また、第2支持ピン14の外径は、貫通孔4fの内径よりも小さくなっている。したがって、磁気ヘッド3がカード2に摺接しているときには、カード2の通過方向を揺動軸の軸方向とする磁気ヘッド3の揺動が可能になる。
【0040】
(磁気ヘッド保持機構の搭載例)
図4は、図1に示す磁気ヘッド保持機構1のカードリーダへの搭載例を説明するための斜視図である。図5は、図4に示すフレーム17、第1支持ピン12および第2支持ピン14を抜き出して示す斜視図である。
【0041】
上述のように、磁気ヘッド保持機構1は、カードリーダに搭載されて使用される。たとえば、図4に示すように、2個の磁気ヘッド保持機構1A、1Bがカード2の幅方向で隣接配置されるように、磁気ヘッド保持機構1A、1Bがカードリーダに搭載される。なお、カード2の幅方向における磁気ヘッド3Aの幅と磁気ヘッド3Bの幅が異なる点、および、磁気ヘッド3Aが固定されるヘッド固定平面部4bがカード2の幅方向における被支持平面部4aの一端側に形成されているのに対して、磁気ヘッド3Bが固定されるヘッド固定平面部4bがカード2の幅方向における被支持平面部4aの他端側に形成されている点で、磁気ヘッド機構保持1Aと磁気ヘッド機構保持1Bとは相違する。
【0042】
図4に示す例では、第1接触部13および第2接触部15は、カードリーダを構成するフレーム17に一体で形成されている。すなわち、ヘッド保持板4は、フレーム17に支持されている。フレーム17は、たとえば、樹脂で形成されている。また、第1支持ピン12と第2支持ピン14とは同形状に形成されており、図5に示すように、第1支持ピン12は、第1接触部13の中心に形成された固定孔13dに圧入等によって固定され、第2支持ピン14は、第2接触部15の中心に形成された固定孔15dに圧入等によって固定されている。なお、フレーム17は、アルミニウム等の金属で形成されても良い。
【0043】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、第2接触部15は、カード2に摺接していないときの磁気ヘッド3の先端部3aがパッドローラ9の上端と略平行になるようにヘッド保持板4を支持している。そのため、磁気ヘッド保持機構1の組立時に、磁気ヘッド3の先端部3aとパッドローラ9の上端とを略平行にするための特別な調整をしなくても、カード2に摺接する前の磁気ヘッド3の先端部3aとパッドローラ9の上端とを略平行にすることが可能になる。したがって、本形態では、磁気ヘッド保持機構1の製造工程を簡素化しつつ、磁気ヘッド3の先端部3aがカード2に摺接し始めた直後から磁気ヘッド3の先端部3aをカード2に適切に追従させることが可能になり、磁気ヘッド3による磁気データの読取、記録精度を高めることが可能になる。
【0044】
特に本形態では、カード2の通過方向から見たときのヘッド保持板4の形状が略L形状となっているため、ヘッド固定平面部4bの自重で、カード2に摺接する前の磁気ヘッド3の先端部3aがパッドローラ9の上端に対して、図2の矢印Vの方向へ傾きやすくなるが、本形態では、カード2に摺接する前の磁気ヘッド3の先端部3aとパッドローラ9の上端とを略平行にして、磁気ヘッド3による磁気データの読取、記録精度を高めることが可能になる。
【0045】
また、本形態では、カード2に摺接する前の磁気ヘッド3の先端部3aとパッドローラ9の上端とを略平行にすることが可能になるため、磁気ヘッド3の先端部3aがカード2に摺接を始める際の、磁気ヘッド3へのカード2の片当たりを抑制することが可能になる。したがって、本形態では、磁気ヘッド3の偏摩耗等の不具合を防止することが可能になる。
【0046】
本形態では、板バネ10によって、磁気ヘッド3の先端部3aとパッドローラ9の上端とが接触する方向へヘッド保持板4が付勢されており、磁気ヘッド3がカード2に摺接する前には、板バネ10の付勢力で、被支持平面部4aの下面が第2支持面15cに接触している。そのため、板バネ10の付勢力を利用して、カード2に摺接する前の磁気ヘッド3の先端部3aとパッドローラ9の上端とを略平行に維持することが可能になる。特に本形態では、第1支持ピン12が挿通される貫通孔4eと、第2支持ピン14が挿通される貫通孔4fとを結ぶ直線上、または、この直線の近傍に形成された突起部4dに、板バネ10の一端側が接触しているため、板バネ10の付勢力を利用して、カード2に摺接する前の磁気ヘッド3の先端部3aとパッドローラ9の上端とをより適切に略平行に維持することが可能になる。
【0047】
本形態では、磁気ヘッド3がカード2に摺接しているときに、被支持平面部4aの下面が第2支持面15cから離れており、カード2の通過方向を揺動軸の軸方向とする磁気ヘッド3の揺動が可能になっている。そのため、カード2に摺接していないときの磁気ヘッド3の先端部3aがパッドローラ9の上端と略平行になるように第2接触部15がヘッド保持板4を支持していても、磁気ヘッド3がカード2に摺接しているときには、第2接触部15の影響を排除して、磁気ヘッド3を揺動させ、カード2に適切に追従させることができる。したがって、本形態では、磁気ヘッド3に摺接するカード2が曲がっていたとしても、磁気データの読取、記録時には、曲がりカードに磁気ヘッド3を追従させて、磁気ヘッド3による磁気データの読取、記録精度を高めることが可能になる。
【0048】
図4に示す磁気ヘッド保持機構1のカードリーダへの搭載例では、第1接触部13および第2接触部15が共通のフレーム17に一体で形成されている。また、形状の異なる第1接触部13および第2接触部15がフレーム17に形成されているため、第1支持ピン12および第2支持ピン14として同じ形状の支持ピンを使用することが可能になる。したがって、図4に示す例では、磁気ヘッド保持機構1の部品点数を削減することが可能になり、磁気ヘッド保持機構1の構成を簡素化するとともに、磁気ヘッド保持機構1の製造工程での煩雑さを低減することが可能になる。
【0049】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0050】
上述した形態では、ヘッド保持板4に平板状の被支持平面部4aが形成され、第2支持部6にXY平面に略平行な平面状の第2支持面15cが形成されている。この他にもたとえば、第2支持面15cと被支持平面部4aとの接触面積が、第1支持面13cと被支持平面部4aとの接触面積よりも広くなって、カード2に摺接していないときの磁気ヘッド3の先端部3aがパッドローラ9の上端と略平行になるように第2接触部15がヘッド保持板4を支持するのであれば、被支持平面部4aの、第2支持面15cに接触する部分は、平板状に形成されていなくても良く、また、第2支持面15cは、XY平面と略平行な平面状に形成されていなくても良い。たとえば、カード2の通過方向から見たときに、被支持平面部4aの第2支持面15cとの接触部分および第2支持面15cがV形状になるように形成されても良い。ただし、被支持平面部4aの第2支持面15cとの接触部分が平板状に形成されるとともに、第2支持面15cがXY平面に略平行な平面状に形成されている場合には、比較的簡易な構成によって、第2支持部6で、カード2に摺接していないときの磁気ヘッド3の先端部3aがパッドローラ9の上端と略平行になるようにヘッド保持板4を支持することができる。
【0051】
上述した形態では、第1支持ピン12と第1接触部13とは、別部材で形成されているが、第1支持ピン12と第1接触部13とが一体で形成されても良い。同様に、第2支持ピン14と第2接触部15とは、別部材で形成されているが、第2支持ピン14と第2接触部15とが一体で形成されても良い。
【0052】
上述した形態では、磁気ヘッド保持機構1は、ヘッド保持板4を支持する2個の第1支持部5および第2支持部6を備えている。この他にもたとえば、磁気ヘッド保持機構1は、第1支持部5および第2支持部6に加え、ヘッド保持板4を支持する支持部を第1支持部5と第2支持部6との間に備えていても良い。
【0053】
上述した形態では、第1接触部13の上面は、XY平面に略平行な第1支持面13cとなっているが、第1接触部13の上面は、上側に膨らむ凸曲面状に形成されても良い。また、上述した形態では、ヘッド保持板4は、カード2の通過方向から見たときの形状が略L形状となるように形成されているが、ヘッド保持板4は、被支持平面部4aによって構成される平板状に形成されても良い。
【0054】
上述した形態では、磁気ヘッド3の先端部3aに対向する対向部材は、パッドローラ9であるが、磁気ヘッド3の先端部3aに対向する対向部材は、カード2の走行面を形成するガイド部材であっても良い。また、上述した形態では、ヘッド保持板4は、板バネ10に付勢されているが、ヘッド保持板4は、圧縮コイルバネ等の他のバネ部材によって付勢されても良いし、ゴム等の弾性部材によって付勢されても良い。
【符号の説明】
【0055】
1 磁気ヘッド保持機構(カードリーダの磁気ヘッド保持機構)
2 カード
3 磁気ヘッド
3a 先端部
4 ヘッド保持板
4a 被支持平面部
4b ヘッド固定平面部
4e、4f 貫通孔
5 第1支持部
6 第2支持部
9 パッドローラ(対向部材)
10 板バネ(付勢部材)
12 第1支持ピン
13 第1接触部
14 第2支持ピン
15 第2接触部
15c 第2支持面
17 フレーム
X カードの通過方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カードに摺接して前記カードに記録された磁気データの読取および/または前記カードへの磁気データの記録を行う磁気ヘッドと、前記磁気ヘッドを保持するヘッド保持板と、前記ヘッド保持板を支持する第1支持部および第2支持部とを備え、
前記カードの通過方向において、前記磁気ヘッドと前記第2支持部と前記第1支持部とはこの順番で配置され、
前記磁気ヘッドは、磁気ギャップが形成され前記カードに摺接する先端部を備え、
前記第1支持部は、前記カードの通過方向を揺動軸の軸方向とする前記磁気ヘッドの揺動が可能となるように前記ヘッド保持板を支持し、
前記第2支持部は、前記カードに摺接していないときの前記先端部が、前記先端部に対向配置される対向部材と略平行になるように前記ヘッド保持板を支持していることを特徴とするカードリーダの磁気ヘッド保持機構。
【請求項2】
前記磁気ヘッドと前記第1支持部と前記第2支持部とは、前記カードの通過方向において、略一直線上に配置されていることを特徴とする請求項1記載のカードリーダの磁気ヘッド保持機構。
【請求項3】
前記第1支持部および前記第2支持部は、前記磁気ヘッドの前記先端部と前記対向部材との対向方向に前記ヘッド保持板が移動可能になるように、かつ、前記磁気ヘッドの前記先端部と前記対向部材との対向方向に直交する方向における前記ヘッド保持板の移動を規制するように、前記ヘッド保持板を支持していることを特徴とする請求項1または2に記載のカードリーダの磁気ヘッド保持機構。
【請求項4】
前記磁気ヘッドが前記カードに摺接していないときの前記第2支持部と前記ヘッド保持板との接触面積は、前記第1支持部と前記ヘッド保持板との接触面積よりも広くなっていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のカードリーダの磁気ヘッド保持機構。
【請求項5】
前記ヘッド保持板は、前記第1支持部および前記第2支持部に接触可能な平板状の被支持平面部を備え、
前記第2支持部は、前記被支持平面部に接触可能な平面状の第2支持面を備えることを特徴とする請求項4記載のカードリーダの磁気ヘッド保持機構。
【請求項6】
前記磁気ヘッドの前記先端部と前記対向部材とが接触する方向へ前記ヘッド保持板を付勢する付勢部材を備えることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のカードリーダの磁気ヘッド保持機構。
【請求項7】
前記ヘッド保持板は、前記第1支持部および前記第2支持部に接触可能な平板状の被支持平面部と、前記被支持平面部に直交する平板状のヘッド固定平面部とを備えるとともに、前記カードの通過方向から見たときに略L形状となるように形成され、
前記ヘッド固定平面部に前記磁気ヘッドが固定されていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のカードリーダの磁気ヘッド保持機構。
【請求項8】
前記第1支持部は、前記ヘッド保持板に形成された貫通孔に挿通される第1支持ピンと、前記第1支持ピンが固定されるとともに前記ヘッド保持板が接触可能な第1接触部とを備え、
前記第2支持部は、前記ヘッド保持板に形成された貫通孔に挿通される第2支持ピンと、前記第2支持ピンが固定されるとともに前記ヘッド保持板が接触可能な第2接触部とを備え、
前記第1接触部と前記第2接触部とが共通のフレームに形成されていることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のカードリーダの磁気ヘッド保持機構。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載のカードリーダの磁気ヘッド保持機構を備えることを特徴とするカードリーダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−204320(P2011−204320A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−71211(P2010−71211)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)