説明

カード処理装置、カード処理方法及び自動取引装置

【課題】寿命の短縮を抑制する。
【解決手段】読み取り手段4に、所定範囲内の磁力の磁気記録媒体5aの情報を読み取り可能な押圧力より低い第1押圧力で磁気記録媒体5aを読み取らせるようにして、読み取り手段4の磁気記録媒体5aに対する摩擦を減らすことができる。また、読み取り手段4が第1押圧力で磁気記録媒体5aを読み取れなかった場合には、読み取り手段4に第1押圧力よりも高い第2押圧力で磁気記録媒体5aの情報を再度読み取らせるようにした。これにより、読み取り手段4の摩耗を抑制して寿命の短縮を防止でき、読み取り後の処理を停止させずに継続することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カード処理装置、カード処理方法及び自動取引装置に関する。
【背景技術】
【0002】
キャッシュカード、クレジットカードまたはカードキー等の各種カードには、それぞれに必要な情報が磁気的に記録されている磁気ストライプが設けられている。
例えば、自動取引装置(以下、「ATM(Automated Teller Machine)」)で利用されるキャッシュカードは、銀行コードと、支店コード、口座番号等の情報が磁気的に記録された磁気ストライプが備えられている。ATMはこのようなキャッシュカードと共にユーザにより暗証番号を受け付けると、磁気リーダライタがキャッシュカードの磁気ストライプから必要な情報を読み取り、所定の金融取引処理を実行する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
なお、近年、磁気ストライプと共にIC(Integrated Circuit)チップが設けられたキャッシュカードが普及している。ICチップは磁気ストライプよりも記録容量が大きく、口座番号等の金融取引に必要な情報と共にキャッシュカードの認証に用いる鍵情報等が記録されており、記録情報の読み取り・改ざん等が困難とされている。このため、ICチップ付きのキャッシュカードは不正行為及び偽造の防止が期待されている。このようなキャッシュカードのICチップからはICリーダライタにより必要な情報が読み取られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−95113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
各種カードに設けられた磁気ストライプは、例えば、磁場に晒されたり衝撃を受けたり経時による磁化の劣化等により磁気が低下してしまう。磁気リーダライタは磁気が低下した磁気ストライプに読み取りを実行しても適切に情報を読み取ることができない場合がある。磁気ストライプの情報が読み取れない場合には、読み取り後に続く処理を開始することができずに、例えば、ATMであればその後の金融取引処理が停止されてしまうという問題点があった。
【0006】
また、磁気ストライプの磁気の低下に備えて、磁気ストライプに対する磁気リーダライタの磁気ヘッドの押圧力を強めておくことが考えられる。しかし、この場合は磁気ヘッドの摩耗を早めてしまい磁気ヘッドの寿命が短縮してしまうという問題点があった。
【0007】
本発明は、このような点を鑑みてなされたものであり、安定した磁気ストライプの読み取りを行いつつ、磁気ヘッドの寿命の短縮を抑制するカード処理装置、カード処理方法及び自動取引装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、カードに備えらえた磁気記録媒体に対して相対的に押圧しつつ相対的に移動して前記磁気記録媒体の情報を読み取る読み取り手段と、前記読み取り手段に、所定範囲内の磁力の磁気記録媒体の情報を読み取り可能な押圧力より低い第1押圧力で前記磁気記録媒体を読み取らせ、前記第1押圧力で読み取れなかった場合に前記第1押圧力よりも高い第2押圧力で再度読み取らせる読み取り制御手段と、を有するカード処理装置が提供される。
【0009】
また、上記目的を達成するために、上記カード処理装置を備える自動取引装置並びに上記装置で利用されるカード処理方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
このようなカード処理装置、カード処理方法及び当該カード処理装置を備える自動取引装置によれば、磁気リーダライタの磁気ヘッドの寿命の短縮を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施の形態に係るカード処理装置の概要図である。
【図2】第2の実施の形態に係るATMの外観図である。
【図3】第2の実施の形態に係るATMのハードウェア構成例を示す図である。
【図4】キャッシュカードの一例を示す図である。
【図5】第2の実施の形態に係るカード処理ユニットに設けられた磁気ヘッド押圧機構の一例を説明するための図(その1)である。
【図6】第2の実施の形態に係るカード処理ユニットに設けられた磁気ヘッド押圧機構の一例を説明するための図(その2)である。
【図7】第2の実施の形態に係るATMで実行されるカードの読み取り処理を示すフローチャート(その1)である。
【図8】第2の実施の形態に係るATMで実行されるカードの読み取り処理を示すフローチャート(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態に係るカード処理装置の概要図である。なお、図1ではカード処理装置1の読み取り機構の要部について図示している。
【0013】
カード処理装置1は、カードに設けられている磁気記録媒体を読み取り手段で通常よりも低い押圧力で読み取る。この時、適切に読み取れなかった場合に、当該磁気記録媒体に対する押圧力を高めて再度読み取り手段で読み取りを実行するものである。
【0014】
このようなカード処理装置1は、磁気記録媒体5aが設けられたカード5を受け付けて、当該カード5が搬送される搬送路2と、回転駆動することにより搬送路2上のカード5を所定位置に搬送させる搬送手段の一例としての搬送ローラ3a,3bとを備えている。さらに、カード処理装置は、読み取り手段4と、読み取り制御手段(図示を省略)とを備える。
【0015】
読み取り手段4は、カード5に備えらえた磁気記録媒体5aに対して相対的に押圧しつつ相対的に移動して磁気記録媒体5aの情報を読み取る。カード5は、キャッシュカード、クレジットカード等の各種カードであり、磁気記録媒体5aは磁気ストライプ等である。また、読み取り手段4は、磁気記録媒体5aに応じて、例えば、磁気記録媒体5aが磁気ストライプであれば、磁気ヘッドを備えた磁気リーダライタである。
【0016】
図示を省略する読み取り制御手段は、読み取り手段4に、所定範囲内の磁力の磁気記録媒体の情報を読み取り可能な押圧力より低い第1押圧力で磁気記録媒体5aを読み取らせ、第1押圧力で読み取れなかった場合に第1押圧力よりも高い第2押圧力で再度読み取らせる。また、このような読み取り制御手段は、このような読み取り時に必要に応じて搬送ローラ3a,3bの回転も制御する。
【0017】
このような構成を有するカード処理装置1によるカード5の磁気記録媒体5aの情報の読み取り方法について説明する。
まず、カード処理装置1がカード5を受け付けると、読み取り制御手段は搬送ローラ3a,3bを回転駆動させて搬送路2上のカード5を図1中左側に搬送させる(図1(A))。
【0018】
このようにして搬送路2上を搬送されたカード5は、読み取り手段4の間を通過する。この際に、カード5の磁気記録媒体5aは読み取り手段4から所定範囲内の磁力の磁気記録媒体の情報を読み取り可能な押圧力より低い第1押圧力で押圧されながら搬送されて、読み取り手段4は磁気記録媒体5aの情報の読み取りを実行する(図1(B))。
【0019】
なお、カード処理装置1では、通常、様々な磁力状態のカード5に対応できるようにするために、読み取り手段4のカード5の磁気記録媒体5aに対する押圧力を高めに設定している。ここでの第1押圧力は、このような通常の高めに設定された押圧力よりも低いものとする。なお、読み取り手段4の押圧力の詳細については、第2の実施の形態で説明する。
【0020】
この時、読み取り手段4が磁気記録媒体5aの情報を適切に読み取ることができれば、読み取り処理が終了する。
しかし、磁気記録媒体5aの磁力の低下等により、読み取り手段4は第1押圧力で押圧しながら読み取りを実行しても、当該磁気記録媒体5aから情報を適切に読み取ることができない場合には以下の処理を実行する。
【0021】
カード処理装置1の読み取り制御手段は、搬送ローラ3a,3bを回転駆動させて搬送路2上のカード5を図1中右側に搬送させる(図1(C))。
このようにして搬送路2上を搬送されたカード5は、再び読み取り手段4の間を通過する。この際、読み取り手段4は第1押圧力よりも高い第2押圧力で、搬送されるカード5の磁気記録媒体5aを押圧することで磁気記録媒体5aの情報を読み取ることができるようになる(図1(D))。
【0022】
このようにして、読み取り手段4に、所定範囲内の磁力の磁気記録媒体の情報を読み取り可能な押圧力より低い第1押圧力で磁気記録媒体5aを読み取らせるようにした。これにより、読み取り手段4の磁気記録媒体5aに対する摩擦を減らして、読み取り手段4の摩耗を抑制して寿命の短縮を防止できるようになる。
【0023】
また、読み取り手段4が第1押圧力で磁気記録媒体5aを読み取れなかった場合には、読み取り手段4に第1押圧力よりも高い第2押圧力で磁気記録媒体5aの情報を再度読み取らせるようにした。これにより、第1押圧力での読み取れなかった磁気記録媒体5aの情報を読み取れるようになり、読み取り後の処理を停止させずに継続することが可能となる。
【0024】
このようにして、読み取り手段4に、所定範囲内の磁力の磁気記録媒体の情報を読み取り可能な押圧力より低い第1押圧力で磁気記録媒体5aを読み取らせるようにして、読み取り手段4の磁気記録媒体5aに対する摩擦を減らすことができる。また、読み取り手段4が第1押圧力で磁気記録媒体5aを読み取れなかった場合には、読み取り手段4に第1押圧力よりも高い第2押圧力で磁気記録媒体5aの情報を再度読み取らせるようにした。
【0025】
これにより、読み取り手段4の摩耗を抑制して寿命の短縮を抑制できると共に、第1押圧力での読み取れなかった磁気記録媒体5aの情報を読み取れるようになり、読み取り後の処理を停止させずに継続することが可能となる。
【0026】
以下では、このようなカード処理装置を具備した機器としてATMの場合を例に挙げて説明する。
[第2の実施の形態]
まず、ATM100の外観について図2を用いて説明する。
【0027】
図2は、第2の実施の形態に係るATMの外観図である。
金融機関で利用されるATM100の前面には、受付画面等を表示する表示部20aと、キャッシュカードが挿入/排出されるカード挿入/排出口30a、通帳が挿入/排出される通帳挿入/排出口40a、硬貨が入出金される硬貨入出金口50a、紙幣が入出金される紙幣入出金口60aが設けられている。さらに、ATM100は以下のハードウェア構成を備える。
【0028】
次に、第2の実施の形態のATM100のハードウェア構成について図3を用いて説明する。
図3は、第2の実施の形態に係るATMのハードウェア構成例を示す図である。また、図4は、キャッシュカードの一例を示す図である。
【0029】
ATM100は、ATM100で実行される処理の制御を行う制御ユニット10と、ユーザからの操作入力を受け付け、並びに、受付画面等を表示する表示ユニット20を有する。また、キャッシュカードをカード挿入/排出口30aから挿入・排出するカード処理ユニット30と、通帳を通帳挿入/排出口40aから挿入・排出する通帳処理ユニット40、硬貨を硬貨入出金口50aから入出金する硬貨処理ユニット50、紙幣を紙幣入出金口60aから入出金する紙幣処理ユニット60を有する。
【0030】
制御ユニット10は、CPU(Central Processing Unit)10aと、RAM(Random Access Memory)10b、HDD(Hard Disk Drive)10c、グラフィック処理部10d、入出力インタフェース10e、ホスト通信制御部10fを備えており、これらの各部はバス10hで相互に接続されている。
【0031】
CPU10aは、HDD10c等の記憶媒体に記憶された各種プログラムを実行することにより、このATM100全体を統括的に制御する。
RAM10bには、CPU10aに実行させるOS(Operating System)並びにプログラムの少なくとも一部が一時的に格納される。また、RAM10bには、CPU10aによる処理に必要な各種データが格納される。
【0032】
HDD10cには、ATM100上のOSやアプリケーションのプログラムが格納される。また、HDD10cには、CPU10aによる処理に必要な各種情報が格納される。
グラフィック処理部10dには、表示ユニット20が接続されている。グラフィック処理部10dは、CPU10aからの命令に従って所定の画面を表示ユニット20の表示部20aに表示させる。また、グラフィック処理部10dは、表示ユニット20の入力検知部20bで検知された表示部20aに表示した画面への操作入力に応じた情報を取得する。
【0033】
入出力インタフェース10eには、カード処理ユニット30と、通帳処理ユニット40、硬貨処理ユニット50、紙幣処理ユニット60が接続されている。入出力インタフェース10eは、バス10hを介してCPU10aからの制御信号を各ユニットに通知し、各ユニットからの信号を同様にCPU10aに通知する。
【0034】
ホスト通信制御部10fは、ATM100の管理等を行うホストコンピュータに金融系ネットワーク(それぞれ図示を省略)を介して通信可能に接続されており、ホストコンピュータと信号の送受信を行う。
【0035】
続いて、その他の各ユニットについて説明する。
表示ユニット20は、表示部20aと入力検知部20bとを備え、グラフィック処理部10dに接続されている。
【0036】
表示部20aは、グラフィック処理部10dからの画面情報に基づいて画面を表示する。
入力検知部20bは、表示部20aが表示する画面に対するユーザのタッチを検知する。なお、入力検知部20bが検知した画面のタッチ位置に表示されている取引内容が制御ユニット10のCPU10aで実行される。
【0037】
カード処理ユニット30は、カード挿入/排出口30aからユーザにより挿入された、例えば、図4に示されるような磁気ストライプ610及びICチップ620を備えるキャッシュカード600に対して情報の読み出し等の処理を実行する。また、カード処理ユニット30は、読み出し等の処理が完了したら、キャッシュカード600を搬送させてカード挿入/排出口30aから排出してユーザに返却する。なお、カード処理ユニット30は、読み取り制御部30fを備えている。当該読み取り制御部30fは、カード挿入/排出口30aから挿入されたキャッシュカード600の搬送処理を実行する。さらに、キャッシュカード600の磁気ストライプ610及びICチップ620に対して磁気ヘッド及びIC読み取りヘッドに読み取り処理等を実行させる。このような読み取り制御部は磁気ヘッド(及びIC読み取りヘッドの磁気ストライプ610(及びICチップ620)に対する押圧力を変化させることができる。読み取り制御部30fによるこのような磁気ヘッドの磁気ストライプ610に対する押圧機構の一例の説明については後述する。
【0038】
通帳処理ユニット40は、通帳挿入/排出口40aからユーザにより挿入された通帳を所定位置まで搬送し、ユーザからの取引実行指示に応じて実行された取引の履歴等を通帳の頁に印字する。また、通帳処理ユニット40は、取引履歴等の記録が完了した通帳を搬送して、通帳挿入/排出口40aから排出して、ユーザに返却する。
【0039】
硬貨処理ユニット50及び紙幣処理ユニット60は、ATM100で実行した取引に応じて、当該取引の形式に基づく金額に対応する硬貨及び紙幣の入金または出金を硬貨入出金口50a及び紙幣入出金口60aに対して実行する。
【0040】
図5及び図6は、第2の実施の形態に係るカード処理ユニットに設けられた磁気ヘッド押圧機構の一例を説明するための図である。なお、磁気ストライプ610に対する磁気ヘッド30d1の押圧力が図6の方が図5の場合よりも高い場合を示している。また、図5(A),(B)及び図6(A),(B)はそれぞれ押圧機構300の側面図を、図5(C)は押圧機構300の上面図をそれぞれ表している。
【0041】
押圧機構300は、下部支持部材311aと、上部支持部材311bとを備え、搬送路30bが下部支持部材311aと、上部支持部材311bとで構成されている。また、上部支持部材311b上には押圧部材312が係止部313で係止されて配置されている。下部支持部材311aには搬送路30b側に突出する磁気ヘッド30d2が設けられている。また、押圧部材312には上部支持部材311bを通して搬送路30b側に突出する磁気ヘッド30d1が磁気ヘッド30d2に対向して設けられている(図5(A))。
【0042】
押圧部材312上には、プランジャ314と、プランジャ314に備えられた鉄芯315、鉄芯315の先端部に係合され、軸317で回転自在に軸支された付勢部材316、付勢部材316と押圧部材312との間に設置された弾性部材318が設けられている(図5(A),(B))。
【0043】
このような押圧機構300は読み取り制御部30fの制御に応じて駆動したプランジャ314により鉄芯315がプランジャ314内部に引き込まれると、鉄芯315に係合されている付勢部材316が軸317を軸にして図5中反時計回りに回転する。すると、付勢部材316により弾性部材318が押圧部材312側に付勢されて、弾性部材318の弾性力が高まり押圧部材312を介して磁気ヘッド30d1の搬送路30b側への押圧力が高まる。
【0044】
例えば、図5(A),(B)に示されるように、プランジャ314により鉄芯315が固定されると弾性部材318が一定の所定の弾性力に維持されて、押圧部材312を介して磁気ヘッド30d1の搬送路30b側への押圧力も維持される。そして、搬送路30bを搬送されるキャッシュカード600により磁気ヘッド30d1が図5中上方に押されて押圧部材312は係止部313を支点として図5中上方に持ち上がる(図5(B))。この際、キャッシュカード600の磁気ストライプ610は磁気ヘッド30d1により押圧される。
【0045】
また、図5(A)の磁気ヘッド30d1の押圧力を高める場合には、図6(A),(B)に示されるように、プランジャ314による鉄芯315の引き込みを大きくすることで、弾性部材318の弾性力が高まり、キャッシュカード600の磁気ストライプ610に対する磁気ヘッド30d1の押圧力も増加する。
【0046】
ここでキャッシュカード600の磁気ストライプ610に対する磁気ヘッド30d1による押圧力について説明する。
ATM100は一日に数多くのユーザにより利用されるものであり、ユーザから受け付けるキャッシュカード600の磁気ストライプ610の磁力状態も様々である。さらに、キャッシュカード600は例えば表面に凹凸等の形状の変形が生じる。このため、様々な磁力状態であって様々な形状変形が生じた磁気ストライプ610の情報を読み取れるように、磁気ヘッド30d1の磁気ストライプ610に対する押圧力は必要以上に高めに設定されている。JIS規格に準拠したキャッシュカード600の磁気ストライプ610の磁力から、例えば90%に減磁した磁気ストライプ610から情報を読み取れるように磁気ヘッド30d1の押圧力が設定されている。この場合の磁気ヘッド30d1の押圧力を100%として、磁気ヘッド30d1の押圧力またはJIS規格に準拠したキャッシュカード600の磁気ストライプ610の減磁を変化させた計測結果を以下に示す。まず、磁気ヘッド30d1の押圧力を低下させた場合、2%まで低下させても、90%に減磁した磁気ストライプ610から情報を読み取ることができた。また、JIS規格に準拠したキャッシュカード600の磁気ストライプ610の磁力から80%に減磁した磁気ストライプ610から情報を読み取るには、磁気ヘッド30d1の押圧力を29%まで低下させても情報を読み取ることができた。
【0047】
さらに、長手方向及び短手方向に表面に凹凸が生じたJIS規格に準拠したキャッシュカード600の磁気ストライプ610からは、磁気ヘッド30d1の押圧力を72%まで低下させても情報を読み取ることができた。
【0048】
次に、このような押圧力を利用したカード処理ユニット30が実行するキャッシュカード600に対する読み取り処理について図7及び図8を用いて説明する。
図7及び図8は、第2の実施の形態に係るATMで実行されるカードの読み取り処理を示すフローチャートである。
【0049】
なお、以下では、上記で説明したように、JIS規格に準拠したキャッシュカード600の磁気ストライプ610の磁力から90%に減磁した磁気ストライプ610から情報を読み取れる磁気ヘッド30d1の押圧力を100%とした場合を例に挙げる。また、ステップS16,S18,S19における押圧力は、上記の結果を利用して、それぞれ29,72,100%とする。したがって、読み取り回数Nの最大値は3となる。
【0050】
[ステップS11] ATM100のカード処理ユニット30はカード挿入/排出口30aからキャッシュカード600を受け付ける。
[ステップS12] カード処理ユニット30の読み取り制御部30fは、読み取り回数Nを初期化する。すなわち、ここで、読み取り回数Nに1がセットされる。
【0051】
[ステップS13] 読み取り制御部30fが搬送ローラを回転駆動させて、例えば、図5,6の搬送路30b上のキャッシュカード600を搬送させて、所定の読み取り位置に搬送させる。
【0052】
[ステップS14] 読み取り制御部30fは、セットされた読み取り回数Nを取得する。
[ステップS15] 読み取り制御部30fは、ステップS14で取得した読み取り回数Nが1であるか否かを判定する。
【0053】
次の処理は、読み取り回数Nが1である場合にはステップS16に進められ、読み取り回数Nが1以外である場合にはステップS17に進められる。
[ステップS16] 読み取り制御部30fは、押圧力を弱(29%)に設定する。
【0054】
例えば、図5(A)に示したように、プランジャ314の駆動に応じて、弾性部材318が所定量弛緩した状態となるように鉄芯315を固定して、90%に減磁した磁気ストライプ610から情報を読み取れるように磁気ヘッド30d1の押圧力に対して29%の押圧力が実現される。
【0055】
[ステップS17] 読み取り制御部30fは、ステップS14で取得した読み取り回数Nが2であるか否かを判定する。
次の処理は、読み取り回数Nが2である場合にはステップS18に進められ、読み取り回数Nが2ではない場合(つまりN=3である場合)にはステップS19に進められる。
【0056】
[ステップS18] 読み取り制御部30fは、押圧力を中(72%)に設定する。
例えば、図6(A)に示したように、プランジャ314の駆動に応じて、弾性部材318がある程度付勢された状態となるように鉄芯315をプランジャ314に引き込むことで、90%に減磁した磁気ストライプ610から情報を読み取れるように磁気ヘッド30d1の押圧力に対して72%の押圧力が実現される。
【0057】
[ステップS19] 読み取り制御部30fは、押圧力を強(100%)に設定する。
例えば、図6(A)の場合に対してさらにプランジャ314の駆動に応じて、弾性部材318がより付勢された状態となるように鉄芯315をプランジャ314により引き込むことで、90%に減磁した磁気ストライプ610から情報を読み取れるように磁気ヘッド30d1の押圧力に対して100%の押圧力が実現される。
【0058】
[ステップS20] 読み取り制御部30fは、設定した押圧力で磁気ヘッド30d1を押圧させて、磁気ストライプ610の読み取りを実行させる。
[ステップS21] 読み取り制御部30fは、磁気ヘッド30d1が読み取った磁気ストライプ610の磁気情報を取得する。
【0059】
[ステップS22] 読み取り制御部30fは、ステップS21で取得した磁気情報から、読み取りが成功したか否かを判定する。
次の処理は、読み取りが成功した場合にはステップS23に進められ、成功しなかった場合にはステップS25に進められる。
【0060】
[ステップS23] 読み取り制御部30fは、搬送ローラを回転駆動させて、キャッシュカード600を例えば図5,6の搬送路30bの所定の退避位置に搬送して退避させる。
【0061】
[ステップS24] ステップS22で磁気ストライプ610の読み取りが成功して、その後に続けてユーザによりATM100の表示ユニット20に対して指定された取引処理がATM100で実行される。
【0062】
[ステップS25] 読み取り制御部30fは、読み取り回数Nに1を追加する。
[ステップS26] 読み取り制御部30fは、ステップS25で追加した後の読み取り回数Nが4を越えているか否かを判定する。
【0063】
次の処理は、読み取り回数Nが4を越えている場合にはステップS27に進められ、4を越えていない場合にはステップS14に再度進められる。
[ステップS27] 読み取り制御部30fは、搬送ローラを回転駆動させて、退避していたキャッシュカード600を搬送して、カード挿入/排出口30aからユーザに返却する。
【0064】
以上の処理により、キャッシュカード600の読み取り処理が終了する。
なお、上記では、磁気ヘッド30d1の押圧力を3段階に変化させる場合を例に挙げて説明したが、3段階に限らず、例えば、弱(29%)と強(100%)の2段階、4段階上に設定することも可能である。
【0065】
また、磁気ヘッド30d1の押圧力を予め29%に設定しておき、ステップS23でキャッシュカード600の退避及びステップS27でキャッシュカード600の返却時に、磁気ヘッド30d1の押圧力を29%に戻すようにすることも可能である。
【0066】
また、磁気ヘッド30d1に限らず、IC読み取りヘッド30eがICチップ620を読み取れない場合に、当該ICチップ620に対する押圧力を変化させることで、ICチップ620の読み取りを向上させることも可能である。
【0067】
なお、上記では、JIS規格に準拠したキャッシュカード600の磁気ストライプ610の磁力から90%に減磁した磁気ストライプ610から情報を読み取れるように磁気ヘッド30d1の押圧力を100%とした場合を例に挙げた。しかし、磁気ヘッド30d1の押圧力は、この場合に限らず、減磁しない磁力でも、その他の減磁率の磁力に基づいたものでも構わない。
【0068】
このようにして、磁気ヘッド30d1に、所定磁力の磁気ストライプ610の情報を読み取り可能な押圧力より低い押圧力で磁気ストライプ610を読み取らせるようにすることで、磁気ヘッド30d1の磁気ストライプ610に対する摩擦を減らすことができる。また、磁気ヘッド30d1が上記の押圧力で磁気ストライプ610を読み取れなかった場合には、磁気ヘッド30d1の磁気ストライプ610に対する押圧力を高めて磁気ストライプ610の情報を再度読み取らせるようにした。
【0069】
これにより、磁気ヘッド30d1の摩耗が抑制されて寿命の短縮を抑制できる。また、このような低い押圧力の磁気ヘッド30d1で磁気ストライプ610を読み取れない場合でも、押圧力を高めることで磁気ストライプ610が読み取れるようになり、読み取り後の処理を停止させずに継続することが可能となる。
【0070】
なお、上記の処理機能は、コンピュータによって実現することができる。その場合、ATM100が有すべき機能の処理内容を記述したプログラムが提供される。そのプログラムをコンピュータで実行することにより、上記処理機能がコンピュータ上で実現される。処理内容を記述したプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体(可搬型記録媒体を含む)に記録しておくことができる。コンピュータで読み取り可能な記録媒体としては、磁気記録装置、光ディスク、光磁気記録媒体、半導体メモリ等がある。磁気記録装置には、ハードディスク装置(HDD)、フレキシブルディスク(FD)、磁気テープ等がある。光ディスクには、DVD(Digital Versatile Disc)、DVD−RAM、CD−ROM(Read Only Memory)、CD−R(Recordable)/RW(ReWritable)等がある。光磁気記録媒体には、MO(Magneto-Optical disk)等がある。
【0071】
プログラムを流通させる場合には、例えば、そのプログラムが記録されたDVD、CD−ROM等の可搬型記録媒体が販売される。また、プログラムをサーバコンピュータの記憶装置に格納しておき、ネットワークを介して、サーバコンピュータから他のコンピュータにそのプログラムを転送することもできる。
【0072】
プログラムを実行するコンピュータは、例えば、可搬型記録媒体に記録されたプログラムもしくはサーバコンピュータから転送されたプログラムを、自己の記憶装置に格納する。そして、コンピュータは、自己の記憶装置からプログラムを読み取り、プログラムにしたがった処理を実行する。なお、コンピュータは、可搬型記録媒体から直接プログラムを読み取り、そのプログラムにしたがった処理を実行することもできる。また、コンピュータは、サーバコンピュータからプログラムが転送されるごとに、逐次、受け取ったプログラムにしたがった処理を実行することもできる。
【0073】
なお、上述の実施の形態は、実施の形態の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えることができる。
さらに、上述の実施の形態は、多数の変形、変更が当業者にとって可能であり、説明した正確な構成及び応用例に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0074】
1 カード処理装置
2 搬送路
3a,3b 搬送ローラ
4 読み取り手段
5 カード
5a 磁気記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カードに備えらえた磁気記録媒体に対して相対的に押圧しつつ相対的に移動して前記磁気記録媒体の情報を読み取る読み取り手段と、
前記読み取り手段に、所定範囲内の磁力の磁気記録媒体の情報を読み取り可能な押圧力より低い第1押圧力で前記磁気記録媒体を読み取らせ、前記第1押圧力で読み取れなかった場合に前記第1押圧力よりも高い第2押圧力で再度読み取らせる読み取り制御手段と、
を有することを特徴とするカード処理装置。
【請求項2】
前記第2押圧力は、前記所定範囲内の磁力の磁気記録媒体の情報を読み取り可能な押圧力よりも高いことを特徴とする請求項1記載のカード処理装置。
【請求項3】
前記第1押圧力は、前記所定範囲内の磁力の磁気記録媒体の情報を読み取り可能な押圧力の29%程度であることを特徴とする請求項1記載のカード処理装置。
【請求項4】
前記読み取り制御手段は、前記読み取り手段に、前記読み取り手段が前記第2押圧力での読み取れなかった場合に前記第2押圧力よりも高い第3押圧力で再度読み取らせる、
ことを特徴とする請求項1記載のカード処理装置。
【請求項5】
前記第3押圧力は、前記所定範囲内の磁力の磁気記録媒体の情報を読み取り可能な押圧力よりも高いことを特徴とする請求項4記載のカード処理装置。
【請求項6】
前記第2押圧力は、前記所定範囲内の磁力の磁気記録媒体の情報を読み取り可能な押圧力の72%程度であることを特徴とする請求項4記載のカード処理装置。
【請求項7】
前記所定範囲内の磁力は、JIS規格に準拠するキャッシュカードの磁気ストライプの磁力から10%減磁したものであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のカード処理装置。
【請求項8】
所定範囲内の磁力の磁気記録媒体の情報を読み取り可能な押圧力より低い第1押圧力でカードに備えらえた磁気記録媒体に対して相対的に押圧しつつ相対的に移動して前記磁気記録媒体の情報を読み取らせ、前記第1押圧力で読み取れなかった場合に前記第1押圧力よりも高い第2押圧力で再度読み取らせる、
ことを特徴とするカード処理方法。
【請求項9】
カードを受け付けて取引を実行する自動取引装置において、
前記カードに備えらえた磁気記録媒体に対して相対的に押圧しつつ相対的に移動して前記磁気記録媒体の情報を読み取る読み取り手段と、前記読み取り手段に、所定範囲内の磁力の磁気記録媒体の情報を読み取り可能な押圧力より低い第1押圧力で前記磁気記録媒体を読み取らせ、前記第1押圧力で読み取れなかった場合に前記第1押圧力よりも高い第2押圧力で再度読み取らせる読み取り制御手段と、を有するカード処理装置、
を備えることを特徴とする自動取引装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−51012(P2013−51012A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188293(P2011−188293)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000237639)富士通フロンテック株式会社 (667)