説明

カード用コネクタ装置

【課題】ケースに挿入されたカードの前後の向きの正誤を使用者が判別しやすいカード用コネクタ装置を提供すること。
【解決手段】カード1が挿入されて装填されるケース7と、カード1の挿入軌道上を含むケース7内の空間をスライド可能なスライド部材11と、カード1の排出方向にスライド部材11を付勢する付勢部材とを備えていて、ケース7の金属製カバー10に片持ちバネ17が形成されている。初期位置にあるスライド部材11に片持ちバネ17が引掛けられている。スライド部材11に形成された傾斜面は、ケース7に挿入されたカード1の姿勢が正しければ、カード1が片持ちバネ17を押し退けて挿入方向へ移動するのを許容し、前後逆向きの誤った姿勢ならば、カード1が片持ちバネ17の位置に達しないようカード1の移動を阻止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、挿入方向における前後の向きを誤った状態でのケースへのカードの挿入を防止することができるカード用コネクタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来のカード用コネクタ装置について説明する。
【0003】
従来のカード用コネクタ装置に対応するカードには、その前部の右側部に面取り部を有し、後部には面取り部を有さないものがある。カードの前部の一方の面には、複数の端子がカードの幅方向に並んでいる(以下、これらの端子を「カード端子)という)。これらの複数のカード端子のそれぞれは、カードの一方の面に形成された複数の溝のそれぞれの底部に設けられている。
【0004】
従来のカード用コネクタ装置は、カードが挿入されて装填されるケースを備えている。このケース内には、複数のカード端子に対応する複数のコンタクト端子が設けられている。
【0005】
面取り部の近傍に設けられたカード端子に対応するコンタクト端子の両側方には、そのコンタクト端子を挟んで対向し、コンタクト端子に沿って延びた1対の凸部が形成されている。
【0006】
このように構成された従来のカード用コネクタ装置では、カードが正しい姿勢でケースに挿入されると、面取り部の近傍におけるカード端子が設けられた溝に1対の凸部が挿入されながら、カードが挿入方向に移動する。これに対し、カードが前後逆向きの姿勢でケースに挿入されると、1対の凸部がカードの後端に当接し、カードがそれ以上ケース挿入方向に移動するのを阻止する。
【0007】
このように1対の凸部が前後逆向きの姿勢のカードの移動を阻止するから、ケースへのカードの挿入後、ケースから突出したカードの部分の挿入方向における長さ寸法は、カードが正しく挿入された状態よりも前後逆向きで挿入された状態の方が、カード端子が設けられた溝の長さ寸法分だけ長くなる。使用者は、その長さ寸法の違いから、カードの前後の向きの正誤を判断することができる。
【特許文献1】特許第3385252号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述の従来のカード用コネクタ装置では、ケースから突出したカードの部分の挿入方向における長さ寸法の違いから、ケースに挿入されたカードの前後の向きの正誤を判別できるが、その長さ寸法の違いは溝の長さ寸法分だけであり、従来のカード用コネクタ装置を使い慣れていない者にはその長さ寸法の違いが分かりにくいという問題がある。
【0009】
本発明は、前述の実状を考慮してなされたものであり、その目的は、ケースに挿入されたカードの前後の向きの正誤を使用者が判別しやすいカード用コネクタ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
〔1〕 前述の目的を達成するために、本発明は、カードが挿入されて装填されるケースと、前記カードの挿入軌道上を含む前記ケース内の空間をスライド可能なスライド部材と、前記カードの挿入方向とは逆方向である排出方向に前記スライド部材を付勢する付勢部材と、前記ケースに前記カードが装填された状態において前記カードが占める前記ケース内の装填領域から外れた退避位置に、前記スライド部材を停止させる停止手段と、この停止手段による前記スライド部材の停止状態を解除する停止解除手段と、前記挿入軌道上の初期位置から前記挿入方向への前記スライド部材の移動を阻止する移動阻止手段と、前記ケースに挿入された前記カードの姿勢が正しいかどうかを前記カードの前端部および後端部のそれぞれの形状の違いから判定する判定手段と、前記ケースに挿入された前記カードの姿勢が正しいと前記判定手段が判定したときに、前記移動阻止手段による前記スライド部材の移動の阻止を解除する移動許可手段とを備えたことを特徴とする。
【0011】
このように構成された本発明は、次のように動作する。
【0012】
<カードが正しい姿勢でケースに挿入された場合>
初期位置から挿入方向へのスライド部材の移動を移動阻止手段が阻止している状態で、カードが正しい姿勢でケースに挿入されると、ケースに挿入されたカードの前端部の形状から「ケースに挿入されたカードの姿勢が正しい」と判定手段が判定し、これに伴って移動許可手段が移動阻止手段によるスライド部材の移動の阻止を解除する。そして、付勢部材からスライド部材に与えられる付勢力よりも大きな力でカードが挿入方向に押圧されると、カードはスライド部材を挿入方向に押し動かしながら自身も同方向に移動し、カードがケースに装填される。
【0013】
カードがケースに装填された状態では、停止手段が退避位置にスライド部材を停止させているので、スライド部材が付勢部材から与えられる付勢力により排出方向に移動するということはなく、カードがケースに装填された状態に保持される。この状態で停止解除手段が作動すると、スライド部材が付勢部材から与えられる付勢力によりカードを排出方向に押し動かしながら自身も同方向に移動する。つまり、カードがスライド部材によりケースから押し出される。
【0014】
<カードが前後逆向きの姿勢でケースに挿入された場合>
初期位置から挿入方向へのスライド部材の移動を移動阻止手段が阻止している状態で、カードが前後逆向きの姿勢でケースに挿入されると、ケースに挿入されたカードの後端部の形状から「ケースに挿入されたカードの姿勢が正しくない」と判定手段が判定する。このため、移動許可手段は移動阻止手段によるスライド部材の移動の阻止を解除しない。したがって、初期位置に位置するスライド部材によってカードのケースへの挿入の進行が妨げられる。
【0015】
これらのことから、本発明によれば、ケースから突出するカードの部分の挿入方向における長さ寸法の違いに加えて、付勢部材の付勢力に抗してケース内へのカードの押込みを行ったかどうかによっても、カードの前後の向きの正誤を判断することができる。したがって、ケースに挿入されたカードの前後の向きの正誤を判別しやすくすることができる。
【0016】
〔2〕 本発明は、「〔1〕」に記載の発明において、前記移動阻止手段と前記移動許可手段が前記ケースに設けられた片持ちバネからなり、この片持ちバネが前記挿入方向に延び、前記ケースの外側から内側に向かう方向に傾斜して前記ケース内に突出し、前記初期位置に位置した前記スライド部材に引っ掛かる形状に形成され、前記判定手段が前記初期位置において前記カードの前端部の前記挿入方向への移動を許容し、かつ、前記カードの後端部の前記挿入方向への移動を阻止する形状に形成された前記スライド部材からなることを特徴とするものであってもよい。
【0017】
このように構成された本発明によれば、構造が簡単で占有スペースを小さくすませることが可能な片持ちバネにより移動阻止手段と移動許可手段が実現されているから、また、スライド部材により判定手段が実現されているから、移動阻止手段、移動許可手段および判定手段を備えたことに伴うカード用コネクタ装置の大型化を抑えることができる。
【0018】
〔3〕 本発明は、「〔2〕」に記載の発明において、前記片持ちバネが、前記ケースの外側から内側に向かう方向に突起部した突起部を有することを特徴とするものであってもよい。
【0019】
このように構成された本発明では、カードが正しい姿勢でケースに挿入されたときに、カードが片持ちバネの突起部を押圧することによって、片持ちバネを押し退けることになる。片持ちバネがカードの前端部で押し退けられてスライド部材から離反したときの、片持ちバネとスライド部材の間隔は、片持ちバネが平坦な場合よりも大きい。これにより、片持ちバネによるスライド部材の係止の解除が、カードがスライド部材に当接する前に確実に解除されるようにすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、カードが前後逆向きの姿勢でカードがケースに挿入されたときに、移動阻止手段によるスライド部材の移動の阻止を判定手段および移動許可手段の協働によって継続させることで、初期位置に位置するスライド部材によってカードのケースへの挿入の進行を妨げている。これにより、ケースから突出するカードの部分の挿入方向における長さ寸法の違いに加えて、付勢部材の付勢力に抗してケース内へのカードの押込みを行ったかどうかによっても、カードの前後の向きの正誤を判断することができ、この結果、ケースに挿入されたカードの前後の向きの正誤を判別しやすくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明のカード用コネクタ装置の一実施形態について図1〜図11を用いて説明する。
【0022】
図1は本発明のカード用コネクタ装置の一実施形態の上面図である。図2は本発明のカード用コネクタ装置の一実施形態に対応するカードを示す2面図であり、(a)が上面図、(b)が右側面図である。図3は図1に示したケースに図2に示したカードを挿入している途中の状態の一例の上面図である。図4は図1に示したケースに図2に示したカードを挿入している途中の状態(図3とは異なる状態)を、金属製カバーを取り除いて示す上面図である。図5はケースへのカードの装填が完了した状態を示す上面図である。図6は図1に示す実施形態に備えられた片持ちバネの拡大上面図である。図7は図6のVII−VII断面図である。図8−1は片持ちバネによるスライド部材の移動の阻止が解除される直前の状態を示す図7に対応する断面図である。図8−2は片持ちバネによるスライド部材の移動の阻止が解除された状態を示す図7に対応する断面図である。図9は図1に示したケースに図2に示したカードが前後逆向きの姿勢で挿入された状態であって、カードのそれ以上の挿入が阻止された状態を示す上面図である。図10は図9に示した状態でのカードとスライド部材と片持ちバネとの位置関係を示す拡大上面図である。図11は図10のXI−XI断面図である。
【0023】
本実施形態は、図1に示すカード用コネクタ装置6であり、例えば図2(a)に示すカード1(HS−MMC)に対応するように構成されている。カード1の上面視形状は略長方形である。カード1の前端部2の一方の側部(図1では右上部)には、面取り部3が設けられている。図2(b)に示すカード1の裏面5aの前部には、カード1の幅方向(図2(a)の左右方向)に並んだ複数の溝5a(1つだけ図示してある)が形成されていて、図示しない複数のカード端子のそれぞれがそれらの溝5aのそれぞれの底部に設けられている。
【0024】
図1に示すように、カード用コネクタ装置6はケース7を備えている。図3,4に示すように、カード1は、面取り部3が形成された前端部側からケース7に挿入される。
【0025】
ケース7は、複数のカード端子に対応する複数例えば15本のコンタクト端子9(図4に示す)がインサート成形により固定されたケース本体8と、このケース本体8を覆った状態でケース本体8に固定された金属製カバー10(図1に示す)とから構成されている。これらケース本体8と金属製カバー10の間に、カード1が挿入される空間が形成されている。
【0026】
図4,5に示すように、本実施形態はさらに、カード1の挿入軌道上を含むケース7内の空間をスライド可能なスライド部材11と、このスライド部材11をカード1の挿入方向とは逆方向である排出方向に付勢する付勢部材13、例えばコイルスプリングとを備えている。
【0027】
スライド部材11は、ケース本体8の右側部に設けられていて、カード1の挿入軌道上に突出した突出部12を有する。スライド部材11の挿入方向への移動の限界位置は、ケース7の前端部を形成するケース本体8の前壁部8aにより規定されている。つまり、スライド部材11の突出部12の前面12aが前壁部8aに当接することで、スライド部材11の挿入方向への移動が阻止されるようになっている。
【0028】
本実施形態はさらに、ケース7にカード1が装填された状態においてカード1が占めるケース7内の装填領域から外れた退避位置(図5に示す位置)に、スライド部材11を停止させる停止手段と、この停止手段によるスライド部材11の停止状態を解除する停止解除手段とを備えている。これら停止手段と停止解除手段は、図4,図5に示すピン14、ハート型カム溝15およびピン押さえ16とを含む1つの機構で実現されている。
【0029】
ピン14は、図4,図5に示すように、両端部が略直角に屈曲した細長い形状をしていて、ケース本体8の右側部に沿って配置されている。ピン14の一端部はケース本体8の右側部の後端部に回転可能に支持されている。これにより、ピン14は一端部、すなわち後端部を中心に、ケース本体8の幅方向(図4の左右方向)に回動可能になっている。
【0030】
ハート型カム溝15は、図4,図5に示すように、スライド部材11に設けられている。このハート型カム溝15にはピン14の他端部、すなわち前端部が摺動可能に嵌っている。また、このハート型カム溝15の底面には、スライド部材11とともにハート型カム溝15が移動したときの、ハート型カム溝15に対するピン14の移動方向を規定する複数の段差(図示しない)およびこれらの段差(図示しない)のそれぞれの間に介在する傾斜面が形成されている。
【0031】
ピン押さえ16は、図2に示すように、ピン14と重なる金属製カバー10の右側部に形成された片持ちバネからなり、金属製カバー10の前から後に向かう方向に延びている。このピン押さえ16は、ピン14をハート型カム溝15の底面に押し付けている。
【0032】
特に本実施形態は、カード1の挿入軌道上の初期位置(図4に示す位置)から挿入方向へのスライド部材11の移動を阻止する移動阻止手段を備えている。さらに、ケース7に挿入されたカード1の姿勢が正しいかどうかをカード1の前端部2および後端部4のそれぞれの形状の違いから判定する判定手段を備えている。さらに、ケース7に挿入されたカード1の姿勢が正しいと判定手段が判定したときに、移動阻止手段によるスライド部材11の移動の阻止を解除する移動許可手段を備えている。
【0033】
移動阻止手段と移動許可手段はケース7に設けられた片持ちバネ17からなる。この片持ちバネ17は、例えば金属製カバー10と一体に形成されている。この片持ちバネ17は、挿入方向に延び、ケース7の外側から内側に向かう方向に傾斜してケース7内に突出し、初期位置に位置したスライド部材11に引っ掛かる形状に形成されている。片持ちバネ17の形状は、例えば、スライド部材11の突出部12に形成された突起部12bに引っ掛かる孔17aを有する形状である。
【0034】
片持ちバネ17には、ケース7の外側から内側に向かう方向に突起した突起部17bが設けられている。この突起部17bは、例えば片持ちバネ17の一部からなる。
【0035】
判定手段はスライド部材11からなる。このスライド部材11は、初期位置においてカード1の前端部2の挿入方向への移動を許容し、かつ、カード1の後端部4の挿入方向への移動を阻止する形状に形成されている。つまり、スライド部材11の突出部12に傾斜面12cが形成されている。この傾斜面12cは、挿入軌道上からケース本体8の右側部に向かう方向において、ケース7の右側部に近い傾斜面12cの部分ほどケース7の後部寄りに位置するように傾斜している。傾斜面12cの傾斜角度は、ケース7に挿入されたカード1の面取り部3と平行になるように設定されている(図4参照)。
【0036】
このように構成された本実施形態は次のように動作する。
【0037】
<カード1が正しい姿勢でケース7に挿入された場合>
カード1が挿入されていない状態では、初期位置に位置するスライド部材11の突起部12bが片持ちバネ17の孔17aの縁に引っ掛かるため、初期位置から挿入方向へのスライド部材11の移動が阻止される。カード1が正しい姿勢でケース7に挿入されると、カード1の面取り部3とスライド部材11の傾斜面12cとが平行なので、図8−1,図8−2に示すように、カード1はその前端部2で片持ちバネ17の突起部17bを押圧することによって片持ちバネ17を押し退けながら挿入方向に移動し、これにより、スライド部材11の移動の阻止が解除される。
【0038】
その後、カード1がさらに挿入方向に移動すると、カード1の前端部2がスライド部材11の突出部12に当接する。このとき、付勢部材13からスライド部材11に与えられる付勢力よりも大きい力でカード1が挿入方向に押圧されると、カード1は付勢部材13の付勢力に抗してスライド部材11を挿入方向に押し動かしながら自身も同方向に移動する。
【0039】
そして、スライド部材11の突出部12の前面12aがケース本体8の前壁部8aに当接すると、スライド部材11の挿入方向への移動が阻止され、これに伴ってカード1の挿入方向への移動も阻止される。このとき、カード1から挿入方向の押圧力が取り除かれると、スライド部材11が付勢部材13から与えられる付勢力により押し戻され、これに伴ってカード1がスライド部材11により押し戻される。そして、スライド部材11が退避位置まで戻る。
【0040】
このようにしてカード1およびスライド部材11がケース内を移動している間、ハート型カム溝15もスライド部材11とともに移動しているから、ハート型カム溝15に対するピン14の前端部の位置はスライド部材11の位置に応じて変化している。前述のようにしてスライド部材11が退避位置に戻ったとき、スライド部材11の排出方向への移動がハート型カム溝15とピン14の係合によって阻止され、スライド部材11が停止する。これに伴い、カード1が押し戻されなくなり、図5に示すようにケース7へのカード1の装填が完了する。
【0041】
ケース7へのカード1の装填が完了した状態では、カード1の後端部4はケース7から突出している。その後端部4が付勢部材13の付勢力よりも大きな力で挿入方向に押圧されると、スライド部材11がカード1により挿入方向に押し動かされる。このとき、スライド部材11の排出方向への移動を阻止するハート型カム溝15とピン14の係合状態が解かれて、スライド部材11が付勢部材13から与えられる付勢力によって、カード1を排出方向へ押し動かしながら自身も同方向へ移動する。つまり、カード1がスライド部材11によりケース7から押し出される。
【0042】
<カード1が前後逆向きでケース7に挿入された場合>
前述したように、カード1が挿入されていない状態では、初期位置に位置するスライド部材11の突起部12bが片持ちバネ17の孔17aの縁に引っ掛かるため、初期位置から挿入方向へのスライド部材11の移動が阻止される。図9に示すようにカード1が前後逆向きの姿勢でケース7に挿入されると、図10に示すようにカード1の後端部4の角4aがスライド部材11の傾斜面12cに当接し、カード1のそれ以上の挿入方向への移動が阻止される。これにより、付勢部材13の付勢力よりも大きな力でカード1が挿入方向に押圧されても、カード1の後端部4が片持ちバネ17を押し退ける位置まで移動することはなく、したがって、図11に示すようにスライド部材11の移動の阻止が解除されない。つまり、初期位置に位置するスライド部材11によって、カード1のケース7への挿入の進行が妨げられる。
【0043】
本実施形態によれば次の効果を得られる。
【0044】
本実施形態は、カード1が前後逆向きの姿勢でケース7に挿入されたときに、片持ちバネ17によるスライド部材11の移動の阻止を、スライド部材11の傾斜面12cがカード1の後端部4の移動を阻止することにより継続させることで、カード1のケース7への挿入の進行を妨げている。これにより、ケース7から突出するカード1の部分の挿入方向における長さ寸法の違いに加えて、付勢部材13の付勢力に抗してケース7内へのカード1の押込みを行ったかどうかによっても、カード1の前後の向きの正誤を判断することができ、この結果、ケース7に挿入されたカード1の前後の向きの正誤を判別しやすくすることができる。また、同様の理由で、カード1の裏表の向きの正誤も判別しやすくすることができる。
【0045】
カードにはカード1(HS−MMC)の前側半分とほぼ同寸法の、RS−MMCという小型のカードがある。この小型のカードを使用する場合、カード1の後側半分とほぼ同寸法の補助部材をその小型のカードの後端部に取付けて、HS−MMC用コネクタ装置に装填することが一般的に行われる。本実施形態によれば、そのような小型のカードの挿入時にも、その小型のカードの姿勢の正誤を判別しやすい。
【0046】
前記補助部材には金属製のものがあり、これがカード用コネクタ装置内の複数のコンタクト端子に同時接触した場合、そのカード用コネクタ装置にショートによる重大な故障が発生することになる。本実施形態によれば、初期位置にあるスライド部材11で補助部材の誤挿入を阻止するから、そのような重大な故障を防止することができる。
【0047】
本実施形態によれば、構造が簡単で占有スペースを小さくすませることが可能な片持ちバネ17により移動阻止手段と移動許可手段が実現されているから、また、スライド部材11の形状により判定手段が実現されているから、移動阻止手段、移動許可手段および判定手段を備えたことに伴うカード用コネクタ装置の大型化を抑えることができる。
【0048】
本実施形態によれば、片持ちバネ17が突起部17bを有するから、片持ちバネ17がカード1の前端部2により押し退けられてスライド部材11から離反したときの片持ちバネ17とスライド部材11の間隔を、片持ちバネ17が平坦な場合よりも大きくすることができる。これにより、片持ちバネ17によるスライド部材11の移動の阻止の解除が、カード1がスライド部材11に当接する前に確実に解除されるようにすることができる。
【0049】
なお、本実施形態では、片持ちバネ17に形成された孔17aに、スライド部材11に形成された突起部12bが挿入されることによって片持ちバネ17がスライド部材11に引っ掛かるようになっているが、本発明における片持ちバネとスライド部材の形状の関係はそれに限定されるものではなく、片持ちバネがスライド部材に引っ掛かればどのような形状の関係であってもよい。
【0050】
本実施形態は、移動阻止手段と移動許可手段を構成する片持ちバネとして、ケース7の構成部品である金属製カバー10に一体に形成された片持ちバネ17を備えた例であるが、本発明における片持ちバネはこのようにして設けられるものに限定されるものではなく、金属製カバー10と別個の部材からなる片持ちバネが金属製カバー10に取付けられたものであってもよい。また、ケース本体8に片持ちバネが設けられていてもよい。
【0051】
本実施形態では、片持ちバネ17の一部が突起部17bになっているが、本発明における突起部はそれに限定されるものではなく、片持ちバネに固定された部材であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明のカード用コネクタ装置の一実施形態の上面図である。
【図2】図1に示した実施形態に対応するカードを示す2面図であり、(a)が上面図、(b)が右側面図である。
【図3】図1に示したケースに図2に示したカードを挿入している途中の状態の一例の上面図である。
【図4】図1に示したケースに図2に示したカードを挿入している途中の状態(図3とは異なる状態)を、金属製カバーを取り除いて示す上面図である。
【図5】ケースへのカードの装填が完了した状態を示す上面図である。
【図6】図1に示す実施形態に備えられた片持ちバネの拡大上面図である。
【図7】図6のVII−VII断面図である。
【図8−1】片持ちバネによるスライド部材の移動の阻止が解除される直前の状態を示す図7に対応する断面図である。
【図8−2】片持ちバネによるスライド部材の移動の阻止が解除された状態を示す図7に対応する断面図である。
【図9】図1に示したケースに図2に示したカードが前後逆向きの姿勢で挿入された状態であって、カードのそれ以上の挿入が阻止された状態を示す上面図である。
【図10】図9に示した状態でのカードとスライド部材と片持ちバネとの位置関係を示す拡大上面図である。
【図11】図10のXI−XI断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 カード
2 前端部
3 面取り部
4 後端部
4a 角
5 裏面
5a 溝
6 カード用コネクタ装置
7 ケース
8 ケース本体
8a 前壁部
9 コンタクト端子
10 金属製カバー
11 スライド部材(判定手段)
12 突出部
12a 前面
12b 突起部
12c 傾斜面
13 付勢部材
14 ピン(停止手段、停止解除手段)
15 ハート型カム溝(停止手段、停止解除手段)
16 ピン押さえ(停止手段、停止解除手段)
17 片持ちバネ(移動阻止手段、移動許可手段)
17a 孔
17b 突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カードが挿入されて装填されるケースと、
前記カードの挿入軌道上を含む前記ケース内の空間をスライド可能なスライド部材と、
前記カードの挿入方向とは逆方向である排出方向に前記スライド部材を付勢する付勢部材と、
前記ケースに前記カードが装填された状態において前記カードが占める前記ケース内の装填領域から外れた退避位置に、前記スライド部材を停止させる停止手段と、
この停止手段による前記スライド部材の停止状態を解除する停止解除手段と、
前記挿入軌道上の初期位置から前記挿入方向への前記スライド部材の移動を阻止する移動阻止手段と、
前記ケースに挿入された前記カードの姿勢が正しいかどうかを前記カードの前端部および後端部のそれぞれの形状の違いから判定する判定手段と、
前記ケースに挿入された前記カードの姿勢が正しいと前記判定手段が判定したときに、前記移動阻止手段による前記スライド部材の移動の阻止を解除する移動許可手段とを備えたことを特徴とするカード用コネクタ装置。
【請求項2】
請求項1記載の発明において、
前記移動阻止手段と前記移動許可手段が前記ケースに設けられた片持ちバネからなり、この片持ちバネが前記挿入方向に延び、前記ケースの外側から内側に向かう方向に傾斜して前記ケース内に突出し、前記初期位置に位置した前記スライド部材に引っ掛かる形状に形成され、
前記判定手段が前記初期位置において前記カードの前端部の前記挿入方向への移動を許容し、かつ、前記カードの後端部の前記挿入方向への移動を阻止する形状に形成された前記スライド部材からなることを特徴とするカード用コネクタ装置。
【請求項3】
請求項2に記載の発明において、
前記片持ちバネが、前記ケースの外側から内側に向かう方向に突起部した突起部を有することを特徴とするカード用コネクタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−204703(P2008−204703A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−37929(P2007−37929)
【出願日】平成19年2月19日(2007.2.19)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】