説明

カード用コネクタ

【課題】カードの押さえをカバーが行っている従来技術のカード用コネクタに対して、カバーが自動復帰する際に、カバーにカードが追従して移動してしまう恐れがないような、カードの排出操作が容易でかつ円滑なカード用コネクタを提供する。
【解決手段】カードを収容可能な収容部11sを有するハウジング11と、ハウジング11の一部を構成し、収容部11sを覆うように配置され、カードの挿入方向及び排出方向へ移動可能で、排出方向への移動時にカードを排出方向へ移動可能なカバー12と、ハウジング11の一部を構成し、カードの複数の電極と接続可能な複数のコンタクト端子13を有するケース14と、ハウジング11に配され、カバー12をカードの挿入方向へ付勢する付勢手段18とからなるカード用コネクタにおいて、ケース14には、カードの上方側を押える押え部14pが設けられていることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機、パーソナルコンピュータ等の小型電子機器に用いられるカード用コネクタに関し、特に、カードにデータを読み書きできるICカードのようなカードのために使用されるカード用コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機、パーソナルコンピュータ等の小型電子機器に用いられるカードは、概ね矩形で板状の形状をしたものが用いられており、特に、携帯電話機等の携帯機器に用いられるカードは、携帯機器の高機能化や小型化に伴い、小型化や薄型化が進められてきた。そして、このようなカードに使用されるカード用コネクタに対しても、同様に小型化や薄型化が求められてきた。
【0003】
このようなカード用コネクタの従来技術として、特許文献1では、図10に示すように、構造が簡単で、カードの排出操作を簡単かつ円滑にすることができるメモリカード用コネクタ901が提案されている。図10に示すメモリカード用コネクタ901は、絶縁ハウジング910と、絶縁ハウジング910上に前後方向へ移動可能に取り付けられて絶縁ハウジング910との間にカード挿入スロット920を形成するスライドカバー930と、絶縁ハウジング910に固定されて接触部をカード挿入スロット920内に臨ませた6個の接続用端子950と、絶縁ハウジング910に固定された2個の第1固定用端子960及び第2固定用端子970と、絶縁ハウジング910とスライドカバー930に係合してスライドカバー930を後方に付勢するコイルばね980とから構成されている。
【0004】
メモリカード用コネクタ901は、図11(a)に示すメモリカード800がカード挿入スロット920に挿入された状態から、スライドカバー930の取っ手933をもってスライドカバー930を前方へ引き出すと、図11(b)に示すように、スライドカバー930の2つのイジェクト爪939によってメモリカード800がスライドカバー930と同じように前方へ引き出される。そして、メモリカード800を取り出すためにスライドカバー930の取っ手933から手を離すと、図11(c)に示すように、コイルばね980の復元力によってスライドカバー930のみが後方へ移動して初期位置に復帰し、メモリカード800が引き出し容易な状態となる。このようにして、メモリカード用コネクタ901は、操作者に操作されるスライドカバー930が自動復帰するようになっており、メモリカード800の排出操作を簡単かつ円滑にすることができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−21191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術では、メモリカード800の紙面方向の押さえをスライドカバー930が行っているため、スライドカバー930が自動復帰する際に、スライドカバー930に押さえられているメモリカード800が、スライドカバー930に追従して移動してしまう恐れがあった。このため、メモリカード800をつまんで取り出す部分が狭くなるか、最悪の場合、カード挿入スロット920に挿入された状態近くまでメモリカード800が戻ってしまうと言う問題があった。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するもので、カードの排出操作が容易でかつ円滑なカード用コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題を解決するために、本発明の請求項1によるカード用コネクタは、カードを収容可能な収容部を有するハウジングと、前記ハウジングの一部を構成し、前記収容部を覆うように配置され、前記カードの挿入方向及び排出方向へ移動可能で、前記排出方向への移動時に前記カードを前記排出方向へ移動可能なカバーと、前記ハウジングの一部を構成し、前記カードの複数の電極と接続可能な複数のコンタクト端子を有するケースと、前記ハウジングに配され、前記カバーを前記カードの前記挿入方向へ付勢する付勢手段とからなるカード用コネクタにおいて、前記ケースには、前記カードの上方側を押える押え部が設けられていることを特徴としている。
【0009】
また、本発明の請求項2によるカード用コネクタは、前記カバーには、前記押え部が配される第1の開口部が形成されており、前記ケースには、前記第1の開口部の一部と当接し前記カバーの移動を案内している第1の案内部を有していることを特徴としている。
【0010】
また、本発明の請求項3によるカード用コネクタは、前記カバーには、第2の開口部が形成されており、前記ケースには、前記第2の開口部の一部と当接し前記カバーの移動を案内している第2の案内部を有していることを特徴としている。
【0011】
また、本発明の請求項4によるカード用コネクタは、前記カバーが、金属製であり、前記カバーと接触して接地可能な接地部を前記ケースに設けたことを特徴としている。
【0012】
また、本発明の請求項5によるカード用コネクタは、前記複数のコンタクト端子が、前記カードの挿入方向及び排出方向で2列に配置され、前記接地部が、前記カードの挿入方向側に配置された前記コンタクト端子の列の側方に配置されていることを特徴としている。
【0013】
また、本発明の請求項6によるカード用コネクタは、前記複数のコンタクト端子が、前記カードの挿入方向及び排出方向で2列に配置され、前記押え部が、前記カードの排出方向側に配置された前記コンタクト端子の列の側方に配置されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、本発明のカード用コネクタは、ハウジングのケースに、カードの上方側を押える押え部が設けられているので、カバーが自動復帰する際に、カバーとカードが当接して擦れることを防止できる。このことにより、移動するカバーに追従してカードが移動してしまうことが軽減できる。したがって、カードの排出操作が容易でかつ円滑なカード用コネクタを提供できる。
【0015】
請求項2の発明によれば、本発明のカード用コネクタは、ケースに設けられた第1の案内部が、カバーに形成された第1の開口部の一部と当接し、カバーの移動を案内しているので、はんだ付けされた部分以外の箇所で、カバーの移動の案内を行なうことができる。このことにより、はんだ付け時のフラックス上り等でカバーの動作を阻害する影響を軽減できる。
【0016】
請求項3の発明によれば、本発明のカード用コネクタは、ケースに設けられた第2の案内部が、カバーに形成された第2の開口部の一部と当接し、カバーの移動を案内しているので、はんだ付けされた部分以外の箇所で、カバーの移動の案内を行なうことができる。このことにより、はんだ付け時のフラックス上り等でカバーの動作を阻害する影響をより軽減できる。
【0017】
請求項4の発明によれば、本発明のカード用コネクタは、金属製のカバーと接触して接地可能な接地部をケースに設けたので、簡単な構成でカバーを接地させることができる。
【0018】
請求項5の発明によれば、本発明のカード用コネクタは、接地部が、カードの挿入方向側に配置されたコンタクト端子の列の側方に配置されているので、カード装着時に確実にカバーを接地させることができるとともに、カード用コネクタの全体の幅を狭くすることができる。
【0019】
請求項6の発明によれば、本発明のカード用コネクタは、押え部が、カードの排出方向側に配置されたコンタクト端子の列の側方に配置されているので、カードの排出時及びカバーの自動復帰時において、押え部がカードの挿抜側の端部を押さえることなく中央部分を押えることができる。このため、バランス良くカードを押さえることができるので、コンタクト端子による付勢力でカードが傾くことによるカバーとの接触を効果的に避けることができる。このことにより、移動するカバーに追従してカードが移動してしまうことがより軽減できる。
【0020】
したがって、本発明のカード用コネクタは、カードの排出操作が容易でかつ円滑なカード用コネクタを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態のカード用コネクタを説明する図であって、カードの挿入方向に見た分解斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態のカード用コネクタを説明する図であって、カードの排出方向に見た分解斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態のカード用コネクタを説明する図であって、図3(a)は、図1に示すZ1側から見たカード用コネクタの上面図であり、図3(b)は、カードが挿入されたカード用コネクタの上面図である。
【図4】本発明の第1実施形態のカード用コネクタを説明する図であって、図4(a)は、図1に示すZ2側から見たカード用コネクタの底面図であり、図4(b)は、カードが挿入されたカード用コネクタの底面図である。
【図5】本発明の第1実施形態のカード用コネクタを説明する図であって、図5(a)は、図1に示すZ1側から見たカバーの上面図であり、図5(b)は、図1に示すZ1側から見たケースの上面図である。
【図6】本発明の第1実施形態のカード用コネクタを説明する図であって、図6(a)は、図2に示すY1側から見たカード用コネクタの背面図であり、図6(b)は、図3(b)に示すVI−VI線における断面図であり、図6(c)は、図6(b)に示すP部分の拡大断面図であり、図6(d)は、図6(b)に示すQ部分の拡大断面図である。
【図7】本発明の第1実施形態のカード用コネクタに対するカードの挿入、排出、取り出しを説明する図であって、図7(a)は、カードが挿入された状態を示した上面図であり、図7(b)は、カードが排出された状態を示した上面図であり、図7(c)は、カバーが自動復帰した状態を示した上面図でカードの取り出しをする際の図である。
【図8】本発明の第1実施形態のカード用コネクタに対するカードの挿入、排出を説明する図であって、図8(a)は、カードが挿入された状態を示したX1側(図1に示す)から見た側面図であり、図8(b)は、カードが排出された状態を示したX1側(図1に示す)から見た側面図であり、図8(c)は、カードが挿入された状態を示したX2側(図1に示す)から見た側面図であり、図8(d)は、カードが排出された状態を示したX2側(図1に示す)から見た側面図である。
【図9】は、本発明の第1実施形態のカード用コネクタの変形例を説明する図であって、図9(a)は、図3(a)の図と比較した変形例1のカード用コネクタの上面図であり、図9(b)は、図3(a)の図と比較した変形例2のカード用コネクタの上面図である。
【図10】従来例1におけるメモリカード用コネクタ901を説明する分解概略斜視図である。
【図11】従来例1におけるメモリカード用コネクタ901に対するメモリカード800の挿入、イジェクト、取り出しの各操作を説明する図であって、図11(a)はメモリカード800の挿入時、図11(b)はメモリカード800のイジェクト時、図11(c)はメモリカード800の取り出し時の状態を示した上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0023】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態のカード用コネクタ101を説明する図であって、カードKDの挿入方向IDに見た分解斜視図である。図2は、本発明の第1実施形態のカード用コネクタ101を説明する図であって、カードKDの排出方向ODに見た分解斜視図である。図3は、本発明の第1実施形態のカード用コネクタ101を説明する図であって、図3(a)は、図1に示すZ1側から見たカード用コネクタ101の上面図であり、図3(b)は、カードKDが挿入されたカード用コネクタ101の上面図である。図4は、本発明の第1実施形態のカード用コネクタ101を説明する図であって、図4(a)は、図1に示すZ2側から見たカード用コネクタ101の底面図であり、図4(b)は、カードKDが挿入されたカード用コネクタ101の底面図である。図5は、本発明の第1実施形態のカード用コネクタ101を説明する図であって、図5(a)は、図1に示すZ1側から見たカバー12の上面図であり、図5(b)は、図1に示すZ1側から見たケース14の上面図である。図6は、本発明の第1実施形態のカード用コネクタ101を説明する図であって、図6(a)は、図2に示すY1側から見たカード用コネクタ101の背面図であり、図6(b)は、図3(b)に示すVI−VI線における断面図であり、図6(c)は、図6(b)に示すP部分の拡大断面図であり、図6(d)は、図6(b)に示すQ部分の拡大断面図である。
【0024】
本発明の第1実施形態のカード用コネクタ101は、図1ないし図5に示すように、カードKDを収容可能な収容部11sを有するハウジング11と、カードKDの挿入方向ID及び排出方向ODへ移動可能なカバー12と、複数のコンタクト端子13を有するケース14と、カバー12をカードKDの挿入方向IDへ付勢する付勢手段18とを備えて構成される。
【0025】
カバー12は、導電性の金属板からなり、図1ないし図6に示すように、打ち抜き加工及び折り曲げ加工等の加工方法を用い、平面視して矩形状に形成されるとともに、側面視して平板状のカバー本体12fからコの字状に両端側が折り曲げられた側壁を有した形状で形成されている。また、後述するケース14とともにハウジング11を構成しており、カードKDが収容される収容部11sを覆うようにして配置されている。
【0026】
カバー12には、図5(a)に示すように、後述するケース14に設けられた押え部14pが配される第1の開口部12cが左右に1箇所ずつ形成されており、更に、後述するケース14に設けられたガイド部16が配される第2の開口部12kが片側側面近傍に形成されている。そして、第1の開口部12cは、図6(a)に示すように、押え部14pの上面がカバー12の上面より高くなることを可能にしている。このことにより、押え部14pを全て覆って作製する場合と比較して、カード用コネクタ101の厚みを薄くできる。
【0027】
また、カバー12には、図2、図5(a)及び図6(a)に示すように、カバー本体12fの後端から下方へ垂設された4つのイジェクト爪45と、カバー本体12fの後端から下方へ垂設され付勢手段18側に設けられた付勢片85と、コの字状に折り曲げられた両端側の後端に設けられた2つのガイド爪65と、ガイド爪65から上方へ垂設された2つの停止面12tと、カバー本体12fの中心部分に設けられた孔状の引出部12pとが形成されている。そして、イジェクト爪45は、ハウジング11の収容部11sにカードKDが挿入された際に、カードKDの先端の側壁と対向する位置に形成されている。また、付勢片85は、付勢手段18の一端側と対向する位置に形成され、ガイド爪65及び停止面12tは、後述するケース14に設けられた突設部14tと各々対向する位置に形成されている。
【0028】
コンタクト端子13は、ハウジング11の収容部11sにカードKDが挿入された際に、図1ないし図4及び図5(b)に示すように、カードKDの複数の電極C3(図4(b)に示す)と接続可能な位置にケース14に配され、接点部13sを収容部11sに内に臨ませている。また、複数のコンタクト端子13は、カードKDの挿入方向ID側に4個並べられ、排出方向OD側に4個並べられ、2列に配置されている。また、8個のコンタクト端子13は、ケース14の周囲から延出して設けられた8個の取出し端子59と各々接続されている。複数の取出し端子59は、プリント配線板等(図示していない)のパターンにはんだ付けされて接続される。コンタクト端子13及び取出し端子59は、導電性の金属板の打ち抜き加工及び折り曲げ加工等の加工方法を用いて一体に連結して形成され、後述するケース14の形成時にインサート成形によってケース14に組み込まれる。
【0029】
ケース14は、絶縁性の合成樹脂からなり、図1ないし図5に示すように、平面視して略矩形板状に形成されるとともに、平板状のケース本体14fから上方側に立設された側壁(14w、14x)を左右に有している。側壁14wは、側壁14xより幅広に形成され、この幅広側の側壁14wには、上方を開口して付勢手段18を収容するためのばね収容凹部14rと前述したガイド部16とが形成されている。付勢手段18には、コイルばねを用いている。なお、付勢手段18にコイルばねを用いたが、コイルばねに限るものではない。また、付勢手段(以下コイルばねと言う)18は、ハウジング11に配されていれば良く、例えばカバー12に設ける構成にしても良い。
【0030】
また、ハウジング11の収容部11sにカードKDが挿入された際に、ケース14の左右の側壁(14w、14x)には、図5(b)に示すように、カードKDの上方側を押える押え部14pが設けられている。また、押え部14pは、カードKDの排出方向OD側に配置された4個のコンタクト端子13の列の側方に配置されている。また、押え部14pは、図6(c)及び図6(d)に示すように、押え部14pの補強のために、金属製の補強部14mと絶縁性の合成樹脂とが一体に形成されて構成されている。なお、押え部14pは、金属製の補強部14mのみで形成されるか、合成樹脂のみで形成されていても良い。
【0031】
また、カード用コネクタ101が組み立てられた際に、ケース14には、図5(b)に示すように、接地部17が設けられ、カードKDの挿入方向ID側に配置された4個のコンタクト端子13の列の側方に配置されている。接地部17は、図4及び図5(b)に示すように、接地部17の接触部17sがケース14の側壁14xの外側に向くように湾曲して配置され、カバー12の側壁に設けられた接地壁12sの内側面と接触部17sとが接触している。また、接地部17は、ケース14の周囲から延出して設けられた接地端子19と接続されていて、プリント配線板等(図示していない)のパターンと接地端子19とを接続させることにより接地が可能になる。このことにより、金属製のカバー12と接触して接地可能な接地部17をケース14に設けたので、簡単な構成でカバー12を接地させることができる。
【0032】
また、接地部17が、カードKDの挿入方向ID側に配置された4個のコンタクト端子13の列の側方に配置されているので、カードKD装着時に確実にカバー12を接地させることができるとともに、カード用コネクタ101の全体の幅を狭くすることができる。また、接地部17及び接地端子19は、コンタクト端子13及び取出し端子59と同様に、導電性の金属板の打ち抜き加工及び折り曲げ加工等の加工方法を用いて一体に連結して形成され、ケース14の形成時にインサート成形によってケース14に組み込まれる。
【0033】
次に、カード用コネクタ101の動作について説明する。
図7は、本発明の第1実施形態のカード用コネクタ101に対するカードKDの挿入、排出、取り出しを説明する図であって、図7(a)は、カードKDが挿入された状態を示した上面図であり、図7(b)は、カードKDが排出された状態を示した上面図であり、図7(c)は、カバー12が自動復帰した状態を示した上面図でカードKDの取り出しをする際の図である。図8は、本発明の第1実施形態のカード用コネクタ101に対するカードKDの挿入、排出を説明する図であって、図8(a)は、カードKDが挿入された状態を示したX1側(図1に示す)から見た側面図であり、図8(b)は、カードKDが排出された状態を示したX1側(図1に示す)から見た側面図であり、図8(c)は、カードKDが挿入された状態を示したX2側(図1に示す)から見た側面図であり、図8(d)は、カードKDが排出された状態を示したX2側(図1に示す)から見た側面図である。
【0034】
先ず、カード用コネクタ101の収容部11s内にカードKDを挿入したときは、図3(b)及び図7(a)に示すような状態となる。その際には、カードKDの先端の側壁がカバー12のイジェクト爪45に当接するか近接している。また、図4(b)に示すように、カードKDの複数の電極C3は、コンタクト端子13の接点部13sに弾性接触し、プリント配線板等にカード用コネクタ101が実装された場合に、プリント配線板等の電気回路と電気的に接続される。また、カードKDは、図3(b)、図6及び図7(a)に示すように、ケース14の左右の側壁(14w、14x)に設けられた2つの押え部14pによって、カードKDの上方側が押えられている。
【0035】
また、図6(c)及び図8(a)に示すように、カバー12の第1の開口部12cの端面12eと、押え部14pと一体になって形成された第1の案内部14aとが当接しているとともに、図6(d)及図8(c)に示すように、カバー12の第2の開口部12kの端面12nと、ガイド部16と一体になって形成された第2の案内部16aとが当接しており、カバー12の上下方向を規制している。また、図3(b)、図6(d)及び図7(a)に示すように、側壁14wに設けられた押え部14pの側端面14dとガイド部16側の第1の開口部12cの端面12dとが当接しており、カバー12の左右方向を規制している。また、側壁14wに設けられた押え部14pには、図6(d)に示すように、カバー12の上下方向を規制するために、カバー12の上面部分に張出した延設部14hを設けている。また、図8(a)及び図8(c)に示すように、ガイド爪65は、ケース14に設けられた突設部14tと対向する位置に離間して形成されている。このガイド爪65と突設部14tは、カバー12に不用な応力がかかり、ケース14から上方向(図1に示すZ1方向)へ外れるのを防止している。
【0036】
次に、カードKDをカード用コネクタ101の収容部11sから排出するために、カバー12の引出部12pを利用してカバー12を排出方向ODへ引き出すと、カバー12のイジェクト爪45によってカードKDが前方(排出方向OD)へ引き出され、図7(b)、図8(b)及び図8(d)に示すような状態となる。この際に、第1の開口部12cの端面12eが第1の案内部14aと摺動するとともに、第2の開口部12kの端面12nが第2の案内部16aと摺動するので、カバー12のスライド移動を可能としている。また、押え部14p及びガイド部16の挿入方向ID側の端面と、第1の開口部12c及び第2の開口部12kの挿入方向ID側の端面とが当接するようになっているので、カバー12の排出方向ODへの移動が制限され、ケース14からカバー12が排出方向ODへ外れるのを防止している。
【0037】
また、カードKDが前方へ引き出される際には、カードKDの上方側が2つの押え部14pを摺動するとともに、2つの押え部14pによって、カードKDの上方側が常に押えられている。また、カバー12の付勢片85によって、ケース14のばね収容凹部14rに収容されたコイルばね18の片側を付勢するので、カバー12を排出方向ODへ引き出すと、ばね収容凹部14r内でコイルばね18が圧縮縮小され、カバー12をカードKDの挿入方向IDへ付勢するようになる。
【0038】
最後に、カードKDを取り出すためにカバー12に加えていた力を解除すると、コイルばね18の復元力によってカバー12のみが挿入方向IDへ移動して初期位置に復帰し、図7(c)に示すような状態となり、カードKDを容易に取り出せるようになる。この際に、第1の開口部12cの端面12eが第1の案内部14aと摺動するとともに、第2の開口部12kの端面12nが第2の案内部16aと摺動するので、カバー12のスライド移動を可能としている。また、停止面12tが突設部14tに当接するようにしているので、カバー12の挿入方向IDへの移動が制限され、ケース14からカバー12が挿入方向IDへ外れるのを防止している。
【0039】
このようにして構成されたカード用コネクタ101は、カバー12が挿入方向IDへ移動して初期位置に復帰する際に、2つの押え部14pによって、カードKDの上方側が常に押えられているので、カバー12とカードKDが当接して擦れることを防止できる。このことにより、移動するカバー12に追従してカードKDが移動してしまうことが軽減できる。
【0040】
さらに、左右の側壁(14w、14x)に設けられた押え部14pが、カードKDの排出方向OD側に配置されたコンタクト端子13の列の側方に配置されているので、カードKDの排出時及びカバー12の自動復帰時において、押え部14pがカードKDの挿抜側の端部を押さえることなく中央部分を押えることができる。このため、バランス良くカードKDを押さえることができるので、コンタクト端子13による付勢力でカードKDが傾くことによるカバー12との接触を効果的に避けることができる。このことにより、移動するカバー12に追従してカードKDが移動してしまうことがより軽減できる。
【0041】
また、図10に示す従来例は、スライドカバー930の抜け止め及び前後方向へ移動のガイドのために、スライドカバー930の左右に設けた第1ガイド片945を左右の第1固定用端子960の水平部961と係合させているが、本発明のカード用コネクタ101は、第1の案内部14aが第1の開口部12cの端面12eと当接させ摺動させるとともに、第2の案内部16aが第2の開口部12kの端面12nと当接させ摺動させることにより、カバー12の抜け止め及び前後方向へのスライド移動を可能としている。このため、従来例では、第1固定用端子960のはんだ付けの時のフラックス上り等で第1固定用端子960の水平部961の付いたフラックスが、スライドカバー930の移動動作を阻害する恐れがあったが、本発明のカード用コネクタ101では、はんだ付けされる部分以外の箇所で、具体的には、第1の案内部14a及び第1の開口部12cと第2の案内部16a及び第2の開口部12kとで、カバー12のスライド移動を行なうことができる。このことにより、はんだ付け時のフラックス上り等でカバー12の動作を阻害する影響を軽減できる。
【0042】
以上により、本発明のカード用コネクタ101は、ハウジング11のケース14に、カードKDの上方側を押える押え部14pが設けられているので、カバー12が自動復帰する際に、カバー12とカードKDが当接して擦れることを防止できる。このことにより、移動するカバー12に追従してカードKDが移動してしまうことが軽減できる。したがって、カードKDの排出操作が容易でかつ円滑なカード用コネクタ101を提供できる。
【0043】
また、左右の側壁(14w、14x)に設けられた押え部14pが、カードKDの排出方向OD側に配置されたコンタクト端子13の列の側方に配置されているので、カードKDの排出時及びカバー12の自動復帰時において、押え部14pがカードKDの挿抜側の端部を押さえることなく中央部分を押えることができる。このため、バランス良くカードKDを押さえることができるので、コンタクト端子13による付勢力でカードKDが傾くことによるカバー12との接触を効果的に避けることができる。このことにより、移動するカバー12に追従してカードKDが移動してしまうことがより軽減できる。
【0044】
また、ケース14に設けられた第1の案内部14aが、カバー12に形成された第1の開口部12cの端面12eと当接し、カバー12の移動を案内しているので、はんだ付けされた部分以外の箇所で、カバー12の移動の案内を行なうことができる。このことにより、はんだ付け時のフラックス上り等でカバー12の動作を阻害する影響を軽減できる。
【0045】
さらに、ケース14に設けられた第2の案内部16aが、カバー12に形成された第2の開口部12kの端面12nと当接し、カバー12の移動を案内しているので、はんだ付けされた部分以外の箇所で、カバー12の移動の案内を行なうことができる。このことにより、はんだ付け時のフラックス上り等でカバー12の動作を阻害する影響をより軽減できる。
【0046】
また、金属製のカバー12と接触して接地可能な接地部17をケース14に設けたので、簡単な構成でカバー12を接地させることができる。
【0047】
また、接地部17が、カードKDの挿入方向ID側に配置されたコンタクト端子13の列の側方に配置されているので、カードKD装着時に確実にカバー12を接地させることができるとともに、カード用コネクタ101の全体の幅を狭くすることができる。
【0048】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば次のように変形して実施することができ、これらの実施形態も本発明の技術的範囲に属する。
【0049】
図9は、本発明の第1実施形態のカード用コネクタ101の変形例を説明する図であって、図9(a)は、図3(a)の図と比較した変形例1のカード用コネクタC01の上面図であり、図9(b)は、図3(a)の図と比較した変形例2のカード用コネクタC02の上面図である。
【0050】
<変形例1>
上記実施形態では、カバー12の第2の開口部12kに配されるガイド部16をケース14に設け、第2の開口部12kの端面12nが、ガイド部16の第2の案内部16aと摺動するように構成したが、図9(a)に示すように、カバーC12の第1の開口部C12cに配される押え部C14pをケースC14に設け、第1の開口部C12cの端面C12eが、押え部C14pの第1の案内部C14aと摺動するように構成しても良い。
【0051】
<変形例2>
上記実施形態では、カバー12の第1の開口部12cに配される押え部14pをケース14に設け、第1の開口部12cの端面12eが押え部14pの第1の案内部14aと摺動するように構成したが、図9(b)に示すように、カバーC22の第2の開口部C22kに配されるガイド部C26をケースC24に設け、第2の開口部C22kの端面C22nが、ガイド部C26の第2の案内部C26aと摺動するように構成しても良い。
【0052】
<変形例3>
上記実施形態では、図7(b)に示すように、カードKDが排出された(カバー12が引き出された)際に、カバー12と接地部17が離間する構成にしたが、接地部17の接触部17sが延出している方向を排出方向ODに向くようにし、接触部17sがハウジング11の中央付近に配されるようにして、カバー12が最大限引き出されても、カバー12と接地部17とが接触し、常に接地されるような構成にしても良い。
【0053】
<変形例4>
上記実施形態では、側壁14wに設けられた押え部14pの側端面14dとガイド部16側の第1の開口部12cの端面12dとを当接させ、カバー12の左右方向を規制するように構成したが、ケース14の側壁(14w、14x)の外側の一部とカバー12の側壁の内側面とを当接させ、カバー12の左右方向を規制するように構成しても良い。また、ガイド部16の押え部14p側の側面と第2の開口部12kのカバー本体12f側の端面とを当接させ、カバー12の左右方向を規制するように構成しても良い。
【0054】
本発明は上記実施の形態に限定されず、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0055】
11 ハウジング
11s 収容部
12、C12、C22 カバー
12c、C12c 第1の開口部
12k、C22k 第2の開口部
13 コンタクト端子
14、C14、C24 ケース
14a、C14a 第1の案内部
14p、C14p 押え部
16a、C26a 第2の案内部
17 接地部
18 付勢手段(コイルばね)
KD カード
C3 電極
ID 挿入方向
OD 排出方向
101、C01、C02 カード用コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カードを収容可能な収容部を有するハウジングと、前記ハウジングの一部を構成し、前記収容部を覆うように配置され、前記カードの挿入方向及び排出方向へ移動可能で、前記排出方向への移動時に前記カードを前記排出方向へ移動可能なカバーと、前記ハウジングの一部を構成し、前記カードの複数の電極と接続可能な複数のコンタクト端子を有するケースと、前記ハウジングに配され、前記カバーを前記カードの前記挿入方向へ付勢する付勢手段とからなるカード用コネクタにおいて、
前記ケースには、前記カードの上方側を押える押え部が設けられていることを特徴とするカード用コネクタ。
【請求項2】
前記カバーには、前記押え部が配される第1の開口部が形成されており、
前記ケースには、前記第1の開口部の一部と当接し前記カバーの移動を案内している第1の案内部を有していることを特徴とする請求項1に記載のカード用コネクタ。
【請求項3】
前記カバーには、第2の開口部が形成されており、
前記ケースには、前記第2の開口部の一部と当接し前記カバーの移動を案内している第2の案内部を有していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のカード用コネクタ。
【請求項4】
前記カバーは、金属製であり、前記カバーと接触して接地可能な接地部を前記ケースに設けたことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のカード用コネクタ。
【請求項5】
前記複数のコンタクト端子は、前記カードの挿入方向及び排出方向で2列に配置され、
前記接地部は、前記カードの挿入方向側に配置された前記コンタクト端子の列の側方に配置されていることを特徴とする請求項4に記載のカード用コネクタ。
【請求項6】
前記複数のコンタクト端子は、前記カードの挿入方向及び排出方向で2列に配置され、
前記押え部は、前記カードの排出方向側に配置された前記コンタクト端子の列の側方に配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のカード用コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−234631(P2012−234631A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100350(P2011−100350)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】