説明

カード用視認情報の記録方法及びカード

【課題】意匠性を高く要求されるデザインのカードに対し、デザインの自由度を妨げてしまうカードの表面にトレーサビリティ文字のための印字領域を設けることなく、具合原因の調査に必要なカードの製造履歴を、必要なときに確実に認識できるカード用トレーサビリティ文字の記録方法を提供する。
【解決手段】JISX6301で規定されたカード基板の表裏面のいずれかに、カード用トレーサビリティ情報を印字情報を小さくし、カードデザインに同化させ、不可逆的に記録することを特徴とするカード用トレーサビリティ情報の記録方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、JISX6301で規定されたカード基板に接触式のインタフェースや非接触式のインタフェースとを有するICチップを担持してなるICカードや、JISX6301で規定されたカード基材に磁気テープを担持してなる磁気カードに、起きる不具合原因の調査のために、ユーザーから製造メーカへカードが返却された不具合カードの製造履歴を確認するためのカード用トレーサビリティ文字の記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、家電製品、コンピュータ・モバイル製品の分野等においては、軽薄短小の流れの中で各種装置の更なる高機能、高密度化が進められており、カード製造業界においても同様の要請が高まっている。特に近年は、カードによるクレジット、電子マネー等の多機能決済等の高機能、多機能化が注目されている。
【0003】
カードの高機能化、多機能化の流れの一つとして、ICカードにおいて、インターフェイスの複数化が挙げられる。ICカードの通信方式には、大別して接触式と非接触式との2種類があるが、この両方の方式の通信が可能なハイブリッドカードやデュアルインターフェイスカードが知られている。
【0004】
カードが多く流通するようになり、カードデザインへの要望も高くなっているが、特にICカードにおいては、IC内部が半導体素子などの精密部品が多く使われるために、その半導体素子の故障が発生するとカードが使用できなくなるケースがある。
【0005】
IC内部が故障してしまうと、IC内に書き込まれた情報が読み出せなくなってしまうため、トレーサビリティ用番号は製造情報を調査するために必要なものであり、非接触ICカードにおいてはシリアル番号印字が必須である。
【0006】
カード不具合時にユーザーから製造メーカへカードが返却されたときに、そのカードの製造履歴を調べるためのトレース用のIDとなり、ICカードに好適なものである。トレーサビリティ用番号は磁気カードにおいても同様に好適である。
【0007】
ICカードでは、製造元のトレーサビリティを目的とする各カードに対し固有のシリアル番号を連続して与えている。そのシリアル番号はサーマルヘッドやレーザーマーカーやその他印字機構にてカード表面に印字している(特許文献1)。
【0008】
シリアル番号は、ICカード表面に印字をする領域を設けて、そこに可視性の番号印字を実施することが行われており、ICカード表面のデザインを阻害する要因となる(特許文献2)。
【0009】
カードの表面は各カードブランドの意匠性を高めたデザインや、規約等の文言が優先されデザイン化されるために、カード製造者がICカードの事故を想定して、必要なトレーサビリティを目的としたシリアル番号等を印字するスペースを取ることは難しくなっている。現状では、非接触ICカードの表面には印字領域が設けられているが、その領域をデザイン領域として使用したいとの要望が多い。
【0010】
一方、確認のために、顕微鏡等の機器が必要となる場合は、操作が煩雑となる。依ってICカードに事故があった場合、専門の拡大認識の機器等を持つ部門による対応が必要になるが、迅速な対応に機器の設置がネックとなってしまう場合があり、トレーサビリティ
を目的とする番号は、肉眼による確認ができることがより望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平08−080680号公報
【特許文献2】特開2002−007970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
意匠性を高く要求されるデザインのカードに対し、デザインの自由度を妨げてしまうカードの表面にトレーサビリティ文字のための印字領域を設けることなく、不具合原因の調査に必要なカードの製造履歴を、必要なときに確実に認識できるカード用トレーサビリティ文字の記録方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、JISX6301で規定されたカード基板の表裏面のいずれかに、カード用トレーサビリティ情報として記録される印字文字の大きさを小さくし、カードデザインに同化させ、不可逆的に記録することを特徴とするカード用視認情報の記録方法である。
【0014】
また、請求項2に記載の発明は、前記、カード用トレーサビリティ情報として記録される印字文字を、デザインにあわせ「非直線的」に記録することを特徴とする請求項1に記載のカード用視認情報の記録方法である。
【0015】
また、請求項3に記載の発明は、JISX6301で規定されたカード基板の側面に、目視可能な、高さ0.68〜0.60mmの文字をカード固有の情報として不可逆的に記録することを特徴としたカード用視認情報の記録方法である。
【0016】
また、請求項4に記載の発明は、前記JISX6301で規定されたカード基板に不可逆的に記録される情報が、YAGレーザー、YVO4レーザー、COレーザー、ファイバーレーザーのいずれかを用いて記録することを特徴とした請求項1から3のいずれか一項に記載のカード用視認情報記録方法である。
【0017】
また、請求項5に記載の発明は、JISX6301で規定されたカード基板の表裏面のいずれかに、カード用トレーサビリティ情報として記録される印字文字の大きさを小さくし、カードデザインに同化させ、不可逆的に記録したことを特徴とする視認情報記録カードである。
【0018】
また、請求項6に記載の発明は、JISX6301で規定されたカード基板の側面に、目視可能な、高さ0.68〜0.60mmの文字をカード固有の情報として不可逆的に記録したことを特徴とする視認情報記録カードである。
【発明の効果】
【0019】
意匠性を高く要求されるデザインカードの表裏に対し、印字されるトレーサビリティ文字を小さく、「非直線的」に記録し、デザインと同化させることにより、カードに印字領域を設けることなくカード固有のトレーサビリティ文字を不可逆的に記録する記録方法を提供でき、更には、意匠性が求められるカードの表裏面に印字せずに、JISX6301で規定されたカード基板の側面に記録することにより、デザインの自由度を妨げず、具合原因の調査に必要となるカードの製造履歴を、必要なときに確実に認識できる、目視可能なカード固有のトレーサビリティ文字を不可逆的に記録する記録方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】カード表面のデザイン部と融合させてマイクロ文字を印字した一実施形態を示した斜視概念図である。
【図2】本発明のカード基板の側面にトレーサビリティ文字を記録した一実施形態を示した斜視概念図である。
【図3】本発明のカード基板にCOレーザーにて、文字高さ1.0mm、0.8mm、0.6mm、0.4mmのトレーサビリティ文字を記録したサンプル写真。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のカード用トレーサビリティ番号の印字方法は、JISX6301で規定されたカード基板の側面に記録されるもので、接触式ICカード、非接触式ICカード、磁気カードのいずれでも構わない。
【0022】
本発明に係るカードを構成する基材は、単体基材でも良いが、一般的にコア材に外装材をラミして形成される。コア材の厚みは±3%に抑えられているが、透明な外装基材の厚みは±10%でありコア材と比べその厚みのばらつきは大きい。本発明の基材は、JISX6301の規格、厚み0.68〜0.84mmを満たせば良いが、コスト面から0.68〜0.80mmとすることが多い。
【0023】
カード基材として用いられる材料は、熱成形で磁気ストライプを基材に面一状にする必要があることから熱可塑性樹脂であることが好ましく、ポリ塩化ビニルやポリ塩化ビニル−ポリ酢酸ビニル共重合体、テレフタル酸と、シクロヘキサンジメタノール及びエチレングリコールとの共重合体、テレフタル酸とイソフタル酸及びエチレングリコールとの共重合体、またはその共重合体とポリカーボネート及び、またはポリアリレートとのポリマーアロイからなる非晶性ポリエステル、ABS等の非晶性樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン等の結晶性樹脂が挙げられる。非晶性樹脂の方が磁気ストライプを面一に熱成形する加工は、容易であるため好ましいが、結晶性樹脂でも可能である。
【0024】
トレーサビリティ情報はアルファベット、数字、記号であっても、解像性があり、目視確認できれば構わない。一般的に、カード基材の表裏にはデザインが施されているが、トレーサビリティ情報はシリアル番号等の製造者情報であり、矩形領域を定めその中で「直線的」に印字するというのが一般的である。カードの表裏に印字する場合は、デザインに同化させるために、印字文字を小さくして、矩形領域の印字ではなくデザインにあわせ「非直線的」に印字することでデザインに同化させることができる。
【0025】
一方、トレーサビリティ情報の確認にレンズやカメラといった機器を用いても構わないが煩雑となってしまうため、目視で判断できるものが適している。カードの表裏ではデザインに影響してしまうが、カードの側面に印字する事より、トレーサビリティ情報をデザインに影響を与えずに記録できる。
【0026】
極小化のレーザー印字加工は、肉眼で番号認識をするために、1mm以上のフォントサイズを使用することが多かった。本発明のカードの側面に印字テストでは、CO方式のレーザーマーカーでは、0.2mm以上からのフォントサイズで印字することが可能であるが、識別という点からは最小高さ0.6mm×横0.35mm以上が好ましい。
【0027】
カード側面へのシリアル番号等の印字は、カード側面に向けて番号印字を行う方式を実現することで、全面ホログラムなど意匠性の高いデザインをカード表面に採用しても、トレーサビリティ用番号印字を施行することができる。
【0028】
一般的にカードの表裏面は意匠性を求められるが、カード端面の印刷というのは実績が無く、ここにデザイン性を求められることは無い。
【0029】
レーザーとしては、ガスレーザー、半導体レーザー、YAGレーザーもしくはYVO4レーザーが使用でき、半導体レーザーでは820nm、ビーム径200μm位下に絞り込むことができる。
【0030】
COレーザーの印字では、文字高さ0.6mmの印字が可能なため、高さ0.76mm(0.68〜0.84mm)のカード端面への印字が可能となる。但し、カード端面は表面の平滑性が出ていないため、COレーザーマーカーのように、表面を掘削する印字方式では、認識が難しい場合がある。そのため、ファイバーレーザーなど着色する方式で印字するほうが文字認識の安定性は向上する。
【0031】
COレーザーの遠赤外光方法に比べ、ファイバーレーザーでは、より小さく集光でき、出力は更に高いパワー密度と高分解能な加工を実現できるため、炭化反応を起す。炭化反応は、吸収されたエネルギーによって、吸収部周辺材料の局所的温度が素材の熱劣化温度以上に達した時に起こる。
【0032】
YAGレーザーもしくはYVO4レーザーでは1064nm、ビーム径10μm以下に絞り込む事が可能で、10μmの印字も可能となっている。
【0033】
ファイバーレーザーは希土類添加ファイバーを増幅器として用い、光路がすべて光ファイバーで構成されるレーザー。長時間安定して動作し、放熱性に優れ、空冷で済む。手のひらサイズの小型化も可能で、持ち運びもできる。光ファイバーからレーザーが出るため、ビームが空間的に揺らがない特徴がある
以下本発明を実施するための形態を、図面を用いて詳細に説明する。
【実施例1】
【0034】
サンプルカードの基材1(PET材)にCOレーザーマーカの実機で番号印字を実施した。具体的には、KEYENCE社製ML−GL9300のCOレーザーマーカを使用した。従来、実績のある印字寸法は「高さ1.6mm〜1.0mm、横1.0mm〜0.9mm」の範囲が主となり、文字サイズは、1.6mm×0.9mm(1.78:1)で印字することが多いため、この縦横比は変更せず、サイズを0.2mmずつ小さくし、実機での最小文字として目視認識できる文字サイズを試すため、サイズを変動させて印字を行った。
【0035】
図3に印字結果の写真を示すが、A(高さ1.0mm×横0.562mm)、B(高さ0.8mm×横0.449mm)のサイズは肉眼で認識可能、D(高さ0.4mm×横0.225mm)は印字の文字潰れが発生して、カメラ等を使用することで、文字(数字)認識が可能性であるが、肉眼での認識が難しい。C(高さ0.6mm×横0.337mm)のサイズはパターンの登録可能なカメラ等を使用することで、文字(数字)認識が可能性であるが、肉眼での認識の限界であった。
【0036】
C(高さ0.6mm×横0.337mm)のサイズ条件を変化させ、カード側面2に高さ0.68〜0.60mmの文字を印字することにより、カード1のカードデザイン5に影響するする事無く、肉眼での確認ができる為、ユーザーからの事故報告に対して、顕微鏡等の機器が不要な為対応がスムーズに行うことができる。
【0037】
図1はカードデザインと融合させてマイクロ文字4を印字した一実施形態を示した概念
図と、マイクロ文字部分の拡大説明図であり、レーザーを用いて表面にマイクロ文字できる。前記マイクロ文字はデザインと融合させることは可能であるが、顕微鏡等の機器を用いないとセキュリティ文字を確認することはできない。
【0038】
前記のように、製造元のトレーサビリティを目的とする各カードに対し、固有のシリアル番号を印字することが行われているが、デザインと印字文字との融合を考慮してカードの表面にマイクロ文字にて印字することできる。
【0039】
カード用トレーサビリティ情報として記録される印字文字を小さくし、デザインにあわせ「非直線的」に記録することにより、カード表裏のデザインに同化させることが、可能となりトレーサビリティの為に設けている印字領域の設定を不要にできる。
【0040】
カード基板の側面に、目視可能な、高さ0.68〜0.60mmの文字をカード固有の情報として不可逆的に記録することにより、デザインに影響されず、トレーサビリティ情報を記録する事ができる。
【符号の説明】
【0041】
1・・・カード(JISX6301で規定)
2・・・カード側面
3・・・レーザー印字文字
4・・・マイクロ文字
5・・・カードデザイン
A・・・高さ1.0mm×横0.562mm
B・・・高さ0.8mm×横0.449mm
C・・・高さ0.6mm×横0.337mm
D・・・高さ0.4mm×横0.225mm

【特許請求の範囲】
【請求項1】
JISX6301で規定されたカード基板の表裏面のいずれかに、カード用トレーサビリティ情報として記録される印字文字の大きさを小さくし、カードデザインに同化させ、不可逆的に記録することを特徴とするカード用視認情報の記録方法。
【請求項2】
前記、カード用トレーサビリティ情報として記録される印字文字を、デザインにあわせ「非直線的」に記録することを特徴とする請求項1に記載のカード用視認情報の記録方法。
【請求項3】
JISX6301で規定されたカード基板の側面に、目視可能な、高さ0.68〜0.60mmの文字をカード固有の情報として不可逆的に記録することを特徴としたカード用視認情報の記録方法。
【請求項4】
前記JISX6301で規定されたカード基板に不可逆的に記録される情報が、YAGレーザー、YVO4レーザー、COレーザー、ファイバーレーザーのいずれかを用いて記録することを特徴とした請求項1から3のいずれか一項に記載のカード用視認情報記録方法。
【請求項5】
JISX6301で規定されたカード基板の表裏面のいずれかに、カード用トレーサビリティ情報として記録される印字文字の大きさを小さくし、カードデザインに同化させ、不可逆的に記録したことを特徴とする視認情報記録カード。
【請求項6】
JISX6301で規定されたカード基板の側面に、目視可能な、高さ0.68〜0.60mmの文字をカード固有の情報として不可逆的に記録したことを特徴とする視認情報記録カード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−76404(P2012−76404A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−225466(P2010−225466)
【出願日】平成22年10月5日(2010.10.5)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】