説明

カーブコンベヤのカバー取付構造

【課題】補助カバー部材の取り付け・取り外しが容易で、設置作業性、メインテナンス性に優れるカーブコンベヤのカバー取付構造を提供する。
【解決手段】ホルダカバー1は、上側カバー部材11の下側に下側カバー部材12が取り付けられ、ベルト案内機構が配置される部分が外側から見える矩形状の開口部S1,S2が形成されてなる。その開口部S1,S2を覆うように、補助カバー部材13A,13Bがそれの周縁に設けられた帯状のマグネット14A,14Bを介して着脱可能に取り付けられている。補助カバー部材13A,13Bは、前記各開口部に対応して、矩形状の可撓性シート材の周縁に沿って、帯状のマグネット14A,14Bが縁合わせで設けられてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーブコンベヤのカバー取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、湾曲した搬送経路(湾曲搬送経路)を有するベルトコンベヤとして、カーブコンベヤが知られており、そのようなカーブコンベヤの湾曲部分には、コンベヤベルトを湾曲して走行させて湾曲搬送経路を形成するために、ベアリング、ローラなどの回転体によって構成されるベルト案内機構が配置されている。そのため、そのような湾曲搬送経路の外側部分を覆うように安全カバーを設けることが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような安全カバーは、鉛直方向に延び前記湾曲搬送経路の外側方を覆う縦カバー部分と、水平方向に延び前記湾曲搬送経路の上方を覆う上カバー部分とを有する。そのため、それらを溶接で一体に結合された構造とすると、内部メンテナンス時には、安全カバー全体を取り外さなければならず、内部メンテナンスが面倒な作業となる。
【0004】
そのため、前述したような一体構造とすることなく、カバー本体に対し補助カバー部材(縦カバー部分に対応)をボルトなどの固定具にて着脱可能に固定することにより、内部メンテナンス時などにおいて、補助カバー部材をカバー本体から取り外すことで、メンテナンスを行うことができるようにしているのが現状である。その補助カバー部材は、前記湾曲搬送経路の外側方を覆うように、鉄板(厚さ1.2mm〜3.2mm)をアール曲げ加工してなり、カバー本体に設けられた取付穴に対応して貫通穴が設けられた構造となっている。
【特許文献1】特開2003−34416号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したようなカバー本体に補助カバー部材を取り付ける構造であると、次のような課題がある。
【0006】
(i)前記補助カバー部材と、と前記カバー本体の溶接歪みや曲げ精度との関係で、予め前記カバー本体に取付穴を加工しておくと、前記補助カバー部材の貫通穴との間に位置ずれが生じるおそれがある。
【0007】
(ii)前記取付穴のピッチが広すぎると、コンベヤ運転時に補助カバー部材が振動したり、隣り合う補助カバー部材との間に隙間が生じたりしてまうので、それらを回避するために、前記取付穴のピッチは制約を受ける。つまり、前記取付穴のピッチは200mm〜350mm程度とする必要がある。
【0008】
(iii)特に、物流センターや空港に設置される場合には、カーブコンベヤは外周長が長くなるので、設置場所での加工箇所が非常に多く、組立工数が多くなる。よって、メンテナンス作業のために、補助カバー部材を脱着する際にも非常に作業工数が多くなる。
【0009】
(iv)下穴のキリ加工、それに続くタップ加工時に発生するキリ粉などがカバー本体内に入ってしまうため、それらの加工後には、補助カバー部材と共にカバー本体を取り外し、内部をエアブローなどで清掃する必要がある。キリ粉が内部部品の隙間に入り込めば、異音や傷などの不具合が発生するおそれがあるからである。
【0010】
(v)補助カバー部材をカバー本体に取り付けるための取付ボルトが多数露出した状態となるので、見栄えが悪い。
【0011】
本発明は、補助カバー部材の取り付け・取り外しが容易で、設置作業性、メインテナンス性に優れるカーブコンベヤのカバー取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の発明は、コンベヤベルトによる湾曲搬送経路の外周側を覆うようにカバー本体が設けられ、前記カバー本体に、前記コンベヤベルトに前記湾曲搬送経路を形成させるベルト案内機構が配置される部分に臨む開口部が形成され、前記開口部を閉塞する補助カバー部材が、前記カバー本体に着脱可能に取り付けられているカーブコンベヤのカバー取付構造であって、前記補助カバー部材は、マグネットが取り付けられ前記湾曲搬送経路に沿うように湾曲可能である可撓性シート材からなるとともに、前記マグネットによって前記カバー本体に着脱可能に取り付けられていることを特徴とする。ここで、「前記コンベヤベルトに前記湾曲搬送経路を形成させるベルト案内機構」とは、湾曲搬送経路を形成するために、コンベヤベルトを湾曲して走行させる案内機能を発揮するベアリング、ローラなどの回転体などを含む周知の機構である。
【0013】
このようにすれば、補助カバー部材は軽量であり、その補助カバー部材がマグネットによってカバー本体に着脱可能に取り付けられるので、補助カバー部材の取り付け・取り外しが容易で、位置ずれやボルトによる取付穴のピッチの制約などをあまり考慮する必要がなく、設置作業性、メインテナンス性に優れる。また、取付ボルトなどを用いないので、キリ粉などの発生がなく、外観の向上も図れる。
【0014】
特に、補助カバー部材が、マグネットが取り付けられ前記湾曲搬送経路に沿うように湾曲可能である可撓性シート材から構成されるので、狭い設置場所であっても、比較的作業が容易で、作業時間の短縮化を図ることができ、また、鉄板をアール曲げ加工して補助カバー部材を形成したり、設置場所で下穴のキリ加工をしたりタップ加工をしたりする必要がないので、コストダウンを図る上で有利である。
【0015】
この場合、請求項2に記載のように、前記可撓性シート材は、芯体層の上下にカバー層を積層してなり、前記カバー層に、両面テープあるいは接着剤によって前記マグネットが固定されている構成とすることができる。
【0016】
このようにすれば、可撓性シート材にマグネットを両面テープあるいは常温接着剤によって固定して、補助カバー部材を簡単に形成することができる。
【0017】
請求項3に記載のように、前記カバー部材は、前記マグネットが設けられている部分に前記マグネットと可撓性シート材とを貫通する複数の貫通穴が形成される一方、前記貫通穴に対応して前記カバー本体に複数の取付穴が形成され、前記カバー本体の取付穴に前記カバー部材の貫通穴を通じて係止具を抜き差し可能に挿入することで、前記カバー部材が前記カバー本体に対し仮止め可能である構成とすることができる。
【0018】
このようにすれば、製造工場などから設置場所への輸送時に、補助カバー部材の位置がずれたり、落下したりするのが係止具による仮止めによって防止される。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明は、補助カバー部材は軽量であり、その補助カバー部材がマグネットによってカバー本体に着脱可能に取り付けられるので、補助カバー部材の取り付け・取り外しが容易で、設置作業性、メインテナンス性に優れる。また、取付ボルトなどを用いないので、キリ粉などの発生がなく、外観の向上も図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に沿って説明する。
【0021】
図1は湾曲した搬送経路を有するカーブコンベヤのカバー取付構造を示す分解斜視図である。
【0022】
図1において、1はコンベヤベルト(図示せず)による湾曲した搬送経路(湾曲搬送経路)の外側に配置されるホルダカバー(カバー本体)で、上側カバー部材11の下側部分に下側カバー部材12が取り付けられて、前記コンベヤベルトを湾曲して走行させることで湾曲搬送経路を形成する、ベアリング、ローラなどの回転体を含むベルト案内機構が配置される部分に臨む矩形状の開口部(切り欠き部S1,S2)が形成される。そして、その開口部を覆うように、後述する補助カバー部材13A,13Bが、それの周縁に設けられた帯状のマグネット14A,14Bを介して、カバー本体1に対し着脱可能に取り付けられている。
【0023】
上側カバー部材11は、ほぼ対称に形成される2つの部材11A,11Bを接合して形成され、それらはカーブコンベヤのコンベヤフレーム(図示せず)にボルトなどにより固定されている。また、各部材11A,11Bは、水平部11Aa,11Baと、この水平部11Aa,11Baの内周側から鉛直上方に延びる上壁部11Ab,11Bbと、水平部の側縁部から下方に延びる側壁部11Ac,11Bcと、水平部11Aa,11Baの外周側から鉛直下方に延びる下壁部11Ad,11Bdとを有する。下壁部11Ad,11Bdは、上側フランジ部11Ada,11Bdaと、この上側フランジ部11Ada,11Bdaから下方に延びる帯状の縦壁部11Adb,11Bdb,11Adc,11Bdcとを有し、下方に開放され矩形状の前記開口部を形成する切り欠き部S1,S2が形成されている。なお、上側フランジ部11Ada,11Bda及び縦壁部11Adb,11Bdb,11Adc,11Bdcはほぼ同じ幅を有し、この幅は、マグネット14A,14Bの幅よりも広くなっている。
【0024】
下壁部の縦壁部11Adb,11Bdb,11Adc,11Bdcの下端に帯状の下側カバー部材12がボルト(図示せず)などにより固定されることで、2つの矩形状の前記開口部が形成される。これら2つの開口部を通じて、ベアリング、ローラなどの回転体を含むベルト案内機構を外側からみることができるようになっている。
【0025】
13A,13Bは補助カバー部材で、可撓性を有し、前記各開口部を覆うようにマグネット14A,14B(強磁タイプ)によって、下壁部の縦壁部11Adb,11Bdb,11Adc,11Bdc及び下側カバー部材12に対し着脱可能に取り付けられている。マグネット14A,14Bは、帯状で、前記各開口部に対応して、矩形状の可撓性シート材の周縁に沿って、縁合わせで設けられることで、補助カバー部材13A,13Bが構成されている。一方の補助カバー部材13Bの周方向端部には、カーブコンベヤの駆動機構の駆動軸を、内側から外側に貫通させるために矩形状の切り欠き部13Baが形成されている。なお、補助カバー部材13Bの外側に駆動軸を貫通させる必要がない場合には、切り欠き部13Baを省略することができるのはもちろんである。
【0026】
また、補助カバー部材13A,13Bには、上側フランジ部11Ada,11Bdaに形成される4つの取付穴15に対応して、貫通穴16が形成されており、その貫通穴16を通じてプラスチック製の差し込みファスナー17(係止具)を抜き差し可能に挿入することで、補助カバー部材13A,13Bをカバー本体1に対し仮止めし、カーブコンベヤをトラックで設置場所に輸送する際に、振動やカバー部材13A,13Bへの衝撃により、補助カバー部材13A,13Bが落下したり移動したりするのが防止される。貫通穴16は、マグネット14A,14Bが設けられている部分に設けられ、可撓性シート材だけでなく、マグネット14A,14Bも貫通している。なお、補助カバー部材13A,13Bを構成する可撓性シート材は、着脱の際の取り扱いが容易になるように、外周長2000mm(好ましくは1800mm)以下は1枚で構成し,2000mmを超えるものは最大長2000mm/枚で分割する。また、カーブコンベヤを通常運転するだけでは、補助カバー部材13A,13Bが落下したり移動することはないので、カーブコンベヤを所定の設置場所に設置した後は、差し込みファスナー17による仮止めを解除しても支障はない。
【0027】
補助カバー部材13A,13Bを構成する略矩形状の可撓性シート材は、芯体コードが螺旋状に埋設されてなる芯体層の上下に、カバー層を積層してなり、アール曲げ加工が必要ないようにされている。厚さとしては、1.2mm〜3.2mm(好ましくは1.4〜2.6mm)程度のものが用いられる。そして、可撓性シート材のカバー層のうち内周側となるカバー層の表面に、マグネット14A,14Bが固定されている。そして、外周側となるカバー層の表面上には帆布が積層され、帆布層が外周面を構成するようになっている。ここで、芯体コードとしては、材質がポリエステル、またはポリエステルと綿の混紡したものであり、線径は500〜1500デニール、打ち込み本数は7〜25本/cm、引張強さは30〜120kgf/cmのものが用いられる。カバー層としては、材質がポリウレタンまたはポリ塩化ビニルである。この補助カバー部材に用いる可撓性シート材としては、厚さの薄い平ベルト(例えば、バンドー化学株式会社製「サンライン」SL--C2NUGE HO(2ply))を利用することができる。なお、前記芯体層は、一層構造であれば可撓性シート材の剛性が不足し、取付時にしわやへこみが発生するおそれがあるので、前記しわやへこみの対策として2層以上を積層した構造とすることが望ましいが、引張強さが175kgf/cm以上の芯体を用いた芯体層であれば、一層構造でも使用可能である。
【0028】
マグネット14A,14Bとしては、両面テープ付きの帯状マグネット(商品名:マグタック(マグマン製)、サイズ:厚さ1.5mm×幅19mm(あるいは幅13mm,25mm)を使用することができる。なお、マグネットそのものとしては、異方性(強磁タイプ)を有し、厚さが0.8mm以上で、吸着力が50g/cm2以上のものを使用することが望ましい(例えば、商品名:マグネシート(マグマン製))。
【0029】
前記両面テープ付きの帯状マグネットを使用しない場合には、マグネット14A,14Bを可撓性シート材に固定する両面テープとしては、超強力両面テープ(スコッチ製、型式:SVP(PVCベルト)またはSVG(ウレタンベルト))を使用することができる。マグネット14A,14Bを可撓性シート材に固定する常温接着剤としては、サンパットC(バンドー化学(株)製、型式:#1100)を使用することができる。
【0030】
つづいて、現場での補助カバー部材の取り付け手順について説明する。
【0031】
まず、定寸にカットされた可撓性シート材(ベルト材)の内周面側に両面テープ付き帯状マグネットを貼り付ける。ここで、マグネット14A,14Bは、カバー部材13A,13B(可撓性シート部材)に対し縁を合わせて貼り付けられる。そして、帆布層が外側表面(外周面)となるようにする。
【0032】
補助カバー部材13A,13Bを、ホルダカバー1(上側及び下側カバー部材11,12)の正規の位置で貼り付ける。ここで、ホルダカバー1には、取付穴15が形成されているので、補助カバー部材13A,13Bにその取付穴15に対応する位置を罫書き、その後補助カバー部材13A,13Bを取り外して、前記位置に、ポンチにて、可撓性シート材と共にマグネット14A,14Bを貫通する貫通穴16を形成する。ここで、貫通穴16を形成しやすいように、下側に角木材を設けて、穴加工をすることが望ましい。
【0033】
それから、補助カバー部材13A,13Bをホルダカバー1に正規の位置に取り付け、補助カバー部材13A,13Bの外表面側から差し込みファスナー17が抜き差し可能に差し込まれ、取り付けが完了する。
【0034】
本発明は、前述したほか、次のように変更することも可能である。
【0035】
(i)前記実施の形態では、補助カバー部材13A,13Bの仮止めには、取り付け・取り外しをワンタッチで行え作業が容易となるようにプラスチック製の差し込みファスナー17を使用しているが、ボルトなどの周知の係止具を用いることも可能である。また、各補助カバー部材13A,13Bにおいて上側2箇所で仮止めするほか、上下4箇所で仮止めするようにしてもよいのはいうまでもない。
【0036】
(ii)前記各補助カバー部材の、カバー部材同士の突き合わせジョイント側には、マグネットを設けることなく、図2に示すように、突き合わせる補助カバー部材23A,23Bのうち一方の補助カバー部材23Bのジョイント側部分の中央部8(マグネットが設けられている両側縁の間の部分)に、25mm程度の長さだけ突出する突出部23Baを設ける構成とすることも可能である。このようにすれば、2つの補助カバー部材23A,23Bの重複部分ΔLが25mm程度となり、取り付けの際にジョイント部付近の隙間を隠すようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】コンベヤベルトによる湾曲搬送経路を有するカーブコンベヤのカバー取付構造を示す分解斜視図である。
【図2】補助カバー部材のジョイント部の、他の実施例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0038】
1 ホルダカバー
11 上側カバー部材
12 下側カバー部材
13A,13B 補助カバー部材
14A,14B マグネット
23A,23B 補助カバー部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンベヤベルトによる湾曲搬送経路の外周側を覆うようにカバー本体が設けられ、前記カバー本体に、前記コンベヤベルトに前記湾曲搬送経路を形成させるベルト案内機構が配置される部分に臨む開口部が形成され、前記開口部を閉塞する補助カバー部材が、前記カバー本体に着脱可能に取り付けられているカーブコンベヤのカバー取付構造であって、
前記補助カバー部材は、マグネットが取り付けられ前記湾曲搬送経路に沿うように湾曲可能である可撓性シート材からなるとともに、前記マグネットによって前記カバー本体に着脱可能に取り付けられていることを特徴とするカーブコンベヤのカバー取付構造。
【請求項2】
前記可撓性シート材は、芯体層の上下にカバー層を積層してなり、
前記カバー層に、両面テープあるいは接着剤によって前記マグネットが固定されていることを特徴とする請求項1記載のカーブコンベヤのカバー取付構造。
【請求項3】
前記カバー部材は、前記マグネットが設けられている部分に前記マグネットと可撓性シート材とを貫通する複数の貫通穴が形成される一方、前記貫通穴に対応して前記カバー本体に複数の取付穴が形成され、
前記カバー本体の取付穴に前記カバー部材の貫通穴を通じて係止具を抜き差し可能に挿入することで、前記カバー部材が前記カバー本体に対し仮止め可能である構成とされていることを特徴とする請求項1または2記載のカーブコンベヤのカバー取付構造。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−7115(P2009−7115A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−169970(P2007−169970)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(000005061)バンドー化学株式会社 (429)