説明

カーペットの製造方法及び製造装置

【課題】1台の機械で、多種、多様なパイル柄、パイル形状、パイル密度等の多品種のカーペットを製造できる製造方法及び製造装置を提供する。
【解決手段】パイル糸供給装置1から引き出したパイル糸Pを、基材搬送手段2a,2bにより搬送されるシート状基材C1の表面に接着してカーペットを製造する場合に、パイル糸Pを保持する糸保持部材10a,10bをパイル糸供給装置1の中央搬送手段15により一定間隔毎に支持して間欠送行させて引き出し用位置に搬送し、中央搬送手段15の両側傍に備えるパイル糸選択保持装置20a,20bで、糸保持部材10a,10bを受け入れ、各糸保持部11に対しカーペット幅方向の単位パイル列毎のパイルに対応したパイル糸Pを選択して並列して保持させて、中央搬送手段15に送り込んで支持させることを繰り返して、順次引き出し用位置に搬送して、カーペットを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主としてシート状基材にパイル糸を接着して植設してなるタイル型カーペット等のカーペットの製造方法及び製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、カーペット織機における少量、多品種に関する種々の提案がなされている。カーペット織機としては、大別して、ウイルトン織機、アキスミンスター織機が知られている。ウイルトン織機は、ワイヤーを用いてパイルを形成するために、パイル形状はループパイル、カットパイル、ループパイルとカットパイルが混在したもの等のいずれも製造可能で、パイル長(3〜30mm)や打込み(ピッチ4〜12段/inch)等についても、種々の品種が生産できるが、パイルの色数が最高でも5〜6色程度といった制限がある。また、アキスミンスター織機は、パイルの色数については1〜32色の柄パイルの製造が可能であるが、その反面、パイル形状がカットパイルのみである。そのため、テクスチャー製品のカットパイル、ループパイル、ループとカットパイル等はウイルトン織機で生産され、多色柄はアキスミンスター織機で生産される等、品種に応じて使い分けされているのが現状である。
【0003】
しかし、カーペット織機の場合、パイルの縦密度については、機械の運転を停止しなくても、電気的、機械的に変化させることが可能であるが、パイルの横密度については、ジャカードや綜絖等の関係で変化させることができないという問題がある。
【0004】
また、前記のカーペット織機を利用して、タイル型カーペットを製造する場合、パイル基布の製織、バッキング材による裏打ち、カット作業等に手数がかかり、設備が大掛かりなものになる上、柄パイルとした場合に、柄の一部が欠落したりずれが生じ易く、またバッキング材の厚みが不均一になり易く、しかもその厚みを大きくできないばかりか、保形性にも乏しいという欠点があった。特にこのような欠点は、比較的広幅のカーペットについても言える。
【0005】
そこで、本出願人は、タイル型カーペット等のカーペットを製造する装置として、シート状基材を搬送するカーペット製造用の基材搬送手段と、多数のパイル糸を引き出し可能に保持するパイル糸供給装置とを並設し、特にパイル糸供給装置を中間にして両側に基材搬送手段を配置した構成とし、カーペット幅方向の2列一組のパイル列毎に対応するパイル糸を、パイル糸供給装置の糸保持部に引き出し可能に保持しておいて、該パイル糸を一定長さに引き出し、間欠送行するタイル型カーペットのシート状基材の表面に対して接着して植設することにより、多色柄のタイル型カーペットを能率よく製造できる装置を提案した(特許文献1)。
【0006】
前記提案のカーペット製造装置の場合、前記パイル糸供給部において、多数のパイル糸を引き出し可能に保持する糸保持手段を備え、カーペット幅方向の単位パイル列毎に対応するパイル糸を交互に横一列に引き揃えて引き出し用位置に位置させるものであり、多色のパイル柄を得ることができるものの、該パイル糸の給糸手段において、ジャカード等を利用した糸選択手段を設けて、パイル列毎のパイルに対応させるように選択する必要があり、またカセット式の場合には、予め別の装置の糸選択手段を用いて選択したパイル糸をカセットの糸保持部材に配列して保持させておく必要がある。
【0007】
また、いずれにしても、パイル糸供給部の引き出し用位置でパイル糸を引き出して所定長さにカットし、カットしたパイル糸を掴持して、シート状基材の上に移動させて接着するので、カットパイルしか製造できず、ループパイルの生産には適用できないものであり、また、パイル横密度の変更も容易ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公平7−102170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなしたものであり、1台の機械で、機械を停止することなく、ループパイルとカットパイルの混在等のパイル形状の変更や組み合わせ、多色柄、パイル横密度の変化等が容易に可能で、多種、多様なパイル柄の多品種のタイル型カーペット等のカーペットを効率よく製造できる製造方法及び製造装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決する本発明は、製造するカーペットのシート状基材をカーペット製造用の基材搬送手段に上載して間欠送行させるとともに、これと並列に配置されたパイル糸供給装置においてカーペット幅方向の単位パイル列に対応して横列に保持されているパイル糸を、植設用の掴持移動手段により並列状態のまま掴持してパイル糸供給装置から引き出し、前記基材搬送手段におけるシート状基材の送行部分における植設工程部に移動させ、シート状基材の送行停止中に、各パイル糸をシート状基材の表面に接着し植設するカーペットの製造方法において、前記パイル糸供給装置では、前記基材搬送手段と平行に配された中央搬送手段により、カーペット幅方向の単位パイル列に対応するパイル糸を横列に保持する糸保持部材を搬送方向の一定間隔毎に支持して、かつ前記一定間隔毎に間欠送行させて前記掴持移動手段による引き出し用位置に搬送し、これと同時に、該中央搬送手段の側傍に備えるパイル糸選択保持装置において、前記中央搬送手段により搬送される空の糸保持部材を受け入れ、該糸保持部材の各糸保持部に対してカーペット幅方向の単位パイル列毎のパイルに対応したパイル糸を選択して並列状態に保持させた後、該糸保持部材を前記中央搬送手段に送り込んで支持させることを繰り返して、カーペット幅方向の単位パイル列毎に対応するパイル糸を並列状態に保持して前記引き出し用位置に順次搬送することとし、所定のパイル柄のカーペットを製造することを特徴とする。
【0011】
このカーペットの製造方法によれば、パイル糸供給装置の中央搬送手段により支持されて前部の引き出し用位置に間欠的に搬送される糸保持部材に、製造対象のカーペットの幅方向の単位パイル列毎のパイルに応じたパイル糸を選択し保持させることにより、前記パイル糸を基材搬送手段上のシート状基材に対し順次接着し植設できる。特に、前記糸保持部材に保持させるパイル糸の色や保持形態を適宜設定することにより、任意のパイル形状、パイル柄のカーペットを得ることができ、多色、多品種のカーペットの製造が可能になる。
【0012】
前記のカーペットの製造方法において、前記パイル糸供給装置を中間にして、その両側に、それぞれ接着工程部を含むカーペット製造用の第1と第2の基材搬送手段を並設しておき、前記パイル糸供給装置の中央搬送手段の両側傍の一方側に備えるパイル糸選択保持装置により、前記第1の基材搬送手段で製造するカーペットの単位パイル列毎に対応するパイル糸を第1の糸保持部材に保持させ、また他方側に備えるパイル糸選択保持装置により、第2の基材搬送手段で製造するカーペットの単位パイル列毎に対応するパイル糸を第2の糸保持部材に保持させるようにし、それぞれ中央搬送手段に送り込み、中央搬送手段により前記第1の糸保持部材と第2の糸保持部材とを交互に支持して前記引き出し用位置に搬送し、前記引き出し用位置において前記第1の糸保持部材に保持されているパイル糸と第2の糸保持部材に保持されているパイル糸を、それぞれ別の第1の掴持移動手段と第2の掴持移動手段により掴持して引き出し、第1の基材搬送手段における接着工程部と第2の基材搬送手段の接着工程部とに交互に移動させ、第1と第2の基材搬送手段により搬送されるシート状基材の表面に前記パイル糸を接着し植設するのが好ましい。
【0013】
これにより、パイル供給装置の両側に並設された第1と第2の二つの基材搬送手段でそれぞれカーペットを効率よく製造できる。
【0014】
前記のカーペットの製造方法において、前記各糸保持部材にパイル糸を保持させるパイル糸選択保持装置において、パイル糸を直線状にして保持させる場合と、パイル糸を折曲状態にして保持させる場合とを、製造するカーペットの幅方向の単位パイル列毎のパイル形状に応じて選択して保持させることができる。
【0015】
これにより、カットパイルやループパイルを得ることができる。例えばパイル糸を直線状にして糸保持部材に保持させた場合は、掴持移動手段により掴持して引き出したパイル糸を、シート状基材に接着する際に中央部で折曲して該折曲部を接着することにより、2列一組の単位パイル列のカットパイルを形成できる。また、パイル糸を折曲状態にして保持させた場合は、掴持移動手段により掴持して引きだした折曲状態のパイル糸を折曲部をパイル表面に出すように接着することによりループパイルを形成できる。特に、前記のパイル糸の保持状態を選択することにより、ループパイルとカットパイルを混在させることも可能になる。
【0016】
また、前記のカーペットの製造方法を実施するための本発明のカーペットの製造装置は、製造するカーペットのシート状基材を上載して間欠送行させるカーペット製造用の基材搬送手段と、これと並列に配されたパイル糸供給装置と、前記パイル糸供給装置の前方で前記基材搬送手段の送行方向に対し直交する方向に移動可能なパイル糸植設用の掴持移動手段とを備え、パイル糸供給装置においてカーペット幅方向の単位パイル列のパイルに対応して横列に保持されているパイル糸を、前記掴持移動手段により並列状態のまま掴持してパイル糸供給装置から引き出し、前記基材搬送手段におけるシート状基材の送行部分における植設工程部に移動させ、前記シート状基材の送行停止中に、各パイル糸をシート状基材の表面に接着し植設するカーペット製造装置において、前記パイル糸供給装置には、前記基材搬送手段と平行に配され、カーペット幅方向の単位パイル列毎のパイルに対応するパイル糸を横列に保持する糸保持部材を搬送方向の一定間隔毎に支持し、各糸保持部材を前記一定間隔毎に間欠送行させて順次前記掴持移動手段による引き出し用位置に搬送する中央搬送手段と、前記中央搬送手段の側傍に配置されたパイル糸選択保持装置であって、中央搬送手段により搬送される空の糸保持部材を受け入れ、該糸保持部材の各糸保持部に対してカーペット幅方向の単位パイル列毎のパイルに対応したパイル糸を選択して並列状態に保持させた後、該糸保持部材を前記中央搬送手段に送り込むように設けられたパイル糸選択保持装置とを備え、前記中央搬送手段が前記パイル糸選択保持装置から送り込まれる前記糸保持部材を前記引き出し用位置に順次搬送するように構成されてなることを特徴とする。
【0017】
このカーペット製造装置により、前記カーペット製造方法を良好に実施でき、多品種のカーペットを効率よく製造することができる。
【0018】
前記のカーペットの製造装置において、前記パイル糸供給装置を中間にして、その両側に、それぞれ接着工程部を含むカーペット製造用の第1と第2の基材搬送手段が並設されてなり、前記パイル糸供給装置の中央搬送手段の両側傍の一方側には、第1の基材搬送手段で製造するカーペットの単位パイル列毎に対応するパイル糸を糸保持部材に保持させる第1のパイル糸選択保持装置が、他方側には第2の基材搬送手段で製造するカーペットの単位パイル列毎に対応するパイル糸を糸保持部材に保持させる第2のパイル糸選択保持装置が配置され、それぞれ前記第1のパイル糸選択保持装置においてパイル糸を保持した第1の糸保持部材と、前記第2のパイル糸選択保持装置においてパイル糸を保持した第2の糸保持部材とを、前記中央搬送手段に対して搬送方向に交互に並列する支持位置に送り込むように設けられ、前記中央搬送手段は前記第1の糸保持部材と第2の糸保持部材とを交互に支持して搬送するように設けられており、また、前記パイル糸供給装置の前方には、前記中央搬送手段により引き出し用位置に搬送される前記第1の糸保持部材に保持されているパイル糸と、第2の糸保持部材に保持されているパイル糸とを、それぞれ交互に掴持して引き出してかつ第1の基材搬送手段の接着工程部に移動させる第1の掴持移動手段と、第2の基材搬送手段の接着工程部に移動させる第2の掴持移動手段を備え、第1の掴持移動手段の各パイル糸を第1の基材搬送手段の接着工程部において、第2の基材搬送手段の各パイル糸を第2の基材搬送手段の接着工程部においてそれぞれシート状基材に接着するように設けられてなるものが、実施上特に好ましい。これにより、第1と第2の二つの基材搬送手段で、それぞれ所望のパイル形状、パイル柄のカーペットを効率よく製造できる。
【0019】
前記のカーペットの製造装置において、前記両側のパイル糸選択保持装置は、それぞれ中央搬送手段から側方に送り出される糸保持部材を支持して中央搬送手段の間欠送行に応じて間欠送行する副搬送手段と、この副搬送手段の送行停止中に、引き出し可能に保持された多数のパイル糸の中から、製造するカーペット幅方向の単位パイル列毎のパイルに対応したパイル糸を選択して前記糸保持部材に対し並列状態に保持させるパイル糸選択挿入手段と、選択した前記パイル糸を所定長さに切断するパイル糸切断手段と、中央搬送手段及び副搬送手段の送行停止中に、パイル糸を保持した前記糸保持部材を中央搬送手段に送り込む送り込み手段とを備えてなるものとすることができる。
【0020】
これにより、両側のパイル糸選択保持装置において、中央搬送手段から受け入れた糸保持部材に対して製造対象のカーペットのパイルに応じたパイル糸を確実に選択保持させることができ、また該糸保持部材を中央搬送手段に送り込んで交互に並列して支持させることができる。そのため、中央搬送手段を過度に長くしておく必要がなく、装置全体の設置スペースが少なくて済む。
【0021】
前記のパイル糸選択挿入手段は、使用する複数のパイル糸をそれぞれ個別に引き出し可能に保持して並列する導糸部を有し、かつ、選択された一つの導糸部を副搬送手段に支持された糸保持部材に対する挿入用位置に移動させることができる選択用糸保持手段と、選択された導糸部のパイル糸を前記糸保持部材の所定の糸保持部に挿入する糸挿入手段とを備えるものである。この場合、選択用糸保持手段の各導糸部に保持されているパイル糸を、それぞれ前記糸保持部材の糸保持部に対し直線状にして挿入し保持させる糸挿入手段、及び/又は、選択用糸保持手段の各導糸部に保持されているパイル糸を折曲状態にして該折曲部から前記糸保持部材の糸保持部に対し挿入し保持させる糸挿入手段を備えてなるものが好ましい。これにより、前記のパイル糸の保持状態を選択することにより、ループパイルとカットパイルを混在させることも可能になる。
【0022】
前記のパイル糸を直線状にして挿入する糸挿入手段としては、前記副搬送手段上の糸保持部材の上方において該糸保持部材の長手方向に対し直交する方向に並列して上下方向にパイル糸を挿通して保持する複数の導糸部を有し、選択したパイル糸の導糸部を挿入用位置に移動可能な選択用糸保持手段において、前記各導糸部の先端部にエア導入口が設けられ、該導糸部に保持されたパイル糸をエア導入により下方に送出して前記糸保持部材の糸保持部に挿入するように設けられてなるものとすることができる。
【0023】
また、パイル糸を折曲状態にして挿入する糸挿入手段としては、前記副搬送手段上の糸保持部材の上方において該糸保持部材の長手方向に並列してかつパイル糸を前記糸保持部材の上方を横切って水平に引き出し可能に保持する複数の導糸部を有し、選択したパイル糸の導糸部を挿入用位置に移動可能な選択用糸保持手段において、前記挿入用位置の導糸部から糸保持部材の所定の糸保持部の上方を横切って引き出したパイル糸を押下し折曲状態にして該折曲部から前記糸保持部に押し込むことができる押し込み部材を備えてなるものとすることができる。
【0024】
前記のカーペットの製造装置において、前記中央搬送手段の両側傍には、副搬送手段と、該副搬送手段上の糸保持部材に対してパイル糸を選択して並列状態に保持させるパイル糸選択挿入手段と、選択されたパイル糸を切断するパイル糸切断手段と、糸保持部材を前記中央搬送手段に送り込む送り込み手段とからなるパイル糸選択保持装置が、前記中央搬送手段の搬送方向に間隔をおいて複数組配置されてなるものとすることができる。
【発明の効果】
【0025】
上記した本発明のカーペットの製造方法及び製造装置によれば、1台の機械で、機械を停止することなく、ループパイルとカットパイル等のパイル形状の変更や組み合わせ、多色柄、パイルの横密度の変化等が容易に可能で、多種、多様なパイル柄の多品種のタイル型カーペット等のカーペットを効率よく製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明で使用するカーベト製造装置の1実施例を示す略示斜視図である。
【図2】同上の装置のパイル糸供給装置からのパイル糸の引き出し部分の断面説明図である。
【図3】同上の装置の接着工程部における接着状態の略示断面説明図である。
【図4】糸保持部材と中央搬送手段の支持部材の支持構造の概略を示す一部の略示斜視図である。
【図5A】中央搬送手段に糸保持部材を支持させた状態の一部の略示側面図である。
【図5B】同上の一部を断面した拡大側面図である。
【図6】一つのパイル糸選択保持装置の部分の一部を省略した側面図である。
【図7】同上のパイル糸選択保持装置の部分の一部を省略した正面図である。
【図8A】同上のパイル糸選択保持装置において、パイル糸を直線状にして挿入する糸挿入手段を含むパイル糸選択挿入手段部分の略示側面説明図である。
【図8B】同上のパイル糸選択挿入手段の一部の断面図である。
【図9】同上のパイル糸の挿入状態の説明図(A)(B)である。
【図10】(A)〜(D)のそれぞれ、同上のパイル糸選択保持装置において、パイル糸を折曲状態にして挿入する糸挿入手段を含むパイル糸選択挿入手段部分によるパイル糸の挿入状態の説明図である。
【図11】上記のパイル糸選択挿入手段によりパイル糸を挿入保持した糸保持部材を中央搬送手段により支持して搬送する状態の一部の側面図(A)(B)(C)である。
【図12】(A)〜(G)のそれぞれ、両側のパイル糸選択保持装置における糸保持部材に対するパイル糸の選択保持作用と、中央搬送手段への糸保持部材の送り込み及び受け入れ作用状態の平面説明図である。
【図13】中央搬送手段の搬送方向の前後2個所で糸保持部材に対するパイル糸の選択保持動作を行う場合のパイル糸の選択保持作用と、糸保持部材の送り込み及び受け入れ作用状態の平面説明図である。
【図14】(A)〜(D)のそれぞれ、糸保持部材におけるパイル糸の保持状態の変更例を示す略示平面図である。
【図15】(A)〜(F)のそれぞれ、本発明により製造されるカーペットを例示する一部の断面図である。
【図16】(A)(B)のそれぞれ、パイル密度を異にするカーペットの一部の略示斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明のカーペットの製造方法及び製造装置の実施の形態を図面に示す実施例に基づいて説明する。図の実施例は、シート状基材にパイル糸を接着して植設してなる図16(A)(B)に例示するタイル型カーペット等のカーペットを製造する場合を示している。
【0028】
図中の符号1はカーペット製造のためのパイル糸供給装置、2a,2bは前記パイル糸供給装置1を中間にしてその左右両側に並列に配されたカーペット製造用のベルトコンベア等よりなる第1と第2の基材搬送手段、3a、3bは前記パイル糸供給装置1の前方において前記第1の基材搬送手段2aと第2の基材搬送手段2bに対応して該基材搬送手段2a,2bの送行方向とは直交する方向に移動可能に設けられた植設用の第1と第2の掴持移動手段である。
【0029】
本願発明は、前記パイル糸供給装置1の前部において、第1と第2の基材搬送手段2a,2bで製造するカーペットCのそれぞれの幅方向の単位パイル列のパイルに対応する糸配列で横列に保持されて交互に供給されるパイル糸Pを、前記第1と第2の掴持移動手段3a,3bにより交互に並列状態のまま掴持して前記パイル糸供給装置1から引き出し、前記第1と第2の基材搬送手段2a,2bによるシート状基材C1の送行部分における植設工程部4の上方位置に移動させ、それぞれ前記シート状基材C1の送行停止中に、各パイル糸Pをシート状基材C1の表面に接着し植設するように設けられている。
【0030】
前記左右両側の第1の基材搬送手段2aと第2の基材搬送手段2bは、それぞれ製造対象のタイル型のカーペットCの四角形のシート状基材C1を上載して、後述する接着動作に対応してカーペット幅方向の一組の単位パイル列、すなわち1回の接着作用で接着される単位パイル列に相当する寸法づつ間欠送行させるように設けられている。この第1と第2の基材搬送手段2a,2bに対するシート状基材C1の供給は、コンベア等の送り出し手段を利用して機械的に1枚づつ順次供給される。第1と第2の基材搬送手段2a,2bは、それぞれ供給されるシート状基材C1を位置ずれなく一定間隔に並列して保持できるように設けられる。
【0031】
前記シート状基材C1は、ゴムあるいはポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂等の合成樹脂あるいはゴム等のバッキング材等により、その素材に応じた適当な成形手段によって正方形や長方形等の所定の形状、厚み、大きさに成形されたものよりなる。このシート状基材C1として、前記のほかに、不織布等のシート状物を使用することもできる。
【0032】
前記シート状基材C1の表面には、基材搬送手段2a,2b上にシート状基材C1を供給するまでに接着剤Bを塗布しておく。第1と第2の基材搬送手段2a,2bのそれぞれの接着工程部4に至るまでの搬送途中においてシート状基材C1の表面に接着剤を塗布することもできる。必ずしも必要ではないが、接着工程部4の後続には乾燥手段およびシャーリング加工部等の製造上の必要な工程を設けておくことができる。
【0033】
第1と第2の基材搬送手段2a,2bの各接着工程部4には、それぞれ該基材搬送手段2a,2bを横切って配され、前記第1及び第2の掴持移動手段3a,3bにより保持されてそれぞれの接着工程部4に送られるパイル糸Pをシート状基材C1の表面に押圧し接着するための押圧手段5が設けられている。図3はパイル糸Pを前記押圧手段5により押圧してシート状基材C1に接着する状態の例を示している。6は2枚一組の押圧用のガイド部材である。
【0034】
前記第1の掴持移動手段3aは、前記パイル糸供給装置1の前部に対向する位置と第1の基材搬送手段2aの接着工程部4の上方位置との間で、また第2の掴持移動手段3bは、前記パイル糸供給装置1の前部に対向する位置と第2の基材搬送手段2bの接着工程部4の上方位置との間でそれぞれ移動可能に支持されている。特に、前記第1と第2の掴持移動手段3a,3bは、交互に前記パイル糸供給装置1との対向位置に移動し、次に第1の基材搬送手段2a又は第2の基材搬送手段2bの接着工程部4に移動されるように設けられている。
【0035】
前記第1及び第2の掴持移動手段3a,3bは、それぞれ前記パイル糸供給装置1の幅に対応する長さを持ちかつエアーシリンダー等の手段71により掴持動作を行うグリッパー7を有し、該グリッパー7が、それぞれ支持基材8上においてエアーシリンダー等の進退手段72によりパイル糸供給装置1と対向する位置において該パイル糸供給装置1に対して遠近方向に移動可能に支持され、該パイル糸供給装置1の引き出し用位置に保持されているパイル糸Pを掴持して引き出せるように設けられている。さらに、前記掴持移動手段3a,3bの移動手段として、それぞれの支持基材8が第1及び第2の基材搬送手段2a,2bを横切るように跨って左右方向に配されたガイドレール81に沿って移動可能に支持されるとともに、両支持基材8がサーボモータ91によるネジ軸9の回転により左右方向に移動できるように設けられている。これにより、第1と第2の掴持移動手段3a,3bの一方がパイル糸供給装置1と対向位置しているとき、他方が第1の基材搬送手段2a又は2bの接着工程部4に交互に位置するように設けられている。
【0036】
そして、前記パイル糸供給装置1は、基本的に、製造するカーペットCの幅方向の一組の単位パイル列、すなわち1回の接着作用で接着される単位パイル列毎のパイルに対応するパイル糸Pを、該パイル糸を一方向に引出し可能に保持できる多数の糸保持部11を有する糸保持部材10a,10bにより、糸配列で横列に引き揃えて保持した状態で引き出し位置に供給するように設けられてなる。特に、パイル糸供給装置1の両側に並列して、それぞれ接着工程部4を含む第1と第2の基材搬送手段2a,2bが設けられる場合は、図1及び図2のように、第1の基材搬送手段2aで製造するカーペットCの各単位パイル列毎の糸配列に対応するパイル糸Pを並列状態に保持した第1の糸保持部材10aと、第2の基材搬送手段2bで製造するカーペットCの各単位パイル列毎の糸配列に対応したパイル糸Pを並列状態に保持した第2の糸保持部材10bとが、交互に並列して順次前部の前記掴持移動手段3a,3bによる所定の引き出し位置に供給するように設けられる。
【0037】
前記の第1及び第2の糸保持部材10a,10bは、それぞれ製造対象のカーペットの横幅に対応する長さに渡って所要数の糸保持部11が形成されてなり、各糸保持部11の構造および配列間隔(ピッチ)等は製造対象のカーペットに応じて適宜設定される。第1及び第2の糸保持部材10a,10bは、図に示すように長手方向に、カーペット幅方向の単位パイル列のパイル間隔に対応する一定間隔毎にパイル糸Pを通して保持するための保持孔12が設けられるとともに、該保持孔内部に該保持孔12に通されたパイル糸Pを保持するためのバネ手段13が設けられている。前記保持孔12は、製造しようとするカーペットのパイル形状に応じて、前記パイル糸Pを一端部側から直線状(I字状)に通して保持できるように形成しておくことも、またパイル糸Pを中央部で折曲状態にして該折曲部側から通して保持できるように形成しておくこともできるが、実施上は、前記双方の保持形態に適応できるように形成しておくのが好ましい。
【0038】
パイル糸供給装置1は、前記第1及び第2の基材搬送手段2a,2bと平行に配され、前記第1及び第2の糸保持部材10a,10bを搬送方向の一定間隔毎に支持して、かつ該糸保持部材10a,10bを前記一定間隔毎に間欠送行させて前記引き出し用位置に搬送する無端のコンベア等よりなる中央搬送手段15を備えている。さらに、この中央搬送手段15の側傍には、中央搬送手段15により搬送される空の糸保持部材10a,10bを受け入れ、該糸保持部材10a,10bの各糸保持部11に対して製造しようとするカーペットの幅方向の単位パイル列毎のパイルに対応したパイル糸Pを選択して並列状態に保持させた後、該糸保持部材10a,10bを前記中央搬送手段15に送り込むように設けられたパイル糸選択保持装置を備えている。
【0039】
図示する実施例の場合は、前記パイル糸供給装置1の中央搬送手段15の両側傍の一方側(パイル糸供給装置の前方より見て右側)に、前記中央搬送手段15から側方に送り出される空の第1の糸保持部材10aを受け入れて、第1の基材搬送手段2aで製造するカーペットの単位パイル列毎に対応するパイル糸Pを該第1の糸保持部材10aに保持させる第1のパイル糸選択保持装置20aが、また他方側(パイル糸供給装置の前方より見て左側)に、前記中央搬送手段15から側方に送り出される空の第2の糸保持部材10bを受け入れて、第2の基材搬送手段2bで製造するカーペットの単位パイル列毎に対応するパイル糸Pを該第2の糸保持部材10bに保持させる第2のパイル糸選択保持装置20bが配置されている。
【0040】
前記中央搬送手段15は、図1のように、両側部で前後のスプロケット14に掛架されて間欠的に無端回動する左右両側部のチェーン16に、前記第1と第2の糸保持部材10a,10bの支持部となる平行な2枚一組の支持部材17が搬送方向の一定間隔毎に配設され、該支持部材17,17間に側方から嵌入する前記第1と第2の糸保持部材10a,10bを抜き差し可能に支持できるように設けられており、前記のように、第1の糸保持部材10aと第2の糸保持部材10bとを一定間隔に交互に支持して前部の引き出し用位置に搬送できるように構成されている。
【0041】
前記支持部材17による第1及び第2の糸保持部材10a,10bの支持構造として、図示する場合、前記両糸保持部材10a,10bのそれぞれの両側面に長手方向に延びる係合凸縁18が突設される一方、前記2枚一組の支持部材17の内側に前記係合凸縁18が摺動可能に嵌合できる係合溝19が形成されており、中央搬送手段15の長手方向に抜き差し自在に嵌合して係合状態で支持できるように構成されている。前記係合溝19の内部には、例えばバネ手段23により内方向きに付勢されたホール状等の凸部22が設けられ、係合溝19に嵌入する係合凸縁18に対し弾力的な押さえ作用を果たし遊動を規制するようになっている。前記糸保持部材10a,10bの所定の嵌合位置で、前記凸部22が係合凸縁18に有する凹部(図示せず)に嵌合することで位置決めできるように設けることもできる。
【0042】
前記第1のパイル糸選択保持装置20a及び第2のパイル糸選択保持装置20bは、それぞれ後述するように、所定のパイル糸Pを選択し保持した第1の糸保持部材10a及び第2の糸保持部材10bを、前記中央搬送手段15の両側方から該中央搬送手段15において一定間隔に並列する前記支持部材17による支持部に送り込むように構成されている。これにより、前記中央搬送手段15により前記第1及び第2の糸保持部材10a,10bを交互に並列して支持した状態で、順次前部の所定の引き出し位置に間欠送行して交互に搬送できるようになっている。
【0043】
前記第1及び第2のパイル糸選択保持装置20a,20bは、それぞれ基本的な構成として、前記中央搬送手段15から側方に送り出される空の第1及び第2の糸保持部材10a,10bを支持して前記中央搬送手段15の間欠送行に対応して、これと平行に同方向又は逆方向に間欠送行する無端のコンベア等よりなる第1及び第2の副搬送手段21a,21bを備えている。
【0044】
前記第1及び第2の副搬送手段21a,21bは、それぞれ両側部で前後のスプロケット24に掛架されて無端回動するチェーン25に、前記第1と第2の糸保持部材10a,10bの支持部となる平行な2枚一組の支持部材26が搬送方向の一定間隔に配設され、該支持部材26,26間に前記中央搬送手段15との対向側から前記第1と第2の糸保持部材10a,10bを抜き差し可能に嵌合して支持できるように設けられている。前記支持部材26による支持構造、すなわち両糸保持部材10a,10bの係合凸縁18と係合溝27とによる支持構造は、前記中央搬送手段15の場合と同様であるので、ここでの詳しい説明は省略する。
【0045】
前記第1及び第2のパイル糸選択保持装置20a,20bは、前記第1及び第2の副搬送手段21a,21bの送行停止中に、引き出し可能に保持された多数のパイル糸の中から、製造対象のカーペットの幅方向の単位パイル列毎のパイルの糸配列に対応するパイル糸Pを選択して、前記第1及び第2の糸保持部材10a,10bに並列状態に保持させるパイル糸選択挿入手段30と、これに付属して選択した前記パイル糸Pを所定長さに切断するパイル糸切断手段40を備えている。さらに、中央搬送手段15及び副搬送手段21a,21bの送行停止中に、パイル糸Pを保持した前記第1及び第2の糸保持部材10a,10bを中央搬送手段15に送り込むための送り込み手段を備えている。
【0046】
前記第1及び第2のパイル糸選択保持装置20a,20bは、基本的に左右が反対の配置で同様の構成を備えているので、前記パイル糸選択挿入手段30及びパイル糸切断手段40の構造の具体例について、第1のパイル糸選択保持装置20aを主にして説明する。
【0047】
第1のパイル糸選択保持装置20aにおいて、図6及び図7のように、前記パイル糸選択挿入手段30は、使用する複数本(数本〜数十本)のパイル糸Pをそれぞれ個別に引き出し可能に保持して並列する導糸部31を有し、かつ、選択された一つの導糸部31を第1の副搬送手段21aに支持された糸保持部材10aに対する挿入用位置に移動させることができる選択用糸保持手段32と、選択された導糸部31のパイル糸Pを前記副搬送手段21aに支持された糸保持部材10aの所定の糸保持部11に挿入する糸挿入手段33とを備えたものからなる。
【0048】
図示する実施例の場合、前記パイル糸選択挿入手段30として、選択用糸保持手段32−1の各導糸部31に保持されているパイル糸Pを、それぞれ前記糸保持部材10aの糸保持部11に対し直線状(I字状)にして挿入し保持させる糸挿入手段33−1と、選択用糸保持手段32−2の各導糸部31に保持されているパイル糸Pを折曲状態(U字状)にして該折曲部から前記糸保持部材10aの糸保持部11に対し挿入し保持させる糸挿入手段33−2とが併設されており、例えば、前記直線状の糸挿入手段33−1はカットパイルのみを形成するのに使用され、折曲状態の糸挿入手段33−2はループパイルあるいはループカット混在パイル形成用として使用されるようになっている。もちろん、いずれか一方の糸挿入手段33−1又は33−2を備えておくだけでも実施できるが、多様なパイル形状のカーペットを得る上では、実施例のように双方の糸挿入手段33−1,33−2を設けておくのがよい。
【0049】
パイル糸Pを直線状にして挿入する糸挿入手段33−1は、図8A、図8Bのように、前記第1の副搬送手段21aに支持された第1の糸保持部材10aの上方において、該糸保持部材10aの長手方向に対し直交する方向に並列して上下方向にパイル糸Pを挿通して保持する複数の導糸部31を有し、選択したパイル糸Pの導糸部31を挿入用位置に移動可能な選択用糸保持手段32−1において、前記各導糸部31の先端部34にエア導入口35が設けられており、図9(A)(B)のように、該エア導入口35よりエアーを導入して下方向きに流送させ吹き出させることにより、該導糸部31に保持されたパイル糸Pをエア導入圧を利用して下方に送出し、下方に位置する前記糸保持部材10aの糸保持部11に対しパイル糸Pを真っ直ぐ伸ばして直線状に挿入できるように構成される。
【0050】
前記の選択用糸保持手段32−1は、任意の導糸部31を選択して挿入用位置に移動させるために、該選択用糸保持手段32−1の取り付け部材36が、前記導糸部31の並列方向すなわち前記糸保持部材10aの長手方向に対し直交する方向に移動可能に支持されるとともに、該取り付け部材36の一部にサーボモータ等のモータ37の作動により回転するネジ軸38が螺合して、該ネジ軸38の回転により移動可能に設けられており、前記モータ37の作動を制御することにより、任意の導糸部31を前記糸保持部材10aの所定の糸保持部11の上方に対応位置させることができるように構成されている。これにより、各導糸部31毎に保持されたパイル糸Pを、製造しようとするカーペットの単位パイル列のパイルに応じて適宜選択して前記糸保持部材10aの所定の糸保持部11に対し挿入保持させることができるようになっている。符号39は前記ネジ軸38及び取り付け部材36を介して選択用糸保持手段32−1を支持する支持部材である。
【0051】
符号40−1は、前記のようにして選択され糸保持部材10Aの糸保持部11に挿入されたパイル糸Pを所定長さに切断するように設けたパイル糸切断手段であり、前記パイル糸Pの挿入作用に対応して切断動作を行うように設けられている。
【0052】
また、パイル糸Pを折曲状態にして挿入する糸挿入手段33−2は、図6、図7のように、前記副搬送手段21aに支持された糸保持部材10aの上方において該糸保持部材10aの長手方向に沿って横向きに並列して、かつパイル糸Pを前記糸保持部材10aの長手方向に直交する方向に水平に引き出し可能に保持する複数の導糸部31を有し、さらに選択したパイル糸Pの導糸部31を挿入用位置、すなわちパイル糸を挿入しようとしている所定の糸保持部11に対しパイル糸Pの引き出し方向に並列する挿入用位置に移動可能に設けられた選択用糸保持手段32−2において、前記挿入用位置の導糸部31からパイル糸Pを掴持して前記糸保持部材10aの所定の糸保持部11の上方を横切って水平方向に引き出すグリッパー41と、引き出したパイル糸Pの一部個所を押下する棒状の押し込み部材41を備えており、図10(A)〜(D)のように前記押し込み部材42による押下作用により、引き出されたパイル糸PをU字状の折曲状態にして該折曲部p1から前記糸保持部11に押し込んで保持させることができるようになっている。
【0053】
前記選択用糸保持手段32−2は、任意の導糸部31を選択して前記挿入用位置に移動させるために、該選択用糸保持手段32−2の上面に有するラック43が、サーボモータ等のモータ44の出力軸上の歯車45と噛み合い、モータ44の作動により糸保持部材10の長手方向に移動するように設けられており、モータ43による作動を制御することにより、選択した任意の導糸部31を所定の挿入用位置に移動させることができるようになっている。符号46は前記選択用糸保持手段32−2及びサーボモータ44等を支持する支持板である。
【0054】
前記グリッパー41は、エアーシリンダー等の手段47により掴持動作を行うように設けられている。また、前記グリッパー41は、その基部材48が支持板49に水平に保持されて前記挿入用位置の導糸部31に対向して進退移動可能に設けられている。前記支持板49に備えるサーボモータ50の出力軸上の歯車51が、前記グリッパー41の基部材48に有するラック52と噛み合い、前記モータ50の作動により、挿入用位置の導糸部31に対向して進退移動するように設けられている。これにより前記パイル糸Pの所定の長さを引き出せるようになっている。
【0055】
前記押し込み部材42は、これと一体のラック53がサーボモータ54の出力軸上の歯車55と噛み合い、該モータ54の作動により上下動し、前記パイル糸の押し込み動作を行うようになっている。符号56は前記押し込み部材42及びサーボモータ等のモータ54を支持する支持板である。
【0056】
前記支持板46、支持板49及び支持板56は、それぞれ上方の支持用テーブル57に固定されて垂設されている。特に図の場合、前記選択用糸保持手段32−2を支持する支持板46の上端部が、前記テーブル57に対し前後方向に位置調整可能に係合連結されており、これによって引き出されるパイル糸Pの長さを調整できるようになっている。符号65は前記支持板46をラック機構66等を介して位置調整するための駆動手段としてのモータである。
【0057】
符号40−2は、前記のように選択されグリッパー41により掴持されて引き出されるパイル糸Pを所定長さに切断するように設けたパイル糸切断手段であり、通常、前記パイル糸Pの引き出し作用に対応して押し込み部材42による押し込みまでに、あるいは押し込みとほぼ同時に切断作用するように設けられる。
【0058】
前記支持用テーブル57は、一部を図7で示したフレーム58に対して前記副搬送手段20aの幅方向に移動可能に支持されるとともに、サーボモータあるいはパルスモータ等のピッチ送り用のモータ59により回転するネジ軸61に一部が螺合しており、モータ59の作動による該ネジ軸61の回転により、前記副搬送手段20aの幅方向に移動できるように設けられており、特に、前記パイル糸選択挿入手段30の糸挿入手段33−1及び/又は33−2によるパイル糸Pの1回の挿入作用毎に、前記糸保持部材10aの各糸保持部11の配置ピッチに相当する寸法ずつ送り移動できるように設けられている。
【0059】
すなわち、前記パイル糸選択挿入手段30の糸挿入手段33−1及び/又は33−2によるパイル糸Pの挿入を、糸保持部材10aに有する各糸保持部11に対して一端部の糸保持部11から順に行うので、前記糸保持部11に対する1回のパイル糸Pの挿入作用毎に、前記糸挿入手段33−1及び/又は33−2の位置を、各糸保持部11の配置ピッチ分ずつずらせる必要があり、このため、前記支持用テーブル57を糸保持部11の配置ピッチ分ずつ送り移動できるようになっている。
【0060】
図中の符号60aは、パイル糸選択保持装置20aにおいて、パイル糸Pを選択し保持した前記第1の糸保持部材10aを前記中央搬送手段15に再び送り込むための送り込み手段であり、図のようにエアーシリンダー62を利用して構成されている。すなわちエアーシリンダー62により突出する押動部材63が、副搬送手段21aに支持部材26により支持されている前記糸保持部材10aを押動して、中央搬送手段15の支持部材17による支持部に送り込むように設けられている。
【0061】
符号67は、前記選択用糸保持手段32−1を支持する支持部材39を前記支持用テーブル57に対して位置調整するためのモータであり、該モータ67の作動により、ラック機構68等を介して前記支持部材39を支持用テーブル57に対し副搬送手段21aの幅方向に移動させ相対位置を調整することにより、選択用糸保持手段32−1の糸挿入手段33−1と選択用糸保持手段32−2の糸挿入手段33−2との間隔を変更できるようになっている。すなわち、糸保持部材10aが、各糸保持部11の配置ピッチを異にするものに変更されたときに、これに対応して、前記糸挿入手段33−1と糸挿入手段33−2の間隔を調整できるようになっている。
【0062】
なお、第2のパイル糸選択保持部20bについては、具体的な図示説明は省略するが、基本的に、副搬送主手段21bのほかに、上記の第1のパイル糸選択保持装置20aと左右が反対の配置で同様の構成を備え、上記と同様に、中央搬送手段15から送り出される空の第2の糸保持部材10bに対するパイル糸の選択保持作用を行うように構成されている。例えば、中央搬送手段15から送り出される空の第2の糸保持部材10bに対してパイル糸Pを選択し保持させるためのパイル糸選択挿入手段30の構成、すなわち選択用糸保持手段32の構成、2種類の糸挿入手段33−1及び33−2の各構成、およびパイル糸切断手段40−1,40−2と同様の構成を左右が反対の配置で備え、さらにこれら各手段の支持構造も同様に備えている。
【0063】
さらに、この第2のパイル糸選択保持装置20bは、パイル糸Pを選択し保持した前記第2の糸保持部材10bを前記中央搬送手段15に再び送り込むための送り込み手段60bが設けられている。この送り込み手段60bも、エアーシリンダー62により突出する押動部材63が、該副搬送手段21bの支持部材26により支持されている第2の糸保持部材10bを押動して、中央搬送手段15の支持部材17による支持部に送り込むようになっている。
【0064】
前記第1のパイル糸選択保持装置20aと第2のパイル糸選択保持装置20bにおける前記中央搬送手段15からの空の第1及び第2の糸保持部材10a,10bの受け入れ位置と、パイル糸Pを選択保持させた第1及び第2の糸保持部材10a,10bの送り込み手段60a,60bによる送り込み位置とは、中央搬送手段15の搬送方向にずれた位置に設定され、中央搬送手段15により前記糸保持部材10a,10bを交互に並列して支持させることができるようになっている。
【0065】
例えば、図示する実施例のように、第1と第2のパイル糸選択保持部20a,20bの一方側の空の糸保持部材10a,10bの受け入れ位置が、他方側のパイル糸を選択保持した後の糸保持部材10b,10aの送り込み手段60b,60aによる送り込み位置に対応するように設定され、他方側からの糸保持部材10a,10bの送り込み作用によって中央搬送手段15に支持されている空の糸保持部材10a,10bを他方の副搬送手段21a,21bに送り出すように設定することができる。これによって、前記糸保持部材10a,10bの受け入れ及び送り込みの機構を簡略化できる。
【0066】
また、前記送り込み手段60b,60aにより、前記糸保持部材10a,10bを中央搬送手段15の所定位置に送り込めるようにした場合、この送り込みによって他方側に送出される糸保持部材10b,10aはそれぞれ副搬送手段21a,21bの所定の支持位置までは送り出せないので、ある程度送り出されたときに、該糸保持部材10a,10bの端部に係止して送り出しを補助するエアーシリンダー等を利用した補助手段(図12(C)に符号64で略示する)を設け、副搬送手段21a,21b上の前記糸保持部材10a,10bの位置を一定にするのが望ましい。
【0067】
前記の第1と第2のパイル糸選択保持装置20a,20bにおけるパイル糸Pの選択保持動作、及び、第1と第2の糸保持部材10a,10bの送り出しと受け入れの各動作は、中央搬送手段15の間欠送行作用に関連して、パイル糸Pを選択保持した糸保持部材10a,10bを中央搬送手段15の支持部材17による支持部に交互に並列して支持させることができるように設定される。
【0068】
例えば、中央搬送手段15の間欠送行の1ピッチ分の間隔をおいて、前記第1及び第2の糸保持部材10a,10bの送り込み位置及び受け入れ位置が設定されている場合においては、中央搬送手段15の間欠送行の2ピッチ分の搬送移動毎に、第1及び第2のパイル糸選択保持装置20a,20bにおいて1回のパイル糸Pの選択保持及び糸保持部材10a,10bの送り出しと受け入れの各動作を行うように設定される。この動作の具体例を図12(A)〜図12(G)に基づいて説明する。
【0069】
図12(A)は、左右の第1及び第2のパイル糸選択保持装置20a,20bにおいて、それぞれ第1及び第2の副搬送手段21a,21b上の支持部材26による支持部のうちの送り込み位置に支持されている糸保持部材10a,10bは、それぞれ各糸保持部11に、第1及び第2の基材搬送手段2a,2bにおいて製造するカーペットそれぞれの単位パイル列に対応したパイル糸Pの選択保持を完了した状態であり、受け入れ位置の支持部は空になっている。また、中央搬送手段15における支持部材17による支持部は、前記パイル糸選択保持装置20a,20bにおける糸保持部材10a,10bの送り込み位置と対応する位置に、糸保持部11にパイル糸Pを保持していない空の糸保持部材10a,10bが搬送されてきている。
【0070】
前記状態における搬送停止中において、前記送り込み位置に備える送り込み手段60a,60bの作動によりエアシリンダー62の押動部材63が進出し、前記パイル糸Pを選択保持した第1及び第2の糸保持部材10a,10bを中央搬送手段15の支持部材17による支持部に送り込むとともに、これと同時に,中央搬送手段15の前記支持部に支持されていた空の糸保持部材10a,10bを他方の副搬送手段21b,21a上の受け入れ位置に送り出す(図12(B))。送り出される糸保持部材10a,10bは、図12(C)のように、最終的に補助手段64により第1及び第2の副搬送手段21a,21bのそれぞれ所定の支持位置に揃えるようにして受け入れる。この後、前記送り込み手段60a,60bの押動部材63を元に戻す(図12(D))。
【0071】
次に、図12(E)のように、中央搬送手段15を間欠送行の1ピッチ分を搬送移動させるとともに、これに対応して、前記第1及び第2の副搬送手段21a,21bについても間欠送行の1ピッチ分搬送移動させる。特に、第1及び第2の副搬送手段21a,21bの一方、例えば左側の第2の副搬送手段21bは中央搬送手段15と同方向に1ピッチ分搬送させ、また右側の第1の副搬送手段21aは前記とは逆方向に、すなわち中央搬送手段15の搬送方向とは反対方向に1ピッチ分搬送させて、それぞれ前記のように受け入れた空の糸保持部材10a,10bをそれぞれ送り込み位置に移動し位置させる。
【0072】
そして、前記副搬送手段21a,21bによる搬送を停止している間に、両パイル糸選択保持装置20a,20bでは、上述したようにパイル糸選択挿入手段等を動作させて、第1及び第2の糸保持部材10a,10bの各糸保持部11に、それぞれ製造しようとするカーペットの単位列毎のパイルに対応するパイル糸Pを順次選択保持させる(図12(F))。
【0073】
一方、前記中央搬送手段15は、図12(F)及び図12(G)のように、前記のパイル糸の選択保持動作を行っている間、すなわち前記第1及び第2の副搬送手段21a,21bの1回の搬送停止中に、間欠送行の1ピッチ分の搬送移動を2回行う。すなわち、前記第1及び第2の副搬送手段21a,21bがそれぞれ同時に1回の搬送を行う間に、前記中央搬送手段15は2回の間欠送行による搬送を行う。
【0074】
そして、前記中央搬送手段15の1回の搬送停止毎に、前部の引き出し用位置に交互に搬送される前記第1の糸保持部材10aのパイル糸P、又は第2の糸保持部材10bのパイル糸Pを、第1の掴持移動手段3a又は第2の掴持移動手段3bによりそれぞれ交互に掴持して引き出し、第1の基材搬送手段2aの接着工程部4又は第2の基材搬送手段2bの接着工程部4に交互に移動させて、それぞれシート状基材C1に対する接着、植設動作を1回ずつ行う。
【0075】
また、この間に、前記第1及び第2の副搬送手段21a,21bの送り込み位置に位置している第1及び第2の糸保持部材10a,10bに対するパイル糸Pの選択保持動作が完了している(図12(G))。
【0076】
したがって、前記の状態において、前記図12(A)からの動作を同様に繰り返して、第1及び第2の糸保持部材10a,10bに対し、それぞれ第1の基材搬送手段2aと第2の基材搬送手段2bで製造するカーペットの単位パイル列毎のパイルに対応するパイル糸Pを順次選択保持させて、中央搬送手段15に交互に並列させるように送り込んで支持させ、該中央搬送手段15の前部の引き出し用位置に間欠的に搬送することができる。
【0077】
なお、図12(A)〜図12(G)の例では、第1及び第2のパイル糸選択保持装置20a,20bにおいて、それぞれ第1及び第2の糸保持部材10a,10bに対するパイル糸Pの一連の選択保持動作を一個所で行うこととして、一組の前記糸保持部材10a,10bの送り込み位置と受け入れ位置を設定した場合について説明したが、本発明は、図1の実施例に示すように、中央搬送手段15の搬送方向の前後に間隔をおいて2個所でそれぞれ前記糸保持部材10a,10bに対するパイル糸Pの選択保持動作を行うようにして、糸保持部材10a,10bの送り込み位置と受け入れ位置を二組設定して実施することができる。
【0078】
この場合、前部側の一組の糸地保持部材10a,10bの送り込み位置と受け入れ位置との個所、後部側の一組の糸地保持部材10a,10bの送り込み位置と受け入れ位置の個所には、それぞれ、上述したパイル糸選択挿入手段、パイル糸切断手段、送り込み手段等のパイル糸選択保持装置としての構成を備え、上記と同様に、糸地保持部材10a,10bに対する一連のパイル糸選択保持動作を行うことができるように構成される。第1及び第2の副搬送手段21a,21bについては、図1のように前後2個所のパイル糸選択保持装置の部分で兼用することも、また前後に個別に設けることもできる。
【0079】
このようにして実施する場合、図13に示すように、前部側の一組の送り込み位置と受け入れ位置との個所と、後部側の一組の送り込み位置と受け入れ位置の個所では、それぞれ中央搬送手段15に一定間隔毎に交互に支持されて搬送される糸保持部材の交互に二つおきの第1と第2の糸支持部材10a,10bについて、上記と同様に、第1及び第2の糸保持部材10a,10bの受け入れ、第1及び第2の副搬送手段21a,21bの間欠搬送、送り込み位置でのパイル糸の選択保持、中央搬送手段15への送り込みの各動作を行う、特に、前部側で二つおきの糸保持部材10a,10bの受け入れ及び送り込みを行い、前部側で二つおきの残りの糸保持部材10a,10bの受け入れ及び送り込みを行うようにする。
【0080】
そのため、中央搬送手段15の4回の間欠搬送毎に、前記第1及び第2の副搬送手段21a,21bが1回の搬送を行い、前後各2個所のそれぞれの糸保持部材10a,10bの送り込み及び受け入れ位置の個所で、それぞれ一つの糸保持部材10a,10bに対する単位パイル列の全てのパイルに対応する各パイル糸の選択保持、及び選択保持後の該糸保持部材10a,10bの送り込みを1回行うように設定される。
【0081】
すなわち、前後それぞれの送り込み及び受け入れ位置ので個所で、各一つの糸保持部材10a,10bに対する単位パイル列の全てのパイルに対応するパイル糸の選択保持動作を行う間に、前記中央搬送手段15は4回の間欠送行による搬送を行い、第1と第2の各糸保持部材10a,10bをそれぞれ交互に2回ずつ前部の引き出し用位置に搬送できることになる。換言すれば、各一つの糸保持部材10a,10bに対するパイル糸の選択保持動作を行う間に、中央搬送手段15の前部の引き出し用位置にそれぞれ交互に搬送される第1の糸保持部材10aと第2の糸保持部材10bのパイル糸Pとを、それぞれ交互に第1の掴持移動手段3a又は第2の掴持移動手段3bにより掴持して引き出し、第1の基材搬送手段2a又は第2の基材搬送手段2bの接着工程部4に交互に移動させて、接着動作を2回行えることになる。そのため、カーペットの製造効率を高めることができる。
【0082】
図示していないが、前記中央搬送手段15の搬送方向に間隔をおいて3個所以上の個所に、前記同様の構成のパイル糸選択保持機構を備える糸保持部材10a,10bの送り込み位置と受け入れ位置を設定して実施することも可能であり、この場合、各個所でのパイル糸の選択保持動作を中央搬送手段の間欠送行に対して余裕をもって行え、カーペットの製造効率をさらに高めることができる。
【0083】
上記した実施例のカーペットの製造装置を用いて、タイル型カーペット等のカーペットCを製造する場合、パイル糸供給装置1を中間にして、その両側に併設されている第1と第2の基材搬送手段2a,2bに製造しようとするカーペットのシート状基材C1を、接着工程部4での1回のパイル糸の接着動作毎に単位パイル列に相当する間隔分ずつ間欠送行させる。
【0084】
これと同時に、パイル糸供給装置1における中央搬送手段15の両側傍に備える第1及び第2のパイル糸選択保持装置20a,20bにおいて、それぞれ上記したように、間欠送行する前記中央搬送手段15により交互に支持されて搬送される空の第1及び第2の糸保持部材10a,10bを受け入れ、第1のパイル糸選択保持装置20aでは、前記第1の基材搬送手段2aで製造するカーペットの幅方向の単位パイル列毎に対応するパイル糸Pを第1の糸保持部材10aに選択して保持させ、また第2のパイル糸選択保持装置20では、第2基材搬送手段2bで製造するカーペットの単位パイル列毎に対応するパイル糸Pを第2の糸保持部材10bに選択して保持させて、再度中央搬送手段15に送り込むことを、中央搬送手段15による間欠送行による搬送作用に対応して繰り返し、該中央搬送手段15により前記第1の糸保持部材10aと第2の糸保持部材10bとを交互に支持して、前部の第1と第2の掴持移動手段3a、3bによる引き出し用位置に順次交互に搬送する。
【0085】
前記引き出し用位置においては、交互に間欠的に搬送される前記第1の糸保持部材10aに保持されているパイル糸Pと、第2の糸保持部材10bに保持されているパイル糸Pを、それぞれ別の第1の掴持移動手段3aと第2の掴持移動手段3bにより交互に掴持して引き出し、第1の基材搬送手段2aにおける接着工程部4と第2の基材搬送手段2bの接着工程部4とに交互に移動させ、第1と第2の基材搬送手段2a,2bにより搬送されるシート状基材C1の表面に前記パイル糸Pを接着し植設する。これにより、第1及び第2の糸保持部材10a,10bに対し、製造対象のカーペット幅方向の単位パイル列毎のパイルに応じたパイル糸を選択し保持させておくことにより、第1及び第2の基材搬送手段2a,2bのそれぞれにおいて、所望のパイル柄、パイル形状のカーペットを効率よく得ることができる。
【0086】
特に、前記糸保持部材10a,10bに選択し保持させるパイル糸Pの色や保持形態を適宜設定することにより、多色柄等の任意のパイル柄のカーペット、カットパイルやループパイル等の任意のパイル形状のカーペットを得ることができ、多品種のカーペットCの製造が可能になる。
【0087】
例えば、前記パイル糸選択保持装置20a,20bにおいて、パイル糸選択挿入手段30として上記したように二組の糸挿入手段33−1,33−2を選択的に使用して、前記糸保持部材10a,10bの各糸保持部11に、パイル糸Pを直線状にして保持させる場合と、パイル糸Pを折曲状態にして保持させる場合とを適宜選択し組み合わせることにより、カットパイル、ループパイルおよびループカット混在パイル等の所望のパイル形状を得ることができ、また、パイル密度は前記糸保持部材10a,10bの各糸保持部11の配置間隔(ピッチ)によって適宜設定できる。
【0088】
図11(A)は、第1及び第2の糸保持部材10a,10bの各糸保持部11に、それぞれ、図14(A)のように各パイル糸Pを直線状にして保持させた場合を示している。この場合、第1と第2の掴持移動手段3a,3bにより掴持して引き出したパイル糸Pを、第1及び第2の基材搬送手段2a,2bにおいて中央部で折曲して該折曲部3aをシート状基材C1に接着することにより、第1と第2の基材搬送手段2a,2bの双方で図15(A)又は(B)のようにカットパイルを形成できる。
【0089】
図11(B)は、第1及び第2の糸保持部材10a,10bの各糸保持部11に、それぞれ、図14(B)のようにパイル糸Pを折曲状態にして保持させて搬送する場合を示している。この場合、第1と第2の掴持移動手段3a,3bにより掴持して引き出した折曲状態のパイル糸Pを、切断端側の近くを押圧して接着し前記折曲端部p1をパイル表面に出すことにより、図15(C)のようにループパイルを形成でき、また折曲したパイル糸Pの折曲端部p1と切断端の中間位置を接着することにより、両基材搬送手段2a,2bの双方で図15(D)のようにループパイルとカットパイルを混在させて形成でき、さらに折曲したパイル糸の折曲端部p1側に位置をずらせて接着することにより、図15(E)のようにカットパイルあるいはカットパイル間に短いループパイルを形成できる。
【0090】
また、図11(C)は、第1と第2の糸保持部材10a,10bの一方、例えば第1の糸保持部材10aの糸保持部11にパイル糸Pを直線状に保持させ、また第2の糸保持部材10bの糸保持部11にパイル糸Pを折曲状態にして保持させて搬送する場合を示している。この場合、第1の糸保持部材10aのパイル糸Pを第1の掴持移動手段3aにより引き出して第1の基材搬送手段2aでのカーペット製造に使用することにより、図15(A)又は(B)のようにカットパイルを形成でき、また、第2の糸保持部材10bのパイル糸Pを第2の掴持移動手段3bにより引き出して第2の基材搬送手段2bでのカーペット製造に使用することにより、図15(C)〜(E)のようにループパイルを形成できる。
【0091】
さらに、図14(C)又は(D)のように、一つの糸保持部材10a又は10bの各糸保持部11において、パイル糸Pを直線状に挿入して保持させる場合と、パイル糸Pを折曲状態にして挿入保持させる場合と混在させることにより、図15(F)のように、1列の単位パイル列内にカットパイルとループパイルを任意に混在させることができる。すなわち、パイル糸Pを直線状にして保持させる場合と折曲状態にして保持させる場合を適宜選択し組み合わせることにより、単位パイル列の全てのパイルをカットパイル又はループパイルにするほか、単位パイル列の中でカットパイルとループパイルとを適宜混在させることができ、ひいては所望のパイル形状のカーペットを得ることができる。
【0092】
前記のように、第1と第2のパイル糸選択保持装置20a,20bにおいて、第1の糸保持部材10a又は第2の糸保持部材10bのそれぞれにパイル糸Pを選択し保持させて供給するようにしたことにより、第1の基材搬送手段2aと第2基材搬送手段2bにおいて、それぞれ個別のパイル柄、パイル形状のカーペットを製造することが可能であり、特に、前記のようにパイル柄やパイル形状を異にすることができるほか、第1の糸保持部材10aと第2の糸保持部材10bの各糸保持部11の配置間隔(ピッチ)を異にすることにより、第1と第2の基材搬送手段2a,2bにおいて、それぞれ緯方向のパイル密度を異にしたカーペットを製造することもできる。
【0093】
また、前記第1及び第2のパイル糸選択保持装置20a,20bにおいて、第1又は第2の糸保持部材10a,10bについて、糸保持部11の配置間隔(ピッチ)を異にしたものと取り換え変更することにより、単位パイル列毎にパイル密度、特にはカーペット幅方向のパイル密度を変更することも容易に可能であり、特には運転を継続しながら、製造するカーペットのパイル密度、特に横方向密度の変更も容易に可能になる。また、部分的に糸保持部の配置間隔を異にした糸保持部材を使用することにより、例えば図15Fのように部分的にパイル密度を異にしたカーペットを得ることもできる。
【0094】
このように、本発明によれば、1台の機械で、ループパイルとカットパイル等のパイル形状の変更や組み合わせ、多色柄、パイルの横密度の変化等の設定が容易に可能であり、多種、多様なパイル柄の多品種のタイル型カーペット等のカーペットを効率よく製造できる。
【符号の説明】
【0095】
C…カーペット、C1…シート状基材、B…接着剤、P…パイル糸、1…パイル糸供給装置、2a,2b…第1及び第2の基材搬送手段、3a,3b…第1及び第2の掴持移動手段、4…接着工程部、5…押圧手段、6…ガイド部材、7…グリッパー、8…支持基材、9…ネジ軸、10a,10b…第1及び第2の糸保持部材、11…糸保持部、12…保持孔、13…バネ手段、14…スプロケット、15…中央搬送手段、16…チェーン、17…支持部材、18…係合用凸縁、19…係合溝、20a,20b…第1及び第2のパイル糸選択保持装置、21a,21b…第1及び第2の副搬送手段、22…凸部、24…スプロケット、25…チェーン、26…支持部材、27…係合溝、30…パイル糸選択挿入手段、31…導糸部、32(32−1,32−2)…選択用糸保持手段、33(33−1,33−2)…糸挿入手段、34…先端部、35…エア導入口、36…取り付け部材、37…モータ、38…ネジ軸、39…支持部材、40(40−1,40−2)…パイル糸切断手段、41…グリッパー、42…押し込み部材、ラック43…、44…モータ、45…歯車、46…支持板、47…エアーシリンダー等の手段、48…基部材、49…支持板、50…モータ、51…歯車、52…ラック、53…ラック、54…モータ、 55…歯車、56…支持板、57…支持用テーブル、58…フレーム、59…モータ、60a,60b…送り込み手段、61…ネジ軸、62エアーシリンダー、63…押動部材、64…補助手段、65…モータ、66…ラック機構、67…モータ、68…ラック機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造するカーペットのシート状基材をカーペット製造用の基材搬送手段に上載して間欠送行させるとともに、これと並列に配置されたパイル糸供給装置においてカーペット幅方向の単位パイル列に対応して横列に保持されているパイル糸を、植設用の掴持移動手段により並列状態のまま掴持してパイル糸供給装置から引き出し、前記基材搬送手段におけるシート状基材の送行部分における植設工程部に移動させ、シート状基材の送行停止中に、各パイル糸をシート状基材の表面に接着し植設するカーペットの製造方法において、
前記パイル糸供給装置では、前記基材搬送手段と平行に配された中央搬送手段により、カーペット幅方向の単位パイル列に対応するパイル糸を横列に保持する糸保持部材を搬送方向の一定間隔毎に支持して、かつ前記一定間隔毎に間欠送行させて前記掴持移動手段による引き出し用位置に搬送し、これと同時に、該中央搬送手段の側傍に備えるパイル糸選択保持装置において、前記中央搬送手段により搬送される空の糸保持部材を受け入れ、該糸保持部材の各糸保持部に対してカーペット幅方向の単位パイル列毎のパイルに対応したパイル糸を選択して並列状態に保持させた後、該糸保持部材を前記中央搬送手段に送り込んで支持させることを繰り返して、カーペット幅方向の単位パイル列毎に対応するパイル糸を並列状態に保持して前記引き出し用位置に順次搬送することとし、所定のパイル柄のカーペットを製造することを特徴とするカーペットの製造方法。
【請求項2】
前記パイル糸供給装置を中間にして、その両側に、それぞれ接着工程部を含むカーペット製造用の第1と第2の基材搬送手段を並設しておき、前記パイル糸供給装置の中央搬送手段の両側傍の一方側に備えるパイル糸選択保持装置により、前記第1の基材搬送手段で製造するカーペットの単位パイル列毎に対応するパイル糸を第1の糸保持部材に保持させ、また他方側に備えるパイル糸選択保持装置により、第2基材搬送手段で製造するカーペットの単位パイル列毎に対応するパイル糸を第2の糸保持部材に保持させるようにし、それぞれ中央搬送手段に送り込み、中央搬送手段により前記第1の糸保持部材と第2の糸保持部材とを交互に支持して前記引き出し用位置に搬送し、前記引き出し用位置において前記第1の糸保持部材に保持されているパイル糸と第2の糸保持部材に保持されているパイル糸を、それぞれ別の第1の掴持移動手段と第2の掴持移動手段により掴持して引き出し、第1の基材搬送手段における接着工程部と第2の基材搬送手段の接着工程部とに交互に移動させ、第1と第2の基材搬送手段により搬送されるシート状基材の表面に前記パイル糸を接着し植設する請求項1に記載のカーペットの製造方法。
【請求項3】
前記各糸保持部材にパイル糸を保持させるパイル糸選択保持装置において、パイル糸を直線状にして保持させる場合と、パイル糸を折曲状態にして保持させる場合とを、製造するカーペットの幅方向の単位パイル列毎のパイル形状に応じて選択して保持させる請求項1又は2に記載のカーペットの製造方法。
【請求項4】
製造するカーペットのシート状基材を上載して間欠送行させるカーペット製造用の基材搬送手段と、これと並列に配されたパイル糸供給装置と、前記パイル糸供給装置の前方で前記基材搬送手段の送行方向に対し直交する方向に移動可能なパイル糸植設用の掴持移動手段とを備え、パイル糸供給装置においてカーペット幅方向の単位パイル列のパイルに対応して横列に保持されているパイル糸を、前記掴持移動手段により並列状態のまま掴持してパイル糸供給装置から引き出し、前記基材搬送手段におけるシート状基材の送行部分における植設工程部に移動させ、前記シート状基材の送行停止中に、各パイル糸をシート状基材の表面に接着し植設するカーペット製造装置において、
前記パイル糸供給装置は、
前記基材搬送手段と平行に配され、カーペット幅方向の単位パイル列毎のパイルに対応するパイル糸を横列に保持する糸保持部材を搬送方向の一定間隔毎に支持し、各糸保持部材を前記一定間隔毎に間欠送行させて順次前記掴持移動手段による引き出し用位置に搬送する中央搬送手段と、
前記中央搬送手段の側傍に配置されたパイル糸選択保持装置であって、中央搬送手段により搬送される空の糸保持部材を受け入れ、該糸保持部材の各糸保持部に対してカーペット幅方向の単位パイル列毎のパイルに対応したパイル糸を選択して並列状態に保持させた後、該糸保持部材を前記中央搬送手段に送り込むように設けられたパイル糸選択保持装置とを備え、前記中央搬送手段が前記パイル糸選択保持装置から送り込まれる前記糸保持部材を前記引き出し用位置に順次搬送するように構成されてなることを特徴とするカーペットの製造装置。
【請求項5】
前記パイル糸供給装置を中間にして、その両側に、それぞれ接着工程部を含むカーペット製造用の第1と第2の基材搬送手段が並設されてなり、
前記パイル糸供給装置の中央搬送手段の両側傍の一方側には、第1の基材搬送手段で製造するカーペットの単位パイル列毎に対応するパイル糸を糸保持部材に保持させる第1のパイル糸選択保持装置が、他方側には第2の基材搬送手段で製造するカーペットの単位パイル列毎に対応するパイル糸を糸保持部材に保持させる第2のパイル糸選択保持装置が配置され、それぞれ前記第1のパイル糸選択保持装置においてパイル糸を保持した第1の糸保持部材と、前記第2のパイル糸選択保持装置においてパイル糸を保持した第2の糸保持部材とを、前記中央搬送手段に対して搬送方向に交互に並列する支持位置に送り込むように設けられ、前記中央搬送手段は前記第1の糸保持部材と第2の糸保持部材とを交互に支持して搬送するように設けられており、
また、前記パイル糸供給装置の前方には、前記中央搬送手段により引き出し用位置に搬送される前記第1の糸保持部材に保持されているパイル糸と、第2の糸保持部材に保持されているパイル糸とを、それぞれ交互に掴持して引き出してかつ第1の基材搬送手段の接着工程部に移動させる第1の掴持移動手段と、第2の基材搬送手段の接着工程部に移動させる第2の掴持移動手段を備え、第1の掴持移動手段の各パイル糸を第1の基材搬送手段の接着工程部において、第2の基材搬送手段の各パイル糸を第2の基材搬送手段の接着工程部においてそれぞれシート状基材に接着するように設けられてなる請求項4に記載のカーペットの製造装置。
【請求項6】
前記両側のパイル糸選択保持装置は、それぞれ中央搬送手段から側方に送り出される糸保持部材を支持して中央搬送手段の間欠送行に対応して、これと平行に同方向又は逆方向に間欠送行する副搬送手段と、この副搬送手段の送行停止中に、引き出し可能に保持された多数のパイル糸の中から、カーペット幅方向の単位パイル列毎のパイルに対応したパイル糸を選択して前記糸保持部材に対し並列状態に保持させるパイル糸選択挿入手段と、選択した前記パイル糸を所定長さに切断するパイル糸切断手段と、中央搬送手段及び副搬送手段の送行停止中に、パイル糸を保持した前記糸保持部材を中央搬送手段に送り込む送り込み手段とを備えてなる請求項4又は5に記載のカーペットの製造装置。
【請求項7】
前記パイル糸選択挿入手段は、使用する複数本のパイル糸をそれぞれ個別に引き出し可能に保持して並列する導糸部を有し、かつ、選択された一つの導糸部を副搬送手段に支持された糸保持部材に対する挿入用位置に移動させることができる選択用糸保持手段と、選択された導糸部のパイル糸を前記糸保持部材の所定の糸保持部に挿入する糸挿入手段とを備える請求項6に記載のカーペットの製造装置。
【請求項8】
前記パイル糸選択挿入手段として、選択用糸保持手段の各導糸部に保持されているパイル糸を、それぞれ前記糸保持部材の糸保持部に対し直線状にして挿入し保持させる糸挿入手段、及び/又は、選択用糸保持手段の各導糸部に保持されているパイル糸を折曲状態にして該折曲部から前記糸保持部材の糸保持部に対し挿入し保持させる糸挿入手段を備えてなる請求項7に記載のカーペットの製造装置。
【請求項9】
パイル糸を直線状にして挿入する糸挿入手段は、前記副搬送手段上の糸保持部材の上方において該糸保持部材の長手方向に対し直交する方向に並列して上下方向にパイル糸を挿通して保持する複数の導糸部を有し、選択したパイル糸の導糸部を挿入用位置に移動可能な選択用糸保持手段において、前記各導糸部の先端部にエア導入口が設けられ、該導糸部に保持されたパイル糸をエア導入により下方に送出して前記糸保持部材の糸保持部に挿入するように設けられてなる請求項8に記載のカーペットの製造装置。
【請求項10】
パイル糸を折曲状態にして挿入する糸挿入手段は、前記副搬送手段上の糸保持部材の上方において該糸保持部材の長手方向に並列してかつパイル糸を前記糸保持部材の上方を横切って水平に引き出し可能に保持する複数の導糸部を有し、選択したパイル糸の導糸部を挿入用位置に移動可能な選択用糸保持手段において、前記挿入用位置の導糸部から糸保持部材の所定の糸保持部の上方を横切って引き出したパイル糸を押下し折曲状態にして該折曲部から前記糸保持部に押し込むことができる押し込み部材を備えてなる請求項8に記載のカーペットの製造装置。
【請求項11】
前記中央搬送手段の両側傍には、副搬送手段と、該副搬送手段上の糸保持部材に対してパイル糸を選択して並列状態に保持させるパイル糸選択挿入手段と、選択されたパイル糸を切断するパイル糸切断手段と、糸保持部材を前記中央搬送手段に送り込む送り込み手段とからなるパイル糸選択保持装置が、前記中央搬送手段の搬送方向に間隔をおいて複数組配置されてなる請求項4〜10のいずれか1項に記載のカーペットの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−125403(P2012−125403A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279540(P2010−279540)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(593000959)ニッシン株式会社 (1)
【Fターム(参考)】