説明

カーペット

【課題】パイル面が汚損されないように接着剤によってパイル地の周縁に端止め縁材を強固に取り付け、その端止め縁材と接着剤によってパイル地周縁での基布の解れを防ぐ。
【解決手段】端止め縁材11を、パイル地34の裏面26に当接する平坦部20と、湾曲断面形状を成してパイル地の側面に向き合う横向き溝25を形成して平坦部20から突出した立壁部21とから成るL字断面形状に軟質樹脂組成物によって一体成形し、パイル地の基布12の側面13に立壁部21を接着するための接着剤18を立壁部21の横向き溝25に溜め置き、接着剤18を基布12の側面13に徐々に浸透させ、基布12を構成する緯糸14や経糸15・17の間を接着剤18によって強固に接着し、パイル地周縁での基布の解れを防ぐと共に、その接着剤18が基布12の側面13と立壁部21の間から押し出されてパイル面35を汚損することがないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基布からパイルが突き出たパイル地の周縁を縁取って構成され、車両床面に置き敷き使用される足元マットやトランクマット、屋内外の出入口に置き敷き使用される出入口マット、ダストコントロールマット、室内床面に置き敷き使用されるアクセントラグ、バスマット、キッチンマット、トイレマット、洗い場マット、電気カーペット表面カバー、屋内床面に敷き詰められるタイルカーペット等の比較的小サイズのカーペットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のパイル地に成るカーペットの縁取りは、パイル地周縁に比較的太い色糸をミシン掛けするオーバロック(例えば、特許文献1、2参照)、或いは、折り畳んだ縁取りテープの間にパイル地周縁を挟み込んで縫合するテープ掛け(例えば、特許文献3、4参照)によって行われている。一般に、オーバロックの色糸にはパイル地のパイル糸と同じ糸が使用されている。パイル地周縁のパイルは、そのオーバロックの色糸に被覆されており、その被覆するパイル地周縁のパイルによってオーバロックの色糸が押し上げられてパイル面に膨出している。オーバロックの色糸と同様に、縁取りテープも、パイル地周縁のパイルを被覆しており、その被覆するパイルに押し上げられてパイル面に膨出している。
【0003】
そのように、オーバロックの色糸と縁取りテープは、パイル地周縁のパイルに押し上げられてパイル面に膨出しているので、カーペットの使用時に擦られて損耗し易い。加えて、カーペットの使用時にオーバロックの色糸や縁取りテープが擦られる時、それらを縫合しているミシン糸に引抜外力が作用し、ミシン糸を介して伝わる引抜外力によって、基布を構成している経糸や緯糸が引き擦り出され、パイル地周縁が解れ易くなる。こうして、オーバロックの色糸や縁取りテープが損耗し、基布の経糸や緯糸がパイル地周縁から解れ出ると、カーペット全体が損耗して古びたかの如き見苦しい外観を呈し、実用し得るとしても美観上の理由でカーペットを敷き替えざるを得なくなる。
【0004】
パイル地の基布の周縁での解れを防ぐためには、タイルカーペットのようにパイル地の裏面にバッキング剤を厚く塗布・裏打ちする方法もあるが、その場合には、基布と裏打層との伸縮差によってカーペットの周縁が反り上がると言う不具合も懸念される(例えば、特許文献5参照)。そして、ウイルトンカーペットやモケットのように、パイル糸が地経糸や〆経糸と共に基布に織り込まれるパイル織物、特に、色彩の異なる2種類以上のパイル糸を選択的に織り込んで色彩の異なる2種類以上のパイルによる図柄模様をパイル面に織り出した柄物パイル織物(例えば、特許文献6参照)では、その選択されずに残るパイル糸が沈糸(所謂デッドパイル)となって基布の一部を構成することになり、その結果、基布が分厚くなるので、バッキング剤が基布に深く浸透せず、バッキング剤による地経糸や地緯糸の間の接合が不十分になる。このため、柄物パイル織物では、バッキング剤による解れ防止効果を期待することは出来ない。
【0005】
パイル地周縁を縁取る方法として、コ字形断面を成す溝形縁材を使用し、そのコ字形溝にパイル地周縁を嵌め込んで接合することも知られている(例えば、特許文献7、8、9参照)。しかし、この種の溝形縁材は金属や硬質プラスチックで出来ており、それがパイル面に露出することになるので、カーペットの感触を損ない、素足で踏むときは怪我する危険がある。
【0006】
パイル地周縁を縁取る他の方法として、パイル地の裏面に面ファスナーを配すると共に、パイル地と床面との間に差し込まれる基板の上面に、面ファスナーに係合する係合素子を設け、これら面ファスナーと係合素子とを係合させる方法が知られている(例えば、特許文献10参照)。しかし、この方法では、面ファスナーと係合素子との係合力が小さいので、端止め縁材を強固に固定することができず、端止め縁材が衝撃を受けてパイル地の周縁から不用意に外れたり、ズレ動く虞れがある。
【0007】
【特許文献1】実公昭55−47428号公報(実開昭52−150222)
【特許文献2】実用新案登録公報第2501240号(実開平5−024349)
【特許文献3】特開2000−83797号公報
【特許文献4】特許公報第2807871号(特開平09−131254)
【特許文献5】実公平03−16536号公報(実開昭62−039573)
【特許文献6】実公昭55−02045号公報
【特許文献7】実開昭56−38686号公報
【特許文献8】実用新案登録公報第2522398号(実開平4−120669)
【特許文献9】実公昭60−38941号公報(実開昭56−038687)
【特許文献10】特開2001−275819号公報
【0008】
本発明者は、端止め縁材の固定要素として接着剤を用いることを考え、これに適した端止め縁材の開発を試みた。具体的には、パイル地の裏面に沿う平坦部と、平坦部の側縁から上方に向けて真っ直ぐに伸びるストレート状の立壁部とを有するL字断面形状の端止め縁材を考えた。この端止め縁材は、ゴムや軟質ポリ塩化ビニル樹脂等の軟質樹脂組成物を素材とし、可撓性を有するものとした。これによれば、平坦部の上面に接着剤を塗布し、パイル地の周縁が端止め縁材の平坦部と立壁部とのコーナー部に凹凸係合するように位置合わせしたうえで、所定時間放置して接着剤を固化させるだけで、端止め縁材をパイル地の周縁に強固に接着することが出来る。又、この方法によると、従来例に比べて端止め縁材を効率よく装着することが出来る。
【0009】
しかし、この端止め縁材では、立壁部の側面がパイル地の周縁に当たるように端止め縁材をパイル地に押し付けたとき、立壁部の側面に沿って接着剤が立壁部の上端に押し出され、立壁部の上端から接着剤が溢れ出し、立壁部とパイル地の周縁との接着が不十分になり、端止め縁材のパイル地に対する接着強度が低下し、又、その溢れ出た接着剤がパイル面に付着して、パイル地の美観が損なわれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで本発明は、接着剤が立壁部の上端から溢れ出すことなく、そして仮に溢れ出たとしても、その接着剤によってパイル面が汚染されることなく、そのL字断面形状の端止め縁材を接着剤によってパイル地の周縁に強固に取り付けることを第1の目的とする。
【0011】
本発明の第2の目的は、柄物パイル織物をカーペットに使用する場合でも、周縁での地経糸や地緯糸の解れ出しを端止め縁材によって防止することにある。
【0012】
本発明の第3の目的は、パイル地周縁に付設した端止め縁材に素足が触れても怪我することがないようにすることにある。
【0013】
本発明の第4の目的は、端止め縁材によってパイル面の風合いが損なわれないようにすることにある。
【0014】
本発明の第5の目的は、端止め縁材によってパイル地に防滑性を付与し、平滑な床面に置き敷きされたカーペットを踏み込んだ場合に、足元が滑って転倒することがないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係るカーペットは、(a) 基布12からパイル19が突き出たパイル地34の周縁を端止め縁材11によって縁取って構成され、(b) 端止め縁材11が、パイル地の裏面26に当接する平坦部20と、上端22が平坦部側(20)に偏ってパイル地の側面に向き合う横向き溝25を形成して平坦部20から突出した立壁部21とを軟質樹脂組成物によってL字断面形状に一体成形して成り、(c) 端止め縁材の平坦部の上面24が、接着剤によってパイル地の裏面26に接着されており、(d) パイル地の基布の側面13に端止め縁材の立壁部21の側面23が密着しており、(e) 端止め縁材の立壁部の側面23と基布の側面13の間に接着剤18が介在しており、(f) 端止め縁材の立壁部21の上端22が、パイルの根元19bと先端19aの間に向き合っていることを第1の特徴とする。
【0016】
本発明に係るカーペットの第2の特徴は、上記第1の特徴に加えて、端止め縁材の立壁部21が弾性変形してパイル地の側面に当接しており、その弾性復元力によって立壁部の上端22がパイルの根元19bと先端19aの間の部分に密着している点にある。
【0017】
本発明に係るカーペットの第3の特徴は、上記第1および第2の何れかの特徴に加えて、パイルの根元19bから立壁部の上端22に到る距離Rが、パイルの根元19bから先端19aに到るパイル長Hの半分以下になっている点にある。
【0018】
本発明に係るカーペットの第4の特徴は、上記第1、第2および第3の何れかの特徴に加えて、端止め縁材の平坦部20が厚み(S)2mm以下の扁平断面形状を成し、パイル地の周縁より内側に向けて斬次薄くなるテーパー部30が平坦部20に形成されており、パイル地の周縁より内側となるテーパー部30の側縁32における平坦部20の厚み(T)を1mm以下にした点にある。
【0019】
本発明に係るカーペットの第5の特徴は、上記第1、第2、第3および第4の何れかの特徴に加えて、パイル地34のパイル長(H)が5mm以上である点にある。
【0020】
本発明に係るカーペットの第6の特徴は、上記第1、第2、第3、第4および第5の何れかの特徴に加えて、パイル地34がパイル織物であり、色彩の異なる2種類以上のパイル糸16a・16bによるパイル19・19が選択的に形成されており、その選択されずに残るパイル糸(16a又は16b)が、基布12に織り込まれて沈糸31となり、基布12の一部を構成している点にある。
【0021】
本発明に係るカーペットの第7の特徴は、上記第1、第2、第3、第4、第5および第6の何れかの特徴に加えて、端止め縁材の横向き溝内(25)に、パイル地の基布の側面13に向けて隆起した隆起部17が形成されている点にある。
【0022】
本発明に係るカーペットの第8の特徴は、上記第7の特徴に加えて、端止め縁材の隆起部17が平坦部20の上面24と立壁部21の側面23の交わる入隅に出隅状に隆起した凸状ライン17aを形成している点にある。
【0023】
本発明に係るカーペットの第9の特徴は、上記第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7および第8の何れかの特徴に加えて、端止め縁材の平坦部20の裏面33が、パイル地の基布12の裏面26に比して高い防滑性を有する点にある。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、例えば端止め縁材11の位置合わせを目的として、端止め縁材11がパイル地の側面(13)に対して強く押し付けられた場合でも、立壁部21の側面23に形成された横向き溝内(25)に接着剤18を溜め置くこと、即ち、基布の側面13と端止め縁材11との間に挟まれて逃げ場を失った接着剤18を横向き溝内(25)に溜め置くことが出来、接着剤18が立壁部21に沿って上方に押し出されるのを防ぐことが出来、又、横向き溝内(25)に溜め置かれた接着剤18が、徐々に基布12の側面13に浸透することで、基布の側面13に立壁部21を強固に接着固定することが出来る。
【0025】
そして、立壁部の上端22が、パイルの根元19bと先端19aの間に向き合っているので、仮に接着剤18が上方に押し出されることがあってもパイル面に固着することがなく、寧ろ、その押し出された接着剤18が固着してパイルの根元19aが基布12に確り固定され、経糸(15、17)や緯糸(14)の間が接着されて、それらの解れ出しが防止される。このように、本発明によると、パイル地34の基布12の側面13と端止め縁材11の立壁部21の間の接着剤18が不足し、その間の接着強度が低下したり、押し出されて立壁部の上端22から溢れ出た接着剤18によってパイル面35が汚染される等の不都合が確実に回避される。
【0026】
立壁部21の側面23に、基布12の側面13に対する端止め縁材11の差込み限界を規制するための隆起部27が突出形成されていると(図1および図4参照)、基布12の側面13に隆起部27が突き当たるため、立壁部21と基布の側面13との間に対向間隙を確保することが出来、又、隆起部27に補強されて横向き溝25が潰れ難くなり、横向き溝25からの接着剤18の溢れ出しが効果的に防止される。
従って、パイル19を係止する地緯糸14を挟持する〆経糸17a・17bと、パイル19の挟持する地経糸15とによって基布12が分厚く織成され、色彩の異なる2種類以上のパイル糸16a・16bによるパイル19・19が、パイル地に選択的に形成されており、その選択されずに残るパイル糸(16a又は16b)が、基布12に織り込まれて沈糸31となっているパイル織物34をカーペットに使用する場合でも、その側面13から滲み込んだ接着剤18によって経糸間や緯糸間が接合され、それらの糸条(14〜17)の周縁からの解れ出しが回避される。
【0027】
特に、図1および図2に示すように、平坦部20と立壁部21の交わる入隅に出隅状に隆起した凸状ライン27aとして隆起部27を構成すると、図4に示すように、立壁部21の上下中央部に張り出しリブ27bとして隆起部27を構成する場合に比べて、立壁部21が剛直になり、平坦部20と立壁部21の間が開き難くなるので、端止め縁材11の不用意な変形を回避することが出来、又、横向き溝25が潰れ難くなるので、横向き溝25からの接着剤18が押し出されるのを確実に防ぐことが出来る点でも有効であり、加えて、平坦部20と立壁部21との接合部の厚み寸法を大きくすることが出来るので、平坦部20と立壁部21との接合箇所の強度アップにもなる。
【0028】
軟質樹脂組成物によってL字断面形状に構成されている端止め縁材11をその長さ方向に平坦部20が巻き上がるように彎曲させると、立壁部21の上端縁37と下端縁38が伸縮し、その間に立壁部21の高さ(V)に相応する曲率半径の差異が発生すべきことになる。
そのとき、彎曲させようとする曲げモーメントに対して上端縁37の寸法Fと下端縁38の寸法Eが等しい元の状態を維持しようとする抗力が発生するので、立壁部21の上端縁37と下端縁38の間に立壁部21の高さ(V)に比例した曲率半径の差異は発生し難い。
そこで、平坦部20は、上端縁37の寸法Fと下端縁38の寸法Eが等しい元の状態を維持しつつ彎曲し、その結果、立壁部21は、内向きに倒れて平坦部20に重なるか、又は、外向きに倒れて平坦部20と面一になって平板に続くことになる。
しかし、立壁部21を上端22が平坦部側(20)に偏った湾曲断面形状にすると、上端縁37は、その上端22が偏った平坦部側(20)に倒れ易く、外向きには倒れ難くなる。
そのため、端止め縁材11を平坦部20が巻き上がるように彎曲させると、立壁部21は、その折り目39において内向きに倒れて平坦部20に重なることになる(図6)。
【0029】
このように、立壁部21が内向きに倒れて平坦部20に重なる性質を有するので、本発明のカーペットをロール状に巻き上げると、立壁部21が内向きに倒れ、その上端縁37が基布12の裁断口(側面13)に密着し、基布12の側面13と立壁部21の間が押し広げられて隙間が出来たり、立壁部21がパイル地の周縁の外側に突き出ることもない。
そのように、本発明の端止め縁材11を使用すると、その立壁部21が外側に突き出ることなく、カーペットをロール状に綺麗に巻き上げることが出来る(図5)。
【0030】
そして、軟質樹脂組成物に成る端止め縁材11は、それをロール状に巻き上げることが出来る程の弾性を有するので、パイル地の周縁は端止め縁材11によって平板状に維持され、四隅が反り上がることのないカーペットが得られる。
【0031】
立壁部21がパイル地の側面13に当接して弾性変形しており、その弾性復元力によって立壁部の上端22がパイルの根元19bと先端19aとの間の部分に密着しているので、基布12と立壁部21が剥離しても、それらの間に隙間が出来ることがなく、基布12の裁断口(側面13)が立壁部21に被覆される。特に、パイルの根元19bから立壁部21の上端22に到る距離Rを、パイルの根元19bから先端19aに到るパイル長Hの半分以下にすると、パイル地周縁のパイル19が倒れ込んで基布12の裁断口13だけではなく立壁部21の上端22をも被覆することになるので、カーペットの使用中に剥離した基布12と立壁部21の間が押し広げられることはなく、立壁部21に素足が触れて感触を損なうこともなくなる。
【0032】
平坦部20の厚み(S)が大きいと、パイル地34が平坦部20に押し上げられて、パイル面35に段差が生じる虞れがある。この点、本発明では、平坦部20の側縁側(32)に、漸次厚みが薄くなるテーパー部30を設けたので、平坦部20の厚み(S)に相応して目立つような段差36がパイル面35に現われることはない。
そして在来のパイル地の沈糸31(タフテッドパイル布帛ではバックステッチに該当)を含めた基布12の厚みが2〜3mmになっている。そこで、パイル長(H)を5mm以上にすると、パイル地34の総厚みは7mm以上になる。そして、パイル長Hが平坦部20の厚み(S)の2倍以上であり、テーパー部30の側縁32の厚み(T)が1mm以下であれば、その側縁32において平坦部20の裏面33と基布12の裏面26の間の段差36はパイル面35に殆ど現われず、その段差36によってパイル面35の外観体裁が損なわれるようなことはなくなる。
【0033】
本発明では、平坦部の裏面33の防滑性を、基布の裏面26に比して高くしたので、パイル地34の裏面26に防滑樹脂を塗布積層する手間が省ける。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
端止め縁材11に防滑材としての機能を付与するためには、平坦部20の幅(W)を30mm以上にするとよい。しかし、平坦部20の幅(W)を余り広くすると、平坦部20とパイル地34(基布12)との伸縮差によってカーペットが反り上がり易くなる。これらの点を考慮して平坦部20の幅(W)を70mm以下に、従って30〜70mmにすることが望ましい。立壁部21の高さ(V)は4mm前後に、立壁部21の厚み(X)は1mm前後にする。
【0035】
端止め縁材11には、天然ゴム、スチレン・ブタジエン・ゴム、アクリロニトリル・ブタジエン・ゴム、メチルメタクリレート・ブタジエン・ゴム、エチレン・プロピレン・ゴム等の合成ゴム、軟質ポリ塩化ビニル樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂、エチレン・アクリル酸エステル樹脂、エチレン・アクリル酸メチル樹脂、エチレン・メタクリル酸メチル樹脂、エチレン・アクリル酸エチル樹脂、エチレン・メタクリル酸エチル樹脂、エチレン・メタクリル酸メチル・アクリル酸エステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル・ウレタン樹脂、アクリル・シリコーン樹脂、シリコーン樹脂、ポリエチレン・ブチレン・ブロック共重合樹脂、ポリエチレン・プロピレン・ブロック重合樹脂、スチレン・ビニルイソプレン・スチレン・三元ブロック重合樹脂、スチレン・ブタジエン・スチレン・三元ブロック重合樹脂等の防滑性を有する弾性樹脂が、加硫剤(架橋剤)や老化防止剤、酸化防止剤、安定剤、可塑剤、充填剤、顔料等を常法に従って配合し、樹脂組成物として調製して使用される。
【0036】
端止め縁材11は、二軸共押出成形機により、数種類の樹脂組成物を平坦部20と立壁部21とに分けて押出し、或いは、立壁部の上端部分22と他の部分とに分けて押出し、部分的に異なる樹脂組成物によって形成することが出来る。平坦部20の裏面33には、粘着性のある樹脂組成物による防滑層を積層することも可能である。
【0037】
パイル地34としては、パイル織物とタフテッドパイル布帛を使用することが出来る。パイル織物は、モケット、アキスミンスターカーペット、ウイルトンカーペット等、織カーペット(織絨毯)として織成されたものであってもよい。パイル地34は、パイル19を基布12に固定するために、その裏面にバッキング剤(裏打ち用接着剤)を塗布・裏打ちして仕上げられたものであってもよい。
【0038】
図1は、ダブルウイルトン織機によって織成された三越パイル織物34を示し、基布12は、パイル19を係止する地緯糸14と、その地緯糸14を挟持する一対の〆経糸17a・17bと、パイル19の挟持する地経糸15とによって分厚く織成されている。一対の〆経糸17a・17bは、上下から3本の地緯糸を挟む毎に上下の位置関係が反転している。
地経糸15は、その一対の〆経糸17a・17bが上下から挟む3本の地緯糸を上側2本と下側1本に上下に分け、それら3本の地緯糸によって上下から挟持されて一直線状に連続している。
パイル糸には、色彩の異なる二種類の色糸16aと16bが使用され、その二種類の色糸16aと16bが選択的にパイルを形成しており、その選択されずに残るパイル糸(16a又は16b)は、沈糸31となって基布12に織り込まれている。
【0039】
図1および図2は、本発明の第1実施形態に係る端止め縁材を示す。この端止め縁材11は、パイル地34の周縁の保護材になる。より具体的に言えば、裁断口である基布12の側面13を立壁部21によって覆うことにより、その裁断口での基布12の解れが防止される。端止め縁材11は、使用中のカーペットの防滑材にもなる。
【0040】
図2に示すように、端止め縁材11は、パイル地34の裏面に沿う平坦部20と、平坦部20の側縁から上方に向かって延びてパイル地34の周縁の側面に沿う立壁部21とが一体的に成形されたL字断面形状を呈している。立壁部の上端部分22はパイル地側に向かって湾曲しており、湾曲した立壁部21の側面23と平坦部20の上面24とで区画され、接着剤18を溜めるための横向き溝25となる微小空間が形成される。この横向き溝25は、図2に示すように、端止め縁材11の長さ方向の全部にわたって形成される。
【0041】
立壁部21の側面23には、パイル地34の周縁に対する端止め縁材11の差込み限界を規制するための隆起部27が突出形成されている。隆起部27は、平坦部20と立壁部21が交わる入隅に、出隅状に突出形成された凸状ライン27aを構成しており、パイル地34の側面に向き合う垂直面28と、上方に指向する上面29とを有する矩形断面形状を呈している。その垂直面18が基布12のの側面13に突き当たることにより、立壁部21の側面23と基布12の側面13との対向間隔が確保され、横向き溝25が不用意に潰れることを防ぐ。
【0042】
平坦部20の側縁部には、側縁32に行くに従って漸次厚み寸法が小さくなるテーパー部30が形成されている。
【0043】
端止め縁材11は、パイル地34を床面に固定するために使用することも出来る。その場合は、次の手順でパイル地34の周縁に装着固定することが出来る。即ち、先ず、平坦部20の上面24に接着剤18を塗布する。次に、パイル地34の裏面と床面との間に、平坦部20をテーパー部30から差し込む。このときパイル地34の側面13に隆起部27の垂直面18が当接するまで、パイル地34に対して端止め縁材11を押し付け、パイル地34の側面13に沿うように、端止め縁材11を位置決めする。その姿勢状態で端止め縁材11を所定時間放置して、接着剤18を硬化させることにより、パイル地34に対して端止め縁材11を一体不可分的に接着固定することが出来る。
【0044】
パイル地34の裏面に平坦部20を差し込んだとき、パイル地34の側面13によって平坦部20の上面24に載っていた接着剤18の一部が掻き取られことがある。そうすると、パイル地34の側面13に接着剤18が付着する。しかし、本発明では、立壁部21の上端部分22が内向きに湾曲しており、立壁部21の側面に横向き溝25を形成したので、この横向き溝25に接着剤18を溜めることが出来、従来形態のように、パイル地34の側面13に付着の接着剤18が立壁部21に沿って上方に押し出されるような不具合は生じない。
【0045】
立壁部21の側面23に、パイル地34の周縁に対する端止め縁材11の差込み限界を規制するための隆起部27が設けられていると、該隆起部27にパイル地34の側面13が突き当たることにより、立壁部21とパイル地34の側面13との間の対向間隙を確保することが出来る。このように対向間隙が確保されると、横向き溝25が、パイル地34の側面13に押されて潰れることを効果的に阻止することが出来るため、横向き溝25から接着剤18が押し出されるのを確実に防ぐことができる。
【0046】
平坦部20と立壁部21の交わる入隅に出隅状に凸状ライン27aを突出形成すると、隆起部27が剛直になるので、横向き溝25が潰れる虞れは和らげられる。
【0047】
図3は、本発明の第2実施形態に係る端止め縁材11を示す。パイル地34には、ダブルウイルトン織機によって織成された一越パイル織物が適用されている。立壁部21の側面23に突出形成されていた隆起部27を省いた点が、先の第1実施形態と相違する。それ以外は、第1実施形態と同様であるので、同一の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0048】
この第2実施形態に係る端止め縁材11においても、先の第1実施形態と同様の作用効果を得ることが出来る。尤も、隆起部27を省いたため、横向き溝25がパイル地34の側面13に押されて潰れ易くなるが、この第2実施形態に係る端止め縁材11は、第1実施形態に係る端止め縁材11に比べて、製造コストが安価に済む点で有利である。
【0049】
図4は、本発明の第3実施形態に係る端止め縁材11を示す。パイル地34には、ダブルウイルトン織機によって織成された一越パイル織物が適用されている。立壁部21の側面23の上下方向の中央部には隆起部27としてリブ27bが設けられており、この点で、先の第1実施形態と相違する。それ以外は、第1実施形態と同様であるので、同一の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。この第3実施形態に係る端止め縁材11においても、先の第1実施形態と同様の作用効果を得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の第1実施形態に係るカーペットの縦断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る端止め縁材の斜視図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係るカーペットの縦断面図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係るカーペットの縦断面図である。
【図5】本発明のカーペットの巻き上げられた状態での斜視図である。
【図6】本発明の端止め縁材の折り曲げた状態での斜視図である。
【符号の説明】
【0051】
11 端止め縁材
12 基布
13 基布の側面
14 地緯糸
15 地経糸
16 パイル糸
17 〆経糸
18 接着剤
19 パイル
20 平坦部
21 立壁部
22 立壁部の上端
23 立壁部の側面
24 上面
25 横向き溝
26 裏面
27 隆起部
27a 凸状ライン
27b リプ
28 垂直面
29 水平面
30 テーパー部
31 沈糸
32 端止め縁材の側縁
33 平坦部の裏面
34 パイル地
35 パイル面
36 段差
37 上端縁
38 下端縁
39 折り目

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 基布(12)からパイル(19)が突き出たパイル地(34)の周縁を端止め縁材(11)によって縁取って構成され、
(b) 端止め縁材が、パイル地の裏面(26)に当接する平坦部(20)と、上端(22)が平坦部側(20)に偏ってパイル地の側面に向き合う横向き溝(25)を形成して平坦部(20)から突出した立壁部(21)とを軟質樹脂組成物によってL字断面形状に一体成形して成り、
(c) 平坦部の上面(24)が、接着剤によってパイル地の裏面(26)に接着されており、
(d) パイル地の基布の側面(13)に立壁部の側面(23)が密着しており、
(e) 立壁部の側面と基布の側面の間に接着剤(18)が介在しており、
(f) 立壁部(21)の上端(22)が、パイルの根元(19b)と先端(19a)の間に向き合っているカーペット。
【請求項2】
(g) 立壁部(21)が弾性変形してパイル地の側面に当接しており、その弾性復元力によって立壁部の上端(22)がパイルの根元(19b)と先端(19a)の間の部分に密着している前掲請求項1に記載のカーペット。
【請求項3】
(h) パイルの根元(19b)から立壁部の上端(22)に到る距離(R)が、パイルの根元(19b)から先端(19a)に到るパイル長(H)の半分以下である前掲請求項1と2の何れかに記載のカーペット。
【請求項4】
(i) 平坦部(20)が厚み(S)2mm以下の扁平断面形状を成し、
(j) パイル地の周縁より内側に向けて斬次薄くなるテーパー部(30)が平坦部(20)に形成されており、
(k) パイル地の周縁より内側となるテーパー部(30)の側縁(32)における平坦部(20)の厚み(T)が、1mm以下である前掲請求項1と2と3の何れかに記載のカーペット。
【請求項5】
(l) パイル長(H)が5mm以上である前掲請求項1と2と3と4の何れかに記載のカーペット。
【請求項6】
(m) パイル地(34)がパイル織物であり、
(n) 色彩の異なる2種類以上のパイル糸(16a・16b)によるパイル(19・19)が選択的に形成されており、
(o) その選択されずに残るパイル糸(16a又は16b)が、基布(12)に織り込まれて沈糸(31)となり、基布(12)の一部を構成している前掲請求項1と2と3と4と5の何れかに記載のカーペット。
【請求項7】
(p) 横向き溝内(25)に、パイル地の基布の側面(13)に向けて隆起した隆起部(17)が形成されている前掲請求項1と2と3と4と5と6の何れかに記載のカーペット。
【請求項8】
(q) 隆起部(17)が平坦部(20)の上面(24)と立壁部(21)の側面(23)の交わる入隅に出隅状に隆起した凸状ライン(17a)を形成している前掲請求項7に記載のカーペット。
【請求項9】
(r) 平坦部の裏面(33)が、基布の裏面(26)に比して高い防滑性を有する前掲請求項1と2と3と4と5と6と7と8の何れかに記載のカーペット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−161507(P2008−161507A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−355405(P2006−355405)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(395014769)堀田カーペット株式会社 (3)
【Fターム(参考)】