説明

カーペット

【課題】
本発明の課題は、石油資源の使用量を減少させ、大気中の二酸化炭素の増大を抑制しうる、バイオマス資源由来の原料を使用した耐摩耗製に優れたカーペットを提供すること。
【解決手段】 本発明のカーペットは、バイオマス由来成分からなるポリエチレンテレフタレート繊維をパイル部分に用いたカーペットであって、そのポリエチレンテレフタレート繊維に含まれる1950年代の循環炭素中の放射性炭素(14C)濃度を基準として求まるバイオマス資源由来の炭素の割合(実測バイオ化率)が、ポリマー中の全炭素原子に対して10%以上であることを特徴とするカーペットであり、その摩耗減量率は20%以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイル部分にバイオマス資源由来の原料からなるポリエステル繊維を用いたカーペットに関するものである。さらに詳しくは、本発明は、パイル部にバイオマス資源由来のエチレングリコールと化石資源由来のテレフタル酸および/またはそのエステル形成性誘導体からなるポリエチレンテレフタレート繊維を含んでなるカーペットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと記載することがある。)は、機械的強度、化学的安定性および透明性等に優れていることから、繊維、シート状繊維構造物およびフィルム等の成形品として、最も多く使用されているポリマーである。
【0003】
PETは、従来、石油から得られたテレフタル酸(以下、TPAと記載することがある。)と、石油から得られたエチレングリコール(以下、EGと記載することがある。)を、エステル化反応後、重縮合反応させて製造されている。従来のPETは、このように石油原料を用いていることから、焼却廃棄され大気中に化石資源からの二酸化炭素を多量に排出する。
【0004】
一方で、サトウキビ、トウモロコシおよびサツマイモなどから得られる澱粉等を微生物で発酵させて得られたバイオエタノールから、EGを合成し、これをTPAと重縮合させて得られたポリエチレンテレフタレートが知られている(特許文献1参照。)。
【0005】
バイオマス資源由来のPETは、焼却廃棄されても、バイオマス資源由来物質を使用している部分は、石油資源の使用量を抑制することに役立ち、仮に焼却処理して発生する二酸化炭素は、再び光合成によって植物に取り込まれることになり、大気中の二酸化炭素を増加させにくい材料である。
このように、特許文献1では、バイオマス由来物質を原料としてなる繊維が開示されているが、強度や耐久性に優れ、自動車内装向けに好適に使用できるカーペットの開示はされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−91694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、石油資源の使用量を減少させ、大気中の二酸化炭素の増大を抑制し得る、バイオマス資源由来のエチレングリコールをグリコール成分として用いたポリエチレンテレフタレートをパイル部に用いたカーペット、およびそれを用いた自動車用内装材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題を解決せんとするものであって、本発明のカーペットは、パイル部分にバイオマス由来成分からなるポリエチレンテレフタレート繊維を用いたカーペットであって、該ポリエチレンテレフタレート繊維を構成するポリエチレンテレフタレートに含まれる1950年代の循環炭素中の放射性炭素(14C)濃度を基準として求まるバイオマス資源由来の炭素の割合(実測バイオ化率)が、ポリマー中の全炭素原子に対して10%以上であることを特徴とするカーペットである。
【0009】
本発明のカーペットの好ましい態様によれば、前記のバイオマス由来成分からなるポリエチレンテレフタレート繊維をパイル部分に用いたカーペットは、摩耗減量率が20%以下である。
【0010】
本発明においては、前記のカーペットを熱成型するなどして、自動車用内装材として使用することもできる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、PET素材としての石油資源の消費を削減することができるバイオマス由来のPETカーペットが得られる。また、本発明のカーペットは、ポリマー物性としては従来の化石資源由来のPETと化学構造が変わらないことから、繊維の強度や耐久性、耐摩耗性に優れ、耐熱性が高く、成型して使用する自動車用内装材用途において好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の不織布は、バイオマス由来成分からなるポリエチレンテレフタレート繊維を用いた不織布であって、そのポリエチレンテレフタレート繊維を構成するポリエチレンテレフタレートに含まれる1950年代の循環炭素中の放射性炭素(14C)濃度を基準として求まるバイオマス資源由来の炭素の割合(実測バイオ化率)が、ポリマー中の全炭素原子に対して10%以上であることを特徴とする不織布である。
【0013】
本発明の不織布に用いられるポリエチレンテレフタレート繊維を構成するPETは、エチレングリコールとテレフタル酸を主たる構成成分としてなるものであり、得られたPETの物性が損なわれない範囲において、他のモノマー成分を共重合させることができる。その場合、エチレンテレフタレートの繰り返し単位が80モル%以上であることが好ましい。
【0014】
上記の共重合可能な酸成分としては、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸およびヒドロキシカルボン酸などが挙げられる。具体的に、芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、5−スルホイソフタル酸などが挙げられ、脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、アジピン酸、コハク酸、スベリン酸、セバシン酸およびドデカン二酸などが挙げられ、脂環族ジカルボン酸としては、シクロヘキサンジカルボン酸が挙げられ、ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシヘプタン酸およびヒドロキシオクタン酸などが挙げられる。
【0015】
また、共重合可能なアルコール成分としては、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールおよびビスフェノールAのエチレンオキシド付加体などの二価アルコールや、ペンタエリスリトールなどの多価アルコールが挙げられる。
【0016】
本発明で用いられるポリエチレンテレフタレート繊維を構成するPETは、放射性炭素(14C)測定によるところのバイオマス由来炭素を、ポリマー中の全炭素に対して10.0%以上含有していることが必要である。
【0017】
本発明において、上記のPET中のバイオマス由来の炭素の含有割合が10.0%未満である場合、得られるPETとしては、石油資源の使用量削減や温室効果ガスの排出抑制の面では効果が乏しいものとなる。
【0018】
バイオマス由来の炭素の含有割合の上限値としては、理論上全てのエチレングリコールがバイオマス由来となった場合、ポリマー中の全炭素に対して20%となることから、20%以下であることが好ましい。
【0019】
次に、ポリマー中の全炭素原子に対して、1950年代の循環炭素中の放射性炭素(14C)の濃度を基準として求まるバイオマス資源由来の炭素の割合(実測バイオ化率)」について説明する。
【0020】
放射性炭素14Cの濃度は、次の放射性炭素濃度測定法により測定することができる。
【0021】
放射性炭素濃度測定法とは、加速器質量分析法(AMS:Accelerator Mass Spectrometry)により、分析する試料に含まれる炭素の同位体(12C,13C,14C)を、加速器により原子の重量差を利用して物理的に分離し、同位体原子それぞれの存在量を計測する方法である。炭素原子は、通常12Cであり、同位体である13Cは約1.1%存在している。14Cは、放射性同位体と呼ばれ、その半減期は約5370年で規則的に減少している。これらが全て崩壊するには、22.6万年を要する。地球の高層大気中では宇宙線が継続的に照射されつづけており、微量ではあるが、絶えず14Cが生成され放射壊変とバランスし、大気中では14Cの濃度はほぼ一定値(炭素原子の約一兆分の一)となっている。この14Cは、直ちに二酸化炭素の12Cと交換反応をおこし、14Cを含んだ二酸化炭素が生成する。植物は、大気中の二酸化炭素を取り込み光合成により成長するため、14Cが常に一定濃度で含まれることになる。
【0022】
これに対して、化石資源である石油、石炭および天然ガスにおいては、当初は含まれていた14Cが長い年月をかけて既に崩壊しており、ほとんど含まれていない。そこで14Cの濃度を測定することにより、バイオマス資源由来炭素をどの程度含んでいるのか、化石資源由来炭素をどの程度含んでいるのかを判別することができる。中でも、特に、1950年代の自然界における循環炭素中の14C濃度を100%とする基準を用いることが通常おこなわれ、標準物質としてシュウ酸(米国基準・科学技術協会NIST供給)が用いられ、下式のように表される値が求められる。この割合の単位としては、pMC(percent Modern Carbon)が用いられる。
pMC=(14sa1450)×100
1450:標準物質の14C濃度(1950年代の自然界における循環炭素中の14C濃度)
14sa:測定サンプルの14C濃度。
【0023】
現在、このようにして測定される大気中の14C濃度は、約110pMC(percent Modern Carbon)であることが測定されており、仮に100%バイオマス資源由来の物質であれば、ほぼ同じ110pMC程度の値を示すことが知られている。この値を100%の基準として求まる対象物質のpMCの割合(%)を、本発明でいう「ポリマー中の全炭素原子に対して、1950年代の循環炭素中の放射性炭素(14C)の濃度を基準として求まるバイオマス資源由来の炭素の割合(実測バイオ化率)」と言う。
【0024】
一方、化石資源由来の物質を測定して求められる14C濃度(pMC)は、ほぼ0pMCであることが知られており、この場合、実測バイオ化率は0%となる。
【0025】
本発明でいう実測バイオ化率は、化石資源の減少および二酸化炭素の増大をより抑制するためには10%以上であることが必要である。
【0026】
実質バイオ化率は、好ましくは13%以上であり、さらに好ましくは15%以上である。
【0027】
実質バイオ化率は、PETの原料である、テレフタル酸とエチレングリコールの内、エチレングリコールのバイオ化率によって決定される。理論上全てのエチレングリコールがバイオマス由来となった場合、ポリマー中の全炭素に対して20%となる。
【0028】
すなわち、実質バイオ化率10%以上とは、少なくとも50%以上のエチレングリコールがバイオマス由来であった場合に達成される。実質バイオ化率13%以上とは、65%以上のバイオマス由来エチレングリコールを使用すること、実質バイオ化率15%とは、75%以上のバイオマス由来エチレングリコールを使用することを意味する。
【0029】
本発明で用いられるPETとしては、固有粘度が0.50以上であることが好ましく、より好ましくは0.60以上である。本発明のPETにおける固有粘度が0.5未満である場合、繊維として使用する際、強度が不足する傾向がある。固有粘度の上限としては、特に規定しないが、工業的に実施する際には設備能力および経済性等を考慮して、1.2程度を上限とすることが好ましい。
【0030】
次に、バイオマス由来からなるEGについて述べる。
【0031】
バイオマス由来のEGは、サトウキビやトウモロコシ等の糖質を発酵させて得られるバイオエタノールを出発物質として用いることが好ましい。バイオエタノールを脱水し、エチレン合成し、エチレンを酸化して得られるエチレンオキサイドを加水分解することにより、バイオマス由来のエチレングリコールを得ることができる。
【0032】
一方TPAは、石油由来のTPAを用いる。一般的には、パラキシレンを酸化し、得られた粗テレフタル酸を精製することにより、高純度テレフタル酸(TPA)を得ることができる。
【0033】
本発明で用いられるPETは、次のような方法で製造することができる。例えば、バイオマス由来のEGなどのグリコール成分とTPAなどの酸成分を用いて通常の手法で重縮合する方法、石油由来のPETをバイオマス由来のモノマー成分で解重合した後、再度重縮合を行いバイオマス由来成分を導入する方法、およびバイオマス由来PETと石油由来のPETとをブレンド又はエステル交換させる方法などで、PETを製造することができる。
【0034】
次に、上記の通常の手法で重縮合する方法の場合について例示説明すると、まず、TPAとバイオマス由来のEGとを常法によってエステル化してポリエステル低重合体を得る。次いで、得られたこのポリエステル低重合体に、必要に応じて共重合モノマーを添加し、重縮合触媒の存在下で溶融重合を行うものである。
【0035】
また、本発明のPETの製造法としては、チップ状に成型された後、さらに重合度を上げたり、オリゴマーや不純物を減少させるため、必要に応じ、固相重合を行ってもよい。固相重合の方法としては、例えば、PETチップを150〜180℃の温度で1〜10時間加熱して予備乾燥させた後、190〜235℃、好ましくは200〜230℃の温度で、不活性ガス雰囲気下または減圧下で、好ましくは1〜30時間、より好ましくは5〜20時間加熱することにより行われる。
【0036】
また、本発明で用いられるPETは、発明の効果を損なわない範囲で、酸化チタン粉末のようなダル化剤、染料、顔料、蛍光増白剤、難燃化剤、吸湿剤、熱安定化剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、防カビ剤および消臭剤などを含んでいてもよい。
【0037】
次に、本発明で用いられるPET繊維の製造方法について説明する。
本発明で用いられるPETを用いてPET繊維を製造する場合、好適には270〜300℃の高温で溶融したPETを紡糸口金から押し出し、ユニフロー型チムニーにて冷却固化させた後、油剤ローラーにて油剤を付与した。油剤を付与した糸条を500〜700m/分の表面速度を有する第1ローラー(非加熱)で巻き取った後、連続して延伸工程に供した。第1ローラーを通過した糸条を速度500〜700m/分の第2ローラー(60〜90℃)、速度1500〜2000m/分の第3ローラー(120〜140℃)、速度1500〜2000m/分の第4ローラー(180〜200℃)に連続して供することで延伸を行い、引き続いて、座屈捲縮ノズル(ノズル温度200〜220℃、ノズル圧力6〜9kg/cm)にて蒸気による流体座屈捲縮加工を行い、捲縮糸を得ることができる。
さらに、本発明においては、パイル糸に用いる捲縮糸を構成する単糸の繊度は10〜50dtexである。好ましくは、単糸繊度が15〜30dtexである。単糸繊度が10dtex未満となるとダストコントロールマットとしたときの圧縮回復性が悪化してくる。また、50dtexを越えるとカーペットとしての手触りが悪化してくるため好ましくない。
捲縮糸を構成する単糸の本数は、10〜300本であることが好ましく、そのトータル繊度は、500〜3000dtexであることが好ましい。単糸本数が300本を越え、またはそのトータル繊度が500dtex未満であるとカーペットとしたときの摩耗性が悪化してくる。また、単糸本数が10本未満で、そのトータル繊度が3000dtexを越えるとカーペットとしたときの手触りが悪化してくる。
また、本発明に用いられる捲縮糸の強度は1〜10cN/dtexであることが好ましい。1cN/dtex未満であると、製造の際、糸切れが生じやすくなり正常にタフトできない場合があるうえに、ダストコントロールマットとしたときの耐久性が悪化してくる場合がある。また、10cN/dtexを越えるものは製造が難しくなる。
また、パイル糸を構成する捲縮糸は、沸騰水処理後の捲縮伸長率が5〜50%であることが好ましく、さらに好ましくは5〜30%である。沸騰水処理後の捲縮伸長率が5%未満である捲縮糸を用いてカーペットを製造すると、得られたカーペットの外観や摩耗性が悪化し易く、一方50%を越える捲縮糸を用いる場合はカーペットを製造すること自体が難しくなる。
次に、本発明の不織布の製造方法について、説明する。
上記のようにして製造されたバイオマス由来成分からなるポリエチレンテレフタレート繊維を、タフティングマシン等により織物、編物、不織布などの布帛からなるカーペット基布にタフトし、パイル糸の抜糸強度を上げたり、パイル糸を固定するために接着剤としてSBR,アクリル樹脂を20〜400g/m(乾燥時)塗布し表皮材層を作成する。次に、表皮材層の裏面にバッキング層としてTダイ押出機を用いてポリエチレン等の樹脂を100〜2000g/mで塗布したり、ポリエステルからなる目付け100〜1000g/mのニードルパンチ不織布を張り合わせる。
【0038】
又、使用するニードルパンチ不織布もバイオマス由来成分からなるポリエチレンテレフタレート繊維を用いることがより好ましい。
【0039】
又、パイル部分に使用するバイオマス由来成分からなるポリエチレンテレフタレート繊維は捲縮糸を2本から10本に合糸または、撚糸しても良い。捲縮糸を撚糸する際、その撚り回数は、50〜300回/mであることが好ましくさらに好ましくは、80〜220回/m、より好ましくは、80〜190回/mである。
【0040】
撚り止めと捲縮糸のバルキー性を高めるため、熱セットしても良く。熱セットの方法は、連続セット法(弛緩常態でスチームまたは乾熱によるセット法)やオートクレープ等の公知の方法で良く、熱セット温度は100〜150℃が好ましい。
カーペットの加工形態としては例えば、段通、ウイルトン、ダブルフェイス、アキスミンター等の織りカーペットや、タフティング、フックドラグ等の刺繍カーペットや、ボンデッド、電着、コード等の接着カーペット、あるいはその組み合わせを用いることができる。
【0041】
本発明のカーペットは、バイオマス由来成分からなるポリエチレンテレフタレートから構成される捲縮糸を用いたパイル部分の目付が、200〜5000g/mになるようにタフトされる。さらに好ましくは、300〜3000g/m、さらに好ましくは、350〜2000g/mである。パイル目付が200g/m未満であると摩耗性が著しく悪化してくる。また、5000g/mを越えるとコストパフォーマンスが悪くなる。
本発明のカーペットの摩耗減量率は、JIS L 1096に規定されるテーバ形法に準じて後述のように定義される摩耗減量率が20%以下であることが好ましい。
このようにして得られたカーペットを用いて熱成型することによって、自動車用内装材向けフロアカーペットとすることができる。また、バイオマス由来のPET繊維と同芯鞘複合繊維からなるカーペットを用いた自動車用内装材の製造方法としては、カーペットを遠赤ヒーターなどの熱処理装置を用いて表面温度190〜250℃に加熱処理を行いその後、冷間プレスする方法などが好ましく用いられる。
本発明のパイル部にバイオマス由来成分からなるPET繊維を用いたカーペットは、物性に優れ、大気中の二酸化炭素を増やしにくいことから、特に自動車用内装材へ好適に用いることができる。
【実施例】
【0042】
[測定方法]
(1)実測バイオ化率の測定方法
PETサンプルを、サンドペーパーおよび粉砕機を用いて粉砕した後、酸化銅と共に加熱し、完全に二酸化炭素まで酸化し、これを鉄粉でグラファイトまで還元することにより、炭素単一化合物に変換する。得られたグラファイトをAMS装置に導入し、ASTM−D6866法に基づいて測定した。標準物質であるシュウ酸(米国基準・科学技術協会NIST供給)を同時に測定し、標準物質の14C濃度を基準として14C濃度(pMC)を求めた。一方、100%バイオ由来のポリ乳酸の14C濃度(pMC)を同様の方法で求めた。このポリ乳酸の14C濃度(pMC)を100%の基準として、サンプルの実測バイオ化率を求めた。少数第1位以下は四捨五入した。100%を超えた場合は、100%とした。
(2)引張強度、引張伸度
JIS L 1013:1999 8.5.1に拠って測定した。
試料を緩く張った状態で、引張試験機(オリエンテック社製“テンシロン”(登録商標)UCT−100)のつかみにつかみ間隔20cmで取り付け、引張速度20cm/分の定速伸長にて試験を行った。初荷重をかけたときの伸びを緩み(mm)として読み、更に試料を引っ張り、試料が切断したときの荷重及び伸び(mm)を測定し、次の式によって引張強さ(引張強度)及び伸び率(引張伸度)を算出した。試験回数は10回とし、その平均値を算出した。
=SD/F
ここに、T:引張強さ
SD:切断時の強さ
:試料の正量繊度
伸び率(%)=[(E−E)/(L+E)]×100
ここに、E:緩み(mm)
:切断時の伸び(mm)
L:つかみ間隔(mm)。
【0043】
(3)固有粘度
オルトクロロフェノールを溶媒として、25℃の温度で測定した。
【0044】
(4)捲縮伸張率
捲縮糸のパッケージを、室温30±5℃、相対湿度50〜75%の雰囲気中に20時間以上放置した後、当該パッケージから捲縮糸を解舒し、これを無荷重状態で30分間沸騰水に浸漬処理した後、平衡水分率まで乾燥した。これを長さ50cm強に切り取り、試料とした。この試料糸に2mg/dtex(0.0196mN/dtex)の初荷重をかけて30秒経過後に、垂下支点からの長さ50cm(L)の位置にマーキングをした。次いで、同試料に100mg/dtex(0.98mN/dtex)の定荷重をかけて30秒経過後に、垂下支点から先のマーキング位置までの長さ(L2)を測定した。下記式により、捲縮伸張率を求めた。
捲縮伸張率(%)=[(L−L)/L]×100 。
【0045】
(5)繊維の異形度
糸の断面を切り出し、単繊維横断面の外接円の直径Dと、単糸横断面の内接円の直径dとから次式により求めた。
異形度=D/d 。
(6)パイル糸の目付
タフト後のカーペットを50cm角に切り取り、当該試料におけるパイル糸の総質量を測定し、単位面積(1m)あたりに換算したものをパイル糸の目付とした。
【0046】
(7)カーペットの摩耗減量率
JIS L 1096:1999 8.17.3 テーバー形法に準じて、H−38摩耗輪を使用し、左右一対のそれぞれの摩耗輪に1kgf(9.8N)の荷重をかけて所定回転数回転してカーペットを摩耗させた後、その未摩耗部分と摩耗部分(JIS L 1096:1999 図20参照。)との目付から摩耗減量率(%)を下記式にて算出した。
摩耗減量率(%)=[(未摩耗部分のパイル目付−摩耗部分のパイル目付)/摩耗部分のパイル目付]×100
回転数は、2000回とした。
【0047】
<参考例1>
石油由来のテレフタル酸とバイオマス(サトウキビ)由来のエチレングリコール(インディアグリコール社製)を、モル比1/1.6のスラリーとして重合反応容器中へ供給し、温度250℃、圧力50hPaGの条件で8時間反応させ、その後、酸成分1モルに対し、重合触媒の三酸化アンチモンを1.7×10−4モルを加え、重合反応容器中を減圧にして温度280℃、圧力0.67hPaで2時間重合させ、固有粘度0.62バイオマス由来のPETを得た。
得られたバイオマス由来PETは、減圧乾燥後、290℃の2軸エクストルーダー式押出機に連続的に供給し連続的に溶融した。溶融ポリマーを290℃の配管を通じて8段のスタティックミキサーで混練し、ギヤポンプにて総繊度が1450dtexとなるように計量した後、290℃の紡糸パックに導き、パック内では15ミクロンカットのフィルターを通過させ、スリット長1.2mm、スリット幅0.16mmのY型孔が54個開けられた口金より押し出した。
紡出糸条を、ユニフロー型チムニーにて冷却固化させた後、油剤ローラーにて油剤を付与した。油剤を付与した糸条を600m/分の表面速度を有する第1ローラー(非加熱)で巻き取った後、連続して延伸工程に供した。第1ローラーを通過した糸条を速度600m/分の第2ローラー(80℃)、速度1800m/分の第3ローラー(150℃)、速度2160m/分の第4ローラー(180℃)に連続して供することで延伸を行い、引き続いて、座屈捲縮ノズル(ノズル温度220℃、ノズル圧力9kg/cm)にて蒸気による流体座屈捲縮加工を行った。その後63m/分のロータリーフィルターで冷却し、1790m/分で巻き取ることにより単繊維繊度26.8dtex、強度2.2cN/dtex、捲縮率16.8%、異形度2.5の捲縮糸を得た。製糸性は良好であった。実測バイオ化率は20%であった。
【0048】
[実施例1]
参考例1で得られた捲縮糸をリング式撚糸機を用いて下撚りとしてS撚りを190回/mかけ、さらに2本合糸し、上撚りとしてZ撚りを190回/mとした後、スペルバー式セット機にて120℃にて熱セットを施し撚糸を得た。
【0049】
次に、前記撚糸を目付け100g/mのポリエステルスパンボンド基布に、1/10ゲージ、ステッチ9.2個/mm、パイル長9.5mmで目付1100g/mでタフトし、アクリル系樹脂を180g/m(乾燥時)塗布し表皮材層を作成した。次に表皮材層の裏面に目付け300g/mのポリエステル不織布を張り合わせてカーペットを得た。得られたカーペットの摩耗減量率は5.2%と良好な摩耗性であった。
【0050】
[実施例2]
参考例1で得られた捲縮糸を1/10ゲージ、ステッチ11.0個/mm、パイル長6.0mmで目付400g/mでタフトし、アクリル系樹脂を50g/m(乾燥時)塗布し表皮材層を作成した。次にTダイ押出機を用いてポリエチレン等の樹脂を800g/m塗布してカーペットを得た。得られたカーペットを表面温度200℃に加熱し、冷間プレスにて成型したところ、破れやスケのない成型品を得ることができ、自動車内装材向けフロアカーペットとして好適に使用できるものであった。
【0051】
又、摩耗減量率は12.2%と良好な摩耗性であった。
【0052】
〔比較例1〕
実施例1において、エチレングリコールとして、石油由来のエチレングリコール(BASF製、原料は石油からなり、純度は99%以上)のみを用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施した。得られたカーペットのパイル部分のバイオ化率は0%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーペットのパイル部分がバイオマス由来成分からなるポリエチレンテレフタレート繊維を用いたカーペットであって、該ポリエチレンテレフタレート繊維を構成するポリエチレンテレフタレートに含まれる1950年代の循環炭素中の放射性炭素(14C)濃度を基準として求まるバイオマス資源由来の炭素の割合(実測バイオ化率)が、ポリマー中の全炭素原子に対して10%以上であることを特徴とするカーペット。
【請求項2】
カーペットのパイル部分がバイオマス由来成分からなるポリエチレンテレフタレート繊維を用いたカーペットであって、該カーペットの摩耗減量率が20%以下であることを特徴とする請求項1記載のカーペット。
【請求項3】
請求項1または2記載のカーペットからなる自動車用内装材。
【請求項4】
請求項1または2記載のカーペットが熱成型されてなる自動車用内装材。

【公開番号】特開2013−102787(P2013−102787A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246214(P2011−246214)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】