説明

カールコードのカール成型部に生じるカールの変形や絡まりの低減構造

【目的】
通常の使用によりカールコードにおけるカール成型部に生じる変形や絡まりを低減することができ、また、前記変形や絡まりが生じた場合であっても、これらを容易に直せて元の状態に戻すことができるカールコードにおけるカール成型部の変形や絡まりの低減構造を提供できるようにする。
【解決手段】
カールコードの本体たるコード1のカール成型部2におけるカール内空2aに、該コード1の動きに追従できて、且つ、コード1の動きに追従するにしたがい付勢力を蓄積できる例えばシリコーンゴムなどのフレキシブルロープ3を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家電製品等に用いられるカールコードのカール成型部に生じるカールの変形や絡まりの低減構造に関し、さらに、携帯物品と携帯者を接続して携帯物品の落下防止等に用いられる安全ロープや落下防止用ロープの名称で販売されているカールロープなどのカール成型部にも応用できる同カール成型部に生じるカールの変形や絡まりの低減構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カールコードの多くは家電製品に用いられており、例えば固定電話機では、本体とハンドセットとの間に配しているコードに用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、日々使用される電話機は、図7中(a)に示したように、電話機本体7とハンドセット8との間に配したカールコード9の一部分が、図7中(b)に示したように変形してしまう(変形した部位10)ことが頻繁に発生していた。
【0004】
さらに、ハンドセット8を電話機本体7に戻す際、同戻し方によってはカールコード9が捩れ、図8に示したように、同カール部分が絡まってしまう(絡まった部位11)こともあり、特に、長年使用しているものではカール部分が伸びているので、カール間に空く隙間も大であってカール部分がより絡まり易くなっている。
【0005】
そして、電話機を使用する者にとっては、カールコードに生じた図7や図8に示したようなカールの変形(変形した部位10)や絡まり(絡まった部位11)は非常に見苦しくまた使い難いものであることから、ときどきこれらを直して元の状態に戻していた。
【0006】
また、カールの変形や絡まりを直して元の状態に戻す場合も、初期段階のものでは比較的容易に元の状態に戻すことができるのであるが、時には変形や絡まりが進行していることがあって、この場合は元の状態に戻すのに手間や時間が掛り非常に面倒なものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−250740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的とするところは、通常の使用によりカールコードのカール成型部に生じるカールの変形や絡まりを低減させることができ、また、前記変形や絡まりが生じた場合であっても、これらを容易に直せて元の状態に戻すことができるカールコードのカール成型部に生じるカールの変形や絡まりの低減構造を提供できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明に係るカールコードのカール成型部に生じるカールの変形や絡まりの低減構造の要旨とするところは、カール状すなわち螺旋の形状に形成した部分を有するコードの少なくともカール成型部のカール内空に、該コードの動きに追従できるように所定の追従部材を設けて構成し、且つ、該追従部材に、前記コードの動きに追従するにしたがい付勢力を蓄積できるものを用いたことを特徴とするものである。
【0010】
本発明を更に詳しく説明すると、家電製品に用いられるカールコードは、所定の曲率で形成したカール部分の両端に、必要に応じてそれぞれ相当な長さの直線部を設けて構成されており、また該直線部の両自由端部に、所定の機器に接続するための例えばモジュラージャックやプラグ/プラグソケットなどの接続用部材が設けられている。
【0011】
そして、カールコードの少なくともカール成型部のカール内空に設ける追従部材としては、該カールコードの伸縮や曲折などの動きに追従して動くことができるものであればよく、一般的には素材の性質によるもの(合成樹脂素材などの材質)が適しているが、伸縮や曲折などの動きができるように構成した構造物を用いてもよい。
【0012】
また、前記追従部材を素材の性質によるものから形成する場合の具体例としては、天然ゴムや合成ゴム(エラストマー/シリコーンなど)素材からなる柔軟且つ弾性を有した単伸縮線、この単伸縮線を複数束ねて、例えば、適当な本数を並べて構成したものや適当な本数を撚り合わせて形成したもの(撚り線)等の所定の伸縮線、あるいは、柔軟且つ弾性を有した伸縮チューブによって構成してもよく、カールコードの応用形態に合わせて適宜に選定すればよい。
【0013】
また、前記追従部材の長手方向断面形状においては、カール内空の断面空間形状に略合わせた円形にするのが普通であるが、これに限定するものではなく、追従部材の機能を確保できる範囲において他の断面形状にしてデザイン性を考慮した形状にしてもよい。
【0014】
さらに、追従部材を柔軟且つ弾性を有する板状体を用いて構成してもよく、この板状体はカールコードの応用形態に合わせて単数あるいは複数用い、特に複数用いる場合は、カール内空の空間断面形状に対応するよう追従部材のカール内空配設方向に対する幅寸法を適当に変えたものを並設して用いて、追従部材の長手方向断面形状とカール内空の空間断面形状が略合うようにしてもよい。
【0015】
そして、前記板状体は、一般的にはコスト的に有利な板状の単一部材を用いて板状体とするが、所定の形状の単一部材を複数並設して単一の板状体に形成したものを用いる場合もある。
【0016】
他にも、追従部材を、柔軟且つ弾性を有した伸縮可能な織物部材、例えば、細目のネットなどによって構成してもよいが、カールコードの応用形態によってはネットの目に外部の部材が引っ掛からないようにしなければならない場合もある。
【0017】
また、追従部材を伸縮や曲折などの動きができるように構成した構造物から形成する場合は、例えばコイルスプリングなどで構成してもよいが、カールコードの応用形態によってはコイルの目に外部の部材が引っ掛からないようにしなければならない場合もある。
【0018】
そして、上述した追従部材をカールコードの伸縮や曲折などの動きに追従して動くことができるようにする具体例としては、追従部材の両端を、それぞれカールコードにおける両直線部のそれぞれの自由端部に設けた接続用部材に接続したり、あるいは、両直線部やカール成型部の両基部に接続すればよく、この接続も追従部材を直接または接続に利用可能な部材を介して間接的に接続すればよい。
【0019】
そして、カール成型部が少なくとも初期位置の縮んだ状態のときは、前記付勢力により追従部材も初期位置の安定した状態に近い状態に自己復帰できるよう構成しておくのが望ましい。
【0020】
また、カール内空に設ける追従部材は、カールコードの仕様(例えば、カール成型部の自己復帰力の強さなど)を考慮して好適な仕様(例えば、太さや自己復帰力の強さなど)にすればよい。
【0021】
また、追従部材の一部あるいは全部を、柔軟且つ弾性を有したカバー内に収納した状態でカール内空に設けてもよく、例えば、カール内空に位置する追従部材の部位をカバー内に収納するようにしてもよい。
【0022】
そして、本発明のカールコードのカール成型部に生じるカールの変形や絡まりの低減構造における該カールコードの範囲は、電線は勿論のこと、携帯物品と携帯者を接続して携帯物品の落下防止などに用いられる安全ロープや落下防止用ロープの名称で販売されている作業用の用具、釣りや登山などのアウトドア・アク
ティビティ用の用具、インドアクライミングなどのインドア・アクティビティ用の用具、少なくともこれらを含むものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明のカールコードのカール成型部に生じるカールの変形や絡まりを低減できる構造によれば、カールコードのカール部分に変形が生じる兆候が生じた場合でも、カール状すなわち螺旋の形状に形成した部分を有するコードの少なくともカール成型部のカール内空に設けた追従部材に生じる自己復帰力が変形を抑制するので、カールコードのカール部分に生じる変形を大に低減することができる。
【0024】
また、追従部材の抑制力を超えてカール部分に変形が生じた場合でも、追従部材に生じる自己復帰力が修復用のアシスト力になるので、容易にカールの変形を直すことができてカールコードを素早く元の正常なカール状態に戻すことができる。
【0025】
そして、カールコードが捩れるなどして同コードのカール部分どうしが絡み合った場合でも、カール内空に設けている追従部材によってコードのカール内空への進入が抑止されるので、カール部位におけるコードの絡まりを大に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係るカールコードの初期位置の状態を示す図。
【図2】図1中に示す符合Aの部位における拡大断面図。
【図3】引き延ばされたカールコードの状態を示す図。
【図4】本発明のカールコードを用いた図。
【図5】本発明のカールコードを用いた電話機を示した図。
【図6】追従部材の一例を示す斜視図。
【図7】従来のカールコードを用いた電話機を示す図。
【図8】従来のカールコードを用いた電話機を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係るカールコードのカール成型部に生じるカールの変形や絡まりの低減構造を、添付図面に示す具体例に基づいて詳細に説明する。
また添付図面は、家電製品たる固定電話機に配しているカールコードを一例に説明する。
【0028】
本発明の構造を用いてなるカールコードは、図1に示すように、カールコード本体たるコード1のカール成型部2におけるカール内空2a(図3を参照)を通過させて、追従部材たる例えばシリコーンゴムなどからなるフレキシブルロープ3を設けている。
また、図中の符合4は、コード1を所定の機器に接続するための接続用モジュラージャックである。
【0029】
そして、フレキシブルロープ3がコード1に追従して動ける(図3を参照)ように、フレキシブルロープ3の両端を、それぞれ接続部材3aを介してコード1のカール成型部2における両基部に接続(固定)している。
【0030】
また、本実施例に示したフレキシブルロープ3は、図2に示すように、カール成型部2におけるカール内空2aの空間径よりも小なる断面径のフレキシブルロープ3(細径)を一例にして説明しているが、カールコードの仕様(例えば、カール成型部の自己復帰力の強さや応用物品など)によっては、断面径を大にする太径のフレキシブルロープ(図示は省略)を用いる場合や、フレキシブルロープの外周面がカール内空2a側のコード1面に接触あるいは略接触できるもの(図示は省略)、さらには、図6に示すような板状のフレキシブルロープを用いる場合があり、同6図の(a)は、単一部材からなる断面略方形のフレキシブルロープ3b、(b)は、例えば断面略円形の単一部材を複数並べてなるフレキシブルロープ3cで、必要に応じて周囲をフレキシブル部材でカバーする場合がある。
【0031】
以下、上述のように構成した本発明に係るカールコードのカール成型部に生じるカールの変形や絡まりの低減構造の作用を説明する。
【0032】
図4に示すように、カールコード本体たるコード1が図中の矢印B方向に捩れて行くと、コード1とともにこのカール内空2aに設けているフレキシブルロープ3も図中の矢印B方向に捩れる。
【0033】
そして、フレキシブルロープ3が捩れることによってこのフレキシブルロープ3には元の状態に戻ろうとする復帰力が生じ、この復帰力すなわち図中の矢印C方向に生じる回転力によってコード1に進行する捩れを抑制し、コード1の変形を阻止するようにしている。
【0034】
また、フレキシブルロープ3の抑制力を超えてコード1に図7中(b)に示したようなカールの変形が生じてしまった場合でも、このフレキシブルロープ3に生じる自己復帰力(図4中の矢印C方向に生じる回転力)が修復用のアシスト力となり、容易にカールの変形を直すことができてコード1を素早く元の正常なカール状態に戻すことができる。
【0035】
図5は、本カールコードを用いた電話機の一例を示しており、電話機本体5とハンドセット6との間に配しているカールコードすなわちコード1は、このカール内空2aに設けているフレキシブルロープ3によってコード1に発生しようとしている変形が抑制されるので、この図5中(a)に示したように、コード1(カールコード)を変形のない状態で長期に亘り保つことができる。
【0036】
また、図5中(b)のように、カールコード(コード1)が交差している場合も、カール内空2aのフレキシブルロープ3によって双方のカールが交差相手のカール間内すなわちカール内空2aに深く進入するのが阻止されるので、たとえ双方のカールが絡んでしまっても、ハンドセット6を取り上げることによりこの絡みを解消できて、カールコード(コード1)に絡みが生じることなくハンドセット6を普通に使用することができる。
【0037】
そして、特に、長年使用しているものではカール部分が伸びているので(図示は省略)、上述する図5中(b)のように、カールコード(コード1)が交差している場合には双方のカールが交差相手のカール間内すなわちカール内空2aに深く進入し易くなっているが、この場合も、カール内空2aのフレキシブルロープ3によって双方のカールが交差相手のカール間内すなわちカール内空2aに深く進入するのを阻止できる。
【符号の説明】
【0038】
1 コード
2 カール成型部
2a カール内空
3 フレキシブルロープ
3a 接続部材
3b フレキシブルロープ
3c フレキシブルロープ
4 接続用モジュラージャック
5 電話機本体
6 ハンドセット
7 電話機本体
8 ハンドセット
9 カールコード
10 変形した部位
11 絡まった部位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カール成型部を有するコードの少なくとも該カール成型部のカール内空に、該コードの動きに追従できるように所定の追従部材を設けて構成してなり、且つ、該追従部材は、前記コードの動きに追従するにしたがい付勢力を蓄積できるものであることを特徴とするカールコードのカール成型部に生じるカールの変形や絡まりの低減構造。
【請求項2】
前記追従部材が、柔軟且つ弾性を有する単伸縮線で構成されてなることを特徴とする請求項1に記載のカールコードのカール成型部に生じるカールの変形や絡まりの低減構造。
【請求項3】
前記追従部材が、柔軟且つ弾性を有する伸縮線を複数束ねて構成されてなることを特徴とする請求項1に記載のカールコードのカール成型部に生じるカールの変形や絡まりの低減構造。
【請求項4】
前記追従部材が、柔軟且つ弾性を有する伸縮チューブで構成されてなることを特徴とする請求項1に記載のカールコードのカール成型部に生じるカールの変形や絡まりの低減構造。
【請求項5】
前記追従部材が、柔軟且つ弾性を有する板状体で構成されてなることを特徴とする請求項1に記載のカールコードのカール成型部に生じるカールの変形や絡まりの低減構造。
【請求項6】
前記カール成型部が少なくとも初期位置の縮んでいる状態のとき、前記付勢力により追従部材が初期位置の安定した状態に近い状態に自己復帰してなることを特徴とする請求項1に記載のカールコードのカール成型部に生じるカールの変形や絡まりの低減構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−198992(P2012−198992A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60548(P2011−60548)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000165882)原度器株式会社 (43)
【Fターム(参考)】