ガイド付リーマ及びガイド付リーマを用いた加工方法
【課題】ガイド部を支持する支持部を被加工物上に容易に設定できるとともにガイド部によりリーマ本体を支持した場合に工具振れを抑制してリーマ加工することができるガイド付リーマ及びガイド付リーマを用いた加工方法を提供する。
【解決手段】被加工物に当接してリーマ本体1をリーマ加工の進行方向に案内するガイド部3を備えたリーマ10であって、前記ガイド部3は、前記リーマ本体1の先端から前記進行方向に伸縮可能に突出し、前記リーマ本体1を前記進行方向に案内しながらリーマ本体1内に退避する。
【解決手段】被加工物に当接してリーマ本体1をリーマ加工の進行方向に案内するガイド部3を備えたリーマ10であって、前記ガイド部3は、前記リーマ本体1の先端から前記進行方向に伸縮可能に突出し、前記リーマ本体1を前記進行方向に案内しながらリーマ本体1内に退避する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガイド付リーマ及びガイド付リーマを用いた加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、リーマの一部にガイド部を設け、当該ガイド部を利用して被加工物である貫通穴に対してリーマ加工する技術が公知となっている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、同一軸線上の大径孔および小径孔からなる段付貫通孔を、その大径孔側よりリーマ加工を行う方法が記載されており、リーマの一部に設けたガイド部を大径孔もしくは小径孔に嵌合することでリーマの刃部が所定の被加工部分に案内されてリーマ加工をする旨が記載されている。
【0004】
また、リーマ加工のほかに、貫通孔を所定形状に加工する方法としては、被加工物に電極形状を転写することで加工を行う放電加工があり、放電加工は金型の製造などに多く用いられる。
【0005】
特許文献2には、「コントロールバルブボデーのダイカスト金型」の一例が開示されているが、このようなダイカスト金型を用いて自動変速機のコントロールバルブボデー(以下、バルブボデーという)が鋳造成形で製造される。また、特許文献2の図4に示されているように、バルブボデーが有する複数の隔壁にはバルブを通すためのコントロールバルブ制御穴(バルブ孔)が形成されており、このようなコントロールバルブ制御穴は鋳抜きで鋳造製造される。
【0006】
すなわち、特許文献2の図4に示されるように、バルブボデーを鋳造する際に用いられる鋳型は、固定側金型と可動側金型からなり、固定側金型と可動側金型とが閉塞することによりバルブボデーの成形を行うための中空部が形成される。また、可動側金型には、中空部へ突出した複数の凸部が設けられるとともに、一部の凸部を略垂直に貫通する可動ピンが設けられる。バルブボデーの成形の際には、中空部に溶湯が圧入されて凸部により流路溝が形成され、凸部間に流入した溶湯により隔壁が形成される。そして、可動側金型から可動ピンを抜き取ることにより隔壁を貫通するコントロールバルブ制御穴が形成される。
【0007】
このようにバルブボデーが有する隔壁にコントロールバルブ制御穴を開口形成するために、図5に示す可動側金型の一部の凸部8には、可動ピンが挿通するための挿通穴9が設けられており、挿通穴9はバルブボデー金型の製作時に形成される。バルブボデー金型が有する挿通穴9の形成方法としては、図11に示すように、従来から電極を用いた放電加工による方法で行われている。しかしながら、放電加工は加工精度が優れている反面、長い加工時間が必要であるというデメリットを有する。
【0008】
そこで、本願発明の発明者は、金型製作のリードタイム(L/T)短縮のため、上記放電加工に代わるバルブボデー金型の挿通穴9の形成工程として、先ず、突出した複数の凸部8(図10(a)参照)の一部にドリル加工により下穴を開口形成した後(図10(b)参照)、特許文献3に示されるような一般的なテーパーリーマを用いて下穴の拡径を行う仕上げ加工、いわゆる直彫り(切削)で仕上げ加工することを検討した。しかし、バルブボデー金型の挿通穴9の開口形成などにおいては、数十ミクロンオーダーの高い加工精度(穴径公差・位置精度)が要求されるため、リーマ加工時の工具振れ防止を目的とした特許文献4に示されるような「ガイド付き」のリーマにする必要があることがわかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平1−264717号公報
【特許文献2】特開2005−329442号公報
【特許文献3】特公平7−121486号公報
【特許文献4】実開平1−138613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、前述したバルブボデー金型の挿通穴9の開口形成においては、図10(b)のようなバルブボデー金型底面上に複数並んだ凸部8の途中まで貫通する下穴に対してリーマ加工を行うため、単にガイド部をリーマ本体の先端に固定して設けるのみでは、リーマ本体が有する刃部を各下穴の被加工部分に案内することができなかった。具体的には、特許文献1に示されるガイド付リーマは、被加工物を貫通する貫通孔自体が、リーマが有するガイド部を支持してリーマを一定の軸方向に案内する役割を果たすことになるため、ガイド部を支持する支持部が特許文献1に示されるような特定の形状の貫通穴でない場合、リーマ加工することができない。すなわち、特許文献1、特許文献4に示されているようなガイド部が固定されたリーマでは、限られた形状の貫通穴の加工にしか対応することができず、図10(b)に示すような凸部8の途中まで貫通する下穴に対しては、リーマ加工を行うことができなかった。
【0011】
上述したように、従来から使用されているガイド部がリーマ本体に固定されたリーマでは、特定形状の貫通穴に対してしか適用することができず、適用範囲が非常に狭いものであった。
【0012】
そこで、本発明は、ガイド部を支持する支持部を被加工物上に容易に設定できるとともにガイド部によりリーマ本体を支持した場合に工具振れを抑制してリーマ加工することができるガイド付リーマ及びガイド付リーマを用いた加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0014】
即ち、請求項1においては、
被加工物に当接してリーマ本体をリーマ加工の進行方向に案内するガイド部を備えたリーマであって、
前記ガイド部は、前記リーマ本体の先端から前記進行方向に伸縮可能に突出し、前記リーマ本体を前記進行方向に案内しながらリーマ本体内に退避するガイド付リーマである。
【0015】
請求項2においては、
前記ガイド部後端は、前記リーマ本体内に配置されるとともに弾性手段により前記進行方向に付勢されているガイド付リーマである。
【0016】
請求項3においては、
前記弾性手段は、弾性力を調整する調整部を備えるガイド付リーマである。
【0017】
請求項4においては、
前記ガイド部後端は、油圧により付勢されているガイド付リーマである。
【0018】
請求項5においては、
前記油圧は、リーマ加工の際に前記リーマ本体を装着して回転駆動する加工機の動作状態に基づいて前記油圧の圧力を制御する制御装置により制御されるガイド付リーマである。
【0019】
請求項6においては、
前記リーマ本体は、テーパーリーマであるガイド付リーマである。
【0020】
請求項7においては、
請求項1から請求項6の何れか一項に記載のガイド付リーマを用いた加工方法である。
【0021】
請求項8においては、
前記被加工物における前記ガイド部先端が当接する位置に予め凹部を設け、当該凹部に前記ガイド部先端を係合させてリーマ加工を行うガイド付リーマを用いた加工方法である。
【0022】
請求項9においては、
前記ガイド部先端は、前記凹部の内部形状に沿って当接する当接面を有するガイド付リーマを用いた加工方法である。
【発明の効果】
【0023】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0024】
請求項1においては、リーマ加工の進行に伴い、ガイド部をリーマ本体内に退避可能に構成しているため、ガイド部を支持する支持部を被加工物上に容易に設定可能であるとともに、リーマ本体を進行方向に案内しつつ、被加工物に対してリーマ加工することができる。
【0025】
請求項2においては、ガイド部の後端を弾性手段により付勢する構成としているため、ガイド部を所定の弾性力で付勢しつつ被加工物上に当接支持することが可能となり、リーマ本体を進行方向に案内しつつ、被加工物に対してリーマ加工することができる。
【0026】
請求項3においては、調整部により被加工物の硬さに応じて弾性手段の弾性力を調整し、ガイド部を当接支持する際の押圧力(ガイドの負荷に応じる支持力)を増大させることで、リーマの全体としての剛性が向上し、リーマ本体の振れが抑制できる。
【0027】
請求項4においては、油圧によりガイド部を当接支持する際の押圧力を調整することが可能である。
【0028】
請求項5においては、加工機の動作状態に基づいてガイド部後端にかかる油圧の圧力制御することで、リーマ本体の振れを可及的に抑制できる。
【0029】
請求項6においては、テーパーリーマ加工することができる。
【0030】
請求項7においては、リーマ加工の進行に伴い、ガイド部をリーマ本体内に退避可能に構成しているため、ガイド部を支持する支持部を被加工物上に容易に設定可能であるとともに、リーマ本体を進行方向に案内しつつ、被加工物に対してリーマ加工することができる。
【0031】
請求項8においては、ガイド部先端を凹部に係合させることで、リーマ本体の振れが抑制できる。
【0032】
請求項9においては、ガイド部先端を凹部に係合させた場合に、ガイド部先端の凹部内における接触面積が増大し、リーマ本体にかかる応力を分散することができるので、リーマ本体の振れが抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施例1に係るリーマの全体構成を示す図であり、(a)は側面図、(b)はリーマの内部機構を示す側面断面図。
【図2】実施例1に係るリーマを適用した際の加工状況を示す図であり、(a)はガイド部先端が被加工物に当接支持した状態を示す側面図、(b)はリーマが進行した状態を示す側面図。
【図3】実施例1に係るリーマを適用した際の加工状況を示す図であり、(a)はガイド部先端が被加工物に設けた凹部に当接支持した状態を示す側面図、(b)はリーマが進行した状態を示す側面図。
【図4】リーマのガイド部先端を示す図であり、(a)はガイド部先端を示す側面断面図、(b)は図3(a)におけるガイド部先端が凹部に当接支持した状態を拡大して示す側面断面図。
【図5】バルブボデー金型が有する凸部及び挿通穴を示す斜視図。
【図6】本実施形態に係るリーマを適用するバルブボデー金型の挿通穴の形成工程を示す説明図。
【図7】実施例2に係るリーマ(2重バネ構造)を示す側面断面図。
【図8】実施例2に係るコイルバネの変形例を示す図であり、(a)はバネの太さを前後で変化させた構造であるコイルバネを有するリーマを示す側面断面図、(b)はバネの巻き数を前後で変化させた構造であるコイルバネを有するリーマを示す側面断面図。
【図9】実施例3に係るリーマ(油圧制御構造)を示す側面断面図。
【図10】バルブボデー金型が有する凸部を示す図であり、(a)は凸部の加工前の状態を示す断面図、(b)は凸部の一部に下穴を開口した状態を示す断面図。
【図11】従来の挿通穴の加工方法である放電加工を示す側面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
次に、発明の実施の形態を説明する。
本実施形態に係るリーマ及びこのリーマを用いた加工方法は、例えば、図5に示すバルブボデー金型15が有する凸部8に設けられた挿通穴9を形成する際に適用することができる。ここで、「挿通穴」とは、バルブボデー鋳造時にコントロールバルブ制御穴を形成するために可動側金型であるバルブボデー金型15の凸部8に設けられた可動ピンを挿通するための挿通穴のことをいう。バルブボデー金型15底面上に形成された複数の突出した凸部8に開口される挿通穴9は、図6に示すように、荒加工→中仕上げ加工→仕上げ加工の3工程を経て形成される。本実施形態に係るリーマ及びこのリーマを用いた加工方法は、図6に示す荒加工→中仕上げ加工→仕上げ加工の3工程のうち、最後の工程である仕上げ加工において適用される。
なお、本実施形態に係るリーマ及びこのリーマを用いた加工方法は上記バルブボデー金型15が有する挿通穴9の形成への適用に限定するものではなく、機械加工全般に広く適用することが可能である。以下、具体的に実施例を挙げて本実施形態に係るリーマ及びこのリーマを用いた加工方法について説明する。また、同様の用途及び機能を有する部材には同符号を付してその説明を省略する。
【実施例1】
【0035】
本発明の実施例1に係るリーマについて図1から図5を用いて説明する。
リーマ10は、被加工物に当接してリーマ本体1をリーマ加工の進行方向に案内するガイド部3を備えたガイド付テーパーリーマであり、図1(a)(b)に示すように、リーマ本体1と、シャンク部2と、ガイド部3と、弾性手段であるコイルバネ4とを主に備えている。リーマ10は、ガイド部3先端を弾性手段であるコイルバネ4により押出す機構を有するガイド内蔵式リーマである。以下、リーマ10の各構成部分について説明する。
【0036】
リーマ本体1は、その外形が略円錐状であり、外周面に刃部5を有する。リーマ本体1は、当該リーマ本体1後端よりも小径のシャンク部2と一体的に形成されている。リーマ本体1内部には、ガイド部3と弾性手段であるコイルバネ4とをそれぞれ収納するための軸方向に沿って形成された円筒状空間であるガイド部挿通孔6(図4参照)と、当該ガイド部挿通孔6と連通するとともにガイド部挿通孔6よりも大径な円筒状空間である弾性手段収納孔7とを有する。
【0037】
刃部5には、リーマ本体1の外周面に切刃と逃げ溝が略平行して螺旋状(左捩れ状)に形成されている。また、刃部5の外縁部はリーマ本体1先端に向うに従って漸次細くなるテーパ状となっており、軸方向に対して所定のテーパ角を有する。
【0038】
シャンク部2は、回転駆動しながら軸方向に進退して被加工物に対してリーマ加工することができるリーマ加工機により把持される円筒状の柄部である。
なお、本実施形態に係るリーマはリーマ加工機のような工作機械に装着して使用することに限定するものではなく、リーマが有するシャンク部を四角状柄部として、手回しハンドルに装着して手動で用いることも可能である。
【0039】
ガイド部3は、被加工物に対してリーマ加工を行う際に被加工物の所定の位置に当接してリーマ本体1を進行方向に案内する丸棒状の部材であり、リーマ本体1の先端から進行方向に伸縮可能に突出し、リーマ本体1を進行方向に案内しながらリーマ本体1内に退避する案内部材である。また、ガイド部3後端側は、図1(b)に示すように、リーマ本体1内に設けられたガイド部挿通孔6に挿通されるとともに、ガイド部3後端よりも大径な円筒状のストッパ部3aが一体的に形成されている。このストッパ部3aは、弾性手段収納孔7内において軸方向に摺動自在に配置されるともにガイド部3がリーマ本体1に対して前方に移動した場合、前記弾性手段収納孔7の前端においてストッパ部3aが係止される。
【0040】
コイルバネ4は、弾性手段収納孔7に収納される弾性手段であり、所定の弾性力を保持した状態でガイド部3後端に設けられたストッパ部3aと、弾性手段収納孔7の後端面との間に介装される。
すなわち、前記リーマ本体1内においてガイド部3後端側を軸方向に移動可能に収納した状態でガイド部3後端に設けられたストッパ部3aをコイルバネ4により進行方向に付勢することで、ガイド部3先端が前記リーマ本体1の先端から進行方向に突出した状態で軸方向に伸縮可能となる。つまり、ガイド部3は、弾性手段であるコイルバネ4で突出方向に付勢されており、ガイド部3先端が被加工物に当接した状態でリーマ10が突出方向に進行すると、ガイド部3がリーマ本体内に内蔵される構造となっている。
なお、弾性手段は、コイルバネに限定するものではなく、蛇行状に折り畳まれた板バネやバネ以外の圧縮性流体を用いた弾性体であってもかまわない。
【0041】
以上のようにリーマ10を構成することにより、ガイド部3は、ガイド部3後端に設けられたストッパ部3aを介してコイルバネ4による所定の弾性力が加えられた状態で、かつ弾性手段収納孔7に配置されたストッパ部3aにより軸方向の移動位置が規制されることでリーマ本体1から伸縮自在に所定長突出した状態に保たれる。例えば、図2(a)に示す被加工物であるバルブボデー金型15が有する各凸部8・8・8に予めドリルにより開口した複数のドリル穴13・13・13に対してリーマ10を用いてリーマ加工を行い、挿通穴9を形成する場合において、被加工物の所定の位置、すなわち、ここではドリル穴13を有しない凸部14の壁面(図2の凸部14における右側壁面)にガイド部3先端を当接支持してリーマ本体1を所定の進行方向(図2の左方向)に案内しつつ各凸部8・8・8が有するドリル穴13・13・13に対してリーマ加工を施して、リーマ本体1が進行した距離に応じてガイド部3をリーマ本体1内部に内蔵することが可能となる。このように、被加工物に対してリーマ加工する場合に、ガイド部3先端を被加工物である凸部14壁面の所定の位置に当接支持して、リーマ加工の進行又は後退に伴い、ガイド部3をリーマ本体1に対して伸縮可能に構成しているため、ガイド部3を支持する支持部が貫通穴とされない場合(本実施例においては支持部が凸部14壁面上)でもリーマ本体1を進行方向に案内し、被加工物のリーマ加工することができる。また、リーマ10は、伸縮自在な棒状のガイド部3を有することにより被加工物の任意の部分を支持部として利用可能であり、広い適用範囲を有する。また、図2(b)に示すようにリーマ本体1先端が被加工物の所定の位置に当接した場合(本実施例においてはリーマ本体1先端が凸部14壁面に当接した場合)には、ガイド部3先端はリーマ本体1内部に完全に没入する。
【0042】
ここで、上記リーマ10を用いて幾つかの被加工物に対してテスト加工を行った結果、被加工物の硬さによっては、切削加工時にリーマ本体1の振れ(工具振れ)が大きくなり加工精度に影響することがわかった(被加工物が硬いほど振れ量大となった)。すなわち、硬い金属材料等で形成された被加工物に対してリーマ加工を行った場合、切削抵抗の増大によるリーマ本体1の振れが発生する場合がある。また、本願発明の発明者は、このような工具振れが、工具振れを抑制するためのリーマの支持力が十分に確保できていなかったことによるものであることを突き止めた。そこで、硬い金属材料等の被加工物に対しても、工具振れを抑制しつつリーマ加工を行う加工方法について以下に具体的に説明する。
【0043】
図3(a)に示すように、ガイド部3先端が被加工物に当接する位置、すなわち、ガイド部3先端がバルブボデー金型15が有する凸部14壁面に当接支持する部分に円錐状の内部形状を有する凹部12を予め設け(図4(b)参照)、ガイド部3先端をこの円錐状の凹部12の内部形状に沿って当接するように面取りを施している。すなわち、ガイド部3先端には、リーマ10により被加工物に対してリーマ加工する際にガイド部3先端が当接支持する部分に予め設けられた円錐状の凹部12と同等の当接角度で面取りが施されている。つまり、ガイド部3先端は、前記凹部12の内部形状に沿って当接する当接面を有する。
【0044】
このように構成することにより、例えば、図3(a)に示す被加工物であるバルブボデー金型15が有する各凸部8・8・8に予めドリルにより開口した複数のドリル穴13・13・13に対してリーマ10を用いてリーマ加工を行い、挿通穴9を形成する場合において、被加工物の所定の位置、すなわち、ここではドリル穴13を有しない凸部14の壁面(図3の凸部14における右側壁面)に予め設けられた凹部12にガイド部3先端を係合して当接支持してリーマ本体1を所定の進行方向(図2の左方向)に案内しつつ各凸部8・8・8が有するドリル穴13・13・13に対してリーマ加工を施して、リーマ本体1が進行した距離に応じてガイド部3をリーマ本体1内部に内蔵することが可能となる。このように、被加工物に対してリーマ加工する場合に、ガイド部3先端を被加工物である凸部14壁面の所定の位置に設けた凹部12に係合するとともに当接支持して、リーマ加工の進行又は後退に伴い、ガイド部3をリーマ本体1に対して伸縮可能に構成しているため、ガイド部3を支持する支持部が貫通穴とされない場合(本実施例においては支持部が凸部14壁面上の凹部12)でもリーマ本体1を進行方向に案内し、被加工物に対してリーマ加工をすることができる。また、図3(b)に示すようにリーマ本体1先端が被加工物の所定の位置に当接した場合(本実施例においてはリーマ本体1先端が凸部14壁面に当接した場合)には、ガイド部3先端はリーマ本体1内部に完全に没入せず、凹部12にて係合した状態が維持される。
【0045】
上述したように、予め設けた凹部12に前記ガイド部3先端を係合支持した状態で被加工物に対してリーマ加工を行うことにより、前記ガイド部3先端が凹部12内部において接触する面積(支持する面積)が増大し、工具振れの原因となるリーマ10にかかる応力を分散することができ、リーマ本体1の振れ(工具振れ)が抑制できる。
なお、凹部12の内部形状及びガイド部3先端の形状は特に限定するものではなく、ガイド部先端は、凹部の内部形状に沿って当接する当接面を有すればよく、例えば凹部の内部形状を半球状にし、この凹部の内部形状に沿うようにガイド部先端を半球状に形成して当接面積を増やしてより接触面積を増やすことも可能である。また、凹部の内部形状やガイド部先端の形状については、被加工物の加工のし易さ等を考慮して適宜形状を決定すればよい。当然ながら、リーマによる切削が容易である材料などにおいては工具振れも少ないため、予め凹部を形成しなくてもリーマ加工を施すことが可能である。
【0046】
次に、本実施例におけるリーマ10を適用するコントロールバルブボデー金型15が有する挿通穴9の形成工程について図6を用いて説明する。
図6に示すように、コントロールバルブボデー金型15が有する挿通穴9を形成する工程としては、主に荒加工→中仕上げ加工→仕上げ加工の3工程で構成されており、本実施例に係るリーマ10は仕上げ加工の工程において使用される。
【0047】
具体的には、荒加工工程においては、被加工物である並んだ複数の凸部8・8・8に対してφ4.5ドリルで略垂直方向に貫く下穴を開口形成するステップ穴加工を行う。
次に、中仕上げ加工においては、荒加工にて形成された下穴に対してφ4ラジアスエンドミルで凸部8・8・8に開口された下穴をそれぞれ拡径されて、開口された穴が奥(凸部14側)に行くほど小さく開口するようにヘリカル加工及び突き加工を行う。
最後に、仕上げ加工においては、中仕上げ加工にて拡径された穴にリーマ10が有するガイド部3を挿入し、凸部14壁面に予め設けた凹部12にガイド部3先端を係合し、リーマ本体1を進行方向(凸部14側)に回転しつつ進めて、テーパーリーマ加工を行って、一方向(図6においては右方向)に向って徐々に拡径するように挿通穴9を形成する。
【0048】
本実施例に係るリーマ10を適用する仕上げ加工では、進行方向に所定長突出した伸縮可能なガイド部3の先端は被加工物の所定の当接位置である凹部12に係合支持される。一方、ガイド部後端のストッパ部3aは、図1(b)に示すように、コイルバネ4でガイド部3の突出方向に付勢されていることから、リーマ本体1が切削加工に伴って進行すると(図6の凸部14側)、凹部12のガイド部3先端の当接面においてコイルバネ4の弾性力による押圧がかかるとともにコイルバネ4が縮み、これによりリーマ本体1から突出したガイド部3がリーマ本体1内に没入していく。また、このリーマ10を図示せぬ加工機に装着して回転駆動させながら進行方向(加工方向)もしくは後退方向に移動させることにより、テーパーリーマ加工を行いながら、突出したガイド部3がリーマ本体1内に収納自在となる。
【0049】
以上のように、ガイド部3先端を被加工物の所定の位置に当接支持してリーマ加工する場合に、リーマ加工の進行に伴い、ガイド部3をリーマ本体1内に退避可能に構成しているため、ガイド部3を支持する支持部が貫通穴とされない場合でもガイド部3を支持する支持部を被加工物上に容易に設定可能であるとともに、リーマ本体1を進行方向に案内しつつ、被加工物に対してリーマ加工することができる。また、ガイド部3の後端を弾性手段により付勢する構成としているため、ガイド部3を所定の弾性力で被加工物上に当接支持することが可能となり、リーマ本体1を進行方向に案内しつつ、被加工物に対してリーマ加工することができる。加えて、ガイド部3先端を凹部12に係合させることで、リーマ本体1の振れが抑制できる。また、ガイド部3先端を凹部12に係合させた場合に、ガイド部3先端の凹部12内における接触面積が増大し、リーマ本体1にかかる応力を分散することができるので、リーマ本体1の振れが抑制できる。
【0050】
被加工物の硬さによる工具振れを低減させる方法として、本実施例に示したような予め設けた凹部12にガイド部3先端を係合してリーマ本体1にかかる応力を低減させる方法以外にも、ガイド部の押圧力をアップさせる(リーマの剛性をアップさせる)ことで工具振れを低減させる方法がある。すなわち、被加工物が硬い場合等、ガイド部3の押圧力に打ち勝ってガイド部3が支持部から径方向にずれる場合が考えられるため、弾性手段の弾性力を高める必要がある。そのような構成について以下に具体例を挙げて説明する。
【実施例2】
【0051】
本発明の実施例2に係るリーマ20について図7を用いて説明する。リーマ20は、実施例1に係るリーマ10におけるガイド部3後端を付勢する弾性手段の構成が異なるものである。そのため、異なる部分である弾性手段について主に説明し、実施例1と同一部分の説明ついては省略する。
【0052】
本実施例に係る弾性手段は、弾性手段収納孔17に配置されるコイルバネ18と、リーマ20(シャンク部2)の後端に配置されコイルバネ18の弾性力を調整する調整部である調整ネジ19を有する。
また、弾性手段収納孔17は、リーマ本体1内部に設けられたコイルバネ18を収納するための軸方向に沿って形成された円筒状空間であり、リーマ本体1長手方向中途部からリーマ20後端、すなわちシャンク部2後端まで延出されている。
【0053】
コイルバネ18は、バネの一部(本実施例の場合、コイルバネ18後側部分)が2重バネ構造となっている。すなわち、コイルバネ18の前側は実施例1で用いたコイルバネ4と同等のバネであり、コイルバネ18の後側は、実施例1のコイルバネ4を2重にした状態と同等のバネであり、前側、後側で段階的に弾性力が異なるようにコイルバネを構成している。コイルバネ18は、コイルバネ18の前側部分よりも2重バネ構造である後側部分の弾性力が大きいものである。
【0054】
調整ネジ19は、リーマ20後端部(シャンク部2後端部)に回動自在に設けられ、調整ネジ19の前端がコイルバネ18の後端部と当接しており、軸周り所定方向に回動すると調整ネジ19は前後進してコイルバネ18を軸方向に伸縮して弾性力を調整することができる。また、調整ネジ19は、所定方向に回動することでシャンク部2後端部から取り外すことが可能であり、調整ネジ19を取り外して弾性手段収納孔17内に収納しているコイルバネを適宜交換可能である。
【0055】
このように弾性手段を構成することで、リーマ加工する被加工物に応じて弾性力を調整することが可能となり、ガイド部先端の押圧力を被加工物に応じて調整することが可能となる。具体的には、コイルバネの弾性力を調整する場合において、調整ネジ19を調整することで弾性力を調整することが可能であり、もしくは、弾性手段収納孔17内に収納するコイルバネとして所定の弾性力を有するコイルバネに適宜交換することでコイルバネの弾性力を調整することが可能である。すなわち、調整部である調整ネジ19もしくはコイルバネの交換により被加工物の硬さに応じて弾性手段の弾性力を調整し、ガイド部3を当接支持する際の押圧力(ガイド部3の負荷に応じる支持力)を増大させることで、リーマ20の全体としての剛性が向上し、リーマ本体1の振れが抑制できる。
【0056】
本実施例におけるコイルバネの変形例としては、図8(a)(b)に示すように、バネの太さを変化させた構造、バネの巻回(巻き数)を変化させた構造、なども考えられる。
図8(a)に示すリーマ30が有するコイルバネ21は、コイルバネの前側のバネに比べて後側のバネの太さが太くなるように構成したものである。また、図8(b)に示すリーマ40が有するコイルバネ22は、コイルバネの前側のバネと後側のバネの巻回状態(バネの巻き数)を変化させたものであり、コイルバネの前側のバネに比べて後側のバネの巻き数が少なくなるように構成したものである。
なお、前記コイルバネの代わりに、蛇行状の板バネを用いてバネの前後で弾性力を変化させて構成することも可能である。
【0057】
被加工物の硬さによる工具振れを低減させる方法として、本実施例以外にも、ガイド部の押圧力をアップさせる(リーマの剛性をアップさせる)ことで工具振れを低減させる方法がある。すなわち、被加工物が硬い場合等、ガイド部3の押圧力に打ち勝ってガイド部3が支持部から径方向にずれる場合が考えられるため、弾性手段の弾性力を高める必要がある。そのような構成について以下に具体例を挙げて説明する。
【実施例3】
【0058】
本発明の実施例3に係るリーマ50について図9を用いて説明する。また、実施例1と同一部分の説明ついては省略する。
リーマ50は、実施例1、2で説明した弾性手段であるコイルバネの代わりに、実施例1に係る弾性手段収納孔7と同位置に設けられたオイルを収納するためのオイル収納部27にオイルを満たしている。また、ストッパ部23は、オイル漏れ防止のためのリングパッキン(図示せず)を備えており、オイル収納部27において軸方向に摺動可能に配置される。また、リーマ50には、当該リーマ50の後端部に配置されてオイル収納部27に供給する油圧の圧力を制御する油圧制御装置28が接続されている。
このように、リーマ50は、前記オイル収納部27内のオイルを介してガイド部3後端のストッパ部23に所定の油圧を供給することによりガイド部3先端の被加工物に対する押圧力を制御する油圧制御構造を有している。
また、リーマ50は、リーマ加工の際にリーマ50を装着して回転駆動しながら軸方向に進退して被加工物に対してリーマ加工することができる加工機29に着脱可能であり、加工機29に装着した状態で加工機を駆動することにより被加工物に対してリーマ加工を行うことができる。
【0059】
加工機29には、当該加工機29の動作状態を把握するための各種センサが設けられており、これらのセンサは油圧制御装置28に接続されている。また、センサは、加工機の動作状態である回転速度変化、回転トルク、前進距離等の所定の信号を検出することが可能である。
【0060】
油圧制御装置28は、加工機の所定部(駆動部等)に配置された前記センサによる検出信号(回転速度変化、回転トルク、前進距離等)に基づき、リーマ50の加工状況(硬い部分を削っているのか、柔らかい部分を削っているのか)を判断し、油圧によりガイド部の押圧力を制御する。つまり、前記油圧は、加工機29の動作状態に基づいて前記油圧の圧力を制御する制御装置により制御される。
【0061】
このように構成することで、例えば、被加工物の加工途中において硬い部分を削っている状態から柔らかい部分を削っている状態へと変化した場合、前記センサからの信号により判断することが可能となる。この判断に基づいて、油圧制御装置28は、ガイド部3に与える油圧を制御して、ガイド部3先端の押圧力を適宜調整することができる。つまり、加工機29の動作状態に基づいてガイド部後端にかかる油圧の圧力制御することで、リーマ本体の振れを可及的に抑制できる。
なお、前記ガイド部への押圧力を制御するものとしては、油圧に限定するものではなく、例えば空気圧等であってもかまわない。
【0062】
本発明は、バネ等による弾性手段により付勢されるとともに、リーマ本体に内蔵可能(退避可能)であるガイド部を有するリーマである。これにより、被加工物にガイド部先端を当接させた状態に保ちながら、リーマ加工の進行に伴ってガイド部をリーマ本体内に進退可能となり、貫通穴等の支持部を有しなくともリーマ加工可能となる。
【0063】
本発明は、バネ等による弾性手段により付勢されるとともに、リーマ本体に内蔵可能(退避可能)であるガイド部を有するリーマであって、被加工物の硬さに応じてバネ係数を変化可能であるリーマである。これにより、被加工物の硬さに応じて、ガイド部の押圧力(ガイドの負荷に応じる支持力)を増大させることで、リーマの全体としての剛性が向上し、リーマ振れが抑制できる。
【0064】
本発明は、油圧により付勢されるとともに、リーマ本体に内蔵可能(退避可能)であるガイド部を有するリーマであって、加工状況(例えば、刃部の進行状況)を検出する信号により油圧の圧力を制御する制御装置を制御するリーマである。これにより、加工状況に応じて、油圧制御によりガイド部の押圧力を増減させることで、被加工物の硬さに応じてガイド部の押圧力剛性が向上し、リーマ振れが抑制できる。
【0065】
本発明は、付勢力が調節可能な弾性手段により付勢されるとともに、リーマ本体に内蔵可能であるガイド部を有するリーマを用いて加工する加工方法であり、被加工物におけるガイド部先端が当接してリーマを支持する支持部に予め凹部を設け、ガイド部先端に当該凹部との当接角度と同等の面取りを施すものである。これにより、ガイド部先端が凹部に当接支持した際に、ガイド部の接触面積が増大し(当接面の面圧が低くなり)、リーマにかかる応力を分散できることで、リーマの振れが抑制できる。加えて、ガイド部先端が被加工物に接触して支持するのではなく凹部に係合するため、径方向にガイド部先端がずれることも防ぐことができる。
【符号の説明】
【0066】
1 リーマ本体
3 ガイド部
4 コイルバネ
10、20,30、40,50 リーマ
12 凹部
15 バルブボデー金型
19 調整ネジ
28 油圧制御装置
29 加工機
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガイド付リーマ及びガイド付リーマを用いた加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、リーマの一部にガイド部を設け、当該ガイド部を利用して被加工物である貫通穴に対してリーマ加工する技術が公知となっている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、同一軸線上の大径孔および小径孔からなる段付貫通孔を、その大径孔側よりリーマ加工を行う方法が記載されており、リーマの一部に設けたガイド部を大径孔もしくは小径孔に嵌合することでリーマの刃部が所定の被加工部分に案内されてリーマ加工をする旨が記載されている。
【0004】
また、リーマ加工のほかに、貫通孔を所定形状に加工する方法としては、被加工物に電極形状を転写することで加工を行う放電加工があり、放電加工は金型の製造などに多く用いられる。
【0005】
特許文献2には、「コントロールバルブボデーのダイカスト金型」の一例が開示されているが、このようなダイカスト金型を用いて自動変速機のコントロールバルブボデー(以下、バルブボデーという)が鋳造成形で製造される。また、特許文献2の図4に示されているように、バルブボデーが有する複数の隔壁にはバルブを通すためのコントロールバルブ制御穴(バルブ孔)が形成されており、このようなコントロールバルブ制御穴は鋳抜きで鋳造製造される。
【0006】
すなわち、特許文献2の図4に示されるように、バルブボデーを鋳造する際に用いられる鋳型は、固定側金型と可動側金型からなり、固定側金型と可動側金型とが閉塞することによりバルブボデーの成形を行うための中空部が形成される。また、可動側金型には、中空部へ突出した複数の凸部が設けられるとともに、一部の凸部を略垂直に貫通する可動ピンが設けられる。バルブボデーの成形の際には、中空部に溶湯が圧入されて凸部により流路溝が形成され、凸部間に流入した溶湯により隔壁が形成される。そして、可動側金型から可動ピンを抜き取ることにより隔壁を貫通するコントロールバルブ制御穴が形成される。
【0007】
このようにバルブボデーが有する隔壁にコントロールバルブ制御穴を開口形成するために、図5に示す可動側金型の一部の凸部8には、可動ピンが挿通するための挿通穴9が設けられており、挿通穴9はバルブボデー金型の製作時に形成される。バルブボデー金型が有する挿通穴9の形成方法としては、図11に示すように、従来から電極を用いた放電加工による方法で行われている。しかしながら、放電加工は加工精度が優れている反面、長い加工時間が必要であるというデメリットを有する。
【0008】
そこで、本願発明の発明者は、金型製作のリードタイム(L/T)短縮のため、上記放電加工に代わるバルブボデー金型の挿通穴9の形成工程として、先ず、突出した複数の凸部8(図10(a)参照)の一部にドリル加工により下穴を開口形成した後(図10(b)参照)、特許文献3に示されるような一般的なテーパーリーマを用いて下穴の拡径を行う仕上げ加工、いわゆる直彫り(切削)で仕上げ加工することを検討した。しかし、バルブボデー金型の挿通穴9の開口形成などにおいては、数十ミクロンオーダーの高い加工精度(穴径公差・位置精度)が要求されるため、リーマ加工時の工具振れ防止を目的とした特許文献4に示されるような「ガイド付き」のリーマにする必要があることがわかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平1−264717号公報
【特許文献2】特開2005−329442号公報
【特許文献3】特公平7−121486号公報
【特許文献4】実開平1−138613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、前述したバルブボデー金型の挿通穴9の開口形成においては、図10(b)のようなバルブボデー金型底面上に複数並んだ凸部8の途中まで貫通する下穴に対してリーマ加工を行うため、単にガイド部をリーマ本体の先端に固定して設けるのみでは、リーマ本体が有する刃部を各下穴の被加工部分に案内することができなかった。具体的には、特許文献1に示されるガイド付リーマは、被加工物を貫通する貫通孔自体が、リーマが有するガイド部を支持してリーマを一定の軸方向に案内する役割を果たすことになるため、ガイド部を支持する支持部が特許文献1に示されるような特定の形状の貫通穴でない場合、リーマ加工することができない。すなわち、特許文献1、特許文献4に示されているようなガイド部が固定されたリーマでは、限られた形状の貫通穴の加工にしか対応することができず、図10(b)に示すような凸部8の途中まで貫通する下穴に対しては、リーマ加工を行うことができなかった。
【0011】
上述したように、従来から使用されているガイド部がリーマ本体に固定されたリーマでは、特定形状の貫通穴に対してしか適用することができず、適用範囲が非常に狭いものであった。
【0012】
そこで、本発明は、ガイド部を支持する支持部を被加工物上に容易に設定できるとともにガイド部によりリーマ本体を支持した場合に工具振れを抑制してリーマ加工することができるガイド付リーマ及びガイド付リーマを用いた加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0014】
即ち、請求項1においては、
被加工物に当接してリーマ本体をリーマ加工の進行方向に案内するガイド部を備えたリーマであって、
前記ガイド部は、前記リーマ本体の先端から前記進行方向に伸縮可能に突出し、前記リーマ本体を前記進行方向に案内しながらリーマ本体内に退避するガイド付リーマである。
【0015】
請求項2においては、
前記ガイド部後端は、前記リーマ本体内に配置されるとともに弾性手段により前記進行方向に付勢されているガイド付リーマである。
【0016】
請求項3においては、
前記弾性手段は、弾性力を調整する調整部を備えるガイド付リーマである。
【0017】
請求項4においては、
前記ガイド部後端は、油圧により付勢されているガイド付リーマである。
【0018】
請求項5においては、
前記油圧は、リーマ加工の際に前記リーマ本体を装着して回転駆動する加工機の動作状態に基づいて前記油圧の圧力を制御する制御装置により制御されるガイド付リーマである。
【0019】
請求項6においては、
前記リーマ本体は、テーパーリーマであるガイド付リーマである。
【0020】
請求項7においては、
請求項1から請求項6の何れか一項に記載のガイド付リーマを用いた加工方法である。
【0021】
請求項8においては、
前記被加工物における前記ガイド部先端が当接する位置に予め凹部を設け、当該凹部に前記ガイド部先端を係合させてリーマ加工を行うガイド付リーマを用いた加工方法である。
【0022】
請求項9においては、
前記ガイド部先端は、前記凹部の内部形状に沿って当接する当接面を有するガイド付リーマを用いた加工方法である。
【発明の効果】
【0023】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0024】
請求項1においては、リーマ加工の進行に伴い、ガイド部をリーマ本体内に退避可能に構成しているため、ガイド部を支持する支持部を被加工物上に容易に設定可能であるとともに、リーマ本体を進行方向に案内しつつ、被加工物に対してリーマ加工することができる。
【0025】
請求項2においては、ガイド部の後端を弾性手段により付勢する構成としているため、ガイド部を所定の弾性力で付勢しつつ被加工物上に当接支持することが可能となり、リーマ本体を進行方向に案内しつつ、被加工物に対してリーマ加工することができる。
【0026】
請求項3においては、調整部により被加工物の硬さに応じて弾性手段の弾性力を調整し、ガイド部を当接支持する際の押圧力(ガイドの負荷に応じる支持力)を増大させることで、リーマの全体としての剛性が向上し、リーマ本体の振れが抑制できる。
【0027】
請求項4においては、油圧によりガイド部を当接支持する際の押圧力を調整することが可能である。
【0028】
請求項5においては、加工機の動作状態に基づいてガイド部後端にかかる油圧の圧力制御することで、リーマ本体の振れを可及的に抑制できる。
【0029】
請求項6においては、テーパーリーマ加工することができる。
【0030】
請求項7においては、リーマ加工の進行に伴い、ガイド部をリーマ本体内に退避可能に構成しているため、ガイド部を支持する支持部を被加工物上に容易に設定可能であるとともに、リーマ本体を進行方向に案内しつつ、被加工物に対してリーマ加工することができる。
【0031】
請求項8においては、ガイド部先端を凹部に係合させることで、リーマ本体の振れが抑制できる。
【0032】
請求項9においては、ガイド部先端を凹部に係合させた場合に、ガイド部先端の凹部内における接触面積が増大し、リーマ本体にかかる応力を分散することができるので、リーマ本体の振れが抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施例1に係るリーマの全体構成を示す図であり、(a)は側面図、(b)はリーマの内部機構を示す側面断面図。
【図2】実施例1に係るリーマを適用した際の加工状況を示す図であり、(a)はガイド部先端が被加工物に当接支持した状態を示す側面図、(b)はリーマが進行した状態を示す側面図。
【図3】実施例1に係るリーマを適用した際の加工状況を示す図であり、(a)はガイド部先端が被加工物に設けた凹部に当接支持した状態を示す側面図、(b)はリーマが進行した状態を示す側面図。
【図4】リーマのガイド部先端を示す図であり、(a)はガイド部先端を示す側面断面図、(b)は図3(a)におけるガイド部先端が凹部に当接支持した状態を拡大して示す側面断面図。
【図5】バルブボデー金型が有する凸部及び挿通穴を示す斜視図。
【図6】本実施形態に係るリーマを適用するバルブボデー金型の挿通穴の形成工程を示す説明図。
【図7】実施例2に係るリーマ(2重バネ構造)を示す側面断面図。
【図8】実施例2に係るコイルバネの変形例を示す図であり、(a)はバネの太さを前後で変化させた構造であるコイルバネを有するリーマを示す側面断面図、(b)はバネの巻き数を前後で変化させた構造であるコイルバネを有するリーマを示す側面断面図。
【図9】実施例3に係るリーマ(油圧制御構造)を示す側面断面図。
【図10】バルブボデー金型が有する凸部を示す図であり、(a)は凸部の加工前の状態を示す断面図、(b)は凸部の一部に下穴を開口した状態を示す断面図。
【図11】従来の挿通穴の加工方法である放電加工を示す側面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
次に、発明の実施の形態を説明する。
本実施形態に係るリーマ及びこのリーマを用いた加工方法は、例えば、図5に示すバルブボデー金型15が有する凸部8に設けられた挿通穴9を形成する際に適用することができる。ここで、「挿通穴」とは、バルブボデー鋳造時にコントロールバルブ制御穴を形成するために可動側金型であるバルブボデー金型15の凸部8に設けられた可動ピンを挿通するための挿通穴のことをいう。バルブボデー金型15底面上に形成された複数の突出した凸部8に開口される挿通穴9は、図6に示すように、荒加工→中仕上げ加工→仕上げ加工の3工程を経て形成される。本実施形態に係るリーマ及びこのリーマを用いた加工方法は、図6に示す荒加工→中仕上げ加工→仕上げ加工の3工程のうち、最後の工程である仕上げ加工において適用される。
なお、本実施形態に係るリーマ及びこのリーマを用いた加工方法は上記バルブボデー金型15が有する挿通穴9の形成への適用に限定するものではなく、機械加工全般に広く適用することが可能である。以下、具体的に実施例を挙げて本実施形態に係るリーマ及びこのリーマを用いた加工方法について説明する。また、同様の用途及び機能を有する部材には同符号を付してその説明を省略する。
【実施例1】
【0035】
本発明の実施例1に係るリーマについて図1から図5を用いて説明する。
リーマ10は、被加工物に当接してリーマ本体1をリーマ加工の進行方向に案内するガイド部3を備えたガイド付テーパーリーマであり、図1(a)(b)に示すように、リーマ本体1と、シャンク部2と、ガイド部3と、弾性手段であるコイルバネ4とを主に備えている。リーマ10は、ガイド部3先端を弾性手段であるコイルバネ4により押出す機構を有するガイド内蔵式リーマである。以下、リーマ10の各構成部分について説明する。
【0036】
リーマ本体1は、その外形が略円錐状であり、外周面に刃部5を有する。リーマ本体1は、当該リーマ本体1後端よりも小径のシャンク部2と一体的に形成されている。リーマ本体1内部には、ガイド部3と弾性手段であるコイルバネ4とをそれぞれ収納するための軸方向に沿って形成された円筒状空間であるガイド部挿通孔6(図4参照)と、当該ガイド部挿通孔6と連通するとともにガイド部挿通孔6よりも大径な円筒状空間である弾性手段収納孔7とを有する。
【0037】
刃部5には、リーマ本体1の外周面に切刃と逃げ溝が略平行して螺旋状(左捩れ状)に形成されている。また、刃部5の外縁部はリーマ本体1先端に向うに従って漸次細くなるテーパ状となっており、軸方向に対して所定のテーパ角を有する。
【0038】
シャンク部2は、回転駆動しながら軸方向に進退して被加工物に対してリーマ加工することができるリーマ加工機により把持される円筒状の柄部である。
なお、本実施形態に係るリーマはリーマ加工機のような工作機械に装着して使用することに限定するものではなく、リーマが有するシャンク部を四角状柄部として、手回しハンドルに装着して手動で用いることも可能である。
【0039】
ガイド部3は、被加工物に対してリーマ加工を行う際に被加工物の所定の位置に当接してリーマ本体1を進行方向に案内する丸棒状の部材であり、リーマ本体1の先端から進行方向に伸縮可能に突出し、リーマ本体1を進行方向に案内しながらリーマ本体1内に退避する案内部材である。また、ガイド部3後端側は、図1(b)に示すように、リーマ本体1内に設けられたガイド部挿通孔6に挿通されるとともに、ガイド部3後端よりも大径な円筒状のストッパ部3aが一体的に形成されている。このストッパ部3aは、弾性手段収納孔7内において軸方向に摺動自在に配置されるともにガイド部3がリーマ本体1に対して前方に移動した場合、前記弾性手段収納孔7の前端においてストッパ部3aが係止される。
【0040】
コイルバネ4は、弾性手段収納孔7に収納される弾性手段であり、所定の弾性力を保持した状態でガイド部3後端に設けられたストッパ部3aと、弾性手段収納孔7の後端面との間に介装される。
すなわち、前記リーマ本体1内においてガイド部3後端側を軸方向に移動可能に収納した状態でガイド部3後端に設けられたストッパ部3aをコイルバネ4により進行方向に付勢することで、ガイド部3先端が前記リーマ本体1の先端から進行方向に突出した状態で軸方向に伸縮可能となる。つまり、ガイド部3は、弾性手段であるコイルバネ4で突出方向に付勢されており、ガイド部3先端が被加工物に当接した状態でリーマ10が突出方向に進行すると、ガイド部3がリーマ本体内に内蔵される構造となっている。
なお、弾性手段は、コイルバネに限定するものではなく、蛇行状に折り畳まれた板バネやバネ以外の圧縮性流体を用いた弾性体であってもかまわない。
【0041】
以上のようにリーマ10を構成することにより、ガイド部3は、ガイド部3後端に設けられたストッパ部3aを介してコイルバネ4による所定の弾性力が加えられた状態で、かつ弾性手段収納孔7に配置されたストッパ部3aにより軸方向の移動位置が規制されることでリーマ本体1から伸縮自在に所定長突出した状態に保たれる。例えば、図2(a)に示す被加工物であるバルブボデー金型15が有する各凸部8・8・8に予めドリルにより開口した複数のドリル穴13・13・13に対してリーマ10を用いてリーマ加工を行い、挿通穴9を形成する場合において、被加工物の所定の位置、すなわち、ここではドリル穴13を有しない凸部14の壁面(図2の凸部14における右側壁面)にガイド部3先端を当接支持してリーマ本体1を所定の進行方向(図2の左方向)に案内しつつ各凸部8・8・8が有するドリル穴13・13・13に対してリーマ加工を施して、リーマ本体1が進行した距離に応じてガイド部3をリーマ本体1内部に内蔵することが可能となる。このように、被加工物に対してリーマ加工する場合に、ガイド部3先端を被加工物である凸部14壁面の所定の位置に当接支持して、リーマ加工の進行又は後退に伴い、ガイド部3をリーマ本体1に対して伸縮可能に構成しているため、ガイド部3を支持する支持部が貫通穴とされない場合(本実施例においては支持部が凸部14壁面上)でもリーマ本体1を進行方向に案内し、被加工物のリーマ加工することができる。また、リーマ10は、伸縮自在な棒状のガイド部3を有することにより被加工物の任意の部分を支持部として利用可能であり、広い適用範囲を有する。また、図2(b)に示すようにリーマ本体1先端が被加工物の所定の位置に当接した場合(本実施例においてはリーマ本体1先端が凸部14壁面に当接した場合)には、ガイド部3先端はリーマ本体1内部に完全に没入する。
【0042】
ここで、上記リーマ10を用いて幾つかの被加工物に対してテスト加工を行った結果、被加工物の硬さによっては、切削加工時にリーマ本体1の振れ(工具振れ)が大きくなり加工精度に影響することがわかった(被加工物が硬いほど振れ量大となった)。すなわち、硬い金属材料等で形成された被加工物に対してリーマ加工を行った場合、切削抵抗の増大によるリーマ本体1の振れが発生する場合がある。また、本願発明の発明者は、このような工具振れが、工具振れを抑制するためのリーマの支持力が十分に確保できていなかったことによるものであることを突き止めた。そこで、硬い金属材料等の被加工物に対しても、工具振れを抑制しつつリーマ加工を行う加工方法について以下に具体的に説明する。
【0043】
図3(a)に示すように、ガイド部3先端が被加工物に当接する位置、すなわち、ガイド部3先端がバルブボデー金型15が有する凸部14壁面に当接支持する部分に円錐状の内部形状を有する凹部12を予め設け(図4(b)参照)、ガイド部3先端をこの円錐状の凹部12の内部形状に沿って当接するように面取りを施している。すなわち、ガイド部3先端には、リーマ10により被加工物に対してリーマ加工する際にガイド部3先端が当接支持する部分に予め設けられた円錐状の凹部12と同等の当接角度で面取りが施されている。つまり、ガイド部3先端は、前記凹部12の内部形状に沿って当接する当接面を有する。
【0044】
このように構成することにより、例えば、図3(a)に示す被加工物であるバルブボデー金型15が有する各凸部8・8・8に予めドリルにより開口した複数のドリル穴13・13・13に対してリーマ10を用いてリーマ加工を行い、挿通穴9を形成する場合において、被加工物の所定の位置、すなわち、ここではドリル穴13を有しない凸部14の壁面(図3の凸部14における右側壁面)に予め設けられた凹部12にガイド部3先端を係合して当接支持してリーマ本体1を所定の進行方向(図2の左方向)に案内しつつ各凸部8・8・8が有するドリル穴13・13・13に対してリーマ加工を施して、リーマ本体1が進行した距離に応じてガイド部3をリーマ本体1内部に内蔵することが可能となる。このように、被加工物に対してリーマ加工する場合に、ガイド部3先端を被加工物である凸部14壁面の所定の位置に設けた凹部12に係合するとともに当接支持して、リーマ加工の進行又は後退に伴い、ガイド部3をリーマ本体1に対して伸縮可能に構成しているため、ガイド部3を支持する支持部が貫通穴とされない場合(本実施例においては支持部が凸部14壁面上の凹部12)でもリーマ本体1を進行方向に案内し、被加工物に対してリーマ加工をすることができる。また、図3(b)に示すようにリーマ本体1先端が被加工物の所定の位置に当接した場合(本実施例においてはリーマ本体1先端が凸部14壁面に当接した場合)には、ガイド部3先端はリーマ本体1内部に完全に没入せず、凹部12にて係合した状態が維持される。
【0045】
上述したように、予め設けた凹部12に前記ガイド部3先端を係合支持した状態で被加工物に対してリーマ加工を行うことにより、前記ガイド部3先端が凹部12内部において接触する面積(支持する面積)が増大し、工具振れの原因となるリーマ10にかかる応力を分散することができ、リーマ本体1の振れ(工具振れ)が抑制できる。
なお、凹部12の内部形状及びガイド部3先端の形状は特に限定するものではなく、ガイド部先端は、凹部の内部形状に沿って当接する当接面を有すればよく、例えば凹部の内部形状を半球状にし、この凹部の内部形状に沿うようにガイド部先端を半球状に形成して当接面積を増やしてより接触面積を増やすことも可能である。また、凹部の内部形状やガイド部先端の形状については、被加工物の加工のし易さ等を考慮して適宜形状を決定すればよい。当然ながら、リーマによる切削が容易である材料などにおいては工具振れも少ないため、予め凹部を形成しなくてもリーマ加工を施すことが可能である。
【0046】
次に、本実施例におけるリーマ10を適用するコントロールバルブボデー金型15が有する挿通穴9の形成工程について図6を用いて説明する。
図6に示すように、コントロールバルブボデー金型15が有する挿通穴9を形成する工程としては、主に荒加工→中仕上げ加工→仕上げ加工の3工程で構成されており、本実施例に係るリーマ10は仕上げ加工の工程において使用される。
【0047】
具体的には、荒加工工程においては、被加工物である並んだ複数の凸部8・8・8に対してφ4.5ドリルで略垂直方向に貫く下穴を開口形成するステップ穴加工を行う。
次に、中仕上げ加工においては、荒加工にて形成された下穴に対してφ4ラジアスエンドミルで凸部8・8・8に開口された下穴をそれぞれ拡径されて、開口された穴が奥(凸部14側)に行くほど小さく開口するようにヘリカル加工及び突き加工を行う。
最後に、仕上げ加工においては、中仕上げ加工にて拡径された穴にリーマ10が有するガイド部3を挿入し、凸部14壁面に予め設けた凹部12にガイド部3先端を係合し、リーマ本体1を進行方向(凸部14側)に回転しつつ進めて、テーパーリーマ加工を行って、一方向(図6においては右方向)に向って徐々に拡径するように挿通穴9を形成する。
【0048】
本実施例に係るリーマ10を適用する仕上げ加工では、進行方向に所定長突出した伸縮可能なガイド部3の先端は被加工物の所定の当接位置である凹部12に係合支持される。一方、ガイド部後端のストッパ部3aは、図1(b)に示すように、コイルバネ4でガイド部3の突出方向に付勢されていることから、リーマ本体1が切削加工に伴って進行すると(図6の凸部14側)、凹部12のガイド部3先端の当接面においてコイルバネ4の弾性力による押圧がかかるとともにコイルバネ4が縮み、これによりリーマ本体1から突出したガイド部3がリーマ本体1内に没入していく。また、このリーマ10を図示せぬ加工機に装着して回転駆動させながら進行方向(加工方向)もしくは後退方向に移動させることにより、テーパーリーマ加工を行いながら、突出したガイド部3がリーマ本体1内に収納自在となる。
【0049】
以上のように、ガイド部3先端を被加工物の所定の位置に当接支持してリーマ加工する場合に、リーマ加工の進行に伴い、ガイド部3をリーマ本体1内に退避可能に構成しているため、ガイド部3を支持する支持部が貫通穴とされない場合でもガイド部3を支持する支持部を被加工物上に容易に設定可能であるとともに、リーマ本体1を進行方向に案内しつつ、被加工物に対してリーマ加工することができる。また、ガイド部3の後端を弾性手段により付勢する構成としているため、ガイド部3を所定の弾性力で被加工物上に当接支持することが可能となり、リーマ本体1を進行方向に案内しつつ、被加工物に対してリーマ加工することができる。加えて、ガイド部3先端を凹部12に係合させることで、リーマ本体1の振れが抑制できる。また、ガイド部3先端を凹部12に係合させた場合に、ガイド部3先端の凹部12内における接触面積が増大し、リーマ本体1にかかる応力を分散することができるので、リーマ本体1の振れが抑制できる。
【0050】
被加工物の硬さによる工具振れを低減させる方法として、本実施例に示したような予め設けた凹部12にガイド部3先端を係合してリーマ本体1にかかる応力を低減させる方法以外にも、ガイド部の押圧力をアップさせる(リーマの剛性をアップさせる)ことで工具振れを低減させる方法がある。すなわち、被加工物が硬い場合等、ガイド部3の押圧力に打ち勝ってガイド部3が支持部から径方向にずれる場合が考えられるため、弾性手段の弾性力を高める必要がある。そのような構成について以下に具体例を挙げて説明する。
【実施例2】
【0051】
本発明の実施例2に係るリーマ20について図7を用いて説明する。リーマ20は、実施例1に係るリーマ10におけるガイド部3後端を付勢する弾性手段の構成が異なるものである。そのため、異なる部分である弾性手段について主に説明し、実施例1と同一部分の説明ついては省略する。
【0052】
本実施例に係る弾性手段は、弾性手段収納孔17に配置されるコイルバネ18と、リーマ20(シャンク部2)の後端に配置されコイルバネ18の弾性力を調整する調整部である調整ネジ19を有する。
また、弾性手段収納孔17は、リーマ本体1内部に設けられたコイルバネ18を収納するための軸方向に沿って形成された円筒状空間であり、リーマ本体1長手方向中途部からリーマ20後端、すなわちシャンク部2後端まで延出されている。
【0053】
コイルバネ18は、バネの一部(本実施例の場合、コイルバネ18後側部分)が2重バネ構造となっている。すなわち、コイルバネ18の前側は実施例1で用いたコイルバネ4と同等のバネであり、コイルバネ18の後側は、実施例1のコイルバネ4を2重にした状態と同等のバネであり、前側、後側で段階的に弾性力が異なるようにコイルバネを構成している。コイルバネ18は、コイルバネ18の前側部分よりも2重バネ構造である後側部分の弾性力が大きいものである。
【0054】
調整ネジ19は、リーマ20後端部(シャンク部2後端部)に回動自在に設けられ、調整ネジ19の前端がコイルバネ18の後端部と当接しており、軸周り所定方向に回動すると調整ネジ19は前後進してコイルバネ18を軸方向に伸縮して弾性力を調整することができる。また、調整ネジ19は、所定方向に回動することでシャンク部2後端部から取り外すことが可能であり、調整ネジ19を取り外して弾性手段収納孔17内に収納しているコイルバネを適宜交換可能である。
【0055】
このように弾性手段を構成することで、リーマ加工する被加工物に応じて弾性力を調整することが可能となり、ガイド部先端の押圧力を被加工物に応じて調整することが可能となる。具体的には、コイルバネの弾性力を調整する場合において、調整ネジ19を調整することで弾性力を調整することが可能であり、もしくは、弾性手段収納孔17内に収納するコイルバネとして所定の弾性力を有するコイルバネに適宜交換することでコイルバネの弾性力を調整することが可能である。すなわち、調整部である調整ネジ19もしくはコイルバネの交換により被加工物の硬さに応じて弾性手段の弾性力を調整し、ガイド部3を当接支持する際の押圧力(ガイド部3の負荷に応じる支持力)を増大させることで、リーマ20の全体としての剛性が向上し、リーマ本体1の振れが抑制できる。
【0056】
本実施例におけるコイルバネの変形例としては、図8(a)(b)に示すように、バネの太さを変化させた構造、バネの巻回(巻き数)を変化させた構造、なども考えられる。
図8(a)に示すリーマ30が有するコイルバネ21は、コイルバネの前側のバネに比べて後側のバネの太さが太くなるように構成したものである。また、図8(b)に示すリーマ40が有するコイルバネ22は、コイルバネの前側のバネと後側のバネの巻回状態(バネの巻き数)を変化させたものであり、コイルバネの前側のバネに比べて後側のバネの巻き数が少なくなるように構成したものである。
なお、前記コイルバネの代わりに、蛇行状の板バネを用いてバネの前後で弾性力を変化させて構成することも可能である。
【0057】
被加工物の硬さによる工具振れを低減させる方法として、本実施例以外にも、ガイド部の押圧力をアップさせる(リーマの剛性をアップさせる)ことで工具振れを低減させる方法がある。すなわち、被加工物が硬い場合等、ガイド部3の押圧力に打ち勝ってガイド部3が支持部から径方向にずれる場合が考えられるため、弾性手段の弾性力を高める必要がある。そのような構成について以下に具体例を挙げて説明する。
【実施例3】
【0058】
本発明の実施例3に係るリーマ50について図9を用いて説明する。また、実施例1と同一部分の説明ついては省略する。
リーマ50は、実施例1、2で説明した弾性手段であるコイルバネの代わりに、実施例1に係る弾性手段収納孔7と同位置に設けられたオイルを収納するためのオイル収納部27にオイルを満たしている。また、ストッパ部23は、オイル漏れ防止のためのリングパッキン(図示せず)を備えており、オイル収納部27において軸方向に摺動可能に配置される。また、リーマ50には、当該リーマ50の後端部に配置されてオイル収納部27に供給する油圧の圧力を制御する油圧制御装置28が接続されている。
このように、リーマ50は、前記オイル収納部27内のオイルを介してガイド部3後端のストッパ部23に所定の油圧を供給することによりガイド部3先端の被加工物に対する押圧力を制御する油圧制御構造を有している。
また、リーマ50は、リーマ加工の際にリーマ50を装着して回転駆動しながら軸方向に進退して被加工物に対してリーマ加工することができる加工機29に着脱可能であり、加工機29に装着した状態で加工機を駆動することにより被加工物に対してリーマ加工を行うことができる。
【0059】
加工機29には、当該加工機29の動作状態を把握するための各種センサが設けられており、これらのセンサは油圧制御装置28に接続されている。また、センサは、加工機の動作状態である回転速度変化、回転トルク、前進距離等の所定の信号を検出することが可能である。
【0060】
油圧制御装置28は、加工機の所定部(駆動部等)に配置された前記センサによる検出信号(回転速度変化、回転トルク、前進距離等)に基づき、リーマ50の加工状況(硬い部分を削っているのか、柔らかい部分を削っているのか)を判断し、油圧によりガイド部の押圧力を制御する。つまり、前記油圧は、加工機29の動作状態に基づいて前記油圧の圧力を制御する制御装置により制御される。
【0061】
このように構成することで、例えば、被加工物の加工途中において硬い部分を削っている状態から柔らかい部分を削っている状態へと変化した場合、前記センサからの信号により判断することが可能となる。この判断に基づいて、油圧制御装置28は、ガイド部3に与える油圧を制御して、ガイド部3先端の押圧力を適宜調整することができる。つまり、加工機29の動作状態に基づいてガイド部後端にかかる油圧の圧力制御することで、リーマ本体の振れを可及的に抑制できる。
なお、前記ガイド部への押圧力を制御するものとしては、油圧に限定するものではなく、例えば空気圧等であってもかまわない。
【0062】
本発明は、バネ等による弾性手段により付勢されるとともに、リーマ本体に内蔵可能(退避可能)であるガイド部を有するリーマである。これにより、被加工物にガイド部先端を当接させた状態に保ちながら、リーマ加工の進行に伴ってガイド部をリーマ本体内に進退可能となり、貫通穴等の支持部を有しなくともリーマ加工可能となる。
【0063】
本発明は、バネ等による弾性手段により付勢されるとともに、リーマ本体に内蔵可能(退避可能)であるガイド部を有するリーマであって、被加工物の硬さに応じてバネ係数を変化可能であるリーマである。これにより、被加工物の硬さに応じて、ガイド部の押圧力(ガイドの負荷に応じる支持力)を増大させることで、リーマの全体としての剛性が向上し、リーマ振れが抑制できる。
【0064】
本発明は、油圧により付勢されるとともに、リーマ本体に内蔵可能(退避可能)であるガイド部を有するリーマであって、加工状況(例えば、刃部の進行状況)を検出する信号により油圧の圧力を制御する制御装置を制御するリーマである。これにより、加工状況に応じて、油圧制御によりガイド部の押圧力を増減させることで、被加工物の硬さに応じてガイド部の押圧力剛性が向上し、リーマ振れが抑制できる。
【0065】
本発明は、付勢力が調節可能な弾性手段により付勢されるとともに、リーマ本体に内蔵可能であるガイド部を有するリーマを用いて加工する加工方法であり、被加工物におけるガイド部先端が当接してリーマを支持する支持部に予め凹部を設け、ガイド部先端に当該凹部との当接角度と同等の面取りを施すものである。これにより、ガイド部先端が凹部に当接支持した際に、ガイド部の接触面積が増大し(当接面の面圧が低くなり)、リーマにかかる応力を分散できることで、リーマの振れが抑制できる。加えて、ガイド部先端が被加工物に接触して支持するのではなく凹部に係合するため、径方向にガイド部先端がずれることも防ぐことができる。
【符号の説明】
【0066】
1 リーマ本体
3 ガイド部
4 コイルバネ
10、20,30、40,50 リーマ
12 凹部
15 バルブボデー金型
19 調整ネジ
28 油圧制御装置
29 加工機
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物に当接してリーマ本体をリーマ加工の進行方向に案内するガイド部を備えたリーマであって、
前記ガイド部は、前記リーマ本体の先端から前記進行方向に伸縮可能に突出し、前記リーマ本体を前記進行方向に案内しながらリーマ本体内に退避することを特徴とするガイド付リーマ。
【請求項2】
前記ガイド部後端は、前記リーマ本体内に配置されるとともに弾性手段により前記進行方向に付勢されていることを特徴とする請求項1に記載のガイド付リーマ。
【請求項3】
前記弾性手段は、弾性力を調整する調整部を備えることを特徴とする請求項2に記載のガイド付リーマ。
【請求項4】
前記ガイド部後端は、油圧により付勢されていることを特徴とする請求項1に記載のガイド付リーマ。
【請求項5】
前記油圧は、リーマ加工の際に前記リーマ本体を装着して回転駆動する加工機の動作状態に基づいて前記油圧の圧力を制御する制御装置により制御されることを特徴とする請求項4に記載のガイド付リーマ。
【請求項6】
前記リーマ本体は、テーパーリーマであることを特徴とする請求項1から請求項5の何れか一項に記載のガイド付リーマ。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れか一項に記載のガイド付リーマを用いた加工方法。
【請求項8】
前記被加工物における前記ガイド部先端が当接する位置に予め凹部を設け、当該凹部に前記ガイド部先端を係合させてリーマ加工を行うことを特徴とする請求項7に記載のガイド付リーマを用いた加工方法。
【請求項9】
前記ガイド部先端は、前記凹部の内部形状に沿って当接する当接面を有することを特徴とする請求項8に記載のガイド付リーマを用いた加工方法。
【請求項1】
被加工物に当接してリーマ本体をリーマ加工の進行方向に案内するガイド部を備えたリーマであって、
前記ガイド部は、前記リーマ本体の先端から前記進行方向に伸縮可能に突出し、前記リーマ本体を前記進行方向に案内しながらリーマ本体内に退避することを特徴とするガイド付リーマ。
【請求項2】
前記ガイド部後端は、前記リーマ本体内に配置されるとともに弾性手段により前記進行方向に付勢されていることを特徴とする請求項1に記載のガイド付リーマ。
【請求項3】
前記弾性手段は、弾性力を調整する調整部を備えることを特徴とする請求項2に記載のガイド付リーマ。
【請求項4】
前記ガイド部後端は、油圧により付勢されていることを特徴とする請求項1に記載のガイド付リーマ。
【請求項5】
前記油圧は、リーマ加工の際に前記リーマ本体を装着して回転駆動する加工機の動作状態に基づいて前記油圧の圧力を制御する制御装置により制御されることを特徴とする請求項4に記載のガイド付リーマ。
【請求項6】
前記リーマ本体は、テーパーリーマであることを特徴とする請求項1から請求項5の何れか一項に記載のガイド付リーマ。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れか一項に記載のガイド付リーマを用いた加工方法。
【請求項8】
前記被加工物における前記ガイド部先端が当接する位置に予め凹部を設け、当該凹部に前記ガイド部先端を係合させてリーマ加工を行うことを特徴とする請求項7に記載のガイド付リーマを用いた加工方法。
【請求項9】
前記ガイド部先端は、前記凹部の内部形状に沿って当接する当接面を有することを特徴とする請求項8に記載のガイド付リーマを用いた加工方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−36953(P2011−36953A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−186490(P2009−186490)
【出願日】平成21年8月11日(2009.8.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月11日(2009.8.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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