説明

ガス−アシスト抑圧クロマトグラフィー法および装置

【課題】イオンクロマトグラフィーにおいて、アニオンまたはカチオンを分析するために、流出液の抑圧を利用する方法であって、化学的再生剤の消費量および廃棄物の量、稼動コストが低い方法、及びそのための装置を提供すること。
【解決手段】水性サンプル流中のイオン種の分析法であって、
(a) 電解質を含む水性溶離液の存在下で、該サンプル流中のイオン種を、クロマトグラフィー分離して、クロマトグラフィー流出液を生成する工程、
(b) 該流出液を、サプレッサーを通して流動させることによって、該流出液中の該電解質を抑圧して、抑圧流出液を生成する工程、
(c) 該抑圧流出液中の該イオン種を検出する工程、および
(d) ガス流と再生液体流との混合物を、該サプレッサーを通して流すことによって、該サプレッサーを再生する工程、を含む方法及び装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオンクロマトグラフィーにおいて、アニオンまたはカチオンを分析するために、流出液の抑圧を利用する方法、並びにそのための装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
イオンクロマトグラフィーは、イオンを分析するための公知の技術であり、典型的には電解質を含む流出液を使用して、クロマトグラフィーによる分離段階、流出液の抑圧(suppression)段階、これに続く検出、典型的には導電率検出器による検出段階を含む。該クロマトグラフィーによる分離段階では、注入されたサンプルのイオンを、溶離液として電解液を使用して、分離カラムを介して溶出する。該抑圧段階においては、該電解液の導電率を抑圧するが、該分離されるイオンの導電率を抑圧せずに、後者を導電率セルによって測定することができる。この技術は、米国特許第3,897,213号、同第3,920,397号、同第3,925,019号および同第3,926,559号に詳しく記載されている。
該電解液の抑圧またはストリッピングは、上記従来技術に記載されており、一般に充填床サプレッサー(packed bed suppressor; PBS)と呼ばれる、イオン交換樹脂床によって行われる。このPBSは、酸または塩基溶液を用いたフラッシングによって、定期的に再生する必要がある。
【0003】
PBSの別の再生法は、米国特許第5,773,115号に記載されている。イオンクロマトグラフィーは、クロマトグラフィーによる分離、充填床での化学的抑圧および検出により行われる。その後、ある電位を該充填床サプレッサーに印加し、かつ該サプレッサーを介して水性流を流し、該流れ内の水を電解し、かつこれによってヒドロニウムまたは水酸イオンを生成し、該イオン交換樹脂を再生する。該充填床サプレッサーは、電気化学的再生用の樹脂内に埋設された電極を持つ。第二のイオン交換樹脂床が、液体流を、該系に通すための適当なバルブ手段と共に記載されている。一変法においては、溶離液内の第二のサンプルが、クロマトグラフィーにより分離される。該溶離液および分離された第二サンプルは、第二の充填床サプレッサーおよび検出器を流動する。該流出液は、まず該第一の充填床サプレッサーを流れ、再生に必要とされる水性流体流を形成し、また再生のために電位を印加する。該第二サプレッサーは、該第一サンプルの検出器流出液をこれに通すことによって、また電位を印加することによって、同様に再生できる。
【0004】
「膜式サプレッサー」として公知のサプレッサーの、もう一つの形態が、米国特許第4,999,098号に記載されている。この装置において、該サプレッサーは、イオン交換膜シートによって分離された、少なくとも一つの再生用区画と、一つのクロマトグラフィー用の流出液区画を含む。このシートは、その交換可能なイオンと同一の電荷をもつイオンの、貫膜透過を可能とする。イオン交換スクリーンが、該再生および流出液区画において利用される。該流出液区画からの流れは、解明されたイオン種の検出のために、導電率検出器等の検出器に導かれる。該スクリーンは、イオン交換サイトを与え、該流出液流チャンネルを横切る、サイト間移動路を生成するのに役立ち、結果として該バルク溶液中のイオンの、該膜への拡散によって、抑圧能力は最早制限される。サンドイッチ型サプレッサーも記載されており、これは該第一の膜に対向する第二膜シートを含み、かつ第二の再生区画を画成する。隔置された電極が記載され、これは該サプレッサーの長さに沿って、再生剤並びにチャンバー両者と連絡状態にある。これら電極を横切って電位を印加することによって、このデバイスの該抑圧能力における増加が見られる。この特許は、該再生流チャンネル内を流れ、かつ再生剤放出源から供給される、典型的な再生溶液(酸または塩基)を開示している。典型的なアニオン分析装置において、水酸化ナトリウムが電解液展開剤であり、また硫酸が該再生剤である。この特許は、また電気透析モードにおいて、該再生溶液を置換するために、水の使用を開示している。
【0005】
もう一つの膜式サプレッサーが、米国特許第5,248,426号に記載されている。直流電源コントローラが、2つのプラチナ電極を横切る電場を発生し、該再生チャンネル内の水を電解する。該'098号特許におけるように、機能性が付与されたイオン交換スクリーンが、該再生チャンバー内に存在し、電流の流通を容易にし、選択透過性イオン交換膜が、該クロマトグラフィー溶離液チャンバーを画成する。検出後、該クロマトグラフィー流出液は、該サプレッサーを介してリサイクルされ、電解液用の流動サンプを形成し、しかも抑圧のための、酸または塩基を発生する、該電解用の水を供給する。
【0006】
様々な膜式サプレッサーが、EPA公開WO 99/44054に記載されている。このサプレッサーは、たとえイオン交換樹脂を含む、流通式のサプレッサー床を含むものであっても、該膜式サプレッサータイプのものである。この床は、液体サンプル入口および出口部分を持ち、電極チャンバー内の第一電極は、該サプレッサー入口部分に近接している。バリヤが、該サプレッサー床と、該電極チャンバーとを分離し、過度の液体流の発生を防止し、かつイオンの輸送を可能としている。第二電極は、該樹脂床の出口部分と電気的接続状態にある。リサイクル用の導管が、該サプレッサー出口と該電極入口との間の流体接続を可能とする。アニオン分析に関して開示されたこの方法の一態様では、クロマトグラフィーカラムからの流出液は、該サプレッサー内の、カチオン交換樹脂中で、抑圧される。該サプレッサーからの流出液は、検出器を越えて流れ、カソードを含む該電極チャンバーにリサイクルされる。該サプレッサー床と電気的な接続関係にある、アノードとカソードとの間に、ある電位を印加する。水は、該アノードで電解され、ヒドロニウムイオンを生成し、該カチオン交換樹脂上の該カチオンを、該バリヤに向かって、エレクトロマイグレーションさせ、かつ該バリヤを横切って該カソードに搬送され、一方該カソードチャンバー内の水は、電解されて、水酸イオンを生成し、該イオンは該搬送されたカチオンと結合して、該電極チャンバー内でカチオン-ヒドロキシドを形成する。
【発明の概要】
【0007】
本発明によれば、水性サンプル流中のイオン種は、
(a) 電解質を含む水性溶離液の存在下で、該イオン種を、クロマトグラフィー分離して、クロマトグラフィー流出液を生成する工程、
(b) 該クロマトグラフィー流出液を、サプレッサー(例えば、膜式サプレッサー)を通して流動させることによって、該流出液中の該電解液を抑圧して、抑圧流出液を生成する工程、
(c) 該抑圧流出液中の該イオン種を検出する工程、および
(d) ガス流と再生液体流との混合物を、該サプレッサーを通して流すことによって、該サプレッサーを再生する工程
を含む方法により、分析される。
該ガス流は、該検出され、抑圧された流出液を、電解ガス発生装置を通して流すことにより、発生させることができ、該発生装置は、該流出液中の水を、水素および酸素ガスに電解する。
【0008】
また、加圧ガスを、再生液体用リザーバに導いて、該リザーバから該再生流チャンネルに向かう流れを生成することができる。
本発明によるイオン分析用の装置は、
(a) 液状サンプル内のイオン種を分離するための、クロマトグラフィー分離装置と、
(b) 該クロマトグラフィー分離装置から溶出する、クロマトグラフィー流出液中の、電解液を抑圧するための、入口と出口とを持つサプレッサーと、
(c) 該サプレッサーの該入口と流体接続関係にある、再生液体流の源と、
(d) 該サプレッサーの該入口と流体接続関係にある、ガス流の源と、
(e) 該サプレッサー出口からの該流出液内の、イオン種を検出するための、該サプレッサーと流体接続関係にある、検出器とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】ガス-アシスト発明を利用した、流動系の1態様を示す図である。
【図2】ガス-アシスト発明を利用した、流動系の1態様を示す図である。
【図3】ガス-アシスト発明を利用した、流動系の1態様を示す図である。
【図4】本発明による、ガス-アシストリザーバの1態様を示す図である。
【図5】図5は、本発明による、ガス-アシストリザーバの態様を示す図である。
【図5A】図5Aは、本発明による、ガス-アシストリザーバの態様を示す図である。
【図6】本発明によるガス発生器を用いた、流動系の1態様を示す図である。
【図7】本発明によるガス発生器を用いた、流動系の1態様を示す図である。
【図8】本発明により、検出ノイズにおける減少を示す、実験結果である。
【図9】本発明により、検出ノイズにおける減少を示す、実験結果である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のこの装置は、測定すべきイオン種が、アニオン単独またはカチオン単独である限り、多数のイオン種を測定するのに有用である。適当なサンプルは、表面水、および他の液体、例えば工業的化学的な廃液、体液、果実およびワイン等の飲料および飲料水を含む。本明細書において、「イオン種」なる用語を使用する場合、これはイオン形状にある種および本発明の装置の条件下で、イオン化可能な分子状の成分を包含する。
一般に、本発明は、イオンクロマトグラフィーにおいて使用するサプレッサーを再生するのに利用する再生液体との組み合わせで、ガスを利用することに関連する。このサプレッサーの目的は、該分析すべき流れのバックグラウンド導電率を、および結果としてノイズを減じ、かつ被検成分の導電率を高め(即ち、S/N比の増大)、しかもクロマトグラフィーの効率を維持することにある。従って、該サプレッサーの性能にとって、以下のパラメータが重要である:(1) 該サプレッサー樹脂の、μEg/mL単位で測定された、該サプレッサーの容量、(2) 該サプレッサーの体積、(3) 該サプレッサーの長さに対するi.d.の比、および(4) 各デバイスに対して、μS/cm単位で測定したバックグラウンド導電率。
【0011】
以下により詳細に記載されるように、該液体再生流と混合したガス流の使用は、多くの重大な潜在的利点をもたらす。これは、該サプレッサーを流動する流体の速度を高め、該サプレッサーの容量を高め、抑圧の速度を高め、平衡化時間を短縮し、検出ノイズを減じ、稼動コストおよび廃棄コストを減じ、かつ非-再循環モードでの抑圧に比して、再生剤の消費量を減じる。
本発明の、ガス-アシスト抑圧は、当分野において公知の如何なる抑圧技術に対しても適用可能である。例えば、背景技術の欄に記載したように、サプレッサーとして、膜式サプレッサーまたは充填床サプレッサーを使用する、抑圧に対して適用できる。また、この抑圧は、独立した再生液体流を使用する場合、またはリサイクルされる再生液体流に対して、適用可能である。また、化学的にまたは電解的に再生される、サプレッサーに対しても適用可能である。更に、該ガスは、従来のガス源、例えば加圧シリンダーから供給することができ、あるいはここに記載するように、電気化学的に発生させることも可能である。
【0012】
ここで使用する用語「膜式サプレッサー」とは、米国特許第4,999,098号および同第5,352,360号並びに公開WO 99/44054(これらを本発明の参考文献とする)に記載されている、一般的な型のサプレッサーを含む。膜式サプレッサーは、液体不透過性のイオン交換膜によって、再生流チャンネルから分離された、クロマトグラフィー流出液流動チャンネルを含む。該クロマトグラフィー分離装置からの流出液は、該クロマトグラフィー流出液流動チャンネルを介して流れ、またそこから該検出器に流れる。再生液体は、該膜の反対側における、該再生液体流動チャンネル内を流動する。該流動チャンネルを分割する該膜は、選択透過性、即ち対象とする該被検成分イオンに対して反対電荷をもつ、正または負の、一方の電荷のみをもつイオンに対して、優先的に透過性であり、該一方の電荷をもつイオンと交換性のイオンを含む。例えば、アニオン分析において、該溶離液中の電解質は、典型的に強カチオン、例えばナトリウムを含み、また該膜はこれらナトリウムイオンに対して透過性である。抑圧中、該ナトリウムイオンは、該クロマトグラフィー流出液流動チャンネルから該再生剤流動チャンネルまで、該膜を横切って移動し、一方ヒドロニウムイオンは、該再生剤流動チャンネルから該クロマトグラフィー流出液流動チャンネルまで、該膜を横切って移動し、結果として検出前に、該クロマトグラフィー流出液を抑圧する。
【0013】
該再生液体は、化学的な再生剤、例えば化学的(非-電解的な)再生に対しては、酸または塩基等であり得、また電解再生に関しては、水の源として利用するために、水または該検出器由来の流出液、例えば実質的に水を含むものであり得る。
ここで使用する用語「イオン交換体充填サプレッサー」とは、該抑圧の実質的に全てが、該サプレッサー内のイオン交換材料内で起こり、かつ再生が、該膜式サプレッサーと同時というよりも、寧ろ別の操作において起こるような、サプレッサーを意味する。イオン交換体充填サプレッサーの従来の形態は、例えば米国特許第5,773,615号に記載されているような、充填床サプレッサー(PBR)である。あるいはイオン交換体充填の他の形態としては、例えば多孔質イオン交換モノリスを使用でき、これを介して該クロマトグラフィー流出液が流通する。これに関しては、EPA公開WO 99/11351に記載されている。
【0014】
図1を参照すると、ガス-アシスト抑圧を利用した、本発明の一態様の単純化された模式図が、外部ガス源および従来の膜式サプレッサーを使用して、図示されている。この装置は、典型的にはクロマトグラフィーカラム10の形状にある、クロマトグラフィー分離装置を含み、該カラムには、クロマトグラフィー用分離媒体が充填されている。一態様において、このような媒体は、イオン交換樹脂の形状にある。別の態様において、この分離媒体は、本質的に非-永続的に結合したイオン交換サイトを持つ、多孔質疎水性クロマトグラフィー用樹脂である。この他の装置は、米国特許第4,265,634号に記載されているように、移動相イオンクロマトグラフィー(MPIC)に対して利用される。疎水性部分とイオン交換サイトとを含む、イオン交換サイト-形成化合物は、該カラムを流動し、かつ可逆的に該樹脂に吸着され、イオン交換サイトを生成する。
【0015】
カラム10と直列に配列されたサプレッサー12は、カラム10からの溶離液の、該電解質の導電率を抑圧するが、該分離されるイオンの導電率を抑圧することはない。該サプレッサーからの流出液は、解明されたイオン種を検出するために、検出器14に導かれる。適当なサンプルが、サンプル注入バルブ16を介して供給され、該装置内の、図示されていない溶離液源またはリザーバからの、溶離液中に通される。ポンプ18により輸送した後、サンプル注入バルブ16に通される。検出器14は、好ましくは導電率セルであり、そこでは、イオン種の存在は、イオン性物質の量に比例する、電気信号を生成する。このような信号は、典型的には、図示されていない導電率測定装置に送られ、かくして分離されたイオン種の濃度の検出を可能とする。周知の如く、他の型の検出器を使用することも可能である。
【0016】
検出器14からの流出液を、ガスと混合し、該膜式サプレッサー12の、流通型再生流チャンネルにリサイクルする。米国特許第5,352,360号に記載されている、電解膜式サプレッサーのサンドイッチ型サプレッサーにおいては、中央クロマトグラフィー流出液流チャンネルの対向側部上に、2つの再生流チャンネルがあり、2つのイオン交換膜が、これら3つのチャンネルを分割している。該再生流チャンネルは、この特許において、検出器流出液流チャンネルと呼ばれている。この検出器流出液は、これを2つの異なる導管に導き、2つの異なる再生流チャンネルを与える、スプリッターバルブを介して流動する。この配置および典型的な電解膜式サプレッサーの詳細は、同じ特許に記載されており、これを本発明の参考とする。化学的に再生された膜式サプレッサーの構成は、米国特許第4,999,098号に記載されている。
【0017】
図1に示した態様において、ガスは、公知の加圧ガス源、例えば加圧ガスシリンダーによって供給され、またリサイクル用導管内を、検出器14から膜式サプレッサー12まで流動する。この抑圧反応を妨害しない任意のガスを用いることができる。従って、膜式サプレッサーに関して、好ましくは該膜を横切って、該再生剤流チャンネルから該クロマトグラフィー流出液流チャンネルまで、十分な濃度で輸送されて、検出を有意に妨害する可能性のある、汚染物質を排除する。適当なガス源は、比較的不活性であり、ヘリウム、窒素およびアルゴンを包含する。
空気が十分な純度を持つ場合には、圧縮空気をガス源として使用することも可能である。以下に示すように、電解により発生させた水素および酸素ガスを、使用することもできる。
【0018】
再度図1を参照すると、検出器14からの液状流出物は、導管20を介して、混合T-コネクタ22として示されている混合チャンバーまで流動する。典型的には、圧縮空気シリンダ24である、ガス源は、ライン26から混合T-コネクタ22まで流動する。チェックバルブ28を、ライン26に設けることができ、これはガスが流されていない場合、または該ガス供給が停止された場合に、該ガスライン内への液体の逆流を最小化するのに役立つ。混合T-コネクタ22内で形成された、該ガスと液体との混合物は、ライン30を介して、サプレッサー12の入口32、具体的には該再生流チャンネルの入口まで流動する。上記の如く、該再生液体は、該イオン交換膜の一方の側を流れ、かつ該クロマトグラフィー流出液は、その他方の側を流れる。該溶離液中の電解質の導電率が、抑圧される。該再生液体は、ライン34を介して該サプレッサーを離れ、廃棄部まで流動する。
【0019】
米国特許第5,352,360号に示された型の、膜式サプレッサーにおいて、抑圧は電気化学的に起こる。そこに記載されているように、これは、流通式イオン交換体または導電性物質、例えば該クロマトグラフィー流出液流動チャンネルおよび再生流チャンネル内の帯電したスクリーンとして含まれ、抑圧のために、該膜を横切る該電解質イオンの輸送を補助することが好ましい。ある電位が、隔置された電極間に印加され、該電極は一方では該再生流チャンネルと連絡しており、また他方では該クロマトグラフィー流出液流チャンネルと連絡している。典型的なアニオン分析に関する、化学反応が、この特許の図4に示されている。例示されているように、水酸化ナトリウムが、該溶離液の電解質であり、該溶離液は該サプレッサー内で、僅かにイオン化された形状(H2O)に転化される。その後、該溶液を該導電率セルに通し、またこれを該検出器流出液流チャンネルに再循環する。該イオン交換膜シートは、正に帯電したナトリウムおよびヒドロニウムイオンによる、該膜の透過を可能とする。電気化学的な膜式サプレッサーを使用する方法並びにデバイスは、米国特許第5,352,360号に詳細に記載されており、化学的に再生されたサプレッサーの使用については、米国特許第4,999,098号に記載されている。これら両者を本発明の参考とする。
【0020】
図1に示された態様において、十分なガスを、流動する再生液体と混合して、上記利点の少なくとも幾つかを達成する。該検出器流出液の典型的な流量は、約0.1〜10 ml/分および好ましくは約0.2〜3 ml/分およびより好ましくは約0.25〜2 ml/分である。これに対応して、該検出器流出液と混合された該ガス流の典型的な流量は、約2〜500 ml/分およびより好ましくは約20〜150 ml/分である。適当なガス:再生液体流量の比は、約1:1〜約5000:1、好ましくは約10:1〜1500:1、より好ましくは約30:1〜150:1である。
【0021】
この種の系において、該液体に導入される該ガスは、少なくとも約6.89 kPa (約1 psi)、好ましくは少なくとも約34.5 kPa (約5 psi)および最も好ましくは約68.9 kPa (約10 psi)なる圧力に保たれた、加圧ガス源から供給するのが適当である。この圧力を高くし過ぎて、該サプレッサーデバイスに損傷を与えてはならない。従って、該圧力範囲の上限は、好ましくは約689 kPa (約100 psi)以下、より好ましくは約207 kPa (約30 psi)以下、および最も好ましくは約103 kPa (約15 psi)以下とするのが適当である。最適のガス圧またはガス流量を越えた場合、該ガス圧または流量を更に高めることに、殆ど利点はないことに注意すべきである。該ガスの高い速度は、該再生チャンバーから、電解ガスおよび液体両者を十分に除去して、該再生チャンバー内の流れを均質化するのに役立つ。最適なガス流量を越えても、該ガス流量を高めることによる利点は、最早なく、また更なるガス速度の増大は、実際にはより高いガス排気量をもたらし、ノイズまたは性能にかかわる付加的な利点はない。
該リサイクルモードで膜式サプレッサーを用いて稼動した場合の、該ガス-アシストモードにおけるピーク-ピークノイズ対ガスを使用しない方法における該ノイズの比は、典型的には1:2〜1:20、より典型的には1:4〜1:10なる範囲にある。
【0022】
図2を参照すると、本発明のもう一つの態様が示されており、ここでは、該再生液体は、容器内の再生液体リザーバとしての、外部供給源から該膜式サプレッサーに供給され、また該ガスは、該再生液体リザーバに供給される。図2の流動装置は、図1の流動装置と同様な多くの部品を含むが、再生液体はリサイクルされない。同様な部品は、図1および2において、同様な参照番号で示されている。この例において、ガスは、レギュレータ42によって制御される、該加圧シリンダまたは他のガス供給源40から供給されるのが適当であり、またライン44を介して、再生液体48のリザーバを含む、容器46に導かれる。適当には、容器46は、所定サイズの、公知の実験室用プラスチック製円筒ボトルである。該再生液体は、化学的な再生剤、例えば米国特許第4,999,098号に記載されているような、該膜式サプレッサーの化学的再生のために使用する、酸または塩基等であり得る。ここで、該ガスは、十分な圧力の下で加圧して、該液体を加圧し、これをサプレッサー12の再生流チャンネルを介してポンプ輸送する手段に供給することができる。ガスは、また適当な源59、例えば容器46およびサプレッサー12の間の、加圧ガスシリンダから供給することも可能である。源59からの該ガスは、混合T-コネクタ55等の適当な混合チャンバー内で、ライン50内で再生液体と混合され、ライン58を介してサプレッサー12の該再生流チャンネル入口に供給される。
【0023】
該再生液体は、リザーバ48からライン50に流れ、膜式サプレッサー12の該再生流チャンネル入口にポンプ輸送される。該液状再生剤流を該膜式サプレッサーに導くために、ガス圧を使用しない場合、公知の型のポンプ52を、この目的のために使用できる。該クロマトグラフィー分離機(図示せず)からの該クロマトグラフィー流出液は、ライン54を介して膜式サプレッサー12に流れ、かつ検出器14を介してライン56から出て、廃棄される。膜式サプレッサー12が、米国特許第5,352,360号に記載されているように、電解式サプレッサーである場合、リザーバ48内の液体は、好ましくは純水であり、あるいはアニオン分析に対しては酸、カチオン分析に対しては塩基であり得る。他方、膜式サプレッサー12が、電解式ではない場合、該再生液体は、好ましくは米国特許第4,999,098号に記載のように、酸または塩基である。
【0024】
該再生液体リザーバ用の容器は、所定の再生に対して、十分な体積の再生液体を含むようなサイズをもつものである。幾つかの装置に関しては、該クロマトグラフィーカラムおよびサプレッサーのサイズに依存して、少なくとも約500 mlの体積で十分である。他の装置に関しては、この体積は、少なくとも約1000 ml、約4000 ml程度まで、あるいはそれ以上であり得る。直列または並列の多数の容器を使用することも可能である。ここで使用するこの用語「容器」とは、1以上の容器を意味する。
図3を参照すると、図2に示された装置のもう一つの態様が示されているが、ポンプ52は省略されている。ここで、ライン50内に、液体チェックバルブ60が設けられ、これは液体を一方向のみに流し、かつ対向する方向にガス流がないことを保証する、役割を果たす。同様に、ガスチェックバルブ62が、混合T-コネクタ55に供給されるガス流路内に設けられ、所定の方向におけるガス流を保証し、かつ対向する方向に液体流が存在しないことを保証する、役割を果たす。
【0025】
図4は、ガスを、再生液体用リザーバにポンプ輸送し、該ガスと液体との混合物を、該再生サプレッサーに供給するための装置の、一態様を示す。この装置は、付随的なポンプの存在下、または不在下で稼動することができる。レギュレータ72によって制御される加圧供給装置70からのガスは、ライン74を介して容器76に流入し、該容器は、好ましくはストッパー77によって閉じられる、導入用開口を備えたボトル形状にある。該再生液体リザーバは、参照番号78で示されている。このガスは、容器76の頂部近傍で該容器に流入する。液体用導管は、該容器76の頂部から突出し、かつ該容器内の十分なレベルまたは深さまで、再生運転の完了時点において、該液体リザーバ78の所定レベル以下となるまで伸びている。該再生液体は、好ましくはストッパー77が取り外された、該容器頂部開口に供給される。充填後、ストッパー77が挿入され、かつ加圧され、ガスは源70から容器76に流入する。容器76を出た該液体は、管路80を介して、混合T-コネクタ84の形状にある、適当な混合チャンバーに流入する。ガス管路86の形状にあるもう一つの導管は、容器76の入口端部において、この容器の内側と、またその出口端部において、混合T-コネクタ84と連通している。混合T-コネクタ84で形成されたこの気-液混合物は、次に膜式サプレッサーまたはイオン交換体充填サプレッサーの該再生剤入口に導かれる。この目的で使用される付随的な圧力が存在する場合、これは上に示された数値的な値まで加えられる。
【0026】
図5を参照すると、ガス混合および加圧デバイスの他の態様が示されており、この態様は、図4に示された態様と類似している。従って、同様の部品は、同様の参照番号で示されている。これら図示された装置間の、主な差異は、該再生液体とガスとの混合方法にある。ここで、同心状の管90および92が、図6Aに示すように使用される。管90および92は、抑圧サイクル終点において、再生液体78の選択されたレベルの下方に突出している。ライン74を介して容器76に流入する該ガスは、リザーバ78内の液体を加圧し、容器76から液体用の管路92に、該液体を流入させる。該ガスの一部は、管90内の開口を介して、管90および92管の環状空間に生成される、流動チャンネル94に流入する。管9の遠位端部を、該サプレッサーの入口に接続して、該再生液体を供給することが好ましい。液体用管92は、該サプレッサー入口の上流側において、該管90内の開口において終端している。このように、該終端部において、該液体およびガスは混合され、上記混合T-コネクタと類似の機能を持つ、混合チャンバーが形成される。該液体およびガスに付いて上記したパラメータも、この態様に適用する。あるいはまた、該ガスおよび液体用の導管は、該開口の適当な変更により、変えることができる。
【0027】
図1〜3に示す装置は、膜式サプレッサーを使用し、このサプレッサーでは、抑圧は、イオン交換膜を横切って起こる再生と同時に生じる。しかし、このガス-アシスト式の発明は、イオン交換体充填サプレッサー、例えば充填床サプレッサーに適当な改良を加えて、利用することができる。この議論の目的に関して、本発明を以下公知の充填床サプレッサーを参照しつつ説明する。ここでは、再生は、抑圧中の該充填床が、所定の消耗度に達した後の、抑圧と同時に起こるのではなく、その後に起こる。周知の化学的再生技術においては、酸または塩基を、再生のために該サプレッサーに導く。例えば、ナトリウムイオンの存在により消耗したサプレッサーを再生するために、酸を該サプレッサーに流し、該イオン交換樹脂を、再度ヒドロニウム型に転化する。これは、単一のサプレッサーを用いた、バッチ式の操作で行うことができる。あるいはまた、適当なバルブ手段によって、2つのサプレッサーを用い、一方のサプレッサーがオン-ライン状態にある際に、他方のサプレッサーを再生する。この種の装置に一つは、米国特許第5,597,734号に記載されている。
【0028】
別の装置では、該充填床サプレッサーは、電解により再生できる。この種の装置は、米国特許第5,633,171号に示されている。この特許を本発明の参考文献とする。この装置は、単一のサプレッサーまたは適当なバルブ手段を備えた、2つのサプレッサーと共に使用できる。後者の例において、一方のサプレッサーが再生され、かつ他方のサプレッサーはオン-ライン状態にあり、ついでその役割は逆転される。バルブ手段の一態様は、主として水と被検成分とを含む、該検出器流出液を、再生液体として、他方のサプレッサーに流すことにある。この例において、該充填床サプレッサーに供給される該再生液体は、図1における再生液体リサイクル流と類似する。かくして、該ガスを、該検出器と、再生中の該充填床との間のラインを介して、該検出器流出液に添加することができ、一方他のサプレッサーはオン-ライン状態にある。同一のガス源を、上記の膜式サプレッサーに対するように、該充填サプレッサーに対して使用できる。
【0029】
ガス発生装置を、加圧ガス容器の代わりに使用できる。例えば、米国特許第5,248,426号の膜式サプレッサー、あるいは米国特許第5,633,171号の充填床サプレッサーにおけるように電気化学的抑圧中に生成された水素および酸素ガスが、使用できる。これらは液体中で発生させ、かつ同伴させることができ、これは再生液体-ガス混合物として利用できる。他のガス源、例えばマテソントリ-ガス(Matheson Tri-gas)から入手できる、水素ガス発生器等の、市販品として入手可能なオン-ラインガス発生器を使用することもできる。
図6を参照すると、第二の膜式サプレッサーとしてのガス発生装置の、模式的な図が示されている。上記図3に示された膜式サプレッサーと同様な部品は、同様な参照番号で示される。クロマトグラフィー分離機10からの液体は、サプレッサー12の該クロマトグラフィー流出液流動チャンネルを介して、ライン100を流れる。このサプレッサー流出液は、ライン13を介して検出器14に、次いでライン20を出て、米国特許第5,352,360号に記載された型の、第二電解式膜型サプレッサーデバイスであるが、抑制機能を持たない、ガス発生器104まで流動する。
【0030】
サンドイッチ型の発生器104に関して、ライン20における該検出器流出液は、サプレッサー12の該クロマトグラフィー分離流体流動チャンネルに対応する、発生器104の中央チャンネルを介して流動する。このチャンネルからの出口流体は、ライン106を流れ、かつ上記型の適当なスプリッターバルブを用いて、発生器104のサンドイッチ流動チャンネルまたは外部にリサイクルされる。電解により発生した、水素および酸素ガスを含む、該外側チャンネル内の液体は、ライン108を介して出て行き、サプレッサー12の該再生流チャンネルを介して流動するべく、分割される。該水素および酸素ガスの発生は、米国特許第5,352,360号に記載されている。発生器104における電解条件および流量は、十分な量の水素および酸素ガス発生をもたらすように選択され、結果的にこれらガスは、上記流出液における圧力および流量にて存在する。印加された電流と電解的に発生した該ガス流との間には、直接的な関係が存在する。例えば、該電極間に印加された1Aの電流に対して、この電流は、STPにおいて、ほぼ14 ml/分のガス(水素および酸素)を発生するであろう。この加圧ガスの体積は、該サプレッサーデバイスの背圧に依存する。ボイルの法則に基づいて、背圧約34.5 kPa (5 psi)を想定すると、このデバイスは、印加電流1Aにおいて、ほぼ40 ml/分なる速度でガスを発生する。
【0031】
図7を参照すると、電解ガス発生装置のもう一つの態様が示されており、これは、米国特許第5,633,171号に記載されている型の、電解イオン交換樹脂デバイスまたは他の電解イオン交換樹脂充填サプレッサーを使用している。この例において、カラム10からの溶離液は、ライン100を介してサプレッサー12にはいり、検出器14に流入し、かつライン112を介して該サプレッサーにリサイクルされる。この発生器は、流通式ハウジング114を含み、典型的には充填樹脂床116、および隔置された電極118および120を含む。該電極は、好ましくは図8に示したように、該ハウジング内の充填物の対向端部に配置される。該カラム内の充填物は、アニオン交換型、カチオン交換型、またはその任意の組み合わせであり得る。このようなデバイスにおける電解の原理は、米国特許第5,633,171号に記載されている。この電解中に、水素および酸素ガスが、副生物として生成する。この例において、水素および酸素ガスは、該膜式サプレッサー12にリサイクルするための、ライン112を介して流動する流れにより搬送される。かくして、再生の電気化学的原理を、ガス-アシスト式の再生用の、ガス源を得るために利用する。米国特許第5,633,171号に記載されている、電気化学的再生パラメータの如何なる変更も、当業者には明らかであろう。
【0032】
上記発生器は、リサイクル流に関連して示されたが、これらは、図2-5に示したような、再生液体の外部リザーバと共に使用することもできる。
公知の市販品として入手できる膜式サプレッサーは、溶離液の流量が、1-2 ml/分なる範囲にある場合、5-10 ml/分なる範囲の、再生剤流量を推奨している。
しかし、このような高い流量は、過度の再生剤の消費およびこれに関連した廃棄物をもたらす。更に、上記方法は、大きなリザーバの使用を必要とし、稼動コストおよび廃棄コストの増大を招く。低い系のノイズおよび高い抑圧能力が必要とされる場合、電解モードでは、該再生剤または水のより高い流量(10 ml/分まで)の使用が推奨される[Rabin等, J. Chromatography, 1993, 640: 97-109]。典型的には、これは、加圧されたリザーバを使用することにより、あるいはポンプの使用により達成され、かくして該再生剤の消費量を高め、これは廃棄物の増加および関連する稼動コストおよび廃棄コストの増大を招く。
該操作のガス-アシストモードは、上記好ましい態様および例において示したように、該再生剤に対する要件を減じる。低下された再生剤の消費量および低下された廃棄物の量は、イオンクロマトグラフの稼動コストを減じる。
【0033】
液体消費量の減少量を定量する一つの方法は、過度なノイズを生じることなしに使用できる、低い液状再生剤流量を基準とすることである。ガスの存在なしに、低ノイズレベルで、膜式サプレッサーに送られる再生液体の流量は、約1 ml/分なる典型的な溶離剤流量に比して、約10 ml/分である。このように、リサイクルモードにおいてノイズを最小化するためには、外部再生液体源から、更に9 ml/分なる再生液体を、該サプレッサーに供給すべき該検出器流出液に添加することができる。これに対して、ガスの使用は、再生液体の流量を、該検出器から再循環される流量(例えば、1 ml/分程度の低い値)にまで低下することができ、これにより該リサイクルモードにおける再生液体の外部源を排除できる。本発明による上記態様のいずれかに関して、該ガスーアシストモードは、低ノイズレベルを達成するのに使用される、再生液体の量を、約8-10 ml/分まで、約3〜5 ml/分程度あるいはそれ以下の低い値まで、あるいは更に1-2 ml/分程度まで、あるいは1 ml/分未満にまで、実質的に減じることができる。
【0034】
上記型の何れかのデバイスは、ガスを、該再生剤液体と共に、該サプレッサーを介して導くという、共通の特徴をもつ。上記のように、該再生剤液体へのガス添加の利用は、以下の特徴の一つ以上をもたらすことができる:(1) イオンクロマトグラフィー用途に対する、低い再生剤消費量、(2) 廃棄物量の減少、(3) 低い稼動ならびに廃棄コスト、(4) 検出中の低いピーク-ピークノイズおよびドリフト、および(5) 該サプレッサーを横切る電位の安定化。
望ましくは、該検出器流出液は、本件特許出願と同時に出願された、「置換化学的再生法および装置(Displacement Chemical Regeneration Method and Apparatus)」と題する、特許出願(Flehr 事件番号68762)に記載されているような、抑圧において使用するための、再生剤液体容器に再循環できる。
【実施例】
【0035】
本発明を例示する目的で、以下の実施例を与える。
実施例1
ダイオネックス社(Dionex Corporation)製のDX500イオンクロマトグラフィー装置を、アニオン分析のために使用した。この分析カラムは、ダイオネックス社製のAS11カラムであり、その溶離剤は、流量1 ml/分で供給される21 mM NaOHであった。サプレッサーは、ダイオネックス社製の4-mm ASRSウルトラ(Ultra)サプレッサーであった。該サプレッサーの動作の、ガス-アシスト再循環モードに関する、実験的な配置は、図1に示したようなものである。上記の構成は、21 mM NaOHの完全な抑圧をもたらした。実験の30分の部分につきトレースしたバックグラウンドの導電率を図8に示す。これらの結果は、該再循環モードから該ガス-アシストモードに移行するにつれて、ファクタ7.5だけノイズが減少することを示す。該バックグラウンドは、またおよそ0.7μS/cmだけ減少したが、このことは該再生チャンバーから該溶離チャンバーへの、種の逆輸送を最小化したことを示す。このように低いノイズは、イオンクロマトグラフィー用途に対する、検出限界を改善するであろう。
【0036】
実施例2
ダイオネックス社(Dionex Corporation)製のDX500イオンクロマトグラフィー装置を、アニオン分析のために使用した。この分析カラムは、ダイオネックス社製のAS10カラムであり、その溶離剤は、流量1 ml/分で供給される100 mM NaOHであった。サプレッサーは、ダイオネックス社製の4-mm ASRSウルトラ(Ultra)サプレッサーであった。ガス-アシストリサイクル系の構成は、図1に示すようなものであった。上記の構成は、100 mM NaOHの完全な抑圧をもたらし、また5種のアニオンを含むテスト混合物の優れた分離が達成された。幾つかの1分間の部分に対する、平均の濾波処理されていないピーク-ピークノイズは、1 nS/cm以内であった。これら被検成分は、(1) フッ化物 2 mg/L、(2) 塩化物 3 mg/L、(3) 硫酸塩 15 mg/L、(4) リン酸塩 15 mg/L、および(5) 硝酸塩 10 mg/Lであった。このような高い溶離液強度に対する、このような低いピーク-ピークノイズは、直接低い検出限界を説明している。
【0037】
実施例3
ダイオネックス社製のASRSサプレッサーの性能を、操作の外部水条件下と、ガス-アシストモードとの間で比較した。従来の外部水構成は、外部水の流量約10 ml/分にて使用した。該ガス-アシスト再生モードに関する実験構成は、図1に示したようなものである。該ガス-アシスト再生は、印加圧力約68.9 kPa (10 psi)で窒素を用いて、該リサイクルモードで行った。DX500イオンクロマトグラフィー装置を使用して、アニオン分析を行った。その分析カラムは、ダイオネックス社製のAS4aであり、溶離剤は、1.8 mM炭酸ナトリウム/1.7 mM重炭酸ナトリウムであり、その流量は2 ml/分であった。そのサプレッサーは、4-mmASRSウルトラサプレッサーであった。完全な抑圧が、両モードで起こり、このことは分離およびピーク応答性が、ほぼ同等であることを示す。該被検成分は、(1) フッ化物 2 mg/L、(2) 塩化物 3 mg/L、(3) 硝酸塩10 mg/L、(4) リン酸塩 15 mg/L、および(5) 硫酸塩15 mg/Lであった。該外部水モードは、約10 ml/分の水を使用し、ほぼ11 ml/分の廃棄物(セル流出物と混合された水)を生成した。該ガス-アシストモードは、該セル流出液1 ml/分を使用し、僅かに1 ml/分の廃棄物を生成した。更に、ノイズは、図9に示すように、該ガス-アシストモードについて、ほぼ3倍も低下した。このように、このガス-アシスト再生は、改善された性能、より低い稼動並びに廃棄コストとの組み合わせで、利用の容易性をもたらす。
【0038】
実施例4
ピーク-ピークノイズに及ぼす、ガスの種類の効果を、該ガス-アシスト再生モードを用いて検討した。DX500イオンクロマトグラフィー装置を使用して、アニオン分析を行った。その分析カラムは、ダイオネックス社製のAS10であり、溶離剤は、100 mM NaOHであり、その流量は1 ml/分であった。そのサプレッサーは、4-mmASRSウルトラサプレッサーであった。ガス-アシストリサイクル構成は、図1に示すようなものであった。上記の構成は、該100 mM NaOH溶離剤の完全な抑圧をもたらした。種々のガス、例えば(1)ヘリウム、(2)窒素、および(3)圧縮空気について検討し、図1に示すようなリサイクルモードと比較した。この比較において、該ガス-アシスト再生モードに関する該ピーク-ピークノイズは、ガスを用いない従来のリサイクル動作モードよりも、ほぼ3〜4倍も低かった。
【0039】
実施例5
本例では、該サプレッサーの動的な能力を、従来の化学的抑圧モード対該ガス-アシスト化学抑圧モードで、比較する。従来の化学的抑圧構成は、ガスの使用なしに、ポンプ輸送される、外部の再生液体リザーバと共に使用した。該再生剤は、50 mNの硫酸であった。ダイオネックス製のDQPポンプを、該再生剤のポンプ輸送のために使用した。DX500イオンクロマトグラフィー装置を使用して、アニオン分析を行った。その分析カラムは、ダイオネックス社製のAS10であり、溶離剤は、100 mM NaOHであった。そのサプレッサーは、4-mmASRSウルトラサプレッサーであった。ガス-アシストリサイクル構成は、図3に示すようなものであり、印加圧力は約86.1 kPa (12.5 psi)であった。上記構成において、その動的な能力を測定するために、該分析ポンプの流量を変え、一方該再生剤ポンプを、6 ml/分に固定した。従来の再生モードにおける該動的能力は、90μeqv/分であるものと評価された。該ガス-アシスト再生モードにおける該動的能力は、118μeqv/分であり、約30%高いものであった。このように、ガスの添加は、該化学的再生剤に対する要件を減じることを可能とする。
【0040】
実施例6
本例では、該ガス-アシスト化学的再生モードを実施するための、もう一つの実験的な構成を示す。この実験的な構成は、図6に示されており、またこの構成は、該再生剤および該ガス両者を作動させるために、単一の印加圧力を用いている。DX500イオンクロマトグラフィー装置を使用して、アニオン分析を行った。
その分析カラムは、ダイオネックス社製のAS10であり、溶離剤は、100 mM NaOHであった。そのサプレッサーは、4-mmASRSウルトラサプレッサーであった。該再生剤は、100 mNの硫酸であった。その再生剤用リザーバを、約103 kPa (15 psi)に加圧したが、この圧は、約2.88 ml/分の再生剤流を生成した。その動的な抑圧能力を、該分析ポンプの流量を調節することによって測定した。この動的な能力は、約115μeqv/分であった。該再生剤対該動的能力の比は、およそ2.5であった。100 mNの硫酸を、約7 ml/分なる流量でポンプ輸送することにより、従来の化学的抑圧におけるのと、同一の動的能力が達成された。この場合、該再生剤対該動的能力の比は、約6である。このように、このガス-アシストモードは、化学的再生剤の消費量および廃棄物の量を減じ、しかも有利な稼動コストをもたらす。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性サンプル流中のイオン種の分析法であって、
(a) 電解質を含む水性溶離液の存在下で、該サンプル流中のイオン種を、クロマトグラフィー分離して、クロマトグラフィー流出液を生成する工程、
(b) 該クロマトグラフィー流出液を、サプレッサーを通して流動させることによって、該流出液中の該電解質を抑圧して、抑圧流出液を生成する工程、
(c) 該抑圧流出液中の該イオン種を検出する工程、および
(d) ガス流と再生液体流との混合物を、該サプレッサーを通して流すことによって、該サプレッサーを再生する工程、を含むことを特徴とする、上記分析方法。
【請求項2】
該電解質が、該イオン種に対して反対の電荷をもつ、貫膜イオンを含み、該サプレッサーが、膜型サプレッサーであり、該膜型サプレッサーが、該貫膜電解質イオンと同一の電荷をもつ、選択透過性のイオン交換膜によって、再生流用のチャンネルから分離された、クロマトグラフィー流出流用のチャンネルを含み、該ガスおよび再生液体流混合物が、該再生流用のチャンネルを流動し、かつ抑圧が同時に起こる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
該検出され、抑圧された流出液が、該再生流用のチャンネルに再循環され、かつ該再生液体流の源を含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
上記工程(c)の後で、かつ該再生流用のチャンネルを介して流動する前に、該ガス流を該再生液体流の源と混合する、請求項3記載の方法。
【請求項5】
更に、(e) 該検出され、抑圧された流出液を、電解ガス発生装置に通すことにより、該ガス流を生成し、該発生装置が、該流出液中の水を、該ガス流を構成する水素ガスおよび酸素ガスに電解する工程をも含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
加圧ガスを、該再生液体のリザーバに流して、該再生液体を、該リザーバから該再生流用のチャンネルまで流動させる工程をも含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
該加圧ガスの少なくとも一部が、該リザーバから該サプレッサーに流れる、該ガス流を含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
該ガス流が、該リザーバから第一の導管を流れ、該再生流体が、該リザーバから第二の導管を流れ、かつ該第一および第二導管内の、該ガス流および該再生流体流が、夫々該サプレッサー内に流入する前に混合される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
該再生液体が、化学的再生剤を含み、かつ該抑圧が、化学的な抑圧によって行われる、請求項1記載の方法。
【請求項10】
該抑圧が、電気化学的に行われる、請求項1記載の方法。
【請求項11】
該サプレッサーが、流通式イオン交換体充填サプレッサーであり、かつ該再生が、該検出の完了後に起こる、請求項1記載の方法。
【請求項12】
該抑圧が、化学的に行われ、かつ該再生液体流が、酸または塩基を含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
該イオン交換体充填物を横切る電圧を印加し、かつ該再生流体流をそこに流しつつ、該再生を電解的に行う、請求項11記載の方法。
【請求項14】
イオン分析用の装置であって、
(a) 液状サンプル内のイオン種を分離するための、クロマトグラフィー分離装置と、
(b) 該クロマトグラフィー分離装置からの、クロマトグラフィー流出液中の、電解質を抑圧するための、入口と出口とを持つサプレッサーと、
(c) 該サプレッサーの該入口と流体接続関係にある、再生液体流の源と、
(d) 該サプレッサーの該入口と流体接続関係にある、ガス流の源と、
(e) 該サプレッサー出口からの該流出液内の、イオン種を検出するための、該サプレッサーと流体接続関係にある、検出器とを含むことを特徴とする、上記装置。
【請求項15】
該サプレッサーが、イオン交換膜によって、再生流用のチャンネルから分離された、クロマトグラフィー流出流用のチャンネルを含む、膜式のサプレッサーを含み、かつ該サプレッサー入口が、該再生流用のチャンネルの入口を含む、請求項14記載の装置。
【請求項16】
更に、該検出器からの流出液を、該再生流用チャンネルの入口に送るための、リサイクル用の導管をも含む、請求項15記載の装置。
【請求項17】
更に、該再生液体流と該ガス流とを混合するための、該検出器と該再生流用チャンネルの入口との間に、該リサイクル用導管に沿って設けられた、混合チャンバーをも含む、請求項16記載の装置。
【請求項18】
該再生液体源が、更に該サプレッサー入口と流体接続関係にある、再生液体出口および入口を持つ、再生液体用のリザーバをも含み、更に(f) 該リザーバ入口と接続関係にある、該リザーバ再生液体出口から該サプレッサー入口への流れに対して、内部の再生液体を加圧するための、加圧ガス源をも含む、請求項14記載の装置。
【請求項19】
該リザーバが、更に該サプレッサー入口と流体接続関係にある、ガス流出口をも含む、請求項18記載の装置。
【請求項20】
更に、混合チャンバーと、該再生液体出口と該混合チャンバーとを接続する第一の導管と、該ガス流出口と該混合チャンバーとを接続する第二の導管とを含み、該混合チャンバーが、該サプレッサー入口と流体接続関係にある、請求項19記載の装置。
【請求項21】
更に、(f) 電解ガス発生装置をも含み、該装置は、これを流動する水を電解して、水素および酸素ガスを発生させるのに適しており、該発生装置が、該検出器と該サプレッサー入口との間に設けられている、請求項14記載の装置。
【請求項22】
該サプレッサーが、流通式イオン交換体充填サプレッサーである、請求項14記載の装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−33640(P2011−33640A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258688(P2010−258688)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【分割の表示】特願2001−566013(P2001−566013)の分割
【原出願日】平成13年1月8日(2001.1.8)
【出願人】(591025358)ダイオネックス コーポレイション (38)