説明

ガスクロマトグラフ装置

【課題】 組立工程中に接続箇所を間違えたり、接続作業中にトランスファ同士が干渉して破損したりすることをなくすガスクロマトグラフ装置の提供。
【解決手段】 少なくとも1個の試料導入部10、少なくとも1個の検出器21、及び、少なくとも1個のカラムユニット31と、試料導入部10とカラムユニット31との間、及び、カラムユニット31と検出器21との間をそれぞれ接続するトランスファ70とを備えるガスクロマトグラフ装置1であって、試料導入部10とカラムユニット31との間に取り付けられる第一ガイド61と、カラムユニット31と検出器21との間に取り付けられる第二ガイド62−1と、第一ガイド61及び第二ガイド62−1の周囲に取り付けられる少なくとも1個のヒータ50とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスクロマトグラフ装置に関し、さらに詳しくは複数のトランスファを用いるガスクロマトグラフ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気中の環境汚染物質、例えば各種の揮発性有機化合物(VOC:Volatile organic compounds)は、シックハウス問題の原因物質としてその測定技術の確立が急務とされている。近年、VOCよりもさらに沸点の高い有機化合物群であるSVOC(Semi−volatile organic compounds)も含めて環境汚染源となり得る有機化合物は、100種を越えると言われる。これら多種の物質を分離して定性・定量するための分析装置として、ガスクロマトグラフ装置が多用されている。例えば、第一カラムモジュールや第二カラムモジュール等の複数のカラムモジュールを備えるガスクロマトグラフ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図7(a)は、従来のガスクロマトグラフ装置の一例の概略構成図である。また、図7(b)と図7(c)とは、カラムモジュールの一例の概略構成図である。ガスクロマトグラフ装置301は、オーブン本体と、試料が導入され気化される試料導入部10と、水素炎イオン化検出器(FID)21と、第一カラムモジュール31と、第二カラムモジュール32と、トランスファ70とを備える。
【0004】
オーブン本体は、上面壁380aと、下面壁380bと、背面壁380cと、前面壁となる前面扉380dと、左側壁(図示せず)と、右側壁(図示せず)とで囲われた立方体形状のハウジング(器壁)380を有し、ハウジング380の内部には、内部空間の温度を制御するオーブン用ヒータ380e(例えば、抵抗加熱によって発生した熱をファンで送る熱対流方式等)が配置されている。
前面扉は、左端を軸として開閉可能に形成されており、分析者や製造者(設計者)によって前面扉が開かれることにより、ハウジング380の内部空間が開放されるようになっている。
上面壁には、試料導入部10とFID21とがそれぞれ取り付けられる2個の開口部が形成されている。
【0005】
第一カラムモジュール31は、温度センサ31bと、カラム31cと、カラムヒータ31dとが組み合わされ、コイル状に巻かれており、周囲を導電性ホイル31aで覆われている。
【0006】
カラム31cの内部には、液相が塗布されており、試料ガスがカラム31cの内部を通過する際には、各化合物の分配係数若しくは溶解度に応じた速度で各化合物が移動していき、化合物が出口端から順次排出されるようになっている。
【0007】
トランスファ70は、例えば、外径0.35mm、内径0.25mmのフューズドシリカ製のキャピラリ管である。なお、トランスファ70の内部には、液相等は塗布されていない。そして、例えば、トランスファ70の入口端が試料導入部10とナットやフェルール等で接続されるとともに、トランスファ70の出口端が第一カラムモジュール31のカラム31cの入口端とユニオン71等を用いて接続されることにより、試料ガスが試料導入部10からトランスファ70を介して第一カラムモジュール31のカラム31cの入口端へと流通することができるようになる。
【0008】
ここで、第一カラムモジュール31と第二カラムモジュール32とを備えたガスクロマトグラフ装置301を組み立てる組立工程について説明する。
まず、製造者(設計者)は、上面壁380aの開口部に試料導入部10とFID21とを取り付ける。次に、製造者(設計者)は、ハウジング380の前面扉380dに、第一カラムモジュール31と第二カラムモジュール32とを配置する。
【0009】
次に、製造者(設計者)は、試料導入部10と第一カラムモジュール31との間にトランスファ70を接続する際には、トランスファ70の入口端と試料導入部10とをナットやフェルール等で接続する。その後、トランスファ70の出口端と第一カラムモジュール31のカラム31cの入口端とをユニオン71等を用いて接続する。
次に、製造者(設計者)は、FID21と第二カラムモジュール32との間にトランスファ70を接続する際には、トランスファ70の出口端とFID21とをナットやフェルール等で接続する。その後、トランスファ70の入口端と第二カラムモジュール32のカラムの出口端とをユニオン71等を用いて接続する。
次に、製造者(設計者)は、第一カラムモジュール31と第二カラムモジュール32との間にトランスファ70を接続する際には、トランスファ70の入口端と第一カラムモジュール31とをユニオン71等を用いて接続する。その後、トランスファ70の出口端と第二カラムモジュール32のカラムの入口端とをユニオン71等を用いて接続する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第6530260号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述したようなガスクロマトグラフ装置301では、分析中にトランスファ70の温度を調整するために、ハウジング380の内部に配置されたオーブン用ヒータ380eを用いているので、ハウジング380自体も含めて内部空間全体を加熱することになり、その結果、消費電力が非常に大きくなるという問題点があった。
【0012】
さらに、上述したようなガスクロマトグラフ装置301では、組立工程において試料導入部10と第一カラムモジュール31との間や、第一カラムモジュール31と第二カラムモジュール32との間や、第二カラムモジュール32とFID21との間を、トランスファ70でそれぞれ接続することになるが、接続箇所が多いため製造者(設計者)が接続箇所を間違えたり、接続作業中にトランスファ70同士が干渉して破損したりすることがあった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本件発明者らは、上記課題を解決するために、試料導入部とカラムモジュール(カラムユニット)との間等の接続方法について検討を行った。そこで、トランスファの接続箇所をガイドしたりトランスファを保護したりする機能を有したガイドを用いることを見出した。また、このようなガイドを用いることにより、オーブンを用いずにガイドを加熱するヒータを用いることを見出した。
【0014】
すなわち、本発明のガスクロマトグラフ装置は、少なくとも1個の試料導入部、少なくとも1個の検出器、及び、少なくとも1個のカラムユニットと、前記試料導入部と前記カラムユニットとの間、及び、前記カラムユニットと前記検出器との間をそれぞれ接続するトランスファとを備えるガスクロマトグラフ装置であって、前記試料導入部と前記カラムユニットとの間に取り付けられる第一ガイドと、前記カラムユニットと前記検出器との間に取り付けられる第二ガイドと、前記第一ガイド及び前記第二ガイドの周囲に取り付けられる少なくとも1個のヒータとを備えるようにしている。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明のガスクロマトグラフ装置によれば、第一ガイドや第二ガイドの周囲にコンパクトにヒータを配置するので、分析中にトランスファの温度を調整する際に、消費電力を小さくすることができる。また、トランスファの接続箇所をガイドしたり保護したりするためのガイドを用いているので、組立工程中に接続箇所を間違えたり、接続作業中にトランスファ同士が干渉して破損したりすることがなくなる。
【0016】
(他の課題を解決するための手段及び効果)
また、本考案のガスクロマトグラフ装置において、少なくとも2個以上の前記カラムユニットと、前記カラムユニットと前記カラムユニットとの間に接続するトランスファと備えるガスクロマトグラフ装置であって、前記カラムユニットと前記カラムユニットとの間に取り付けられる第三ガイドを備え、前記第一ガイド、前記第二ガイド、及び、前記第三ガイドの周囲に取り付けられる少なくとも1個のヒータとを備えるようにしてよい。
さらに、本考案のガスクロマトグラフ装置において、前記カラムユニットに向かって流通するか、或いは、前記検出器に向かって流通するかのいずれかとなるように切替可能とする流路変更用接続機構を備え、前記流路変更用接続機構と前記カラムユニットとの間、及び、前記流路変更用接続機構と前記検出器との間にそれぞれ接続するトランスファを備えるガスクロマトグラフ装置であって、前記カラムユニットと前記流路変更用接続機構との間に取り付けられる第四ガイドと、前記流路変更用接続機構と前記検出器との間に取り付けられる第五ガイドとを備え、前記第一ガイド、前記第二ガイド、前記第三ガイド、前記第四ガイド、及び、前記第五ガイドの周囲に取り付けられる少なくとも1個のヒータとを備えるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第一実施形態に係るガスクロマトグラフ装置の一例の概略構成図。
【図2】カラムユニットの一例の概略構成図。
【図3】第二実施形態に係るガスクロマトグラフ装置の一例の概略構成図。
【図4a】第三実施形態に係るガスクロマトグラフ装置の一例の概略構成図。
【図4b】第三実施形態に係るガスクロマトグラフ装置の他の一例の概略構成図。
【図4c】第三実施形態に係るガスクロマトグラフ装置の他の一例の概略構成図。
【図5】流路変更用接続機構の一例の概略構成図。
【図6】参考例に係るガスクロマトグラフ装置の概略構成図。
【図7】従来のガスクロマトグラフ装置の一例の概略構成図。
【図8】クロマトグラムの一例。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明は、以下に説明するような実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の態様が含まれることは言うまでもない。
【0019】
<第一実施形態>
図1は、第一実施形態に係るガスクロマトグラフ装置の一例の概略構成図である。また、図2は、カラムユニットの一例の概略構成図である。なお、上述したガスクロマトグラフ装置301と同様のものについては、同じ符号を付している。
ガスクロマトグラフ装置1は、筐体本体と、試料が導入され気化される試料導入部10と、水素炎イオン化検出器(FID)21と、第一カラムユニット31と、トランスファ70と、第一ガイド61と、第二ガイド62−1、62−2と、第三ガイド63と、トランスファ70の温度を制御するトランスファ用ヒータ50とを備える。
第二ガイド62−2や第三ガイド63は第二カラムユニット接続時に用いる。あらかじめ第二ガイド62−2や第三ガイド63をトランスファ用ヒータ50に組み込んでおくことで、第一カラムユニット31のみの使用か、又は、第一カラムユニット31及び第二カラムユニットの両方の使用かを容易に選択することができる。
【0020】
筐体本体は、上面壁80aと、下面壁80bと、左側壁80cと、右側壁80dと、背面壁(図示せず)と、前面壁となる前面扉(図示せず)とで囲まれた立方体形状のハウジング(器壁)80を有する。
前面扉は、左端を軸として開閉可能に形成されており、分析者や製造者(設計者)によって前面扉が開かれることにより、ハウジング80の内部空間が開放されるようになっている。
上面壁には、試料導入部10とFID21とをそれぞれ取り付けるための2個の開口部が形成されている。
第一カラムユニット31は、内部空間が形成される直方体形状の器壁を有する筐体31aと、2本の不活性化処理済キャピラリ管31eとを有し、筐体31aの内部には、カラム31cと、カラム31cの温度を制御するカラムヒータ31dと、カラム31cとカラムヒータ31dとの周囲に形成された断熱材31bとが配置されている。
カラム31cの内部には、液相が塗布されており、試料ガスがカラム31cの内部を通過する際には、各化合物の分配係数若しくは溶解度に応じた速度で各化合物が移動していき、化合物が出口端から順次排出されるようになっている。
筐体31aには、2本の不活性化処理済キャピラリ管31eを貫通させる開口部が形成されている。これにより、1本の不活性化処理済キャピラリ管31eが筐体31aの内部のカラム31cの入口端と耐熱性接着剤等を用いて接続されるとともに、別の1本の不活性化処理済キャピラリ管31eが筐体31aの内部のカラム31cの出口端と耐熱性接着剤等を用いて接続されている。このような第一カラムユニット31は、MEMS技術で作製されており、例えば、シリコン基板上に幅200μm、深さ100μmの溝が形成され、パイレックス(登録商標)ガラスと陽極接合されている。
なお、第二カラムユニットも、第一カラムユニット31と同様な構造となっており、第一カラムユニット31とはカラム31cの内部に塗布された液相の種類、液相の膜厚、及び、長さが異なっている。
【0021】
第一ガイド61は、外径1/16インチ、内径1mmのステンレス製の管である。そして、第一ガイド61は、試料導入部10の近接部と第一カラムユニット31の近接部との間を連結することができるように直線状となっており、試料導入部10の近接部と第一カラムユニット31の近接部との間に取り付けられるようになっている。このような第一ガイド61が作製される際には、ガスクロマトグラフ装置1の組立工程で試料導入部10の近接部と第一カラムユニット31の近接部との間に正確に取り付けられるように、第一ガイド61の一端部には、試料導入部10側に取り付けられることを示す目印がレーザマーキング等で形成されるとともに、第一ガイド61の他端部には、第一カラムユニット31側に取り付けられることを示す目印がレーザマーキング等で形成される。
【0022】
第二ガイド62−1は、外径1/16インチ、内径1mmのステンレス製の管である。そして、第二ガイド62−1は、FID21の近接部と第一カラムユニット31の近接部との間を連結することができるように曲がっており、FID21の近接部と第一カラムユニット31の近接部との間に取り付けられるようになっている。このような第二ガイド62−1が作製される際には、ガスクロマトグラフ装置1の組立工程でFID21の近接部と第一カラムユニット31の近接部との間に正確に取り付けられるように、第二ガイド62−1の一端部には、FID21側に取り付けられることを示す目印がレーザマーキング等で形成されるとともに、第二ガイド62−1の他端部には、第一カラムユニット31側に取り付けられることを示す目印がレーザマーキング等で形成される。
第二ガイド62−2は、外径1/16インチ、内径1mmのステンレス製の管である。そして、第二ガイド62−2は、第二カラムユニットの取付予定位置の近接部とFID21の近接部との間を連結することができるように折れ曲がっており、第二カラムユニットの取付予定位置の近接部とFID21の近接部との間に取り付けられるようになっている。このような第二ガイド62−2が作製される際には、ガスクロマトグラフ装置1の組立工程で第二カラムユニットの取付予定位置の近接部とFID21の近接部との間に正確に取り付けられるように、第二ガイド62−2の一端部には、第二カラムユニットの取付予定位置側に取り付けられることを示す目印がレーザマーキング等で形成されるとともに、第二ガイド62−2の他端部には、FID21側に取り付けられることを示す目印がレーザマーキング等で形成される。
【0023】
第三ガイド63は、外径1/16インチ、内径1mmのステンレス製の管である。そして、第三ガイド63は、第一カラムユニット31の近接部と第二カラムユニットの取付予定位置の近接部との間を連結することができるように曲がっており、第一カラムユニット31の近接部と第二カラムユニットの取付予定位置の近接部との間に取り付けられるようになっている。このような第三ガイド63が作製される際には、ガスクロマトグラフ装置1の組立工程で第一カラムユニット31の近接部と第二カラムユニットの取付予定位置の近接部との間に正確に取り付けられるように、第三ガイド63の一端部には、第一カラムユニット31側に取り付けられることを示す目印がレーザマーキング等で形成されるとともに、第三ガイド63の他端部には、第二カラムユニットの取付予定位置側に取り付けられることを示す目印がレーザマーキング等で形成される。
【0024】
トランスファ用ヒータ50は、例えば、ガラス繊維とヒータ線とを円筒状に織り込んだリボンヒータ(シート状ヒータ)であって伸縮可能となっており、第一ガイド61と第二ガイド62−1、62−2と第三ガイド63との周囲に取り付けられるようになっている。
【0025】
次に、製造者(設計者)は、試料導入部10と第一カラムユニット31との間にトランスファ70を接続する際には、トランスファ70の入口端と試料導入部10とをナットやフェルール等で接続する。その後、トランスファ70を第一ガイド61の内部に通して、トランスファ70の出口端と第一カラムユニット31の不活性化処理済キャピラリ管31eの入口端とをユニオン71等を用いて接続する。このとき、第一ガイド61でトランスファ70がガイドされるので、接続箇所を間違えることもない。
次に、製造者(設計者)は、FID21と第一カラムユニット31との間にトランスファ70を接続する際には、トランスファ70の出口端とFID21とをナットやフェルール等で接続する。その後、トランスファ70を第二ガイド62−1の内部に通して、トランスファ70の入口端と第一カラムユニット31の不活性化処理済キャピラリ管31eの出口端とをユニオン71等を用いて接続する。このとき、第二ガイド62−1でトランスファ70がガイドされるので、接続箇所を間違えることもない。
【0026】
<第二実施形態>
図3は、第二実施形態に係るガスクロマトグラフ装置の一例の概略構成図である。ガスクロマトグラフ装置1は、筐体本体と、試料が導入され気化される試料導入部10と、水素炎イオン化検出器(FID)21と、第一カラムユニット31と、第二カラムユニット32と、トランスファ70と、第一ガイド61と、第二ガイド62−1、62−2と、第三ガイド63と、トランスファ70の温度を制御するトランスファ用ヒータ50とを備える。
【0027】
次に、製造者(設計者)は、第一カラムユニット31と第二カラムユニット32との間にトランスファ70を接続する際には、トランスファ70の入口端と第一カラムユニット31とをユニオン71等を用いて接続する。その後、トランスファ70を第三ガイド63の内部に通して、トランスファ70の出口端と第二カラムユニット32の不活性化処理済キャピラリ管31eの入口端とをユニオン71等を用いて接続する。このとき、第三ガイド63でトランスファ70がガイドされるので、接続箇所を間違えることもない。
次に、製造者(設計者)は、第一ガイド61と第二ガイド62−1、62−2と第三ガイド63との周囲に1個のトランスファ用ヒータ50を取り付ける。このとき、ユニオン71等も加熱することができるようにトランスファ用ヒータ50を取り付ける。これにより、分析中にトランスファ70とともにユニオン71も加温されるようになり、その結果、コールドスポットによる試料成分の凝縮や吸着の問題が生じることもない。
【0028】
ここで、第一カラムユニット31と第二カラムユニット32とを備えるガスクロマトグラフ装置1を組み立てる組立工程について説明する。
まず、製造者(設計者)は、上面壁80aの開口部に試料導入部10とFID21とを取り付ける。次に、製造者(設計者)は、ハウジング80の内部に、第一カラムユニット31と第二カラムユニット32とを配置する。次に、製造者(設計者)は、試料導入部10の近接部と第一カラムユニット31の近接部との間に第一ガイド61を取り付け、FID21の近接部と第二カラムユニット32の近接部との間に第二ガイド62−2を取り付け、第一カラムユニット31の近接部と第二カラムユニット32の近接部との間に第三ガイド63を取り付ける。このとき、各ガイド61〜63の端部には目印が形成されているので、接続箇所を間違えることもない。
【0029】
以上のように、本発明のガスクロマトグラフ装置1によれば、第一ガイド61や第二ガイド62−1、62−2や第三ガイド63の周囲に1個のトランスファ用ヒータ50を配置しているので、分析中にトランスファ70の温度を調整する際に、消費電力を小さくすることができる。また、トランスファ70の接続箇所をガイドしたり保護したりするためのガイド61〜63を用いているので、組立工程中に接続箇所を間違えたり、接続作業中にトランスファ70同士が干渉して破損したりすることがなくなる。
【0030】
そして、上述したような組立工程において、第一ガイド61〜第三ガイド63を取り付ける際に、第一カラムユニット31の近接部とFID21の近接部との間に第二ガイド62−1も取り付ける。その後、第一ガイド61〜第三ガイド63の内部にトランスファ70を配置する際に、第二ガイド62−2の内部にトランスファ70も配置することになる。
【0031】
<第三実施形態>
図4aは、第三実施形態に係るガスクロマトグラフ装置の一例の概略構成図である。なお、上述したガスクロマトグラフ装置1と同様のものについては、同じ符号を付している。
ガスクロマトグラフ装置101は、筐体本体と、試料が導入され気化される試料導入部10と、第一水素炎イオン化検出器(第一FID)21と、第二水素炎イオン化検出器(第二FID)22と、第一カラムユニット31と、第三カラムユニット33と、流路変更用接続機構90と、トランスファ70と、第一ガイド161と、第二ガイド162−1、162−2、169と、第三ガイド163と、第四ガイド165−1、165−2、165−3と、第五ガイド166と、トランスファ70の温度を制御するトランスファ用ヒータ50とを備える。
【0032】
筐体本体は、上面壁180aと、下面壁180bと、左側壁180cと、右側壁180dと、背面壁(図示せず)と、前面壁となる前面扉(図示せず)とで囲われた立方体形状のハウジング(器壁)180を有する。
前面扉は、左端を軸として開閉可能に形成されており、分析者や製造者(設計者)によって前面扉が開かれることにより、ハウジング180の内部空間が開放されるようになっている。
上面壁180aには、試料導入部10と第一FID21と第二FID22とがそれぞれ取り付けられる3個の開口部が形成されている。また、下面壁180bには、流路変更用接続機構90が取り付けられる1個の開口部が形成されている。
【0033】
図5は、流路変更用接続機構の一例の概略構成図である。
流路変更用接続機構90は、スイッチング素子(コネクタ)91と、キャリアガス(Heガス)を設定圧力Pで供給する圧力制御装置(APC)92と、三方電磁弁(流路切替バルブ)93とを備える。
スイッチング素子91は、第一カラムユニット31の出口端からのトランスファ70が左側から挿入される空間である第一カラム導入部91aと、第三カラムユニット33の入口端からのトランスファ70が右側から挿入される空間である第三カラム導入部91bと、中央部で第一カラム導入部91aと第三カラム導入部91bとを連結する接続流路91cとを有する。
さらに、第一カラム導入部91aの右側には、第一FID21と連結される流路が形成されているとともに、第一カラム導入部91aの中央部には、Heガスの圧力ΔP1を降下させる第一抵抗管91dを介してAPC92と連結される流路が形成されている。これにより、第一カラム導入部91aの圧力は、常に一定の圧力P−ΔP1となるようになっている。
【0034】
また、第三カラム導入部91bの中央部には、Heガスの圧力ΔP2(>ΔP1)を降下させる第二抵抗管91eを介してAPC92と連結されるか(図5(b)参照)、或いは、第二抵抗管91eを介さずAPC92と連結されるか(図5(a)参照)のいずれかとなるように三方電磁弁93によって切替可能となる流路が形成されている。これにより、第二抵抗管91eを介してAPC92と連結された場合には、第三カラム導入部91bの圧力は、P−ΔP2となり、その結果、第一カラム導入部91aはP−ΔP1であるので、第一カラム導入部31の出口端と第三カラムユニット33の入口端とを流通するようになる。一方、第二抵抗管91eを介さずAPC92と連結された場合には、第三カラム導入部91bの圧力は、Pとなり、その結果、第一カラム導入部91aの圧力はP−ΔP1であるので、第一カラム導入部31の出口端と第一FID21とを流通するようになる。
【0035】
また、第一ガイド161〜第五ガイド166は、それぞれ外径1/16インチ、内径1mmのステンレス製の管である。そして、各ガイド161〜166は、それぞれ対応する部材の近接部と部材の近接部との間を連結することができるような形状となって取り付けられるようになっている。
【0036】
ここで、ガスクロマトグラフ装置101を組み立てる組立工程について説明する。
まず、製造者(設計者)は、上面壁180aの開口部に試料導入部10と第一FID21と第二FID22とを取り付ける。また、製造者(設計者)は、下面壁180bの開口部に流路変更用接続機構90を取り付ける。このとき、ハウジング180の内部にスイッチング素子91を配置するとともに、ハウジング180の外部にAPC92と三方電磁弁93とを配置する。
次に、製造者(設計者)は、ハウジング180の内部に第一カラムユニット31と第三カラムユニット33とを配置する。次に、製造者(設計者)は、第一ガイド161〜第五ガイド166をそれぞれ対応する部材の近接部と部材の近接部との間を連結するように取り付ける。
【0037】
次に、製造者(設計者)は、トランスファ70をそれぞれ対応する部材と部材との間を連結するように接続する。次に、製造者(設計者)は、第一ガイド161〜第五ガイド166の周囲に1個のトランスファ用ヒータ50を取り付ける。このとき、ユニオン71等も加熱することができるようにトランスファ用ヒータ50を取り付ける。
【0038】
以上のように、本発明のガスクロマトグラフ装置101によれば、第一ガイド161〜第五ガイド166の周囲に1個のトランスファ用ヒータ50を配置するので、分析中にトランスファ70の温度を調整する際に、消費電力を小さくすることができる。また、トランスファ70の接続箇所をガイドしたり保護したりするためのガイド161〜166を用いているので、組立工程中に接続箇所を間違えたり、接続作業中にトランスファ70同士が干渉して破損したりすることがなくなる。
【0039】
図4bは、第三実施形態に係るガスクロマトグラフ装置の他の一例の概略構成図である。第三実施形態に示したガスクロマトグラフ装置にトランスファ70を第三ガイド163及び第四ガイド165−2に通し、第二カラムユニット32を接続すればよい。
【0040】
図4cは、第三実施形態に係るガスクロマトグラフ装置の他のもう1つの一例の概略構成図である。流路変更用接続機構90と第三カラムユニット33とを本体180から取り外すと1つのカラムユニットを使用できるガスクロマトグラフ装置として取り扱うことができる。
【0041】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらによりなんら制限されるものではない。
【実施例】
【0042】
図6は、参考例に係るガスクロマトグラフ装置の一例の概略構成図である。なお、上述したガスクロマトグラフ装置1と同様のものについては、同じ符号を付している。
ガスクロマトグラフ装置201は、オーブン本体280と、試料が導入され気化される試料導入部10と、水素イオン化検出器(FID)21と、カラム31cと、トランスファ70と、第二ガイド261と、トランスファ70の温度を制御するトランスファ用ヒータ50とを備える。
このようなガスクロマトグラフ装置201を用いて第二ガイド261の内部に配置されたトランスファ70の性能(分離ピークに影響を与えるか否か)を確認した。
【0043】
図8は、ガスクロマトグラフ装置201を用いて得られたクロマトグラムの一例である。図8(a)は、オーブン本体280のオーブン用ヒータを325℃とし、トランスファ用ヒータ50を325℃としたものであり、図8(b)は、オーブン本体280のオーブン用ヒータを325℃とし、トランスファ用ヒータ50を300℃としたものであり、図8(c)は、オーブン本体280のオーブン用ヒータを325℃とし、トランスファ用ヒータ50を275℃としたものである。なお、図8に示すクロマトグラムにおける縦軸はイオン強度Iを示し、横軸は時間tを示す。
図8(a)や図8(b)には、時間t=8.8分の位置にn−テトラテトラコンタン(C44)を示すピークがある。一方、図8(c)には、時間t=8.8分の位置にC44を示すピークがなくなり時間t=9.0分の位置にC44を示すピークがあるようにリーディングが見られる。したがって、オーブン本体280のオーブン用ヒータによって制御されなくてもトランスファ70の温度が300℃以上となるようにトランスファ用ヒータ50を制御すれば問題ないことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、複数のトランスファを用いるガスクロマトグラフ装置等に利用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 ガスクロマトグラフ装置
10 試料導入部
21 水素炎イオン化検出器(FID)
31 第一カラムユニット
32 第二カラムユニット
50 トランスファ用ヒータ
61 第一ガイド
62 第二ガイド
63 第三ガイド
70 トランスファ
80 器壁(筐体本体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1個の試料導入部、少なくとも1個の検出器、及び、少なくとも1個のカラムユニットと、
前記試料導入部と前記カラムユニットとの間、及び、前記カラムユニットと前記検出器との間をそれぞれ接続するトランスファとを備えるガスクロマトグラフ装置であって、
前記試料導入部と前記カラムユニットとの間に取り付けられる第一ガイドと、
前記カラムユニットと前記検出器との間に取り付けられる第二ガイドと、
前記第一ガイド及び前記第二ガイドの周囲に取り付けられる少なくとも1個のヒータとを備えることを特徴とするガスクロマトグラフ装置。
【請求項2】
少なくとも2個以上の前記カラムユニットと、
前記カラムユニットと前記カラムユニットとの間に接続するトランスファとを備えるガスクロマトグラフ装置であって、
前記カラムユニットと前記カラムユニットとの間に取り付けられる第三ガイドを備え、
前記第一ガイド、前記第二ガイド、及び、前記第三ガイドの周囲に取り付けられる少なくとも1個のヒータとを備えることを特徴とする請求項1に記載のガスクロマトグラフ装置。
【請求項3】
前記カラムユニットに向かって流通するか、或いは、前記検出器に向かって流通するかのいずれかとなるように切替可能とする流路変更用接続機構を備え、
前記流路変更用接続機構と前記カラムユニットとの間、及び、前記流路変更用接続機構と前記検出器との間にそれぞれ接続するトランスファを備えるガスクロマトグラフ装置であって、
前記カラムユニットと前記流路変更用接続機構との間に取り付けられる第四ガイドと、
前記流路変更用接続機構と前記検出器との間に取り付けられる第五ガイドとを備え、
前記第一ガイド、前記第二ガイド、前記第三ガイド、前記第四ガイド、及び、前記第五ガイドの周囲に取り付けられる少なくとも1個のヒータとを備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のガスクロマトグラフ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−3154(P2013−3154A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−192946(P2012−192946)
【出願日】平成24年9月3日(2012.9.3)
【基礎とした実用新案登録】実用新案登録第3171003号
【原出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度、独立行政法人科学技術振興機構、研究成果展開事業(先端計測分析技術・機器開発プログラム)、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)