説明

ガスタービン及びガスタービンの補修方法

【課題】翼環の減肉を抑制するガスタービン及びガスタービンの補修方法を提供する
【解決手段】高温ガスWの流路を外周側から囲う分割環13及び遮熱環15と、分割環13及び遮熱環15の外周側に環状に形成された翼環16と、翼環16の軸線P方向端面から凹む嵌合凹部31に嵌合され、分割環13及び遮熱環15を支持する耐熱材からなる支持部材18とを備え、嵌合凹部31の内壁面は、嵌合凹部31の開口縁部から翼環16の軸線P方向端面から該翼環16の軸線P方向内側に向かうに従って漸次幅を狭めるように傾斜する第一傾斜面19を有するとともに、支持部材18は、第一傾斜面19に対応するように傾斜する第二傾斜面20を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮空気と燃料とを混合し燃焼させた高温ガスによってタービンを回転させ、回転動力を得るガスタービンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンは、動力装置本体の重量や体積が同等の他の動力装置と比較した場合、高い出力が得られることや高速起動できる等の利点があり、現在では、航空機や船舶のエンジンや発電設備等の様々な分野に用いられている。
【0003】
このガスタービンは、主に圧縮機、燃焼器及びタービンから構成されており、このタービンにおける高温ガスの流動方向の差異によって、タービンは軸流タービンと半径流タービンとに分類される。
そして、軸流タービンを用いたガスタービンの一例は特許文献1に開示されており、この軸流タービンにおいては、外形を形成するケーシングの内周側に環状をなすように回転軸方向に向かって連続的に翼環が固定されている。また、この翼環の内周側には分割環が遮熱環を介して支持されており、この分割環は、軸流タービンの回転軸方向に間隙を設けて環状に配置され、この間隙に静翼が固定されている。そして、回転軸方向の静翼同士の間、即ち、分割環に対応する位置には動翼が設けられるため、回転軸方向に静翼と動翼とが交互に配置されている。
さらに、分割環及び遮熱環と翼環とを回転軸方向から接続し、分割環及び遮熱環の移動を規制する支持部材が、翼環の回転軸方向の端面に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−38491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1におけるガスタービンにおいては、隣接する翼環同士の間隙に高温ガスが流入することによって、上記支持部材周辺の翼環に高温酸化反応が引き起こされ、翼環が減肉してしまうおそれがあった。
【0006】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、翼環の減肉を抑制できるガスタービン及びガスタービンの補修方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は以下の手段を採用している。
即ち、本発明に係るガスタービンは、高温ガスの流路を外周側から囲う耐熱部と、前記耐熱部の外周側に環状に形成された翼環と、前記翼環の軸方向端面から凹む嵌合凹部内に嵌合され、前記耐熱部を支持する耐熱材からなる支持部材とを備え、前記嵌合凹部の内壁面は、その開口縁部から前記翼環の軸方向内側に向かうに従って漸次幅を狭めるように傾斜する第一傾斜面を有するとともに、前記支持部材は、前記第一傾斜面に対応するように傾斜する第二傾斜面を有していることを特徴とする。
【0008】
このようなガスタービンにおいては、上記嵌合凹部における第一傾斜面と上記支持部材における第二傾斜面との間に間隙ができることなく、これら第一傾斜面へ第二傾斜面が当接されることによって、この間隙への高温ガス流入が抑制される。従って、この間隙及び間隙周辺において、高温ガスが滞留することがないため、翼環の高温酸化反応を低減することができ、翼環の減肉を抑制することが可能となる。また、上記支持部材が耐熱材からなることによって、支持部材自身へ作用する高温酸化反応も低減される。
【0009】
さらに、本発明に係るガスタービンにおいて、前記第一傾斜面には、耐酸化コーティングが施されていてもよい。
【0010】
耐酸化コーティングによって、高温ガス接触により第一傾斜面に発生する高温酸化反応を低減することが可能となり、当該第一傾斜面における翼環の減肉を抑制することができる。
【0011】
また、本発明に係るガスタービンの補修方法は、高温ガスの流路を外周側から囲う耐熱部と、前記耐熱部の外周側に環状に形成された翼環と、前記翼環の軸方向端面から凹む嵌合凹部内に嵌合され、前記耐熱部を支持する耐熱材からなる従来型支持部材とを備えたガスタービンの補修方法であって、前記従来型支持部材を撤去する部品撤去工程と、前記嵌合凹部の内壁面に、前記嵌合凹部の開口縁部から前記翼環の軸方向内側に向かうに従って漸次幅を狭めるように傾斜する第一傾斜面を形成する外形形成工程と、前記従来型支持部材に代えて、前記第一傾斜面に対応するように傾斜する第二傾斜面を有する支持部材を前記嵌合凹部内に設置する部品設置工程とを備えることを特徴とする。
【0012】
このようなガスタービンの補修方法によれば、従来型支持部材を支持部材へ交換することによって、上記第一傾斜面へ上記第二傾斜面が間隙無く当接され、翼環と支持部材との間の間隙へ高温ガスが流入することを抑制できる。従って、この間隙及び間隙周辺において、高温ガスが滞留することがなくなり、翼環の高温酸化反応を低減することができ、翼環の減肉を抑制することが可能となる。
【0013】
さらに、本発明のガスタービンの補修方法において、前記外形形成工程を実施した後に、前記第一傾斜面に耐酸化コーティングを施すコーティング工程を備えていてもよい。
【0014】
上記第一傾斜面に耐酸化コーティングが施されることによって、上述のように、高温ガス接触による第一傾斜面の高温酸化反応を低減することが可能となり、当該第一傾斜面における翼環の減肉を抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のガスタービン及びガスタービンの補修方法によれば、翼環と支持部材との間隙への高温ガス流入を防ぐことができ、翼環の減肉の抑制を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第一実施形態に係るガスタービンの概略構成を示す半断面図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係るガスタービンにおけるタービンの要部を拡大し、簡略化して示す断面図である。
【図3】本発明の第一実施形態に係るガスタービンにおけるタービンの要部を翼環の軸方向端面から見た図である。
【図4】本発明の第一実施形態に係るガスタービンにおける支持部材及び嵌合凹部を示す図であって、(b)は(a)のA−A断面、(c)は(a)のB−B断面を示す。
【図5】本発明の第二実施形態に係るガスタービンにおける従来型支持部材及び従来型嵌合凹部を示す図であって、(b)は(a)のC−C断面、(c)は(a)のD−D断面を示す。
【図6】本発明の第二実施形態に係るガスタービンの補修工程を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の第一実施形態に係るガスタービン1について説明する。
図1に示すように、ガスタービン1は、圧縮機2において生成された圧縮空気を燃焼器3で燃料と混合した後に燃焼し、高温ガスWを生成する。この高温ガスWを軸流タービン4(以下、単にタービン4と称する)へ流入させることによって、このタービン4を軸線P回りに回転させ、回転動力を得る。そして、タービン4は、例えば、図示しない発電機に接続され、このガスタービン1から得られる回転動力を電気に変換することによって発電を行なうことができる。
なお、以下では、ガスタービン1の圧縮機2側(図1の紙面左側)を軸線P方向上流側と称し、タービン4側(図1の紙面右側)を軸線P方向下流側と称する。
【0018】
図2に示すように、タービン4は、軸線Pを中心に回転可能なロータ11と、このロータ11の外周面上に設けられる複数の動翼12と、この動翼12の外周側、即ち、径方向外側に設置される分割環(耐熱部)13と、分割環13の径方向外側に遮熱環(耐熱部)15を介して設けられる翼環16と、翼環16の径方向外側に設けられたケーシング17とを備えている。
【0019】
さらに、このタービン4は、翼環16の軸線P方向下流側を向く端面から凹む嵌合凹部31と、この嵌合凹部31に嵌合され遮熱環15を支持する支持部材18とを備えている。
【0020】
ロータ11は、軸線P方向に延在し、この軸線Pを中心に回転するシャフト状の部材である。以下、このロータ11の回転方向を周方向と称する。
【0021】
動翼12は、上記ロータ11の外周面上に径方向外側へ向かって、軸線P方向及び周方向に間隔を空けて複数が設けられている。即ち、周方向に隣り合う動翼12同士によって動翼列22が形成され、この動翼列22が軸線P方向に間隔を空けて配置され、ロータ11と共に軸線Pを中心に回転するように構成されている。
【0022】
分割環13は、周方向に複数(本実施形態においては周方向に48個)に分割されており、図示しない封止部材を用いて周方向に隣接する分割環13同士が結合されることによって環状に形成され、分割環列23をなしている。そして、軸線P方向に隣り合う分割環列23は、動翼列22同士の軸線P方向に沿った間隔と同じ間隔を空けて設けられている。さらに、分割環13の径方向内側を向く面は、動翼12の径方向外側を向く端面と間隙を介して対向している。
【0023】
また、分割環列23同士の間には、周方向に間隔を空けて配置され、分割環13の軸線P方向上流側の端面に結合される複数の静翼14が設けられ、周方向に隣り合う静翼14同士によって静翼列24が形成されている。従って、一つの分割環列23と静翼列24とが結合されることによって静翼ユニット列28が形成されており、この静翼ユニット列28と動翼列22とが軸線P方向に交互に並ぶように配置される。
【0024】
遮熱環15は、周方向に複数(本実施形態においては周方向に48個)に分割される部材であり、図示しない封止部材を用いて周方向に隣接する遮熱環15同士が結合されることによって環状に形成され、遮熱環列25をなしている。
【0025】
また、この遮熱環列25は、静翼ユニット列28の径方向外側に環状に設けられており、即ち、この静翼ユニット列28の外周側を取り囲んでいる。そして、静翼ユニット列28の径方向外側を向く面に設けられた複数の嵌合部27aへ、遮熱環列25における遮熱環15各々の径方向内側部分が嵌入されることによって、遮熱環列25が分割環列23に固定されている。この複数の嵌合部27aは、静翼ユニット列28毎に、静翼ユニット列28の径方向外側を向く面において、軸線P方向上流側、下流側及び中央部(静翼14と分割環13のつなぎ目)の三箇所に設けられているため、一つの静翼ユニット列28に対して、三つの遮熱環列25が嵌合されることによって遮熱環列25と静翼ユニット列28とが結合されている。
【0026】
翼環16は、遮熱環列25のさらに外周側を取り囲むように、環状に形成される部材であり、周方向に隣り合う翼環16同士で翼環列26が形成され、軸線P方向に連続するように複数の翼環列26が隣り合って配置されることによって筒状に形成されている。そして、この翼環16の径方向内側を向く面には、複数の嵌合部27bが、翼環列26毎に嵌合部27aに対応するように、軸線P方向上流側、下流側及び中央部の三箇所に形成されている。そして、この嵌合部27bに遮熱環列25の径方向外側部分が嵌入されることによって、翼環16と遮熱環15とが固定されている。
【0027】
ケーシング17は、翼環16をさらに外周側から取り囲むように、タービン4の外形を形成しており、また、ケーシング17の径方向内側と翼環16の径方向外側とが結合されることによって、翼環16を径方向内側に支持している。
【0028】
次に、嵌合凹部31及び支持部材18について説明する。
図2、図3及び図4に示すように、嵌合凹部31は、翼環16の軸線P方向下流側を向く端面から、軸線P方向上流側へ向かって凹むように形成されている。この嵌合凹部31の内壁面は、軸線P方向下流側から見た場合、径方向外側部分が半円形状をなし、径方向内側部分が径方向を長手方向とした矩形状をなしている。また、嵌合凹部31の上記内壁面は、開口縁部33から軸線P方向下流側に向かうに従って、漸次幅を狭めるように傾斜する第一傾斜面19とされている。そしてこの第一傾斜面19は、翼環16の軸線P方向下流側を向く端面と、嵌合凹部31の軸線P方向下流側を向く底面との間の中途まで形成されている。
【0029】
そして、上記嵌合凹部31の径方向外側部分には、軸線P方向上流側を向く底面から軸線P方向下流側に向かってボルト穴34が形成されており、このボルト穴34の内周面には雌ネジ部35が形成されている。
【0030】
また、翼環16の軸線P方向下流側を向く端面と径方向内側を向く端面との間に形成される角部、及び嵌合凹部31の開口縁部33においては、面取りが施され、面取り部32が形成されている。
【0031】
支持部材18は、耐熱材によって嵌合凹部31にちょうど嵌入される形状に形成され、第一傾斜面19に対応し、この第一傾斜面19に間隙無く当接される第二傾斜面20を有している。また、嵌合凹部31にこの支持部材18が嵌入された際には、翼環16及び支持部材18の軸線P方向下流側を向く端面が同一面上に位置するように支持部材18が形成されている。
【0032】
そして、この支持部材18の軸線P方向下流側を向く端面には、径方向外側に位置するボルト孔36が形成されており、支持部材18におけるボルト孔36と、嵌合凹部31におけるボルト穴34とへボルト37を挿入し、ボルト37が雌ネジ部35へ螺合することによって支持部材18が嵌合凹部31、即ち、翼環16へ固定される。
【0033】
また、支持部材18には軸線P方向上流側を向く面の径方向内側部分に凹部38が形成され、翼環列26の軸線P方向下流側に結合された遮熱環列25を構成する各々の遮熱環15には、この遮熱環15の軸線P方向上流側を向く面の径方向内側部分に凸部39が形成されている。そして、これら凹部38に凸部39が嵌合されることによって、支持部材18と遮熱環15とが固定されており、遮熱環15が周方向及び軸線P方向に移動することを支持部材18が規制している。
【0034】
さらに、図4に示すように、第一傾斜面19と、第一傾斜面19周辺の翼環16の軸線P方向下流側を向く端面とには、金属溶射によって例えば、CoNiCrAlY等の耐酸化コーティング41が施されている。
【0035】
以上のようなガスタービン1によれば、稼動時にはタービン4内において、高温ガスWが軸線P方向上流側から下流側へ向かって流動する。そして、この高温ガスWがタービン4内の高圧部分から低圧部分へ流動しようとすることや、静翼14に衝突すること等によって、軸線P方向に隣り合う翼環列26同士の間隙、即ち、翼環列26の軸線P方向下流側の端面に巻き込まれる。
【0036】
この際、翼環16の嵌合凹部31に形成された第一傾斜面19と、支持部材18に形成された第二傾斜面20とが密着して嵌合されることによって、上記高温ガスWが嵌合凹部31と支持部材18との間隙に侵入することが抑制される。さらに、翼環16の軸線P方向上流側を向く端面と支持部材18の軸線P方向上流側を向く端面とが同一面上に位置していることによって、高温ガスWの滞留を回避できる。従って、支持部材18周辺において高温酸化反応を抑えることができ、翼環16の減肉を抑制できる。
【0037】
ここで、仮に第一傾斜面19及び第二傾斜面20を形成せず、嵌合凹部31へ支持部材18を嵌入する際に、この嵌合凹部31と支持部材18との間に間隙が無いようにするためには、嵌合凹部31と支持部材18とにかなりの加工精度が要求される。この点、本実施形態におけるガスタービン1では、第一傾斜面19と第二傾斜面20とを当接させることによって、間隙を設けないように容易に嵌合凹部31へ支持部材18を嵌入できる。
【0038】
また、翼環16の第一傾斜面19の表面及びその周辺に施された耐酸化コーティング41によって、高温ガスWから翼環16の表面を保護し、高温酸化反応を低減することができ、翼環16の減肉の抑制が可能となる。
【0039】
さらに、面取り部32においては、面取りが施されていることによって、耐酸化コーティング41のコーティング金属を溶射する際、この溶射が不均一になることが回避され、高温酸化反応の発生を低減できる。さらに、支持部材18は耐熱材よりなるため、支持部材18自身の高温酸化反応も防ぐことが可能となる。
【0040】
ここで、一般に金属溶射とは、溶射材となる金属を加熱して被施工物へ吹き付けることによって、この被施工物表面に皮膜を形成する表面処理方法である。施工時間が短く、容易に施工できることが特徴となっており、溶射材には金属以外の、例えば、セラミックスやプラスチック等を用いることも可能である。
【0041】
また、この面取り部32において、仮に面取りがなされず、角が残された状態となっている場合、この面取り部32は二面から加熱されることになり、熱が滞留し易くなる。このため、高温酸化反応の発生の可能性も増大してしまうおそれがあった。この点、本実施形態のガスタービン1によれば、面取りによって熱の滞留を回避し、高温酸化反応を低減できる。
【0042】
本実施形態に係るガスタービン1においては、支持部材18が嵌合凹部31に間隙を設けず嵌入されることによって、嵌合凹部31への高温ガスWの侵入が抑制される。また、第一傾斜面19の表面及び嵌合凹部31の周辺の翼環16に耐酸化コーティング41が施されることによって、高温ガスWによって引き起こされる高温酸化反応を低減することができ、この結果、翼環16の減肉を抑制することが可能となる。
【0043】
次に、図5及び図6を参照して、第二実施形態のガスタービン1の補修方法について説明する。なお、第一実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
本実施形態において補修されるガスタービン1は、嵌合凹部31が従来型嵌合凹部31Aとされている点、支持部材18が従来型支持部材18Aとされている点、及び翼環16の面取り部32が無い点で第一実施形態とは異なっている。
【0044】
図5に示すように、従来型嵌合凹部31Aは、翼環16の軸線P方向下流側を向く端面から、軸線P方向上流側へ向かって凹むように形成されており、この従来型嵌合凹部31Aの内壁面は、軸線P方向下流側から見た際、径方向外側部分が半円形状をなし、径方向内側部分が径方向を長手方向とした矩形状をなしている。
そして、従来型嵌合凹部31Aの軸線P方向上流側を向く底面において、径方向外側には軸線P方向下流側に向かって、ボルト穴34が形成されており、また、このボルト穴34の内周面には雌ネジ部35が形成されている。
【0045】
従来型支持部材18Aは、従来型嵌合凹部31Aへちょうど嵌入される形状に形成されており、軸線P方向下流側を向く面には、径方向外側に位置するボルト孔36Aが形成されている。そして、従来型支持部材18Aにおけるボルト孔36Aと従来型嵌合凹部31Aにおけるボルト穴34とへボルト37を挿入し、雌ネジ部35へボルト37を螺合することによって、従来型支持部材18Aが従来型嵌合凹部31A、即ち、翼環16へ固定される。
【0046】
また、従来型支持部材18Aには軸線P方向上流側を向く面に形成された凹部38Aが遮熱環15の凸部39と嵌合され、従来型支持部材18Aと遮熱環15とが固定されている。
【0047】
そして、ガスタービン1は、一定期間の稼動によって、従来型嵌合凹部31Aの周辺の翼環16に、高温ガスWによる高温酸化反応が引き起こされ、翼環16の減肉が発生し、補修が必要な状態となっている。
【0048】
次に、上記ガスタービン1の補修方法の手順について説明する。
図6は、ガスタービン1の補修工程を示すフロー図であって、この補修工程は、部品撤去工程S1と、外形形成工程S2と、コーティング工程S3と、部品設置工程S4とを備えている。
【0049】
まず、部品撤去工程S1を実行する。即ち、ボルト37を撤去することによって、翼環16及び遮熱環15から従来型支持部材18Aを取り外す。
【0050】
次いで、外形形成工程S2を実行する。即ち、従来型支持部材18Aの撤去によって開口した従来型嵌合凹部31Aの開口縁部33Aに対して、減肉部分へ肉盛溶接を施した後に、切削加工等を用いて第一傾斜面19を形成する。そして、第一傾斜面19の形成の際には、従来型嵌合凹部31Aの内壁面を、開口縁部33Aから軸線P方向上流側に向かうに従って漸次幅を狭めるように、翼環16の軸線P方向下流側を向く端面と嵌合凹部31Aの軸線P方向下流側を向く底面との中途まで加工を行なう。このようにして、従来型嵌合凹部31Aから嵌合凹部31を形成する。
【0051】
さらに、この外形形成工程S2においては、翼環16の軸線P方向下流側を向く端面と径方向内側を向く端面との間に形成される角部、及び従来型嵌合凹部31Aの開口縁部33Aに対して面取りを施し、面取り部32を形成する。
【0052】
続いて、コーティング工程S3を実行する。翼環16の嵌合凹部31に形成された第一傾斜面19及びその周辺へ金属溶射を行い、表面に耐酸化コーティング41(本実施形態では、CoNiCrAlY)を施す。
【0053】
最後の工程として、部品設置工程S4を実行する。即ち、第二傾斜面20を有する支持部材18を別途製作し、第二傾斜面20が第一傾斜面19に間隙無く当接するように嵌合凹部31へ支持部材18を嵌入する。そしてこのとき、翼環16の軸線P方向下流側を向く端面と支持部材18の軸線P方向下流側を向く端面とが同一面上に位置する。
【0054】
以上のようなガスタービン1の補修方法によれば、一定期間稼動後に、翼環列26の軸線P方向下流側の端面に巻き込まれた高温ガスWによって減肉した翼環16を肉盛溶接によって補修すると共に、第一傾斜面19を形成する。このため、従来型支持部材18Aを第二傾斜面20を有する支持部材18に交換することが可能となる。従って、第一傾斜面19と第二傾斜面20とを間隙無く当接させ、嵌合凹部31と支持部材18との間隙への高温ガスWの侵入を抑制し、高温酸化反応を低減することができる。
【0055】
さらに、従来型支持部材18Aを支持部材18に交換した後には、翼環16の軸線P方向上流側を向く端面と支持部材18の軸線P方向上流側を向く端面とが同一面上に位置することによって、高温ガスWの滞留を回避できる。従って、支持部材18周辺において翼環16の高温酸化反応を抑えることができる。
【0056】
また、面取り部32を形成することによって、耐酸化コーティング41のコーティング金属を溶射する際にこの溶射が不均一になることを回避でき、さらに、熱の滞留も回避することができる。この結果、高温酸化反応の低減が可能となる。
【0057】
本実施形態に係るガスタービン1の補修方法においては、このガスタービン1が一定期間稼動することによって発生する高温酸化反応による翼環16の減肉を補修することができる。さらに、再稼動以降の高温酸化反応を低減でき、翼環16の減肉を抑制することができる。
【0058】
以上、本発明の実施形態についての詳細説明を行なったが、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内において、多少の設計変更も可能である。
例えば、第一傾斜面19及びその周辺へ耐酸化コーティング41を必ずしも施す必要はなく、この場合、製作工数及び補修工数を低減することが可能となる。
【0059】
なお、本実施形態では軸線P方向上流側を向く端面に支持部材18が設けられているが、軸線P方向下流側を向く端面に設けられるものもある。また、支持部材18が分割環13と遮熱環15との双方を支持するものや、いずれか一方を支持する場合等、様々なパターンがある。さらに、支持部材18、凹部38、凸部39の形状も様々である。
【符号の説明】
【0060】
1…ガスタービン、2…圧縮機、3…燃焼器、4…(軸流)タービン、11…ロータ、12…動翼、13…分割環(耐熱部)、14…静翼、15…遮熱環(耐熱部)、16…翼環、17…ケーシング、18…支持部材、18A…従来型支持部材、19…第一傾斜面、20…第二傾斜面、22…動翼列、23…分割環列、24…静翼列、25…遮熱環列、26…翼環列、27a…嵌合部、27b…嵌合部、28…静翼ユニット列、31…嵌合凹部、31A…従来型嵌合凹部、32…面取り部、33…開口縁部、33A…開口縁部、34…ボルト穴、35…雌ネジ部、36…ボルト孔、36A…ボルト孔、37…ボルト、38…凹部、38A…凹部、39…凸部、41…耐酸化コーティング、W…高温ガス、P…軸線、S1…部品撤去工程、S2…外形形成工程、S3…コーティング工程、S4…部品設置工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温ガスの流路を外周側から囲う耐熱部と、
前記耐熱部の外周側に環状に形成された翼環と、
前記翼環の軸方向端面から凹む嵌合凹部内に嵌合され、前記耐熱部を支持する耐熱材からなる支持部材とを備え、
前記嵌合凹部は、その開口縁部から前記翼環の軸方向内側に向かうに従って漸次幅を狭めるように傾斜する第一傾斜面を有するとともに、
前記支持部材は、前記第一傾斜面に対応するように傾斜する第二傾斜面を有していることを特徴とするガスタービン。
【請求項2】
前記第一傾斜面に、耐酸化コーティングが施されていることを特徴とする請求項1に記載のガスタービン。
【請求項3】
高温ガスの流路を外周側から囲う耐熱部と、
前記耐熱部の外周側に環状に形成された翼環と、
前記翼環の軸方向端面から凹む嵌合凹部内に嵌合され、前記耐熱部を支持する耐熱材からなる従来型支持部材とを備えたガスタービンの補修方法であって、
前記従来型支持部材を撤去する部品撤去工程と、
前記嵌合凹部の内壁面に、前記嵌合凹部の開口縁部から前記翼環の軸方向内側に向かうに従って漸次幅を狭めるように傾斜する第一傾斜面を形成する外形形成工程と、
前記従来型支持部材に代えて、前記第一傾斜面に対応するように傾斜する第二傾斜面を有する支持部材を前記嵌合凹部内に設置する部品設置工程とを備えることを特徴とするガスタービンの補修方法。
【請求項4】
前記外形形成工程を実施した後に、前記第一傾斜面に耐酸化コーティングを施すコーティング工程を備えることを特徴とする請求項3に記載のガスタービンの補修方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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