説明

ガスタービン用空気圧縮機の吸気冷却システム

【課題】 気温が高い夏季でも、ガスタービンの出力を定格出力に近い出力に保つとともに、大気中の粉塵をろ過するためのエアフィルタを不要とするガスタービン用空気圧縮機の吸気冷却システムを提供する。
【解決手段】 吸気口を有する空気圧縮機と、空気圧縮機からの圧縮空気と燃料とを混合して燃焼させる燃焼器と、燃焼器で発生した燃焼ガスによって駆動されるガスタービンと、ガスタービンと同軸に連結された発電機とを備えた発電プラントにおける空気圧縮機の吸気冷却システムであって、空気圧縮機の吸気口19に、冷熱源からの冷水を散布するエアワッシャ7を設けることにより、フィルタを介することなく空気圧縮機に冷却空気を供給することとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインドサイクル方式等の発電プラントで用いられるガスタービンの空気圧縮機へ供給される空気を冷却するガスタービン用空気圧縮機の吸気冷却システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば特許文献1に記載されているようなコンバインドサイクル発電等の発電プラントにおいて、ガスタービンが用いられている。
【0003】
図6は、コンバインドサイクル発電の概要を示す。コンバインドサイクル発電は、ガスタービン13と蒸気タービン15とを組み合わせた発電方式である。
【0004】
吸気口19から取り入れた空気を、吸気通路20を通して空気圧縮機14に導入し、空気圧縮機14で圧縮して燃焼器12へ送出する。吸気口19には、ゴミや異物を除去するために、不織布等からなるプレフィルタ22が設けられる。また、吸気通路20内には、10μm程度およびそれ以上の大きさの塵埃を除去するために、HEPAまたはその他の高性能フィルタからなるメインフィルタ23が設けられる。燃焼器12において、圧縮空気と混合して燃料ガスを燃やし、このときの燃焼ガスの膨張力を利用してガスタービン13を駆動する。ガスタービン13から排出される高温の排ガスの余熱を、排熱回収ボイラ11で回収して蒸気を発生させ、その高圧の蒸気を蒸気タービン15に供給して蒸気タービンを駆動する。このように、ガスタービン13と蒸気タービン15とを組み合わせて発電機16を駆動することにより、高い熱効率を得る。発電機16により発電された電力は、変圧器17および送電線18を介して送電される。このような発電方法による発電プラント1は、高い熱効率と優れた環境特性のために、大容量発電設備として全国で建設されている。
【0005】
また、近年は、ガスタービン13の燃焼ガスの温度を高めた改良型コンバインドサイクル発電(ACC発電)が採用され、更にガスタービン13の高出力化が図られて、大容量の発電を行っている。
【0006】
このような発電プラント1において、ガスタービン15で駆動される発電機16は、定格出力で運用すれば、運転効率が高く経済的である。定格出力は、空気圧縮機14に供給する空気の温度が5℃のときの出力である。
【0007】
図7は、改良型コンバインドサイクル発電プラントの出力特性曲線の例を示す。この例では、空気圧縮機に送られる空気の温度が5℃以下の場合、定格出力は380MWである。夏季等に気温が高くなって空気の密度が低下すると、出力が低くなる。図7の例において、例えば気温が30℃を超えると、出力が50MW以上、すなわち15%前後低下する。
【0008】
ところが、夏季に気温が上昇すると、家庭等で冷房を使用することにより消費電力が増えるため、年間を通じて電力需要のピークは、最も気温の高い夏季の昼間となる。この夏季の昼間に出力が低下すると、電力不足を招いてしまう。
【0009】
従って、夏季の出力低下を防ぐために、従来より、ガスタービンへの吸気を冷却して高出力を図る方法が提案されている。
【0010】
それらの冷却方法のうち、例えば常温水の散水によって吸気を冷却する方式では、吸気温度が湿球温度に近づくだけであり、温度の低下度合は極めて少なく、発電機の定格出力を確保するには不十分である。また、液体空気を吹き付けて冷却する方式は、設備費用が極めて高価であり、実用的ではない。
【0011】
特許文献2では、夜間電力を利用して製氷し、その氷を冷媒とした冷却器に空気を通過させて、その空気をガスタービンに吸気させるものが提案されている。ところが、空気をこのような冷却器に通過させて熱交換を行う方式では、吸気に圧力損失が生じて、ACC発電のように高出力を得るための大量の空気を吸気させることが困難である。
【0012】
一方、空気圧縮機14やガスタービン13の内部に塵埃が侵入すると、羽根が浸食されて出力が低下するため、従来の空気圧縮機14の吸気通路20には、比較的大きなゴミをろ過するためのプレフィルタ22と、10μm程度およびそれ以上の塵埃をろ過するためのメインフィルタ23とが必ず設置されている。殊に大規模な出力を得るための発電設備では、大量の吸気をろ過するため、数百枚のフィルタが設置される。これらのフィルタは、交換時その都度、設備の運転を停止しなければならないため、極めて非効率的である。このフィルタの交換は、1年に1〜2回程度の頻度で行う必要があり、毎年、大量の産業廃棄物を発生し、環境的に好ましくない。
【特許文献1】特開平5−149501号公報
【特許文献2】特開平7−158467号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記従来技術を考慮してなされたものであり、気温が高い夏季でも、ガスタービンの出力を定格出力に近い出力に保つとともに、大気中の塵埃をろ過するためのエアフィルタを不要とするガスタービン用空気圧縮機の吸気冷却システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1の発明は、吸気口を有する空気圧縮機と、空気圧縮機からの圧縮空気と燃料とを混合して燃焼させる燃焼器と、燃焼器で発生した燃焼ガスによって駆動されるガスタービンと、ガスタービンと同軸に連結された発電機とを備えた発電プラントにおける空気圧縮機の吸気冷却システムであって、空気圧縮機の吸気口に、冷熱源からの冷水を散布するエアワッシャを設けることにより、フィルタを介することなく空気圧縮機に冷却空気を供給することを特徴とするガスタービン用空気圧縮機の吸気冷却システムを提供する。
【0015】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、エアワッシャは、樹脂製の充填材からなる熱交換部に散水することを特徴とする。
【0016】
請求項3の発明は、請求項1の発明において、冷熱源は、氷蓄熱槽であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明によると、冷水を散布するエアワッシャによって空気が冷却され、気温が高い夏季でも、吸気温度を下げてガスタービンの出力低下を防ぐことができる。また、空気がエアワッシャを通過する際、冷水に接触することにより、空気中の微細な塵埃等の異物を除去することができる。そのため、従来設置していたエアフィルタを使用する必要がなくなり、フィルタ交換の手間がなくなって、物的および人的コストが大幅に削減できる。また、大量の産業廃棄物を発生させることがなくなる。更に、フィルタを設置しなくても、フィルタ設置時以上に微細な塵埃が侵入しにくくなるので、空気圧縮機等の羽根を洗浄する回数を大幅に減らすことができる。従って、洗浄の手間が省けるうえ、装置を停止させる回数が減り、稼働率が向上する。
【0018】
請求項2の発明によると、冷水が散布された充填材の表面を空気が流通するため、冷水と空気との接触面積が増すとともに接触時間も長くなって、十分な熱交換作用およびろ過作用が得られる。従って、空気の冷却効果が更に高まるとともに、空気中の極めて微細な塵埃等の異物を除去することができる。
【0019】
請求項3の発明によると、氷蓄熱槽内の氷を融解して散水に用いることにより、低温で安定した冷水を使用することができる。この場合、夜間電力を利用して製氷し、氷蓄熱槽に蓄えておけば、効率よく冷水を使用することができるうえ、昼間冷凍機の運転を停止させても、冷水を散水することができる。従って、消費電力が増大する夏季の昼間に、発電プラントのために多くの電力を消費することなく、十分な発電機の出力を確保して電力を供給することができる。また、散水用の冷水を循環させて用いることにより、熱エネルギーのロスを抑えるとともに、消費される水の量を節約できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は、本発明に係るコンバインドサイクル方式の発電プラントの概要を示す。尚、図6に示した前述の従来例と同じものに関しては、同じ符号で示している。
【0021】
コンバインドサイクル方式の発電プラント1は、燃焼ガスを作動流体とするガスタービン13と、ガスタービン13の排ガスを熱源とする排熱回収ボイラ11と、この排熱回収ボイラ11で発生する高圧の蒸気により駆動する蒸気タービン15とを備え、ガスタービン13と蒸気タービン15の両出力を結合して高出力の発電を行う。ガスタービン13と蒸気タービン15、および発電機16は、同一軸上に配置されている。
【0022】
吸気口19から取り入れた空気を空気圧縮機14で圧縮し、燃焼器12に送出する。燃焼器12において、圧縮空気と例えばLNGガス等の燃料とを混合して燃焼させ、燃焼ガスを発生させる。その燃焼ガスの膨張力によって、ガスタービン13が駆動される。ガスタービン13から排出される高温の排ガスの余熱を、排熱回収ボイラ11で回収して高圧の蒸気を発生させ、その蒸気を蒸気タービン15に供給して蒸気タービンを駆動する。ガスタービン13および蒸気タービン15の出力により、発電機16で発電が行われ、その電力は、変圧器17および送電線18を介して送電される。
【0023】
空気圧縮機14へ空気を取り込む吸気通路20の端部の吸気口19にエアワッシャ7が設けられる。このエアワッシャ7に、冷水を供給する冷熱源25が接続される。冷熱源25は、例えば冷凍機や蓄熱槽である。本発明の冷却システム2は、エアワッシャ7および冷熱源25により構成される。
【0024】
図2は、本発明の冷却システム2全体の概略図である。冷却システム2を構成する冷熱源25は、氷蓄熱槽3、水冷式のブライン冷凍機4、冷却塔5、熱交換器6により構成される。この冷熱源25に接続されるエアワッシャ7は、この例では3段積みであり、それぞれダクト76を介して空気圧縮機14(図1)の吸気口19に接続される。図中の配管系で、細線は冷媒配管26、太線は冷水配管21、点線は冷却水配管27を示す。各配管の循環流に関しては後述する(図3,図4)。
【0025】
氷蓄熱槽3には、冷媒が循環する製氷コイル31が複数台、例えば6段積みで60台程度設置される。冷媒は、ブライン冷凍機4と氷蓄熱槽3との間を循環し、ブライン冷凍機4によって冷やされて氷蓄熱槽3の各製氷コイル31へ送られる。製氷コイル31を流れた冷媒はブライン冷凍機4へ戻される。この製氷コイル31により、氷蓄熱槽3へ送り込まれた水が氷となって製氷コイル31の周囲に形成される。
【0026】
エアワッシャ7で散水される冷水には、氷蓄熱槽3内で氷が融解した冷水を用いる。多量の冷水を短時間に必要とするとき、例えば冷房運転開始時などには、エアポンプ32を駆動して氷蓄熱槽3内に空気を送り、氷蓄熱槽3下部のノズル33から空気を噴出させて、氷の融解を促進する。融解した冷水は、冷水配管21を流れてエアワッシャ7へ送出される。この方法により、約3℃の冷水がエアワッシャ7へ供給される。氷蓄熱槽3内の製氷は、通常、夜間電力を利用して、夜間に行われる。
【0027】
図3は、図2の配管系統説明図である。図3において、点線は冷却水配管27を示し、実線は冷水配管21および冷媒配管27を示す。
【0028】
冷媒(ブライン)は、ブラインポンプ41により冷媒配管26を通して循環する。通常運転時の製氷プロセスでは、バルブ26bを開き、バルブ26a,26cを閉じる。この状態で、ブラインポンプ41によりブライン冷凍機4へ戻された冷媒は冷凍機4で冷却され、再び氷蓄熱槽3へ送り出される。送り出された冷媒は、氷蓄熱槽3内の製氷コイル31(図2)を通った後ブラインポンプ41によりブライン冷凍機4に戻る。これにより、製氷コイル31の周囲に氷が形成される。
【0029】
昼間の冷凍機追いかけ運転プロセスのとき、即ち氷蓄熱槽3内の氷を融解しながらもその消費を抑制し、冷凍機の冷却能力を最大限に利用するプロセスにおいてはバルブ26aを開きバルブ26b,26cを閉じる。冷媒(ブライン)は熱交換器6と冷凍機4をブラインポンプ41によって循環してエアワッシャからの戻り冷水を冷却する。一方、冷水は熱交換器6において予冷された後、氷蓄熱槽に送られ、氷と接触することで最終温度まで冷却される。所定温度以下になるときは、三方弁等によって所定温度に維持される。このときの冷凍機はブラインを例えば5℃程度に冷却するため、製氷プロセスに比較して運転効率を高く維持することができる。
【0030】
夏季の午後1時から3時など電力需要がピークになるときは、冷凍機4、冷却塔5及びブラインポンプ41、冷却水ポンプ51を停止して、自家消費電力を極力抑制し、氷の融解のみによって所定温度の冷水を作る。
【0031】
なお、夜間の製氷プロセスから昼間の追いかけプロセスに転換する際、それまで−5℃〜−2℃の低温で循環されていたブラインがいきなり熱交換器6に送られて冷水を凍結させることのないようバルブ26a,26bを閉じ、26cを開いてバイパス運転を行い、ブラインが0℃以上になってから前述の冷凍機追いかけ運転プロセスに入る。
【0032】
冷却水は、冷却水配管27を通して、冷却水ポンプ51により、冷却塔5とブライン冷凍機4との間を循環する。
【0033】
冷水は、冷水配管21を通して、エアワッシャ7(図4参照)で散布され、熱交換器6および氷蓄熱槽3を循環する。
【0034】
図4は、エアワッシャ7部分の拡大図である。散水室74は、例えば図4のように同じものが3層に積み上げて設置され、各散水室74は、図4における左右両側面に開口74b,74aを有する。右側の開口74aから外気が流入し、左側の開口74bはダクト76の片側に連結されている。ダクト76の反対側はガスタービンの空気圧縮機の吸気口19に連結される。各散水室74の上部には、シャワーノズル等からなる散水ヘッド72が設けられる。散水ポンプ71により、散水ヘッド72に氷蓄熱槽3から冷水が送られ、散水室74内に散布される。
【0035】
散水ヘッド72の下部には、充填材からなる熱交換部73が設けられる。充填材は、多孔の円筒状、ねじれ形状、その他、各種形状のプラスチック成形体を詰めたものである。この充填材は、詰めた状態で十分な隙間を有し、空気が通過する際に圧力損失が小さく、且つ空気との接触面積が大きくなるような形状である。
【0036】
このように、エアワッシャ7の熱交換部73内において、冷水と空気とを直接接触させることにより、空気中の5μm以上の塵埃を95%以上ろ過することができる。従って、従来設置されていたメインフィルタがろ過していた10μm以上の塵埃よりも微細な塵埃を、フィルタを設置することなくろ過することができる。
【0037】
冷水配管21を通して氷蓄熱槽3(図2)から約3℃の冷水が散水ヘッド72に送られる。散水ヘッド72から、その下方に設置された熱交換部73に冷水が散布される。空気は、開口74aから流入し、熱交換部73を通過して冷却およびろ過される。左側の開口74bの全面にエリミネータ75が取り付けられ、水滴がガスタービンの内部へ浸入することを防ぐ。冷却された空気は、エリミネータ75を通過し、ダクト76を介して、吸気口19へ送られる。吸気口19の入口部には、必要に応じてプレフィルタ91が設けられる。
【0038】
散水ヘッド72から散布された冷水は、充填材を通して下部水槽77に溜まる。下部水槽77のオーバーフロー用切り欠き78から溢れた冷水は、還水槽8に流入する。
【0039】
各散水ヘッド72に接続される冷水配管21は、散水ポンプ71の手前側で三方弁28を介して分岐し、下部水槽77に接続される。三方弁28により、散水ヘッド72に送られる冷水温度が調整される。これにより、エアワッシャ7を通る空気の熱交換量を調整し、外気温度に応じて、必要な吸気温度が得られる。
【0040】
還水槽8に溜まったエアワッシャ7からの還水は、フィルタ82を介して還水ポンプ81により吸引され、熱交換器6(図2)を介して氷蓄熱槽3に戻される。
【0041】
図5は、エアワッシャ7の一配置例を示す平面図である。エアワッシャ7は、例えば図4に示すように上下に3層積み重ねたものを、図5に示すように、吸気口19の周囲に5個所設置する。このように、吸気口19の周囲をエアワッシャ7と鋼板等の囲い板で囲むことにより、ダクトを省略できるなどスペース的に効率よく、大量の冷却空気をガスタービン内に吸気させることができる。例えば380MWのACC発電プラントの場合では、外気が35℃のときに、毎秒510立方米の空気が8℃程度まで冷却されるように、エアワッシャ7の大きさや数、散水量等を設計する。尚、エアワッシャ7の設置台数は、吸気量や出力の規模により異なり、図4および図5の例に限らない。
【0042】
還水は、前述のように、熱交換器6(図2および図3)を通過する。ブライン冷凍機4の運転中は、例えば12℃に温度上昇した還流水が8℃まで冷却される。8℃に冷却された還流水は、氷蓄熱槽3へ送られて、製氷コイル31の周囲の氷の融解によってさらに冷却され、散水用の冷水として再び用いられる。
【0043】
通常、ブライン冷凍機4は、ガスタービンの運転中は戻り冷水の予冷用として連続運転されるが、外気温が低くそのままで十分に低温の吸気が得られる場合には、運転を停止する。また、例えば真夏の日中における消費電力のピーク時には、発電プラント内の使用電力を抑えるために、停止する。このような場合には、還水は、熱交換器6を通過する際に冷却されることがなく、そのまま氷蓄熱槽3へ送られる。この氷蓄熱槽3内の氷の融解水が散水用の冷水として再利用される。通常、一日の終わりすなわち夜間の8時〜10時までには氷蓄熱槽3内の氷を使い切った後、ブライン冷凍機4の運転を再開して、製氷コイル31で製氷する。エアワッシャでは、下部水槽77から散水ヘッド72の間を循環するだけの散水を行い、自然蒸発冷却以外のいわゆる機械冷却は行わない。この間に、冷凍機は専ら蓄熱槽において製氷という形の冷熱蓄熱を行う。
【0044】
夏季の夜間並びに中間期や冬季など、吸気冷却を必要としないときはエアワッシャは空気清浄装置をしての運転となる。このときは、前述のとおり、散水用の水は下部水槽77から散水ヘッド72、充填材73の間を循環するのみであり、一部蒸発で失われた水は、蓄熱層からのヘッドにより補給される。
【0045】
本発明は、新設の発電設備の他、既存の設備においても、設備の本体内部を改修することなく実施することができる。既存設備の場合、吸気口にエアフィルタが設置されているが、本発明の実施に影響を及ぼすことはない。尚、エアフィルタの耐用期間が過ぎた後は、エアフィルタを外して運転することができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、既存または新設のコンバインドサイクル方式あるいは蒸気タービンを用いない発電設備におけるガスタービンの空気圧縮機への吸気冷却システムに適用できる。
【0047】
エアワッシャに連結される冷熱源は氷蓄熱槽に限定されず、各種冷凍機を用いることができる。また、冷凍機はブライン冷凍機に限らず、吸収式冷凍機やヒートポンプ式冷凍機、その他各種冷凍機が使用可能である。
【0048】
発電プラントは大規模発電に限らず、空気圧縮機を備えたガスタービンを用いる発電機であれば、規模に関わらず適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係る発電設備の例を示すブロック図。
【図2】本発明の実施の形態を示す概略図。
【図3】図2の配管系統の説明図。
【図4】図2のエアワッシャ部の拡大図。
【図5】エアワッシャの配置例を示す平面図。
【図6】従来の発電設備の例を示すブロック図。
【図7】吸気温度に対する発電機出力の例を示すグラフ。
【符号の説明】
【0050】
1:発電プラント、2:冷却システム、3:氷蓄熱槽、4:ブライン冷凍機、5:冷却塔、6:熱交換器、7:エアワッシャ、8:環水槽、11:排熱回収ボイラ、12:燃焼器、13:ガスタービン、14:空気圧縮機、15:蒸気タービン、16:発電機、17:変圧器、18:送電線、19:吸気口、21:冷水配管、31:製氷コイル、32:エアポンプ、33:ノズル、41:ブラインポンプ、51:冷却水ポンプ、71:散水ポンプ、72:散水ヘッド、73:熱交換部、74:散水室、74a,74b:開口、75:エリミネータ、76:ダクト、77:下部水槽、78:切り欠き、79:還水管、81:還水ポンプ、82:フィルタ、91:プレフィルタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気口を有する空気圧縮機と、
前記空気圧縮機からの圧縮空気と燃料とを混合して燃焼させる燃焼器と、
前記燃焼器で発生した燃焼ガスによって駆動されるガスタービンと、
前記ガスタービンと同軸に連結された発電機とを備えた発電プラントにおける空気圧縮機の吸気冷却システムであって、
前記空気圧縮機の吸気口に、冷熱源からの冷水を散布するエアワッシャを設けることにより、フィルタを介することなく前記空気圧縮機に冷却空気を供給する
ことを特徴とするガスタービン用空気圧縮機の吸気冷却システム。
【請求項2】
前記エアワッシャは、樹脂製の充填材からなる熱交換部に散水することを特徴とする請求項1に記載のガスタービン用空気圧縮機の吸気冷却システム。
【請求項3】
前記冷熱源は、氷蓄熱槽であることを特徴とする請求項1に記載のガスタービン用空気圧縮機の吸気冷却システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−138263(P2006−138263A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−328896(P2004−328896)
【出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【出願人】(502271896)東京都市サービス株式会社 (5)