ガスハイドレートの分解量制御方法および分解ガス量制御システム
【課題】 ガスハイドレートを貯蔵する際に、要求される分解ガス量に応じて、ガスハイドレートの分解量を制御することができる、ガスハイドレートの分解量制御方法及びガスハイドレートの分解ガス量制御システムを提供すること。
【解決手段】 ガスハイドレートが自己保存効果を発現する条件下でガスハイドレートを貯蔵する際のガスハイドレートの分解量制御方法であって、所定の数式に基いてガスハイドレートの分解率βを求め、ガスハイドレートの分解量を制御することを特徴とする。
【解決手段】 ガスハイドレートが自己保存効果を発現する条件下でガスハイドレートを貯蔵する際のガスハイドレートの分解量制御方法であって、所定の数式に基いてガスハイドレートの分解率βを求め、ガスハイドレートの分解量を制御することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然ガス、メタン、エタン、二酸化炭素などのガスハイドレートを形成する気体状のハイドレート形成物質と水との包接化合物であるガスハイドレートの分解量制御方法および分解ガス量制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスハイドレートとは、水分子とガス分子からなる氷状の固体結晶であり、水分子が作る立体構造の籠(ケージ)の内部に、ガス分子が取り込まれて形成される包接(クラスレート)水和物(ハイドレート)の総称である。1m3のガスハイドレート中に包蔵できるガス量は165Nm3程度と大量である。そのため、天然ガスをハイドレートとして生成、貯蔵、輸送するシステム(NGHシステム:Natural Gas Hydrate System)が検討されている。
【0003】
大気圧におけるガスハイドレートの貯蔵において、ガスの分解量を極小化するためには、天然ガスハイドレート(Natural Gas Hydrate:NGH)の自己保存性を利用することが鍵となる。
【0004】
図12は公知のハイドレートの平衡線図(メタンハイドレートの例)である。尚、図12において平衡線31の左上領域がハイドレート生成領域であり、平衡線31の右下領域がハイドレート生成領域外である。また、Hはハイドレート(Hydrate)、Gはガス(Gas)、Iはアイス(氷:Ice)、LWはリキッドウォーター(水:Liquid Water)を表す。
【0005】
天然ガスと水とをハイドレート生成反応におけるハイドレート生成領域内となる低温及び高圧(例えばハイドレート平衡条件の高圧且つ低温側となる5MPaで0.1〜3℃程度 図12のA点)の下で反応させると天然ガスハイドレートを生成する。
【0006】
生成した天然ガスハイドレートを等圧で氷点以下(0℃〜−40℃ 図12のB点)に冷却すると凍結する。そして、凍結した天然ガスハイドレートは貯蔵圧力(大気圧0.1MPa近く 図12のC点)まで減圧して貯槽に貯蔵される。
【0007】
通常、貯槽内は、該貯槽内への大気の不用意な浸入を防止する観点から、その貯蔵圧力は大気圧より少し高圧に設定される。この貯槽の前記温度及び圧力は、ハイドレート生成領域外に位置するが、上記氷点下ではガスハイドレートの分解が抑制されて準安定状態にある。この準安定状態をとる現象が自己保存性として知られている。
【0008】
ガスハイドレートは、貯槽への充填率の向上や、輸送及び貯蔵中の安全性、荷役時の扱いの容易性などを図るため、粉体状のガスハイドレート粒子を圧縮成形しペレット状で貯蔵される。通常、ペレットサイズは5mm〜100mm程度である。更に、寸法の異なる2種以上のガスハイドレートペレットを混合して貯蔵することによって、貯蔵施設に貯蔵されるガスハイドレートの充填率を向上させことができる(特許文献1:特開2002−220353号公報)。
【0009】
また、ガスハイドレートを貯蔵する技術については、貯蔵槽の温度を、ガスハイドレートが自己保存性を発現する温度に制御することによりガスハイドレートの分解を抑制し、効率的にガスハイドレートを貯蔵する方法が検討されている(特許文献2:特開2005−201286号公報)。
【0010】
【特許文献1】特開2002−220353号公報
【特許文献2】特開2005−201286号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前記貯蔵槽に貯蔵しているガスハイドレート粒子やガスハイドレートペレットの一部が分解すると、ガス化した気体分子が分解ガスとして生成する。
【0012】
天然ガスをハイドレートとして自己保存性を利用して貯蔵する場合、その採算性、および貯蔵システムの全体計画等から、ハイドレートの分解量は所定の値以下であることが要求される。
【0013】
これまでの研究により、自己保存状態のガスハイドレート粒子、ペレットの安定性は、貯蔵温度領域により変化することが示されている。また、前記安定性は、ガスハイドレート粒子、ペレットの密度や粒径等の性状や、ガスハイドレートの表面の状態によっても大きく異なることが定性的に示されている。
【0014】
しかし、ガスハイドレート粒子、ペレットの性状とガスハイドレートの分解量との相関関係が明確ではなく、ガスハイドレートを貯槽に貯蔵した際に、定量的にガスハイドレートの分解量を推算する手段がなかった。
したがって、ガスハイドレートを貯蔵する際、ガスハイドレートの分解量を要求される所定の値以下に設定することが困難であった。
【0015】
本発明の課題は、ガスハイドレートを貯蔵する際に、要求される分解ガス量に応じて、ガスハイドレートの分解量を制御することができる、ガスハイドレートの分解量制御方法及びガスハイドレートの分解ガス量制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様に係るガスハイドレートの分解量推算方法は、ガスハイドレートが自己保存効果を発現する条件下でガスハイドレートを貯蔵する際のガスハイドレートの分解量制御方法であって、下記の式(1)に基いてガスハイドレートの分解率βを求め、ガスハイドレートの分解量を制御することを特徴とする。
【0017】
【数3】
K :貯蔵圧力、貯蔵温度、ガスハイドレートの密度、及びガス組成に応じて実験によって決まる分解速度定数
r0:ガスハイドレート半径(m)
t :貯蔵時間(s)
【0018】
本発明によれば、自己保存効果を発現する条件下でガスハイドレートが分解して発生する分解ガス量を、(1)式に基いて正確に推算することができるので、ガスハイドレートを貯蔵する際に要求される分解ガス量を満たすように、ガスハイドレートの分解量を制御することができる。
例えば、貯蔵圧力、貯蔵温度、ガスハイドレートの密度、及びガス組成が一定である場合に、ガスハイドレートの粒径(半径r0)を変えることにより、要求される分解ガス量を満たすように設定することができる。
【0019】
分解速度定数Kは貯蔵圧力、貯蔵温度、ガスハイドレートの密度、及びガス組成に応じて実験によって決まる定数であり、異なる貯蔵圧力、貯蔵温度、ガスハイドレートの密度、及びガス組成についてそれぞれ実験で定めて、分解速度定数Kの各データをテーブル化して用意すれば、複数の条件下におけるガスハイドレートの分解量を、その条件に適合した分解速度定数Kを用いることによって推算することができる。
【0020】
また、本発明の第2の態様に係るガスハイドレートの分解ガス制御システムは、要求される分解ガス量を満たすように、分解率βについての下記の式(1)に基いて、自己保存効果を発現する条件下で貯蔵されるガスハイドレートの分解量を制御可能に構成されていることを特徴とする。
【0021】
【数4】
K :貯蔵圧力、貯蔵温度、ガスハイドレートの密度、及びガス組成に応じて実験によって決まる分解速度定数
r0:ガスハイドレート半径(m)
t :貯蔵時間(s)
【0022】
要求される分解ガス量とは、制御の基準となる分解ガス量のことであり、ガスハイドレートを貯蔵する際の採算性や経済性から要求される分解ガス量や、設備等が物理的に要求する分解ガス量である。
【0023】
本発明によれば、自己保存効果を発現する条件下で貯蔵されているガスハイドレートの分解ガス量を正確に推算することができるため、ガスハイドレート貯槽や、分解ガス利用設備に要求される分解ガス量に応じて、ガスハイドレートの分解量を制御することができる。
例えば、貯蔵圧力、貯蔵温度、ガスハイドレート粒子、ペレットの密度、及びガス組成が一定である場合に、ガスハイドレート粒子、ペレットの粒径(半径r0)を変えることによって、ガスハイドレートの分解量を制御することができる。
【0024】
更に、ガスハイドレート粒子、ペレットの性状が決定した後に、前記要求される分解量が変更された場合でも、貯蔵圧力Pおよび貯蔵温度Tに応じた分解速度定数Kを持っていれば、貯蔵圧力Pまたは貯蔵温度Tを変えることによってガスハイドレートの分解量を制御することも可能である。
【0025】
また、本発明の第3の態様に係るガスハイドレートの分解ガス制御システムは、第3の態様において、二種以上の異径のガスハイドレートを混合することで分解ガス量を制御することを特徴とする。
【0026】
本発明によれば、異径のガスハイドレート粒子、ペレットを混合することによって、貯槽への充填率を向上させるとともに、ガスハイドレートの分解量を、分解ガス利用設備において要求される分解ガス量に調整し易くなる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、ガスハイドレートを貯蔵する際に要求される分解ガス量を満たすように、ガスハイドレートの分解量を制御することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明に係るガスハイドレートの分解量制御方法及び分解ガス量制御システムについて説明する。本発明においてハイドレートの種類は特に限定されるものではない。すなわち、ハイドレートを形成するガス状のハイドレート形成物質の種類は、所定の温度、圧力条件でハイドレートを形成するものであればよく、例えば天然ガス(メタンを主成分とし、副成分としてエタン、プロパンなどを含む混合ガス)、メタンガス、エタンガス、二酸化炭素ガス(炭酸ガス)などを挙げることができる。ガスハイドレート粒子、ペレットは自己保存効果を発現した状態で貯蔵する。ガスハイドレートペレットは、通常、5mm〜100mmの範囲で製造するのが実用的である。
【0029】
[ガスハイドレートの分解量制御方法]
(1)ガスハイドレートの分解速度の温度依存性
図1に、メタンガスハイドレートペレット(以下、MGHPと称する)の各貯蔵温度における分解速度をゲスト分子包蔵率αHの減少割合 ΔαH/Δt(s−1)で示す。
ゲスト分子包蔵率αHの定義を下記の式(2)に示す。
【0030】
【数5】
水分子が作る全てのケージにゲスト分子が包摂した場合は、αH=1.0となる。水和数とは、ガス分子に対する水分子数の割合である。本実施例においては、I型構造のガスハイドレートの理論水和数である5.75を値として用いた。
【0031】
MGHPの場合、貯蔵温度268Kでは分解速度が大きいが、貯蔵温度が低くなると分解速度が小さくなり、253Kでは3×10−8s−1まで低下した。貯蔵温度が253Kより低くなると再び分解速度が増加し、210Kで分解速度が最大となるが、それより低い温度では分解速度が減少し、168Kで分解速度は0になった。MGHPの自己保存性は、226K〜268Kの限られた温度範囲で発現し、この温度範囲内では253K付近で最も安定性が高いことが確認された。
【0032】
メタンを主成分とし、エタン、プロパンを含む混合ガスハイドレートペレット(以下、混合GHPと称する)の場合も、計測範囲内では、分解速度は253Kで最も低い値を示している。また混合GHP分解速度の温度依存性は、組成、濃度によらずMGHPと同様の傾向を示す。
【0033】
(2)ガスハイドレート粒子、ペレットの分解率の推算式
次に、走査型共焦点顕微鏡を用いてハイドレートペレットの表面状態を観察したところ、自己保存性を最も強く示す温度である253Kまで昇温した試料の表面は、全体が光沢を帯びた膜状に覆われている様子が観察された。
【0034】
図2は球状のガスハイドレート粒子、ペレットの分解反応モデルである。
記号の意味を以下に示す。
r :ハイドレート粒子、ペレット半径(m)
V :ハイドレート粒子、ペレット体積(m3)
x :分解したハイドレート層の厚さ(m)
添字の0は初期の状態を示す。
前記球状のガスハイドレート粒子、ペレットの分解反応モデルを用いて、MGHPが温度範囲226K〜268K、特に253K付近での自己保存状態におけるガスハイドレートペレットの分解量を推算する。
【0035】
ガスハイドレートペレット1の分解過程では、分解により生成した氷2がガスハイドレートペレット1の表面から内部に向かって成長するものと仮定する。氷が多孔質のものであれば、分解により生成したガスは氷層を速やかに通過できるが、緻密な膜状の氷の場合は簡単に通過できずに氷層中を拡散しなければならない。
【0036】
そこで、分解速度が非常に小さい253K付近のガスハイドレートペレット1表面で観察された、該表面全体が光沢を帯びた膜状に覆われている様子は、緻密な膜状の氷2が生成している状態であると仮定し、ガスハイドレートペレットの分解速度式に、拡散律速・界面減少型反応速度式(Janderの式)を適用する。この点が本発明の特徴である。
【0037】
ガスハイドレートペレット1の分解率βと分解層である氷2の厚さxの関係は次式により得られる。tは時間(s)を表す。
球状のガスハイドレートペレット1が分解し、分解層の厚さxとなったときの体積Vは(3)式によって表せる。
【0038】
【数6】
球状のガスハイドレートペレット1が分解し、分解層の厚さxとなったときの分解率βを用いて体積Vを表すと、以下の(4)式になる。
【0039】
【数7】
上記(3)式と(4)式から、分解層の厚さxは(5)式で表せる。
【0040】
【数8】
また、前記拡散律速の仮定より、分解ガスが分解層中を拡散するのに要する時間は、分解層の厚さが増すほど増大するので、分解層の成長速度はその厚さに反比例するものとする。分解速度dx/dtは以下のように表せる。
【0041】
【数9】
t=0でx=0という初期条件を使って(6)式を積分すると、(7)式が得られる。
【0042】
【数10】
(5)式と(7)式から(8)式が得られる。
【0043】
【数11】
(8)式から分解率βは、下記の(1)式となる。
【0044】
【数12】
ゲスト分子包蔵率αHは(9)式によって求められる。
【0045】
【数13】
【0046】
(3)分解速度定数K
分解速度定数Kは、ガスハイドレートペレットの性状であるペレット密度(ρ)およびガス組成と、貯蔵条件である貯蔵圧力(P)および貯蔵温度(T)に応じて決まる定数である。貯槽に貯蔵される一定性状のガスハイドレートペレットについて、該ガスハイドレートペレットが自己保存効果を発現する、一定貯蔵条件下で貯蔵したときの分解率を測定することによって、該ガスハイドレートペレットの分解速度定数Kが求められる。
【0047】
一例として、1気圧、253Kにおける、ペレット密度が880〜914kg/m3であるメタンガスハイドレートペレット(MGHP)を挙げると、分解速度定数Kは、実験結果より、1×10−16m2/s〜1×10−14m2/sである。より好ましい範囲としてK=3.5×10−15m2/s±2.5×10−15m2/sを用いて分解量を推算する。
【0048】
上記分解速度定数Kを用いて、(1)式によって分解率βを求め、(9)式によって求めたMGHPのゲスト分子包蔵率(%)の推算結果と、実験による実際のゲスト分子包蔵率(%)の測定結果との比較を図3に示す。尚、図3におけるゲスト分子包蔵率は、前述において定義したαHに100を乗じて百分率で表したものである。
推算値は400時間以上経過後まで実験結果と良く一致しており、推算式(1)によってガスハイドレートの分解率求められ、該ガスハイドレートの分解量が推算可能といえる。
【0049】
(4)分解速度とガスハイドレートペレットの粒径
2週間ガスハイドレートペレットを貯蔵する際に要求される分解速度が、1気圧、253Kにおいて、2×10−8s−1であった。
貯蔵するガスハイドレートペレットの密度が880kg/m3であるときの分解速度定数K=3.5×10−15m2/sを用いて、(1)式に基いて2週間の分解速度を計算した結果を図4に示す。図4より、分解速度が2×10−8s−1以下となるガスハイドレートペレットの粒径は、10mm以上、望ましくは20mm以上とすることができる。
【0050】
(5)分解速度とガスハイドレートペレットの比表面積
ペレットがポーラスな場合には、必要な分解速度以下にするために、ペレットの比表面積を制御することが有効である。図5に、(1)式において分解速度定数Kを3.5×10−15m2/sとしたときの分解速度とガスハイドレートペレットの比表面積との関係を示す。
ガスハイドレートペレットの比表面積は以下の方法で求めることができる。
【0051】
MGHPの密度ρを浮力法により計測した。図11に計測方法を示す。測定は253Kの低温室内で行い、溶媒はイソオクタンを用いた。イソオクタンの253Kにおける密度は、724.3kg/m3とした。メッシュ容器はステンレス製の目開き0.5mmのメッシュ容器を用いた。表1に253KにおけるMGHPの密度の計測結果を示す。
【0052】
【表1】
比表面積は以下の式で表せる。
【0053】
【数14】
得られた密度より、(10)式から比表面積が求められる。
要求された分解速度が1×10−7(s−1)である場合、図5より、ガスハイドレートペレットの比表面積を2.5m2/kg以下、望ましくは2.0m2/kg以下とすることができる。
【0054】
(6)分解速度と密度
図6は、粒径13mmのガスハイドレートペレットの密度と分解速度の関係を示す図である。
密度を800kg/m3以上、望ましくは850kg/m3以上とすることにより、0.002/day(2×10−8s−1)以下の分解速度とすることができる。
【0055】
(7)二種以上の異径のガスハイドレート粒子、ペレットを混合した場合の分解速度
二種以上の異径のガスハイドレート粒子、ペレットを混合した場合、その混合したガスハイドレート粒子、ペレット全体の分解速度は、それぞれの粒径の分解率βを(1)式により計算して、混合したガスハイドレート粒子、ペレット全体に対する重量分率を乗じた値を合算することによって求めることができる。分解速度ΔαH/Δtは、(9)式によっりαHを求め、以下の(11)式により求めることができる。添字のt1、t2はそれぞれ貯蔵時間の状態を示す。
【0056】
【数15】
【0057】
(8)ブロードな粒径分布を持つガスハイドレート粒子、ペレット混合物の場合
ブロードな粒径分布を持つガスハイドレート粒子、ペレット混合物の場合、全体の分解率βは、粒径の範囲を、最小値と最大値が2倍程度以下となるように複数分割して、それぞれの平均粒径で分解率βを(1)式により計算する。これに分割した範囲ごとに全体に対する重量分率を乗じた値を合算することによって、全体の分解率βを求めることができる。
分解速度ΔαH/Δtは、(9)式によりαHを求め、(11)式により求めることができる。
【0058】
また、上記はガスハイドレート粒子、ペレットを球状のモデルで仮定した場合の計算であるが、実際のガスハイドレート粒子、ペレットは、球形以外にも、円筒形、レンズ形、ピロー形、アーモンド形等、すべての形状のペレットや不定形の粒子にも適用が可能である。これらの粒子の半径r0は、外径の2分の1を用いることができる。外径に長径と短径がある場合、長径と短径の平均を外径として用いることが望ましい。
【0059】
[実施例1]
図7はガスハイドレート粒子、ペレットの分解ガス量制御システムの一実施例の概略構成図である。以下、本実施例および後述する実施例において、ガスハイドレートペレットを例に説明するが、ガスハイドレート粒子についても同様である。
ガスハイドレートペレット貯槽12のプロセスデータ[貯蔵温度T(K)、貯蔵圧力(MPa)、貯蔵中要求分解速度(s−1)、ガス組成、ペレット密度ρ(kg/m3)、貯蔵容積(m3)、要求ガス貯蔵量(m3)]が設定される。
【0060】
前記ガスハイドレートペレットが自己保存効果を発現する一定の貯蔵条件下(貯蔵圧力P、貯蔵温度T)で貯蔵する場合の分解速度定数Kを実験により決定し、式(1)よって求められた分解率βが、貯槽12に要求される分解ガス量を満たす値となるように、ガスハイドレートペレット製造プラント13において製造されるガスハイドレートペレット11の粒径を設定する。
【0061】
ガスハイドレートペレット製造プラント13と貯槽12は隣接している場合もあるが、貯槽には陸上貯槽、海上(船上)貯槽、遠隔地の貯槽等、離れて設置される場合もある。後述する実施例についても同様である。
【0062】
次に、本実施例の作用を説明する。
自己保存効果を発現する条件下で貯蔵されているガスハイドレートペレットの分解ガス量を正確に推算することができるため、貯槽12に要求される分解ガス量に応じて、ガスハイドレートペレットの分解量を制御することができる。
例えば、貯蔵圧力P、貯蔵温度T、ガスハイドレートペレット11の密度ρ、及びガス組成が一定である場合に、ガスハイドレートペレット11の粒径(半径r0)を変えることによって、ガスハイドレートペレット11の分解量を制御することができる。
【0063】
本実施例では、貯槽12に要求される分解ガス量に応じて、ガスハイドレートペレット製造プラント13において製造されるガスハイドレートペレット11の粒径を設定することができるが、前記プロセスデータとして、ガスハイドレートペレット11の粒径2r0を設定し、ガスハイドレートペレット11のペレット密度ρによって分解ガス量を制御することもできる。
【0064】
また、前記分解速度定数Kは貯蔵圧力、貯蔵温度、ガスハイドレートペレットの密度、及びガス組成に応じて実験によって決まる定数であり、貯蔵圧力、貯蔵温度、ガスハイドレートペレットの密度、及びガス組成について実験で定めた分解速度定数Kの各データを、テーブル化して持っていれば、複数の条件下におけるガスハイドレートペレットの分解量を推算することができる。
【0065】
したがって、ガスハイドレートペレット11の性状が決定した後に、前記要求される分解量が変更された場合でも、貯蔵圧力Pおよび貯蔵温度Tに応じた分解速度定数Kを持っているので、貯蔵圧力Pまたは貯蔵温度Tを変えることによってガスハイドレートペレット11の分解量を制御することも可能である。
【0066】
[実施例2]
図8はガスハイドレート粒子、ペレットの分解ガス量制御システムの他の実施例の概略構成図である。
ガスハイドレートペレット貯槽12のプロセスデータ[貯蔵温度T(K)、貯蔵圧力(MPa)、貯蔵中要求分解速度(s−1)、ガス組成、ペレット密度ρ(kg/m3)、貯蔵容積(m3)、要求ガス貯蔵量(m3)]が設定される。
【0067】
前記ガスハイドレートペレットが自己保存効果を発現する一定の貯蔵条件下(貯蔵圧力P、貯蔵温度T)で貯蔵する場合の分解速度定数Kを実験により決定し、式(1)よって求められた分解率βが、分解ガス利用設備14に要求される分解ガス量を満たす値となるように、ガスハイドレートペレット製造プラント13において製造されるガスハイドレートペレット11の粒径を設定する。
本実施例によって、実施例1と同様に、分解ガス利用設備14に要求される分解ガス量に応じて、ガスハイドレートペレットの分解量を制御することができる。
【0068】
[実施例3]
図9は異径混合ガスハイドレート粒子、ペレットの分解ガス量制御システムの一実施例の概略構成図である。以下、ガスハイドレートペレットを例に説明するが、ガスハイドレート粒子についても同様である。
本実施例では、二種の異径の大径ガスハイドレートペレット21および小径ガスハイドレートペレット22を混合した、異径混合ガスハイドレートペレット23を貯槽24に貯蔵する。
ガスハイドレートペレット貯槽24のプロセスデータ[貯蔵温度T(K)、貯蔵圧力(MPa)、貯蔵中要求分解速度(s−1)、ガス組成、ペレット密度ρ(kg/m3)、貯蔵容積(m3)、要求ガス貯蔵量(m3)]が設定される。
【0069】
前記ガスハイドレートが自己保存効果を発現する一定の貯蔵条件下(貯蔵圧力P、貯蔵温度T)で貯蔵する場合の分解速度定数Kを実験により決定し、式(1)に基いて、異径混合ガスハイドレートペレット23の分解速度が、貯槽24に要求される分解ガス量を満たすように、大径ガスハイドレートペレット21および小径ガスハイドレートペレット22の粒径とそれぞれの構成比を決定する。
これに従って、ガスハイドレート製造プラント25で、大径ガスハイドレートペレット21および小径ガスハイドレートペレット22をそれぞれの構成比で製造する。
【0070】
次に、本実施例の作用を説明する。
本実施例によれば、(1)式によってガスハイドレートペレットの分解ガス量を正確に推算し、貯槽24に要求される分解ガス量に応じて、ガスハイドレートペレットの分解量を制御する際に、ガスハイドレートペレット製造プラント25において製造される二種の大径および小径のガスハイドレートペレット21、22を混合することによって、貯槽24において要求される分解ガス量に調整し易くなる。
前記分解速度定数Kは、実験によって得られた値をテーブル化して利用することができる。
【0071】
二種以上の異径のガスハイドレートペレットを組み合わせることにより、分解量の細かい調整がし易くなり、同時に貯槽24へのガスハイドレートペレットの充填率も向上することができる。
【0072】
また、ガスハイドレートペレットの粒径および構成比を速やかに設定できるため、効率よく大径ガスハイドレートペレット21および小径ガスハイドレートペレット22をガスハイドレートペレット製造プラント25において製造することができ、製造時間を短縮することができる。
【0073】
[実施例4]
図10は異径混合ガスハイドレート粒子、ペレットの分解ガス量制御システムの他の実施例の概略構成図である。
本実施例では、二種の異径の大径ガスハイドレートペレット21および小径ガスハイドレートペレット22を混合した、異径混合ガスハイドレートペレット23を貯槽24に貯蔵する。
ガスハイドレートペレット貯槽24のプロセスデータ[貯蔵温度T(K)、貯蔵圧力(MPa)、貯蔵中要求分解速度(s−1)、ガス組成、ペレット密度ρ(kg/m3)、貯蔵容積(m3)、要求ガス貯蔵量(m3)]が設定される。
【0074】
前記ガスハイドレートが自己保存効果を発現する一定の貯蔵条件下(貯蔵圧力P、貯蔵温度T)で貯蔵する場合の分解速度定数Kを実験により決定し、式(1)に基いて、異径混合ガスハイドレートペレット23の分解速度が、分解ガス利用設備26に要求される分解ガス量を満たすように、ガスハイドレートペレット製造プラント25において製造される大径ガスハイドレートペレット21および小径ガスハイドレートペレット22の粒径とそれぞれの構成比を決定する。
【0075】
本実施例によって、実施例3と同様に、分解ガス利用設備26に要求される分解ガス量に応じて、ガスハイドレートペレットの分解量を制御する際に、ガスハイドレートペレット製造プラント25において製造される二種の大径および小径のガスハイドレートペレット21、22を混合することによって、分解ガス利用設備26において要求される分解ガス量に調整し易くなる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、天然ガス、メタン、エタン、二酸化炭素などのガスハイドレートを形成する気体状のハイドレート形成物質と水との包接化合物であるガスハイドレートを貯蔵する際のガスハイドレートの分解ガス制御システムに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】ガスハイドレートペレットの貯蔵温度と分解速度の相関を示す図である。
【図2】球状のガスハイドレート粒子、ペレットの分解反応モデルを示す図である。
【図3】メタンガスハイドレートペレットのガス包蔵率の実測値および推算値を示す図である。
【図4】ガスハイドレートペレットの粒径と分解速度の相関を示す図である。
【図5】ガスハイドレートペレットの比表面積と分解速度の相関を示す図である。
【図6】ガスハイドレートペレットの密度と分解速度の相関を示す図である。
【図7】ガスハイドレート粒子、ペレットの分解ガス量制御システムの一実施例の概略構成図である。
【図8】ガスハイドレート粒子、ペレットの分解ガス量制御システムの他の実施例の概略構成図である。
【図9】異径混合ガスハイドレート粒子、ペレットの分解ガス量制御システムの一実施例の概略構成図である。
【図10】異径混合ガスハイドレート粒子、ペレットの分解ガス量制御システムの他の実施例の概略構成図である。
【図11】ガスハイドレートペレットの密度計測方法(浮力法)を示す図である。
【図12】公知のハイドレートの平衡線図(メタンガスハイドレートの例)である。
【符号の説明】
【0078】
1 ガスハイドレートペレット、 2 氷(分解層)、
11 ガスハイドレートペレット、 12 貯槽、
13 ガスハイドレートペレット製造プラント、
14 分解ガス利用設備、
21 大径ガスハイドレートペレット、22 小径ガスハイドレートペレット、
23 異径混合ガスハイドレートペレット、24 貯槽、
25 ガスハイドレートペレット製造プラント
26 分解ガス利用設備、
31 平衡線
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然ガス、メタン、エタン、二酸化炭素などのガスハイドレートを形成する気体状のハイドレート形成物質と水との包接化合物であるガスハイドレートの分解量制御方法および分解ガス量制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスハイドレートとは、水分子とガス分子からなる氷状の固体結晶であり、水分子が作る立体構造の籠(ケージ)の内部に、ガス分子が取り込まれて形成される包接(クラスレート)水和物(ハイドレート)の総称である。1m3のガスハイドレート中に包蔵できるガス量は165Nm3程度と大量である。そのため、天然ガスをハイドレートとして生成、貯蔵、輸送するシステム(NGHシステム:Natural Gas Hydrate System)が検討されている。
【0003】
大気圧におけるガスハイドレートの貯蔵において、ガスの分解量を極小化するためには、天然ガスハイドレート(Natural Gas Hydrate:NGH)の自己保存性を利用することが鍵となる。
【0004】
図12は公知のハイドレートの平衡線図(メタンハイドレートの例)である。尚、図12において平衡線31の左上領域がハイドレート生成領域であり、平衡線31の右下領域がハイドレート生成領域外である。また、Hはハイドレート(Hydrate)、Gはガス(Gas)、Iはアイス(氷:Ice)、LWはリキッドウォーター(水:Liquid Water)を表す。
【0005】
天然ガスと水とをハイドレート生成反応におけるハイドレート生成領域内となる低温及び高圧(例えばハイドレート平衡条件の高圧且つ低温側となる5MPaで0.1〜3℃程度 図12のA点)の下で反応させると天然ガスハイドレートを生成する。
【0006】
生成した天然ガスハイドレートを等圧で氷点以下(0℃〜−40℃ 図12のB点)に冷却すると凍結する。そして、凍結した天然ガスハイドレートは貯蔵圧力(大気圧0.1MPa近く 図12のC点)まで減圧して貯槽に貯蔵される。
【0007】
通常、貯槽内は、該貯槽内への大気の不用意な浸入を防止する観点から、その貯蔵圧力は大気圧より少し高圧に設定される。この貯槽の前記温度及び圧力は、ハイドレート生成領域外に位置するが、上記氷点下ではガスハイドレートの分解が抑制されて準安定状態にある。この準安定状態をとる現象が自己保存性として知られている。
【0008】
ガスハイドレートは、貯槽への充填率の向上や、輸送及び貯蔵中の安全性、荷役時の扱いの容易性などを図るため、粉体状のガスハイドレート粒子を圧縮成形しペレット状で貯蔵される。通常、ペレットサイズは5mm〜100mm程度である。更に、寸法の異なる2種以上のガスハイドレートペレットを混合して貯蔵することによって、貯蔵施設に貯蔵されるガスハイドレートの充填率を向上させことができる(特許文献1:特開2002−220353号公報)。
【0009】
また、ガスハイドレートを貯蔵する技術については、貯蔵槽の温度を、ガスハイドレートが自己保存性を発現する温度に制御することによりガスハイドレートの分解を抑制し、効率的にガスハイドレートを貯蔵する方法が検討されている(特許文献2:特開2005−201286号公報)。
【0010】
【特許文献1】特開2002−220353号公報
【特許文献2】特開2005−201286号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前記貯蔵槽に貯蔵しているガスハイドレート粒子やガスハイドレートペレットの一部が分解すると、ガス化した気体分子が分解ガスとして生成する。
【0012】
天然ガスをハイドレートとして自己保存性を利用して貯蔵する場合、その採算性、および貯蔵システムの全体計画等から、ハイドレートの分解量は所定の値以下であることが要求される。
【0013】
これまでの研究により、自己保存状態のガスハイドレート粒子、ペレットの安定性は、貯蔵温度領域により変化することが示されている。また、前記安定性は、ガスハイドレート粒子、ペレットの密度や粒径等の性状や、ガスハイドレートの表面の状態によっても大きく異なることが定性的に示されている。
【0014】
しかし、ガスハイドレート粒子、ペレットの性状とガスハイドレートの分解量との相関関係が明確ではなく、ガスハイドレートを貯槽に貯蔵した際に、定量的にガスハイドレートの分解量を推算する手段がなかった。
したがって、ガスハイドレートを貯蔵する際、ガスハイドレートの分解量を要求される所定の値以下に設定することが困難であった。
【0015】
本発明の課題は、ガスハイドレートを貯蔵する際に、要求される分解ガス量に応じて、ガスハイドレートの分解量を制御することができる、ガスハイドレートの分解量制御方法及びガスハイドレートの分解ガス量制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様に係るガスハイドレートの分解量推算方法は、ガスハイドレートが自己保存効果を発現する条件下でガスハイドレートを貯蔵する際のガスハイドレートの分解量制御方法であって、下記の式(1)に基いてガスハイドレートの分解率βを求め、ガスハイドレートの分解量を制御することを特徴とする。
【0017】
【数3】
K :貯蔵圧力、貯蔵温度、ガスハイドレートの密度、及びガス組成に応じて実験によって決まる分解速度定数
r0:ガスハイドレート半径(m)
t :貯蔵時間(s)
【0018】
本発明によれば、自己保存効果を発現する条件下でガスハイドレートが分解して発生する分解ガス量を、(1)式に基いて正確に推算することができるので、ガスハイドレートを貯蔵する際に要求される分解ガス量を満たすように、ガスハイドレートの分解量を制御することができる。
例えば、貯蔵圧力、貯蔵温度、ガスハイドレートの密度、及びガス組成が一定である場合に、ガスハイドレートの粒径(半径r0)を変えることにより、要求される分解ガス量を満たすように設定することができる。
【0019】
分解速度定数Kは貯蔵圧力、貯蔵温度、ガスハイドレートの密度、及びガス組成に応じて実験によって決まる定数であり、異なる貯蔵圧力、貯蔵温度、ガスハイドレートの密度、及びガス組成についてそれぞれ実験で定めて、分解速度定数Kの各データをテーブル化して用意すれば、複数の条件下におけるガスハイドレートの分解量を、その条件に適合した分解速度定数Kを用いることによって推算することができる。
【0020】
また、本発明の第2の態様に係るガスハイドレートの分解ガス制御システムは、要求される分解ガス量を満たすように、分解率βについての下記の式(1)に基いて、自己保存効果を発現する条件下で貯蔵されるガスハイドレートの分解量を制御可能に構成されていることを特徴とする。
【0021】
【数4】
K :貯蔵圧力、貯蔵温度、ガスハイドレートの密度、及びガス組成に応じて実験によって決まる分解速度定数
r0:ガスハイドレート半径(m)
t :貯蔵時間(s)
【0022】
要求される分解ガス量とは、制御の基準となる分解ガス量のことであり、ガスハイドレートを貯蔵する際の採算性や経済性から要求される分解ガス量や、設備等が物理的に要求する分解ガス量である。
【0023】
本発明によれば、自己保存効果を発現する条件下で貯蔵されているガスハイドレートの分解ガス量を正確に推算することができるため、ガスハイドレート貯槽や、分解ガス利用設備に要求される分解ガス量に応じて、ガスハイドレートの分解量を制御することができる。
例えば、貯蔵圧力、貯蔵温度、ガスハイドレート粒子、ペレットの密度、及びガス組成が一定である場合に、ガスハイドレート粒子、ペレットの粒径(半径r0)を変えることによって、ガスハイドレートの分解量を制御することができる。
【0024】
更に、ガスハイドレート粒子、ペレットの性状が決定した後に、前記要求される分解量が変更された場合でも、貯蔵圧力Pおよび貯蔵温度Tに応じた分解速度定数Kを持っていれば、貯蔵圧力Pまたは貯蔵温度Tを変えることによってガスハイドレートの分解量を制御することも可能である。
【0025】
また、本発明の第3の態様に係るガスハイドレートの分解ガス制御システムは、第3の態様において、二種以上の異径のガスハイドレートを混合することで分解ガス量を制御することを特徴とする。
【0026】
本発明によれば、異径のガスハイドレート粒子、ペレットを混合することによって、貯槽への充填率を向上させるとともに、ガスハイドレートの分解量を、分解ガス利用設備において要求される分解ガス量に調整し易くなる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、ガスハイドレートを貯蔵する際に要求される分解ガス量を満たすように、ガスハイドレートの分解量を制御することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明に係るガスハイドレートの分解量制御方法及び分解ガス量制御システムについて説明する。本発明においてハイドレートの種類は特に限定されるものではない。すなわち、ハイドレートを形成するガス状のハイドレート形成物質の種類は、所定の温度、圧力条件でハイドレートを形成するものであればよく、例えば天然ガス(メタンを主成分とし、副成分としてエタン、プロパンなどを含む混合ガス)、メタンガス、エタンガス、二酸化炭素ガス(炭酸ガス)などを挙げることができる。ガスハイドレート粒子、ペレットは自己保存効果を発現した状態で貯蔵する。ガスハイドレートペレットは、通常、5mm〜100mmの範囲で製造するのが実用的である。
【0029】
[ガスハイドレートの分解量制御方法]
(1)ガスハイドレートの分解速度の温度依存性
図1に、メタンガスハイドレートペレット(以下、MGHPと称する)の各貯蔵温度における分解速度をゲスト分子包蔵率αHの減少割合 ΔαH/Δt(s−1)で示す。
ゲスト分子包蔵率αHの定義を下記の式(2)に示す。
【0030】
【数5】
水分子が作る全てのケージにゲスト分子が包摂した場合は、αH=1.0となる。水和数とは、ガス分子に対する水分子数の割合である。本実施例においては、I型構造のガスハイドレートの理論水和数である5.75を値として用いた。
【0031】
MGHPの場合、貯蔵温度268Kでは分解速度が大きいが、貯蔵温度が低くなると分解速度が小さくなり、253Kでは3×10−8s−1まで低下した。貯蔵温度が253Kより低くなると再び分解速度が増加し、210Kで分解速度が最大となるが、それより低い温度では分解速度が減少し、168Kで分解速度は0になった。MGHPの自己保存性は、226K〜268Kの限られた温度範囲で発現し、この温度範囲内では253K付近で最も安定性が高いことが確認された。
【0032】
メタンを主成分とし、エタン、プロパンを含む混合ガスハイドレートペレット(以下、混合GHPと称する)の場合も、計測範囲内では、分解速度は253Kで最も低い値を示している。また混合GHP分解速度の温度依存性は、組成、濃度によらずMGHPと同様の傾向を示す。
【0033】
(2)ガスハイドレート粒子、ペレットの分解率の推算式
次に、走査型共焦点顕微鏡を用いてハイドレートペレットの表面状態を観察したところ、自己保存性を最も強く示す温度である253Kまで昇温した試料の表面は、全体が光沢を帯びた膜状に覆われている様子が観察された。
【0034】
図2は球状のガスハイドレート粒子、ペレットの分解反応モデルである。
記号の意味を以下に示す。
r :ハイドレート粒子、ペレット半径(m)
V :ハイドレート粒子、ペレット体積(m3)
x :分解したハイドレート層の厚さ(m)
添字の0は初期の状態を示す。
前記球状のガスハイドレート粒子、ペレットの分解反応モデルを用いて、MGHPが温度範囲226K〜268K、特に253K付近での自己保存状態におけるガスハイドレートペレットの分解量を推算する。
【0035】
ガスハイドレートペレット1の分解過程では、分解により生成した氷2がガスハイドレートペレット1の表面から内部に向かって成長するものと仮定する。氷が多孔質のものであれば、分解により生成したガスは氷層を速やかに通過できるが、緻密な膜状の氷の場合は簡単に通過できずに氷層中を拡散しなければならない。
【0036】
そこで、分解速度が非常に小さい253K付近のガスハイドレートペレット1表面で観察された、該表面全体が光沢を帯びた膜状に覆われている様子は、緻密な膜状の氷2が生成している状態であると仮定し、ガスハイドレートペレットの分解速度式に、拡散律速・界面減少型反応速度式(Janderの式)を適用する。この点が本発明の特徴である。
【0037】
ガスハイドレートペレット1の分解率βと分解層である氷2の厚さxの関係は次式により得られる。tは時間(s)を表す。
球状のガスハイドレートペレット1が分解し、分解層の厚さxとなったときの体積Vは(3)式によって表せる。
【0038】
【数6】
球状のガスハイドレートペレット1が分解し、分解層の厚さxとなったときの分解率βを用いて体積Vを表すと、以下の(4)式になる。
【0039】
【数7】
上記(3)式と(4)式から、分解層の厚さxは(5)式で表せる。
【0040】
【数8】
また、前記拡散律速の仮定より、分解ガスが分解層中を拡散するのに要する時間は、分解層の厚さが増すほど増大するので、分解層の成長速度はその厚さに反比例するものとする。分解速度dx/dtは以下のように表せる。
【0041】
【数9】
t=0でx=0という初期条件を使って(6)式を積分すると、(7)式が得られる。
【0042】
【数10】
(5)式と(7)式から(8)式が得られる。
【0043】
【数11】
(8)式から分解率βは、下記の(1)式となる。
【0044】
【数12】
ゲスト分子包蔵率αHは(9)式によって求められる。
【0045】
【数13】
【0046】
(3)分解速度定数K
分解速度定数Kは、ガスハイドレートペレットの性状であるペレット密度(ρ)およびガス組成と、貯蔵条件である貯蔵圧力(P)および貯蔵温度(T)に応じて決まる定数である。貯槽に貯蔵される一定性状のガスハイドレートペレットについて、該ガスハイドレートペレットが自己保存効果を発現する、一定貯蔵条件下で貯蔵したときの分解率を測定することによって、該ガスハイドレートペレットの分解速度定数Kが求められる。
【0047】
一例として、1気圧、253Kにおける、ペレット密度が880〜914kg/m3であるメタンガスハイドレートペレット(MGHP)を挙げると、分解速度定数Kは、実験結果より、1×10−16m2/s〜1×10−14m2/sである。より好ましい範囲としてK=3.5×10−15m2/s±2.5×10−15m2/sを用いて分解量を推算する。
【0048】
上記分解速度定数Kを用いて、(1)式によって分解率βを求め、(9)式によって求めたMGHPのゲスト分子包蔵率(%)の推算結果と、実験による実際のゲスト分子包蔵率(%)の測定結果との比較を図3に示す。尚、図3におけるゲスト分子包蔵率は、前述において定義したαHに100を乗じて百分率で表したものである。
推算値は400時間以上経過後まで実験結果と良く一致しており、推算式(1)によってガスハイドレートの分解率求められ、該ガスハイドレートの分解量が推算可能といえる。
【0049】
(4)分解速度とガスハイドレートペレットの粒径
2週間ガスハイドレートペレットを貯蔵する際に要求される分解速度が、1気圧、253Kにおいて、2×10−8s−1であった。
貯蔵するガスハイドレートペレットの密度が880kg/m3であるときの分解速度定数K=3.5×10−15m2/sを用いて、(1)式に基いて2週間の分解速度を計算した結果を図4に示す。図4より、分解速度が2×10−8s−1以下となるガスハイドレートペレットの粒径は、10mm以上、望ましくは20mm以上とすることができる。
【0050】
(5)分解速度とガスハイドレートペレットの比表面積
ペレットがポーラスな場合には、必要な分解速度以下にするために、ペレットの比表面積を制御することが有効である。図5に、(1)式において分解速度定数Kを3.5×10−15m2/sとしたときの分解速度とガスハイドレートペレットの比表面積との関係を示す。
ガスハイドレートペレットの比表面積は以下の方法で求めることができる。
【0051】
MGHPの密度ρを浮力法により計測した。図11に計測方法を示す。測定は253Kの低温室内で行い、溶媒はイソオクタンを用いた。イソオクタンの253Kにおける密度は、724.3kg/m3とした。メッシュ容器はステンレス製の目開き0.5mmのメッシュ容器を用いた。表1に253KにおけるMGHPの密度の計測結果を示す。
【0052】
【表1】
比表面積は以下の式で表せる。
【0053】
【数14】
得られた密度より、(10)式から比表面積が求められる。
要求された分解速度が1×10−7(s−1)である場合、図5より、ガスハイドレートペレットの比表面積を2.5m2/kg以下、望ましくは2.0m2/kg以下とすることができる。
【0054】
(6)分解速度と密度
図6は、粒径13mmのガスハイドレートペレットの密度と分解速度の関係を示す図である。
密度を800kg/m3以上、望ましくは850kg/m3以上とすることにより、0.002/day(2×10−8s−1)以下の分解速度とすることができる。
【0055】
(7)二種以上の異径のガスハイドレート粒子、ペレットを混合した場合の分解速度
二種以上の異径のガスハイドレート粒子、ペレットを混合した場合、その混合したガスハイドレート粒子、ペレット全体の分解速度は、それぞれの粒径の分解率βを(1)式により計算して、混合したガスハイドレート粒子、ペレット全体に対する重量分率を乗じた値を合算することによって求めることができる。分解速度ΔαH/Δtは、(9)式によっりαHを求め、以下の(11)式により求めることができる。添字のt1、t2はそれぞれ貯蔵時間の状態を示す。
【0056】
【数15】
【0057】
(8)ブロードな粒径分布を持つガスハイドレート粒子、ペレット混合物の場合
ブロードな粒径分布を持つガスハイドレート粒子、ペレット混合物の場合、全体の分解率βは、粒径の範囲を、最小値と最大値が2倍程度以下となるように複数分割して、それぞれの平均粒径で分解率βを(1)式により計算する。これに分割した範囲ごとに全体に対する重量分率を乗じた値を合算することによって、全体の分解率βを求めることができる。
分解速度ΔαH/Δtは、(9)式によりαHを求め、(11)式により求めることができる。
【0058】
また、上記はガスハイドレート粒子、ペレットを球状のモデルで仮定した場合の計算であるが、実際のガスハイドレート粒子、ペレットは、球形以外にも、円筒形、レンズ形、ピロー形、アーモンド形等、すべての形状のペレットや不定形の粒子にも適用が可能である。これらの粒子の半径r0は、外径の2分の1を用いることができる。外径に長径と短径がある場合、長径と短径の平均を外径として用いることが望ましい。
【0059】
[実施例1]
図7はガスハイドレート粒子、ペレットの分解ガス量制御システムの一実施例の概略構成図である。以下、本実施例および後述する実施例において、ガスハイドレートペレットを例に説明するが、ガスハイドレート粒子についても同様である。
ガスハイドレートペレット貯槽12のプロセスデータ[貯蔵温度T(K)、貯蔵圧力(MPa)、貯蔵中要求分解速度(s−1)、ガス組成、ペレット密度ρ(kg/m3)、貯蔵容積(m3)、要求ガス貯蔵量(m3)]が設定される。
【0060】
前記ガスハイドレートペレットが自己保存効果を発現する一定の貯蔵条件下(貯蔵圧力P、貯蔵温度T)で貯蔵する場合の分解速度定数Kを実験により決定し、式(1)よって求められた分解率βが、貯槽12に要求される分解ガス量を満たす値となるように、ガスハイドレートペレット製造プラント13において製造されるガスハイドレートペレット11の粒径を設定する。
【0061】
ガスハイドレートペレット製造プラント13と貯槽12は隣接している場合もあるが、貯槽には陸上貯槽、海上(船上)貯槽、遠隔地の貯槽等、離れて設置される場合もある。後述する実施例についても同様である。
【0062】
次に、本実施例の作用を説明する。
自己保存効果を発現する条件下で貯蔵されているガスハイドレートペレットの分解ガス量を正確に推算することができるため、貯槽12に要求される分解ガス量に応じて、ガスハイドレートペレットの分解量を制御することができる。
例えば、貯蔵圧力P、貯蔵温度T、ガスハイドレートペレット11の密度ρ、及びガス組成が一定である場合に、ガスハイドレートペレット11の粒径(半径r0)を変えることによって、ガスハイドレートペレット11の分解量を制御することができる。
【0063】
本実施例では、貯槽12に要求される分解ガス量に応じて、ガスハイドレートペレット製造プラント13において製造されるガスハイドレートペレット11の粒径を設定することができるが、前記プロセスデータとして、ガスハイドレートペレット11の粒径2r0を設定し、ガスハイドレートペレット11のペレット密度ρによって分解ガス量を制御することもできる。
【0064】
また、前記分解速度定数Kは貯蔵圧力、貯蔵温度、ガスハイドレートペレットの密度、及びガス組成に応じて実験によって決まる定数であり、貯蔵圧力、貯蔵温度、ガスハイドレートペレットの密度、及びガス組成について実験で定めた分解速度定数Kの各データを、テーブル化して持っていれば、複数の条件下におけるガスハイドレートペレットの分解量を推算することができる。
【0065】
したがって、ガスハイドレートペレット11の性状が決定した後に、前記要求される分解量が変更された場合でも、貯蔵圧力Pおよび貯蔵温度Tに応じた分解速度定数Kを持っているので、貯蔵圧力Pまたは貯蔵温度Tを変えることによってガスハイドレートペレット11の分解量を制御することも可能である。
【0066】
[実施例2]
図8はガスハイドレート粒子、ペレットの分解ガス量制御システムの他の実施例の概略構成図である。
ガスハイドレートペレット貯槽12のプロセスデータ[貯蔵温度T(K)、貯蔵圧力(MPa)、貯蔵中要求分解速度(s−1)、ガス組成、ペレット密度ρ(kg/m3)、貯蔵容積(m3)、要求ガス貯蔵量(m3)]が設定される。
【0067】
前記ガスハイドレートペレットが自己保存効果を発現する一定の貯蔵条件下(貯蔵圧力P、貯蔵温度T)で貯蔵する場合の分解速度定数Kを実験により決定し、式(1)よって求められた分解率βが、分解ガス利用設備14に要求される分解ガス量を満たす値となるように、ガスハイドレートペレット製造プラント13において製造されるガスハイドレートペレット11の粒径を設定する。
本実施例によって、実施例1と同様に、分解ガス利用設備14に要求される分解ガス量に応じて、ガスハイドレートペレットの分解量を制御することができる。
【0068】
[実施例3]
図9は異径混合ガスハイドレート粒子、ペレットの分解ガス量制御システムの一実施例の概略構成図である。以下、ガスハイドレートペレットを例に説明するが、ガスハイドレート粒子についても同様である。
本実施例では、二種の異径の大径ガスハイドレートペレット21および小径ガスハイドレートペレット22を混合した、異径混合ガスハイドレートペレット23を貯槽24に貯蔵する。
ガスハイドレートペレット貯槽24のプロセスデータ[貯蔵温度T(K)、貯蔵圧力(MPa)、貯蔵中要求分解速度(s−1)、ガス組成、ペレット密度ρ(kg/m3)、貯蔵容積(m3)、要求ガス貯蔵量(m3)]が設定される。
【0069】
前記ガスハイドレートが自己保存効果を発現する一定の貯蔵条件下(貯蔵圧力P、貯蔵温度T)で貯蔵する場合の分解速度定数Kを実験により決定し、式(1)に基いて、異径混合ガスハイドレートペレット23の分解速度が、貯槽24に要求される分解ガス量を満たすように、大径ガスハイドレートペレット21および小径ガスハイドレートペレット22の粒径とそれぞれの構成比を決定する。
これに従って、ガスハイドレート製造プラント25で、大径ガスハイドレートペレット21および小径ガスハイドレートペレット22をそれぞれの構成比で製造する。
【0070】
次に、本実施例の作用を説明する。
本実施例によれば、(1)式によってガスハイドレートペレットの分解ガス量を正確に推算し、貯槽24に要求される分解ガス量に応じて、ガスハイドレートペレットの分解量を制御する際に、ガスハイドレートペレット製造プラント25において製造される二種の大径および小径のガスハイドレートペレット21、22を混合することによって、貯槽24において要求される分解ガス量に調整し易くなる。
前記分解速度定数Kは、実験によって得られた値をテーブル化して利用することができる。
【0071】
二種以上の異径のガスハイドレートペレットを組み合わせることにより、分解量の細かい調整がし易くなり、同時に貯槽24へのガスハイドレートペレットの充填率も向上することができる。
【0072】
また、ガスハイドレートペレットの粒径および構成比を速やかに設定できるため、効率よく大径ガスハイドレートペレット21および小径ガスハイドレートペレット22をガスハイドレートペレット製造プラント25において製造することができ、製造時間を短縮することができる。
【0073】
[実施例4]
図10は異径混合ガスハイドレート粒子、ペレットの分解ガス量制御システムの他の実施例の概略構成図である。
本実施例では、二種の異径の大径ガスハイドレートペレット21および小径ガスハイドレートペレット22を混合した、異径混合ガスハイドレートペレット23を貯槽24に貯蔵する。
ガスハイドレートペレット貯槽24のプロセスデータ[貯蔵温度T(K)、貯蔵圧力(MPa)、貯蔵中要求分解速度(s−1)、ガス組成、ペレット密度ρ(kg/m3)、貯蔵容積(m3)、要求ガス貯蔵量(m3)]が設定される。
【0074】
前記ガスハイドレートが自己保存効果を発現する一定の貯蔵条件下(貯蔵圧力P、貯蔵温度T)で貯蔵する場合の分解速度定数Kを実験により決定し、式(1)に基いて、異径混合ガスハイドレートペレット23の分解速度が、分解ガス利用設備26に要求される分解ガス量を満たすように、ガスハイドレートペレット製造プラント25において製造される大径ガスハイドレートペレット21および小径ガスハイドレートペレット22の粒径とそれぞれの構成比を決定する。
【0075】
本実施例によって、実施例3と同様に、分解ガス利用設備26に要求される分解ガス量に応じて、ガスハイドレートペレットの分解量を制御する際に、ガスハイドレートペレット製造プラント25において製造される二種の大径および小径のガスハイドレートペレット21、22を混合することによって、分解ガス利用設備26において要求される分解ガス量に調整し易くなる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、天然ガス、メタン、エタン、二酸化炭素などのガスハイドレートを形成する気体状のハイドレート形成物質と水との包接化合物であるガスハイドレートを貯蔵する際のガスハイドレートの分解ガス制御システムに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】ガスハイドレートペレットの貯蔵温度と分解速度の相関を示す図である。
【図2】球状のガスハイドレート粒子、ペレットの分解反応モデルを示す図である。
【図3】メタンガスハイドレートペレットのガス包蔵率の実測値および推算値を示す図である。
【図4】ガスハイドレートペレットの粒径と分解速度の相関を示す図である。
【図5】ガスハイドレートペレットの比表面積と分解速度の相関を示す図である。
【図6】ガスハイドレートペレットの密度と分解速度の相関を示す図である。
【図7】ガスハイドレート粒子、ペレットの分解ガス量制御システムの一実施例の概略構成図である。
【図8】ガスハイドレート粒子、ペレットの分解ガス量制御システムの他の実施例の概略構成図である。
【図9】異径混合ガスハイドレート粒子、ペレットの分解ガス量制御システムの一実施例の概略構成図である。
【図10】異径混合ガスハイドレート粒子、ペレットの分解ガス量制御システムの他の実施例の概略構成図である。
【図11】ガスハイドレートペレットの密度計測方法(浮力法)を示す図である。
【図12】公知のハイドレートの平衡線図(メタンガスハイドレートの例)である。
【符号の説明】
【0078】
1 ガスハイドレートペレット、 2 氷(分解層)、
11 ガスハイドレートペレット、 12 貯槽、
13 ガスハイドレートペレット製造プラント、
14 分解ガス利用設備、
21 大径ガスハイドレートペレット、22 小径ガスハイドレートペレット、
23 異径混合ガスハイドレートペレット、24 貯槽、
25 ガスハイドレートペレット製造プラント
26 分解ガス利用設備、
31 平衡線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスハイドレートが自己保存効果を発現する条件下でガスハイドレートを貯蔵する際のガスハイドレートの分解量制御方法であって、
下記の式(1)に基いてガスハイドレートの分解率βを求め、ガスハイドレートの分解量を制御することを特徴とする、ガスハイドレートの分解量制御方法。
【数1】
K :貯蔵圧力、貯蔵温度、ガスハイドレートの密度、及びガス組成に応じて実験によって決まる分解速度定数
r0:ガスハイドレート半径(m)
t :貯蔵時間(s)
【請求項2】
要求される分解ガス量を満たすように、分解率βについての下記の式(1)に基いて、自己保存効果を発現する条件下で貯蔵されるガスハイドレートの分解量を制御可能に構成されていることを特徴とする、ガスハイドレートの分解ガス量制御システム。
【数2】
K :貯蔵圧力、貯蔵温度、ガスハイドレートの密度、及びガス組成に応じて実験によって決まる分解速度定数
r0:ガスハイドレート半径(m)
t :貯蔵時間(s)
【請求項3】
請求項2において、二種以上の異径のガスハイドレートを混合することで分解ガス量を制御することを特徴とする、ガスハイドレートの分解ガス量制御システム。
【請求項1】
ガスハイドレートが自己保存効果を発現する条件下でガスハイドレートを貯蔵する際のガスハイドレートの分解量制御方法であって、
下記の式(1)に基いてガスハイドレートの分解率βを求め、ガスハイドレートの分解量を制御することを特徴とする、ガスハイドレートの分解量制御方法。
【数1】
K :貯蔵圧力、貯蔵温度、ガスハイドレートの密度、及びガス組成に応じて実験によって決まる分解速度定数
r0:ガスハイドレート半径(m)
t :貯蔵時間(s)
【請求項2】
要求される分解ガス量を満たすように、分解率βについての下記の式(1)に基いて、自己保存効果を発現する条件下で貯蔵されるガスハイドレートの分解量を制御可能に構成されていることを特徴とする、ガスハイドレートの分解ガス量制御システム。
【数2】
K :貯蔵圧力、貯蔵温度、ガスハイドレートの密度、及びガス組成に応じて実験によって決まる分解速度定数
r0:ガスハイドレート半径(m)
t :貯蔵時間(s)
【請求項3】
請求項2において、二種以上の異径のガスハイドレートを混合することで分解ガス量を制御することを特徴とする、ガスハイドレートの分解ガス量制御システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−231054(P2007−231054A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−51350(P2006−51350)
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】
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