説明

ガスホルダー

【課題】ホルダー内部の点検・補修作業を容易に行うことが可能なピストンサポート構造を有するガスホルダーを提供すること。
【解決手段】ピストン11と底板12とが略同一形状を有するガスホルダー10が提供される。このガスホルダー10は、ピストン11と底板12との間に起立配置されて、ピストン11を底板12から離隔した位置に支持する複数のピストンサポート20を備え、ピストンサポート20は、ピストン11に対して傾倒可能に連結された可倒式構造を有する。このようにピストンサポート20を可倒式構造としてピストン11に常設することで、従来のような煩雑な着脱作業が不要であるので、ホルダー内部の点検・補修作業を容易に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスホルダーに関し、特に、ガスホルダー内部の点検・補修を容易に行うためのピストンサポート構造を有するガスホルダーに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスホルダーは、その内部にガスを貯留する装置であり、ガスの需要と供給の変動(アンバランス)量をピストンの上下動により時間的に吸収することができる。ガスホルダーとしては、図9に示すように、ピストン1と底板2とが同一形状を有しており、ピストン1の着底時にピストン1と底板2とがほぼ隙間無く接触するタイプのガスホルダー(例えば「ウィギンス型ガスホルダー」)が知られている。このガスホルダーにおいて、ピストン1は、側板3と屋根4とで囲まれた空間内を、ガス貯留量に応じて昇降自在である。
【0003】
このタイプのガスホルダーでは、図9(b)に示すように、ピストン1の着底時に底板2との間に隙間が無いことから、図9(c)に示すように、ガスホルダー内部の点検・補修を実施する際には、その都度、ピストン1と底板2との間に複数のピストンサポート5を取り付けて、ピストン1の荷重をピストンサポート5を介して底板2で支持して、作業スペースを確保する必要がある。このピストンサポート5の取り付け作業は、作業員がピストン1の上部に載り、仕切フランジ6を取り外した後に、ピストン1の上側から底板2との間にピストンサポート5を挿入して、ピストン1にピストンサポート5を取り付けるといった手順で行っていた。
【0004】
一方、特許文献1、2に記載の浮屋根式原油タンクと同様に、ピストンサポート5を取り付けたままでガスホルダーを運転すると、ホルダー内でピストン1が昇降できるストローク長がピストンサポート5の長さ分だけ短くなるので、ガスホルダーの有効容量が減少するという問題があるとともに、流入ガスが無い時に払出ブロワーによる吸引によってガス貯留空間が負圧となり、他タイプのホルダーと比べて薄く低強度のピストン1を破損する恐れがあるという問題がある。従って、上記点検・補修作業の完了後にホルダーを運転開始する時には、その都度、全てのピストンサポート5を取り外す必要がある。
【0005】
【特許文献1】特開昭63−82981号公報
【特許文献2】特開昭10−17078号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来のピストンサポート構造では、ガスホルダー停止時(点検・補修作業時)に、その都度、ピストンサポート5の取り付け・取り外し作業を行う必要があり、当該作業に多くの労力と作業時間がかかるという問題があった。特に、大型ホルダーでは、ピストン支持機能を確保するため、重量が重いピストンサポート5を多数設置する必要があり、また、ホルダー内部での作業性を改善するため、ピストンサポート5によるサポート長が長くなる傾向にある。よって、ピストンサポート5の脱着作業は、更に多くの労力と作業時間を要する傾向にある。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、ホルダー内部の点検・補修作業を容易に行うことが可能な、新規かつ改良されたピストンサポート構造を有するガスホルダーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、ピストンと底板とが略同一形状を有するガスホルダーにおいて、ピストンと底板との間に起立配置されて、ピストンを底板から離隔した位置に支持する複数のピストンサポートを備え、ピストンサポートは、ピストンに対して傾倒可能に連結された可倒式構造を有することを特徴とする、ガスホルダーが提供される。
【0009】
かかる構成により、可倒式構造のピストンサポートを、ピストンに対して傾倒可能に連結して、ピストンに常設する。これにより、ガスホルダーの通常運転時には、可倒式構造のピストンサポートの少なくとも一部を傾倒させることができる。このため、ホルダー内でピストンが昇降できるストローク長が制限されないので、ピストンサポートを取り付けない場合と同様にガスホルダーの有効容量を確保できる。さらに、ガスホルダー内部の点検・補修時には、上記可倒式構造のピストンサポートを起立させて、ピストンと底板との間でピストンの荷重を支持することができる。これにより、ピストンに取り付けられたピストンサポート起立させるだけで、ピストンサポートを容易かつ迅速に設置でき、点検・補修作業を容易に実行できる。
【0010】
また、ピストンサポートは、ピストンに固定される固定部と、固定部にヒンジ結合される可倒部と、からなるようにしてもよい。これにより、ピストンサポートは固定部でピストンに固定され、この固定部にヒンジ結合された可倒部は、固定部に対して傾動できる。よって、上記可倒式構造のピストンサポートを好適に実現できる。
【0011】
また、ピストンサポートは、ピストンを貫通して配される管材で構成され、ピストンサポートの管内には、固定部と可倒部を連結する棒材を取り付け可能であるようにしてもよい。このように、ピストンサポートの管内に、固定部と可倒部を連結する棒材を取り付けることで、固定部に対して可倒部が傾動しないように固定できる。よって、傾倒可能なピストンサポートの起立状態を、棒材により安定して維持できる。
【0012】
また、一端がピストンサポートに結合され、他端がピストンを貫通してピストンの上側に配されて、傾倒した状態のピストンサポートを吊持可能な線材をさらに備えるようにしてもよい。これにより、ピストン上から線材を引っ張ることで、ピストンサポートを傾倒させることができ、さらに、傾倒したピストンサポートを線材により吊持して、傾倒状態を維持できる。
【0013】
また、ピストンには、傾倒したピストンサポートの少なくとも一部を収容する収容部が陥没形成されているようにしてもよい。これにより、傾倒されたピストンサポートの少なくとも一部は、ピストンに陥没形成された収容部に収容されるため、ピストン下面よりも下方に突出することがない。よって、ピストン着底時に、ピストンと底板との間で、ピストンサポートの傾倒部分が邪魔にならないので、ピストンと底板とが密接できる。
【0014】
また、底板には、傾倒したピストンサポートの少なくとも一部を収容する収容部が陥没形成されているようにしてもよい。これにより、ピストン着底時には、傾倒されたピストンサポートの少なくとも一部は、底板に陥没形成された収容部に収容される。このため、ピストンと底板との間で、ピストンサポートの傾倒部分が邪魔にならないので、ピストンと底板とが密接できる。
【0015】
また、ガスホルダー内のガス圧を検出するガス圧検出手段と、ガス圧検出手段により検出されるガス圧が所定の基準圧力以下になったときに、ガスホルダーからのガス流出を遮断する制御手段と、をさらに備えるようにしてもよい。これにより、ガス圧検出手段により、ガスホルダー内のガス圧が所定の基準圧力以下になったことを検出したときに、制御手段により、ガスホルダーからのガス流出を遮断する。このため、ガスホルダー内のガス圧が負圧になることを防止できるので、着底したピストンと底板との間に隙間があることに起因して、負圧によりピストンが破損することを防止できる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように本発明によれば、ピストンサポートを可倒式構造とすることで、従来のような煩雑な着脱作業が不要であるので、ホルダー内部の点検・補修作業を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0018】
まず、図1A〜Cを参照して、本発明の一実施形態にかかるガスホルダー10の全体構成について説明する。図1A〜Cは、本実施形態にかかるガスホルダー10の全体構成を、運転時、停止時、内部点検時ごとにそれぞれ示す模式図である。なお、図1A及び図1Bでは、本実施形態にかかる特徴である可倒式のピストンサポート20が傾倒された状態であるため、その図示を省略してある。
【0019】
図1に示すように、本実施形態にかかるガスホルダー10は、ホルダー内に昇降自在に配設される円形ドーム状のピストン11と、ホルダー底部に設置される円形ドーム状の底板12と、ホルダー側面を取り囲むように起立配置された円筒形の側板13と、ホルダー上部を覆う円形ドーム状の屋根14とを主に備える。
【0020】
このガスホルダー10は、全体として略円筒形状を有する乾式ガスホルダーであって、ピストン11と底板12とが略同一形状を有し、前記ピストン11が側板13にゴムシール機構16を介して連結されたタイプのガスホルダー(「ウィギンス型ガスホルダー」ともいう。)である。かかるガスホルダー10は、例えば、高さ数十m、直径数十m(例えば)の大型の貯蔵設備であり、その内部に、例えば、転炉ガス(LDG)、高炉ガス(BFG)、コークス炉ガス(COG)、天然ガス、石炭ガスなどといった各種のガスを貯蔵(例えば貯蔵量:7万m)できる。なお、以下では、ガスホルダー10に転炉ガス(例えば、COガス:約70%、残部:Nガス及びCOガス)を貯蔵する例について説明する。
【0021】
ピストン11は、その外周がホルダー直径より若干小さい径の略円形であり、その中心部が最高点に位置するような円形ドーム形状を有する。このピストン11は、板厚が例えば4.5mm程度の比較的薄い鋼板等で製造されており、その強度を補強するための梁材等の構造補強材は取り付けられていない。このため、ピストン11の板厚により、ピストン11の質量が定まり、この結果、ピストン11の下部に貯蔵されるガス圧が決定する。かかるピストン11は、その下部側に貯蔵されるガス量に応じて、ホルダー内を昇降自在である(図1A参照)。
【0022】
底板12は、例えば、コンクリート等を打設して製造された基台の上面に、鋼板等をドーム状に貼り合わせた構造である。この底板12とピストン11とは、略同一の円形ドーム形状を有しており、また、上記のようにピストン11には構造補強材が設置されていない。従って、ガスホルダー10が停止してピストン11が着底したときには、ピストン11と底板12とは、ほぼ隙間無く接触する(図1B参照)。このように両者間に隙間がないことで、ホルダー内へのガス流入がない場合であっても、ピストン11と底板12との間が負圧になりにくいので、薄い板状のピストン11が変形して破損することを防止できる。
【0023】
側板13及び屋根14は、例えば、複数の鋼板等を溶接等により気密に接合して構築される。また、屋根14の中心部には換気口15が設けられており、さらに、側板13には、不図示の複数のシェルベント(小さな換気窓)が配置されている。ピストン11が上昇したときには、ゴムシール機構16のシールゴム(アウターシール161)がガス圧力により側板13に押し付けられるため、上記シェルベントにより、側板13と当該シールゴムとの間の空気を円滑に抜くことができるようになっている。なお、屋根14の形状は、図示のドーム形状の例に限定されず、例えば、平坦な円板形状または円錐形状などであってもよい。
【0024】
また、ピストン11は、ゴムシール機構16を介して側板13に昇降自在に連結されている。このゴムシール機構16は、例えば、アウタシール161を介して側板13に対して昇降自在に配設されたTフェンダ162と、インナシール163を介してTフェンダ162に対して昇降自在に配設され、ピストン11の外縁を支持する支持具164と、ホルダー内の底部外縁に側板13に沿って配設されるTフェンダ架台165と、から構成される。アウタシール161及びインナシール163は、弾性変形可能なゴムシールで形成されており、これにより、側板13とTフェンダ162との間、及び、Tフェンダ162と支持部164との間をシールできる。
【0025】
かかるゴムシール機構16によりピストン11と側板13とをシールすることで、ピストン11下部の貯留空間に貯留されたガスが、ピストン11と側板13との間から、ピストン11の上部空間に漏れることを防止できる。また、かかるゴムシール機構16を用いることにより、上記のようにピストン11の構造を支持するための構造補強部材が設置不要となるため、ピストン11と底板12を略同一形状の簡易な構造にできるとともに、ピストン11がシール機構上の制約を受けることなくホルダー底部まで到達できる。従って、ピストン11の着底時に、ピストン11と底板12とがほぼ隙間無く接触できるようになる。
【0026】
また、側板13の下部には、ガスホルダー10内にガスを流入/流出するためのガス流出入口17が設けられている。このガス流出入口17、ホルダー出入口弁18及び配管を介して、外部のブロワー19によって、ガスホルダー10内にガスが流出入される。なお、本実施形態では、ガスホルダー10にガス流出入口17を1つだけ設置しているが、かかる例に限定されず、ガス流入口とガス流出口とを別々に設置してもよい。
【0027】
以上のような構造のガスホルダー10において、ピストン11の内面(即ち、下面)及び底板12の点検・補修作業を行う場合には、図1Cに示すようにピストン11と底板12との間に複数のピストンサポート20を起立配置して、ピストンサポート20によりピストン11の荷重を支持することで、ピストン11の下方に作業スペースを確保する必要がある。このように、ピストンサポート20は、ピストン11と底板12との間に起立配置されて、ピストン11を支持する棒状の支持部材である。
【0028】
ここで、図2を参照して、ピストンサポート20の配置例について説明する。図2は、本実施形態にかかるピストン11におけるピストンサポート20の配置例を示す(a)平面図及び(b)側面図である。
【0029】
図2(a)に示すように、複数のピストンサポート20が、平面円形のピストン11の中心点を中心とした各同心円上に、周方向に沿って等間隔で配設されている。また、図2(b)に示すように、複数のピストンサポート20は、ピストン11の径方向にも、ほぼ等間隔で配設されている。これにより、ピストン11と底板12との間に複数のピストンサポート20を略均等に配置して、バランス良くピストン11を支持できる。図2の例では、例えば、直径約54.8mのピストン11に対して、205本もの多数のピストンサポート20が略均等な間隔で配置されている。
【0030】
ところで、図9に示したように、従来のピストンサポート5は、ホルダー内の点検・補修作業時にその都度、着脱されるものであった。これに対して、本実施形態にかかるピストンサポート20は、以下に詳述するように、ピストン11に対して傾倒可能に連結された備え付けタイプであり、ピストン11下面位置で折り曲げることが可能な可倒式構造を有することを特徴としている。
【0031】
次に、図3及び図4を参照して、本実施形態にかかるピストンサポート20の構成について詳細に説明する。図3は、本実施形態にかかるピストンサポート20の構造を示す分解斜視図であり、図4は、本実施形態にかかるピストンサポート20の構造を示す縦断面図である。
【0032】
図3及び図4に示すように、このピストンサポート20は、全体としては、例えば、中空の管形状を有しており、例えば鋼管などの管材で構成される。ピストンサポート20の寸法は、例えば、直径約80mm、長さ2000mm、質量は例えば約23kg/本である。また、ピストンサポート20の材質は、例えば、ステンレス鋼等の金属製であり、ピストン11を支持するために十分な強度を有している。なお、図示の例のピストンサポート20は、強度面と製造の容易さの観点から、例えば、円形の横断面形状を有する鋼管で構成されているが、かかる例に限定されず、四角、多角形、楕円など任意の横断面形状であってもよい。
【0033】
ピストンサポート20は、大別すると、ピストン11に固定される固定部21と、この固定部21の下部側に結合される可倒部22と、固定部21と可倒部22とをヒンジ結合するヒンジ部23と、から構成されている。かかる構成により、ピストンサポート20は、ヒンジ部23のヒンジ軸を中心として、固定部21に対して可倒部22を傾動可能な可倒式構造となっている。このように、ピストンサポート20は、従来では一体構成されていた管材を固定部21と可倒部22とに分離構成し、この固定部21と可倒部22とをヒンジ部23によりヒンジ結合することで、ピストン11の下面側で、可倒部22を一方向に折り曲げることが可能である。
【0034】
かかるピストンサポート20の固定部21と可倒部22は、同一の外径及び内径を有する管材で構成されており、ピストン11に取り付けられる固定部21の長さは例えば200mmで、ピストン11下方に露出される可倒部22の長さは例えば1800mmであり、可倒部22が固定部21よりも数倍以上長い。ピストンサポート20が起立状態にあるときには、これらの固定部21と可倒部22は同一軸線上に配置され、ピストン11の荷重を鉛直方向に伝達する支持部材として機能する。なお、図4に示すように、可倒部22の下端面22bは、底板12に当接される部分であるので、この当接位置の底板12の形状に応じた傾斜面となっている。
【0035】
また、固定部21の上端には、固定部21の下部側及び可倒部22よりも大きい径の固定部フランジ24が設けられている。この固定部フランジ24の上面には、例えば円板状の仕切フランジ30が、ボルト31等の固定部材により着脱可能に取り付けられる。図示の例では、例えば4本のボルト31が、仕切フランジ30の貫通孔30aを貫通して、固定部フランジ24のボルト孔24aに螺合することで、仕切フランジ30が固定部フランジ24に固定されるようになっている。かかる仕切フランジ30を固定部フランジ24に取り付けることにより、ピストンサポート20内の中空空間の上端を遮蔽し、ピストン11下方にあるガスがピストンサポート20の内部を通ってピストン11上方に漏れること防止できる。なお、図示の例では、仕切フランジ30と固定部フランジ24とを同一の外径としているが、これらの大小は任意である。
【0036】
また、ピストンサポート20の管内(中空空間)における例えばヒンジ部23とは他側の内面には、固定部21から可倒部22にかけて挿通される棒材40を取り付け可能となっている。この棒材40は、ピストンサポート20内に挿抜可能な太さの例えば円形断面の棒鋼等で構成され、固定部21に対する可倒部22の傾動を不能にするための固定具として機能する。さらに、この棒材40をピストンサポート20内の所定位置に安定して取り付けるために、固定部21の貫通孔21aの内面には、棒材40を挿通可能な管状の第1挿通部25が装着され、一方、可倒部22の貫通孔22aの内面には、棒材40を挿通可能な管状の第2挿通部26と、この第2挿通部26の下方に配置された受け部27とが装着されている。かかる取付構造により、棒材40をピストン11上面側からピストンサポート20の内部に挿入し、第1挿通部25及び第2挿通部26に挿通して、受け部27に当接させることで、棒材40をピストンサポート20内に取り付けることができる。このように棒材40を取り付けることにより、ガスホルダー10の点検・補修作業時に、固定部21に対して可倒部22が傾倒しないように固定して、ピストンサポート20の起立状態を維持できる。
【0037】
なお、図示の例では、ピストンサポート20内に取り付けられる棒材40は、貫通孔21a、22aより小径で、ピストンサポート20長より短いものを用いているが、かかる例に限定されない。棒材40は、ピストンサポート20の管内に挿抜可能で、固定部21に対し可倒部22を傾動不能に固定するものであれば、その太さ、長さは問わず、例えば、ピストンサポート20内の中空空間と同一の長さ及び径を有する棒鋼を、ピストンサポート20内の全体に挿入して、固定部21と可倒部22を連結してもよい。
【0038】
また、上記のようなピストンサポート20は、ピストン11に設けられたサポート取付部50に固定される。つまり、本実施形態にかかるピストンサポート20は、従来のように着脱式ではなく、その上部がピストン11に固定されて常設されるものである。
【0039】
サポート取付部50は、例えば、ピストン11の上方に向けて突出形成された例えば略円筒部材であり、その内部には、ピストン11を上下方向に貫通する貫通孔50aが形成されている。このサポート取付部50の貫通孔50aには、ピストンサポート20の可倒部22及び固定部21を挿入できる。図4に示すように、ピストンサポート20は、ピストン11のサポート取付部50を貫通した状態で、その上部にある固定部21がサポート取付部50に溶接等により固定される。このとき、固定部21の下部側がサポート取付部50の貫通孔50a内に挿入・固定され、貫通孔50aより大径の固定部フランジ24がサポート取付部50の上端に係止される。このようにして、ピストンサポート20の固定部21はピストン11と一体化され、この結果、ピストンサポート20はピストン11に常設されることとなる。
【0040】
また、図3及び図4に示すように、ピストン11には、サポート取付部50に隣接する位置に、ピストン11を上方側に陥没形成した収容部60が設けられている。この収容部60は、ピストンサポート20の傾倒部分、即ち、ヒンジ部23で折れ曲がって傾倒した可倒部22を収容する機能を有する。かかる収容部60は、可倒部22の傾倒する方向に形成され、傾倒した可倒部22を収容可能な形状及び大きさを有する。例えば図示の例では、収容部60は、断面略U字形の箱状の陥没部となっており、その長さは可倒部22の軸方向長さより大きく、その深さは、可倒部22の直径よりも深い。この収容部60の内部空間は、上記サポート取付部50の貫通孔50aと連通している。
【0041】
このような収容部60をピストン11に設けることにより、ピストンサポート20の固定部21と可倒部22とのジョイント位置(ヒンジ結合の位置)を、ピストン11の下面11aの位置よりも上方にすることができるとともに、可倒式構造のピストンサポート20が傾倒したときに、傾倒した可倒部22を収容部60に収容できる。よって、傾倒した可倒部22がピストン11の下面11aより下方に突出しないようにできる。
【0042】
また、このようなピストンサポート20の折り曲げ(可倒部22の傾倒)をピストン11上より可能とし、かつ折り曲げたまま固定するために、図4に示すように、ピストンサポート20の可倒部22には、ワイヤ70が取り付けられている。このワイヤ70は、可倒部22を傾倒した状態で吊持するための線材の一例であり、このワイヤ70以外にも、針金、紐、ピアノ線などといった他の任意の線材で代用可能である。かかるワイヤ70は、その一端が固定具71により可倒部22に結合され、他端がピストン11を貫通してピストン11の上側に配されて、ピストン11上に固定される。また、かかるワイヤ70がピストン11を貫通できるようにするために、例えば、ピストン11の収容部60には、ワイヤ70を挿通するためのワイヤ貫通孔62が形成されている。
【0043】
さらに、上記のワイヤ貫通孔62の内側には、シール部材72が装着されている。このシール部材72は、例えばドライシール(パッキン、ゴムシールなど)で構成されており、ピストン11に穿設されたワイヤ貫通孔62でガス漏れがしないようにシールする。また、ピストンサポート20の可倒部22を傾倒させたり起立させたりする時には、ワイヤ貫通孔62を介してワイヤ70を移動させる必要があり、一方、それ以外の時は、ワイヤ70が移動しないように固定する必要がある。かかる観点からは、シール部材72を、ワイヤ70を締め付ける力を調整可能なパッキン等で構成し、ワイヤ70を移動させるときには、当該パッキンを緩めてワイヤ70を移動可能とし、一方、ワイヤ70を固定するときには、当該パッキンを締めてワイヤ70を移動不能としてもよい。
【0044】
次に、図5及び図6を参照して、上記のような可倒式構造を有するピストンサポート20の動作について説明する。図5、図6は、本実施形態にかかる可倒式のピストンサポート20の傾倒状態、起立状態をそれぞれ示す断面図及び部分拡大図である。
【0045】
まず、図5に示す傾倒状態について説明する。図5に示すように、ガスホルダー10の通常運転時には、ピストンサポート20は、ピストン11の下面11a側に突出した可倒部22が傾倒されて、収容部60内に収容された傾倒状態となる。この傾倒状態では、図5中の拡大図に示すように、ピストンサポート20内には上記棒材40が挿入されていないので、ヒンジ部23によりヒンジ結合された固定部21と可倒部22とを折り曲げることができる。この折り曲げ位置(固定部21と可倒部22とのジョイント位置)は、収容部60の内部空間の上端位置である。また、可倒部22の傾倒方向(折り曲げ方向)は、ピストン11の径方向外向きとすることが好ましく、これにより、各ピストンサポート20の取付位置から、ドーム形状のピストン11及び底板12が低くなる方向に向けて可倒部22を傾倒できるため、各ピストンサポート20の傾倒角度を小さくできる。しかし、傾倒方向はそれ以外の任意の方向であってもよい。
【0046】
また、このようなピストンサポート20の折り曲げ動作(可倒部22の傾倒動作)は、上記のワイヤ70を用いて行われる。つまり、ピストンサポート20を起立状態(図6参照)から傾倒状態(図5参照)にするときには、ピストン11上に載った作業員が、ピストン11上にあるワイヤ70を引っ張ってたぐり寄せることで、このワイヤ70の一端が連結された可倒部22(起立状態)を傾倒させ、ヒンジ部23を中心として傾動させて、収容部60内に収容することができる。さらに、このように可倒部22を傾倒させた状態で、ワイヤ70を任意の固定手段(図示せず。)によりピストン11上に固定すれば、ワイヤ70の張力により可倒部22を吊持して、可倒部22の傾倒状態を維持できる。また、このようにワイヤ70で可倒部22が吊持された傾倒状態において、ピストン11上の作業員がワイヤ70の固定を解除して、ワイヤ貫通孔62からピストン11下方にワイヤ70を送り出すことで、可倒部22の自重により、傾倒状態の可倒部22を起立させる(図6参照)こともできる。
【0047】
次に、図6に示す起立状態について説明する。図6に示すように、起立状態のピストンサポート20では、可倒部22がピストン11から鉛直方向下方に向けて起立されて、固定部21と可倒部22とが同一軸上に真っ直ぐに配置される。これにより、ピストン11を下げて可倒部22の下端面22bを底板12に当接させることで、ピストンサポート20によりピストン11の荷重を支持できる。このとき、可倒部22の下端面22bは、当節位置の底板12の形状に応じた略傾斜面となるように調整されているため、この下端面22bと底板12とが隙間なく接触できる。このため、ピストンサポート20は、ピストン11の荷重を底板12に適切に伝達できるとともに、ピストンサポート20の当接により底板12を損傷することがない。
【0048】
また、この起立状態では、図6の部分拡大図に示すように、管状のピストンサポート20の内部に、固定部21と可倒部22とを連結する棒材40が取り付けられる。この棒材40は、固定部21内の第1挿通部25と、可倒部22内の第2挿通部26の内部に挿入・固定されている。かかる棒材40を取り付けることにより、起立した可倒部22が傾倒しないように固定できるので、ピストンサポート20は、折れ曲がることなく安定してピストン11を支持できる。
【0049】
以上説明したように、本実施形態にかかる可倒式のピストンサポート20は、上部側の固定部21をピストン11に固定し、下部側の可倒部22を傾倒位置と起立位置との間で傾動できるようになっている。
【0050】
これにより、ガスホルダー10の運転時には、図5に示したようにピストンサポート20を傾倒状態とすることにより、可倒部22を傾倒して収容部60内に収容し、ピストンサポート20がピストン11の下面11aより下方に突出しないようにできる。従って、ピストン11の着底時に、ピストンサポート20により邪魔されることなく、ピストンサポート20が最低位置まで移動でき、ピストン11と底板12とがほぼ隙間なく接触することができる。従って、ピストンサポート20によりピストン11の昇降ストロークが制限されないので、ピストンサポート20をピストン11に常設したとしても、ガスホルダー10の有効容量を確保できる。
【0051】
一方、ガスホルダー10の点検・保守作業時には、図6に示したようにピストンサポート20を起立状態とすることで、ピストンサポート20によりピストン11を支持して、ピストン11と底板12との間に作業スペースを確保することができる。このとき、点検・補修作業前にピストンサポート20を傾倒状態から起立状態にする作業では、作業員は、ピストン11上から、固定部21を吊持するワイヤ70を弛めて繰り出すことで可倒部22を起立させることができ、さらに、ピストンサポート20内に棒材40を挿入して取り付けるだけで、ピストンサポート20の起立状態を維持できる。また、点検・補修作業後にピストンサポート20を起立状態から傾倒状態に戻す作業では、作業員は、ピストン11上から、ピストンサポート20内の棒材40を抜き取るとともに、ワイヤ70を引っ張って固定することで、容易かつ迅速に可倒部22を傾倒させて、収容部60内に収容できる。
【0052】
次に、図7を参照して、本実施形態にかかる可倒式のピストンサポート20を収容する収容部の変更例について説明する。図7は、本実施形態の変形例にかかる可倒式のピストンサポート20の収容部65を示す断面図である。
【0053】
図7に示す変更例では、ピストンサポート20の傾倒した可倒部22を収容する収容部65が、ピストン11ではなく、底板12に設けられている。即ち、ピストン11には、ピストンサポート20の固定部21を固定するためのサポート取付部50のみが設置されている。これにより、ピストンサポート20の固定部21と可倒部22とのジョイント位置(ヒンジ結合位置)は、ピストン11の下面11a位置となっており、このピストン11の下面11a位置で、固定部21に対して可倒部22が傾倒する。一方、底板12には、このようにピストン11の下面11aで傾倒した可倒部22に対応する位置に、収容部65が陥没形成されている。この収容部65も、上記図3〜図6で示した収容部60と同様に、傾倒した可倒部22を収容可能な大きさ及び形状を有している。
【0054】
このような収容部65を底板12に設けることで、図7(b)に示すように、ピストン11に着底時に、傾倒された可倒部22を、底板12の収容部65内に収容できる。このため、可倒部22により制限されることなく、ピストン11は最低位置まで降下できるため、ピストン11と底板12とは隙間なく接触することができる。なお、収納部の施工性の観点からは、この図7に示したように底板12に収容部65を形成する場合よりも、上記図3〜図6に示したようにピストン11に収容部60を形成する場合の方が、製造が容易であるので好ましい。
【0055】
以上のように、ピストン11又は底板12に収容部60、65を形成して、傾倒した可倒部22を収容可能とすることで、ピストン11着底時に、ピストン11と底板12との間に、可倒部22の直径分(例えば80mm)の隙間が生じないようにできる。これにより、ガスホルダー10の運転中に、ピストン11と底板12との間のガス貯留空間が誤って負圧になった時であっても、ピストン11と底板12とが隙間なく接触できるので、薄く低強度のピストン11が負圧により変形・破損することを防止できる。
【0056】
次に、図8を参照して本実施形態にかかるピストンサポート20の別の変更例として、ガスホルダー10の運転中に誤って負圧になった時のピストン11保護のため、上記のような収容部60、65を設けずに対処する例について説明する。
【0057】
図8に示すように、本変形例にかかるガスホルダー10では、ガスホルダー10内のガス貯留空間のガス圧を検出するガス圧検出器80(「ガス検出手段」に相当する。)と、当該ガス圧が所定の基準圧力以下になったときに、ガスホルダー10からのガス流出を遮断する制御装置81(「制御手段」に相当する。)とが設けられている。ガス圧検出器80は、例えば、ガスホルダー10のガス流出入口17付近の配管82に設けられているが、ガス貯留空間のガス圧を検出可能な位置であれば、任意の位置に設置できる。また、制御装置81は、ガス流出制御弁の一例として構成されたホルダー出入口弁18を開閉制御することで、ガスホルダー10内へのガスの流入量、及び、ガスホルダー10外へのガスの流出量を制御するものである。
【0058】
かかる構成において、ガスホルダー10の運転時に、ガス圧検出器80により、ガスホルダー10内のガス貯留空間のガス圧が、所定の基準圧力(例えばゼロ以上の所定の正圧)以下に低下したことが検出されると、制御装置81は、ホルダー出入口弁18を閉めて、ガスホルダー10からのガス流出を緊急遮断する。これにより、ガスホルダー10内のガス貯留空間が負圧になることを防止できる。
【0059】
従って、図8中の拡大図に示すように、着底したピストン11と底板12との間に、傾倒した可倒部22の直径分の僅かな隙間Sが存在する場合であっても、この隙間S内が負圧にならないので、誤ってピストン11が負圧により変形して破損してしまうことを防止できる。このように、図8の変更例では、ピストン11や底板12に収容部60、65を設けなくとも、ホルダー出入口弁18の緊急遮断ができようにすることで、ガスホルダー10の有効容量が上記隙間S分だけ僅かに減少することを許容するだけで、収容部60、65を設けた場合と同様にピストン11の保護効果を得ることができる。また、ピストン11又は底板12に収容部60、65を形成しなくて済むので、ガスホルダー10の施工性に優れるという利点もある。
【0060】
以上、本実施形態にかかるガスホルダー10のピストンサポート20の構成について説明した。次に、上記構成のピストンサポート20を備えたガスホルダー10における、点検・補修作業方法の手順について説明する。
【0061】
ガスホルダー10の通常運転を終了して、ガスホルダー10の内面の点検・補修作業を行う場合には、まず、ガスホルダー10内の貯蔵ガスを抜いて、ピストン11を着底させる。かかる状態では、着底したピストン11と底板12との間の若干の隙間に、貯蔵ガスである例えばCOガス(発火性、有毒)が残存している。
【0062】
そこで、当該隙間にNガス(窒素ガス)を吹き込んで、COガスを追い出す。このNガスの吹き込みによるCOガス抜きの作業は、ピストン11を上下させながら何度か繰り返す。この結果、COガス濃度が基準以下になったときに、今度は上記隙間にエアーを吹き込んで、残存しているNガス(非発火性)を追い出す。このエアー吹き込みによるNガス抜きの作業も、ピストン11を上下させながら何度か繰り返す。この結果、Nガス濃度が基準以下になったときに、エアー吹き込み量を調整して、ピストン11を、底板12からピストンサポート20の長さと同じか若干大きい高さに浮いた状態で停止させる。
【0063】
その後、この浮いたピストン11上に作業員が載って、傾倒状態にあるピストンサポート20を起立状態にする作業を行う。具体的には、まず、ピストン11上に載った作業員が、傾倒状態にあるピストンサポート20の固定部21を吊持しているワイヤ70を弛めて、ピストンサポート20の可倒部22を起立させる。
【0064】
次いで、作業員が、仕切フランジ30をピストンサポート20の上端の固定部21から外す。仕切フランジ30を外しても、ピストン11下のガス圧がさほど大きくないので、ピストンサポート20からエアーが強い圧力で噴出することはない。
【0065】
さらに、作業員が、ピストン11上からピストンサポート20の内部に棒材40を挿入して、固定部21と可倒部22とを連結するように取り付ける。これにより、固定部21に対して可倒部22が傾動不能となるので、ピストンサポート20が倒れないよう補強できる。以上のような作業を全てのピストンサポート20に対して行うことで、全てのピストンサポート20を起立させて、ピストン11を安定的に支持して、作業スペースを確保できるようになる。
【0066】
その後、ピストン11と底板12との間の作業スペースに、作業員が入って、点検・補修作業を行う。この点検作業では、底板12の表面と、ピストン11の内面(下面)について、防食塗装の腐食状況や、溶接箇所の割れなどを点検する。さらに、不具合のある箇所があった場合には、当該箇所を適宜補修する。
【0067】
次いで、かかる点検・補修作業の終了後に、再度ピストン11上に作業員が載って、起立状態にあるピストンサポート20を傾倒状態にする作業を行う。具体的には、まず、ピストンサポート20内の棒材40を取り外して、可倒部22が傾倒可能な状態にし、次いで、仕切フランジ30をピストンサポート20の固定部21に取り付けて、ピストンサポート20を介したガス漏れを遮断する。次いで、ピストン11上からワイヤ70を引っ張って、ピストンサポート20の可倒部22を傾倒させた後に、この傾倒状態の可倒部22を吊持できるように、ワイヤ70をピストン11上の所定位置に固定する。以上のような作業を全てのピストンサポート20に対して行うことで、全てのピストンサポート20を傾倒させて、ガスホルダー10の通常運転時に、ピストンサポート20が邪魔にならないようにできる。
【0068】
以上のように、本実施形態にかかるピストンサポート20は、作業員がピストン11の上から傾倒及び起立させることが可能な、ヒンジ付き可倒式構造を有しており、ピストン11に常設されている。これにより、ガスホルダー10の通常運転時は、ピストンサポート20を折り曲げて「L字」型として、ガスホルダー10の有効容量を確保することができる。一方、ホルダー内部の点検・補修時は、ピストンサポート20を「I字」型としてピストン11を支持して、作業スペースを確保することができる。
【0069】
従って、ガスホルダー10の点検・保守作業時に、従来のようなピストンサポート着脱作業が不要であるので、作業の合理化を図ることができるとともに、工期短縮によるコストメリットを享受できる。
【0070】
即ち、ガスホルダー10内部の点検・補修の前作業(ピストンサポート取り付け)及び後作業(ピストンサポート取り外し)に要する労力及び時間を大幅に低減して、当該点検・補修作業を容易かつ迅速に行うことができる。特に、昨今では、作業スペースを大きく確保するため、ピストンサポートがより長く(例えば1.2m→1.8m)、より重く(例えば16kg/本→23kg/本)なる傾向にある。本実施形態では、かかる長く重いピストンサポート20であっても、ピストン11に常設されているため、運搬及び取り付け作業等が不要であるので、作業員はピストンサポート20を容易かつ迅速に取り扱うことができる。よって、従来では、丸一日要していた作業時間を、例えば半日程度に短縮できる。このように点検・補修作業を合理化することで、点検・補修費用を削減することができる。
【0071】
また、ガスホルダー10の点検・補修作業の工期を短縮することで、点検・補修作業に伴うガスホルダー10の停止期間を短縮できる。従来では、ガスホルダー10の停止期間中には、他の設備で製造されたガス(転炉ガス等)は、ガスホルダー10に貯蔵できないため、大気放散して無駄になっていた。この点、本実施形態では、点検・補修作業に伴うガスホルダー10の停止期間が短いので、より多くのガスを貯蔵して、ガス放散量を削減できる。
【0072】
また、上記の可倒式構造のピストンサポート20をピストン11に常設したとしても、ガスホルダー10の通常運転時には、ピストンサポート20を傾倒状態にしておくことで、ピストン11の昇降可能なストローク長をピストンサポート20により制限しなくて済むので、ガスホルダー10の有効容量を確保できる。さらに、ピストンサポート20の傾倒した可倒部22を、ピストン11又は底板12の収容部60、65に収容することによって、ピストン11のストローク長を完全に確保できる。よって、従来のようにピストンサポートを着脱する場合と比べても、ガスホルダー10の有効容量を低減することがない。
【0073】
さらに、ガスホルダー10におけるガス貯留開始前には、ホルダー内にNガスを入れてエアーを追い出し、さらにCOガスを入れてNガスを追い出すといったガス入れ替え作業が必要である。この点、仮に可倒式でないピストンサポートをピストン11に常設した場合には、ピストン11と底板12との間にサポート長分の隙間がどうしても生じるため、上記のようにガスホルダー10の有効容量が大幅に減るばかりでなく、上記ガス入れ替え作業の作業効率が大幅に低下するという問題がある。しかし、本実施形態では、ピストンサポート20が可倒式であり、倒れた可倒部22を収容部60に収容できるので、着底したピストン11と底板12とがほぼ隙間なく接触できる。従って、ガスの入れ替え量を削減できるので、上記ガス入れ替え作業を容易にして、作業時間を短縮し、作業効率の向上が図れる。
【0074】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0075】
例えば、上記実施形態では、ピストンサポート20を固定部21と可倒部22に分離構成して可倒式構造としたが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、固定部21を設けずに、ピストンサポート全体を可倒式とし、ピストン11の下面に対してピストンサポートの上端を、ヒンジ結合等により傾動自在に取り付けることもできる。これにより、ピストンサポートの設置作業を容易かつ迅速に行うことができ、ガスホルダー10の製造コストを低減できる。
【0076】
また、上記実施形態では、ピストン11にピストンサポート20を設置するために、ピストン11のサポート取付部50に、ピストンサポート20の固定部21を固定したが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、ピストン11にサポート取付部50を設けずに、ピストン11の下面11a側に、ピストンサポート20の固定部21を直接的に取り付けてもよく、これにより、ピストン11をシンプルな板状構造にでき、施工性を向上させ、製造コストを低減できる。
【0077】
また、上記実施形態では、ワイヤ70を用いてピストンサポート20を強制的に傾倒させ、かつ、傾倒した固定部21を吊持したが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、ガスホルダー10の底板12はドーム形状であり、ピストンサポートが当接される箇所の底板12は傾斜しているので、ピストンサポートの下端部にローラなどの滑動手段を設置して、当該下端部が滑動し易くしておくことで、ピストン11が着底したときに、ピストンサポートが自然に傾倒するようにすることも可能である。これにより、ピストンサポートを傾倒させるために上記のワイヤ70を設けなくてもよくなるとともに、点検・補修作業時の作業員の労力を低減することができる。
【0078】
また、上記実施形態では、ピストン11と底板12とが略同一形状を有し、ピストン11が側板13にゴムシール機構16を介して連結されたガスホルダー10(所謂「ウィギンス型ガスホルダー」)の例について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明は、ピストンと底板とが略同一形状を有するガスホルダーであれば、上記「ウィギンス型ガスホルダー」以外のガスホルダーにも適用できる。例えば、シール機構として、ゴム以外の各種の膜によるシール機構を備えたガスホルダーにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1A】本発明の第1の実施形態にかかるガスホルダーの通常動作時の構成を示す模式図である。
【図1B】同実施形態にかかるガスホルダーの停止時の構成を示す模式図である。
【図1C】同実施形態にかかるガスホルダーの内部点検時の構成を示す模式図である。
【図2】同実施形態にかかるガスホルダーのピストンにおけるピストンサポートの配置を示す平面図及び側面図である。
【図3】同実施形態にかかるピストンサポート構造を示す分解斜視図である。
【図4】同実施形態にかかるピストンサポート構造を示す縦断面図である。
【図5】同実施形態にかかる可倒式のピストンサポートの傾倒状態を示す断面図及び部分拡大図である。
【図6】同実施形態にかかる可倒式のピストンサポートの起立状態を示す断面図及び部分拡大図である。
【図7】同実施形態の変形例にかかる可倒式のピストンサポートの収容部を示す断面図である。
【図8】同実施形態の変形例にかかるガスホルダーの全体構成を示す模式図である。
【図9】従来のガスホルダーの動作を示す模式図である。
【符号の説明】
【0080】
10 ガスホルダー
11 ピストン
12 底板
13 側板
14 屋根
15 換気口
16 ゴムシール機構
17 ガス流出入口
18 ホルダー出入口弁
19 ブロワー
20 ピストンサポート
21 固定部
22 可倒部
23 ヒンジ部
24 固定部フランジ
25 第1挿通部
26 第2挿通部
27 受け部
30 仕切フランジ
31 ボルト
40 棒材
50 サポート取付部
60、65 収容部
62 ワイヤ貫通孔
70 ワイヤ
72 シール部材
80 ガス圧検出器
81 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンと底板とが略同一形状を有するガスホルダーにおいて、
前記ピストンと前記底板との間に起立配置されて、前記ピストンを前記底板から離隔した位置に支持する複数のピストンサポートを備え、
前記ピストンサポートは、前記ピストンに対して傾倒可能に連結された可倒式構造を有することを特徴とする、ガスホルダー。
【請求項2】
前記ピストンサポートは、前記ピストンに固定される固定部と、前記固定部にヒンジ結合される可倒部と、からなることを特徴とする、請求項1に記載のガスホルダー。
【請求項3】
前記ピストンサポートは、前記ピストンを貫通して配される管材で構成され、
前記ピストンサポートの管内には、前記固定部と前記可倒部を連結する棒材を取り付け可能であることを特徴とする、請求項2に記載のガスホルダー。
【請求項4】
一端が前記ピストンサポートに結合され、他端が前記ピストンを貫通して前記ピストンの上側に配されて、傾倒した状態の前記ピストンサポートを吊持可能な線材をさらに備えることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のガスホルダー。
【請求項5】
前記ピストンには、傾倒した前記ピストンサポートの少なくとも一部を収容する収容部が陥没形成されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のガスホルダー。
【請求項6】
前記底板には、傾倒した前記ピストンサポートの少なくとも一部を収容する収容部が陥没形成されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のガスホルダー。
【請求項7】
前記ガスホルダー内のガス圧を検出するガス圧検出手段と、
前記ガス圧検出手段により検出されるガス圧が所定の基準圧力以下になったときに、前記ガスホルダーからのガス流出を遮断する制御手段と、
をさらに備えることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載のガスホルダー。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−232345(P2008−232345A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−74741(P2007−74741)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)