ガス放電ランプ
ガス放電ランプ(1)は、放電容器(2)と、この放電容器(2)内に突出する電極(4,5)とを有する。このガス放電ランプ(1)には、放電容器(2)を遮蔽する透光性で導電性の遮蔽体(9,23)が設けており、この遮蔽体は接続手段(7,10,24,27,28)を有する。ガス放電ランプ(1)のこの遮蔽体(9,23)は、少なくとも高周波に関して、ガス放電ランプ(1)を点灯させるのに使用される電気システムの遮蔽体(14,17,19)に接続されており、電極(4,5)を有する放電容器(2)を包囲する同心遮蔽体システムが形成されるようになっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス放電ランプと、これに相当するガス放電ランプを具えるヘッドライト、特に自動車のヘッドライト、又は照明装置とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガス放電ランプは、発光効率及び色特性に優れ、且つ点灯寿命が長いため、自動車用ヘッドライトの業界では長年に亘り広く使用されてきた。このようなガス放電ランプは、透光性で耐熱性の材料、例えば石英ガラスから形成された放電容器を有しており、この放電容器には不活性ガスが充填されている。この放電容器内には電極が突出しており、ランプを点弧して点灯させるにはこれらの電極に電圧を印加する。
【0003】
現在自動車業界で使用されている代表的なガス放電ランプには、例えば、高圧ナトリウムランプや、特に、MPXL(マイクロパワーキセノンライト)ランプのようないわゆるHID(高輝度放電)ランプがあり、これらランプにはキセノンのガス充填剤を用いて点灯させるものがある。しかし、このようなガス放電ランプには、使用の際に、対応する不活性ガス、例えばキセノンガスの物理的特性と、この特性による放電現象とにより、放電ランプは、所望の光だけでなく、高い割合で、1GHz以下の範囲内の広い帯域の妨害電磁放射も放出してしまう問題がある。この不所望な電磁放射は、主として、放電容器の点灯状態により駆動されるアンテナとして作用する、この放電容器に対する電極及び給電ラインから放射される。この放射は、ランプに供給される電流と、ランプから戻ってくる電流との差に相当するいわゆるコモンモード電流の形態で表すこともできる。この高周波妨害電流は、ランプと、その周囲の部材、例えばヘッドライトのリフレクタとの間の寄生容量を介して周囲に向かって流れる。この電磁妨害放射は、例えば、オーディオ装置や、ABSや、エアバッグ制御部等のような自動車の他の電気ユニットに電磁妨害を及ぼし、従ってこれらの関連する装置を機能不良にするおそれがあるため、法定のEMC(電磁適合性)規定や、自動車業界が自ら制定した比較的厳しいEMC規定、例えばCISPR25規定が存在している。従って、この不所望に放射される電磁放射エネルギーを低減させる必要性は大きい。妨害放射の発生源自体、即ちランプ自体を、関連の周波数範囲の電磁エネルギーが放出される量を少なくするように改良する可能性は、ランプの基本的な物理的特性及びランプに対し課される電力条件の観点から極めて限られたものとなる。このことが、通常は妨害電磁放射が周囲に放出されるのを防止するようにEMCを改良する手法が採用されている理由である。
【0004】
電磁妨害放射を低減させる現在の通常の方法は、例えば、米国特許第5343370号明細書に記載されているように、リフレクタ又はランプ内側の追加の遮蔽部分を接地させて、ヘッドライトの内側でランプ全体を可能な限り遮蔽するというものである。しかし、このようにランプ及びその給電ラインをヘッドライトの金属又はその他の導電性部材で遮蔽するのは、比較的困難であり、従って費用がかかる。更に、ヘッドライトでランプを最適に遮蔽する条件が、ヘッドライトの設計に関する追加の境界条件をもたらし、これにより放射特性や光出力のような他の観点に関してヘッドライトを最適化するのを阻害するおそれがある。
【発明の開示】
【0005】
従って、本発明の目的は、点灯中に放出される妨害電磁放射を低減させるガス放電ランプを提供することである。
【0006】
この目的は、放電容器及びこの放電容器内に突出した電極に加えて、この放電容器を遮蔽し、且つ接続手段を有する導電性の透光性遮蔽体であって、前記接続手段が、当該透光性遮蔽体と、ガス放電ランプを点灯させるのに使用される電気システムの遮蔽体とを少なくとも高周波に関して接続し、ガス放電ランプの点灯中に前記電極を有する前記放電容器を包囲する同心遮蔽体システムを形成するようになっている当該透光性遮蔽体とを有するガス放電ランプにより達成される。「少なくとも高周波に関して」接続とは、例えば金属対金属の接続や、例えば容量性素子である適切な高域通過若しくは帯域通過フィルタのような高周波電流を流しうる接続として理解されたい。例えば、自動車のヘッドライトにおけるようなガス放電ランプの殆どの実用的用途では、電気ランプシステムの遮蔽体は大地電位にある。従って、本発明によるガス放電ランプの同心遮蔽体システムは、多くの場合に、大地電位に少なくとも高周波に関して接続されている。
【0007】
放電容器のほぼ全体を遮蔽し、ガス放電ランプの一部として放電容器の極めて近くに存在させた透光性遮蔽体を使用してこの透光性遮蔽体を残りの電気システムの遮蔽体に高周波に関して接続することにより、この残りの電気システムの遮蔽体に寄生容量を接続する。従って、高周波妨害電流が、この遮蔽体を通って流れ電気システムに戻るため、コモンモード電流、及びそれに対応して放出される妨害放射がほぼ完全に排除される。ガス放電ランプの透光性遮蔽体が、ガス放電ランプを点灯させるのに使用される電気システムの遮蔽体と相俟って、電極を有する放電容器を包囲する同心遮蔽体システムを形成するように結合を行うことにより、優れた高周波接続がなされ、従ってそれに対応して妨害電磁放射の遮蔽が有効になされる。しかし、ガス放電ランプの透光性遮蔽体を、通常のワイヤ又は薄肉の導電体を介してランプの電気システムの遮蔽体に単に結合するだけでは、自己インダクタンスが高くなり過ぎ、これに対応して高周波妨害電流に対するインピーダンスが高くなってしまう。
【0008】
特に好適な例では、ランプの透光性遮蔽体が、放電容器を包囲する外側管の壁部内又は壁部上、例えば壁部の内面又は外面上に、例えばFTOの導電性で透光性の材料層、又は例えば金属の導電性材料の格子構造体を有するようにする。現在使用されている殆どの種類のガス放電ランプは外側管を有しており、この外側管は、放電容器を包囲し通常この放電容器に固着されており、ガス放電ランプにより発生する紫外線放射を遮蔽するよう作用する。この外側管は、放電容器の極めて近くに存在してこの放電容器をほぼ完全に包囲しているため、この外側管上又は内に設けられた透光性遮蔽体も放電容器の極めて近くに存在し放電容器をほぼ完全に遮蔽する。このような外側管の壁部上又は内の透光性遮蔽体は、比較的安価で簡単に製造することができる。
【0009】
原理的には、ガス放電ランプの透光性遮蔽体と、残りの電気システムの遮蔽体との間を少なくとも高周波に関して適切に結合することは、特に、電極をランプの電気システムに接続するための給電ラインを構造する方法に応じて種々の態様で達成することができる。
【0010】
好適例では、前記透光性遮蔽体及び前記接続手段は、この透光性遮蔽体が、ガス放電ランプの2つの互いに対向する位置において、ガス放電ランプを点灯させるのに使用される電気システムの遮蔽体に少なくとも高周波に関して点灯中接続されるよう配置する。
【0011】
好適な変形例では、少なくとも1つの電極を、遮蔽体を有する給電ライン、例えば同軸ケーブルの中央リードに電気接続する。この場合、ガス放電ランプの透光性遮蔽体は、給電ラインに関連する遮蔽体、即ち同軸ケーブルの外側導体に電気接続する。しかし、同様にしてガス放電ランプの2つ電極を、同様な遮蔽体を有するそれぞれの給電ラインに接続することができる。この場合、2つの給電ラインの遮蔽体をそれぞれガス放電ランプの透光性遮蔽体に接続することにより、同軸ケーブルの遮蔽体がガス放電ランプの透光性遮蔽体に接続され、且つ同軸ケーブルの中央リードがガス放電ランプの電極により中断されている連続的な同軸ケーブルの一部としてガス放電ランプを見なしうるようになる。
【0012】
ガス放電ランプの装着構造によっては、ガス放電ランプの透光性遮蔽体が、点灯中にランプホルダハウジングの遮蔽体に直接電気接続されるようにもしうる。このために適しているのは、例えば、金属のランプスタータハウジング又は導電性被膜を設けたハウジングであって、このハウジングは同時にガス放電ランプをヘッドライトに挿入するためのランプホルダともなるハウジングである。この変型例には、スタータ回路が、同心遮蔽体システム内に必然的に含まれることになるという利点がある。
【0013】
他の好適例では、電極用の1つの給電ラインを、ガス放電ランプの透光性遮蔽体の内側で好ましくは電極に平行に案内する。この変更例では、ガス放電ランプの透光性遮蔽体は、一方の側でのみ、例えばランプホルダハウジング側でのみ電気システムの遮蔽体に電気接続する。この場合、ガス放電ランプの透光性遮蔽体がランプホルダハウジングとの接触位置まで完全に封止され、この位置で電極用の給電ラインがランプホルダハウジング内に入り込み、それにより放電容器を遮蔽体材料により完全に包囲するようにするのが特に好ましい。
【0014】
他の好適例では、ガス放電ランプの透光性遮蔽体自体により、1つの電極に電気接続されている給電ラインを構成する。この例は、個別の遮蔽された給電ラインを必要としないので比較的経済的である。現在のガス放電ランプは、通常、250〜1000Hz、しばしば400Hzの周波数とした12V及び−73Vのピーク電圧間の交流電圧により点灯させるので、戻りラインとして作用する遮蔽体を、通常大地電位にあるランプの電気システムの遮蔽体に直接接続することができない。従って、このようなシステムでは、適切な容量性素子、例えば1つ以上の結合キャパシタを介して電気システムの遮蔽体に高周波結合する。これにより、ランプの遮蔽体が、ランプホルダハウジングの内側の電気ランプシステムにつながる給電ラインに接続されることになる。
【0015】
ガス放電ランプの透光性遮蔽体は、充分な透光性が得られるように構成する必要があるので、一般にこの透光性遮蔽体の導電率は比較的低くなる。従って、最後に説明した例の好適な変型例では、更に、給電ラインとして作用する透光性遮蔽体に接続された電極を、ガス放電ランプのこの透光性遮蔽体に平行に配置された給電ライン、例えば、外側管の内側又は外側に配置されたワイヤ又は導体細条に接続する。この構造では、自己インダクタンスが低くなることにより、減結合キャパシタを介して電気システムの遮蔽体に高周波結合されたランプの透光性遮蔽体を介して高周波電流を流すようにする。これに対し、ランプ出力の大部分を形成する低周波電流は、抵抗値は低いが自己インダクタンスの比較的高い、即ち高周波電流に対するインピーダンスが高い平行な細い導体を通って流れることになる。このことにより、特に電極に高電圧が印加される点弧段階中に、透光性遮蔽体に接続されている電極への給電ラインの抵抗値が低くなり過ぎることが防止される。
【0016】
この変型例では、追加の戻りライン中に、誘導性素子、例えばフェライトビードやこれに類似する素子を設けるのが好ましい。この誘導性素子は、追加の低域通過フィルタとして作用し、平行な給電ラインをほぼ低周波電流のみが流れることを確実なものとする。
【0017】
他の特に好適な例では、更に1つの電極に対する給電ラインとして作用するガス放電ランプの透光性遮蔽体を、容量性素子を介して他の電極に接続する。この容量性素子は、電極間の高周波短絡回路を構成するため、更に妨害電磁放射を低減させる。
【0018】
本発明によるガス放電ランプは、原理的には、所望に応じていかなるヘッドライト又は照明装置にも使用することができる。この場合、これらには、ガス放電ランプの遮蔽体を電気システムの透光性遮蔽体に接続する適切な接続手段であって、ガス放電ランプの透光性遮蔽体がこの接続手段に結合された場合に、電極を有する放電容器を包囲する同心遮蔽体システムが形成されるのを確実にする当該接続手段を設ける必要があるだけである。このことは、例えば、ランプホルダハウジング上に適切な接点を存在させる必要があるに過ぎないことを意味する。ヘッドライト内のガス放電ランプをリフレクタ及び他の追加の遮蔽部材により遮蔽することを目的としてヘッドライトを追加的に特別な構造にする必要はない。ガス放電ランプ自体の透光性遮蔽体と、妨害放射の発生源になる放電容器との間の物理的距離を短くすることにより、遮蔽力は特に有効なものとなる。
【0019】
本発明によるガス放電ランプは、追加の遮蔽手段を有するヘッドライトにおいても使用しうることに注意されたい。
【実施例】
【0020】
本発明を、添付の図面及び実施例を参照して以下に、より詳細に説明する。図面において同等の機能を有するユニットには同じ参照番号を付してある。
従来技術によるガス放電ランプの電気構成部材の動作原理は図1の等価回路図から明らかである。このようなガス放電ランプは、主として、不活性ガスを充填した放電容器2を有し、この放電容器2内には互いに対向するその両側から電極4及び5が導入されている。これら電極4及び5は、それぞれ給電ライン15及び16を介して駆動回路20に接続されている。この駆動回路20は、一方の入力端において大地電位に接続されており、且つ他方の入力端において、電源電圧を生じる電圧源に接続されている。このようなガス放電ランプを自動車のヘッドライトに使用する場合、電源電圧は通常自動車のバッテリー電圧になる。
【0021】
駆動回路は、通常、導電性の接地したハウジング20、すなわち大地電位にあるハウジング内に存在している。これにより、駆動回路はその周囲から電磁的に遮蔽されている。同様に、給電ライン15及び16は、遮蔽体19の内側を通ってガス放電ランプまで延在している。図1に示されているように、この遮蔽体19は、通常適切な接続部21を介して駆動回路のハウジング20に接続されている。このように、ガス放電ランプを点灯させる為の電気システム全体が、大地電位にある遮蔽体により遮蔽されている。
【0022】
ランプを点弧させるには、給電ライン15及び16を介して電極4及び5に高電圧を印加する。この高電圧は、ここでは駆動回路の一部であるイグナイタにおいて入力電圧から発生される。点弧後、ガス放電ランプ1は、例えば12V及び−73Vのピーク電圧を有する、例えば400Hzの交流電圧により点灯される。この交流電圧も、駆動回路により発生される。或いは又、高電圧を発生させるためのイグナイタをランプ1に直接、例えば、ランプホルダにすぐ隣接する別個のハウジング内又はランプホルダ自体内に配置することができる。
【0023】
図1から明らかなように、システム全体のうちで遮蔽されていない唯一の部分は、放電容器2及び電極4,5を具えるガス放電ランプ1自体である。このことにより、アンテナとして作用するランプ1の電極4,5と、ランプ1の周囲の部材、例えばリフレクタとの間に不所望な寄生容量CP が生じる。高周波電流がこれらの寄生容量CP を介してランプの周囲に流れ、高周波電磁放射と等価なものになるおそれがある。ランプに流れる電流と、戻り電流との差に相当するこのいわゆるコモンモード電流ICMを、この等価回路図では給電ライン16上に大きな矢印により示してある。図1に示すように、従来技術による通常のランプでは、このコモンモード電流は0より大きくなる。
【0024】
このコモンモ電流、即ちランプ1の妨害電磁放射の強度を低減させるために、本発明によれば、放電容器2を、導電性で透光性の遮蔽体により包囲し、この放電容器2のほぼ全体を遮蔽する。この遮蔽体は適切な接続手段を有し、それにより、この遮蔽体が、ガス放電ランプ1を点灯させるために使用する電気システムの遮蔽体19に対し少なくとも高周波に関し自動的に接続され、ガス放電ランプ1の点灯中に電極4,5を有する放電容器2を包囲する同心遮蔽体システムが形成されるようにする。
【0025】
図2は、本発明によるランプ1の第1実施例を示す。ここに示すランプ1は、代表的なMPXL(マイクロパワーキセノンライト)ランプ1である。他の実施例におけるランプもMPXLランプ1とする。但し、本発明は、このようなMPXLランプに限定されるものではなく、原理的には他の種類のガス放電ランプ、特に他のHIDランプに使用することができる。
【0026】
図2に示すように、このようなMPXLランプ1は、通常石英ガラスから形成した内側放電容器2(内側管又はバーナーとも称する)を有する。この放電容器2内即ち放電容器2の内部空間3内には、第1電極4及び第2電極5が、通常のように延在している。これら電極4及び5は、これらに隣接する放電容器の端部6及び7により包囲されており、内部空間3が周囲から封止されている。僅か数立方ミリメートルの放電容器の内部空間3内には、不活性ガス、この場合はキセノンが比較的高圧で入れられている。
【0027】
放電容器2は外側管8により包囲されており、この外側管8は、放電により生ずる特に紫外線放射を吸収させるために、ガス特に空気が充填され、周囲雰囲気に対して封止されている。この外側管8も通常石英ガラスから形成されており、放電容器2の端部6及び7においてこの放電容器2に固着されている。
【0028】
図2に示す実施例においては、この外側管8の外面に導電性で透光性の遮蔽体9が設けられている。この遮蔽体は、例えば、FTO(フッ化物をドープした錫酸化物)のような導電性で透光性の材料からなる層を有するものとしうる。或いは又、例えば、この遮蔽体を金属格子にすることができるが、この金属格子は、充分な光を透過するようあまり細かい目を有さないようにする必要がある。この外側遮蔽体9により、放電容器2は完全に遮蔽される。この遮蔽体9は、端部6及び7において導電性のエンドキャップ10及び接点リング11にそれぞれ接続されている。ガス放電ランプ1は、接点リング11を有する端部7により、ランプホルダハウジング17(線図的にのみ示す)内に保持されている。ランプ1はこれをランプホルダ内に挿入すると、ランプホルダハウジング17とランプ1の遮蔽体9との間の金属接触を自動的に達成する。この金属のランプホルダハウジング17は駆動回路の遮蔽体にも接続されている。
【0029】
更に、ランプホルダハウジング内にランプ1を挿入することにより、同時に一方の電極4と駆動回路につながる給電ライン15との間も接続されることになる。他方の電極5は、同軸ライン12の中央リード13に接続されており、この中央リードは放電ランプに隣接してランプホルダハウジング内に挿入されており、そこで駆動回路20につながる給電ライン16に接続されている。同軸ケーブル12の中央リード13及び電極4と、給電ライン16及び15との接触は、それぞれの場合について通常のプラグ接続により行っているが、ここでは図面を簡単にするためにこのプラグ接続は図示していない。
【0030】
同軸ケーブルの外側リード14は、放電容器2の上端部6、即ちランプホルダ側とは反対側の部分におけるエンドキャップ10に接続されており、これにより、同軸ケーブル12の外側リード14が、ガス放電ランプ1の遮蔽体9に接続される。同軸ケーブルの外側リード14は、適切な接点18を介してもランプホルダハウジング17に接続されている。このようにして放電容器2を含むシステム全体が、同軸ケーブルの内側に遮蔽される。
【0031】
上述した種類の遮蔽体を、図2の実施例に対する図3に示す等価回路図により再度説明する。図3には、ランプ1を点灯させるための電気システムの構造が、従来技術のランプに対する図1の等価回路図におけるのと同様にして示されている。しかし、図3では、外側管8上の遮蔽体9と、この遮蔽体9に接続されている同軸ケーブルの遮蔽体14とが相俟って、ガス放電ランプ1と、このガス放電ランプ近傍にある給電ライン13とを完全に遮蔽している。遮蔽体9及び14は、両端部における適切な接続素子11及び18を介してランプ1の電気駆動システムの遮蔽体、即ち給電ライン15及び16の遮蔽体19に直接接続されている。この場合、電極4及び5と遮蔽体9との間に寄生容量CP が接続されている。妨害電磁放射を生ずるおそれのある高周波電流は、遮蔽体9及び14において誘導されて電気駆動システムの遮蔽体19,21,20を通って逆流する電流により補償される。給電ライン15及び16を介してランプ1に向かって流れる電流と、これらの給電ライン15及び16並びに遮蔽体19を介して流れる戻り電流との総合的なバランスは、実際上、無視しうるほど小さいコモンモード電流ICMを含むものであり、このことは妨害電磁放射が僅かしか放射されないことに相当する。
【0032】
図4は、本発明の他の実施例であり、この場合ガス放電ランプ1が、外側管8の外側に他の支持構造体22、例えば追加の石英ガラス円筒体22を有するものである。この石英ガラス円筒体22は、ガス放電ランプ1の他の構成部材に固着されている。この追加の石英ガラス円筒体22の外側面又は内側面上には、遮蔽体23を形成する導電性の層又は格子がある。遮蔽体は、図4に示すのとは異なり端部も封止して、電極4及び5を有する放電容器2と、外側管8と、ランプホルダハウジング側とは反対側の電極5につながる給電ライン25とが、完全に遮蔽されるようにするのが好ましい。この場合も、追加の石英ガラス円筒体22上の遮蔽体23は、接点素子24を介して導電性のランプホルダハウジング17に接続されている。給電ライン25及び電極4は、通常のようにプラグ接続体(図示せず)により駆動回路から生じる給電ライン16及び15に接続されている。
【0033】
図5は、図4の実施例に極めて類似した実施例を示す。ランプホルダハウジング側とは反対側の電極5は、本例でも、放電容器2を包囲する遮蔽体9の内側にある給電ライン26を介して接続されている。但し、遮蔽体9は、図2の実施例のようにガス放電ランプ1の外側管8の壁部上に直接設けられている。この場合、ガス放電ランプ1の上端部6は、導電性のエンドキャップ10で封止されているため、遮蔽体9は、ガス放電ランプ1を囲んで完全に封止されている。給電ライン26は、例えばワイヤ片の形態にして、この端部6の内側で電極5に固着されている。この給電ライン26はこの固着箇所から外側管8の内壁に沿ってランプホルダハウジング側の端部7まで延在している。給電ライン26は、この端部7でランプホルダハウジング側の電極4に対して平行に接点リング11を貫通しており、この場合もこの接点リング11を介して、遮蔽体9がランプホルダハウジング17に接続されている。給電ライン26は、通常のようにして駆動回路から生じる給電ライン16に接続されており、電極4も同様にして給電ライン15に接続されている。本例によれば、ランプホルダハウジング側とは反対側のガス放電ランプ1の端部に外部給電ラインを設ける必要がなく、また遮蔽体用の追加の支持構造体を必要としないという利点が得られる。或いは又、戻りの給電ライン26を、ワイヤに代えて、外管8の内壁上に設けた導体細条から構成することができる。
【0034】
図4及び図5の2つの実施例においても、同心遮蔽体システム内で放電容器2に電極4及び5が完全に収容されているが、これらの実施例においては最初の実施例と相違して、同心遮蔽体システム、即ち外側遮蔽体の内側において、これら電極に接続される一方の給電ライン及び他方の給電ラインが互いに平行に延在している。このことを、図6に示す図4及び図5の実施例の等価回路図において再度説明する。この場合も電気駆動システム及びその遮蔽体の構造は、図1及び図3の等価回路図に示したものと同じである。図3の実施例との相違点は、ランプホルダハウジングの側とは反対側の電極5につながる給電ラインが遮蔽体9,23の内側において電極4,5に平行に配置されているため、遮蔽体9,23が、端部を封止したエンベロープとして平行な給電ライン及び電極4,5を包囲することである。
【0035】
図6の等価回路図を、遮蔽されていない従来技術のランプを示す図1の等価回路図と比較することから明らかなように、図6では、図1と相違して、電極4及び5と遮蔽体9,23との間に寄生容量CP が接続されており、遮蔽体9,23は、駆動回路につながる給電ライン15,16の遮蔽体19に接続部11,24を介して接続されている。図4及び図5に示す実施例では、遮蔽体19は、ランプの一側にあるランプホルダハウジング17により形成されている。この場合、図3の例のように、電流のバランスは、寄生容量CP を流れる高周波電流が戻るように遮蔽体19を再び流れ、コモンモード電流ICMが実際上0になるようなものとなる。
【0036】
図7は、構造をこれまでの実施例より更に簡単にした他の実施例を示す。本例では、ランプホルダとは反対側の電極5が接点27を介して、関連する端部6の導電性エンドキャップ10に接続され、従って外側管8の外面にある遮蔽体9に接続されている。この場合、遮蔽体9は、電極5に対する給電ライン又は戻りラインとしても作用する。遮蔽体9は、ランプホルダハウジング側の端部7にある接点リング11にも接続されている。しかし、本例では、接点リング11は、導電性のランプホルダハウジング(遮蔽体)17と金属接触しておらず、可能な限り高い容量の1つ以上の減結合キャパシタ28を介してランプホルダハウジングに接続されている。この接点リング11は、更に駆動回路から生じる給電ラインに16に導電接続されているため、給電ライン16と電極5との間が遮蔽体9を介して接続されている。ランプホルダハウジング側の電極4は、他の給電ライン15に接続されている。給電ライン15,16の回路への接続は、この場合も当業者にとって既知の通常の方法によりなされている。
【0037】
更に、戻りラインとして作用する遮蔽体9とランプホルダハウジング側の電極4とは、他の減結合キャパシタ29により相互接続されている。この減結合キャパシタ29は、ランプの一部として形成しても、又はランプホルダハウジング内に一体化してもよく、これにより例えば、給電ライン15及び16をこれらの端部で相互接続することができる。
【0038】
この構造の等価回路図を図8に示す。この等価回路図が示すように、遮蔽体9は、電極5と、駆動回路20から生じる給電ライン16との間の接続体として作用する、即ち遮蔽体9自体が、給電ラインの一部を形成している。妨害電磁放射の原因となる、ガス放電ランプ1から発生する高周波電流は、減結合キャパシタ即ちキャパシタ28を介して、ガス放電ランプ1に給電する作用をする電気システムの遮蔽体19に結合される。この場合もこれにより、コモンモード電流ICMがほぼ0になるような電流バランスが得られるため、周囲への妨害電磁放射は無視しうる程度に小さいものとみなすことができる。更に、減結合キャパシタ29は、ランプ1内又はランプにすぐ隣接する2つの給電ライン15及び16間で高周波短絡回路を構成する。
【0039】
本例では、遮蔽体9を給電ラインとして使用し且つ外側管8の外側に存在させているため、本例はランプホルダハウジングとは反対側の電極5を接地接続しうるようにした構造の駆動回路に使用するのに特に適している。他の実施例(図示せず)では、遮蔽体を、外管の壁部の内部に設けるか、外管の内壁上に存在させる。この構造では遮蔽体に触れることができないため、このようなランプは、通常のAC動作にも適している。
【0040】
図9は、図7の実施例を若干変更したものを示す。本例における図7の実施例との重要な相違点は、例えばワイヤの形態の個別のライン30が、接点27から遮蔽体9に対して平行に延在して給電ライン16に接続されていることである。この個別のライン30には、ガス放電ランプ1の上部エンドキャップ10にある接点27のすぐ近くで、誘導性素子として作用するフェライトビード31が設けられている。
【0041】
この構造を、図10の等価回路図に示す。遮蔽体9に対して平行に接続されたライン30は、ランプの点灯の際、特に点弧の際に必要なより大きな電流を流すように作用する。このことは、この遮蔽体9が、必要な光透過性を得るために比較的薄肉の層又は極めて目の粗い格子によってのみ形成されるため、低周波電流に対しては遮蔽体9により形成されるラインの抵抗値があまりにも高くなってしまうことに関連する。これに対して、平行なライン30では、面積の大きい遮蔽体9と比べて、オーム抵抗は小さくなるが、自己インダクタンスは比較的高くなるため、このライン30の高周波電流に対するインピーダンスは極めて高くなる。従って、高周波電流は、予想されるように優先的に遮蔽体9及び減結合キャパシタ28を通って、ランプホルダハウジングの遮蔽体17及び給電ライン15及び16の遮蔽体19に向かって流れる。ここで、フェライトビード31は、平行なライン30を通って高周波電流が流れるのを防ぐ追加の低域通過フィルタとして作用するため、この場合もこのライン30はアンテナとして作用せず、周囲に高周波妨害放射を送出することもない。ガス放電ランプを点灯させるのに必要な400Hzレンジの低周波電流と、抵抗の低い個別のライン30を通って優先的に流れる直流成分とのみが存在することになる。この構造によれば、ランプの点灯に必要な低周波電流に対してコンダクタンスを充分な値にする必要がない、最適な透光性の遮蔽体9を製造しうるという利点が得られる。
【0042】
図11は、図9及び図10に示す実施例を僅かに変更した変形例の等価回路図である。本例では、個別のワイヤにより平行なライン30を設ける代わりに、外側管8の外面上に薄肉の導体細条を設けているが、最終的な効果はワイヤにより平行なライン30を形成した場合と同じである。他の全ての例において、このような薄肉の導体細条を遮蔽体層の内側に用いて、遮蔽体層の抵抗を低減させ、従って妨害電流の排出効率を高めるようにするのも好ましい。
【0043】
図面に示したガス放電ランプ及びこれらの等価回路図は、単なる実施例に過ぎず、本発明の範囲を逸脱することなく多くの観点から変更しうるものであることに注意すべきである。例えば、全ての実施例において、遮蔽体9は、外側管8の内面上に形成することができ、又は外側管8の壁部内に特別な層を以て形成することができる。また、ランプは、端部をランプホルダハウジング内に挿入する以外の方法で保持することができ、例えば、ランプは、上述した実施例においてランプホルダハウジング内に存在させた側で同軸ケーブル又は類似の素子に接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1は、電気ランプシステムにより駆動される従来技術によるガス放電ランプの等価回路図である。
【図2】図2は、本発明によるガス放電ランプの第1の実施例を示す線図的な長手方向断面図である。
【図3】図3は、図2のガス放電ランプの等価回路図である。
【図4】図4は、本発明によるガス放電ランプの第2の実施例を示す線図的な長手方向断面図である。
【図5】図5は、本発明によるガス放電ランプの第3の実施例を示す線図的な長手方向断面図である。
【図6】図6は、図4又は図5のガス放電ランプの等価回路図である。
【図7】図7は、本発明によるガス放電ランプの第4の実施例を示す線図的な長手方向断面図である。
【図8】図8は、図7のガス放電ランプの等価回路図である。
【図9】図9は、本発明によるガス放電ランプの第5の実施例を示す線図的な長手方向断面図である。
【図10】図10は、図9のガス放電ランプの等価回路図である。
【図11】図11は、図9のガス放電ランプに類似した構造のガス放電ランプの等価回路図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス放電ランプと、これに相当するガス放電ランプを具えるヘッドライト、特に自動車のヘッドライト、又は照明装置とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガス放電ランプは、発光効率及び色特性に優れ、且つ点灯寿命が長いため、自動車用ヘッドライトの業界では長年に亘り広く使用されてきた。このようなガス放電ランプは、透光性で耐熱性の材料、例えば石英ガラスから形成された放電容器を有しており、この放電容器には不活性ガスが充填されている。この放電容器内には電極が突出しており、ランプを点弧して点灯させるにはこれらの電極に電圧を印加する。
【0003】
現在自動車業界で使用されている代表的なガス放電ランプには、例えば、高圧ナトリウムランプや、特に、MPXL(マイクロパワーキセノンライト)ランプのようないわゆるHID(高輝度放電)ランプがあり、これらランプにはキセノンのガス充填剤を用いて点灯させるものがある。しかし、このようなガス放電ランプには、使用の際に、対応する不活性ガス、例えばキセノンガスの物理的特性と、この特性による放電現象とにより、放電ランプは、所望の光だけでなく、高い割合で、1GHz以下の範囲内の広い帯域の妨害電磁放射も放出してしまう問題がある。この不所望な電磁放射は、主として、放電容器の点灯状態により駆動されるアンテナとして作用する、この放電容器に対する電極及び給電ラインから放射される。この放射は、ランプに供給される電流と、ランプから戻ってくる電流との差に相当するいわゆるコモンモード電流の形態で表すこともできる。この高周波妨害電流は、ランプと、その周囲の部材、例えばヘッドライトのリフレクタとの間の寄生容量を介して周囲に向かって流れる。この電磁妨害放射は、例えば、オーディオ装置や、ABSや、エアバッグ制御部等のような自動車の他の電気ユニットに電磁妨害を及ぼし、従ってこれらの関連する装置を機能不良にするおそれがあるため、法定のEMC(電磁適合性)規定や、自動車業界が自ら制定した比較的厳しいEMC規定、例えばCISPR25規定が存在している。従って、この不所望に放射される電磁放射エネルギーを低減させる必要性は大きい。妨害放射の発生源自体、即ちランプ自体を、関連の周波数範囲の電磁エネルギーが放出される量を少なくするように改良する可能性は、ランプの基本的な物理的特性及びランプに対し課される電力条件の観点から極めて限られたものとなる。このことが、通常は妨害電磁放射が周囲に放出されるのを防止するようにEMCを改良する手法が採用されている理由である。
【0004】
電磁妨害放射を低減させる現在の通常の方法は、例えば、米国特許第5343370号明細書に記載されているように、リフレクタ又はランプ内側の追加の遮蔽部分を接地させて、ヘッドライトの内側でランプ全体を可能な限り遮蔽するというものである。しかし、このようにランプ及びその給電ラインをヘッドライトの金属又はその他の導電性部材で遮蔽するのは、比較的困難であり、従って費用がかかる。更に、ヘッドライトでランプを最適に遮蔽する条件が、ヘッドライトの設計に関する追加の境界条件をもたらし、これにより放射特性や光出力のような他の観点に関してヘッドライトを最適化するのを阻害するおそれがある。
【発明の開示】
【0005】
従って、本発明の目的は、点灯中に放出される妨害電磁放射を低減させるガス放電ランプを提供することである。
【0006】
この目的は、放電容器及びこの放電容器内に突出した電極に加えて、この放電容器を遮蔽し、且つ接続手段を有する導電性の透光性遮蔽体であって、前記接続手段が、当該透光性遮蔽体と、ガス放電ランプを点灯させるのに使用される電気システムの遮蔽体とを少なくとも高周波に関して接続し、ガス放電ランプの点灯中に前記電極を有する前記放電容器を包囲する同心遮蔽体システムを形成するようになっている当該透光性遮蔽体とを有するガス放電ランプにより達成される。「少なくとも高周波に関して」接続とは、例えば金属対金属の接続や、例えば容量性素子である適切な高域通過若しくは帯域通過フィルタのような高周波電流を流しうる接続として理解されたい。例えば、自動車のヘッドライトにおけるようなガス放電ランプの殆どの実用的用途では、電気ランプシステムの遮蔽体は大地電位にある。従って、本発明によるガス放電ランプの同心遮蔽体システムは、多くの場合に、大地電位に少なくとも高周波に関して接続されている。
【0007】
放電容器のほぼ全体を遮蔽し、ガス放電ランプの一部として放電容器の極めて近くに存在させた透光性遮蔽体を使用してこの透光性遮蔽体を残りの電気システムの遮蔽体に高周波に関して接続することにより、この残りの電気システムの遮蔽体に寄生容量を接続する。従って、高周波妨害電流が、この遮蔽体を通って流れ電気システムに戻るため、コモンモード電流、及びそれに対応して放出される妨害放射がほぼ完全に排除される。ガス放電ランプの透光性遮蔽体が、ガス放電ランプを点灯させるのに使用される電気システムの遮蔽体と相俟って、電極を有する放電容器を包囲する同心遮蔽体システムを形成するように結合を行うことにより、優れた高周波接続がなされ、従ってそれに対応して妨害電磁放射の遮蔽が有効になされる。しかし、ガス放電ランプの透光性遮蔽体を、通常のワイヤ又は薄肉の導電体を介してランプの電気システムの遮蔽体に単に結合するだけでは、自己インダクタンスが高くなり過ぎ、これに対応して高周波妨害電流に対するインピーダンスが高くなってしまう。
【0008】
特に好適な例では、ランプの透光性遮蔽体が、放電容器を包囲する外側管の壁部内又は壁部上、例えば壁部の内面又は外面上に、例えばFTOの導電性で透光性の材料層、又は例えば金属の導電性材料の格子構造体を有するようにする。現在使用されている殆どの種類のガス放電ランプは外側管を有しており、この外側管は、放電容器を包囲し通常この放電容器に固着されており、ガス放電ランプにより発生する紫外線放射を遮蔽するよう作用する。この外側管は、放電容器の極めて近くに存在してこの放電容器をほぼ完全に包囲しているため、この外側管上又は内に設けられた透光性遮蔽体も放電容器の極めて近くに存在し放電容器をほぼ完全に遮蔽する。このような外側管の壁部上又は内の透光性遮蔽体は、比較的安価で簡単に製造することができる。
【0009】
原理的には、ガス放電ランプの透光性遮蔽体と、残りの電気システムの遮蔽体との間を少なくとも高周波に関して適切に結合することは、特に、電極をランプの電気システムに接続するための給電ラインを構造する方法に応じて種々の態様で達成することができる。
【0010】
好適例では、前記透光性遮蔽体及び前記接続手段は、この透光性遮蔽体が、ガス放電ランプの2つの互いに対向する位置において、ガス放電ランプを点灯させるのに使用される電気システムの遮蔽体に少なくとも高周波に関して点灯中接続されるよう配置する。
【0011】
好適な変形例では、少なくとも1つの電極を、遮蔽体を有する給電ライン、例えば同軸ケーブルの中央リードに電気接続する。この場合、ガス放電ランプの透光性遮蔽体は、給電ラインに関連する遮蔽体、即ち同軸ケーブルの外側導体に電気接続する。しかし、同様にしてガス放電ランプの2つ電極を、同様な遮蔽体を有するそれぞれの給電ラインに接続することができる。この場合、2つの給電ラインの遮蔽体をそれぞれガス放電ランプの透光性遮蔽体に接続することにより、同軸ケーブルの遮蔽体がガス放電ランプの透光性遮蔽体に接続され、且つ同軸ケーブルの中央リードがガス放電ランプの電極により中断されている連続的な同軸ケーブルの一部としてガス放電ランプを見なしうるようになる。
【0012】
ガス放電ランプの装着構造によっては、ガス放電ランプの透光性遮蔽体が、点灯中にランプホルダハウジングの遮蔽体に直接電気接続されるようにもしうる。このために適しているのは、例えば、金属のランプスタータハウジング又は導電性被膜を設けたハウジングであって、このハウジングは同時にガス放電ランプをヘッドライトに挿入するためのランプホルダともなるハウジングである。この変型例には、スタータ回路が、同心遮蔽体システム内に必然的に含まれることになるという利点がある。
【0013】
他の好適例では、電極用の1つの給電ラインを、ガス放電ランプの透光性遮蔽体の内側で好ましくは電極に平行に案内する。この変更例では、ガス放電ランプの透光性遮蔽体は、一方の側でのみ、例えばランプホルダハウジング側でのみ電気システムの遮蔽体に電気接続する。この場合、ガス放電ランプの透光性遮蔽体がランプホルダハウジングとの接触位置まで完全に封止され、この位置で電極用の給電ラインがランプホルダハウジング内に入り込み、それにより放電容器を遮蔽体材料により完全に包囲するようにするのが特に好ましい。
【0014】
他の好適例では、ガス放電ランプの透光性遮蔽体自体により、1つの電極に電気接続されている給電ラインを構成する。この例は、個別の遮蔽された給電ラインを必要としないので比較的経済的である。現在のガス放電ランプは、通常、250〜1000Hz、しばしば400Hzの周波数とした12V及び−73Vのピーク電圧間の交流電圧により点灯させるので、戻りラインとして作用する遮蔽体を、通常大地電位にあるランプの電気システムの遮蔽体に直接接続することができない。従って、このようなシステムでは、適切な容量性素子、例えば1つ以上の結合キャパシタを介して電気システムの遮蔽体に高周波結合する。これにより、ランプの遮蔽体が、ランプホルダハウジングの内側の電気ランプシステムにつながる給電ラインに接続されることになる。
【0015】
ガス放電ランプの透光性遮蔽体は、充分な透光性が得られるように構成する必要があるので、一般にこの透光性遮蔽体の導電率は比較的低くなる。従って、最後に説明した例の好適な変型例では、更に、給電ラインとして作用する透光性遮蔽体に接続された電極を、ガス放電ランプのこの透光性遮蔽体に平行に配置された給電ライン、例えば、外側管の内側又は外側に配置されたワイヤ又は導体細条に接続する。この構造では、自己インダクタンスが低くなることにより、減結合キャパシタを介して電気システムの遮蔽体に高周波結合されたランプの透光性遮蔽体を介して高周波電流を流すようにする。これに対し、ランプ出力の大部分を形成する低周波電流は、抵抗値は低いが自己インダクタンスの比較的高い、即ち高周波電流に対するインピーダンスが高い平行な細い導体を通って流れることになる。このことにより、特に電極に高電圧が印加される点弧段階中に、透光性遮蔽体に接続されている電極への給電ラインの抵抗値が低くなり過ぎることが防止される。
【0016】
この変型例では、追加の戻りライン中に、誘導性素子、例えばフェライトビードやこれに類似する素子を設けるのが好ましい。この誘導性素子は、追加の低域通過フィルタとして作用し、平行な給電ラインをほぼ低周波電流のみが流れることを確実なものとする。
【0017】
他の特に好適な例では、更に1つの電極に対する給電ラインとして作用するガス放電ランプの透光性遮蔽体を、容量性素子を介して他の電極に接続する。この容量性素子は、電極間の高周波短絡回路を構成するため、更に妨害電磁放射を低減させる。
【0018】
本発明によるガス放電ランプは、原理的には、所望に応じていかなるヘッドライト又は照明装置にも使用することができる。この場合、これらには、ガス放電ランプの遮蔽体を電気システムの透光性遮蔽体に接続する適切な接続手段であって、ガス放電ランプの透光性遮蔽体がこの接続手段に結合された場合に、電極を有する放電容器を包囲する同心遮蔽体システムが形成されるのを確実にする当該接続手段を設ける必要があるだけである。このことは、例えば、ランプホルダハウジング上に適切な接点を存在させる必要があるに過ぎないことを意味する。ヘッドライト内のガス放電ランプをリフレクタ及び他の追加の遮蔽部材により遮蔽することを目的としてヘッドライトを追加的に特別な構造にする必要はない。ガス放電ランプ自体の透光性遮蔽体と、妨害放射の発生源になる放電容器との間の物理的距離を短くすることにより、遮蔽力は特に有効なものとなる。
【0019】
本発明によるガス放電ランプは、追加の遮蔽手段を有するヘッドライトにおいても使用しうることに注意されたい。
【実施例】
【0020】
本発明を、添付の図面及び実施例を参照して以下に、より詳細に説明する。図面において同等の機能を有するユニットには同じ参照番号を付してある。
従来技術によるガス放電ランプの電気構成部材の動作原理は図1の等価回路図から明らかである。このようなガス放電ランプは、主として、不活性ガスを充填した放電容器2を有し、この放電容器2内には互いに対向するその両側から電極4及び5が導入されている。これら電極4及び5は、それぞれ給電ライン15及び16を介して駆動回路20に接続されている。この駆動回路20は、一方の入力端において大地電位に接続されており、且つ他方の入力端において、電源電圧を生じる電圧源に接続されている。このようなガス放電ランプを自動車のヘッドライトに使用する場合、電源電圧は通常自動車のバッテリー電圧になる。
【0021】
駆動回路は、通常、導電性の接地したハウジング20、すなわち大地電位にあるハウジング内に存在している。これにより、駆動回路はその周囲から電磁的に遮蔽されている。同様に、給電ライン15及び16は、遮蔽体19の内側を通ってガス放電ランプまで延在している。図1に示されているように、この遮蔽体19は、通常適切な接続部21を介して駆動回路のハウジング20に接続されている。このように、ガス放電ランプを点灯させる為の電気システム全体が、大地電位にある遮蔽体により遮蔽されている。
【0022】
ランプを点弧させるには、給電ライン15及び16を介して電極4及び5に高電圧を印加する。この高電圧は、ここでは駆動回路の一部であるイグナイタにおいて入力電圧から発生される。点弧後、ガス放電ランプ1は、例えば12V及び−73Vのピーク電圧を有する、例えば400Hzの交流電圧により点灯される。この交流電圧も、駆動回路により発生される。或いは又、高電圧を発生させるためのイグナイタをランプ1に直接、例えば、ランプホルダにすぐ隣接する別個のハウジング内又はランプホルダ自体内に配置することができる。
【0023】
図1から明らかなように、システム全体のうちで遮蔽されていない唯一の部分は、放電容器2及び電極4,5を具えるガス放電ランプ1自体である。このことにより、アンテナとして作用するランプ1の電極4,5と、ランプ1の周囲の部材、例えばリフレクタとの間に不所望な寄生容量CP が生じる。高周波電流がこれらの寄生容量CP を介してランプの周囲に流れ、高周波電磁放射と等価なものになるおそれがある。ランプに流れる電流と、戻り電流との差に相当するこのいわゆるコモンモード電流ICMを、この等価回路図では給電ライン16上に大きな矢印により示してある。図1に示すように、従来技術による通常のランプでは、このコモンモード電流は0より大きくなる。
【0024】
このコモンモ電流、即ちランプ1の妨害電磁放射の強度を低減させるために、本発明によれば、放電容器2を、導電性で透光性の遮蔽体により包囲し、この放電容器2のほぼ全体を遮蔽する。この遮蔽体は適切な接続手段を有し、それにより、この遮蔽体が、ガス放電ランプ1を点灯させるために使用する電気システムの遮蔽体19に対し少なくとも高周波に関し自動的に接続され、ガス放電ランプ1の点灯中に電極4,5を有する放電容器2を包囲する同心遮蔽体システムが形成されるようにする。
【0025】
図2は、本発明によるランプ1の第1実施例を示す。ここに示すランプ1は、代表的なMPXL(マイクロパワーキセノンライト)ランプ1である。他の実施例におけるランプもMPXLランプ1とする。但し、本発明は、このようなMPXLランプに限定されるものではなく、原理的には他の種類のガス放電ランプ、特に他のHIDランプに使用することができる。
【0026】
図2に示すように、このようなMPXLランプ1は、通常石英ガラスから形成した内側放電容器2(内側管又はバーナーとも称する)を有する。この放電容器2内即ち放電容器2の内部空間3内には、第1電極4及び第2電極5が、通常のように延在している。これら電極4及び5は、これらに隣接する放電容器の端部6及び7により包囲されており、内部空間3が周囲から封止されている。僅か数立方ミリメートルの放電容器の内部空間3内には、不活性ガス、この場合はキセノンが比較的高圧で入れられている。
【0027】
放電容器2は外側管8により包囲されており、この外側管8は、放電により生ずる特に紫外線放射を吸収させるために、ガス特に空気が充填され、周囲雰囲気に対して封止されている。この外側管8も通常石英ガラスから形成されており、放電容器2の端部6及び7においてこの放電容器2に固着されている。
【0028】
図2に示す実施例においては、この外側管8の外面に導電性で透光性の遮蔽体9が設けられている。この遮蔽体は、例えば、FTO(フッ化物をドープした錫酸化物)のような導電性で透光性の材料からなる層を有するものとしうる。或いは又、例えば、この遮蔽体を金属格子にすることができるが、この金属格子は、充分な光を透過するようあまり細かい目を有さないようにする必要がある。この外側遮蔽体9により、放電容器2は完全に遮蔽される。この遮蔽体9は、端部6及び7において導電性のエンドキャップ10及び接点リング11にそれぞれ接続されている。ガス放電ランプ1は、接点リング11を有する端部7により、ランプホルダハウジング17(線図的にのみ示す)内に保持されている。ランプ1はこれをランプホルダ内に挿入すると、ランプホルダハウジング17とランプ1の遮蔽体9との間の金属接触を自動的に達成する。この金属のランプホルダハウジング17は駆動回路の遮蔽体にも接続されている。
【0029】
更に、ランプホルダハウジング内にランプ1を挿入することにより、同時に一方の電極4と駆動回路につながる給電ライン15との間も接続されることになる。他方の電極5は、同軸ライン12の中央リード13に接続されており、この中央リードは放電ランプに隣接してランプホルダハウジング内に挿入されており、そこで駆動回路20につながる給電ライン16に接続されている。同軸ケーブル12の中央リード13及び電極4と、給電ライン16及び15との接触は、それぞれの場合について通常のプラグ接続により行っているが、ここでは図面を簡単にするためにこのプラグ接続は図示していない。
【0030】
同軸ケーブルの外側リード14は、放電容器2の上端部6、即ちランプホルダ側とは反対側の部分におけるエンドキャップ10に接続されており、これにより、同軸ケーブル12の外側リード14が、ガス放電ランプ1の遮蔽体9に接続される。同軸ケーブルの外側リード14は、適切な接点18を介してもランプホルダハウジング17に接続されている。このようにして放電容器2を含むシステム全体が、同軸ケーブルの内側に遮蔽される。
【0031】
上述した種類の遮蔽体を、図2の実施例に対する図3に示す等価回路図により再度説明する。図3には、ランプ1を点灯させるための電気システムの構造が、従来技術のランプに対する図1の等価回路図におけるのと同様にして示されている。しかし、図3では、外側管8上の遮蔽体9と、この遮蔽体9に接続されている同軸ケーブルの遮蔽体14とが相俟って、ガス放電ランプ1と、このガス放電ランプ近傍にある給電ライン13とを完全に遮蔽している。遮蔽体9及び14は、両端部における適切な接続素子11及び18を介してランプ1の電気駆動システムの遮蔽体、即ち給電ライン15及び16の遮蔽体19に直接接続されている。この場合、電極4及び5と遮蔽体9との間に寄生容量CP が接続されている。妨害電磁放射を生ずるおそれのある高周波電流は、遮蔽体9及び14において誘導されて電気駆動システムの遮蔽体19,21,20を通って逆流する電流により補償される。給電ライン15及び16を介してランプ1に向かって流れる電流と、これらの給電ライン15及び16並びに遮蔽体19を介して流れる戻り電流との総合的なバランスは、実際上、無視しうるほど小さいコモンモード電流ICMを含むものであり、このことは妨害電磁放射が僅かしか放射されないことに相当する。
【0032】
図4は、本発明の他の実施例であり、この場合ガス放電ランプ1が、外側管8の外側に他の支持構造体22、例えば追加の石英ガラス円筒体22を有するものである。この石英ガラス円筒体22は、ガス放電ランプ1の他の構成部材に固着されている。この追加の石英ガラス円筒体22の外側面又は内側面上には、遮蔽体23を形成する導電性の層又は格子がある。遮蔽体は、図4に示すのとは異なり端部も封止して、電極4及び5を有する放電容器2と、外側管8と、ランプホルダハウジング側とは反対側の電極5につながる給電ライン25とが、完全に遮蔽されるようにするのが好ましい。この場合も、追加の石英ガラス円筒体22上の遮蔽体23は、接点素子24を介して導電性のランプホルダハウジング17に接続されている。給電ライン25及び電極4は、通常のようにプラグ接続体(図示せず)により駆動回路から生じる給電ライン16及び15に接続されている。
【0033】
図5は、図4の実施例に極めて類似した実施例を示す。ランプホルダハウジング側とは反対側の電極5は、本例でも、放電容器2を包囲する遮蔽体9の内側にある給電ライン26を介して接続されている。但し、遮蔽体9は、図2の実施例のようにガス放電ランプ1の外側管8の壁部上に直接設けられている。この場合、ガス放電ランプ1の上端部6は、導電性のエンドキャップ10で封止されているため、遮蔽体9は、ガス放電ランプ1を囲んで完全に封止されている。給電ライン26は、例えばワイヤ片の形態にして、この端部6の内側で電極5に固着されている。この給電ライン26はこの固着箇所から外側管8の内壁に沿ってランプホルダハウジング側の端部7まで延在している。給電ライン26は、この端部7でランプホルダハウジング側の電極4に対して平行に接点リング11を貫通しており、この場合もこの接点リング11を介して、遮蔽体9がランプホルダハウジング17に接続されている。給電ライン26は、通常のようにして駆動回路から生じる給電ライン16に接続されており、電極4も同様にして給電ライン15に接続されている。本例によれば、ランプホルダハウジング側とは反対側のガス放電ランプ1の端部に外部給電ラインを設ける必要がなく、また遮蔽体用の追加の支持構造体を必要としないという利点が得られる。或いは又、戻りの給電ライン26を、ワイヤに代えて、外管8の内壁上に設けた導体細条から構成することができる。
【0034】
図4及び図5の2つの実施例においても、同心遮蔽体システム内で放電容器2に電極4及び5が完全に収容されているが、これらの実施例においては最初の実施例と相違して、同心遮蔽体システム、即ち外側遮蔽体の内側において、これら電極に接続される一方の給電ライン及び他方の給電ラインが互いに平行に延在している。このことを、図6に示す図4及び図5の実施例の等価回路図において再度説明する。この場合も電気駆動システム及びその遮蔽体の構造は、図1及び図3の等価回路図に示したものと同じである。図3の実施例との相違点は、ランプホルダハウジングの側とは反対側の電極5につながる給電ラインが遮蔽体9,23の内側において電極4,5に平行に配置されているため、遮蔽体9,23が、端部を封止したエンベロープとして平行な給電ライン及び電極4,5を包囲することである。
【0035】
図6の等価回路図を、遮蔽されていない従来技術のランプを示す図1の等価回路図と比較することから明らかなように、図6では、図1と相違して、電極4及び5と遮蔽体9,23との間に寄生容量CP が接続されており、遮蔽体9,23は、駆動回路につながる給電ライン15,16の遮蔽体19に接続部11,24を介して接続されている。図4及び図5に示す実施例では、遮蔽体19は、ランプの一側にあるランプホルダハウジング17により形成されている。この場合、図3の例のように、電流のバランスは、寄生容量CP を流れる高周波電流が戻るように遮蔽体19を再び流れ、コモンモード電流ICMが実際上0になるようなものとなる。
【0036】
図7は、構造をこれまでの実施例より更に簡単にした他の実施例を示す。本例では、ランプホルダとは反対側の電極5が接点27を介して、関連する端部6の導電性エンドキャップ10に接続され、従って外側管8の外面にある遮蔽体9に接続されている。この場合、遮蔽体9は、電極5に対する給電ライン又は戻りラインとしても作用する。遮蔽体9は、ランプホルダハウジング側の端部7にある接点リング11にも接続されている。しかし、本例では、接点リング11は、導電性のランプホルダハウジング(遮蔽体)17と金属接触しておらず、可能な限り高い容量の1つ以上の減結合キャパシタ28を介してランプホルダハウジングに接続されている。この接点リング11は、更に駆動回路から生じる給電ラインに16に導電接続されているため、給電ライン16と電極5との間が遮蔽体9を介して接続されている。ランプホルダハウジング側の電極4は、他の給電ライン15に接続されている。給電ライン15,16の回路への接続は、この場合も当業者にとって既知の通常の方法によりなされている。
【0037】
更に、戻りラインとして作用する遮蔽体9とランプホルダハウジング側の電極4とは、他の減結合キャパシタ29により相互接続されている。この減結合キャパシタ29は、ランプの一部として形成しても、又はランプホルダハウジング内に一体化してもよく、これにより例えば、給電ライン15及び16をこれらの端部で相互接続することができる。
【0038】
この構造の等価回路図を図8に示す。この等価回路図が示すように、遮蔽体9は、電極5と、駆動回路20から生じる給電ライン16との間の接続体として作用する、即ち遮蔽体9自体が、給電ラインの一部を形成している。妨害電磁放射の原因となる、ガス放電ランプ1から発生する高周波電流は、減結合キャパシタ即ちキャパシタ28を介して、ガス放電ランプ1に給電する作用をする電気システムの遮蔽体19に結合される。この場合もこれにより、コモンモード電流ICMがほぼ0になるような電流バランスが得られるため、周囲への妨害電磁放射は無視しうる程度に小さいものとみなすことができる。更に、減結合キャパシタ29は、ランプ1内又はランプにすぐ隣接する2つの給電ライン15及び16間で高周波短絡回路を構成する。
【0039】
本例では、遮蔽体9を給電ラインとして使用し且つ外側管8の外側に存在させているため、本例はランプホルダハウジングとは反対側の電極5を接地接続しうるようにした構造の駆動回路に使用するのに特に適している。他の実施例(図示せず)では、遮蔽体を、外管の壁部の内部に設けるか、外管の内壁上に存在させる。この構造では遮蔽体に触れることができないため、このようなランプは、通常のAC動作にも適している。
【0040】
図9は、図7の実施例を若干変更したものを示す。本例における図7の実施例との重要な相違点は、例えばワイヤの形態の個別のライン30が、接点27から遮蔽体9に対して平行に延在して給電ライン16に接続されていることである。この個別のライン30には、ガス放電ランプ1の上部エンドキャップ10にある接点27のすぐ近くで、誘導性素子として作用するフェライトビード31が設けられている。
【0041】
この構造を、図10の等価回路図に示す。遮蔽体9に対して平行に接続されたライン30は、ランプの点灯の際、特に点弧の際に必要なより大きな電流を流すように作用する。このことは、この遮蔽体9が、必要な光透過性を得るために比較的薄肉の層又は極めて目の粗い格子によってのみ形成されるため、低周波電流に対しては遮蔽体9により形成されるラインの抵抗値があまりにも高くなってしまうことに関連する。これに対して、平行なライン30では、面積の大きい遮蔽体9と比べて、オーム抵抗は小さくなるが、自己インダクタンスは比較的高くなるため、このライン30の高周波電流に対するインピーダンスは極めて高くなる。従って、高周波電流は、予想されるように優先的に遮蔽体9及び減結合キャパシタ28を通って、ランプホルダハウジングの遮蔽体17及び給電ライン15及び16の遮蔽体19に向かって流れる。ここで、フェライトビード31は、平行なライン30を通って高周波電流が流れるのを防ぐ追加の低域通過フィルタとして作用するため、この場合もこのライン30はアンテナとして作用せず、周囲に高周波妨害放射を送出することもない。ガス放電ランプを点灯させるのに必要な400Hzレンジの低周波電流と、抵抗の低い個別のライン30を通って優先的に流れる直流成分とのみが存在することになる。この構造によれば、ランプの点灯に必要な低周波電流に対してコンダクタンスを充分な値にする必要がない、最適な透光性の遮蔽体9を製造しうるという利点が得られる。
【0042】
図11は、図9及び図10に示す実施例を僅かに変更した変形例の等価回路図である。本例では、個別のワイヤにより平行なライン30を設ける代わりに、外側管8の外面上に薄肉の導体細条を設けているが、最終的な効果はワイヤにより平行なライン30を形成した場合と同じである。他の全ての例において、このような薄肉の導体細条を遮蔽体層の内側に用いて、遮蔽体層の抵抗を低減させ、従って妨害電流の排出効率を高めるようにするのも好ましい。
【0043】
図面に示したガス放電ランプ及びこれらの等価回路図は、単なる実施例に過ぎず、本発明の範囲を逸脱することなく多くの観点から変更しうるものであることに注意すべきである。例えば、全ての実施例において、遮蔽体9は、外側管8の内面上に形成することができ、又は外側管8の壁部内に特別な層を以て形成することができる。また、ランプは、端部をランプホルダハウジング内に挿入する以外の方法で保持することができ、例えば、ランプは、上述した実施例においてランプホルダハウジング内に存在させた側で同軸ケーブル又は類似の素子に接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1は、電気ランプシステムにより駆動される従来技術によるガス放電ランプの等価回路図である。
【図2】図2は、本発明によるガス放電ランプの第1の実施例を示す線図的な長手方向断面図である。
【図3】図3は、図2のガス放電ランプの等価回路図である。
【図4】図4は、本発明によるガス放電ランプの第2の実施例を示す線図的な長手方向断面図である。
【図5】図5は、本発明によるガス放電ランプの第3の実施例を示す線図的な長手方向断面図である。
【図6】図6は、図4又は図5のガス放電ランプの等価回路図である。
【図7】図7は、本発明によるガス放電ランプの第4の実施例を示す線図的な長手方向断面図である。
【図8】図8は、図7のガス放電ランプの等価回路図である。
【図9】図9は、本発明によるガス放電ランプの第5の実施例を示す線図的な長手方向断面図である。
【図10】図10は、図9のガス放電ランプの等価回路図である。
【図11】図11は、図9のガス放電ランプに類似した構造のガス放電ランプの等価回路図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電容器と、
この放電容器内に突出した電極と、
この放電容器を遮蔽し、且つ接続手段を有する導電性の透光性遮蔽体であって、前記接続手段が、当該透光性遮蔽体と、ガス放電ランプを点灯させるのに使用される電気システムの遮蔽体とを少なくとも高周波に関して接続し、ガス放電ランプの点灯中に前記電極を有する前記放電容器を包囲する同心遮蔽体システムを形成するようになっている当該透光性遮蔽体と
を有するガス放電ランプ。
【請求項2】
請求項1に記載のガス放電ランプにおいて、
前記ガス放電ランプが、前記放電容器を包囲する外側管を有しており、前記透光性遮蔽体が、この外側管の壁部上又は壁部内に配置された導電性で透光性の材料層又は導電性材料の格子構造体を有することを特徴とするガス放電ランプ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のガス放電ランプにおいて、
前記透光性遮蔽体が、前記ガス放電ランプの点灯中に、当該ガス放電ランプの互いに対向する2つの位置において、ガス放電ランプを点灯させるのに使用される電気システムの前記遮蔽体に少なくとも高周波に関して接続されるようになっていることを特徴とするガス放電ランプ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のガス放電ランプにおいて、
少なくとも1つの前記電極が、遮蔽体を有する給電ラインに電気接続されており、前記放電ランプの前記透光性遮蔽体が前記給電ラインの前記遮蔽体に導電接続されていることを特徴とするガス放電ランプ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のガス放電ランプにおいて、
前記給電ラインがガス放電ランプの前記透光性遮蔽体の内側に延在し、且つ1つの前記電極に接続されていることを特徴とするガス放電ランプ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のガス放電ランプにおいて、
前記ガス放電ランプの前記透光性遮蔽体が、当該ガス放電ランプの点灯中に、ランプホルダ遮蔽体に電気接続されているようになっていることを特徴とするガス放電ランプ。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のガス放電ランプにおいて、
前記ガス放電ランプの前記透光性遮蔽体が、給電ラインとして作用し、且つ1つの前記電極に電気接続されていることを特徴とするガス放電ランプ。
【請求項8】
請求項7に記載のガス放電ランプにおいて、
前記1つの電極が、前記ガス放電ランプの前記透光性遮蔽体に平行に配置された追加の給電ラインに接続されていることを特徴とするガス放電ランプ。
【請求項9】
請求項8に記載のガス放電ランプにおいて、
戻り用の前記追加の給電ラインに、誘導性素子が設けられていることを特徴とするガス放電ランプ。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれか一項に記載のガス放電ランプにおいて、
前記ガス放電ランプの前記透光性遮蔽体が、当該ガス放電ランプの点灯中に、容量性素子を介してランプホルダの遮蔽体に結合されているようになっていることを特徴とするガス放電ランプ。
【請求項11】
請求項7〜10のいずれか一項に記載のガス放電ランプにおいて、
前記ガス放電ランプの前記透光性遮蔽体が、容量性素子を介して他の電極に接続されていることを特徴とするガス放電ランプ。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載のガス放電ランプと、このガス放電ランプを点灯させるための電気システムとを具えるヘッドライト又は照明装置であって、前記電気システムが遮蔽体を有し、前記ガス放電ランプの前記透光性遮蔽体が、少なくとも高周波に関して前記電気システムの前記遮蔽体に接続され、放電容器とその電極とを包囲する同心遮蔽体システムを形成しているヘッドライト又は照明器具。
【請求項1】
放電容器と、
この放電容器内に突出した電極と、
この放電容器を遮蔽し、且つ接続手段を有する導電性の透光性遮蔽体であって、前記接続手段が、当該透光性遮蔽体と、ガス放電ランプを点灯させるのに使用される電気システムの遮蔽体とを少なくとも高周波に関して接続し、ガス放電ランプの点灯中に前記電極を有する前記放電容器を包囲する同心遮蔽体システムを形成するようになっている当該透光性遮蔽体と
を有するガス放電ランプ。
【請求項2】
請求項1に記載のガス放電ランプにおいて、
前記ガス放電ランプが、前記放電容器を包囲する外側管を有しており、前記透光性遮蔽体が、この外側管の壁部上又は壁部内に配置された導電性で透光性の材料層又は導電性材料の格子構造体を有することを特徴とするガス放電ランプ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のガス放電ランプにおいて、
前記透光性遮蔽体が、前記ガス放電ランプの点灯中に、当該ガス放電ランプの互いに対向する2つの位置において、ガス放電ランプを点灯させるのに使用される電気システムの前記遮蔽体に少なくとも高周波に関して接続されるようになっていることを特徴とするガス放電ランプ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のガス放電ランプにおいて、
少なくとも1つの前記電極が、遮蔽体を有する給電ラインに電気接続されており、前記放電ランプの前記透光性遮蔽体が前記給電ラインの前記遮蔽体に導電接続されていることを特徴とするガス放電ランプ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のガス放電ランプにおいて、
前記給電ラインがガス放電ランプの前記透光性遮蔽体の内側に延在し、且つ1つの前記電極に接続されていることを特徴とするガス放電ランプ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のガス放電ランプにおいて、
前記ガス放電ランプの前記透光性遮蔽体が、当該ガス放電ランプの点灯中に、ランプホルダ遮蔽体に電気接続されているようになっていることを特徴とするガス放電ランプ。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のガス放電ランプにおいて、
前記ガス放電ランプの前記透光性遮蔽体が、給電ラインとして作用し、且つ1つの前記電極に電気接続されていることを特徴とするガス放電ランプ。
【請求項8】
請求項7に記載のガス放電ランプにおいて、
前記1つの電極が、前記ガス放電ランプの前記透光性遮蔽体に平行に配置された追加の給電ラインに接続されていることを特徴とするガス放電ランプ。
【請求項9】
請求項8に記載のガス放電ランプにおいて、
戻り用の前記追加の給電ラインに、誘導性素子が設けられていることを特徴とするガス放電ランプ。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれか一項に記載のガス放電ランプにおいて、
前記ガス放電ランプの前記透光性遮蔽体が、当該ガス放電ランプの点灯中に、容量性素子を介してランプホルダの遮蔽体に結合されているようになっていることを特徴とするガス放電ランプ。
【請求項11】
請求項7〜10のいずれか一項に記載のガス放電ランプにおいて、
前記ガス放電ランプの前記透光性遮蔽体が、容量性素子を介して他の電極に接続されていることを特徴とするガス放電ランプ。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載のガス放電ランプと、このガス放電ランプを点灯させるための電気システムとを具えるヘッドライト又は照明装置であって、前記電気システムが遮蔽体を有し、前記ガス放電ランプの前記透光性遮蔽体が、少なくとも高周波に関して前記電気システムの前記遮蔽体に接続され、放電容器とその電極とを包囲する同心遮蔽体システムを形成しているヘッドライト又は照明器具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2006−520999(P2006−520999A)
【公表日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−506356(P2006−506356)
【出願日】平成16年3月9日(2004.3.9)
【国際出願番号】PCT/IB2004/000792
【国際公開番号】WO2004/083900
【国際公開日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips Electronics N.V.
【住所又は居所原語表記】Groenewoudseweg 1,5621 BA Eindhoven, The Netherlands
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年3月9日(2004.3.9)
【国際出願番号】PCT/IB2004/000792
【国際公開番号】WO2004/083900
【国際公開日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips Electronics N.V.
【住所又は居所原語表記】Groenewoudseweg 1,5621 BA Eindhoven, The Netherlands
【Fターム(参考)】
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