説明

ガス溶解液体製造装置及びガス溶解液体の製造方法

【課題】原料液体の流量変動による溶解ガス量の変動が小さく、かつ、低流量になった際にも溶解ガス量の低下を防止する。
【解決手段】超純水原水を中空糸モジュール[A]に向かって流入させ、分岐部位bにて、小流量の流れと大流量の流れとに分配される。小流量の流れはそのまま中空糸モジュール[A]内の中空糸膜の内部に導かれ、大流量の流れはバイパス管路d1、d2、d3に導かれる。他方、炭酸ガスをガス供給口3から中空糸モジュール[A]内に導き、中空糸を透過し、中空糸内の超純水原水に溶解し、炭酸ガス付加超純水を得る。この際、該装置に導入される超純水の流量が初期の1/2以下となった時点でバイパス管(d)の一つを閉塞させ、次いで、最終的に得られる洗浄液の比抵抗値を追跡しながら、他の開閉バルブを閉塞させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に半導体及び液晶分野での洗浄用水に用いられる超純水の比抵抗を調整などに適する、原料液体にガスを溶解させるための装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハ、液晶パネル、液晶ディスプレー等の製造工程では超純水を用いた洗浄が施される。この際、洗浄に使用する超純水は、そのままでは比抵抗が高いために洗浄時に静電気が発生し、絶縁破壊や微粒子が再付着することによって製品歩留まりに著しく悪影響を及ぼすことが知られている。その為、半導体ウエハ等の洗浄水として、超純水に炭酸ガスもしくはアンモニアガスを溶解させ、解離平衡により発生したイオンにより比抵抗を低下させる方法が通常用いられており、その炭酸ガス又はアンモニアガスを超純水に溶解させる手段として、疎水性の中空糸膜モジュールを用い、該モジュールを構成する中空糸内に超純水を流通させ、該中空糸外部に炭酸ガス又はアンモニアガスを流通させる手段が知られている。然し乍ら、半導体ウエハ基板の洗浄、ダイシング等の工程では、洗浄水の流量変動が激しく、この際、流動変動に伴い炭酸ガス又はアンモニアガスの付加量が変化するため、洗浄水の比抵抗値が一定しない、という問題が生じていた。そこで、流量の変動によって流量が変動しても比抵抗が変動しない洗浄水の調整手段として、消費量に応じて供給される超純水を、分配装置によって流量に大小のある2流に一定比率で分流し、膜を隔てて液体とガスを流すための中空糸膜モジュールに一方の流れを供給して小流量のガス高濃度付加液体を生成させ、そのガス高濃度付加液体を大流量に分けられた原料液体と合流させて均一に混合し、所定の溶存ガス濃度に調整した液体とする方法が知られている(下記特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、この分配装置によって超純水を2流に一定比率で分流し、一方を中空糸膜モジュールにてガスを溶解させ、次いで合流させる方法では、超純水の流量が低流量になると、バイパス側に殆ど超純水が流れてしまい、炭酸ガスもしくはアンモニアガスを溶解させる中空糸膜モジュールに超純水が殆ど流れなくなってしまい、比抵抗が上昇してしまうものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許3951385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明が解決しようとする課題は、原料液体の流量変動による溶解ガス量の変動が小さく、かつ、低流量になった際にも溶解ガス量が著しく低下することのない、ガス溶存液の製造に適した装置、及びこれを用いたガス溶解液体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、中空糸膜モジュールを用いて原料液体にガスを溶解させる方法であって、原料液体を多段の分配装置によって複数のバイパスラインを配設すると共に、該バイパスラインを通過しない一つの流路を中空糸膜モジュールに導入、ガスの溶解化を図ると共に、ガス付加液体を、前記パイパスラインを通過した原料液体と合流させる装置を用い、該装置に導入される原料液体の流量が少なくなるに連れて、順次前記バイパスラインを段階的に閉塞して、バイパスライン中の圧力損失と中空糸膜モジュール中の圧力損失とのバランスを図ることによって、原料液体の流量が少なくなった際の溶解ガス濃度の著しい低下を効果的に抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、ガス供給口、液体供給口、液体排出口を有するハウジング部と、該ハウジング部内に、前記ガス供給口から供給されるガスを前記液体供給口から供給される液体に溶解させることができる様に配設された中空糸膜を有する中空糸膜モジュール[A]と、
前記液体供給口に接合され、かつ、分岐部位(b)を有する液体導入管[B]と、
前記液体排出口に接合され、かつ、分岐部位(c)を有する液体排出管[C]と、
液体導入管[B]内を流通する液体が前記中空糸膜モジュール[A]を経由することなく直接前記液体排出管[C]に流入するように前記分岐部位(b)と前記分岐部位(c)とを結節するバイパス部位[D]とを有しており、かつ、該バイパス部位[D]が、並列に複数の流路を形成するように配設された複数のバイパス管(d)により構成されており、かつ、この複数のバイパス管(d)の少なくとも1つが開閉可能な機能を有することを特徴とするガス溶解液体製造装置に関する。
【0008】
本発明は、更に、前記ガス溶解液体製造装置を用い、該装置の液体導入管[B]から原料液体を導入し、質量基準でその1/5000乃至1/2の量を液体供給口から中空糸膜モジュール[A]内に流通させ、残余の液体をバイパス流路[D]に流通させ、かつ、前記中空糸膜モジュール[A]中のガス供給口からガスを供給すると共に、該装置に導入される原料液体の流量が初期の1/2以下となった時点でバイパス管(d)の一つを閉塞させることを特徴とするガス溶解液体の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、原料液体の流量変動による溶解ガス量の変動が小さく、かつ、低流量になった際にも溶解ガス量が著しく低下することのない、ガス溶解液体の製造に適した装置、及びこれを用いたガス溶解液体の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】ガス溶解液体製造装置の模式図である。
【図2】内部潅流型モジュールの断面図である。
【図3】実施例1の比抵抗値の変化を示すグラフである。
【図4】比較例1で用いたガス溶解液体製造装置の模式図である。
【図5】比較例1の比抵抗値の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のガス溶解液体製造装置は、前記した通り、ガス供給口、液体供給口、液体排出口を有するハウジング部と、該ハウジング部内に、前記ガス供給口から供給されるガスを前記液体供給口から供給される液体に溶解させることができる様に配設された中空糸膜を有する中空糸膜モジュール[A]と、
前記液体供給口に接合され、かつ、分岐部位(b)を有する液体導入管[B]と、
前記液体排出口に接合され、かつ、分岐部位(c)を有する液体排出管[C]と、
液体導入管[B]内を流通する液体が前記中空糸膜モジュール[A]を経由することなく直接前記液体排出管[C]に流入するように前記分岐部位(b)と前記分岐部位(c)とを結節するバイパス部位[D]とを有しており、かつ、該バイパス部位[D]が、並列に複数の流路を形成するように配設された複数のバイパス管(d)により構成されており、かつ、この複数のバイパス管(d)の少なくとも1つが開閉可能な機能を有することを特徴とするものである。
【0012】
ここで、本発明のガス溶解液体製造装置を図1に示した模式図に基づき説明すれば、該ガス溶解液体製造装置は、中空糸膜モジュール[A]の液体供給口1に分岐部位(b)を有する液体導入管[B]が接合され、該配管は該分岐部位(b)から、分岐してバイパス部位[D]に供給液の一部が流入するようにバイパス流路[D]が形成されている。また、バイパス部位[D]は、更に並列的に流路を分割するように複数のバイパス管(d)が配設され、たとえば、図1では3本のバイパス管(d1)〜(d3)から形成されている。一方、中空糸膜モジュール[A]の液体排出口2には、分岐部位(c)を有する液体排出管[C]が接合され、また、前記分岐部位(c)には、前記複数のバイパス管(d)の他端が収束され接合されている。また、前記した複数のバイパス管(d)の少なくとも1つは開閉可能な機能、例えば開閉バルブを有している。
【0013】
また、中空糸膜モジュール[A]は、液体供給口1、液体排出口2の他、ガス供給口3、更に必要によりガス排出口4を有するハウジング部と、該ハウジング部内に、前記ガス供給口3から供給されるガスを前記液体供給口1から供給される液体に溶解させることができる様に配設された中空糸膜を有するものである。
【0014】
ここで、前記分岐部位(b)には、前記液体導入管[B]内を流通し、前記中空糸膜モジュール[A]内に流入する流量(1)(単位:L/分)と、前記液体導入管[B]中の分岐部位(b)から分岐して前記バイパス流路[D]内に流入する流量(2)(単位:L/分)との分配比率[(1)/(2)]が、1/5000〜1/2の範囲となるように調整可能な調整機構を有するものであることが、原料液体体中への溶解ガス量が安定する点から好ましく、特に1/2000〜1/100の範囲であることが好ましい。
また、前記バイパス管(d)は、その少なくとも1つが、その内部を流通する液体の断面積(s)と、前記バイパス管(d)の長手方向の一接合点から他接合点までの長さ(l)との比率[(l)/(s)]が5〜100となるように構成されていることがバイパス流路[D]内の圧力損失を適正範囲に調整することが容易なものとなり、好ましい。
【0015】
更に、前記バイパス部位[D]は、3〜5本のバイパス管(d)が並列に配設された構造を有し、そのうちの少なくとも1つが前記比率[(l)/(s)]が5〜100となる範囲にあり、その他のバイパス管(d)にはが開閉バルブを有するものであることが、原料液体中へのガス溶存量の調節が容易となる点から好ましい。また、ガス供給口3に接合するガス供給管[E]にはガス圧力調圧弁M3が設けられ、かつ、ガス供給口3とガス圧力調圧弁M3との間に炭酸ガス圧力計PIが設けられていることが好ましい。
【0016】
ここで用いるガス圧力調圧弁M3は、供給元側のガス中コンタミネーションが中空糸膜に付着しない様、事前にフィルタレーション可能なものであればよく、例えば、プレッシャーレギュレーティングバルブ、ベローズプレッシャーバルブ、プレッシャーレギュレータ、バックプレッシャーバルブ等の圧力制御バルブ(レギュレータ)が挙げられる。
【0017】
中空糸膜モジュール[A]とバイパス流路[D]に分配する分岐部位(b)には、分配装置が設置されていることが好ましく、例えば、かかる分配装置は、簡便的に配管用ティーズや分岐バルブなどで液体を分配し、それらの分配比率を精密バルブ付き流量計や、規定液量しか流せないようなオリフィスによって制御する様にしたものが好ましい。一方、生成したガス溶解液体とバイパス管路を経た原料液体との合流点となる、液体排出管[C]中の分岐部位(c)には、簡便的には配管用ティーズが設置されていればよく、特に、合流した2流を均一に混合させる目的で、スタティックミキサーを配設させればより一層好ましい。
【0018】
次に、ガス溶解液体製造装置内に組み込まれている中空糸膜モジュール[A]は、例えば、中空糸を複数本収束しハウジング内に配設し、中空糸外側とハウジングの間の空間部にガスを給気し中空糸膜の内側に液体を流す内部潅流型のモジュールや、特公平5−21841号公報に記載された中空糸の外側に液体を流し、内側にガスを流す外部潅流型のモジュールが挙げられる。
【0019】
外部潅流型の場合には、ハウジング内への中空糸の充填むらなどの原因による液体の偏流(チャンネリング)が生じるのを防ぐために、中空糸を、中空糸同士又は他の糸条とによってシート状、例えば簾状に組織されたシート状物とし、それから得られる重畳体、捲回体、収束体の状態でハウジング内に組み込まれたものが原料液体へのガスの取り込みが効率的となる点から好ましい。
【0020】
他方、内部潅流型の場合も同様に、中空糸を中空糸同士又は他の糸条とによってシート状、例えば簾状に組織されたシート状物とし、それから得られる重畳体、捲回体、収束体の状態でハウジング内に組み込まれたものが、原料液体へのガスの取り込みが効率的となる点から好ましい。
【0021】
本発明では、内部潅流型モジュール、外部潅流型モジュールのいずれであってもよいが、製造するガス溶解液体の流量の大幅な変動に追随させねばならない場合に、設定ガス濃度への高速応答性・精度や再現性・安定性などを考慮して液体へ効率的に均等且つ均一にガスを付加させる必要があり、ここういった点から内部潅流型の中空糸膜モジュールの方が好ましい。
【0022】
図2は、内部潅流型モジュールの一例の断面図であり、中空糸7がその両端で封止部9にて固定化され、該中空糸7の内部空間は空間部6と連通している。原料液体は液体供給口1から流入し、中空糸内部に導入される。一方、該モジュールのハウジング部は、ガス供給口3からガスが中空糸と該ハウジングとの外部空間5へ導入されるように構成されている。また、該ハウジングは必要により、ガス排出口を有していてもよい。
【0023】
本発明で用いる中空糸は、ガス透過性を有する膜として機能するものである。よって、本発明において中空糸膜とは、かかる機能を有する中空糸自体をいう。かかる中空糸膜は、具体的には、ガス透過速度の大きなものであれば素材及び構造及び形態等、特に制限は無い。例えばポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロアルコキシフッ素樹脂、ポリヘキサフルオロプロピレン等の各種フッ素樹脂、ポリブテン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリ(4−メチルペンテン−1)系樹脂等の素材が好適に挙げられる。ここで、中空糸の膜構造は、微多孔膜、均質膜、不均質膜、複合膜、ポリプロピレン微多孔膜層でウレタン等の薄膜をサンドイッチしたいわゆるサンドイッチ膜等いずれも使用できる。中空糸膜のガス透過速度は、付加しようとするガスに対し0.1×10−5(cm(STP)/cm・sec・cmHg)以上であることが好ましい。0.1×10−5(cm(STP)/cm・sec・cmHg)未満の場合、中空糸膜を透過するガスの透過速度が遅く、目標とするガス濃度に到達しなかったり、液体流量が変動した際にガス濃度が変動する。また、ガス透過速度は大きい方が好ましいが、少なくともゲージ圧で0.1kg/cm以上でガスを供給してもガスが気泡とならない程度にとどめることが好ましい。ガスが気泡となるとガス濃度を一定に調整することが困難となる。
【0024】
特にポリ(4−メチルペンテン−1)系樹脂を素材とする中空糸不均質膜はガスの透過性に優れ且つ液体蒸気バリヤー性が高く最も好ましい。
【0025】
ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂及びポリフッ化ビニリデン系樹脂等のごとく素材のガス透過性が低く、従ってガスの溶解用途に適用するためには微多孔構造を取り、その多孔部分によりガスを透過させざる得ないこれら膜と比較し、ポリ(4−メチルペンテン−1)系樹脂を素材とする本不均質膜は、素材自体気体透過性が十分高く、また緻密層部の膜厚が十分に薄く、膜表面全体がガス透過に寄与する事ができ、結果として実質的な膜面積が大きくなり極めて好ましい。
また、このポリ(4−メチルペンテン−1)系樹脂からなる不均質膜は、高い気体透過性能を有しつつ膜壁を貫く連通細孔の孔径及びその開孔面積が極めて小さく、従ってポリプロピレンやポリエチレンの微多孔膜に比べ液体蒸気のバリヤー性に極めて優れた性能を有する。
【0026】
内部潅流型の中空糸膜モジュールを用いる場合、使用する中空糸は、その内径が50〜500μmの範囲であることが、中空糸内部を流通する液体の流通抵抗を低く抑えることができる点から好ましく、他方、外径が130〜580μmの範囲であることがガス溶存の効率も優れる点から好ましい。
また、中空糸膜モジュール[A]の中空糸の充填率は、中空糸膜モジュール[A]の両末端に位置する封止部9における、ハウジングの内径から算出される断面積に対する中空糸部分の面積(中空糸内部空間部分を含む)割合で30〜50面積%の範囲であることが好ましい。即ち、30面積%以上とすることにより、中空糸内部を流通する液体の流通抵抗が低くなる一方、50面積%以下とすることにより、中空糸同士の接着性が高まり封止部における接着性が良好となり、液漏れ等を効果的に防ぐことができる。
【0027】
また、中空糸膜モジュール[A]を構成するハウジングは、液体への不純物の溶出の無い材質であればよく、使用目的に応じて適宜選択し得るが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4−メチルペンテン−1)などのポリオレフィン系、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルフォン、ポリサルフォンなどのエンジニアリングプラスチック、或いは低溶出の為超純水の配管素材として使用されている、クリーン塩化ビニル系などが挙げられる。
【0028】
本発明のガス溶解液体の製造方法は、前記したガス付加液体製造装置を用い、該装置の液体導入管[B]から原料液体を導入し、質量基準でその1/1000乃至1/10の量を液体供給口から中空糸膜モジュール[A]内に流通させ、残余の液体をバイパス流路[D]に流通させ、かつ、前記中空糸膜モジュール[A]中のガス供給口からガスを供給すると共に、該装置に導入される原料液体の流量が初期の1/2以下となった時点でバイパス管(d)の一つを閉塞させる方法が挙げられる。
【0029】
本発明に使用する原料液体は、具体的には、水、アルコール類、石油系有機溶剤類、油脂類、鉱油、水ガラス等の無機液体等が挙げられ、これに溶解させるガスは、アルゴン、ヘリウム等の希ガス類、酸素、窒素、オゾン、炭酸ガス、水素、アンモニア、塩素、塩化水素、窒素酸化物、及びこれらの混合物等が挙げられる。これらのなかでも本発明の製造方法は、前記した通り、半導体ウエハ、液晶パネル、液晶ディスプレー等の洗浄液であるガス付加超純水の製造に特に適しており、該液体として超純水であることが好ましく、また、ガスとしては炭酸ガス又はアンモニアガスであることが好ましい。ガス溶解液体を洗浄液として使用する場合、その比抵抗値が0.03〜2MΩ・cmの範囲であることが好ましい。
【0030】
また、前記バイパス流路[D]が、3〜5本の並行するバイパス管(d)から構成されている場合、該装置に導入される原料液体の流量が初期の1/2以下となった時点でバイパス管(d)の一つを閉塞させ、次いで、最終的に得られる洗浄液の比抵抗値を追跡しながら、他の開閉バルブを閉塞させ、更に、必要により更に同様にして順次バイパス管の閉塞を行う方法が好ましい。
【0031】
本発明では、このように消費量に応じて供給される原料液体を、分配装置によって流量に大小のある2流に一定比率で分流し、膜を隔てて液体とガスを流すための中空糸膜モジュールに一方の流れを供給して小流量のガス付加液体を高いガス濃度で生成させると共に、大流量に分けられた原料液体は、複数のバイパス管(d)が設けられたバイパス流路[D]に送られる。他方、中空糸膜モジュール内で生成したガス付加液体は、バイパス流路[D]を経由した原料液体へ合流させて均一に混合させることにより、所定濃度のガス付加液体を得ることができるものである。この際、原料液体の流量が初期の1/2以下となった時点でバイパス管(d)の一つを閉塞し、更に、原料液体流量が低減するに連れ、順次、他のバイパス管(d)を閉塞することにより、原料液体流量が極端に少なくなっても溶解ガス濃度の急激な低下を防ぐことができる。例えば、図1に示すようにd1、d2、d3の3つのバイパス管路(d)を有しており、初期の原料液体の流量が最大30L/minである場合、流量が8L/min以下となった場合に、バイパス管d1を閉塞し、次いで、流量が4L/min以下となった場合に、バイパス管d2を閉塞する方法が挙げられる。
【0032】
また、中空糸膜モジュール[A]中で生成されるガス溶解液体は、好ましくは所定液温でそれ以上ガスが溶解せず又、それ以上の圧力を加えると気泡を生ずる限界圧力の、いわゆるガス飽和液体状態にすることが、一層流量変動など外乱に対するロバスト性は高まり、ガス濃度調整は行いやすくなる点から好ましい。
【実施例】
【0033】
以下に本発明を実施例及び比較例によって更に具体的に説明をする。ただし、本発明はこれに限定され制約されるものではない。
【0034】
これらの例において超純水の比抵抗は、市販の比抵抗測定器(堀場アドバンストテクノ社製「HE−480R」)を用いて測定した。原料液体としては25[℃]にて18.2[MΩ・cm]の比抵抗を持つ超純水を用い、超純水の流量は1〜30[リットル/min]の間で変動させた。その流量維持時間は30秒で段階的に変動させた。その供給水圧は0.2[MPa]とした。
【0035】
炭酸ガス及びアンモニアガス源には7[m]の炭酸ガスボンベ及びアンモニアガスボンベを用意し、二段式圧力調整器及びプレッシャーレギュレーティングバルブにて、膜モジュールへ給気すべき炭酸ガスまたはアンモニアガスの圧力を0.1[MPa]とした。
【0036】
実施例1
中空糸膜モジュールとしてはポリ−4−メチルペンテン−1を素材とし、内径200[μm]、外径250[μm]の糸を収束させ、ポリプロピレン製のハウジング内に糸の両端を樹脂で固めることにより、0.5[m]の膜面積を持つ内部灌流型の気体給気用中空糸膜モジュール[A](DIC(株)製「SEPAREL PF−001L」)を用いた。中空糸膜の炭酸ガス透過速度は3.5×10−5[cm/cm・sec・cmHg]であった。
【0037】
当該中空糸膜モジュール[A]を使用し、図1の模式図に示した装置を用いた。具体的には、中空糸膜モジュール[A]が原料液体導入管[B]と液体排出管[C]との間に設けられている。中空糸膜モジュール[A]の上流側では、バイパス管路d1、d2、d3の一端が分配装置(分岐点b)を介して原料液体導入管[B]に接続している。バイパス管路d1、d2、d3の他端は、中空糸膜モジュール[A]の下流側で合流装置(分岐部位c)を介して液体排出管[C]に接続している。ここで、バイパス管路d1、d2、d3は、その内部を流通する液体の断面積(s)と、該バイパス管の長手方向の一接合点から他接合点までの長さ(l)との比率[(l)/(s)]は10であった。
分配装置(分岐部位b)の上流側に流量計FI5が設けられ、中空糸膜モジュール[A]と分配装置(分岐部位b)との間の原料液体導入管[B]およびバイパス管路d1、d2、d3にはそれぞれ流量計FI1,FI2,FI3,FI4が設けられている。バイパス管路d1、d2にはそれぞれ自動弁M1、M2が設けられている。中空糸膜モジュール[A]の中央部にはガス供給口3が設けられ、ここに炭酸ガス供給管[E]が接続される。炭酸ガス供給管[E]の途中にはガス圧力調圧弁M3が設けられている。ガス給気口3とガス圧力調圧弁M3との間の液体排出管[C]には炭酸ガス圧力計PIが設けられている。
【0038】
実施例1の装置は次のように作動する。超純水原水は原料液体導入管[B]の上流から分配装置(分岐部位b)に向かって流入する。超純水原水は、分配装置(分岐部位b)で、比較的小流量の流れと比較的大流量の流れとに分配され、比較的小流量の流れはそのまま原料液体導入管[B]を通じて中空糸膜モジュール[A]内の中空糸膜の内部に導かれ、比較的大流量の流れはバイパス管路d1、d2、d3に導かれる。ここで、分岐部位bにおいて中空糸膜モジュール[A]内の中空糸膜の内部に導入される超純水の流量(w1)(単位:L/分)と、バイパス管路d1、d2、d3に導かれる超純水の流量(w2)(単位:L/分)との比率[(w1)/(w2)]は、1/500であった。炭酸ガスは炭酸ガス供給管[E]に導入される。この炭酸ガスはガス圧力調圧弁M3で一定圧力に調整された後に、ガス供給口3から中空糸膜モジュール[A]内に導かれ、中空糸膜を透過し、中空糸内の超純水原水に溶解される。ここで中空糸膜内の超純水原水は炭酸ガス付加超純水となる。この炭酸ガス溶解超純水は、中空糸膜モジュール[A]の出口側の流路に導かれ、合流装置(分岐部位c)でバイパス管路d1、d2、d3からの比較的大流量の流れと合流し、目的とする比抵抗調整超純水が得られる。この時、比抵抗値が0.7MΩ・cmになるよう分配装置(分岐部位b)と中空糸膜モジュール[A]の液体供給口1との間に設置された手動バルブを調節した。バイパス管路3,4に設けられた自動弁M1,M2は、超純水流量計FI5が8L/min以下になったらM1が閉になり、4L/min以下になったらM2が閉になるように設定した。
【0039】
図1の装置を用いて、超純水全体の流量を変動させて比抵抗調整超純水の比抵抗値を測定した。図2に本装置による比抵抗値変化の結果を示す。流量変動に対する追従のずれはほとんど認められなかった。
【0040】
比較例1
中空糸膜モジュールとしてはポリ−4−メチルペンテン−1を素材とし、内径200[μm]、外径250[μm]の糸を収束させ、ポリプロピレン製のハウジング内に糸の両端を樹脂で固めることにより、0.5[m]の膜面積を持つ内部灌流型の気体給気用中空糸膜モジュール[A](DIC(株)製「SEPAREL PF−001L」)を得た。中空糸膜の炭酸ガス透過速度は3.5×10−5[cm/cm・sec・cmHg]であった。
図4は当該中空糸膜モジュール[A]を組み込んだ比較例1の装置の模式図である。
比較例1の装置は、中空糸膜モジュール[A]が原料液体導入管[B]と液体排出管[C]との間に設けられている。
中空糸膜モジュール[A]の上流側では、バイパス管路[D]の一端が分配装置(分岐点b)を介して原料液体導入管[B]に接続している。バイパス管路[D]の他端は、中空糸膜モジュール[A]の下流側で合流装置(分岐点c)を介して液体排出管[C]に接続している。分配装置(分岐部位b)の上流側に流量計FI5が設けられ、中空糸膜モジュール[A]と分配装置(分岐点b)との間の原料液体導入管[B]およびバイパス管路[D]にはそれぞれ流量計FI1、FI2が設けられている。中空糸膜モジュール[A]の中央部にはガス供給口3が設けられ、ここに炭酸ガス導入管[E]が接続される。炭酸ガス導入管[E]の途中には調圧弁M3が設けられている。ガス給気口3と調圧弁M3との間の炭酸ガス流路には炭酸ガス圧力計PIが設けられている。
【0041】
比較例1の装置は次のように作動する。超純水原水は原料液体導入管[B]の上流から分配装置(分岐部位b)に向かって流入する。超純水原水は、分配装置(分岐点b)で比較的小流量の流れと比較的大流量の流れとに分配される。比較的小流量の流れは原料液体導入管[B]を通じて中空糸膜モジュール[A]内の中空糸膜の内部に導かれる。比較的大流量の流れはバイパス管路[D]に導かれる。炭酸ガスは炭酸ガス供給管[E]に導入される。この炭酸ガスは調圧弁M3で一定圧力に調整された後に、ガス供給口3から中空糸膜モジュール[A]内に導かれ、中空糸膜を透過し、中空糸内の超純水原水に溶解される。ここで中空糸膜内の超純水原水は炭酸ガス付加超純水となる。この炭酸ガス溶解超純水は、中空糸膜モジュール[A]の出口側の流路に導かれ、合流装置(分岐点c)でバイパス管路[D]からの比較的大流量の流れと合流し、目的とする比抵抗調整超純水が得られる。この時、比抵抗値が0.7MΩ・cmになるよう、分配装置(分岐部位b)と中空糸膜モジュール[A]の液体供給口1との間に設置された手動バルブを調節した。
図4の装置を用いて、超純水全体の流量を変動させて比抵抗調整超純水の比抵抗値を測定した。図5に本装置による比抵抗値変化の結果を示す。超純水流量が5L/min以下に変動すると、比抵抗値が急激に上昇する傾向が確認された。
【符号の説明】
【0042】
[A]:中空糸膜モジュール
[B]:原料液体導入管
(b):分岐部位
[C]:液体排出管
(c):分岐部位
[D]:バイパス流路
(d):バイパス管
[E]:ガス供給管
1:液体供給口
2:液体排出口
3:ガス供給口
4:ガス排出口
5:空間部
6:空間部
7:中空糸
8:ハウジング
9:封止部
M1:自動弁
M2:自動弁
M3:ガス圧力調圧弁
PI:ガス圧力計
FI1:流量計
FI2:流量計
FI3:流量計
FI4:流量計
FI5:流量計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス供給口、液体供給口、液体排出口を有するハウジング部と、該ハウジング部内に、前記ガス供給口から供給されるガスを前記液体供給口から供給される液体に溶解させることができる様に配設された中空糸膜を有する中空糸膜モジュール[A]と、
前記液体供給口に接合され、かつ、分岐部位(b)を有する液体導入管[B]と、
前記液体排出口に接合され、かつ、分岐部位(c)を有する液体排出管[C]と、
液体導入管[B]内を流通する液体が前記中空糸膜モジュール[A]を経由することなく直接前記液体排出管[C]に流入するように前記分岐部位(b)と前記分岐部位(c)とを結節するバイパス部位[D]とを有しており、かつ、該バイパス部位[D]が、並列に複数の流路を形成するように配設された複数のバイパス管(d)により構成されており、かつ、この複数のバイパス管(d)の少なくとも1つが開閉可能な機能を有することを特徴とするガス溶解液体製造装置。
【請求項2】
前記液体導入管[B]内を流通し、前記中空糸膜モジュール[A]内に流入する流量(1)と、前記液体導入管[B]中の分岐部位(b)から分岐して前記バイパス流路[D]内に流入する流量(2)との分配比率[(1)/(2)]が質量基準で、1/5000〜1/2の範囲となるように調整可能な調整機構を有するものである請求項1記載のガス溶解液体製造装置。
【請求項3】
前記バイパス管(d)の少なくとも1つが、その内部を流通する液体の断面積(s)と、前記バイパス管(d)の長手方向の一接合点から他接合点までの長さ(l)との比率[(l)/(s)]が5〜100となるように構成されていることを特徴とするガス溶解液体製造装置。
【請求項4】
前記バイパス部位[D]が、3〜5本の並行するバイパス管(d)から構成されており、そのうち1本のバイパス管(d’)が、長手方向の一接合点から他接合点までの長さ(l)との比率[(l)/(s)]が5〜100となるものであり、かつ、他のバイパス管(d)が開閉バルブを有するものである請求項3記載のガス溶解液体製造装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1つに記載のガス溶解液体製造装置を用い、該装置の液体導入管[B]から原料液体を導入し、質量基準でその1/5000乃至1/2の量を液体供給口から中空糸膜モジュール[A]内に流通させ、残余の液体をバイパス部位[D]に流通させ、かつ、前記中空糸膜モジュール[A]中のガス供給口からガスを供給すると共に、該装置に導入される原料液体の流量が初期の1/2以下となった時点でバイパス管(d)の一つを閉塞させることを特徴とするガス溶解液体の製造方法。
【請求項6】
前記ガス溶解液体製造装置が、3〜5本の並行するバイパス管(d)を有し、そのうちの1本を除く他のバイパス管に開閉バルブが配設され、かつ、該装置に導入される原料液体の流量が初期の1/2以下となった時点でバイパス管(d)の一つを閉塞させ、次いで、最終的に得られる洗浄液の比抵抗値を追跡しながら、他の開閉バルブを閉塞させ、更に、必要により更に同様にして順次バイパス管の閉塞を行う請求項5記載のガス溶解液体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−223725(P2012−223725A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94966(P2011−94966)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】