説明

ガス絶縁機器

【課題】絶縁ガスを封入したガス絶縁機器においてその絶縁性能を向上させる。
【解決手段】ガス絶縁機器は、絶縁ガスが封入された金属容器2と、金属容器2内に配設された支持絶縁物3と、支持絶縁物3によって支持された通電用導体1と、支持絶縁物3が通電用導体1に対向する位置で支持絶縁物3と通電用導体1の間に介在するように配置されたバリア絶縁物5と、バリア絶縁物5が通電用導体1に対向する位置でバリア絶縁物5に取り付けられた導電性材料、半導電性材料、非線形抵抗材料のいずれかからなる電位調整層6と、バリア絶縁物5に囲まれた位置で電位調整層6と通電用導体1とを電気的に接続して互いに保持し、導電性材料、半導電性材料、非線形抵抗材料のいずれかからなる保持部材23と、バリア絶縁物5に囲まれた位置で通電用導体1の外周に接して配置された放熱フィン7と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は絶縁ガスが封入されたガス絶縁機器に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、電力系統において、金属容器に絶縁ガスを封入したガス絶縁機器が広く用いられている。一般的なガス絶縁機器においては、金属容器内に絶縁ガスが封入されるとともに、この金属容器内に、通電用の通電用導体部が挿通されている。この通電用導体部には通電用導体部を絶縁支持するための支持絶縁物が取り付けられている(特許文献1参照)。
【0003】
金属容器に封入される絶縁ガスとしては、絶縁性能および冷却性能に優れたSF6ガスが広く使用されている。このようなガス絶縁機器は高い需要を得ており、今や変電所および発電所におけるガス絶縁機器の主流を成している。さらに近年では、1100kV級系統への適用も計画されており、より一層の高電圧化と大容量化が進められている。
【0004】
さらに定格電圧84kV以下のクラスでは電流を遮断する部分を真空容器に収め、その外部をSF6ガスで絶縁する方式のガス絶縁機器も広く用いられている(特許文献2参照)。真空容器および通電用導体部が金属容器内に収められ、絶縁ガスが封入されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3028975号公報
【特許文献2】特許第4177628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ガス絶縁機器を高電圧化する場合、通電用導体部の電界強度が上昇する。そのため、優れた絶縁性能を得るためには、機器を大型化して絶縁距離を保つか、あるいは封入する絶縁ガスの圧力を上昇させる必要がある。絶縁ガスの圧力を上昇させた場合、金属容器はその圧力に耐えうる圧力容器としなくてはならない。しかし、現行の製造ラインではそのような金属容器の製造は非常に困難である。したがって、ガス絶縁機器の高電圧化に際して優れた絶縁性能を確保するには、機器を大型化することが余儀なくされていた。
【0007】
これらの大型ガス絶縁機器を用いた変電所は電力供給の根幹をなすが、最近では都市部の地下変電所への適用や経済性向上が強く望まれており、装置の縮小化を図ることが急務となっている。つまり、ガス絶縁機器の絶縁構成としては、大型化および封入ガスの圧力上昇を回避すると同時に、高電圧化に対応可能なものが求められている。
【0008】
さらに、おもな絶縁ガスとして広く用いられているSF6ガスは、空気よりも約3倍の絶縁耐力があることからも電力供給に資するために必要不可欠な物質であるが、昨今の地球温暖化問題への取り組みから地球温暖化係数の高い温室効果ガスが規制される動向にある。国内外でも温室効果ガスを使用しない代替ガス、あるいは温室効果ガスの使用割合を低減した混合ガスを封入したガス絶縁電気機器の適用が考えられている。現在のところ、無害で環境に優しいガスはSF6ガスよりも絶縁性能が低く、高電圧化が困難な状況である。
【0009】
また、ガス絶縁機器が抱える課題として、通電時の温度上昇がある。ガス絶縁機器に使用されている材料の長期信頼性を確保するため、規格により温度上昇の上限が決められているが、金属容器のサイズを小型化すると放熱表面積が小さくなるため、温度上昇が大きくなる。またSF6ガスに替わるガスを使用した場合、SF6ガスよりも熱容量・熱伝導率が低くなる可能性が高く、通電容量が小さくなるといった問題が生じる。
【0010】
以上述べたガス絶縁機器へのニーズをまとめると、(a)封入ガスの圧力を高めることなく小型化・高電圧化を進める、(b)通電容量の低下を防止する、の2点となる。
【0011】
このようなニーズに対応した装置として、複合絶縁方式のガス絶縁機器が提案されている。具体的には通電用導体または金属容器に絶縁被覆を施したもの(例えば、特許文献1参照)や、通電用導体と金属容器の間にバリア絶縁物を挿入配置したものがある(例えば、特許文献2参照)。このようなガスと絶縁被覆による複合絶縁方式では、絶縁耐力の低い窒素を絶縁ガスとした場合でも、現行のSF6ガスを用いた機器と同等のサイズで絶縁構成が可能となる。
【0012】
特許文献2に記載された技術では、バリア絶縁物内部に、少なくとも導電性材料、半導電性材料および非線形抵抗材料のいずれかの層を埋め込み、その埋め込み材料を通電用導体部の同電位に設定している。バリア絶縁物内の埋め込み材料と通電用導体とを同電位にすることで、通電用導体表面の電界を抑えることができ、通電用導体を起点とした放電を抑制することができる。また、バリア絶縁物内部の埋め込み材料は絶縁物で覆われているため、この内部電極を起点とする放電についても抑制でき、優れた絶縁性能を確保することができる。
【0013】
しかし、バリア絶縁物はガスの自然対流を妨げることとなり、ガス絶縁機器の温度上昇(通電容量)に悪影響を与えてしまう課題もある。また接離可能に対向する2個の電極を具備する開閉器の場合、電極同士が離れた場合には電極間に電位差が生じるため、バリア絶縁物に埋め込まれた材料の電位の設定が一種類とすると絶縁設計上困難が生じる。
【0014】
本発明は、以上の問題点を解決するために提案されたものであり、絶縁ガスを封入したガス絶縁機器においてその絶縁性能を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明に係るガス絶縁機器の一つの態様は、絶縁ガスが封入された金属容器と、前記金属容器内に配設された支持絶縁物と、前記金属容器内で前記支持絶縁物によって絶縁支持された通電用導体と、前記支持絶縁物が前記通電用導体に対向する位置で前記通電用導体を取り囲んで前記支持絶縁物と前記通電用導体の間に介在するように配置されたバリア絶縁物と、前記バリア絶縁物が前記通電用導体に対向する位置で前記バリア絶縁物に取り付けられた導電性材料、半導電性材料、非線形抵抗材料のいずれかからなる電位調整層と、前記バリア絶縁物に囲まれた位置で前記電位調整層と前記通電用導体とを電気的に接続して互いに保持し、導電性材料、半導電性材料、非線形抵抗材料のいずれかからなる保持部材と、前記バリア絶縁物に囲まれた位置で前記通電用導体の外周に接して配置された放熱フィンと、を有すること、を特徴とする。
【0016】
また、本発明に係るガス絶縁機器の他の一つの態様は、絶縁ガスが封入された金属容器と、前記金属容器内に配設された支持絶縁物と、前記金属容器内で前記支持絶縁物によって絶縁支持された通電用導体と、前記支持絶縁物が前記通電用導体に対向する位置で前記通電用導体を取り囲んで前記支持絶縁物と前記通電用導体の間に介在するように配置され、かつ、少なくとも2箇所に通気用間隙を備えたバリア絶縁物と、前記バリア絶縁物が前記通電用導体に対向する位置で前記バリア絶縁物に取り付けられた導電性材料、半導電性材料、非線形抵抗材料のいずれかからなる電位調整層と、前記バリア絶縁物に囲まれた位置で前記電位調整層と前記通電用導体とを電気的に接続して互いに保持し、導電性材料、半導電性材料、非線形抵抗材料のいずれかからなる保持部材と、を有すること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、絶縁ガスを封入したガス絶縁機器においてその絶縁性能を向上させることができる。これにより、たとえば従来のSF6ガスよりも絶縁性能が劣る代替ガスを機器に適用した場合であっても、機器としての絶縁信頼性を高く維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るガス絶縁機器の第1の実施形態を示す縦断面図である。
【図2】図1のガス絶縁機器のII−II線矢視横断面図である。
【図3】本発明に係るガス絶縁機器の第2の実施形態を示す横断面図である。
【図4】本発明に係るガス絶縁機器の第3の実施形態を示す縦断面図である。
【図5】本発明に係るガス絶縁機器の第4の実施形態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るガス絶縁機器の実施形態について、図面を参照して具体的に説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には共通の符号を付して、重複説明は省略する。ここで説明する下記の実施形態はいずれも、バリア絶縁物を挿入配置した複合絶縁方式のガス絶縁機器である。
【0020】
[第1の実施形態]
図1は本発明に係るガス絶縁機器の第1の実施形態を示す縦断面図であり、図2は図1のガス絶縁機器のII−II線矢視横断面図である。
【0021】
円筒形の金属容器2内に絶縁ガス4が封入されている。絶縁ガス4としては、従来から使用されているSF6ガスであってもよいが、SF6ガス以外のガス、すなわち窒素ガス、乾燥空気または炭酸ガスのいずれかによる単体ガスあるいはこれら単体ガスを含む混合ガスを使用することも可能である。
【0022】
金属容器2内の中央に、高電圧の通電用導体部1が延びている。金属容器2は、軸端部の外周に張り出したフランジ20に複数のボルト21を通すことによって軸方向に結合され、二つの互いに対向するフランジ20の間に、支持絶縁物3がはさまれて固定されている。図示の例では、支持絶縁物3は直径方向に対向して2個が配置され、通電用導体部1を周方向に囲むほぼ円筒状のバリア絶縁物5を支持している。バリア絶縁物5の材料は、たとえば、機械強度に優れたガラス繊維強化プラスチック(FRP)やエポキシ含浸注形品、テフロン(商品名)等が使用可能である。
【0023】
バリア絶縁物5の軸方向両端部はその開口が若干小さくなるように端部絞り部22が形成され、端部絞り部22に一部が包み込まれるようにシールドリング25が配置されている。
【0024】
バリア絶縁物5の内側には電位調整層6が埋め込まれている。電位調整層6は、導電性材料、半導電性材料、非線形抵抗材料のいずれかからなり、たとえばカーボンファイバを使用することができる。たとえばカーボンファイバを内側に巻きつけ、外側にガラス繊維を巻きつけることにより、容易に埋め込み電極を有する筒状のエポキシ含浸注形バリア絶縁物5を製作することが可能である。
【0025】
バリア絶縁物5に囲まれた位置で電位調整層6と通電用導体1とを電気的に接続して互いに保持するために、保持部材23が配置されている。図示の例では、保持部材23は、放射状に配置された4本の棒状のものである。保持部材23は、電位調整層6と同様に、導電性材料、半導電性材料、非線形抵抗材料のいずれかからなる。
【0026】
さらにこの実施形態では、バリア絶縁物5に囲まれた位置で通電用導体1の外周に接して複数の放熱フィン7が取り付けられている。放熱フィン7は通電用導体1の熱を周囲に放散させるためのものであって、熱伝導率の大きなたとえば金属製で、放熱表面積を増やすために放射状に延びている。なお、放熱フィン7は通電用導体1と一体に形成されてもよく、通電用導体1の表面に凹凸を設けたものであってもよい。
【0027】
以上説明した構成により、金属容器2内で通電用導体部1を絶縁保持することができる。バリア絶縁物5内に埋め込まれた電位調整層6の電位を通電用導体部1の電位と等しくすることができ、通電用導体部1表面の電界を抑えることができ、通電用導体部1を起点とした放電を抑制することができる。
【0028】
一般的なガス絶縁機器の通電用導体部では、設計電界が高くなるため、断面形状は電界強度が低くなるようにほぼ真円に近い形状にしたり、導体表面の細かい突起が放電の起点とならないように表面粗さを小さくなるように管理する必要があった。しかし本実施形態では、バリア絶縁物5に囲まれた通電用導体部1の設定電界を大幅に低減できるため、通電用導体部1の形状・表面粗さ等の制限がなくなり、形状や突起形状などにより放熱表面積を増やす工夫を施すことができる。以上により、バリア絶縁物を有する複合絶縁方式ガス絶縁機器でも、通電性能に優れた構成を実現することができる。
【0029】
[第2の実施形態]
図3は本発明に係るガス絶縁機器の第2の実施形態を示す横断面図である。この実施形態は第1の実施形態の変形であって、バリア絶縁物5を2分割して、その割れ目を通気口8とし、その通気口8がバリア絶縁物5の上部と下部に位置するようにしている。
【0030】
図示の例では、第1の実施形態と同様に通電用導体部1に放熱フィン7を設けている。放熱フィン7の変形として、通電用導体部1の外周に凹凸をつけてもよいことは第1の実施形態と同様である。図3では、支持絶縁物3、フランジ20など(図1および図2参照)の図示は省略している。
【0031】
従来の通常のガス絶縁機器では、通電用導体部の通電時温度上昇を抑えるために、絶縁ガスを自然対流させることで、通電用導体部を冷却するのが一般的である。しかし、通電用導体部の電界を低減するためにバリア絶縁物5を配置した場合、絶縁ガスをバリア絶縁物5内部に十分に対流させることが困難である。
【0032】
第2の実施形態では、バリア絶縁物5を円筒横断面形状で2分割してガスを通気させ、自然対流による冷却性能を高めることができる。バリア絶縁物5の分割数は2分割だけでなく、3分割以上に増やしたり、分割する軸を上下方向だけでなく、左右・斜め方向に変更することも可能である。ただし分割する隙間をあまり大きくすると、隙間に等電位面が入り込み、バリア絶縁物内部の電界強度が上昇するため、注意が必要である。
【0033】
第1の実施形態と同様に、放熱フィンを取り付けるなど、組み合わせることでより冷却性能を高めることもできる。以上により、バリア絶縁物を有する複合絶縁方式ガス絶縁機器でも、通電性能に優れた構成を実現することができる。
【0034】
[第3の実施形態]
図4は本発明に係るガス絶縁機器の第3の実施形態を示す縦断面図である。この実施形態は、消弧室9を有する開閉器において、第1の実施形態と同様のバリア絶縁物5、シールドリング25、電位調整層6および保持部材23を適用したものである。
【0035】
金属容器2内に絶縁ガス4が封入され、金属容器2内に通電用導体部である二つの電極1a、1bが配置されている。各電極1a、1bそれぞれの周囲を覆うように、第1の実施形態と同様に、保持部材23、電位調整層6を介してバリア絶縁物5が固定されている。各バリア絶縁物5は、図示しない支持絶縁物によって金属容器2に支持されている。一方の電極1aが軸方向(図4の左右方向)に移動し、電路の開閉が行なわれる。このとき保持部材23やバリア絶縁物5は静止しているので、電極1aの外側面とこれに隣接する保持部材23の内側先端30とが摺動する。
【0036】
この実施形態では、消弧室9にて接離可能に対向する2個の電極1a、1bと、それぞれの周囲に配置された電位調整層6とが互いに同電位となる。電極1aと電極1bとが互いに接している状態では、2個の電極間に電位差が生じないため、バリア絶縁物5内に埋め込まれた電位調整層6の間にも電位差が生じない。しかし、電極が離れた場合においてはそれぞれの通電用導体部と同様に、電位調整層6間にも電位差が生じるため、電位調整層6間の対向する部分にもバリア絶縁物による被覆が施されている。
【0037】
消弧室9にて接離可能に対向する2個の電極1a、1bを一種類のバリア絶縁物で囲んでいる場合、2つの電極が離れた状態で電位調整層6がどちらかに同電位となると、対向する側の電極1a、1bと電位調整層6の間に電位差が生じてしまう。このため、電極1a、1bと電位調整層6の間の絶縁を保つために絶縁距離を大きくとる必要があり、ガス絶縁機器の大型化を招いてしまう。本実施形態では、互いに離れたそれぞれの電極1a、1bと同電位となるように配置したバリア絶縁物5を有するので、電極1a、1bと電位調整層6との絶縁距離を大きくする必要がなく、そのため、機器を小型化することができる。
【0038】
[第4の実施形態]
図5は本発明に係るガス絶縁機器の第4の実施形態を示す縦断面図である。この実施形態では、第3の実施形態と同様に、接離可能に対向する2個の電極1a、1bを具備する開閉器の場合において、それぞれの電極1a、1bと、バリア絶縁物5内に埋め込まれた電位調整層6とが同電位となるように、少なくとも2つ以上の異なる電位を有するバリア絶縁物5を配置している。また、この実施形態では、消弧室部分が、絶縁材料からなる真空容器10内に収められていて真空遮断器となっている。
【0039】
この実施形態では、真空遮断器の接離可能に対向する2個の電極1a、1b間は絶縁材料からなる真空容器10で覆われているため、真空容器10を構成する絶縁物のガス側沿面には密着した沿面放電抑制バリア11を設置している。この沿面放電抑制バリア11は一方の通電用導体部(電極)から伸展した放電路方向と逆方向の外側に突起部を形成している。
【0040】
一般に、真空遮断器である消弧室9にて接離可能に対向する2個の電極を一種類のバリア絶縁物で囲んでいる場合、2つの電極が離れた状態でバリア絶縁物の埋め込み材料(電位調整層)がどちらかに同電位となると、対向する側の通電用導体部の電極1a、1bと電位調整層6間に電位差が生じてしまう。このため、通電用導体(電極)と電位調整層間の絶縁を保つために絶縁距離を大きくとる必要があり、ガス絶縁機器の大型化を招いてしまう。
【0041】
この実施形態によれば、第3の実施形態と同様に、離れたそれぞれの通電用導体部1a、1bと同電位となるように配置したバリア絶縁物5を有するので、電極1a、1bと電位調整層6との絶縁距離を大きくする必要がなく、機器の大型化を防ぐことができる。
【0042】
また、電位調整層と通電用導体部(電極)とを同電位にすることで、通電用導体表面の電界を抑えることができ、通電用導体部を起点とした放電を抑制することができる。
【0043】
また、電位調整層6はバリア絶縁物5内に埋め込まれているため、この内部電極を起点とする放電についても抑制でき、金属容器2と通電用導体部(電極)の間の優れた絶縁性能を確保することができる。このため、SF6ガスに替わり環境に低負荷のガスを使用した場合であっても、絶縁性能の低下を抑制することができ、機器の大型化を防ぐことができる。
【0044】
一方、接離可能な電極間に挟まれた真空容器である絶縁物沿面では、SF6ガスに替わり環境に低負荷のガスを使用した場合により大きな沿面距離を必要とする。そのための機器の大型化を防ぐために、一方の通電用導体部から伸展した放電路方向と逆方向に突起部を有する沿面放電抑制バリアにより、電界分布により放電が伸展する方向と、バリア絶縁物突起表面の沿面方向をほぼ逆にすることができる。このため、放電伸展を抑えることが可能となり、沿面距離の増大化を防ぐことができる。
【0045】
[他の実施形態]
以上説明した各実施形態は単なる例示であって、本発明はこれらに限定されるものではない。たとえば、各実施形態の特徴を組み合わせることもできる。より具体的には、第3の実施形態(図4)で、各電極1a、1bの外側でバリア絶縁物5の内側に第1の実施形態(図1、図2)の放熱フィン7と同様のものを配置してもよい。また、第3または第4の実施形態(図4、図5)で、バリア絶縁物5を第2の実施形態(図3)と同様に2分割してもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 …通電用導体部
1a、1b …通電用導体部(電極)
2 …金属容器
3 …支持絶縁物
4 …絶縁ガス
5 …バリア絶縁物
6 …電位調整層
7 …放熱フィン
8 …通気口
9 …消弧室
10 …真空容器
11 …沿面放電抑制バリア
20 …フランジ
21 …ボルト
23 …保持部材
25 …シールドリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁ガスが封入された金属容器と、
前記金属容器内に配設された支持絶縁物と、
前記金属容器内で前記支持絶縁物によって絶縁支持された通電用導体と、
前記支持絶縁物が前記通電用導体に対向する位置で前記通電用導体を取り囲んで前記支持絶縁物と前記通電用導体の間に介在するように配置されたバリア絶縁物と、
前記バリア絶縁物が前記通電用導体に対向する位置で前記バリア絶縁物に取り付けられた導電性材料、半導電性材料、非線形抵抗材料のいずれかからなる電位調整層と、
前記バリア絶縁物に囲まれた位置で前記電位調整層と前記通電用導体とを電気的に接続して互いに保持し、導電性材料、半導電性材料、非線形抵抗材料のいずれかからなる保持部材と、
前記バリア絶縁物に囲まれた位置で前記通電用導体の外周に接して配置された放熱フィンと、
を有すること、を特徴とするガス絶縁機器。
【請求項2】
絶縁ガスが封入された金属容器と、
前記金属容器内に配設された支持絶縁物と、
前記金属容器内で前記支持絶縁物によって絶縁支持された通電用導体と、
前記支持絶縁物が前記通電用導体に対向する位置で前記通電用導体を取り囲んで前記支持絶縁物と前記通電用導体の間に介在するように配置され、かつ、少なくとも2箇所に通気用間隙を備えたバリア絶縁物と、
前記バリア絶縁物が前記通電用導体に対向する位置で前記バリア絶縁物に取り付けられた導電性材料、半導電性材料、非線形抵抗材料のいずれかからなる電位調整層と、
前記バリア絶縁物に囲まれた位置で前記電位調整層と前記通電用導体とを電気的に接続して互いに保持し、導電性材料、半導電性材料、非線形抵抗材料のいずれかからなる保持部材と、
を有すること、を特徴とするガス絶縁機器。
【請求項3】
前記通気用間隙は前記バリア絶縁物の上部と下部に配置されていることを特徴とする請求項2に記載のガス絶縁機器。
【請求項4】
絶縁ガスが封入された金属容器と、
前記金属容器内に配設された支持絶縁物と、
前記金属容器内で前記支持絶縁物によって絶縁支持されて、互いに切離可能に相対的に移動可能な2個の電極と、
前記支持絶縁物が前記2個の電極それぞれに対向する位置で前記電極を取り囲んで前記支持絶縁物と前記電極の間に介在するように配置された2個のバリア絶縁物と、
前記バリア絶縁物が前記電極に対向する位置で前記2個のバリア絶縁物それぞれに取り付けられた導電性材料、半導電性材料、非線形抵抗材料のいずれかからなる電位調整層と、
前記2個のバリア絶縁物それぞれに囲まれた位置で前記電位調整層と前記電極とを電気的に接続して互いに保持し、導電性材料、半導電性材料、非線形抵抗材料のいずれかからなる保持部材と、
を有すること、を特徴とするガス絶縁機器。
【請求項5】
前記金属容器内に配設されて前記2個の電極が互いに対向して切離する部分を収容する電気絶縁材料からなる真空容器をさらに有することを特徴とする請求項4に記載のガス絶縁機器。
【請求項6】
前記金属容器内に配設されて前記2個の電極間を覆う電気絶縁材料からなる絶縁筒と、
この絶縁筒の外表面に密着して外側に突出する突起部を備えた電気絶縁材料からなる沿面放電抑制バリアと、
をさらに有することを特徴とする請求項4または請求項5に記載のガス絶縁機器。
【請求項7】
前記バリア絶縁物に囲まれた位置で前記通電用導体の外周に接して配置された放熱フィンを有すること、を特徴とする請求項2ないし請求項6のいずれか一項に記載のガス絶縁機器。
【請求項8】
前記バリア絶縁物は、少なくとも2箇所に通気用間隙を備えていること、を特徴とする請求項1または請求項4ないし請求項7のいずれか一項に記載のガス絶縁機器。
【請求項9】
前記電位調整層および保持部材は、前記バリア絶縁物にカーボンファイバが埋め込まれたものであること、を特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか一項に記載のガス絶縁機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−135675(P2011−135675A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−291810(P2009−291810)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】