説明

ガス絶縁開閉装置の遮断器の取替え方法

【課題】遮断器タンクの引き抜きに要する寸法を縮小し、建屋サイズを縮小することが可能なガス絶縁開閉装置の遮断器の取替え方法を提供すること。
【解決手段】三相の遮断器1a〜1cのうちの配列方向の両端に配置された遮断器1a,1cの双方の遮断器タンクをそれらの軸線の方向に沿って建屋壁60bに当接するまで建屋壁60b側に移動させるステップと、三相の遮断器1a〜1cのうちの前記配列方向の中間に配置された遮断器1bの遮断器タンクをその軸線に沿って建屋壁60a側に移動させた後、当該遮断器タンクを遮断器1a,1cの遮断器タンクと干渉しないようにして水平面内で回転させるステップと、を含むことを特徴とするガス絶縁開閉装置の遮断器の取替え方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ガス絶縁開閉装置の遮断器の取替え方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガス絶縁開閉装置は、SF(六フッ化硫黄)ガス等の絶縁性ガスを密閉充填した金属容器内に遮断器等の所要機器を配置して構成される。ガス絶縁開閉装置は、屋外又は屋内のいずれに設置される場合でも、その据付面積の縮小化の要請は大きく、限られたスペースでいかに収納効率を上げて設置するかが大きな課題となっている。
【0003】
特許文献1では、遮断器タンクの長手方向を水平となるように配置したいわゆる横型の遮断器を含む相分離型のガス絶縁開閉装置が記載されている。すなわち、特許文献1では、三相に対応した三つの横型配置の遮断器が互いに平行に配列されている。
【0004】
ところで、ガス絶縁開閉装置では、地絡事故等により遮断器が損傷した場合、当該遮断器を交換する必要がある。横型配置の遮断器を含むガス絶縁開閉装置においては、遮断器タンクでの地絡事故時に、当該遮断器タンクの交換のために当該遮断器タンクをガス絶縁開閉装置から引き抜くことを想定し、この引き抜き作業が可能となるように遮断器タンクから制御盤又は建屋壁までの寸法を決める必要がある。すなわち、遮断器タンクの引き抜き作業においては、遮断器タンク端から建屋壁又はこの建屋壁の壁際に設けられた制御盤までの寸法が作業の制約となるため、実際に遮断器タンクの引き抜きが可能となるように引き抜きに要する寸法を確保する必要がある。そして、三相の横型配置の遮断器に対しては、引き抜きに要する寸法は、隣接する遮断器タンクの存在により中相のタンク(三相の遮断器タンクのうちの配列方向の中間に配置された遮断器タンク)に対するものが最も大きくなる。そのため、遮断器タンク端から建屋壁又は制御盤までの寸法は、中相のタンクを引き抜くことを想定して決定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−245376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、建屋内での上記引き抜きに要する寸法が大きくなると、建屋サイズも大きくなり、その結果、建屋費用も増大するという問題があった。したがって、建屋サイズを縮小し、建屋費用を低減することが課題となっている。特に、ベイ(bay)数の多いガス絶縁開閉装置においては、引き抜きに要する寸法の建屋サイズへの影響度が高く、建屋設計時において考慮すべき上記寸法の縮小化が課題となっている。
【0007】
この発明は、上記に鑑みてなされたもので、遮断器タンクの引き抜きに要する寸法を縮小し、建屋サイズを縮小することが可能なガス絶縁開閉装置の遮断器の取替え方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るガス絶縁開閉装置の遮断器の取替え方法は、建屋内においてそれぞれ遮断器タンクの軸線を水平かつ平行にして配置されるとともに前記軸線の方向と直交する方向に配列された相分離型の三相の遮断器を備え、前記三相の遮断器の遮断器タンクの各一端に対向して第1の建屋壁が配置され、前記三相の遮断器の遮断器タンクの各他端に対向して第2の建屋壁が配置されてなるガス絶縁開閉装置の遮断器の取替え方法であって、前記三相の遮断器のうちの配列方向の両端に配置された両側相の遮断器の双方の遮断器タンクをそれらの軸線の方向に沿って前記第2の建屋壁に当接するまで前記第2の建屋壁側に移動させるステップと、前記三相の遮断器のうちの前記配列方向の中間に配置された中相の遮断器の遮断器タンクをその軸線に沿って前記第1の建屋壁側に移動させた後、当該遮断器タンクを前記両側相の遮断器の遮断器タンクと干渉しないようにして水平面内で回転させるステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、遮断器タンクの引き抜きに要する寸法を縮小し、建屋サイズを縮小することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、実施の形態に係るガス絶縁開閉装置の上面構成の一例を示す図である。
【図2】図2は、図1におけるA−A断面図である。
【図3】図3は、図1におけるB−B断面図である。
【図4】図4は、実施の形態に係るガス絶縁開閉装置の遮断器の取替え方法を説明するための上面図である。
【図5−1】図5−1は、両側相の遮断器タンクの移動手順を示す断面図である。
【図5−2】図5−2は、図5−1に続く図である。
【図6−1】図6−1は、中相の遮断器タンクの引き抜き手順を示す断面図である。
【図6−2】図6−2は、図6−1に続く図である。
【図7】図7は、従来のガス絶縁開閉装置の遮断器の取替え方法を説明するための上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係るガス絶縁開閉装置の遮断器の取替え方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0012】
実施の形態.
図1は、本実施の形態に係るガス絶縁開閉装置の上面構成の一例を示す図である。また、図2は、図1におけるA−A断面図であり、図3は、図1におけるB−B断面図である。以下では、まず、図1〜図3を参照してガス絶縁開閉装置の構成について説明する。
【0013】
本実施の形態のガス絶縁開閉装置は、いわゆる横型配置の遮断器を備えた相分離型のガス絶縁開閉装置である。具体的には、ガス絶縁開閉装置は、例えば三つのベイ70−1〜70−3を備えて構成され、これらのベイ70−1〜70−3はそれぞれ三相の横型配置の遮断器1a〜1c含んでいる。ここで、横型配置とは、遮断器1a〜1cの長手方向が略水平に配置されたものであり、それぞれの遮断器タンクの軸線が略水平に配置されたものである。
【0014】
遮断器1a〜1cは、それぞれ単相の遮断器である。遮断器1a〜1cは、それぞれ円筒状の遮断器タンク内に遮断部(図示せず)を備えて構成される。遮断器タンクの長さは三相いずれも等しい。遮断器1a〜1cは、それぞれ遮断器タンクの軸線を互いに平行にして当該軸線方向と略直交する方向に所定の間隔で配列されている。以下では、遮断器タンクの軸線方向と直交する方向を遮断器配列方向ともいう。遮断器1a,1cは、三相の遮断器のうちの遮断器配列方向の両端に配置された両側相の遮断器である。遮断器1bは、三相の遮断器のうちの遮断器配列方向の中間に配置された中相の遮断器である。また、ベイ70−1〜70−3は、遮断器配列方向に配列されている。なお、ベイ数は3個に限定されず、任意の個数で構成可能である。
【0015】
遮断器1a〜1cは、例えば建屋内に配置されている。図示例では、建屋の壁である建屋壁60a(第1の建屋壁),60b(第2の建屋壁)が示されている。建屋壁60a,60bは、互いに対向し所定の間隔L1で設けられている。遮断器1a〜1cは、それらの長手方向が建屋壁60a,60bの壁面と略直交するように配置されている。遮断器1a〜1cの建屋壁60b側の各一端から建屋壁60bまでの距離はいずれも等しく、また、遮断器1a〜1cの建屋壁60a側の各一端から建屋壁60aまでの距離はいずれも等しい。つまり、遮断器1a〜1cは長手方向に揃えて配列されている。建屋壁60aの内側には、ベイ70−1〜70−3にそれぞれ対応してガス絶縁開閉装置の制御盤55が設けられている。また、遮断器1a〜1cの建屋壁60a側の各一端と制御盤55との間には、寸法がL2の空間が設けられている。この空間は、後述するように、遮断器1a〜1cの交換時に利用される。さらにまた、遮断器1a〜1cの建屋壁60b側の各一端と建屋壁60bとの間にも所定の距離が確保されており、後述するように、遮断器タンクの引き抜き時に利用される。
【0016】
ここで、図2を参照して、ガス絶縁開閉装置の詳細構成について説明する。図2は、ベイ70−2における遮断器1aを含む断面図(A−A断面図)である。遮断器1aは、設置面50上に設置された遮断器用架台2a上に載置され、遮断器用架台2aにより下方から支持されている。設置面50は建屋内では具体的には床面である。また、遮断器用架台2aの底面と設置面50との間にはベース部52が配置されている。すなわち、遮断器用架台2aはベース部52上に載置されている。ベース部52は例えば金属板等の板状である。
【0017】
遮断器1aには、その遮断器タンクの側面に分岐引出し口6a,7aが設けられている。分岐引出し口6a,7aは、遮断器タンクの軸線方向に所定の間隔で設けられ、いずれも上方に向けて開口している。
【0018】
これらの一方の分岐引出し口6aには、計器用変流器8aが接続され、計器用変流器8aの上部には断路器10aが接続されている。断路器10aは、その長手方向を遮断器1aの長手方向と平行にして配置されており、断路器10aの一端部の下部に計器用変流器8aが接続されている。また、断路器10aの他端部には母線13aが接続されている。ここで、母線13aは、断路器10aと略同じ高さで遮断器配列方向に延設されており、隣接するベイ70−1,70−3における断路器10aと接続されている。また、断路器10aの下方でかつ遮断器1aの上方には、母線13aと平行に延伸する母線13cが配設されている。さらに、母線13aの下方でかつ母線13cと略同じ高さには、母線13a,13cと平行に延伸する母線13bが配設されている。母線13a〜13cは三相の相分離された母線を構成する。
【0019】
また、断路器10aの上部には上方に延伸する接続母線11aを介して断路器12aが接続されている。断路器12aはその長手方向を断路器10aと略平行にして配置されており、断路器12aの一端部の下部に接続母線11aが接続されている。なお、断路器10a,12aの下方における遮断器用架台2aの脚部の側面には、断路器10a,12aの操作装置5aが取り付けられている。また、断路器12aの他端部には母線14aが接続されている。ここで、母線14aは、断路器12aと略同じ高さで遮断器配列方向に延設されており、隣接するベイ70−1,70−3における断路器12aと接続されている。また、断路器12aの下方でかつ断路器10aの上方には、母線14aと平行に延伸する母線14cが配設されている。さらに、母線14aの下方でかつ母線14cと略同じ高さには、母線14a,14cと平行に延伸する母線14bが配設されている。母線14a〜14cは三相の相分離された母線を構成する。また、母線13a〜13c及び母線14a〜14cは、二重母線を構成する。
【0020】
他方、分岐引出し口7aには、計器用変流器9aが接続され、計器用変流器9aの上部には断路器18aが接続されている。断路器18aは、その長手方向を遮断器1aの長手方向と平行にして配置されており、断路器18aの一端部の下部に計器用変流器9aが接続されている。なお、断路器18aの下方における遮断器用架台2aの脚部の側面には、断路器18aの操作装置5aが取り付けられている。また、断路器18aの他端部には母線19aが接続されている。ここで、母線19aは、断路器18aと略同じ高さで遮断器1aの長手方向に延設され、建屋壁60bに設けられた挿通穴を介して建屋外に引き出され、例えば二つのケーブルヘッド20a,21aに接続されている。
【0021】
このように、横型配置の遮断器1aの一方の分岐引出し口6aには、断路器10a,12a、母線13a〜13c,14a〜14c等の母線側機器が接続されており、他方の分岐引出し口7aには、断路器18a、母線19a,ケーブルヘッド20a,21a等の線路側機器が接続されている。なお、母線側機器及び線路側機器の構成は一例であって、その他の構成を採用してもよい。
【0022】
同様の構成は、図3でも成り立つ。図3は、ベイ70−2における遮断器1bを含む断面図(B−B断面図)である。図2と同様の構成であるので概略のみを説明する。遮断器1bは、分岐引出し口6b,7bを有する。遮断器1bは遮断器用架台2bにより支持されている。また、遮断器用架台2bの底面と設置面50との間にはベース部52が配置されている。分岐引出し口6bには、計器用変流器8bを介して断路器10bが接続されている。断路器10bには、母線13bが接続されるとともに、上方に向けて延伸する接続母線11bを介して断路器12bが接続されている。断路器12bは母線14bと接続される。他方、分岐引出し口7bには、計器用変流器9bを介して断路器18bが接続されている。断路器18bには母線19bが接続され、この母線19bは遮断器1bの長手方向に延設され、建屋壁60bに設けられた挿通穴を介して建屋外に引き出されて、ケーブルヘッド20b,21bに接続されている。断路器10b,12bの下方における遮断器用架台2bの脚部の側面と断路器18bの下方における遮断器用架台2bの脚部の側面には、それぞれ断路器10b,12b及び断路器18bの操作装置5bが取り付けられている。
【0023】
また、図示は省略するが、ベイ70−2における遮断器1cを含む断面構成も、図2、図3と同様である。ただし、遮断器1cは母線13c、14cとそれぞれ接続される。なお、図1では、断路器18a,18bに対応する断路器18cと断路器12a,12bに対応する断路器12cとが示されている。断路器12cは、遮断器1cに接続されるとともに母線14cに接続されている。断路器18cは、遮断器1cの長手方向に延伸する母線19cと接続され、母線19cは建屋壁60bに設けられた挿通穴を介して建屋外に引き出されて、ケーブルヘッド20c,21cに接続されている。
【0024】
なお、図2、図3では、ベイ70−2の構成について説明したが、ベイ70−1,70−3の構成についても同様である。
【0025】
次に、従来のガス絶縁開閉装置の遮断器の取替え方法について説明する。図7は、従来のガス絶縁開閉装置の遮断器の取替え方法を説明するための上面図であり、例えばベイ70−2における遮断器1bの取替えを行う場合を示している。なお、ガス絶縁開閉装置の構成は図1〜図3と同じものとする。
【0026】
図7に示すように、遮断器1bは、ガス絶縁開閉装置から取り外した後、1b−11〜1b−19の各配置を順次辿りながら遮断器1a,1c間から引き抜かれる。ここで、1b−11〜1b−19は、移動途中の遮断器1bの配置位置を示すものであることから点線で表している。具体的には、遮断器1bは、ガス絶縁開閉装置から取り外した後、建屋壁60a側に移動させ、両側相の遮断器タンク(遮断器1a,1cの遮断器タンク)と干渉しないように水平面内で回転させた後に、遮断器配列方向に平行な状態にして移動させている。この場合、両側相の遮断器タンクが制約となるので、中相の遮断器タンク(遮断器1bの遮断器タンク)は十分に建屋壁60a側に移動させた後に回転させる必要がある。実際、図7に示すように、取り外し前における遮断器1bの建屋壁60a側の一端と制御盤55との間の寸法L4は、遮断器1bの引き抜きを可能とするために、概略遮断器1bの長手方向の寸法と同程度に設定する必要がある。その結果、建屋壁60a,60b間の寸法L3も大きくなり、建屋面積が増大するという問題があった。
【0027】
次に、本実施の形態に係るガス絶縁開閉装置の遮断器の取替え方法について説明する。図4は、本実施の形態に係るガス絶縁開閉装置の遮断器の取替え方法を説明するための上面図である。図4では、例えばベイ70−2における遮断器1bの取替えを行う場合を示している。なお、ガス絶縁開閉装置の構成は図1〜図3と同じものである。
【0028】
本実施の形態では、遮断器1bの取替えにおいて、遮断器1bを建屋壁60a側に移動させる前に、遮断器1bの両側の遮断器1a,1cを遮断器1bの移動方向とは反対側の建屋壁60b側に移動させ、その後に、遮断器1bを建屋壁60a側に移動させることにより、遮断器1bを遮断器1a,1c間から引き抜くこととする。すなわち、従来の遮断器の取替え方法においては、中相の遮断器タンク(遮断器1bの遮断器タンク)を引き抜く際に、その両側に配置された両側相の遮断器タンク(遮断器1a,1cの遮断器タンク)をそのままの配置位置としていたが(図7)、本実施の形態においては、中相の遮断器タンク(遮断器1bの遮断器タンク)を引き抜く前に、その両側に配置された両側相の遮断器タンク(遮断器1a,1cの遮断器タンク)を中相の遮断器タンクの引き抜き方向と反対側に移動させた後、中相の遮断器タンクを引き抜くこととする(図4)。なお、図4において、1b−1〜1b−10は、移動途中の遮断器1bの配置位置を示すものであり、図7と同様に、これらを点線で表している。
【0029】
本実施の形態では、上記のように遮断器1a〜1cを移動させることで、遮断器1bを建屋壁60a側にさほど移動させなくとも、中相の遮断器タンクを両側相の遮断器タンクと干渉しないように水平面内で回転させることができる。よって、中相の遮断器タンクの引き抜きに要する寸法であるL2を、従来のL4に比べて縮小することができる(L2<L4)、これにより、建屋壁60a,60b間の寸法L1も従来のL3と比べて縮小化される(L1<L3)。
【0030】
L2は、中相の遮断器タンクを引き抜くことができる必要最小限の寸法として設計することができる。この際、両側相の遮断器タンクをどの程度建屋壁60a側に移動させるかに応じてL2の大きさが決まるが、図4に示すように、両側相の遮断器タンクは建屋壁60a側の各一端が建屋壁60bに当接するまで移動させることが好ましく、このような移動を前提とすることで、L2を最小に設計することができる。
【0031】
このような考え方に基づいて引き抜きに要する寸法L2を建屋サイズの検討の際に考慮することにより、建屋サイズを縮小化することが可能となる。例えば400kVのガス絶縁開閉装置の場合においては、図7の従来の取替え方法によれば、L3=12.7m、L4=5mとなるのに対し、図4の本実施の形態によれば、L1=10.7m、L2=3mとなる。したがって、建屋奥行き寸法が12.7mから10.7mへ短縮し、建屋サイズが縮小される。尚、ベイ数が多いガス絶縁開閉装置ほど、同効果は向上する。
【0032】
次に、両側相の遮断器タンクの移動手順、及び中相の遮断器タンクの引き抜き手順の詳細についてそれぞれ説明する。図5−1は、両側相の遮断器タンクの移動手順を示す断面図であり、図5−2は図5−1に続く図である。なお、図5−1及び図5−2は、図1のA−A断面による図である。また、図6−1は、中相の遮断器タンクの引き抜き手順を示す断面図であり、図6−2は図6−1に続く図である。なお、図6−1及び図6−2は、図1のB−B断面による図である。
【0033】
図5−1及び図5−2について説明する。まず、図5−1(a)に示すように、ガス絶縁開閉装置に仮サポート30を設置する。仮サポート30は、遮断器1a〜1cの上部機器、すなわち、分岐引き出し口を介して接続された母線側機器及び線路側機器を支持することを主目的として設置される。
【0034】
次に、図5−1(b)に示すように、遮断器用架台2aに取り付けられた断路器操作用の操作装置5aを取り外し、仮サポート30に設けたチェーンホイスト25a(吊り下げ手段)により、遮断器1aの遮断器タンクを吊り下げることができるように、当該遮断器タンクをチェーンホイスト25aに取り付ける。ここで、操作装置5aを取り外すのは、一方の操作装置5aと断路器10a,12aとを連結する操作ロッド(図示せず)が存在し、他方の操作装置5aと断路器18aとを連結する操作ロッド(図示せず)が存在することから、最初に双方の操作装置5aを取り外しておかないと、当該遮断器タンクの移動の妨げとなるからである。
【0035】
次に、図5−2(c)では、当該遮断器タンクをチェーンホイスト25aで吊り下げつつ、当該遮断器タンクと母線側機器及び線路側機器との接続を解除し、遮断器用架台2aの底面と設置面50との間に配置されたベース部52を取り外し、当該遮断器タンクを下方に移動させ、遮断器用架台2aの底面が設置面50に達するようにする。なお、本実施の形態では、吊り下げ手段として例えばチェーンホイスト25aを用いているが、これに限定されず、遮断器タンクを吊り下げた状態で下方に移動させることができれば任意のものでよい。
【0036】
次に、図5−2(d)に示すように、遮断器1aをその遮断器タンクの軸線の方向に沿って建屋壁60b側へ移動させる。このとき、当該遮断器タンクの建屋壁60b側の端面が建屋壁60bの壁面に当接するまで移動させることができる。
【0037】
以上の遮断器タンク移動手順は、両側相の遮断器タンクに適用されるものであることから、遮断器1cについても同様の移動手順に従うものとする。
【0038】
次に、図6−1及び図6−2について説明する。まず、図6−1(a)に示すように、ガス絶縁開閉装置に仮サポート30を設置する。この仮サポート30の設置は、図5−1(a)と同様であり、両側相の遮断器タンクと中相の遮断器タンクに対して例えば同時に行うことができる。
【0039】
次に、図6−1(b)に示すように、遮断器用架台2bに取り付けられた断路器操作用の操作装置5bを取り外し、仮サポート30に設けたチェーンホイスト25b(吊り下げ手段)により、遮断器1bの遮断器タンクを吊り下げることができるように、当該遮断器タンクをチェーンホイスト25bに取り付ける。操作装置5bを取り外す理由は操作装置5aの場合と同様である。また、吊り下げ手段としてチェーンホイスト25b以外のものを利用できることも上記の通りである。
【0040】
次に、図6−2(c)に示すように、当該遮断器タンクをチェーンホイスト25bで吊り下げつつ、当該遮断器タンクと母線側機器及び線路側機器との接続を解除し、遮断器用架台2bの底面と設置面50との間に配置されたベース部52を取り外し、当該遮断器タンクを下方に移動させ、遮断器用架台2bの底面が設置面50に達するようにする。
【0041】
次に、図6−2(d)に示すように、遮断器1bをその遮断器タンクの軸線の方向に沿って制御盤55と干渉しない範囲で建屋壁60a側(制御盤55側)へ移動させる。そして、当該遮断器タンクを両側相の遮断器タンクと干渉しないように水平面内で回転させ、当該遮断器タンクの長手方向を壁面に平行にして移動させることにより、遮断器1bの引き抜き作業を完了する。
【0042】
なお、以上の手順を逆に辿ることにより、新たな遮断器1bを取り付けられることはいうまでもない。
【0043】
以上説明したように、本実施の形態では、横型配置の三相の遮断器1a〜1cを含むガス絶縁開閉装置において、地絡事故等が発生し中相の遮断器タンクを交換する必要が生じたときに、中相のタンクを引き抜く前にその両側の両側相の遮断器タンクを中相の遮断器タンクの引き抜き方向と反対方向に移動させた後、中相の遮断器タンクを引き抜くようにする。また、建屋サイズを設計する際には、上記の遮断器タンクの取り外し方法を前提として、中相の遮断器タンクの引き抜きに必要な最小限の引き抜き寸法を考慮した建屋サイズの設計を行うようにする。これにより、遮断器タンクの引き抜きに要する寸法を縮小し、建屋サイズを縮小することができ、建屋費用を低減することができる。特に、建屋サイズの縮小効果は、ベイ数が多いガス絶縁開閉装置ほど向上する。
【0044】
なお、本実施の形態では、中相の遮断器タンクを引き抜く場合について説明したが、これはこの場合が引き抜きに要する寸法に対する制約が最も厳しいからである。上記の遮断器タンクの取替え方法自体は、中相の遮断器タンクのみならず、両側相の遮断器タンクに対しても同様に適用することができる。例えばベイ70−2の遮断器1aを取替える際には、遮断器1aの遮断器タンクを建屋壁60a側に引き抜く前に、その両側の遮断器タンク、すなわち、ベイ70−2内の遮断器1bの遮断器タンク及びベイ70−1内の遮断器1cの遮断器タンクを建屋壁60b側に移動させた後、遮断器1aの遮断器タンクを引き抜くこととする。
【0045】
なお、本実施の形態では、建屋壁60aの壁際に制御盤55が配置されているが、制御盤55が配置されていない場合にも同様に適用できることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、ガス絶縁開閉装置の遮断器の取替え方法として有用である。
【符号の説明】
【0047】
1a〜1c 遮断器
2a,2b 遮断器用架台
5a,5b 操作装置
6a,6b,7a,7b 分岐引出し口
8a,8b,9a,9b 計器用変流器
10a,10b,12a〜12c,18a〜18c 断路器
11a〜11c 接続母線
13a〜13c,14a〜14c,19a〜19c 母線
20a〜20c,21a〜21c ケーブルヘッド
25a,25b チェーンホイスト
30 仮サポート
70−1〜70−3 ベイ
50 設置面
52 ベース部
55 制御盤
60a,60b 建屋壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建屋内においてそれぞれ遮断器タンクの軸線を水平かつ平行にして配置されるとともに前記軸線の方向と直交する方向に配列された相分離型の三相の遮断器を備え、前記三相の遮断器の遮断器タンクの各一端に対向して第1の建屋壁が配置され、前記三相の遮断器の遮断器タンクの各他端に対向して第2の建屋壁が配置されてなるガス絶縁開閉装置の遮断器の取替え方法であって、
前記三相の遮断器のうちの配列方向の両端に配置された両側相の遮断器の双方の遮断器タンクをそれらの軸線の方向に沿って前記第2の建屋壁に当接するまで前記第2の建屋壁側に移動させるステップと、
前記三相の遮断器のうちの前記配列方向の中間に配置された中相の遮断器の遮断器タンクをその軸線に沿って前記第1の建屋壁側に移動させた後、当該遮断器タンクを前記両側相の遮断器の遮断器タンクと干渉しないようにして水平面内で回転させるステップと、
を含むことを特徴とするガス絶縁開閉装置の遮断器の取替え方法。
【請求項2】
前記第1の建屋壁には前記ガス絶縁開閉装置の制御盤が設けられており、
前記中相の遮断器の遮断器タンクは、前記制御盤と干渉しないようにして水平面内で回転されることを特徴とする請求項1に記載のガス絶縁開閉装置の遮断器の取替え方法。
【請求項3】
建屋内においてそれぞれ遮断器タンクの軸線を水平かつ平行にして配置されるとともに前記軸線の方向と直交する方向に配列された相分離型の三相の遮断器と、前記三相の遮断器の上部にそれぞれ設けられ前記三相の遮断器タンクにそれぞれ設けられた分岐引出し口を介して接続された上部機器と、前記三相の遮断器の遮断器タンクをそれぞれ支持する遮断器用架台と、前記遮断器用架台の底面と床面との間に配置されたベース部と、を備え、前記三相の遮断器の遮断器タンクの各一端に対向して第1の建屋壁が配置され、前記三相の遮断器の遮断器タンクの各他端に対向して第2の建屋壁が配置されてなるガス絶縁開閉装置の遮断器の取替え方法であって、
前記ガス絶縁開閉装置に前記上部機器を支持可能な仮サポートを設置するステップと、
前記三相の遮断器のうちの配列方向の両端に配置された両側相の遮断器の遮断器タンクを前記仮サポートに設けられた吊り下げ手段により吊り下げつつ、当該遮断器タンクと前記上部機器との接続を解除し、当該遮断器タンクを支持する前記遮断器用架台の底面と前記床面の間から前記ベース部を取り外した後、当該遮断器用架台の底面が前記床面に達するまで当該遮断器タンクを下方に移動させるステップと、
前記両側相の遮断器の双方の遮断器タンクをそれらの軸線の方向に沿って前記第2の建屋壁に当接するまで前記第2の建屋壁側に移動させるステップと、
前記三相の遮断器のうちの前記配列方向の中間に配置された中相の遮断器の遮断器タンクを前記仮サポートに設けられた吊り下げ手段により吊り下げつつ、当該遮断器タンクと前記上部機器との接続を解除し、当該遮断器タンクを支持する前記遮断器用架台の底面と前記床面の間から前記ベース部を取り外した後、当該遮断器用架台の底面が前記床面に達するまで当該遮断器タンクを下方に移動させるステップと、
前記中相の遮断器の遮断器タンクをその軸線に沿って前記第1の建屋壁側に移動させた後、当該遮断器タンクを前記両側相の遮断器の遮断器タンクと干渉しないようにして水平面内で回転させるステップと、
を含むことを特徴とするガス絶縁開閉装置の遮断器の取替え方法。
【請求項4】
前記第1の建屋壁には前記ガス絶縁開閉装置の制御盤が設けられており、
前記中相の遮断器の遮断器タンクは、前記制御盤と干渉しないようにして水平面内で回転されることを特徴とする請求項3に記載のガス絶縁開閉装置の遮断器の取替え方法。
【請求項5】
前記上部機器には断路器が含まれており、
前記遮断器用架台には前記断路器の操作装置が設けられており、
前記仮サポートの設置後、前記両側相の遮断器の遮断器タンクを前記吊り下げ手段により吊り下げる前に、当該遮断器タンクを支持する前記遮断器用架台に設けられた前記操作装置が取り外され、
前記両側相の遮断器の遮断器タンクを前記第2の建屋壁側に移動させた後、前記中相の遮断器の遮断器タンクを前記吊り下げ手段により吊り下げる前に、当該遮断器タンクを支持する前記遮断器用架台に設けられた前記操作装置が取り外されることを特徴とする請求項3又は4に記載のガス絶縁開閉装置の遮断器の取替え方法。
【請求項6】
前記ガス絶縁開閉装置は、前記三相の遮断器をそれぞれ含む複数のベイを備えてなることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載のガス絶縁開閉装置の遮断器の取替え方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5−1】
image rotate

【図5−2】
image rotate

【図6−1】
image rotate

【図6−2】
image rotate

【図7】
image rotate