ガス絶縁開閉装置及びその製造方法
【課題】縁スペーサの絶縁部表面に金属異物が付着した場合でも、放電の発生を抑制できる信頼性の高いガス絶縁開閉装置を得る。
【解決手段】絶縁ガスが充填された接地タンク1内に高電圧導体5が配置され、この高電圧導体5が絶縁スペーサ2により支持されて接地タンク1に固定されたガス絶縁開閉装置において、絶縁スペーサ2の絶縁部3の絶縁ガスと接する絶縁部表面3aを、JISB0601−1994で規定される十点平均粗さRzで30μm〜200μmとなるように粗面化した。
【解決手段】絶縁ガスが充填された接地タンク1内に高電圧導体5が配置され、この高電圧導体5が絶縁スペーサ2により支持されて接地タンク1に固定されたガス絶縁開閉装置において、絶縁スペーサ2の絶縁部3の絶縁ガスと接する絶縁部表面3aを、JISB0601−1994で規定される十点平均粗さRzで30μm〜200μmとなるように粗面化した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、絶縁ガスが充填された円筒状の接地タンク内に高電圧導体が絶縁支持されて配置されたガス絶縁開閉装置及びその製造方法に関し、特に、高電圧導体を支える絶縁スペーサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガス絶縁開閉装置は、絶縁媒体として非常に絶縁性能に優れたSF6ガスが使用されていたが、温暖化係数が二酸化炭素の約24000倍と高いため、削減する方向に進んでいる。代替ガスとしては、窒素や二酸化炭素,ドライエアなどが使用されるが、絶縁性能がSF6ガスよりも劣る。
ガス絶縁開閉装置内に数mm程度の金属異物が存在した場合、絶縁構造部材の表面に付着する可能性があり、金属異物が付着すれば絶縁性能が大きく低下することが知られている。絶縁ガスとして上記代替ガスを使用する場合は、その低下の度合いがより大きくなる。金属異物対策として、金属異物を捕獲する装置を接地タンクの底部に設置する等の種々の方策が提案されているが、100%の捕獲性能を得ることは困難なため、絶縁構造部材に金属異物が付着した状態で落雷などが発生した場合でも、それに耐えうるような設計にしておく必要がある。
【0003】
このような背景をふまえ、絶縁構造部材(絶縁スペーサ)の絶縁性能を向上させたガス絶縁機器の従来の技術として、例えば、絶縁ガスを封入した金属容器内に通電用の高電圧導体を配置し、この高電圧導体を金属容器内で絶縁スペーサにより絶縁支持したものにおいて、絶縁スペーサの表面にセラミックスを溶射して絶縁被覆を形成することで、表面への金属異物の付着を発生しにくくし、また、たとえ付着して放電が発生した場合でも表面の劣化を抑制できるようにした技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−273480号公報(第2頁、図1−3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献1に示されたガス絶縁機器の絶縁スペーサは、絶縁材料部分を無機物絶縁物にて覆うため、基材である絶縁材料部分と無機物絶縁物との間に、絶縁の弱点となる界面が発生してしまう可能性があった。更に、無機物絶縁物は通常使用するエポキシ樹脂などの有機物絶縁物などに比べると誘電率が高いために金属異物が付着した場合、その先端部近傍に形成されるトリプルジャンクションで発生する電界が高くなり、放電が発生しやすくなる虞があった。
【0006】
この発明は、上記のような問題点を解消するためになされたもので、絶縁スペーサの絶縁部表面に金属異物が付着した場合でも放電の発生を抑制でき、信頼性の高いガス絶縁開閉装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るガス絶縁開閉装置は、絶縁ガスが充填された接地タンク内に高電圧導体が配置され、高電圧導体が絶縁スペーサにより支持されて接地タンクに固定されたガス絶縁開閉装置において、絶縁スペーサの絶縁部の絶縁ガスと接する表面が、JISB0601−1994で規定される十点平均粗さRzで30μm〜200μmとなるように粗面化されているものである。
【0008】
また、この発明に係るガス絶縁開閉装置の製造方法は、ブラスト処理により、絶縁スペーサの絶縁部の絶縁ガスと接する表面を、JISB0601−1994で規定される十点平均粗さRzが30μm〜200μmとなるように粗面化するとともに、十点平均粗さを超える凸部の間隔が、1.5〜3.0mmの範囲内になるように形成したものである。
また、上記のブラスト処理に変えて、内面を粗面化した金型を使用して成型したものである。
【0009】
また、この発明に係るガス絶縁開閉装置は、絶縁ガスが充填された接地タンク内に高電圧導体が配置され、高電圧導体が絶縁スペーサにより支持されて接地タンクに固定されたガス絶縁開閉装置において、絶縁スペーサの絶縁部の絶縁ガスと接する表面に厚さ50〜1000μmの正極性に帯電しやすい材料からなる絶縁被覆層を付加して、絶縁被覆層の表面が、JISB0601−1994で規定される十点平均粗さRzで30μm〜200μmとなるように粗面化されているものである。
【0010】
また、また、この発明に係るガス絶縁開閉装置の製造方法は、ブラスト処理により、絶縁スペーサの絶縁被覆層の絶縁ガスと接する表面を、JISB0601−1994で規定される十点平均粗さRzが30μm〜200μmとなるように粗面化するとともに、十点平均粗さを超える凸部の間隔が1.5〜3.0mmの範囲内となるように形成したものである。
また、上記のブラスト処理に変えて、内面を粗面化した金型を使用して成型したものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明のガス絶縁開閉装置によれば、絶縁スペーサの絶縁部の絶縁ガスと接する表面が、JISB0601−1994で規定される十点平均粗さRzで30μm〜200μmとなるように粗面化されているので、絶縁スペーサの絶縁部の表面に金属異物が付着した場合でも、雷や開閉装置が働いた時に発生する開閉サージなどの電圧が課電された場合に最も電界が高くなる金属異物の先端部を絶縁部表面から離すことができるため、電界が周囲に比べて高くなってしまうトリプルジャンクションが形成される確立が低減されて、放電の発生を抑制でき、ガス絶縁開閉装置の信頼性を向上させることができる。
【0012】
また、この発明のガス絶縁開閉装置の製造方法によれば、ブラスト処理により、または、金型を使用して、絶縁スペーサの絶縁部の絶縁ガスと接する表面を上記のように粗面化したので、絶縁部の粗面化を容易に行うことが可能であり、粗面化によりトリプルジャンクションが形成される確立を低減できるため、信頼性の高いガス絶縁開閉装置を容易に提供することができる。
【0013】
また、この発明のガス絶縁開閉装置によれば、絶縁スペーサの絶縁部の絶縁ガスと接する表面に厚さ50〜1000μmの正極性に帯電しやすい材料からなる絶縁被覆層を付加して、絶縁被覆層の表面が、JISB0601−1994で規定される十点平均粗さRzで30μm〜200μmとなるように粗面化されているので、正極性の電圧により発生する部分放電を抑制することができるため、粗面化による効果に加えて、金属異物による耐電圧性能の低下を効果的に抑制して、信頼性の高い絶縁スペーサを得ることができる。
【0014】
また、この発明のガス絶縁開閉装置の製造方法によれば、ブラスト処理により、または、金型を使用して、絶縁スペーサの絶縁被覆層の絶縁ガスと接する表面を、JISB0601−1994で規定される十点平均粗さRzが30μm〜200μmとなるように粗面化するとともに、十点平均粗さを超える凸部の間隔が1.5〜3.0mmの範囲内となるように形成したので、絶縁被覆層の表面の粗面化を容易に行うことが可能であり、放電の発生を抑制した、信頼性の高いガス絶縁開閉装置を容易に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の実施の形態1によるガス絶縁開閉装置の絶縁スペーサ部分を示す断面図である。
【図2】図1の絶縁スペーサの絶縁部の表面形状を説明する拡大断面図である。
【図3】従来の絶縁スペーサの絶縁部表面に付着した金属異物の様子を説明する拡大断面図である。
【図4】図1の絶縁スペーサの絶縁部表面に付着した金属異物の様子を説明する拡大断面図である。
【図5】ガス絶縁開閉装置を構成する絶縁スペーサの絶縁部の表面粗さと絶縁破壊電界の関係を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態1によるガス絶縁開閉装置の絶縁スペーサの他の例を示す断面図である。
【図7】この発明の実施の形態1によるガス絶縁開閉装置の絶縁スペーサの別の例を示す断面図である。
【図8】この発明の実施の形態2によるガス絶縁開閉装置の絶縁スペーサ部分を示す正面図である。
【図9】この発明の実施の形態2によるガス絶縁開閉装置の絶縁スペーサの絶縁部表面の電界分布図である。
【図10】この発明の実施の形態3によるガス絶縁開閉装置の絶縁スペーサ部分を示す正面図である。
【図11】この発明の実施の形態3によるガス絶縁開閉装置の絶縁スペーサの、耐電圧性能向上の効果を説明する図である。
【図12】この発明の実施の形態4によるガス絶縁開閉装置の絶縁スペーサ部分を示す正面図である。
【図13】この発明の実施の形態6によるガス絶縁開閉装置の絶縁スペーサの絶縁部の表面形状を説明する拡大断面図である。
【図14】この発明の実施の形態6によるガス絶縁開閉装置の絶縁スペーサの、耐電圧性能向上の効果を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1によるガス絶縁開閉装置の絶縁スペーサの部分を示す図であり、(a)は側面断面図、(b)はタンクの軸方向に見た絶縁スペーサの部分の正面図である。また、図2は、図1の絶縁スペーサの表面の拡大断面図であり、金属異物が付着した状態を示している。
【0017】
先ず、図1により、ガス絶縁開閉装置の概要を説明する。
円筒状の金属容器により構成された接地タンク1は、所定の長さのものが、それぞれの端部のフランジ1a部において図示しないボルト等によって接続されている。フランジ1aの接続面に、絶縁構造部材である円錐形の絶縁スペーサ2が挟まれて、フランジ1aと共にボルト締めされて固定されている。絶縁スペーサ2は、絶縁材料からなる絶縁部3と、中心部に設けられた中心導体4を有しており、この中心導体4の両側に高電圧導体5が接続されて支持されている。
絶縁スペーサ2を構成する絶縁部3の材料としては、例えば、エポキシ,エポキシとアルミナ,エポキシとシリカ,エポキシとフッ化アルミナのいずれかが用いられる。
【0018】
フランジ1aと絶縁スペーサ2の接続部は、気密を保って接続されており、接地タンク1の内部には絶縁ガスが充填されている。
高電圧導体5と絶縁スペーサ2の中心導体4との接続部には、電界緩和シールド6が設けられている。
高電圧導体5には、図示しない系統遮断器、断路器、接地器などが電気的に接続されており、これらの機器を含んだ装置で、ガス絶縁開閉装置が構成されている。
【0019】
本願発明は、絶縁スペーサ2の絶縁部3の表面の形状に特徴を有するので、次に、この表面形状について説明する。
図1において、絶縁部3の絶縁ガスと接する表面、すなわち、図1(a)中に太線で示している部分(以下、単に絶縁部表面3aと称す)には、微小な凹凸が形成されている。
図2は、図1の絶縁スペーサ2の絶縁部表面3aを拡大した断面図である。図に示すように、絶縁部表面3aには、JIS規格(JISB0601−1994)の十点平均粗さで表した場合、十点平均粗さRzが30μm〜200μmとなるような凹凸に粗面化されている。
また、このとき、図2中に示すA部のような、十点平均粗さRzを超える凸部の間隔を、1.5〜3.0mmの範囲内となるように形成するのが望ましい。
凹凸の形成方法については後述する。
【0020】
図2では、絶縁部表面3aに、長さが3mm程度以下で径方向の太さが0.2mm程度以下の細長い金属異物7が付着した場合を模式的に示している。
実施の形態1の構成によれば、例え金属異物7が絶縁部表面3aに付着した状態で、雷や開閉装置が働いた時に発生する開閉サージなどの電圧が課電されても、絶縁破壊事故が起こりにくく、信頼性の高いガス絶縁開閉装置を提供できる。
以下にその作用効果について説明する。
【0021】
先ず、ガス絶縁開閉装置において、その内部に存在する金属異物の影響について説明する。上述のように、ガス絶縁開閉装置は、系統遮断器、断路器、接地器などを含んだ装置であり、絶縁スペーサのような絶縁構造部材に支えられた高電圧導体が、円筒状の接地タンク内に納められた同軸円筒状の構造である。高電圧導体と接地タンクの間は、高消弧性能と高絶縁性能を有する絶縁ガスが充填されている。
【0022】
ガス絶縁開閉装置を構成するほとんどのパーツは、工場内のクリーンルームで組み立てられて現地へ輸送されるが、輸送限界等により一部は現地で組み立てられる。このため、現地組立時にガス絶縁開閉装置の中に金属異物が紛れ込む可能性がある。
この金属異物としては、例えば、接地タンク同士を接続する際にボルトの通し穴に残っていたバリなどの金属片が考えられる。またそれとは別に、導体等の金属同士が開閉部分などで摺動する際に発生する場合もある。これら金属異物の大部分は検査工程で取り除かれるが、長さが3mm程度以下で太さが0.2mm程度以下の金属異物は発見が困難であり、検査で見落とされる場合がある。
【0023】
金属異物は、ガス絶縁開閉装置の運転が開始されるまでは、接地タンク内部の底面に横たわっている。運転開始前の試験などで定格電圧よりも高い電圧を印加した場合に動き出し、接地タンクの中心に絶縁スペーサで支持された高電圧導体と接地タンクとの間で往復運動を繰り返し、その勢いで高電圧導体の軸方向に動きまわる。その時、高電圧導体を支えている絶縁スペーサの絶縁部表面に付着する可能性がある。付着すると、金属異物と絶縁材料と絶縁ガスの3つによりトリプルジャンクションが形成される。トリプルジャンクションは誘電率の関係により周囲と比較して高い電界が形成される部位である。
【0024】
金属異物が付着したままで、雷や開閉装置の動作時に発生する開閉サージが課電されると、特に電界が高くなる金属異物の先端部近傍のトリプルジャンクションの電界が放電電界を容易に越えてしまい放電が発生する。この時、絶縁スペーサの絶縁部表面の沿面方向の電界も高くなっているため、放電は絶縁部表面を進展して接地側と導体側を橋絡し、絶縁破壊事故が発生する。
したがって、金属異物の先端部近傍にトリプルジャンクションを形成させないようにすることが重要であり、これにより絶縁破壊の可能性を低下させることができる。
【0025】
一般的に、絶縁スペーサ等の絶縁構造部材の絶縁部表面は滑らか(数μmオーダー)に仕上げられている。これは金属部材の凹凸面における電界上昇と同じ考え方によるものであり、少なからず絶縁材料の凹凸においても電界は集中してしまうので、同様な措置がとられているものである。この措置は、金属異物が存在しない理想的な場合を想定したものであるが、上述のように、実使用環境では金属異物が存在するので、上記のような比較的滑らかな仕上げでは、金属異物の先端部近傍でトリプルジャンクションが形成される確立は高く、絶縁破壊電圧が低下することになる。このことを図により説明する。
図3は、比較説明のために、従来のように比較的滑らかに仕上げられた絶縁スペーサの絶縁部表面3bに金属異物7が付着した模式図である。図から分かるように、絶縁部表面3bの表面粗さRzが30μmに満たないような滑らかな場合では、図中の破線で囲って示すように、金属異物先端部7a近傍でトリプルジャンクション8が形成される確率が非常に高い。
【0026】
本願発明では、絶縁部表面を粗面化して凹凸を形成し、金属異物の先端部近傍にトリプルジャンクションが形成される確率を低下させたものである。
そこで次に、本願発明の絶縁スペーサの作用について説明する。
図4は、実施の形態1による絶縁スペーサ2の絶縁部表面3aに金属異物7が付着した様子を示す部分断面図であり、図2と同等部分であるが、図3に対応させて拡大表示したものである。
図中に破線で囲って示すように、トリプルジャンクション8は、絶縁部表面3aに付着した金属異物7の最も電界が高くなる金属異物先端部7aの近傍に形成される確率が低下し(すなわち、金属異物先端部7a近傍から離れた箇所に形成される確立が増し)、電界の上昇を抑制できるため、結果として放電の発生を抑制でき、絶縁スペーサ2の信頼性を高めることができる。
【0027】
上記の効果を実験により検証し確認した。
図5は、実験結果によって得た、絶縁部表面に上述のような微小な金属異物が付着した場合の、絶縁部表面粗さと絶縁破壊電界の関係を示す図である。縦軸に絶縁破壊電界を示し、横軸に絶縁部表面粗さを示している。横軸の絶縁部表面粗さは、前記JIS規格の十点平均粗さRzで表したものである。
図から分かるように、絶縁部表面粗さが十点平均粗さRzで30μm以上になれば絶縁破壊電界が上昇しており、粗面化の効果が大きくなっている。
表面粗さの程度をあまり大きくすると、加工が難しくなり、また絶縁部沿面の耐電圧性
能が低下してくることから、十点平均粗さRzの上限は200μm程度とするのが望ましい。
【0028】
また、図2に示すように、十点平均粗さRzを超える凸部の間隔が、略1.5〜3.0mmの範囲内となるように形成することで、絶縁部表面3aに付着した金属異物7が、図中にAで示すように、粗面化で形成された山の突出する部分で効果的に支持されるため、金属異物7の先端部近傍でのトリプルジャンクションの形成確率は大幅に低下する。
上記の十点平均粗さRzの範囲を規定したことと相まって、雷電圧などが課電された場合に最も電界が高くなる先端部分付近にトリプルジャンクションが形成される確率が大幅に低下することで、電界上昇を効果的に抑制できる。
また、例え一部の金属異物7の先端部近傍でトリプルジャンクションが形成されたとしても、絶縁部表面3aにおけるトリプルジャンクション8を形成する領域、すなわち電界が高い領域が小さいため、橋絡するような放電には至らない。
【0029】
以上までの説明では、ガス絶縁開閉装置の高電圧導体5を支える絶縁構造部材は、図1のような円錐形の絶縁スペーサ2であった。絶縁スペーサには様々な形状のものがあるので、次に、絶縁スペーサの他の例について説明する。
図6はポスト形の絶縁スペーサ9を示す図であり、(a)は側面図、(b)は接地タンク1の軸線方向に見た正面図を示している。絶縁スペーサ9は、絶縁部材からなる絶縁部10と、高電圧導体5の支持と電界緩和シールドを兼ねた導体支持部11と、固定部12とを有し、固定部12が接地タンク1の側壁に固定されて高電圧導体5が支持されている。この絶縁部10の、絶縁ガスと接する絶縁部表面10a(図中太線部)を、図2の場合と同様に粗面化するものである。
【0030】
図7は更に他の例であり、3相一括の円板形の絶縁スペーサ13を示している。(a)は側面図、(b)は正面図である。図1と同等部分は同一符号で示し説明は省略する。絶縁スペーサ13は、絶縁部材からなる絶縁部14と、高電圧導体5を支持する中心導体15とを有しており、中心導体15の両側にそれぞれ高電圧導体5が接続されて支持され、接続部は電界緩和シールド6で覆われている。
絶縁部14の絶縁ガスと接する絶縁部表面14a(図中太線部)を、図2と同様に粗面化することで、上記と同様な作用効果を得ることができる。
【0031】
なお、絶縁スペーサ9,13の絶縁材料は、特別な材料を使用する必要はなく、絶縁スペーサ2で説明したものと同様に、エポキシ,エポキシとアルミナ,・・・等の従来から用いられている材料を使用すればよい。すなわち、本実施の形態の絶縁スペーサの絶縁部の材料は、特別な材料とする必要はなく、従来から多く用いられた絶縁材料を使用することで、安価に構成できる。
また、背景技術の項で説明した特許文献1のように絶縁材料表面にセラミックス等の別の層を形成するものと比較して、絶縁材料表面に別の層を設けてないため、最も絶縁耐力が弱くなる部位である界面、すなわち、絶縁材料表面とその表面に形成する層との境界を形成しなくて済み、絶縁耐力の向上効果が大きくなる。
更に、セラミックス等の部材では、金属異物が付着した場合のトリプルジャンクションの電界は、本願のような絶縁材料と比較して、誘電率が1.5〜2.0倍高いので、放電発生の可能性も1.5〜2.0倍高くなってしまうが、本願発明の構成によればその心配がない。
【0032】
以上のように、実施の形態1のガス絶縁開閉装置によれば、絶縁ガスが充填された接地タンク内に高電圧導体が配置され、高電圧導体が絶縁スペーサにより支持されて接地タンクに固定されたガス絶縁開閉装置において、絶縁スペーサの絶縁部の絶縁ガスと接する表面が、JISB0601−1994で規定される十点平均粗さRzで30μm〜200μmとなるように粗面化されているので、雷や開閉装置が働いた時に発生する開閉サージなどが課電された場合に絶縁部表面に付着した金属異物の最も電界が高くなる金属異物先端部近傍にトリプルジャンクションが形成される確率が減少し、電界上昇を抑制できるため、結果として放電の発生を抑制でき、信頼性の高いガス絶縁開閉器を得ることができる。
【0033】
また、上記の十点平均粗さRzを超える凸部の間隔が、1.5〜3.0mmの範囲内となるように形成されているので、絶縁スペーサの絶縁部表面に付着した金属異物が、粗面化で形成された山の凸部で効果的に支持されるため、雷電圧等が課電された場合に最も電界が高くなる金属異物先端部分近傍にトリプルジャンクションが形成される確率が更に減少し、電界上昇を抑制できる。
【0034】
また、絶縁スペーサの絶縁部の材料の組成は、エポキシ,エポキシとアルミナ,エポキシとシリカ,エポキシとフッ化アルミナのいずれかとしたので、一般的に使用される絶縁材料を用いて、絶縁部表面を粗面化した絶縁スペーサを安価に提供できる。
【0035】
実施の形態2.
次に、この発明の実施の形態2によるガス絶縁開閉装置について説明する。ガス絶縁開閉装置の高電圧導体を支持する絶縁スペーサの基本的な形状は、実施の形態1の図1、図6及び図7と同等なので、図示及び構成の説明は省略し、相違点を中心に説明する。相違点は、絶縁スペーサの絶縁部表面を粗面化する範囲である。
【0036】
図8は、実施の形態2のガス絶縁開閉装置の絶縁スペーサ部の正面図であり、実施の形態1の図1(b)に対応する図である。
実施の形態1では、図1のように、絶縁スペーサ2を構成する絶縁部3の、絶縁ガスと接する表面、すなわち絶縁部表面3aの全体を粗面化したが、これに対し、本実施の形態では、図8に示すように、絶縁スペーサを構成する絶縁部の、絶縁ガスと接する表面である絶縁部表面3aのうち、高電圧導体5の支持側から接地タンク1への固定側にかけて、支持側から略50%の範囲までを粗面化領域3c(両面とも)とし、実施の形態1で説明した図2と同等な形状に、粗面化したものである。
【0037】
このような構成の作用について説明する。
一般的に、絶縁スペーサにおいて、高電圧導体に取り付けられる電界緩和シールドに近い絶縁スペーサの表面が特に電界が高くなり、金属異物が付着した場合は沿面放電が特に発生しやすくなる。
図9は、図1で示したような円錐形の絶縁スペーサの場合の、絶縁部表面の沿面方向の電界分布示す図である。図において、破線で示すのは凹側の沿面電界分布であり、実線は凸側の沿面電界分布である。図9から、絶縁スペーサの両面の電界分布は、高電圧導体側からの距離が、ともに50%以下の部位に最大電界を持っていることが分かる。
本実施の形態では、絶縁スペーサ2の絶縁部表面3aの上記領域3cを粗面化しているため、効率よく絶縁スペーサ表面の絶縁耐力を向上させることができる。
【0038】
なお、絶縁スペーサの形状が、図6のようなポスト形の絶縁スペーサ9、及び、図7のような円板形の絶縁スペーサ13の場合も、同様に、高電圧導体5の支持側から接地タンク1の固定側にかけて、高電圧導体5に近い側から略50%の範囲までを粗面化すればよい。
【0039】
以上のように、実施の形態2のガス絶縁開閉装置によれば、絶縁スペーサの絶縁部が絶縁ガスと接する表面のうち、高電圧導体の支持側から接地タンクへ固定する固定側にかけて、支持側から略50%の範囲までが粗面化されているので、絶縁スペーサの表面の最も電界が高くなるような位置に金属異物が付着しても絶縁性能を低下させることなく、更に絶縁スペーサ表面の全体を粗面化する場合に比べて、加工の作業時間が短縮されて製作の効率化が図れる。
【0040】
実施の形態3.
次に、この発明の実施の形態3によるガス絶縁開閉装置について説明する。ガス絶縁開閉装置の高電圧導体を支持する絶縁スペーサの基本的な形状は、実施の形態1の図1、図6及び図7と同等なので、図示及び構成の説明は省略し、相違点を中心に説明する。相違点は、絶縁部表面の粗面化領域に正極性に帯電しやすい絶縁物質を被着する点である。
図10は、実施の形態3のガス絶縁開閉装置の絶縁スペーサ部の正面図であり、実施の形態1の図1(b)に対応する図である。図1と同等部分は同一符号を付して説明は省略する。
【0041】
実施の形態1では、図1で説明したように、絶縁スペーサ2を構成する絶縁部3の、絶縁ガスと接する表面、すなわち絶縁部表面3a(両面とも)を粗面化したが、これに対し、本実施の形態では、絶縁部表面3a全体を粗面化するまでは図1と同様であり、更に、粗面化領域の上に、正極性に帯電しやすい絶縁物質、例えば、ポリアミド系樹脂(ナイロン6,同46,同66,同6.10,同11,同12)、PMMA(Polymethyl Methacrylate:アクリル樹脂)、ガラス、セロハン等のいずれかを被着させた絶縁被膜層16を形成したものである。
絶縁被膜層16の表面は、JIS規格(JISB0601−1994)の十点平均粗さで表した場合、十点平均粗さRzが30μm〜200μmとなるように形成する。
本実施の形態の場合は、絶縁部表面3a全体が粗面化領域であり、且つ、絶縁被膜層16を形成する領域となっている。
【0042】
このような構成の作用について説明する。
一般的にSF6ガスは、不平等電界下では、負極性の電圧よりも正極性の電圧が課電された場合において、その耐電圧性能は低く、SF6ガスを使用するガス絶縁開閉装置においても同様である。環境保護のためにSF6ガスの削減が進められているが、他のガス、例えば窒素、二酸化炭素、酸素などは単体での耐電圧性能は低いため、SF6ガスと混合して使用することでその性能低下を抑制する方法が一般的に用いられる。
このような混合ガスを使用した状況で絶縁スペーサの絶縁部表面3aに、図2のような金属異物7が付着した場合は、金属異物7先端近傍は不平等電界となるため、やはり正極性の電圧が発生する金属異物7の先端から部分放電が進展して、高電圧導体5もしくは接地タンク1と接続され、その後、高電圧導体5と接地タンク1が部分放電により接続され、破壊に至る。
【0043】
したがって、正極性の電圧により発生する部分放電を抑制することで、金属異物による耐電圧性能の低下を抑制できる。この事により、金属異物先端に位置する絶縁スペーサの絶縁部表面が正極性に帯電していれば、金属異物先端の正極性の電圧と絶縁スペーサの絶縁部表面に存在する正極性の電荷が作り出す、同じく正極性の電圧によりその部位の電界は弱められ、従って絶縁スペーサの耐電圧性能が向上する。
よって、粗面化された絶縁スペーサ2の絶縁部表面3aに、上述のような正極性に帯電しやすい絶縁物質を被着させた絶縁被膜層16を形成することにより、更なる耐電圧性能向上を実現できる。
【0044】
絶縁被膜層16の表面は、JIS規格(JISB0601−1994)の十点平均粗さで表した場合、十点平均粗さRzが30μm〜200μmとなるように形成する。絶縁スペーサの絶縁部表面3aの表面粗さが、JIS規格(JISB0601−1994)の十点平均粗さRzで30μm〜200μmの凹凸に粗面化されているので、その表面にごく薄い絶縁被膜層を被着することで、絶縁部表面3aの凹凸形状をほとんど失うことなく、したがって、その耐電圧性能を失うことなく、正極性に帯電させて、更に耐電圧性能の向上を図ることが可能である。
【0045】
図11は、その効果の一例を示したものである。従来のように絶縁部表面3aを粗面化していない絶縁スペーサと、絶縁スペーサの絶縁部表面を図2に示したように粗面化したものと、粗面化した絶縁部表面にポリアミド系樹脂であるナイロン12を被着させて絶縁被膜層を形成したものとを試料とし、それぞれの表面に金属異物を付着させ、雷電圧を印加した場合の耐電圧性能を比較したものである。縦軸は、BDV(Breakdown Voltage:絶縁破壊電圧)の比率とし、最高値を比較している。図11から、本実施の形態のように正極性に帯電しやすい絶縁物質の絶縁被膜層を形成したことによる耐電圧性能の向上が明らかである。
【0046】
また、絶縁被膜層16を、粗面化した絶縁スペーサ2の絶縁部表面3aに被着する方法としては、正極性に帯電しやすい上述の絶縁物質を細かい粉体状にし、この粉体を、被着対象の絶縁スペーサ2の材料と同等のエポキシ樹脂を液状にしたものに混合し、塗布等の方法で被着させる方法が有効である。以下に、その理由を説明する。
【0047】
ポリアミド系樹脂、PMMAおよびセロハンは一般には溶融させて被着させる必要があり、その場合、被着される側も温度が高くなければ完全な被着が難しく、容易に剥離する可能性がある。高分子材料であるポリアミド系樹脂、PMMA、セロハンの熱変形温度はおよそ100度から200度であり、無機物であるガラスの溶融温度は1400度にもなる。図10に示すような絶縁スペーサ2は、直径が数十cmから1mを超えるものまであり、大きな絶縁スペーサ2の温度を、被着する絶縁物質の温度に上げることは容易ではない。
【0048】
一般的に、物質の帯電特性はその形状に左右されることは少なく、したがって正極性に帯電しやすい絶縁物質を粉体状にしても、その特性が変化することは少なく、粉体状の帯電物質を絶縁スペーサの材料であるエポキシ樹脂と混合してスプレーや刷毛などで塗布することで簡単に被着させることが可能となる。絶縁スペーサの材料と同等のエポキシ材料と混合することで、被膜の剥離が発生することなく良好に被着できる。
この場合、常温硬化するエポキシ樹脂を使うとよい。また、絶縁スペーサの材料となるエポキシ樹脂は、耐用年数などが既知であり、これと同等のエポキシ樹脂を使用することで開発も容易である。
【0049】
以上のように、実施の形態3によるガス絶縁開閉装置によれば、絶縁スペーサの絶縁部の粗面化された表面に、正極性に帯電しやすい絶縁物質を被着した絶縁被膜層が形成されているので、特に、絶縁ガスとしてSF6ガスを混合した混合ガスが使用される場合、正極性の電圧により発生する部分放電を抑制することができ、実施の形態1のような絶縁スペーサの絶縁部の粗面化による効果に加えて、金属異物による耐電圧性能の低下を抑制できるため、信頼性の高い絶縁スペーサを得ることができる。
また、耐電圧性能の向上により絶縁スペーサを小形化することが可能となるので、ガス絶縁開閉装置のタンク径の縮小が可能となり、低コスト化を図ることができる。
【0050】
また、絶縁被膜層は、粉体状にした絶縁物質がエポキシ樹脂と混合されて塗布されているので、粗面化した絶縁スペーサの表面に、容易に強固に密着した絶縁被膜層を形成することができる。
【0051】
実施の形態4.
次に、この発明の実施の形態4によるガス絶縁開閉装置について説明する。ガス絶縁開閉装置の高電圧導体を支持する絶縁スペーサの基本的な形状は、実施の形態1の図1、図6及び図7と同等なので、図示及び構成の説明は省略する。また、粗面化した絶縁スペーサの絶縁部表面に正極性に帯電しやすい絶縁物質を被着させるのは実施の形態3と同様である。実施の形態3との相違点は、上記絶縁物質を被着させる範囲なので、以下、相違点を中心に説明する。
【0052】
図12は、実施の形態4のガス絶縁開閉装置の絶縁スペーサ部の正面図であり、実施の形態3の図10に対応する図である。
実施の形態3では、図10のように、絶縁スペーサ2を構成する絶縁部3の、絶縁ガスと接する表面である絶縁部表面3a全体を粗面化すると共に、粗面化領域全体に、正極性に帯電しやすい絶縁物質を被着させた絶縁被膜層16を形成したが、これに対し、本実施の形態では、図12に示すように、絶縁スペーサ2を構成する絶縁部3の、絶縁ガスと接する絶縁部表面3a(=粗面化領域)のうち、高電圧導体5の支持側から接地タンク1への固定側にかけて、支持側から略40%の部位から略60%の部位の範囲(両面とも)を、正極性に帯電しやすい絶縁物質を被着して絶縁被膜層17を形成する領域としたものである。絶縁被膜層17を構成する材料や被着方法は、実施の形態3で説明したものと同等である。
【0053】
このような構成の作用について説明する。
実施の形態2で説明したように、高電圧導体に取り付けられる電界緩和シールドに近い絶縁スペーサの表面が特に電界が高くなる。絶縁スペーサは雷波形電圧を考慮して設計するが、雷は正、負両方の極性があり、どちらの極性も同等な確率で課電されると考えてよい。金属異物が存在しない場合においては、高電圧導体5の電界緩和シールド6(図1参照)近傍が不平等電界になるため、その近傍に正極性に帯電しやすい絶縁物質が存在すると、かえって耐電圧性能を低下させる可能性がある。このことを考慮すると、先の図9に示す、沿面電界分布の中央付近、すなわち高電圧導体側から接地タンク側に向かって略40%から60%の領域に正極性に帯電しやすい絶縁物質を被着するのが望ましい。このような観点から、本実施の形態では、図12に示すように、上述の範囲に絶縁被膜層17を形成しているため、効率よく絶縁スペーサ表面の絶縁耐力を向上させることができる。
【0054】
なお、絶縁スペーサの形状が、図6のようなポスト形の絶縁スペーサ9、及び、図7のような円板形の絶縁スペーサ13の場合も、同様に、高電圧導体5の支持側から接地タンク1の固定側にかけて、高電圧導体5に近い側から略40%から60%の範囲に絶縁被膜層を形成すればよい。
【0055】
以上のように、実施の形態4のガス絶縁開閉装置によれば、絶縁スペーサの粗面化された表面のうち、高電圧導体の支持側から接地タンクへ固定する固定側にかけて、略40%から略60%までの範囲に、正極性に帯電しやすい絶縁物質を被着させた絶縁被膜層が形成されているので、絶縁スペーサの表面の電界が高くなるような位置に金属異物が付着しても、あるいは金属異物が付着していなくても、絶縁性能を低下を抑制できる。
また、絶縁スペーサ表面の粗面化領域全体に絶縁被膜層を形成する場合に比べて、加工の作業時間が短縮されて製作の効率化が図れる。
【0056】
実施の形態5.
実施の形態5は、実施の形態1〜4で説明したものと同等のガス絶縁開閉装置において、絶縁スペーサの絶縁部の粗面化の方法に関するものである。したがって、ガス絶縁開閉装置の絶縁スペーサの構成は、図1,図6〜図8,図10,図12と同等なので、図示及び説明は省略する。
【0057】
先ず第1の方法として、絶縁スペーサの絶縁部表面を、「ブラスト処理」を利用して粗面化するものである。ブラスト処理は、加工対象物の表面に非金属粒や金属粒のブラスト材(図示せず)を高速度で噴きつけ、表面を粗化する方法である。
ブラスト材としては、固体二酸化炭素、いわゆるドライアイス(商標)を使用するのがよい。ドライアイスは使用後昇華して二酸化炭素となってしまうため、ブラスト材が絶縁部表面3aに残留して絶縁耐力を低下させてしまうという問題を排除できる。
【0058】
ブラスト処理によって粗面化する表面形状は、実施の形態1で説明したように、JIS規格の十点平均粗さRzが30μm〜200μmとなるように粗面化するとともに、十点平均粗さを超える凸部の間隔が、1.5〜3.0mmの範囲内になるように形成するものとする。
この方法によれば、表面を粗面化するために、機械加工など、時間と経費がかかるようなものを使うことなく、簡単で容易に絶縁スペーサの絶縁部表面を所望の表面形状に粗面化できる。
【0059】
次に、粗面化の他の方法について説明する。
一般的に、絶縁スペーサは、中心導体や接地となる金属を埋め込んだ金型(図示せず)を使って、絶縁部を構成する絶縁材料を真空注型して成型する場合が多い。そこで、絶縁スペーサを成型する金型の内面を粗面化しておくことによって、注型作業と同時に絶縁部の表面を粗面化するものである。
金型内面の、絶縁部表面を成型する部位を、予め上記と同様の十点平均粗さ及び凸部の間隔に加工しておくことで、成型された絶縁スペーサの絶縁部表面に所望の表面形状(具体的には上記と同じ)を形成するものである。
金型内面を粗面化する方法としては、ブラスト処理,ローレット加工,サンディングマシーンを利用する等が考えられるが、特にブラスト処理が望ましい。
使用する絶縁材料は、例えば、従来から使用されている、エポキシ,エポキシとアルミナ,エポキシとシリカ,エポキシとフッ化アルミナのいずれかとする。
【0060】
このような方法によれば、上記のような絶縁材料は、粘度が高く、また充填されるアルミナ、シリカ、フッ化アルミナの粒径が、形成する凹凸の高さよりも十分小さいために、凹凸に入り込むことが可能であり、そのため金型に施した通りに凹凸を形成することが可能である。
また、ブラスト処理は、ほぼ一様な凹凸を形成することが容易であるために、他の粗面化方法と比較して所望の凹凸を容易に、短時間で形成することが可能である。また、成型と同時に粗面化できるので、絶縁スペーサ毎に絶縁部表面をあらためて粗面化する工程が必要ないため、作業が少なくなり、絶縁耐力を向上させた絶縁スペーサの製作が格段に容易になる。
【0061】
また、注型作業に先立ち、金型の内面を粗面化した表面に、注型樹脂と接着し難いフッ素樹脂などを離型剤として塗布しておくのがよい。
離型剤を塗布しない場合は、金型内面の粗面化した面において、注型時に硬化後の絶縁材料が金型表面から剥がれ難くなるアンカー効果が発生しやすくなり、金型から取り外した際に所望の凹凸が絶縁材料表面に形成されない場合が起こりうるが、粗面化した金型表面に離型剤を塗布しておくことで、金型と絶縁材料の間に離型剤の層が形成され、金型に固着することを防止でき、取り外しが容易になる。
【0062】
以上のように、実施の形態5のガス絶縁開閉装置の製造方法によれば、絶縁ガスが充填された接地タンク内に高電圧導体が配置され、高電圧導体が絶縁スペーサにより支持されて接地タンクに固定されたガス絶縁開閉装置の製造方法において、ブラスト処理により、絶縁スペーサの絶縁部の絶縁ガスと接する表面を、JISB0601−1994で規定される十点平均粗さRzが30μm〜200μmとなるように粗面化するとともに、十点平均粗さを超える凸部の間隔が1.5〜3.0mmの範囲内となるように形成したので、絶縁スペーサの絶縁部を粗面化したガス絶縁開閉装置を容易に得ることができる。
【0063】
また、内面を粗面化した金型を使用して、絶縁スペーサの絶縁部の絶縁ガスと接する表面を、JISB0601−1994で規定される十点平均粗さRzが30μm〜200μmとなるように粗面化すると共に、十点平均粗さを超える凸部の間隔が1.5〜3.0mmの範囲内となるように成型したので、従来の作業工程を変更することなく、絶縁構造部材の表面を容易に粗面化することができる。
【0064】
また、絶縁スペーサの絶縁部を構成する材料を金型に注入する前に、金型の粗面化した表面に離形剤を塗布しておくようにしたので、粗面化した金型の表面に絶縁材料の樹脂が入り込んで剥がれにくくなる“アンカー効果”を防止することができ、成型後に金型から絶縁スペーサを取り出しやすくなるため、作業を容易にして粗面精度を保った絶縁スペーサを得ることができる。
【0065】
実施の形態6.
次に、この発明の実施の形態6によるガス絶縁開閉装置について説明する。ガス絶縁開閉装置の高電圧導体を支持する絶縁スペーサの基本的な形状は、実施の形態1の図1、図6及び図7と同等なので、図示及び構成の説明は省略し、相違点を中心に説明する。相違点は、絶縁スペーサの絶縁部の絶縁ガスと接する表面に、厚さが50〜1000μmの絶縁被覆層をつくり、その絶縁被覆層の表面をJISB0601−1994で規定される十点平均粗さRzが30μm〜200μmとなるように粗面化するとともに、十点平均粗さを超える凸部の間隔が、1.5〜3.0mmの範囲内になるように形成したものである。
【0066】
図13は、実施の形態6のガス絶縁開閉装置の絶縁スペーサ部の正面図であり、実施の形態1の図2に対応する図である。
実施の形態1では、図2のように、絶縁スペーサ2を構成する絶縁部3の、絶縁ガスと接する表面、すなわち絶縁部表面を粗面化したが、これに対し、本実施の形態では絶縁部表面に、別途、正極性に帯電しやすい絶縁物、例えば、ポリアミド系樹脂(ナイロン6,同46,同66、同6.10、同11,同12)、PMMA(Polymethyl Methacrylate:アクリル樹脂)、ガラス、セロハンのいずれかを被着させた絶縁被覆層18を形成し、その絶縁被覆表面18aをJIS規格(JISB0601−1994)の十点平均粗さで表した場合、十点平均粗さRzが30μm〜200μmとなるように粗面化したものである。
【0067】
このような構成では実施の形態3で説明した原理同様に、正極性の電荷により作り出された正極性の電位にて、発生電界が緩和され、金属異物の先端からの放電が発生しにくくなり、結果として絶縁スペーサの耐電圧が向上する。実施の形態3では絶縁スペーサの絶縁部に施した凹凸を埋めることなく正極性に帯電しやすい絶縁物を塗布する必要があるが、本実施の形態では正極性に帯電しやすい絶縁被覆層18に対して凹凸を形成するために、容易に凹凸を維持することが可能である。
【0068】
図14は、その効果の一例を示したものである。従来のように絶縁部表面3aを粗面化していない絶縁スペーサと、絶縁スペーサの絶縁部表面を図2に示したように粗面化したものと、粗面化した絶縁部表面にポリアミド系樹脂であるナイロン12を被着させて絶縁被膜層を形成したものと、従来のように絶縁部表面3aを粗面化していない絶縁スペーサに絶縁被覆層18を被着させて、その絶縁被覆表面18aを粗面化したものを試料とし、それぞれの表面に金属異物を付着させ、雷電圧を印加した場合の耐電圧性能を比較したものである。縦軸は、BDV(Breakdown Voltage:絶縁破壊電圧)の比率とし、最高値を比較している。図14から、本実施の形態のように正極性に帯電しやすい絶縁物質の絶縁被覆層18の表面を粗面化したことによる耐電圧性能の向上が明らかである。
【0069】
絶縁被覆表面18aを粗面化する範囲は、絶縁部表面3aに絶縁被覆層18を被着した全面とする他に、実施の形態2と同様に、絶縁被膜層18が絶縁ガスと接する表面のうち、高電圧導体の支持側から接地タンクへ固定する固定側にかけて、支持側から略50%の範囲までとしても良い。こうすることで、実施の形態2の場合と同様に、効率よく絶縁スペーサ表面の絶縁耐力を向上させることができる。
【0070】
また、絶縁被覆層18を形成するに当たっては、上述した絶縁被覆層18に使用される絶縁材料のみで絶縁被覆層18を形成する場合の他、当該絶縁材料と絶縁部3の材料との混合絶縁材料を用いれば、絶縁スペーサの絶縁部表面に、容易に強固に密着した絶縁被覆層を形成することができる。
【0071】
絶縁被覆層18の表面をJISB0601−1994で規定される十点平均粗さRzが30μm〜200μmとなるように粗面化する方法は、実施の形態5で説明した、絶縁スペーサの絶縁部表面を粗面化する方法を、同様に適用することができる。すなわち、ブラスト処理による方法、または、金型による方法を適用すればよい。金型の場合は、材料注入前に金型の粗面化した表面に離型剤を塗布しておくのが有効である。
【0072】
以上のように、実施の形態6のガス絶縁開閉装置によれば、絶縁ガスが充填された接地タンク内に高電圧導体が配置され、高電圧導体が絶縁スペーサにより支持されて接地タンクに固定されたガス絶縁開閉装置において、絶縁スペーサの絶縁部の絶縁ガスと接する表面に厚さ50〜1000μmの正極性に帯電しやすい材料からなる絶縁被覆層を付加して、絶縁被覆層の表面が、JISB0601−1994で規定される十点平均粗さRzで30μm〜200μmとなるように粗面化したので、実施の形態3と同様な効果に加えて、実施の形態3の場合のように、絶縁スペーサの絶縁部表面の粗面化の上に絶縁被膜を塗布するものと比較して、絶縁被覆層に凹凸形状を確実に形成し維持することができる。
【0073】
また、十点平均粗さRzを超える凸部の間隔が、1.5〜3.0mmの範囲内となるように形成されているので、絶縁スペーサの表面に付着した金属異物が、粗面化で形成された山の凸部で効果的に支持されるため、雷電圧等が課電された場合に最も電界が高くなる金属異物先端部分近傍にトリプルジャンクションが形成される確率が更に減少し、電界上昇を抑制できる。
【0074】
また、絶縁被覆層の材料として、ポリアミド系樹脂(ナイロン6,同46,同66、同6.10、同11,同12)、PMMA、ガラス、セロハンのいずれかを使用したので、絶縁スペーサの絶縁部の絶縁ガスと接する表面に、正極性に帯電しやすい絶縁被覆層を容易に形成することができる。
【0075】
また、絶縁スペーサの絶縁被覆層が絶縁ガスと接する表面のうち、高電圧導体の支持側から接地タンクへ固定する固定側にかけて、支持側から略50%の範囲までを粗面化したので、絶縁スペーサの表面の最も電界が高くなるような位置に金属異物が付着しても絶縁性能を低下させることなく、更に絶縁被覆層の全体を粗面化する場合に比べて、加工の作業時間が短縮されて製作の効率化が図れる。
【0076】
また、絶縁被覆層は、絶縁被覆層に使用される絶縁材料と絶縁部の材料との混合絶縁材料により形成したので、絶縁スペーサの絶縁部表面に、容易に強固に密着した絶縁被覆層を形成することができる。
【0077】
また、実施の形態6のガス絶縁開閉装置の製造方法によれば、ブラスト処理により、絶縁スペーサの絶縁被覆層の絶縁ガスと接する表面を、JISB0601−1994で規定される十点平均粗さRzが30μm〜200μmとなるように粗面化すると共に、十点平均粗さを超える凸部の間隔が1.5〜3.0mmの範囲内となるように形成したので、絶縁スペーサの絶縁部表面に設けた絶縁被膜層を、容易に粗面化でき、粗面化によりトリプルジャンクションが形成される確立を低減できるため、信頼性の高いガス絶縁開閉装置を提供することができる。
【0078】
また、ブラスト処理に替えて、内面を粗面化した金型を使用して粗面化を行ったので、従来の作業工程を大きく変更することなく、絶縁被覆層の表面を容易に粗面化することができる。
【0079】
更に、絶縁スペーサの絶縁被覆層を構成する材料を金型に注入する前に、金型の粗面化した表面に離型剤を塗布したので、成型後に金型から絶縁スペーサを取り出しやすくなるため、作業を容易にして粗面精度を保った絶縁スペーサを得ることができる。
【符号の説明】
【0080】
1 接地タンク 1a フランジ
2 絶縁スペーサ(円錐形) 3 絶縁部
3a,3b 絶縁部表面 3c 粗面化領域
4 中心導体 5 高電圧導体
6 電界緩和シールド 7 金属異物
7a 金属異物先端部 8 トリプルジャンクション
9 絶縁スペーサ(ポスト形) 10 絶縁部
10a 絶縁部表面 11 導体支持部
12 固定部 13 絶縁スペーサ(円板形)
14 絶縁部 14a 絶縁部表面
15 中心導体 16,17, 絶縁被膜層
18 絶縁被覆層 18a 絶縁被覆表面。
【技術分野】
【0001】
この発明は、絶縁ガスが充填された円筒状の接地タンク内に高電圧導体が絶縁支持されて配置されたガス絶縁開閉装置及びその製造方法に関し、特に、高電圧導体を支える絶縁スペーサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガス絶縁開閉装置は、絶縁媒体として非常に絶縁性能に優れたSF6ガスが使用されていたが、温暖化係数が二酸化炭素の約24000倍と高いため、削減する方向に進んでいる。代替ガスとしては、窒素や二酸化炭素,ドライエアなどが使用されるが、絶縁性能がSF6ガスよりも劣る。
ガス絶縁開閉装置内に数mm程度の金属異物が存在した場合、絶縁構造部材の表面に付着する可能性があり、金属異物が付着すれば絶縁性能が大きく低下することが知られている。絶縁ガスとして上記代替ガスを使用する場合は、その低下の度合いがより大きくなる。金属異物対策として、金属異物を捕獲する装置を接地タンクの底部に設置する等の種々の方策が提案されているが、100%の捕獲性能を得ることは困難なため、絶縁構造部材に金属異物が付着した状態で落雷などが発生した場合でも、それに耐えうるような設計にしておく必要がある。
【0003】
このような背景をふまえ、絶縁構造部材(絶縁スペーサ)の絶縁性能を向上させたガス絶縁機器の従来の技術として、例えば、絶縁ガスを封入した金属容器内に通電用の高電圧導体を配置し、この高電圧導体を金属容器内で絶縁スペーサにより絶縁支持したものにおいて、絶縁スペーサの表面にセラミックスを溶射して絶縁被覆を形成することで、表面への金属異物の付着を発生しにくくし、また、たとえ付着して放電が発生した場合でも表面の劣化を抑制できるようにした技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−273480号公報(第2頁、図1−3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献1に示されたガス絶縁機器の絶縁スペーサは、絶縁材料部分を無機物絶縁物にて覆うため、基材である絶縁材料部分と無機物絶縁物との間に、絶縁の弱点となる界面が発生してしまう可能性があった。更に、無機物絶縁物は通常使用するエポキシ樹脂などの有機物絶縁物などに比べると誘電率が高いために金属異物が付着した場合、その先端部近傍に形成されるトリプルジャンクションで発生する電界が高くなり、放電が発生しやすくなる虞があった。
【0006】
この発明は、上記のような問題点を解消するためになされたもので、絶縁スペーサの絶縁部表面に金属異物が付着した場合でも放電の発生を抑制でき、信頼性の高いガス絶縁開閉装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るガス絶縁開閉装置は、絶縁ガスが充填された接地タンク内に高電圧導体が配置され、高電圧導体が絶縁スペーサにより支持されて接地タンクに固定されたガス絶縁開閉装置において、絶縁スペーサの絶縁部の絶縁ガスと接する表面が、JISB0601−1994で規定される十点平均粗さRzで30μm〜200μmとなるように粗面化されているものである。
【0008】
また、この発明に係るガス絶縁開閉装置の製造方法は、ブラスト処理により、絶縁スペーサの絶縁部の絶縁ガスと接する表面を、JISB0601−1994で規定される十点平均粗さRzが30μm〜200μmとなるように粗面化するとともに、十点平均粗さを超える凸部の間隔が、1.5〜3.0mmの範囲内になるように形成したものである。
また、上記のブラスト処理に変えて、内面を粗面化した金型を使用して成型したものである。
【0009】
また、この発明に係るガス絶縁開閉装置は、絶縁ガスが充填された接地タンク内に高電圧導体が配置され、高電圧導体が絶縁スペーサにより支持されて接地タンクに固定されたガス絶縁開閉装置において、絶縁スペーサの絶縁部の絶縁ガスと接する表面に厚さ50〜1000μmの正極性に帯電しやすい材料からなる絶縁被覆層を付加して、絶縁被覆層の表面が、JISB0601−1994で規定される十点平均粗さRzで30μm〜200μmとなるように粗面化されているものである。
【0010】
また、また、この発明に係るガス絶縁開閉装置の製造方法は、ブラスト処理により、絶縁スペーサの絶縁被覆層の絶縁ガスと接する表面を、JISB0601−1994で規定される十点平均粗さRzが30μm〜200μmとなるように粗面化するとともに、十点平均粗さを超える凸部の間隔が1.5〜3.0mmの範囲内となるように形成したものである。
また、上記のブラスト処理に変えて、内面を粗面化した金型を使用して成型したものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明のガス絶縁開閉装置によれば、絶縁スペーサの絶縁部の絶縁ガスと接する表面が、JISB0601−1994で規定される十点平均粗さRzで30μm〜200μmとなるように粗面化されているので、絶縁スペーサの絶縁部の表面に金属異物が付着した場合でも、雷や開閉装置が働いた時に発生する開閉サージなどの電圧が課電された場合に最も電界が高くなる金属異物の先端部を絶縁部表面から離すことができるため、電界が周囲に比べて高くなってしまうトリプルジャンクションが形成される確立が低減されて、放電の発生を抑制でき、ガス絶縁開閉装置の信頼性を向上させることができる。
【0012】
また、この発明のガス絶縁開閉装置の製造方法によれば、ブラスト処理により、または、金型を使用して、絶縁スペーサの絶縁部の絶縁ガスと接する表面を上記のように粗面化したので、絶縁部の粗面化を容易に行うことが可能であり、粗面化によりトリプルジャンクションが形成される確立を低減できるため、信頼性の高いガス絶縁開閉装置を容易に提供することができる。
【0013】
また、この発明のガス絶縁開閉装置によれば、絶縁スペーサの絶縁部の絶縁ガスと接する表面に厚さ50〜1000μmの正極性に帯電しやすい材料からなる絶縁被覆層を付加して、絶縁被覆層の表面が、JISB0601−1994で規定される十点平均粗さRzで30μm〜200μmとなるように粗面化されているので、正極性の電圧により発生する部分放電を抑制することができるため、粗面化による効果に加えて、金属異物による耐電圧性能の低下を効果的に抑制して、信頼性の高い絶縁スペーサを得ることができる。
【0014】
また、この発明のガス絶縁開閉装置の製造方法によれば、ブラスト処理により、または、金型を使用して、絶縁スペーサの絶縁被覆層の絶縁ガスと接する表面を、JISB0601−1994で規定される十点平均粗さRzが30μm〜200μmとなるように粗面化するとともに、十点平均粗さを超える凸部の間隔が1.5〜3.0mmの範囲内となるように形成したので、絶縁被覆層の表面の粗面化を容易に行うことが可能であり、放電の発生を抑制した、信頼性の高いガス絶縁開閉装置を容易に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の実施の形態1によるガス絶縁開閉装置の絶縁スペーサ部分を示す断面図である。
【図2】図1の絶縁スペーサの絶縁部の表面形状を説明する拡大断面図である。
【図3】従来の絶縁スペーサの絶縁部表面に付着した金属異物の様子を説明する拡大断面図である。
【図4】図1の絶縁スペーサの絶縁部表面に付着した金属異物の様子を説明する拡大断面図である。
【図5】ガス絶縁開閉装置を構成する絶縁スペーサの絶縁部の表面粗さと絶縁破壊電界の関係を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態1によるガス絶縁開閉装置の絶縁スペーサの他の例を示す断面図である。
【図7】この発明の実施の形態1によるガス絶縁開閉装置の絶縁スペーサの別の例を示す断面図である。
【図8】この発明の実施の形態2によるガス絶縁開閉装置の絶縁スペーサ部分を示す正面図である。
【図9】この発明の実施の形態2によるガス絶縁開閉装置の絶縁スペーサの絶縁部表面の電界分布図である。
【図10】この発明の実施の形態3によるガス絶縁開閉装置の絶縁スペーサ部分を示す正面図である。
【図11】この発明の実施の形態3によるガス絶縁開閉装置の絶縁スペーサの、耐電圧性能向上の効果を説明する図である。
【図12】この発明の実施の形態4によるガス絶縁開閉装置の絶縁スペーサ部分を示す正面図である。
【図13】この発明の実施の形態6によるガス絶縁開閉装置の絶縁スペーサの絶縁部の表面形状を説明する拡大断面図である。
【図14】この発明の実施の形態6によるガス絶縁開閉装置の絶縁スペーサの、耐電圧性能向上の効果を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1によるガス絶縁開閉装置の絶縁スペーサの部分を示す図であり、(a)は側面断面図、(b)はタンクの軸方向に見た絶縁スペーサの部分の正面図である。また、図2は、図1の絶縁スペーサの表面の拡大断面図であり、金属異物が付着した状態を示している。
【0017】
先ず、図1により、ガス絶縁開閉装置の概要を説明する。
円筒状の金属容器により構成された接地タンク1は、所定の長さのものが、それぞれの端部のフランジ1a部において図示しないボルト等によって接続されている。フランジ1aの接続面に、絶縁構造部材である円錐形の絶縁スペーサ2が挟まれて、フランジ1aと共にボルト締めされて固定されている。絶縁スペーサ2は、絶縁材料からなる絶縁部3と、中心部に設けられた中心導体4を有しており、この中心導体4の両側に高電圧導体5が接続されて支持されている。
絶縁スペーサ2を構成する絶縁部3の材料としては、例えば、エポキシ,エポキシとアルミナ,エポキシとシリカ,エポキシとフッ化アルミナのいずれかが用いられる。
【0018】
フランジ1aと絶縁スペーサ2の接続部は、気密を保って接続されており、接地タンク1の内部には絶縁ガスが充填されている。
高電圧導体5と絶縁スペーサ2の中心導体4との接続部には、電界緩和シールド6が設けられている。
高電圧導体5には、図示しない系統遮断器、断路器、接地器などが電気的に接続されており、これらの機器を含んだ装置で、ガス絶縁開閉装置が構成されている。
【0019】
本願発明は、絶縁スペーサ2の絶縁部3の表面の形状に特徴を有するので、次に、この表面形状について説明する。
図1において、絶縁部3の絶縁ガスと接する表面、すなわち、図1(a)中に太線で示している部分(以下、単に絶縁部表面3aと称す)には、微小な凹凸が形成されている。
図2は、図1の絶縁スペーサ2の絶縁部表面3aを拡大した断面図である。図に示すように、絶縁部表面3aには、JIS規格(JISB0601−1994)の十点平均粗さで表した場合、十点平均粗さRzが30μm〜200μmとなるような凹凸に粗面化されている。
また、このとき、図2中に示すA部のような、十点平均粗さRzを超える凸部の間隔を、1.5〜3.0mmの範囲内となるように形成するのが望ましい。
凹凸の形成方法については後述する。
【0020】
図2では、絶縁部表面3aに、長さが3mm程度以下で径方向の太さが0.2mm程度以下の細長い金属異物7が付着した場合を模式的に示している。
実施の形態1の構成によれば、例え金属異物7が絶縁部表面3aに付着した状態で、雷や開閉装置が働いた時に発生する開閉サージなどの電圧が課電されても、絶縁破壊事故が起こりにくく、信頼性の高いガス絶縁開閉装置を提供できる。
以下にその作用効果について説明する。
【0021】
先ず、ガス絶縁開閉装置において、その内部に存在する金属異物の影響について説明する。上述のように、ガス絶縁開閉装置は、系統遮断器、断路器、接地器などを含んだ装置であり、絶縁スペーサのような絶縁構造部材に支えられた高電圧導体が、円筒状の接地タンク内に納められた同軸円筒状の構造である。高電圧導体と接地タンクの間は、高消弧性能と高絶縁性能を有する絶縁ガスが充填されている。
【0022】
ガス絶縁開閉装置を構成するほとんどのパーツは、工場内のクリーンルームで組み立てられて現地へ輸送されるが、輸送限界等により一部は現地で組み立てられる。このため、現地組立時にガス絶縁開閉装置の中に金属異物が紛れ込む可能性がある。
この金属異物としては、例えば、接地タンク同士を接続する際にボルトの通し穴に残っていたバリなどの金属片が考えられる。またそれとは別に、導体等の金属同士が開閉部分などで摺動する際に発生する場合もある。これら金属異物の大部分は検査工程で取り除かれるが、長さが3mm程度以下で太さが0.2mm程度以下の金属異物は発見が困難であり、検査で見落とされる場合がある。
【0023】
金属異物は、ガス絶縁開閉装置の運転が開始されるまでは、接地タンク内部の底面に横たわっている。運転開始前の試験などで定格電圧よりも高い電圧を印加した場合に動き出し、接地タンクの中心に絶縁スペーサで支持された高電圧導体と接地タンクとの間で往復運動を繰り返し、その勢いで高電圧導体の軸方向に動きまわる。その時、高電圧導体を支えている絶縁スペーサの絶縁部表面に付着する可能性がある。付着すると、金属異物と絶縁材料と絶縁ガスの3つによりトリプルジャンクションが形成される。トリプルジャンクションは誘電率の関係により周囲と比較して高い電界が形成される部位である。
【0024】
金属異物が付着したままで、雷や開閉装置の動作時に発生する開閉サージが課電されると、特に電界が高くなる金属異物の先端部近傍のトリプルジャンクションの電界が放電電界を容易に越えてしまい放電が発生する。この時、絶縁スペーサの絶縁部表面の沿面方向の電界も高くなっているため、放電は絶縁部表面を進展して接地側と導体側を橋絡し、絶縁破壊事故が発生する。
したがって、金属異物の先端部近傍にトリプルジャンクションを形成させないようにすることが重要であり、これにより絶縁破壊の可能性を低下させることができる。
【0025】
一般的に、絶縁スペーサ等の絶縁構造部材の絶縁部表面は滑らか(数μmオーダー)に仕上げられている。これは金属部材の凹凸面における電界上昇と同じ考え方によるものであり、少なからず絶縁材料の凹凸においても電界は集中してしまうので、同様な措置がとられているものである。この措置は、金属異物が存在しない理想的な場合を想定したものであるが、上述のように、実使用環境では金属異物が存在するので、上記のような比較的滑らかな仕上げでは、金属異物の先端部近傍でトリプルジャンクションが形成される確立は高く、絶縁破壊電圧が低下することになる。このことを図により説明する。
図3は、比較説明のために、従来のように比較的滑らかに仕上げられた絶縁スペーサの絶縁部表面3bに金属異物7が付着した模式図である。図から分かるように、絶縁部表面3bの表面粗さRzが30μmに満たないような滑らかな場合では、図中の破線で囲って示すように、金属異物先端部7a近傍でトリプルジャンクション8が形成される確率が非常に高い。
【0026】
本願発明では、絶縁部表面を粗面化して凹凸を形成し、金属異物の先端部近傍にトリプルジャンクションが形成される確率を低下させたものである。
そこで次に、本願発明の絶縁スペーサの作用について説明する。
図4は、実施の形態1による絶縁スペーサ2の絶縁部表面3aに金属異物7が付着した様子を示す部分断面図であり、図2と同等部分であるが、図3に対応させて拡大表示したものである。
図中に破線で囲って示すように、トリプルジャンクション8は、絶縁部表面3aに付着した金属異物7の最も電界が高くなる金属異物先端部7aの近傍に形成される確率が低下し(すなわち、金属異物先端部7a近傍から離れた箇所に形成される確立が増し)、電界の上昇を抑制できるため、結果として放電の発生を抑制でき、絶縁スペーサ2の信頼性を高めることができる。
【0027】
上記の効果を実験により検証し確認した。
図5は、実験結果によって得た、絶縁部表面に上述のような微小な金属異物が付着した場合の、絶縁部表面粗さと絶縁破壊電界の関係を示す図である。縦軸に絶縁破壊電界を示し、横軸に絶縁部表面粗さを示している。横軸の絶縁部表面粗さは、前記JIS規格の十点平均粗さRzで表したものである。
図から分かるように、絶縁部表面粗さが十点平均粗さRzで30μm以上になれば絶縁破壊電界が上昇しており、粗面化の効果が大きくなっている。
表面粗さの程度をあまり大きくすると、加工が難しくなり、また絶縁部沿面の耐電圧性
能が低下してくることから、十点平均粗さRzの上限は200μm程度とするのが望ましい。
【0028】
また、図2に示すように、十点平均粗さRzを超える凸部の間隔が、略1.5〜3.0mmの範囲内となるように形成することで、絶縁部表面3aに付着した金属異物7が、図中にAで示すように、粗面化で形成された山の突出する部分で効果的に支持されるため、金属異物7の先端部近傍でのトリプルジャンクションの形成確率は大幅に低下する。
上記の十点平均粗さRzの範囲を規定したことと相まって、雷電圧などが課電された場合に最も電界が高くなる先端部分付近にトリプルジャンクションが形成される確率が大幅に低下することで、電界上昇を効果的に抑制できる。
また、例え一部の金属異物7の先端部近傍でトリプルジャンクションが形成されたとしても、絶縁部表面3aにおけるトリプルジャンクション8を形成する領域、すなわち電界が高い領域が小さいため、橋絡するような放電には至らない。
【0029】
以上までの説明では、ガス絶縁開閉装置の高電圧導体5を支える絶縁構造部材は、図1のような円錐形の絶縁スペーサ2であった。絶縁スペーサには様々な形状のものがあるので、次に、絶縁スペーサの他の例について説明する。
図6はポスト形の絶縁スペーサ9を示す図であり、(a)は側面図、(b)は接地タンク1の軸線方向に見た正面図を示している。絶縁スペーサ9は、絶縁部材からなる絶縁部10と、高電圧導体5の支持と電界緩和シールドを兼ねた導体支持部11と、固定部12とを有し、固定部12が接地タンク1の側壁に固定されて高電圧導体5が支持されている。この絶縁部10の、絶縁ガスと接する絶縁部表面10a(図中太線部)を、図2の場合と同様に粗面化するものである。
【0030】
図7は更に他の例であり、3相一括の円板形の絶縁スペーサ13を示している。(a)は側面図、(b)は正面図である。図1と同等部分は同一符号で示し説明は省略する。絶縁スペーサ13は、絶縁部材からなる絶縁部14と、高電圧導体5を支持する中心導体15とを有しており、中心導体15の両側にそれぞれ高電圧導体5が接続されて支持され、接続部は電界緩和シールド6で覆われている。
絶縁部14の絶縁ガスと接する絶縁部表面14a(図中太線部)を、図2と同様に粗面化することで、上記と同様な作用効果を得ることができる。
【0031】
なお、絶縁スペーサ9,13の絶縁材料は、特別な材料を使用する必要はなく、絶縁スペーサ2で説明したものと同様に、エポキシ,エポキシとアルミナ,・・・等の従来から用いられている材料を使用すればよい。すなわち、本実施の形態の絶縁スペーサの絶縁部の材料は、特別な材料とする必要はなく、従来から多く用いられた絶縁材料を使用することで、安価に構成できる。
また、背景技術の項で説明した特許文献1のように絶縁材料表面にセラミックス等の別の層を形成するものと比較して、絶縁材料表面に別の層を設けてないため、最も絶縁耐力が弱くなる部位である界面、すなわち、絶縁材料表面とその表面に形成する層との境界を形成しなくて済み、絶縁耐力の向上効果が大きくなる。
更に、セラミックス等の部材では、金属異物が付着した場合のトリプルジャンクションの電界は、本願のような絶縁材料と比較して、誘電率が1.5〜2.0倍高いので、放電発生の可能性も1.5〜2.0倍高くなってしまうが、本願発明の構成によればその心配がない。
【0032】
以上のように、実施の形態1のガス絶縁開閉装置によれば、絶縁ガスが充填された接地タンク内に高電圧導体が配置され、高電圧導体が絶縁スペーサにより支持されて接地タンクに固定されたガス絶縁開閉装置において、絶縁スペーサの絶縁部の絶縁ガスと接する表面が、JISB0601−1994で規定される十点平均粗さRzで30μm〜200μmとなるように粗面化されているので、雷や開閉装置が働いた時に発生する開閉サージなどが課電された場合に絶縁部表面に付着した金属異物の最も電界が高くなる金属異物先端部近傍にトリプルジャンクションが形成される確率が減少し、電界上昇を抑制できるため、結果として放電の発生を抑制でき、信頼性の高いガス絶縁開閉器を得ることができる。
【0033】
また、上記の十点平均粗さRzを超える凸部の間隔が、1.5〜3.0mmの範囲内となるように形成されているので、絶縁スペーサの絶縁部表面に付着した金属異物が、粗面化で形成された山の凸部で効果的に支持されるため、雷電圧等が課電された場合に最も電界が高くなる金属異物先端部分近傍にトリプルジャンクションが形成される確率が更に減少し、電界上昇を抑制できる。
【0034】
また、絶縁スペーサの絶縁部の材料の組成は、エポキシ,エポキシとアルミナ,エポキシとシリカ,エポキシとフッ化アルミナのいずれかとしたので、一般的に使用される絶縁材料を用いて、絶縁部表面を粗面化した絶縁スペーサを安価に提供できる。
【0035】
実施の形態2.
次に、この発明の実施の形態2によるガス絶縁開閉装置について説明する。ガス絶縁開閉装置の高電圧導体を支持する絶縁スペーサの基本的な形状は、実施の形態1の図1、図6及び図7と同等なので、図示及び構成の説明は省略し、相違点を中心に説明する。相違点は、絶縁スペーサの絶縁部表面を粗面化する範囲である。
【0036】
図8は、実施の形態2のガス絶縁開閉装置の絶縁スペーサ部の正面図であり、実施の形態1の図1(b)に対応する図である。
実施の形態1では、図1のように、絶縁スペーサ2を構成する絶縁部3の、絶縁ガスと接する表面、すなわち絶縁部表面3aの全体を粗面化したが、これに対し、本実施の形態では、図8に示すように、絶縁スペーサを構成する絶縁部の、絶縁ガスと接する表面である絶縁部表面3aのうち、高電圧導体5の支持側から接地タンク1への固定側にかけて、支持側から略50%の範囲までを粗面化領域3c(両面とも)とし、実施の形態1で説明した図2と同等な形状に、粗面化したものである。
【0037】
このような構成の作用について説明する。
一般的に、絶縁スペーサにおいて、高電圧導体に取り付けられる電界緩和シールドに近い絶縁スペーサの表面が特に電界が高くなり、金属異物が付着した場合は沿面放電が特に発生しやすくなる。
図9は、図1で示したような円錐形の絶縁スペーサの場合の、絶縁部表面の沿面方向の電界分布示す図である。図において、破線で示すのは凹側の沿面電界分布であり、実線は凸側の沿面電界分布である。図9から、絶縁スペーサの両面の電界分布は、高電圧導体側からの距離が、ともに50%以下の部位に最大電界を持っていることが分かる。
本実施の形態では、絶縁スペーサ2の絶縁部表面3aの上記領域3cを粗面化しているため、効率よく絶縁スペーサ表面の絶縁耐力を向上させることができる。
【0038】
なお、絶縁スペーサの形状が、図6のようなポスト形の絶縁スペーサ9、及び、図7のような円板形の絶縁スペーサ13の場合も、同様に、高電圧導体5の支持側から接地タンク1の固定側にかけて、高電圧導体5に近い側から略50%の範囲までを粗面化すればよい。
【0039】
以上のように、実施の形態2のガス絶縁開閉装置によれば、絶縁スペーサの絶縁部が絶縁ガスと接する表面のうち、高電圧導体の支持側から接地タンクへ固定する固定側にかけて、支持側から略50%の範囲までが粗面化されているので、絶縁スペーサの表面の最も電界が高くなるような位置に金属異物が付着しても絶縁性能を低下させることなく、更に絶縁スペーサ表面の全体を粗面化する場合に比べて、加工の作業時間が短縮されて製作の効率化が図れる。
【0040】
実施の形態3.
次に、この発明の実施の形態3によるガス絶縁開閉装置について説明する。ガス絶縁開閉装置の高電圧導体を支持する絶縁スペーサの基本的な形状は、実施の形態1の図1、図6及び図7と同等なので、図示及び構成の説明は省略し、相違点を中心に説明する。相違点は、絶縁部表面の粗面化領域に正極性に帯電しやすい絶縁物質を被着する点である。
図10は、実施の形態3のガス絶縁開閉装置の絶縁スペーサ部の正面図であり、実施の形態1の図1(b)に対応する図である。図1と同等部分は同一符号を付して説明は省略する。
【0041】
実施の形態1では、図1で説明したように、絶縁スペーサ2を構成する絶縁部3の、絶縁ガスと接する表面、すなわち絶縁部表面3a(両面とも)を粗面化したが、これに対し、本実施の形態では、絶縁部表面3a全体を粗面化するまでは図1と同様であり、更に、粗面化領域の上に、正極性に帯電しやすい絶縁物質、例えば、ポリアミド系樹脂(ナイロン6,同46,同66,同6.10,同11,同12)、PMMA(Polymethyl Methacrylate:アクリル樹脂)、ガラス、セロハン等のいずれかを被着させた絶縁被膜層16を形成したものである。
絶縁被膜層16の表面は、JIS規格(JISB0601−1994)の十点平均粗さで表した場合、十点平均粗さRzが30μm〜200μmとなるように形成する。
本実施の形態の場合は、絶縁部表面3a全体が粗面化領域であり、且つ、絶縁被膜層16を形成する領域となっている。
【0042】
このような構成の作用について説明する。
一般的にSF6ガスは、不平等電界下では、負極性の電圧よりも正極性の電圧が課電された場合において、その耐電圧性能は低く、SF6ガスを使用するガス絶縁開閉装置においても同様である。環境保護のためにSF6ガスの削減が進められているが、他のガス、例えば窒素、二酸化炭素、酸素などは単体での耐電圧性能は低いため、SF6ガスと混合して使用することでその性能低下を抑制する方法が一般的に用いられる。
このような混合ガスを使用した状況で絶縁スペーサの絶縁部表面3aに、図2のような金属異物7が付着した場合は、金属異物7先端近傍は不平等電界となるため、やはり正極性の電圧が発生する金属異物7の先端から部分放電が進展して、高電圧導体5もしくは接地タンク1と接続され、その後、高電圧導体5と接地タンク1が部分放電により接続され、破壊に至る。
【0043】
したがって、正極性の電圧により発生する部分放電を抑制することで、金属異物による耐電圧性能の低下を抑制できる。この事により、金属異物先端に位置する絶縁スペーサの絶縁部表面が正極性に帯電していれば、金属異物先端の正極性の電圧と絶縁スペーサの絶縁部表面に存在する正極性の電荷が作り出す、同じく正極性の電圧によりその部位の電界は弱められ、従って絶縁スペーサの耐電圧性能が向上する。
よって、粗面化された絶縁スペーサ2の絶縁部表面3aに、上述のような正極性に帯電しやすい絶縁物質を被着させた絶縁被膜層16を形成することにより、更なる耐電圧性能向上を実現できる。
【0044】
絶縁被膜層16の表面は、JIS規格(JISB0601−1994)の十点平均粗さで表した場合、十点平均粗さRzが30μm〜200μmとなるように形成する。絶縁スペーサの絶縁部表面3aの表面粗さが、JIS規格(JISB0601−1994)の十点平均粗さRzで30μm〜200μmの凹凸に粗面化されているので、その表面にごく薄い絶縁被膜層を被着することで、絶縁部表面3aの凹凸形状をほとんど失うことなく、したがって、その耐電圧性能を失うことなく、正極性に帯電させて、更に耐電圧性能の向上を図ることが可能である。
【0045】
図11は、その効果の一例を示したものである。従来のように絶縁部表面3aを粗面化していない絶縁スペーサと、絶縁スペーサの絶縁部表面を図2に示したように粗面化したものと、粗面化した絶縁部表面にポリアミド系樹脂であるナイロン12を被着させて絶縁被膜層を形成したものとを試料とし、それぞれの表面に金属異物を付着させ、雷電圧を印加した場合の耐電圧性能を比較したものである。縦軸は、BDV(Breakdown Voltage:絶縁破壊電圧)の比率とし、最高値を比較している。図11から、本実施の形態のように正極性に帯電しやすい絶縁物質の絶縁被膜層を形成したことによる耐電圧性能の向上が明らかである。
【0046】
また、絶縁被膜層16を、粗面化した絶縁スペーサ2の絶縁部表面3aに被着する方法としては、正極性に帯電しやすい上述の絶縁物質を細かい粉体状にし、この粉体を、被着対象の絶縁スペーサ2の材料と同等のエポキシ樹脂を液状にしたものに混合し、塗布等の方法で被着させる方法が有効である。以下に、その理由を説明する。
【0047】
ポリアミド系樹脂、PMMAおよびセロハンは一般には溶融させて被着させる必要があり、その場合、被着される側も温度が高くなければ完全な被着が難しく、容易に剥離する可能性がある。高分子材料であるポリアミド系樹脂、PMMA、セロハンの熱変形温度はおよそ100度から200度であり、無機物であるガラスの溶融温度は1400度にもなる。図10に示すような絶縁スペーサ2は、直径が数十cmから1mを超えるものまであり、大きな絶縁スペーサ2の温度を、被着する絶縁物質の温度に上げることは容易ではない。
【0048】
一般的に、物質の帯電特性はその形状に左右されることは少なく、したがって正極性に帯電しやすい絶縁物質を粉体状にしても、その特性が変化することは少なく、粉体状の帯電物質を絶縁スペーサの材料であるエポキシ樹脂と混合してスプレーや刷毛などで塗布することで簡単に被着させることが可能となる。絶縁スペーサの材料と同等のエポキシ材料と混合することで、被膜の剥離が発生することなく良好に被着できる。
この場合、常温硬化するエポキシ樹脂を使うとよい。また、絶縁スペーサの材料となるエポキシ樹脂は、耐用年数などが既知であり、これと同等のエポキシ樹脂を使用することで開発も容易である。
【0049】
以上のように、実施の形態3によるガス絶縁開閉装置によれば、絶縁スペーサの絶縁部の粗面化された表面に、正極性に帯電しやすい絶縁物質を被着した絶縁被膜層が形成されているので、特に、絶縁ガスとしてSF6ガスを混合した混合ガスが使用される場合、正極性の電圧により発生する部分放電を抑制することができ、実施の形態1のような絶縁スペーサの絶縁部の粗面化による効果に加えて、金属異物による耐電圧性能の低下を抑制できるため、信頼性の高い絶縁スペーサを得ることができる。
また、耐電圧性能の向上により絶縁スペーサを小形化することが可能となるので、ガス絶縁開閉装置のタンク径の縮小が可能となり、低コスト化を図ることができる。
【0050】
また、絶縁被膜層は、粉体状にした絶縁物質がエポキシ樹脂と混合されて塗布されているので、粗面化した絶縁スペーサの表面に、容易に強固に密着した絶縁被膜層を形成することができる。
【0051】
実施の形態4.
次に、この発明の実施の形態4によるガス絶縁開閉装置について説明する。ガス絶縁開閉装置の高電圧導体を支持する絶縁スペーサの基本的な形状は、実施の形態1の図1、図6及び図7と同等なので、図示及び構成の説明は省略する。また、粗面化した絶縁スペーサの絶縁部表面に正極性に帯電しやすい絶縁物質を被着させるのは実施の形態3と同様である。実施の形態3との相違点は、上記絶縁物質を被着させる範囲なので、以下、相違点を中心に説明する。
【0052】
図12は、実施の形態4のガス絶縁開閉装置の絶縁スペーサ部の正面図であり、実施の形態3の図10に対応する図である。
実施の形態3では、図10のように、絶縁スペーサ2を構成する絶縁部3の、絶縁ガスと接する表面である絶縁部表面3a全体を粗面化すると共に、粗面化領域全体に、正極性に帯電しやすい絶縁物質を被着させた絶縁被膜層16を形成したが、これに対し、本実施の形態では、図12に示すように、絶縁スペーサ2を構成する絶縁部3の、絶縁ガスと接する絶縁部表面3a(=粗面化領域)のうち、高電圧導体5の支持側から接地タンク1への固定側にかけて、支持側から略40%の部位から略60%の部位の範囲(両面とも)を、正極性に帯電しやすい絶縁物質を被着して絶縁被膜層17を形成する領域としたものである。絶縁被膜層17を構成する材料や被着方法は、実施の形態3で説明したものと同等である。
【0053】
このような構成の作用について説明する。
実施の形態2で説明したように、高電圧導体に取り付けられる電界緩和シールドに近い絶縁スペーサの表面が特に電界が高くなる。絶縁スペーサは雷波形電圧を考慮して設計するが、雷は正、負両方の極性があり、どちらの極性も同等な確率で課電されると考えてよい。金属異物が存在しない場合においては、高電圧導体5の電界緩和シールド6(図1参照)近傍が不平等電界になるため、その近傍に正極性に帯電しやすい絶縁物質が存在すると、かえって耐電圧性能を低下させる可能性がある。このことを考慮すると、先の図9に示す、沿面電界分布の中央付近、すなわち高電圧導体側から接地タンク側に向かって略40%から60%の領域に正極性に帯電しやすい絶縁物質を被着するのが望ましい。このような観点から、本実施の形態では、図12に示すように、上述の範囲に絶縁被膜層17を形成しているため、効率よく絶縁スペーサ表面の絶縁耐力を向上させることができる。
【0054】
なお、絶縁スペーサの形状が、図6のようなポスト形の絶縁スペーサ9、及び、図7のような円板形の絶縁スペーサ13の場合も、同様に、高電圧導体5の支持側から接地タンク1の固定側にかけて、高電圧導体5に近い側から略40%から60%の範囲に絶縁被膜層を形成すればよい。
【0055】
以上のように、実施の形態4のガス絶縁開閉装置によれば、絶縁スペーサの粗面化された表面のうち、高電圧導体の支持側から接地タンクへ固定する固定側にかけて、略40%から略60%までの範囲に、正極性に帯電しやすい絶縁物質を被着させた絶縁被膜層が形成されているので、絶縁スペーサの表面の電界が高くなるような位置に金属異物が付着しても、あるいは金属異物が付着していなくても、絶縁性能を低下を抑制できる。
また、絶縁スペーサ表面の粗面化領域全体に絶縁被膜層を形成する場合に比べて、加工の作業時間が短縮されて製作の効率化が図れる。
【0056】
実施の形態5.
実施の形態5は、実施の形態1〜4で説明したものと同等のガス絶縁開閉装置において、絶縁スペーサの絶縁部の粗面化の方法に関するものである。したがって、ガス絶縁開閉装置の絶縁スペーサの構成は、図1,図6〜図8,図10,図12と同等なので、図示及び説明は省略する。
【0057】
先ず第1の方法として、絶縁スペーサの絶縁部表面を、「ブラスト処理」を利用して粗面化するものである。ブラスト処理は、加工対象物の表面に非金属粒や金属粒のブラスト材(図示せず)を高速度で噴きつけ、表面を粗化する方法である。
ブラスト材としては、固体二酸化炭素、いわゆるドライアイス(商標)を使用するのがよい。ドライアイスは使用後昇華して二酸化炭素となってしまうため、ブラスト材が絶縁部表面3aに残留して絶縁耐力を低下させてしまうという問題を排除できる。
【0058】
ブラスト処理によって粗面化する表面形状は、実施の形態1で説明したように、JIS規格の十点平均粗さRzが30μm〜200μmとなるように粗面化するとともに、十点平均粗さを超える凸部の間隔が、1.5〜3.0mmの範囲内になるように形成するものとする。
この方法によれば、表面を粗面化するために、機械加工など、時間と経費がかかるようなものを使うことなく、簡単で容易に絶縁スペーサの絶縁部表面を所望の表面形状に粗面化できる。
【0059】
次に、粗面化の他の方法について説明する。
一般的に、絶縁スペーサは、中心導体や接地となる金属を埋め込んだ金型(図示せず)を使って、絶縁部を構成する絶縁材料を真空注型して成型する場合が多い。そこで、絶縁スペーサを成型する金型の内面を粗面化しておくことによって、注型作業と同時に絶縁部の表面を粗面化するものである。
金型内面の、絶縁部表面を成型する部位を、予め上記と同様の十点平均粗さ及び凸部の間隔に加工しておくことで、成型された絶縁スペーサの絶縁部表面に所望の表面形状(具体的には上記と同じ)を形成するものである。
金型内面を粗面化する方法としては、ブラスト処理,ローレット加工,サンディングマシーンを利用する等が考えられるが、特にブラスト処理が望ましい。
使用する絶縁材料は、例えば、従来から使用されている、エポキシ,エポキシとアルミナ,エポキシとシリカ,エポキシとフッ化アルミナのいずれかとする。
【0060】
このような方法によれば、上記のような絶縁材料は、粘度が高く、また充填されるアルミナ、シリカ、フッ化アルミナの粒径が、形成する凹凸の高さよりも十分小さいために、凹凸に入り込むことが可能であり、そのため金型に施した通りに凹凸を形成することが可能である。
また、ブラスト処理は、ほぼ一様な凹凸を形成することが容易であるために、他の粗面化方法と比較して所望の凹凸を容易に、短時間で形成することが可能である。また、成型と同時に粗面化できるので、絶縁スペーサ毎に絶縁部表面をあらためて粗面化する工程が必要ないため、作業が少なくなり、絶縁耐力を向上させた絶縁スペーサの製作が格段に容易になる。
【0061】
また、注型作業に先立ち、金型の内面を粗面化した表面に、注型樹脂と接着し難いフッ素樹脂などを離型剤として塗布しておくのがよい。
離型剤を塗布しない場合は、金型内面の粗面化した面において、注型時に硬化後の絶縁材料が金型表面から剥がれ難くなるアンカー効果が発生しやすくなり、金型から取り外した際に所望の凹凸が絶縁材料表面に形成されない場合が起こりうるが、粗面化した金型表面に離型剤を塗布しておくことで、金型と絶縁材料の間に離型剤の層が形成され、金型に固着することを防止でき、取り外しが容易になる。
【0062】
以上のように、実施の形態5のガス絶縁開閉装置の製造方法によれば、絶縁ガスが充填された接地タンク内に高電圧導体が配置され、高電圧導体が絶縁スペーサにより支持されて接地タンクに固定されたガス絶縁開閉装置の製造方法において、ブラスト処理により、絶縁スペーサの絶縁部の絶縁ガスと接する表面を、JISB0601−1994で規定される十点平均粗さRzが30μm〜200μmとなるように粗面化するとともに、十点平均粗さを超える凸部の間隔が1.5〜3.0mmの範囲内となるように形成したので、絶縁スペーサの絶縁部を粗面化したガス絶縁開閉装置を容易に得ることができる。
【0063】
また、内面を粗面化した金型を使用して、絶縁スペーサの絶縁部の絶縁ガスと接する表面を、JISB0601−1994で規定される十点平均粗さRzが30μm〜200μmとなるように粗面化すると共に、十点平均粗さを超える凸部の間隔が1.5〜3.0mmの範囲内となるように成型したので、従来の作業工程を変更することなく、絶縁構造部材の表面を容易に粗面化することができる。
【0064】
また、絶縁スペーサの絶縁部を構成する材料を金型に注入する前に、金型の粗面化した表面に離形剤を塗布しておくようにしたので、粗面化した金型の表面に絶縁材料の樹脂が入り込んで剥がれにくくなる“アンカー効果”を防止することができ、成型後に金型から絶縁スペーサを取り出しやすくなるため、作業を容易にして粗面精度を保った絶縁スペーサを得ることができる。
【0065】
実施の形態6.
次に、この発明の実施の形態6によるガス絶縁開閉装置について説明する。ガス絶縁開閉装置の高電圧導体を支持する絶縁スペーサの基本的な形状は、実施の形態1の図1、図6及び図7と同等なので、図示及び構成の説明は省略し、相違点を中心に説明する。相違点は、絶縁スペーサの絶縁部の絶縁ガスと接する表面に、厚さが50〜1000μmの絶縁被覆層をつくり、その絶縁被覆層の表面をJISB0601−1994で規定される十点平均粗さRzが30μm〜200μmとなるように粗面化するとともに、十点平均粗さを超える凸部の間隔が、1.5〜3.0mmの範囲内になるように形成したものである。
【0066】
図13は、実施の形態6のガス絶縁開閉装置の絶縁スペーサ部の正面図であり、実施の形態1の図2に対応する図である。
実施の形態1では、図2のように、絶縁スペーサ2を構成する絶縁部3の、絶縁ガスと接する表面、すなわち絶縁部表面を粗面化したが、これに対し、本実施の形態では絶縁部表面に、別途、正極性に帯電しやすい絶縁物、例えば、ポリアミド系樹脂(ナイロン6,同46,同66、同6.10、同11,同12)、PMMA(Polymethyl Methacrylate:アクリル樹脂)、ガラス、セロハンのいずれかを被着させた絶縁被覆層18を形成し、その絶縁被覆表面18aをJIS規格(JISB0601−1994)の十点平均粗さで表した場合、十点平均粗さRzが30μm〜200μmとなるように粗面化したものである。
【0067】
このような構成では実施の形態3で説明した原理同様に、正極性の電荷により作り出された正極性の電位にて、発生電界が緩和され、金属異物の先端からの放電が発生しにくくなり、結果として絶縁スペーサの耐電圧が向上する。実施の形態3では絶縁スペーサの絶縁部に施した凹凸を埋めることなく正極性に帯電しやすい絶縁物を塗布する必要があるが、本実施の形態では正極性に帯電しやすい絶縁被覆層18に対して凹凸を形成するために、容易に凹凸を維持することが可能である。
【0068】
図14は、その効果の一例を示したものである。従来のように絶縁部表面3aを粗面化していない絶縁スペーサと、絶縁スペーサの絶縁部表面を図2に示したように粗面化したものと、粗面化した絶縁部表面にポリアミド系樹脂であるナイロン12を被着させて絶縁被膜層を形成したものと、従来のように絶縁部表面3aを粗面化していない絶縁スペーサに絶縁被覆層18を被着させて、その絶縁被覆表面18aを粗面化したものを試料とし、それぞれの表面に金属異物を付着させ、雷電圧を印加した場合の耐電圧性能を比較したものである。縦軸は、BDV(Breakdown Voltage:絶縁破壊電圧)の比率とし、最高値を比較している。図14から、本実施の形態のように正極性に帯電しやすい絶縁物質の絶縁被覆層18の表面を粗面化したことによる耐電圧性能の向上が明らかである。
【0069】
絶縁被覆表面18aを粗面化する範囲は、絶縁部表面3aに絶縁被覆層18を被着した全面とする他に、実施の形態2と同様に、絶縁被膜層18が絶縁ガスと接する表面のうち、高電圧導体の支持側から接地タンクへ固定する固定側にかけて、支持側から略50%の範囲までとしても良い。こうすることで、実施の形態2の場合と同様に、効率よく絶縁スペーサ表面の絶縁耐力を向上させることができる。
【0070】
また、絶縁被覆層18を形成するに当たっては、上述した絶縁被覆層18に使用される絶縁材料のみで絶縁被覆層18を形成する場合の他、当該絶縁材料と絶縁部3の材料との混合絶縁材料を用いれば、絶縁スペーサの絶縁部表面に、容易に強固に密着した絶縁被覆層を形成することができる。
【0071】
絶縁被覆層18の表面をJISB0601−1994で規定される十点平均粗さRzが30μm〜200μmとなるように粗面化する方法は、実施の形態5で説明した、絶縁スペーサの絶縁部表面を粗面化する方法を、同様に適用することができる。すなわち、ブラスト処理による方法、または、金型による方法を適用すればよい。金型の場合は、材料注入前に金型の粗面化した表面に離型剤を塗布しておくのが有効である。
【0072】
以上のように、実施の形態6のガス絶縁開閉装置によれば、絶縁ガスが充填された接地タンク内に高電圧導体が配置され、高電圧導体が絶縁スペーサにより支持されて接地タンクに固定されたガス絶縁開閉装置において、絶縁スペーサの絶縁部の絶縁ガスと接する表面に厚さ50〜1000μmの正極性に帯電しやすい材料からなる絶縁被覆層を付加して、絶縁被覆層の表面が、JISB0601−1994で規定される十点平均粗さRzで30μm〜200μmとなるように粗面化したので、実施の形態3と同様な効果に加えて、実施の形態3の場合のように、絶縁スペーサの絶縁部表面の粗面化の上に絶縁被膜を塗布するものと比較して、絶縁被覆層に凹凸形状を確実に形成し維持することができる。
【0073】
また、十点平均粗さRzを超える凸部の間隔が、1.5〜3.0mmの範囲内となるように形成されているので、絶縁スペーサの表面に付着した金属異物が、粗面化で形成された山の凸部で効果的に支持されるため、雷電圧等が課電された場合に最も電界が高くなる金属異物先端部分近傍にトリプルジャンクションが形成される確率が更に減少し、電界上昇を抑制できる。
【0074】
また、絶縁被覆層の材料として、ポリアミド系樹脂(ナイロン6,同46,同66、同6.10、同11,同12)、PMMA、ガラス、セロハンのいずれかを使用したので、絶縁スペーサの絶縁部の絶縁ガスと接する表面に、正極性に帯電しやすい絶縁被覆層を容易に形成することができる。
【0075】
また、絶縁スペーサの絶縁被覆層が絶縁ガスと接する表面のうち、高電圧導体の支持側から接地タンクへ固定する固定側にかけて、支持側から略50%の範囲までを粗面化したので、絶縁スペーサの表面の最も電界が高くなるような位置に金属異物が付着しても絶縁性能を低下させることなく、更に絶縁被覆層の全体を粗面化する場合に比べて、加工の作業時間が短縮されて製作の効率化が図れる。
【0076】
また、絶縁被覆層は、絶縁被覆層に使用される絶縁材料と絶縁部の材料との混合絶縁材料により形成したので、絶縁スペーサの絶縁部表面に、容易に強固に密着した絶縁被覆層を形成することができる。
【0077】
また、実施の形態6のガス絶縁開閉装置の製造方法によれば、ブラスト処理により、絶縁スペーサの絶縁被覆層の絶縁ガスと接する表面を、JISB0601−1994で規定される十点平均粗さRzが30μm〜200μmとなるように粗面化すると共に、十点平均粗さを超える凸部の間隔が1.5〜3.0mmの範囲内となるように形成したので、絶縁スペーサの絶縁部表面に設けた絶縁被膜層を、容易に粗面化でき、粗面化によりトリプルジャンクションが形成される確立を低減できるため、信頼性の高いガス絶縁開閉装置を提供することができる。
【0078】
また、ブラスト処理に替えて、内面を粗面化した金型を使用して粗面化を行ったので、従来の作業工程を大きく変更することなく、絶縁被覆層の表面を容易に粗面化することができる。
【0079】
更に、絶縁スペーサの絶縁被覆層を構成する材料を金型に注入する前に、金型の粗面化した表面に離型剤を塗布したので、成型後に金型から絶縁スペーサを取り出しやすくなるため、作業を容易にして粗面精度を保った絶縁スペーサを得ることができる。
【符号の説明】
【0080】
1 接地タンク 1a フランジ
2 絶縁スペーサ(円錐形) 3 絶縁部
3a,3b 絶縁部表面 3c 粗面化領域
4 中心導体 5 高電圧導体
6 電界緩和シールド 7 金属異物
7a 金属異物先端部 8 トリプルジャンクション
9 絶縁スペーサ(ポスト形) 10 絶縁部
10a 絶縁部表面 11 導体支持部
12 固定部 13 絶縁スペーサ(円板形)
14 絶縁部 14a 絶縁部表面
15 中心導体 16,17, 絶縁被膜層
18 絶縁被覆層 18a 絶縁被覆表面。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁ガスが充填された接地タンク内に高電圧導体が配置され、前記高電圧導体が絶縁スペーサにより支持されて前記接地タンクに固定されたガス絶縁開閉装置において、
前記絶縁スペーサの絶縁部の前記絶縁ガスと接する表面が、JISB0601−1994で規定される十点平均粗さRzで30μm〜200μmとなるように粗面化されていることを特徴とするガス絶縁開閉装置。
【請求項2】
請求項1記載のガス絶縁開閉装置において、
前記十点平均粗さRzを超える凸部の間隔が、1.5〜3.0mmの範囲内となるように形成されていることを特徴とするガス絶縁開閉装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のガス絶縁開閉装置において、
前記絶縁スペーサの前記絶縁部の材料の組成は、エポキシ,エポキシとアルミナ,エポキシとシリカ,エポキシとフッ化アルミナのいずれかであることを特徴とするガス絶縁開閉装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のガス絶縁開閉装置において、
前記絶縁スペーサの前記絶縁部が前記絶縁ガスと接する表面のうち、前記高電圧導体の支持側から前記接地タンクへ固定する固定側にかけて、前記支持側から略50%の範囲までが粗面化されていることを特徴とするガス絶縁開閉装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のガス絶縁開閉装置において、
前記絶縁スペーサの前記絶縁部の前記粗面化された表面に、正極性に帯電しやすい絶縁物質を被着した絶縁被膜層が形成されていることを特徴とするガス絶縁開閉装置。
【請求項6】
請求項5記載のガス絶縁開閉装置において、
前記絶縁被膜層は、粉体状にした前記絶縁物質がエポキシ樹脂と混合されて塗布されていることを特徴とするガス絶縁開閉装置。
【請求項7】
請求項5又は請求項6記載のガス絶縁開閉装置において、
前記粗面化された表面のうち、前記高電圧導体の支持側から前記接地タンクへ固定する固定側にかけて、略40%から略60%までの範囲に、前記絶縁被膜層が形成されていることを特徴とするガス絶縁開閉装置。
【請求項8】
絶縁ガスが充填された接地タンク内に高電圧導体が配置され、前記高電圧導体が絶縁スペーサにより支持されて前記接地タンクに固定されたガス絶縁開閉装置の製造方法において、
ブラスト処理により、前記絶縁スペーサの絶縁部の前記絶縁ガスと接する表面を、JISB0601−1994で規定される十点平均粗さRzが30μm〜200μmとなるように粗面化するとともに、前記十点平均粗さを超える凸部の間隔が1.5〜3.0mmの範囲内となるように形成したことを特徴とするガス絶縁開閉装置の製造方法。
【請求項9】
絶縁ガスが充填された接地タンク内に高電圧導体が配置され、前記高電圧導体が絶縁スペーサにより支持されて前記接地タンクに固定されたガス絶縁開閉装置の製造方法において、
内面を粗面化した金型を使用して、前記絶縁スペーサの絶縁部の前記絶縁ガスと接する表面を、JISB0601−1994で規定される十点平均粗さRzが30μm〜200μmとなるように粗面化すると共に、前記十点平均粗さを超える凸部の間隔が1.5〜3.0mmの範囲内となるように成型したことを特徴とするガス絶縁開閉装置の製造方法。
【請求項10】
請求項9記載のガス絶縁開閉装置の製造方法において、
前記絶縁スペーサの前記絶縁部を構成する材料を前記金型に注入する前に、前記金型の粗面化した表面に離型剤を塗布しておくことを特徴とするガス絶縁開閉装置の製造方法。
【請求項11】
絶縁ガスが充填された接地タンク内に高電圧導体が配置され、前記高電圧導体が絶縁スペーサにより支持されて前記接地タンクに固定されたガス絶縁開閉装置において、
前記絶縁スペーサの絶縁部の前記絶縁ガスと接する表面に厚さ50〜1000μmの正極性に帯電しやすい材料からなる絶縁被覆層を付加して、前記絶縁被覆層の表面が、JISB0601−1994で規定される十点平均粗さRzで30μm〜200μmとなるように粗面化されていることを特徴とするガス絶縁開閉装置。
【請求項12】
請求項11記載のガス絶縁開閉装置において、
前記十点平均粗さRzを超える凸部の間隔が、1.5〜3.0mmの範囲内となるように形成されていることを特徴とするガス絶縁開閉装置。
【請求項13】
請求項11又は請求項12記載のガス絶縁開閉装置において、
前記絶縁被覆層の材料として、ポリアミド系樹脂(ナイロン6,同46,同66,同6.10,同11,同12)、PMMA(Polymethyl Methacrylate:アクリル樹脂)、ガラス、セロハンのいずれかを使用することを特徴とするガス絶縁開閉装置。
【請求項14】
請求項11〜請求項13のいずれか1項に記載のガス絶縁開閉装置において、
前記絶縁スペーサの前記絶縁被覆層が前記絶縁ガスと接する表面のうち、前記高電圧導体の支持側から前記接地タンクへ固定する固定側にかけて、前記支持側から略50%の範囲までが粗面化されていることを特徴とするガス絶縁開閉装置。
【請求項15】
請求項11〜請求項14のいずれか1項に記載のガス絶縁開閉装置において、
前記絶縁被覆層は、前記絶縁被覆層に使用される材料と前記絶縁部の材料との混合絶縁材料により形成されていることを特徴とするガス絶縁開閉装置。
【請求項16】
絶縁ガスが充填された接地タンク内に高電圧導体が配置され、前記高電圧導体が絶縁スペーサにより支持されて前記接地タンクに固定されたガス絶縁開閉装置の製造方法において、
ブラスト処理により、前記絶縁スペーサの絶縁被覆層の前記絶縁ガスと接する表面を、JISB0601−1994で規定される十点平均粗さRzが30μm〜200μmとなるように粗面化すると共に、前記十点平均粗さを超える凸部の間隔が1.5〜3.0mmの範囲内となるように形成したことを特徴とするガス絶縁開閉装置の製造方法。
【請求項17】
絶縁ガスが充填された接地タンク内に高電圧導体が配置され、前記高電圧導体が絶縁スペーサにより支持されて前記接地タンクに固定されたガス絶縁開閉装置の製造方法において、
内面を粗面化した金型を使用して、前記絶縁スペーサの絶縁被覆層の前記絶縁ガスと接する表面を、JISB0601−1994で規定される十点平均粗さRzが30μm〜200μmとなるように粗面化すると共に、前記十点平均粗さを超える凸部の間隔が1.5〜3.0mmの範囲内となるように成型したことを特徴とするガス絶縁開閉装置の製造方法。
【請求項18】
請求項17記載のガス絶縁開閉装置の製造方法において、前記絶縁スペーサの前記絶縁被覆層を構成する材料を前記金型に注入する前に、前記金型の粗面化した表面に離型剤を塗布しておくことを特徴とするガス絶縁開閉装置の製造方法。
【請求項1】
絶縁ガスが充填された接地タンク内に高電圧導体が配置され、前記高電圧導体が絶縁スペーサにより支持されて前記接地タンクに固定されたガス絶縁開閉装置において、
前記絶縁スペーサの絶縁部の前記絶縁ガスと接する表面が、JISB0601−1994で規定される十点平均粗さRzで30μm〜200μmとなるように粗面化されていることを特徴とするガス絶縁開閉装置。
【請求項2】
請求項1記載のガス絶縁開閉装置において、
前記十点平均粗さRzを超える凸部の間隔が、1.5〜3.0mmの範囲内となるように形成されていることを特徴とするガス絶縁開閉装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のガス絶縁開閉装置において、
前記絶縁スペーサの前記絶縁部の材料の組成は、エポキシ,エポキシとアルミナ,エポキシとシリカ,エポキシとフッ化アルミナのいずれかであることを特徴とするガス絶縁開閉装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のガス絶縁開閉装置において、
前記絶縁スペーサの前記絶縁部が前記絶縁ガスと接する表面のうち、前記高電圧導体の支持側から前記接地タンクへ固定する固定側にかけて、前記支持側から略50%の範囲までが粗面化されていることを特徴とするガス絶縁開閉装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のガス絶縁開閉装置において、
前記絶縁スペーサの前記絶縁部の前記粗面化された表面に、正極性に帯電しやすい絶縁物質を被着した絶縁被膜層が形成されていることを特徴とするガス絶縁開閉装置。
【請求項6】
請求項5記載のガス絶縁開閉装置において、
前記絶縁被膜層は、粉体状にした前記絶縁物質がエポキシ樹脂と混合されて塗布されていることを特徴とするガス絶縁開閉装置。
【請求項7】
請求項5又は請求項6記載のガス絶縁開閉装置において、
前記粗面化された表面のうち、前記高電圧導体の支持側から前記接地タンクへ固定する固定側にかけて、略40%から略60%までの範囲に、前記絶縁被膜層が形成されていることを特徴とするガス絶縁開閉装置。
【請求項8】
絶縁ガスが充填された接地タンク内に高電圧導体が配置され、前記高電圧導体が絶縁スペーサにより支持されて前記接地タンクに固定されたガス絶縁開閉装置の製造方法において、
ブラスト処理により、前記絶縁スペーサの絶縁部の前記絶縁ガスと接する表面を、JISB0601−1994で規定される十点平均粗さRzが30μm〜200μmとなるように粗面化するとともに、前記十点平均粗さを超える凸部の間隔が1.5〜3.0mmの範囲内となるように形成したことを特徴とするガス絶縁開閉装置の製造方法。
【請求項9】
絶縁ガスが充填された接地タンク内に高電圧導体が配置され、前記高電圧導体が絶縁スペーサにより支持されて前記接地タンクに固定されたガス絶縁開閉装置の製造方法において、
内面を粗面化した金型を使用して、前記絶縁スペーサの絶縁部の前記絶縁ガスと接する表面を、JISB0601−1994で規定される十点平均粗さRzが30μm〜200μmとなるように粗面化すると共に、前記十点平均粗さを超える凸部の間隔が1.5〜3.0mmの範囲内となるように成型したことを特徴とするガス絶縁開閉装置の製造方法。
【請求項10】
請求項9記載のガス絶縁開閉装置の製造方法において、
前記絶縁スペーサの前記絶縁部を構成する材料を前記金型に注入する前に、前記金型の粗面化した表面に離型剤を塗布しておくことを特徴とするガス絶縁開閉装置の製造方法。
【請求項11】
絶縁ガスが充填された接地タンク内に高電圧導体が配置され、前記高電圧導体が絶縁スペーサにより支持されて前記接地タンクに固定されたガス絶縁開閉装置において、
前記絶縁スペーサの絶縁部の前記絶縁ガスと接する表面に厚さ50〜1000μmの正極性に帯電しやすい材料からなる絶縁被覆層を付加して、前記絶縁被覆層の表面が、JISB0601−1994で規定される十点平均粗さRzで30μm〜200μmとなるように粗面化されていることを特徴とするガス絶縁開閉装置。
【請求項12】
請求項11記載のガス絶縁開閉装置において、
前記十点平均粗さRzを超える凸部の間隔が、1.5〜3.0mmの範囲内となるように形成されていることを特徴とするガス絶縁開閉装置。
【請求項13】
請求項11又は請求項12記載のガス絶縁開閉装置において、
前記絶縁被覆層の材料として、ポリアミド系樹脂(ナイロン6,同46,同66,同6.10,同11,同12)、PMMA(Polymethyl Methacrylate:アクリル樹脂)、ガラス、セロハンのいずれかを使用することを特徴とするガス絶縁開閉装置。
【請求項14】
請求項11〜請求項13のいずれか1項に記載のガス絶縁開閉装置において、
前記絶縁スペーサの前記絶縁被覆層が前記絶縁ガスと接する表面のうち、前記高電圧導体の支持側から前記接地タンクへ固定する固定側にかけて、前記支持側から略50%の範囲までが粗面化されていることを特徴とするガス絶縁開閉装置。
【請求項15】
請求項11〜請求項14のいずれか1項に記載のガス絶縁開閉装置において、
前記絶縁被覆層は、前記絶縁被覆層に使用される材料と前記絶縁部の材料との混合絶縁材料により形成されていることを特徴とするガス絶縁開閉装置。
【請求項16】
絶縁ガスが充填された接地タンク内に高電圧導体が配置され、前記高電圧導体が絶縁スペーサにより支持されて前記接地タンクに固定されたガス絶縁開閉装置の製造方法において、
ブラスト処理により、前記絶縁スペーサの絶縁被覆層の前記絶縁ガスと接する表面を、JISB0601−1994で規定される十点平均粗さRzが30μm〜200μmとなるように粗面化すると共に、前記十点平均粗さを超える凸部の間隔が1.5〜3.0mmの範囲内となるように形成したことを特徴とするガス絶縁開閉装置の製造方法。
【請求項17】
絶縁ガスが充填された接地タンク内に高電圧導体が配置され、前記高電圧導体が絶縁スペーサにより支持されて前記接地タンクに固定されたガス絶縁開閉装置の製造方法において、
内面を粗面化した金型を使用して、前記絶縁スペーサの絶縁被覆層の前記絶縁ガスと接する表面を、JISB0601−1994で規定される十点平均粗さRzが30μm〜200μmとなるように粗面化すると共に、前記十点平均粗さを超える凸部の間隔が1.5〜3.0mmの範囲内となるように成型したことを特徴とするガス絶縁開閉装置の製造方法。
【請求項18】
請求項17記載のガス絶縁開閉装置の製造方法において、前記絶縁スペーサの前記絶縁被覆層を構成する材料を前記金型に注入する前に、前記金型の粗面化した表面に離型剤を塗布しておくことを特徴とするガス絶縁開閉装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
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【図4】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−110206(P2012−110206A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113479(P2011−113479)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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