説明

ガス絶縁開閉装置

【課題】部品点数が少なく機器寸法を小さくできるガス絶縁開閉装置を提供する。
【解決手段】DS2、作業用ES3および線路用ES4を収納したガス絶縁開閉装置において、DS2および作業用ES3の両可動子を、接続部材を介して共通の開閉機構に接続するとともに、作業用ES3と線路用ES4の接地側端子を、両ESの閉路時における両可動子の軸線方向の延長線の交点付近に配置した共用接地部材16に接続し、共用接地部材16を共用接地端子18に機械的、かつ電気的に接続した構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電力の送電や受配電に用いられるガス絶縁開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ガス絶縁開閉装置は、遮断器を挟んで電力系統側(以後、線路側と称する)と主母線側にそれぞれ断路器(以後、断路器をDSと称す)を設けている。さらに線路側においては、遮断器の保守点検を行うための作業用接地開閉器と、電力系統に接続される線路の接地を行うための線路用接地開閉器(以後、接地開閉器をESと称す)が設けられている。これに伴い、両ESに接続される接地端子および接地ケーブルも各々独立に有する構成となっている。このような構成は例えば特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−125505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1では、上述の通りと作業用ESと線路用ESを各々独立、かつ離れた位置に設けているため、ESのための空間を2箇所容器内に設ける必要がある。また、各ESに付随する接地端子及びケーブルも容器外側に各々独立に備えなければならないため、部品点数が多くガス絶縁装置全体の大型化をまねき、ひいてはガス絶縁開閉装置を設置する建屋寸法も大きくなってしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、絶縁性ガスを封入した接地容器内に収納した作業用接地開閉器、線路用接地開閉器および断路器を有するガス絶縁開閉装置において、前記作業用接地開閉器、前記線路用接地開閉器および前記断路器の各々は、可動側端子と、前記可動側端子と電気的接触を保ちながら移動する可動子と、前記可動子と接離する固定側端子を有するとともに、前記作業用接地開閉器および線路用接地開閉器は、可動側または固定側端子のいずれか一方を接地側端子とし、前記断路器および前記作業用接地開閉器の両可動子は接続部材を介して開閉機構に接続されるとともに、前記作業用接地開閉器および前記線路用接地開閉器の前記接地側端子は、各々の接地開閉器の閉路時における両可動子の軸線方向の延長線の交点付近に配置した共用接地部材に機械的に支持、かつ電気的に接続し、さらに前記共用接地部材を、共用接地端子に電気的に接続したことを特徴とする。
【0006】
さらに、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の発明において、前記開閉機構は、レバーと、前記レバーと前記断路器および前記作業用接地開閉器の両可動子とを接続する前記接続部材により構成され、前記レバーが回転することにより、前記両可動子が各々任意に設定された方向に移動するとともに、前記断路器が「入」かつ前記作業用接地開閉器が「切」となる位置、前記断路器が「切」かつ前記作業用接地開閉器が「切」となる位置、前記断路器が「切」かつ前記作業用接地開閉器が「入」となる位置の3通りの位置状態となるように設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の発明によれば、従来個別に配置していた作業用ESと線路用ESの接地端子および接地ケーブルを共有化することで部品点数が低減でき、経済性が向上する。また、両ESの接地側端子を近接させた配置としたことで、ESの占有空間が減り、ガス絶縁開閉装置の縮小、ひいては建屋寸法の縮小を図ることが出来る。
【0008】
さらに、請求項2の発明によれば、作業用ES可動子とDS可動子を共通の開閉機構により三位置に駆動させることで、従来個別に配置していた各可動子の開閉機構が集約されるので、部品点数を削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係るガス絶縁開閉装置を示した断面図である。
【図2】図1におけるガス絶縁開閉装置のA−A矢視図であり、開閉機構部を一部破断して示した図である。
【図3】本発明に係るガス絶縁開閉装置のDS「入」かつ作業用ES「切」の状態を示す模式図である。
【図4】本発明に係るガス絶縁開閉装置のDS「切」かつ作業用ES「切」の状態を示す模式図である。
【図5】本発明に係るガス絶縁開閉装置のDS「切」かつ作業用ES「入」の状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0010】
これより本発明の実施例1に係るガス絶縁開閉装置について、図面を用いて説明する。図1は本発明のガス絶縁開閉装置を示した断面図である。接地容器1内部にはDS2、作業用ES3、線路用ES4、および避雷器5の各種機器が収納されている。なお、接地容器1内には例えば空気、二酸化炭素、SFガス、SF/N混合ガス、N/O混合ガスといった絶縁性ガスが封入されている。
【0011】
DS2は、DS可動側端子2aと、DS可動側端子2aと電気的接触を保ちながら直線移動するDS可動子2bと、DS可動子2bの移動方向の延長上に対向配置され、DS可動子2bと接離するDS固定側端子2cにより構成されている。また、作業用ES3は、作業用ES可動側端子3aと、作業用ES可動側端子3aと電気的接触を保ちながら直線移動する作業用ES可動子3bと、作業用ES可動子3bの移動方向の延長上に対向配置され、作業用ES可動子3bと接離する作業用ES固定側端子3cにより構成されている。
【0012】
DS可動側端子2aおよび作業用ES可動側端子3aは共有の開閉機構部6に支持され、開閉機構部6は絶縁スペーサ7を介して接地容器1に固定されている。
【0013】
DS可動子2bはピン8aとリンク9a、およびピン8bを介してレバー10に接続されている。作業用ES可動子3bはピン8cとリンク9bおよびピン8bを介してレバー10に接続されている。レバー10はその中心部にシャフト11を有している。また、シャフト11は図示しない駆動バーを介して、接地容器1の外部に配置される駆動機構に接続されている。
【0014】
ここでDS可動子2bと作業用ES可動子3bとは、各々の移動方向が同一直線方向ではなく、各々の可動子の移動線の交差角θを持つように配置されている。交差角θは好ましくは90°〜180°程度とするのが良い。また、リンク9の長さはDS可動子2bと作業用ES可動子3bの移動角度θや両可動子の移動長により適宜調整する。
【0015】
なお、図に示すように、接地容器1内に収納されるDS2、作業用ES3および線路用ES4の可動子および可動側、固定側端子同士を各々同等寸法とし、ケーブル12に対して線路用ES固定側端子4cを直角配置とする場合、DS可動子2bと作業用ES可動子3bの移動線の交差角θは110°程度にすることが好ましい。
【0016】
DS固定側端子2cは、ケーブル12に接続され、さらにケーブル12は接地タンク1外部のケーブルヘッド13を介して電力系統へと電気的に接続される。ケーブル12は支持碍子14により接地容器1に固定されている。また、ケーブル12には線路用ES固定側端子4cおよび避雷器5が接続されている。
【0017】
線路用ES4は、ケーブル12に接続される線路用ES固定側端子4cと、これに対向配置される線路用ES可動側端子4a、および線路用ES可動側端子4aと電気的接触を保ちながら反時計方向に回転移動し、かつ線路用ES固定側端子4cと接離する線路用ES可動子4bにより構成されている。また線路用ES可動子4bは、近接される線路用ESリンク機構15を介し、図示しない線路用ES駆動機構へと接続されている。ここで、線路用ES可動子4bは直線移動式のものでも良い。
【0018】
作業用ES可動側端子3aに対向配置される作業用ES固定側端子3cと、線路用ES固定側端子4cに対向配置される線路用ES可動側端子4aは、共に接地側端子として共用接地部材16に機械的に支持され、かつ電気的に接続されている。
【0019】
共用接地部材16は絶縁スペーサ17を介して接地容器1を気密に貫通するように設けられた共用接地端子18に接続され、さらに共用接地端子18は共用接地ケーブル19を介して接地される。
【0020】
本実施例において共用接地部材16は、作業用ES3および線路用ES4が各々「入」の状態時における、作業用ES可動子3b、線路用ES可動子4bの軸線方向の延長線の交点付近に配置している。即ち、接地側端子である作業用ES固定側端子3cと線路用ES可動側端子4aを近接する箇所に配置することで、共用接地部材16を小型化できる。
【0021】
図2は図1におけるガス絶縁開閉装置のA−A矢視図であり、開閉機構部6を一部破断し、DS2と作業用ES3の共通開閉機構の結合部を示している。
【0022】
図中、下方に位置するDS可動子2bはピン8aによりリンク9aと接続される。図中、上方に位置する作業用ES可動子3bはピン8cによりリンク9bと接続される。さらに、リンク9aおよびリンク9bは、共有のピン8bによってレバー10と接続されている。また、DS可動子2bと作業用ES可動子3bには、それぞれリンク9a、9bが移動するための溝が形成されている。
【0023】
次に実施例1の動作について説明する。図3乃至図5はリンク9aおよび9bを簡略化した模式図となっている。図3においてDS2は、DS可動子2bとDS固定側端子2cが接触状態、即ち「入」の状態である。一方、作業用ES3は、作業用ES可動子3bが作業用ES可動側端子3a方向に引かれた状態で位置しており、作業用ES固定側端子3cとは非接触状態にある。即ち、作業用ES3は「切」の状態である。
【0024】
このように、図3においてはケーブル12が導通されている。この状態から、図4に示すDS2の「切」状態を経て、図5に示す作業用ES3の「入」状態に至るまでの動作を以下に説明する。
【0025】
まず、図示しない駆動機構および駆動バーにより、レバー10をシャフト11を軸に時計方向に回転させる。レバー10の回転に伴い、ピン8bも時計方向に回転移動する。
【0026】
さらにこれと連動して、ピン8bに一端を接続したリンク9aおよび、リンク9aの他端と接続したピン8aを介して、DS可動子2bがDS固定側端子2cとの接触状態を離れ、DS可動側端子2a方向へと直線移動する。即ちDS2は「切」の状態となる。
【0027】
一方、ピン8bに一端を接続したリンク9bおよび、リンク9bの他端と接続したピン8cを介して、作業用ES可動子3bは作業用ES固定側端子3c方向に直線移動する。
【0028】
このとき、作業用ES可動子3bは作業用ES固定側端子3cとは非接触の位置にある。即ち作業用ES3は「切」の状態のままである。従って図4においてDS2および作業用ES3は共に「切」の状態となる。この段階では、ケーブル12への電流は遮断されているが、遮断器側の線路は接地されていない。
【0029】
この状態からレバー10をシャフト11を軸にさらに時計回りに回転させる。レバー10の回転に伴い、ピン8bも時計回りに回転移動する。さらにこれと連動して、DS可動子2bは、よりDS可動側端子2a方向に引かれるように移動し、作業用ES可動子3bも、より作業用ES固定側端子3c方向に押し出されるように移動する。
【0030】
その結果、作業用ES可動子3bは作業用ES固定側端子3cと接触し、作業用ES3が「入」の状態となる。こうして図5に示すようにDS2が「切」、作業用ES3が「入」の状態に至る。このとき、ケーブル12への電流は遮断され、且つ遮断器側の線路が接地されるため、遮断器の保守点検作業が可能となる。
【0031】
なお、ケーブル12を接地する場合には、DS2が「切」の状態において、図示しない線路用ES駆動機構に接続された線路用ESリンク機構15によって、線路用ES可動子4bを時計方向に回転移動させ、接地側となる作業用ES固定側端子4cと接触させ、線路側ES4を「入」の状態にすれば良い。
【0032】
以上述べたように、本実施例によれば、従来個別に配置していた作業用ESと線路用ESの接地端子および接地ケーブルの共有化により、部品点数が低減でき、経済性が向上する。また、各ESの接地側端子を近接させた配置としたことで、ESの占有空間が減り、ガス絶縁開閉装置の縮小、ひいては建屋寸法の縮小を図ることが出来る。
【0033】
さらに、DS可動子と作業用ES可動子を共通の開閉機構により三位置に駆動させることで、従来個別に配置していた各可動子の開閉機構が集約されるので、部品点数を削減できる。
【符号の説明】
【0034】
1 接地容器
2 DS
3 作業用ES
4 線路用ES
5 避雷器
6 開閉機構部
7 絶縁スペーサ
8 ピン
9 リンク
10 レバー
11 シャフト
12 ケーブル
13 ケーブルヘッド
14 支持碍子
15 線路用ESリンク機構
16 共用接地部材
17 絶縁スペーサ
18 共用接地端子
19 共用接地ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性ガスを封入した接地容器内に収納した作業用接地開閉器、線路用接地開閉器および断路器を有するガス絶縁開閉装置において、前記作業用接地開閉器、前記線路用接地開閉器および前記断路器の各々は、可動側端子と、前記可動側端子と電気的接触を保ちながら移動する可動子と、前記可動子と接離する固定側端子を有するとともに、前記作業用接地開閉器および線路用接地開閉器は、可動側または固定側端子のいずれか一方を接地側端子とし、前記断路器および前記作業用接地開閉器の両可動子は接続部材を介して開閉機構に接続されるとともに、前記作業用接地開閉器および前記線路用接地開閉器の前記接地側端子は、各々の接地開閉器の閉路時における両可動子の軸線方向の延長線の交点付近に配置した共用接地部材に機械的に支持、かつ電気的に接続し、さらに前記共用接地部材を、共用接地端子に電気的に接続したことを特徴とするガス絶縁開閉装置。
【請求項2】
前記開閉機構は、レバーと、前記レバーと前記断路器および前記作業用接地開閉器の両可動子とを接続する前記接続部材により構成され、前記レバーが回転することにより、前記両可動子が各々任意に設定された方向に移動するとともに、前記断路器が「入」かつ前記作業用接地開閉器が「切」となる位置、前記断路器が「切」かつ前記作業用接地開閉器が「切」となる位置、前記断路器が「切」かつ前記作業用接地開閉器が「入」となる位置の3通りの位置状態となるように設定されていることを特徴とする請求項1に記載のガス絶縁開閉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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