説明

ガス絶縁電力機器

【課題】内部の異常を高精度に検出する。自然の力を利用して効率を上げる。
【解決手段】絶縁ガス1が封入された接地タンク2内に導体を電気的に絶縁した状態で収容すると共に、接地タンク2内で発生した絶縁ガス1の分解ガスを吸着材4によって吸着除去するガス絶縁電力機器であって、吸着材4を接地タンク2とは別の密閉容器5に収容すると共に、密閉容器5を接地タンク2に接続し、接地タンク2から密閉容器5を経由して接地タンク2へと戻る循環路9によって密閉容器5内と接地タンク2内とを連通させ、循環路9の途中に上流側よりも下流側が高く配置され且つ日光を受けた場合に内部のガスを暖めて上昇力を発生させる集熱部34を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばSFガスやSFガスを含む混合ガス等を主絶縁媒体あるいはアーク消弧媒体等として用いたガス絶縁電力機器、例えば、ガス絶縁開閉装置(GIS)、ガス遮断器(GCB)、キュービクル形ガス開閉装置(C−GIS)、ガス絶縁変圧器、管路気中ガス絶縁送電線路(GIL)などのガス絶縁電力機器に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス絶縁電力機器は大気圧以上の絶縁ガスを絶縁媒体に使用するため、電気回路となる高電圧中心導体(主回路)を固体支持絶縁物(スペーサ)とともに金属製の接地タンク(機器外被)内に格納し、密閉構造を成している。そのため、外部環境の影響を受けない、機器のコンパクト化を図れる、保守面で安全であるなど種々の利点を有し、わが国では極めて多用されている。反面、機器外部からは内部の状態を監視しにくく、万一、主回路の導通や機器絶縁に異常が発生しても、その異常を検出しにくいとの問題がある。そこで、機器の内部の状態、特に絶縁性能を外部から検出する技術の開発が強く求められている。
【0003】
例えば、ガス絶縁開閉装置内でコロナ放電が発生すると電磁波が放射されることから、この電磁波を受信することでコロナ放電を検出する絶縁異常検出装置がある(特開平01−235865号公報)。この絶縁異常検出装置では、コロナ放電により生じる電磁波に対して受信感度が高い位置にコロナ放電検出用アンテナを配置すると共に、コロナ放電により生じる電磁波に対して受信感度が十分低い位置にノイズ検出用アンテナを配置し、コロナ放電検出用アンテナで受信された信号とノイズ検出用アンテナで受信された信号の差をとることにより、コロナ放電信号のみを取り出し異常を検出している。
【0004】
また、異常に起因した音を検出する部分放電検出装置がある(特開平5−45402号公報)。この部分放電検出装置では、電気機器を収容する密閉容器にAE(アコースティック・エミッション)センサを取り付け、AEセンサの出力をバンドパスフィルタ、プリアンプに入力している。AEセンサは、部分放電により発生するAE波の周波数スペクトルの強度が最大となる周波数に共振する特性を有しており、部分放電発生時に生じる音波を電気信号に変換する。この電気信号のうちAEセンサの共振周波数を中心としてプリアンプの内部雑音が最小となる周波数領域の電気信号だけをバンドパスフィルタで通過させ、外部からのノイズを除去して部分放電を検出するようにしている。
【0005】
さらに、通電異常や絶縁異常に伴う部分放電あるいはアーク放電によってSFガスから分解生成された各種の派生ガス(以下、分解ガスという)を化学的に検出する放電検出装置がある(特開昭50−129938号公報)。この放電検出装置では、SFを充満させたガス絶縁電気装置の密封容器の内部に、分解ガスと反応して抵抗値が低下するガラスエポキシ積層基板からなる検出素子を配置し、検出素子の抵抗値を監視する。放電が発生すると、SFが分解して活性ガスが生成され、検出素子がSF分解生成ガスと反応するため、検出素子の抵抗値の低下を測定することにより放電を検出することができる。
【0006】
しかしながら、上述の異常発生に伴う電磁波をアンテナで受信して異常を検出する手法や、異常発生に伴うAE波をAEセンサによって感知して異常を検出する手法は、ガス絶縁機器が設置されている変電所などの環境下では背景雑音の存在によってその性能を十分に発揮できていない。なぜなら、異常の検出感度を高めるために受信感度・センサ感度を高めても、背景雑音をも検出することになり、異常を示す真の情報と背景雑音の識別(いわゆるS/N比)を高めることは極めて困難だからである。ここで、上述の異常発生に伴う電磁波をアンテナで受信して異常を検出する絶縁異常検出装置では、ノイズ検出用アンテナを設けることで背景雑音のキャンセルを図っているが、コロナ放電検出用アンテナが設けられている場所の背景雑音を計測しているわけではないので、背景雑音の影響を完全に排除することはできないと考えられる。
【0007】
この点、分解ガスを化学的に検出する手法はこのような背景雑音の問題はなく、しかも、部分放電などの異常が極めて軽微であっても、SFガスの分解ガスは通常蓄積されるため、次第に濃度が増えて検出が容易となる利点がある。ところが、SFガスの分解ガスの多くは金属を腐食するなど、機器に有害な影響を与えるものが多いため、通常は機器の内部に分解ガスを吸着・除去するための吸着材が封入され、機器に有害な影響を与えない程度の濃度に抑えるようにしている。
【0008】
【特許文献1】特開平01−235865号
【特許文献2】特開平5−45402号
【特許文献3】特開昭50−129938号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、ガス絶縁電力機器では、機器内部に分解ガスを吸着する吸着材が封入されているため、通電異常あるいは絶縁異常等をSFガスの分解ガスに基づいて検出しようとしても、検出素子等のセンサ類によって分解ガスを検出する前に分解ガスが吸着材に吸着されてしまい、分解ガスを良好に検出することができず、その実用化が難しい。つまり、吸着材に接触した後のガスに基づいてガス中の分解ガスを検出するので、分解ガスの検出感度に劣り、異常発生を良好に検出することが困難である。
【0010】
また、分解ガスの検出感度を向上させるのに際し、できるだけ自然の力を使用して検出の効率を上げたいとの要請がある。
【0011】
本発明は、内部の異常を高感度に検出することができ、しかも動力を使用せずに自然の力を利用して異常検出の効率を向上させることが可能なガス絶縁電力機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
かかる目的を達成するために請求項1記載の発明は、絶縁ガスが封入された接地タンク内に導体を電気的に絶縁した状態で収容すると共に、接地タンク内で発生した絶縁ガスの分解ガスを吸着材によって吸着除去するガス絶縁電力機器において、吸着材を接地タンクとは別の密閉容器に収容すると共に、密閉容器を接地タンクに接続し、接地タンクから密閉容器を経由して接地タンクへと戻る循環路によって密閉容器内と接地タンク内とを連通させ、循環路の途中に上流側よりも下流側が高く配置され且つ日光を受けた場合に内部のガスを暖めて上昇力を発生させる集熱部を設けたものである。
【0013】
接地タンク内で通電異常や絶縁異常等の異常が発生すると、絶縁ガスから分解ガスが発生し、分解ガスの濃度が増加する。接地タンク内と密閉容器内とは循環路によって連通されており、接地タンク内で発生した分解ガスは密閉容器内へと流れて吸着材によって吸着除去される。このとき、循環路の途中に設けられている集熱部は日光を受けて内部のガスを暖め上昇力を発生させるので、この上昇力を駆動力として循環路にガスの流れが発生する。このガスの流れに乗って分解ガスも密閉容器へと流れ、吸着材に接触し吸着除去される。したがって、接地タンク内の分解ガスの濃度は迅速に減少する。分解ガスが除去された残りのガスは密閉容器から接地タンク内へと循環する。なお、集熱部に日光が当たらない場合にはガスの上昇力を発生させることはできず、積極的なガスの流れを発生させることはできないが、接地タンク内と密閉容器内は循環路によって連通されているので、接地タンク内で発生した分解ガスは自然拡散によって密閉容器内に到達し、吸着材によって吸着除去される。
【0014】
また、請求項2記載のガス絶縁電力機器は、集熱部の表面が循環路の表面よりも暗い色に着色されている。したがって、日光を受けた場合に循環路よりも集熱部の温度上昇が大きく、循環路から集熱部内に流入したガスを確実に暖めることができる。
【0015】
また、請求項3記載のガス絶縁電力機器は、集熱部の表面に集熱用フィンが設けられている。したがって、日光を受けた場合に循環路よりも集熱部の温度上昇が大きく、循環路から集熱部内に流入したガスを確実に暖めることができる。
【0016】
また、請求項4記載のガス絶縁電力機器は、密閉容器が接地タンクから切り離し可能であり、密閉容器を切り離す場合に循環路の接地タンク側連通路を閉じる第1の開閉弁を備えるものである。したがって、密閉容器を切り離す場合、第1の開閉弁によって接地タンク側連通路を閉じることで接地タンク内の気密性を維持できる。つまり、接地タンク内の気密性を維持しながら吸着材を取り出すことができる。
【0017】
また、請求項5記載のガス絶縁電力機器は、密閉容器を切り離す場合に循環路の密閉容器側連通路を閉じる第2の開閉弁を備えるものである。したがって、密閉容器を切り離す場合、第2の開閉弁によって密閉容器側連通路を閉じることで密閉容器内の気密性を維持できる。
【0018】
さらに請求項6記載のガス絶縁電力機器は、接地タンクから吸着材に至るまでの間の循環路に吸着材に接する前のガスを採取する採取口を設けたものである。したがって、吸着材に触れる前のガス、即ち分解ガスを含んだ状態のガスを採取することができる。
【発明の効果】
【0019】
請求項1記載のガス絶縁電力機器では、吸着材を接地タンクとは別の密閉容器に収容すると共に、密閉容器を接地タンクに接続し、接地タンクから密閉容器を経由して接地タンクへと戻る循環路によって密閉容器内と接地タンク内とを連通させ、循環路の途中に上流側よりも下流側が高く配置され且つ日光を受けた場合に内部のガスを暖めて上昇力を発生させる集熱部を設けているので、接地タンク内で発生した分解ガスを密閉容器内の吸着材で吸着し除去することができる。このため、腐食性のある分解ガスの濃度の増加を抑えることができる。しかも、集熱部が日光を受けている場合には集熱部内で発生するガスの上昇力によって循環路内にガスの流れを発生させることができるので、接地タンク内のガスを密閉容器へと迅速に循環させることができ、分解ガスを効率的に除去することができる。また、集熱部は日光を利用してガスの上昇力を発生させるので、電気モータを使用して流れを形成する場合に比べて省エネルギーであり、また、壊れにくく保守管理が容易である。
【0020】
また、請求項2記載のガス絶縁電力機器では、集熱部の表面を循環路の表面よりも暗い色に着色しているので、日光を受けた場合にガスの上昇力を確実に発生させることができ、循環路内にガスの流れを確実に発生させることができる。
【0021】
また、請求項3記載のガス絶縁電力機器では、集熱部の表面に集熱用フィンを設けているので、日光を受けた場合にガスの上昇力を確実に発生させることができ、循環路内にガスの流れを確実に発生させることができる。
【0022】
また、請求項4記載のガス絶縁電力機器では、密閉容器が接地タンクから切り離し可能であり、密閉容器を切り離す場合に循環路の接地タンク側連通路を閉じる第1の開閉弁を備えているので、接地タンク内を大気に開放することなく密閉容器を切り離して吸着材を取り出すことができ、ガス絶縁電力機器の運転を止めずに吸着材を取り出したり交換することができる。また、万一、密閉容器に何らかの不具合が生じたとしても、密閉容器ごと交換することができる。
【0023】
また、請求項5記載のガス絶縁電力機器では、密閉容器を切り離す場合に循環路の密閉容器側連通路を閉じる第2の開閉弁を備えているので、密閉容器を密閉したまま接地タンクから切り離すことができる。このため、吸着材を大気に接触させずに運搬することができ、分解ガスを吸着させたままの状態で吸着材を分析にかけることができる。
【0024】
さらに請求項6記載のガス絶縁電力機器では、接地タンクから吸着材に至るまでの間の循環路に吸着材に接する前のガスを採取する採取口を設けているので、吸着材に触れる前の分解ガスを含むガスを採取することができる。このため、ガスの分析を行う場合、吸着材を接地タンク内に配置する構造のガス絶縁電力機器に比べて、分解ガスの検出が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の構成を図面に示す最良の形態に基づいて詳細に説明する。
【0026】
図1に本発明のガス絶縁電力機器の第1の実施形態を示す。このガス絶縁電力機器は、絶縁ガス1が封入された接地タンク2内に導体3を電気的に絶縁した状態で収容すると共に、接地タンク2内で発生した絶縁ガス1の分解ガスを吸着材4によって吸着除去するものである。そして、吸着材4を接地タンク2とは別の密閉容器5に収容すると共に、密閉容器5を接地タンク2に接続し、接地タンク2から密閉容器を経由して接地タンクへと戻る循環路9によって密閉容器5内と接地タンク2内とを連通させ、循環路9の途中に上流側よりも下流側が高く配置され且つ日光を受けた場合に内部のガスを暖めて上昇力を発生させる集熱部34を設けている。本実施形態では、密閉容器5は接地タンク2から切り離し可能となっている。
【0027】
図2に、接地タンク2の断面を示す。なお、図2はハンドホールフランジが設けられている位置とは別の位置の断面である。導体(主回路)3は、例えば高電圧中心導体で、例えば円筒形状を成している。導体3は、例えば円筒形状を成す接地タンク(機器外被)2の中心位置に配置され、支持絶縁物(スペーサ)8によって支持されている。絶縁ガス1は、例えばSFガス、SFガスを含む混合ガス等である。ただし、これらのガスに限るものではなく、例えばNガス,COガス,Cガス,c−Cガス,CFIガス,CFガスおよびこれらの混合ガス等でも良い。
【0028】
循環路9は、接地タンク2内のガスを密閉容器5内へと導く往路15と、密閉容器5内のガスを接地タンク2へと戻す復路16より構成されている。往路15は配管25と配管32により構成され、復路16は配管33と配管26によって構成されている。配管32,33は密閉容器側連通路であり、密閉容器5に固着されている。また、配管25,26は接地タンク側連通路であり、例えばハンドホールフランジ蓋24に孔を設けて固着されている。配管25,26をハンドホールフランジ蓋24に固着することで、既存の接地タンク2に取り付ける場合、既存の接地タンク2自体の設計変更を行わずにそのまま密閉容器5を取り付けることができ、特に、既に設置され運転されているガス絶縁電力機器に対してもハンドホールフランジ蓋24の交換によって後付けすることができる。さらに、交換したハンドホールフランジ蓋24を元に戻すことで、後付けした密閉容器5を取り外してガス絶縁電力機器を元の状態に戻すことができる。なお、既に設置され運転されているガス絶縁電力機器に適用する場合には、接地タンク2内に設けられている吸着材を撤去しておく。
【0029】
配管25と配管32とは、互いのフランジ25a,32aを突き合わせてボルトによって固定することで切り離し可能に接続されている。同様に、配管26と配管33とは、互いのフランジ26a,33aを突き合わせてボルトによって固定することで切り離し可能に接続されている。
【0030】
接地タンク側連通路である配管25,26には、密閉容器5を切り離す場合に当該接地タンク側連通路を閉じる第1の開閉弁7が設けられている。また、密閉容器側連通路である配管32,33には、密閉容器5を切り離す場合に当該密閉容器側連通路を閉じる第2の開閉弁11が設けられている。
【0031】
循環路9の途中には集熱部34が設けられている。本実施形態では、密閉容器5を集熱部34にしている。集熱部34即ち密閉容器5の表面は、循環路9の表面よりも暗い色、例えば循環路9が明るいグレーに着色されているのに対し、集熱部34は黒に着色されている。密閉容器5は、例えば日当たりのいい場所に配置されている。密閉容器5は上流側よりも下流側が高く配置されており、密閉容器5内の空間を下から上に向けてガスが通過する構造となっている。本実施形態では、上流側となる配管32を密閉容器5の底面に連結し、下流側となる配管33を密閉容器5の上面に連結して密閉容器5内を下から上に向けてガスがより一層通り抜け易い構造となっている。
【0032】
なお、日光を受けて密閉容器5内の吸着材4も加熱されるが、日光による加熱では、吸着材4に吸着されている分解ガスが放出されるほどには吸着材4の温度は高くならない。
【0033】
また、接地タンク2から吸着材4に至るまでの間の循環路9には吸着材4に接する前のガスを採取する採取口13が設けられている。本実施形態では、密閉容器5に採取口13が設けられている。ただし、採取口13を設ける位置は密閉容器5に限るものではなく、吸着材4に接する前のガスを採取できる位置であれば良い。採取口13を密閉容器5に設けることで、採取口13の設置が容易であると共に、一体化したユニットとして取り扱うことができるので、その扱いが容易である。採取口13には開閉弁14が設けられており、ガスを採取する時以外の時には採取口13を閉じておき、接地タンク2内及び密閉容器5内の気密性を確保している。
【0034】
ガス絶縁電力機器の運転時には、第1及び第2の開閉弁7,11を開き、接地タンク2内と密閉容器5内とを連通させておく。また、開閉弁14を閉じておく。密閉容器5に日光が当たると、密閉容器5が暖められて温度が上昇する。したがって、密閉容器5内のガスも暖められ、上昇力が発生する。この上昇力によって接地タンク2内のガスが接地タンク2→往路15→密閉容器5→復路16→接地タンク2へと循環される。密閉容器5の表面は循環路9の表面よりも暗い色に着色されているので、日光を受けた場合の温度上昇が循環路9の温度上昇よりも大きい。このため、往路15と密閉容器5との間に温度差が発生し、往路15から密閉容器5内に流入したガスを密閉容器5内で確実に暖めることができ、ガスの上昇力を確実に発生させることができる。
【0035】
接地タンク2内で通電異常や絶縁異常等の異常が発生すると、絶縁ガス1から分解ガスが発生する。接地タンク2内で発生した分解ガスは循環路9内に形成されるガスの流れに乗って密閉容器5内に到達し、吸着材4によって吸着除去される。このため、接地タンク2内の分解ガスの濃度を減少させることができる。循環路9内には密閉容器5内で発生する上昇力によって積極的な流れが形成されているので、接地タンク2内の分解ガスを迅速に密閉容器5まで移動させることができ、素早く分解ガスを吸着除去することができると共に、接地タンク2内への分解ガスの残留防止を図ることができる。分解ガスの多くは金属を腐食させる腐食性ガスである。吸着材4によって分解ガスを吸着除去するので、接地タンク2や導体3等を腐食させる程には分解ガスの濃度は高くならず、これらの腐食を防止することができる。
【0036】
また、集熱部34は自然エネルギーを利用して循環路9内に積極的な流れを形成するので、電気モータを使用して流れを形成する場合に比べて省エネルギーであり、また、壊れにくく保守管理が容易である。
【0037】
密閉容器5を接地タンク2から切り離す場合、第1の開閉弁7によって接地タンク側連通路を閉じることで接地タンク2内の気密性を維持できる。このため、ガス絶縁電力機器の運転を止めずに密閉容器5を切り離すことができ、吸着材4を取り出して交換や修理・再生を行うことができる。また、吸着材4自体を分析の対象にすることが可能になる。また、第2の開閉弁11によって密閉容器側連通路を閉じることで密閉容器5内の気密性を維持することができ、密閉容器5内の吸着材4を外気に接触させることなく分析にかけることができる。
【0038】
ハンドホールフランジ蓋24はある程度大径であり、往路15と復路16とを離して設置することができる。このため、接地タンク2内のガスを効率よく循環させることができ、接地タンク2内の分解ガスの残留を防止することができる。また、ハンドホールフランジ蓋24への配管25,26の固着は容易であり、ガス絶縁電力機器の製造は簡単である。なお、配管25,26をハンドホールフランジ蓋24以外の部分に固着させても良い。
【0039】
ガス絶縁電力機器には、一般的には絶縁ガスを封入するための給排気管と、給排気管を開閉する開閉弁が予め設けられている。各配管25,26のいずれか一方として、給排気管を利用しても良い。また、第1の開閉弁7として、給排気管を開閉する開閉弁を利用しても良い。
【0040】
また、ガス絶縁電力機器の同一ガス区画に2ヵ所以上のハンドホールフランジ蓋24が設けられている場合には、別々のハンドホールフランジ蓋24に往路15となる配管25と復路16となる配管26を固着するようにしても良い。この場合には、往路15と復路16をさらに離すことができるため、接地タンク2内でガスをより一層効率よく循環させることができ、接地タンク2内の分解ガスの残留をさらに防止することができる。
【0041】
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
【0042】
例えば、上述の説明では、集熱部34としての密閉容器5の表面を循環路9の表面よりも暗い色に着色することで日光を受けた場合の温度上昇を循環路9よりも大きくしてガスの上昇力を発生させるようにしていたが、必ずしもこの構成に限るものではなく、集熱部34内のガスを日光によって暖めて上昇力を発生させることができるものであれば良い。例えば、図3に示すように集熱部34の表面に集熱用フィン34aを設け、日光を受けた場合の温度上昇が循環路9よりも大きくなるようしても良い。この場合には、集熱部34の表面を循環路9の表面よりも暗い色に着色しなくても往路15と密閉容器5との間に温度差を発生させて往路15から密閉容器5内に流入したガスを密閉容器5内で確実に暖めることができ、ガスの上昇力を確実に発生させることができる。なお、この場合にも、集熱部34の表面を循環路9の表面よりも暗い色に着色しても良い。
【0043】
また、上述の説明では、密閉容器5を集熱部34にしていたが、密閉容器5とは別に集熱部34を設けても良い。例えば、図4に示すように配管33の一部を垂直に配置し、この垂直部分に集熱部34を設けても良い。図4の例では、垂直部分の表面を他の循環路9の部分よりも暗い色に着色することで集熱部34を設けているが、集熱用フィン34aを形成することで集熱部34を設けても良い。また、表面を他よりも暗い色に着色することと集熱フィンを形成することの両方によって集熱部34を設けても良い。なお、図4の例では、配管33に集熱部34を形成していたが、その他の配管32,25,26に集熱部34を形成しても良い。また、集熱部34を密閉容器5の上流側に設けても、下流側に設けても良い。
【0044】
また、上述の説明では、吸着材4に接触する前のガスを採取する採取口13を設けていたが、吸着材4に接触する前のガスを採取する必要がない場合等には採取口13を省略しても良い。
【0045】
また、接地タンク2から密閉容器5を切り離した場合に、吸着材4が外気に触れても良い場合等には、第2の開閉弁11を省略しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明のガス絶縁電力機器の実施形態の一例を示す概略構成図である。
【図2】接地タンクの断面図である。
【図3】集熱部の他の例を示す概略構成図である。
【図4】集熱部の更に他の例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0047】
1 絶縁ガス
2 接地タンク
3 導体
4 吸着材
5 密閉容器
9 循環路
13 採取口
34 集熱部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁ガスが封入された接地タンク内に導体を電気的に絶縁した状態で収容すると共に、前記接地タンク内で発生した前記絶縁ガスの分解ガスを吸着材によって吸着除去するガス絶縁電力機器において、前記吸着材を前記接地タンクとは別の密閉容器に収容すると共に、前記密閉容器を前記接地タンクに接続し、前記接地タンクから前記密閉容器を経由して前記接地タンクへと戻る循環路によって前記密閉容器内と前記接地タンク内とを連通させ、前記循環路の途中に上流側よりも下流側が高く配置され且つ日光を受けた場合に内部のガスを暖めて上昇力を発生させる集熱部を設けたことを特徴とするガス絶縁電力機器。
【請求項2】
前記集熱部の表面は前記循環路の表面よりも暗い色に着色されていることを特徴とする請求項1記載のガス絶縁電力機器。
【請求項3】
前記集熱部の表面に集熱用フィンが設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載のガス絶縁電力機器。
【請求項4】
前記密閉容器は前記接地タンクから切り離し可能であり、前記密閉容器を切り離す場合に前記循環路の接地タンク側連通路を閉じる第1の開閉弁を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載のガス絶縁電力機器。
【請求項5】
前記密閉容器を切り離す場合に前記循環路の密閉容器側連通路を閉じる第2の開閉弁を備えることを特徴とする請求項4記載のガス絶縁電力機器。
【請求項6】
前記接地タンクから前記吸着材に至るまでの間の前記循環路に前記吸着材に接する前のガスを採取する採取口を設けたことを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載のガス絶縁電力機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−67537(P2008−67537A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−243963(P2006−243963)
【出願日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成18年3月15日 社団法人 電気学会発行の「平成18年電気学会全国大会 講演論文集[6]」に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成18年6月 財団法人 電力中央研究所発行の「電力中央研究所報告」に発表
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】