ガス絶縁電気装置
【課題】ガス絶縁電気装置内の金属異物を確実に捕獲することができるとともに、仮に粘着材が劣化したり、あるいは装置の振動が生じても、捕獲した金属異物を再浮上させることなく、確実に捕獲し続けることのできるガス絶縁電気装置を提供する。
【解決手段】絶縁ガスが充填された接地タンク3内に絶縁スペーサを介して高電圧導体2が設置されおり、接地タンク3の底部に金属異物が浮上しないような低電界部を形成するための凹部5a、5b、5cと凸部5e〜5hが交互に並んだ形状の金属板5を設けるとともに、更にこの凹部5a、5b、5cの低電界部にのみ粘着層6a、6b、6cが設けられ、凹部の幅をd、深さをh、金属異物の長さをL、α=(h−L)/dとしたとき、αが0.8以上となるように凹部を構成する。
【解決手段】絶縁ガスが充填された接地タンク3内に絶縁スペーサを介して高電圧導体2が設置されおり、接地タンク3の底部に金属異物が浮上しないような低電界部を形成するための凹部5a、5b、5cと凸部5e〜5hが交互に並んだ形状の金属板5を設けるとともに、更にこの凹部5a、5b、5cの低電界部にのみ粘着層6a、6b、6cが設けられ、凹部の幅をd、深さをh、金属異物の長さをL、α=(h−L)/dとしたとき、αが0.8以上となるように凹部を構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、高電圧導体を接地タンク内に収納し、接地タンク内に絶縁ガスを充填することにより、高電圧導体と接地タンクを絶縁するようにしたガス絶縁電気装置に関するものであり、特に接地タンク内に侵入する異物を捕獲する構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からあるガス絶縁電気装置においては、高電圧導体を接地金属タンク内に収納し、このタンク内に絶縁ガスを充填することによって絶縁できるようにしていた。この場合ガス絶縁電気装置を組み立てたりする際において、タンク内に金属異物が侵入することがあり、高電圧導体に通電する際に発生する強電界により、金属異物は浮上して高電圧導体に付着したり、あるいは接近することにより、装置の耐電圧性能が低下することがある。そこで金属異物の浮上による耐電圧性能の低下を防ぐために、通常金属異物を捕獲するための構造がガス絶縁電気装置内に設置されている。
【0003】
従来のガス絶縁電気装置の金属異物を捕獲するための構造としては、金属容器の底部に凹形の開口部を形成し、この開口部及びその近傍に粘着性物質を塗布しており、この粘着性物質により金属異物を捕獲するものがあった(特許文献1参照)。
【0004】
また、高電圧導電部を内蔵するタンクの底部にタンクの軸方向と同じ方向に一本以上の金属棒を配置し、この金属棒の表面に絶縁被覆を施しており、この金属棒がタンクと接触する部分の低電界部分に粒子を捕獲するための粒子捕集器を設けたものもあった(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平05−091630号公報(2頁右28〜2頁右31行、図1)
【特許文献2】実開昭56−145313号公報(3頁14〜4頁4行、図5〜6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のガス絶縁電気装置は以上のように構成されているので、上記特許文献1に示されたガス絶縁電気装置においては、開口部における電界を決定する因子となる開口部の深さ及び開口部の幅と、金属異物の大きさとの関係が規定されておらず、開口部に捕獲された金属異物が位置する部分における電界の強度が、静電気力による金属異物の浮上を防ぐことが出来るほど十分に低くない場合も考えられ、粘着性物質が劣化して粘着力が低下したときに金属異物が浮上して高電圧導体に近づき、耐電圧性能を低下させるおそれがあるという問題点があった。
【0007】
また、上記特許文献2に示されたガス絶縁電気装置においては、金属棒とタンクとで構成された低電界部に捕獲された金属異物が、装置を運搬したり、あるいは動作させることによって発生する振動によって跳ね上がったり、あるいは動いたりして、電界の高い場所に移動することがあり、印加される電圧によって発生する静電気力で浮上し、耐電圧性能を低下させるという問題点があった。
【0008】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、ガス絶縁電気装置内の金属異物を確実に捕獲することができるとともに、仮に粘着材が劣化したり、あるいは装置の振動が生じても、捕獲した金属異物を再浮上させることなく、確実に捕獲し続けることのできるガス絶縁電気装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係るガス絶縁電気装置は、絶縁ガスが充填された接地タンクと、この接地タンク内に絶縁スペーサを介して設置された高電圧導体とからなるものであって、接地タンクの底部に金属異物が浮上しないような低電界部を形成するための凹部が設けられるとともに、更にこの凹部の低電界部にのみ粘着層が設けられ、凹部の幅をd、深さをh、金属異物の長さをL、α=(h−L)/dとしたとき、αが0.8以上となるように凹部を構成したのである。
【発明の効果】
【0010】
この発明に係るガス絶縁電気装置によれば、絶縁ガスが充填された接地タンクと、この接地タンク内に絶縁スペーサを介して設置された高電圧導体とからなるものであって、接地タンクの底部に金属異物が浮上しないような低電界部を形成するための凹部が設けられるとともに、更にこの凹部の低電界部にのみ粘着層が設けられ、凹部の幅をd、深さをh、金属異物の長さをL、α=(h−L)/dとしたとき、αが0.8以上となるように凹部を構成したので、金属異物は静電気力で浮上しない低い電界の位置にあるため金属異物は浮上することなく、更に金属異物は粘着層の捕獲力により確実に捕獲されるとともに、粘着層が劣化し粘着力が低下しても金属異物は低電界部において捕獲することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施の形態1によるガス絶縁電気装置を示す斜視図である。
【図2】ガス絶縁電気装置の底部を示す拡大正面一部断面図である。
【図3】タンク底面電界と最大浮上高さとの関係を示す線図である。
【図4】異物の長さと浮上電界との関係を示す線図である。
【図5】金属板凹部の形状係数と凹部底部の電界との関係を示す線図である。
【図6】金属板凹部の形状を示す断面図である。
【図7】金属板凹部形状とその電界分布、および異物が入った状態を示す断面図である。
【図8】この発明の実施の形態2によるガス絶縁電気装置を示す拡大正面一部断面図である。
【図9】この発明の実施の形態3によるガス絶縁電気装置を示す拡大正面一部断面図である。
【図10】この発明の実施の形態3によるガス絶縁電気装置を示す拡大正面一部断面図である。
【図11】この発明の実施の形態4によるガス絶縁電気装置を示す拡大正面一部断面図である。
【図12】この発明の実施の形態5によるガス絶縁電気装置を示す斜視図である。
【図13】この発明の実施の形態5によるガス絶縁電気装置を示す拡大正面一部断面図である。
【図14】この発明の実施の形態5によるガス絶縁電気装置を示す拡大正面一部断面図である。
【図15】この発明の実施の形態5によるガス絶縁電気装置を示す拡大正面一部断面図である。
【図16】この発明の実施の形態5によるガス絶縁電気装置を示す拡大正面一部断面図である。
【図17】この発明の実施の形態6によるガス絶縁電気装置を示す拡大正面一部断面図である。
【図18】この発明の実施の形態7によるガス絶縁電気装置を示す斜視図である。
【図19】この発明の実施の形態8によるガス絶縁電気装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
以下この発明の一実施形態を図に基づいて説明する。図1はこの発明の実施の形態1によるガス絶縁電気装置を示す斜視図であり、接地タンクの一部を断面で切り取った状態を示している。図2は図1に示されたガス絶縁電気装置の底部を示す拡大正面一部断面図であり、金属異物捕獲構造を示している。
【0013】
図において、本発明によるガス絶縁電気装置1においては、筒状の接地タンク3の中に絶縁ガスが充填されており、接地タンク3の中心軸に沿って高電圧導体2が配置されている。この高電圧導体2は絶縁性の部材から構成される図示しない絶縁スペーサによって接地タンク3に支持されている。
【0014】
接地タンク3内に充填される絶縁ガスとしては、SF6、乾燥空気、窒素、二酸化炭素等が使用されるが、絶縁ガスの絶縁性能を高めるとともに、ガス絶縁電気装置1全体をコンパクトに構成するため、一般に絶縁ガスの圧力を大気圧より高く設定して接地タンク3内に封止される。
【0015】
接地タンク3の底面部には異物捕獲構造4が設置され、異物捕獲構造4は接地タンク3と溶接やボルト締めにより固定されることにより、接地タンク3と電気的に接続されている。異物捕獲構造4は複数の凹部と凸部が交互に並んだ形状の金属板5と、金属板5の凹部5a、5b、5cに形成された低電界部にのみ設置された粘着層6a、6b、6cから構成され、少なくとも金属板5の凸部5e〜5hの面は滑らかな曲面になるように形成されている。尚図2においては、金属板5は波形に滑らかになるように形成した例を示しているが、凹部と凸部が交互に並んだ形状であれば、全てが滑らかな形状である必要はない。
【0016】
ここで、金属板5の凹部の幅をd(mm)、深さをh(mm)とする。また、図示していない捕捉するための最大異物の長さはL(mm)とする。金属板5において、凹部の形状を規定する尺度のひとつとして形状係数α=(h−L)/dを定義したとき、本実施形態においては、金属板5の形状係数αが、L=3mmのときα≧0.8となり、L=6mmのときα≧1.0となるように金属板5を形成するものである。α≧0.8又はα≧1.0となるように設定する理由については後述する。
【0017】
次に異物捕獲構造4の動作について説明する。高電圧導体2に電圧が印加されると、接地タンク3の内面における電界が高くなる。このとき金属異物が接地タンク3内に混入していると、金属異物が電界の作用により帯電し、接地タンク3の内面から浮上する方向に静電気力を受ける。静電気力が金属異物の重量による重力よりも大きくなると金属異物は浮上し、高電圧導体2に向かって移動を始める。
【0018】
一般に高電圧導体2における電界の方が、接地タンク3の底面における電界よりも高いため、金属異物が高電圧導体2に近づいたり接触したりすると、高電圧導体2の耐電圧性能が低下することになる。金属異物の形状が線状のときにその先端部に電界が集中するため、耐電圧性能に最も大きな影響を及ぼす金属異物の形状は線状のときである。このような線状の金属異物が高電圧導体2に向かって浮上するほど十分大きな静電気力が発生していなくても、たとえば機械的振動等をきっかけに線状の金属異物が起立すると、静電気力により起立状態が継続することがある。そして線状の金属異物が起立すると、金属異物先端の電界が局部的に大きくなって、耐電圧性能が低下してしまう。
【0019】
これに対して、本発明による異物捕獲構造4においては、金属板5の凹部5a、5b、5cであって、低電界部にのみ粘着層6a,6b,6cが設置されており、金属異物は凹部5a、5b、5cの低電界部に入ると粘着層6a,6b,6cにより捕獲されるため、跳ね返るなどして再度浮上することはない。また凹部5a、5b、5c内における電界の強さは、異物捕獲構造4が設置されていない接地タンク3の他の底面部の電界の強さよりも小さくなっており、一旦凹部5a、5b、5cに入った金属異物が再度浮上するだけの静電気力を受けにくくなっている。
【0020】
凹部5a、5b、5cの電界の強さは、凹部5a、5b、5cの幅や深さを調節することにより、異物捕獲構造4が設置されていない接地タンク3の他の底面の電界の強さの数分の1〜10数分の1、またはそれ以下にすることが可能である。
【0021】
以上のような異物捕獲構造4の効果を発揮させるためには、ガス絶縁電気装置1を運転させる前に高電圧導体2への印加電圧を徐々に上昇させるいわゆるプレ印加を実施すればよい。このようにすることにより、金属異物は静電気力で浮上・落下を繰り返しながら接地タンク3の下方に設置された異物捕獲構造4が作り出す低電界部へ徐々に導かれるようになる。またその他にも機械的振動を与えることにより、金属異物そのものの重力によって金属異物を下方に移動させることが可能となる。
【0022】
次に形状係数αがα≧0.8またはα≧1.0となるように設定する理由について説明する。タンク3の底面の電界は、ガス絶縁電気装置1の運転中に金属異物が静電気力で浮上しないような電界になるように設計する必要がある。タンク底面の電界と金属異物の浮上との関係、及び高電圧導体2への到達との関係については、例えば図3に示されるような関係となる。
【0023】
図3は金属異物の長さが3mm、径が0.2mmのアルミ線の場合のタンク底面電界(kVrms/mm)と最大浮上高さ(mm)との関係を示すものであり、実線はタンク内壁が金属のみで構成されている場合を示すとともに、点線はタンク内壁にフタル酸系樹脂をコーティングした場合を示している。
【0024】
図において、タンク内壁が金属のみで形成されている場合は、タンク底面電界が0.4kVrms/mmで金属異物は既に浮上しており、1.0kVrms/mmで高電圧導体2に到達する。一方、タンク内壁をフタル酸系樹脂でコーティングした場合は0.7kVrms/mmで金属異物は浮上しており、1.3kVrms/mmで高電圧導体2に到達する。
【0025】
このように、長さ3mmのアルミ線異物を想定した場合、タンク内壁が金属のみの場合、またはフタル酸系樹脂でコーティングされた場合のタンク設計電界の上限はおおよそ1kVrms/mmであり、これを超えるとアルミ線異物は高電圧導体2に到達して絶縁破壊が生じる恐れが生じる。
【0026】
また、3mmより長いアルミ線異物が混入していた場合は、1kVrms/mm以下の電界でもアルミ線異物が高電圧導体2に到達して絶縁破壊が生じるおそれがある。仮にタンク中に混入する可能性のある金属異物のサイズとして最大3mmを想定すると、タンク設計電界の上限は上述のように大凡1kVrms/mmである。
【0027】
一方、金属表面に直立した状態の線状金属異物が浮上するための電界Eは、金属異物の形状を半回転楕円体と想定した場合、以下の式(1)で理論的に計算することが出来る。
浮上電界E={ln(2L/r)−1}[2ρr2g/(3ε0L{ln(L/r)−0.5})]0.5・・・・(1)
ここで、r,L,ρはそれぞれ金属異物の半径、長さ、密度、gは重力加速度、ε0は真空の誘電率である。図4は式(1)を基に半径rが0.2mmのアルミの線状異物について、異物の長さLと浮上電界Eとの関係を示す図である。
【0028】
長さLが3mmの金属異物の理論的な浮上電界Eは約0.1kVrms/mm、長さ6mmの場合は約0.08kVrms/mmであり、金属異物の長さが長くなるに従い浮上電界Eは低下する。そのため異物捕獲構造4で確実に金属異物を捕獲するためには、タンク3内に存在する金属異物の最大長さが例えば3mmの場合は0.1kVrms/mm以下、6mmの場合は0.08kVrms/mm以下の領域に金属異物が入るように金属板5の形状及び寸法を設定することが必要となってくる。
【0029】
次に金属板5の凹部5a、5b、5cにおける電界分布について説明する。図5の曲線(a)はタンク3の底面の電界が1kVrms/mmの底面に異物捕獲構造4を設置した場合、金属板5の形状係数βとして、β=h/dを定義したときの、βと金属板5の凹部底部の電界との関係を電界解析により求めた結果を示す線図である。
【0030】
このような金属板凹部の電界分布の特徴をもとに、金属板凹部が備えるべき形状について説明する。例えば、最大異物の長さが3mmの場合、図4に示すように、金属板凹部の底面の電界は0.1kVrms/mm以下にする必要があるが、ここで仮に凹部の深さをh1、幅をd、凹部の底面電界を0.1kVrms/mmの金属板5を考えると、その形状係数β1は図5で明らかになったように、β1=h1/d=0.8となるように決定される。
【0031】
ところが、金属異物自体は最大3mmの長さを有しており、金属異物の全体が理論上の浮上電界である0.1kVrms/mm以下の領域に入ることにより、静電気力による金属異物の浮上力を充分弱めることができる。従って凹部の深さhとして、金属異物の長さ3mmを考慮してh≧h1+3(mm)が必要となる。つまりh1≦h−3なので、この式にh1/d=0.8を変形したh1=0.8dを代入して整理し、あらためて形状係数αとして定義すると、α=(h−3)/d≧0.8と表される。
【0032】
この条件を満たす金属板5の凹部形状とその電界分布、および金属異物Xが入った状態を図7に示す。同様に、金属異物の最大の長さが6mmの場合は、図4に示すように、金属異物全体にわたって0.08kVrms/mm以下にする必要があるので、図5に示すように0.08kVrms/mm以下にするためには、形状係数βを1.0以上にする必要があり、3mmの場合と同様に計算して、形状係数α=(h−6)/d≧1.0とする必要がある。
【0033】
あとは、凹部の深さhか幅dのいずれかを決めると必要な他方の寸法が自動的に決定する。なお金属異物の最大の長さが上記以外であっても同様の方法によって必要な形状係数が求められる。実用上は、タンク3に混入する金属異物の大きさの最大値はここで述べた3〜6mm程度であり、これ以上の大きな金属異物は製造工程で除去されるとともに、これ以下の金属異物は装置の性能に影響を与えないため、形状係数αは、例えばL=3mmのときは、α=(h−L)/d≧0.8、L=6mmのときは、α=(h−L)/d≧1.0となるように製作すればおおよそ充分である。
【0034】
又静電気力に関していえば、例えば球形などの他の形状の金属異物に比べると、起立した状態の線状の金属異物の方が発生する静電気力は大きいものであり、さらに金属異物の金属種としては、混入する可能性のある金属異物としてアルミが最も軽量であるので、線状のアルミ製金属異物を考慮しておけば、ほぼ全ての他の金属異物に対しても有効な異物捕獲構造が構成できる。
【0035】
以上のように金属板5の凹部の形状係数αをタンク3内に混入する金属異物の大きさに従って定義することにより、狙った大きさの金属異物に作用する静電気力を十分に低減することが出来るため、凹部による電界低減効果のみでも金属異物を確実に捕獲しておくことができるようになる。
【0036】
なお、凹部の電界低減効果だけで金属異物を確実に捕獲しておくためには、以上に述べたように捕獲すべき金属異物の最大の長さに従った形状係数αを満足するように凹部を構成して、金属異物全体が理論上の浮上電界以下の位置に位置するようにすることが必要となるが、必ずしも金属異物全体が理論上の浮上電界以下の位置に位置していなくても良いようにすることもできる。
【0037】
つまり凹部底部付近だけが理論上の浮上電界以下になっているだけでも、粘着層6a〜6cを設けることにより、金属異物を確実に捕獲しておくことが出来る。すなわち、この場合には凹部底部の電界のみを0.1kVrms/mm以下にすればよいので、例えば金属異物の長さが3mmであれば、β=h/d≧0.8となるように凹部を形成すればよく、α=(h−3)/d≧0.8となるように凹部を形成する必要はない。
【0038】
以上のように金属板5の凹部の形状係数を、例えば金属異物の長さが3mmであれば、β=h/d≧0.8となるように構成するとともに、又金属異物の長さが6mmであれば、β=h/d≧1.0となるように構成し、更に粘着層6a〜6cを設置することにより、金属異物に発生する静電気力を十分に低減し、更に金属異物を確実に捕獲しておくことができる異物捕獲構造を構成することができる。
【0039】
上記においては、タンク3の底面の電界及び金属異物の長さを考慮して凹部の形状を決定する場合について説明したが、以下においては、金属板の加工の効率性及び金属異物の捕獲能力という観点より凹部の形状をどのように決定するかについて説明する。図5の曲線(b)は、図6に示すような形状係数β=3の金属板凹部をタンク底面の電界が1kVrms/mmであるタンク3の底面に設置した場合、金属板5の凸部頂部からの凹部の深さをhiとしたとき、γ=hi/dと深さhiにおける電界との関係を示した線図である。図5に示すように、電界が0.1kVrms/mm以下の領域、すなわち形状係数β≧0.8の領域では曲線(a)と曲線(b)はほぼ重なる。つまり、電界が0.1kVrms/mm以下の領域では、図6に示されるような金属板5の凹部の任意の深さhiにおける電界は、幅がdであり、深さhがhiであるように形成された金属板5の凹部の底部における電界とほぼ同じであることがわかる。
【0040】
即ち凹部の底部における電界を0.1kVrms/mm以下にしようとすれば、例えば図6の例で説明するとβ=0.8となるように形成された金属板を設けても、あるいはβ=3となるように形成された金属板5を設けても同様に0.1kVrms/mm以下にすることができる。従ってβ=0.8となるように金属板5を形成した方が金属板5の大きさ自体も小さくて済むとともに、加工が容易となり効率的といえる。又図5により、本願発明による異物捕獲構造4を設けない場合にはタンク3の底面の電界が1kVrms/mmであるのに対し、異物捕獲構造4を設け、β=0.8となるように設計すると凹部の底部における電界は0.1kVrms/mmとなっており、電界は1/10になり、大きな電界低減効果が効率的に得られることとなる。尚上記説明ではタンク3の底面の電界が1kVrms/mmの場合について説明したが、タンク3の底面の電界が他の値であっても凹部の底部における電界はタンク3の底面の電界よりかなり低くなり、金属異物を捕獲することができる。以上によりタンク3の底面の電界如何にかかわらず、β≧0.8となるように構成すれば金属異物を確実に捕獲できる。又上記で示したように、金属異物の長さLを考慮した場合には、α≧0.8となるように凹部を形成すればよい。
【0041】
次に金属板5による凹部5a〜5cを形成することにより低電界部構造を構成するとともに、更にこの低電界部にのみ粘着層6a〜6cを設ける理由とその効果について説明する。工場で組み立てられたガス絶縁電気装置1は、絶縁性の良否を確認するために耐電圧試験が行われる。このとき金属異物がタンク3内に混入した状態で試験電圧を印加すると、前述の通り金属異物が浮上して高電圧導体2に達し、耐電圧性能が低下する恐れがある。
【0042】
そのため、試験電圧を印加する前に高電圧導体2への印加電圧を徐々に上昇させるいわゆるプレ印加を実施する。このようにすることにより、金属異物は静電気力で浮上・落下を繰り返しながら接地タンク3の下方に設置された異物捕獲構造4が作り出す低電界部へ徐々に導かれ、静電気力を低減されると共に、更に粘着層6a〜6cによる捕獲力により金属異物は確実に捕獲される。
【0043】
またその他にも機械的振動を与えることにより、金属異物そのものの重力によって金属異物を下方に移動させ、異物捕獲構造4に捕獲される。異物捕獲構造4により捕獲された金属異物は高電圧導体2に試験電圧を印加しても異物捕獲構造4の低電界部に固定されたままとなり、耐電圧試験において耐電圧性能を低下させることはない。耐電圧試験を含めひととおりの試験を実施されたガス絶縁電気装置1は、陸上や海上を輸送され、現地に据え付けられる。
【0044】
現地でも耐電圧試験等を行うことにより、性能に問題がないことを確認した後、運転が開始される。ここで、異物捕獲構造4に粘着層6a〜6cを設けず、低電界部を設けることによる静電気力低減効果によってのみ金属異物を捕獲する場合、輸送中の振動や傾き、場合によっては天災などによって、工場での試験時にプレ印加によって捕獲した金属異物が異物捕獲構造4の外に移動してしまう可能性がある。
【0045】
そのため、現地での据え付け後に再びプレ印加を実施して再度金属異物を異物捕獲構造4に捕獲する必要が生じる。これに対して低電界部に粘着層6a〜6cを設けておくと、工場からの出荷から現地での据え付けまでの間に金属異物が異物捕獲構造4の外に移動することなく確実に捕獲しておけるため、現地でのプレ印加作業を省略もしくは簡略化することが可能となる。
【0046】
また一方で、金属異物捕獲を接地タンク3の底面に設けた粘着層のみによって行った場合、工場出荷から現地据え付けまでの輸送中に粘着層が設置されていない場所に金属異物が移動することはないが、ガス絶縁電気装置1を長期間運転している間に粘着層が劣化して粘着力が低下すると、金属異物が静電気力によって浮上する恐れがある。さらに、例えば線状金属異物が直立した状態で粘着層に捕獲されていたりすると、その線状金属異物の先端の電界が高くなるため、耐電圧試験時に耐電圧性能が低下したり、運転中に部分放電が発生して長期的な絶縁信頼性が低下したりする恐れがある。
【0047】
これに対して本実施形態のように、低電界による静電気力低減効果のみによっても金属異物の浮上を抑制できるように凹部5a〜5cを形成した異物捕獲構造4において、更にこれら凹部5a〜5cの低電界部にのみに粘着層6a〜6cを設けることにより、粘着層6a〜6cの粘着力が運転中の経年変化により、または何らかの要因で低下したり失われたりした場合でも、金属異物は低電界部に確実に捕獲することができるため、再浮上して絶縁性能を低下させるようなことはない。
【0048】
さらに、本実施形態のような形状係数αを考慮した凹部5a〜5cを形成することにより、もし線状金属異物が直立したまま粘着層6a〜6cに固定されても、異物捕獲構造4における凹部5a〜5cは十分低電界であるために、金属異物の先端で電界が集中することを抑制でき、耐電圧性能を低下させたり部分放電が発生したりすることを防ぐことができる。
【0049】
以上に述べたように、ガス絶縁電気装置1の接地タンク3の底部に本実施形態のような形状係数αを考慮した凹部5a〜5cを設置し、且つこの凹部5a〜5cの低電界部にのみ粘着層6a〜6cを設けることにより、凹部のみを設けた場合、もしくは粘着層のみを設けた場合と比較して格段に絶縁信頼性の高いガス絶縁電気装置1を提供することができる。
【0050】
尚上記説明においては、金属板5を利用して低電界部となる凹部5a〜5cを形成した場合について説明したが、凹部の形成の方法は他の方法でも良く、例えば後述の実施の形態4で示すように、タンク3自体に上記形状係数αを満たした凹部を設けるようにしても良い。
【0051】
実施の形態2.
図8はこの発明の実施の形態2によるガス絶縁電気装置を示す拡大断面正面図である。本実施形態においては、複数の凹部と凸部が交互に並んだ形状に成形された金属板7の凹部に粘着層8b,8c,8dが設置され、更に金属板7の両端の凸部7a、7bの下部に位置する接地タンク3の内面に粘着層8a,8eが設置されているものである。
【0052】
以上のように構成することにより、図示しない高電圧導体2へのプレ印加により浮上と落下を繰り返しながら移動した金属異物は凹部における低電界部の粘着層8b,8c,8dに捕獲されるとともに、接地タンク3の内面を滑り落ちるように金属板7の両端に入り込んだ金属異物は両端の下に位置する粘着層8a,8eに捕獲される。
【0053】
従って、プレ印加以外にハンマーで叩きつけるような外的な機械振動を与えることによって接地タンク3の内面に沿って金属異物を滑り落とさせることによっても金属異物の捕獲が可能になり、且つ粘着層8a,8eが設置されている位置の電界は十分に低いため、粘着力の低下による金属異物の再浮上や金属異物先端で部分放電が発生することを抑制しつつ、確実に金属異物を捕獲することができる、絶縁信頼性の高いガス絶縁電気装置を提供することができる。
【0054】
実施の形態3.
図9はこの発明の実施の形態3によるガス絶縁電気装置を示す拡大断面正面図である。本実施形態においては、複数の凹部と凸部が交互に並んだ形状に成形された金属板7の凸部に絶縁層9a,9b,9c,9dが設けられ、凹部に粘着層8b,8c,8dが設置され、更に金属板7の両端の凸部の下部に位置する接地タンク3の内面に粘着層8a,8eが設置されているものである。
【0055】
以上のように構成することにより、図示しない高電圧導体2へのプレ印加により浮上と落下を繰り返しながら移動した金属異物が金属板7の凸部に落下した場合に、凸部には絶縁層が設けられているため金属板7からの電荷の移動は制限される。これによって金属異物が帯電することを抑制し、金属異物の静電気力が抑制されるため、金属異物が凸部に落下して跳ね上がったときの浮上高さを抑制して金属異物が高電圧導体2に到達することを防ぐことができる。したがって、プレ印加時に金属異物が高電圧導体2に達することによって発生する耐電圧性能の低下を防ぐことができるとともに、絶縁信頼性の高いガス絶縁電気装置を提供することができる。
【0056】
なお図9においては、絶縁層9a,9b,9c,9dを凸部にのみ設けた場合について説明したが、図10に示すように金属板7の上面全体に絶縁層10を施し、粘着層8b,8c,8dを絶縁層10の上に設置してもよい。
【0057】
実施の形態4.
図11はこの発明の実施の形態4によるガス絶縁電気装置を示す拡大断面正面図である。本実施形態においては、接地タンク3の底部に窪み部11が設けられるとともに、この窪み部11の底部に粘着層12が設けられているものである。この窪み部11はガス絶縁電気装置1の高電圧導体2の中心軸と同じ方向に形成された溝となるように構成されており、その幅dと深さhは実施の形態1で説明した形状係数α、βに基づいて設定されている。
【0058】
以上のように構成することにより、図示しない高電圧導体2へのプレ印加により浮上と落下を繰り返しながら移動した金属異物は窪み部11の底部に設けられた粘着層12に捕獲されるとともに、接地タンク3の内面を滑り落ちる金属異物も同じく窪み部11に落下して粘着層12に捕獲される。
【0059】
従って、プレ印加以外にハンマーで叩きつけるような外的な機械振動を与えることによって接地タンク3の内面に沿って金属異物を滑り落とさせることによっても金属異物を捕獲することが可能になり、且つ粘着層12が設置されている位置の電界は十分に低いため、粘着力の低下による金属異物の再浮上や金属異物先端での部分放電発生を抑制しつつ、確実に金属異物捕獲作業ができる、絶縁信頼性の高いガス絶縁電気装置を提供することができる。
【0060】
なお、図11においては、窪み部11の形状として高電圧導体2の中心軸と同じ方向に形成された溝形状となるように構成した場合について説明したが、形状係数α、βの上記条件を満たしていれば窪み部11の開口部の形状(図11の上方から見た形状)が例えば直径dの円形や一辺の寸法がdの正方形、及び高電圧導体2の中心軸と交差する方向に形成された溝などの形状であっても、上記と同様の効果を奏する。
【0061】
実施の形態5.
図12はこの発明の実施の形態5によるガス絶縁電気装置を示す斜視図であり、接地タンクの一部を断面で切り取った状態を示している。図13は図12に示されたガス絶縁電気装置を示す拡大正面一部断面図である。
【0062】
図において、接地タンク3の底面部に高電圧導体2の中心軸と同じ方向に金属丸棒13a,13b,13c,13d,13eが所定の間隔で配置されるとともに、接地タンク3と電気的に接続されている。これらの金属丸棒13a,13b,13c,13d,13eの間にできた凹部の底部には粘着層14b,14c,14d,14eが設置されるとともに、両端の金属丸棒13a,13eの外側には粘着層14a,14fが設置される。
【0063】
ここで、金属丸棒13a,13b,13c,13d,13eの直径と設置間隔は、図13に示すとおり直径がh、設置間隔がdとなるように設定されており、これによって形成される凹部の形状係数α、βは実施の形態1で示したように設定されている。尚金属角棒ではなく、金属丸棒を使うようにしたのは、角棒を使用すると角部に電界が集中する恐れがあるからである。
【0064】
以上のように構成することにより、高電圧導体2へのプレ印加により浮上と落下を繰り返しながら移動した金属異物は金属丸棒13a,13b,13c,13d,13e間で構成される凹部に設けられた粘着層14b,14c,14d,14eに捕獲されるとともに、接地タンク3の内面を滑り落ちる金属異物は粘着層14a,14fに捕獲される。
【0065】
従って、プレ印加以外にハンマーで叩きつけるような外的な機械振動を与えることによって接地タンク3の内面に沿って金属異物を滑り落とさせることによっても金属異物を捕獲することが可能になり、且つ粘着層14b,14c,14d,14eが設置されている位置の電界は十分に低く、また粘着層14a,14fが設置されている位置の電界も比較的低くなっているため、粘着力の低下による金属異物の再浮上や金属異物先端での部分放電発生を抑制しつつ、確実に金属異物捕獲作業ができる、絶縁信頼性の高いガス絶縁電気装置を提供することができる。
【0066】
又図14に示すように、接地タンク3の内面の一部に亘って粘着層15を設置すると共に、粘着層15の上に金属丸棒13a,13b,13c,13d,13eを載置するようにしても良い。また、図15に示すように金属丸棒13a,13b,13c,13d,13eの上面に絶縁層16a,16b,16c,16d,16eを設けるようにしてもよい。この構成により金属丸棒13a,13b,13c,13d,13eの上に落下した金属異物に金属丸棒13a,13b,13c,13d,13eから電荷が移動することを制限して金属異物の静電気力を抑制できるため、金属異物が跳ね上がるときの浮上高さを抑制することが出来る。したがってプレ印加時の絶縁性能低下を防ぐことが出来る。
【0067】
また、図16に示すように高電圧導体2に対向する面がなめらかな曲面になるように形成された金属棒17a〜17eを設置するとともに、金属棒17a〜17eの間及び金属棒17a、17eの外側に粘着層18a〜18fを設けるようにしても良い。このように高電圧導体2に対向する面がなめらかな曲面であれば金属棒に電界が集中することを抑制できるため、金属棒は必ずしも円断面である必要はない。
なお、図13〜図16においては、金属丸棒又は金属棒の設置方向として、高電圧導体2の中心軸と同じ方向に配置した場合について説明したが、中心軸と交差する方向、すなわち接地タンク3の内円周に沿って配置してもよい。
【0068】
実施の形態6.
図17はこの発明の実施の形態6によるガス絶縁電気装置を示す拡大正面一部断面図である。図において、高電圧導体2に対向する上面がなめらかな曲面になるように成形された金属板19a,19b,19cが接地タンク3の底面から所定の高さhになるように金属製の支持部材20a,20b,20cで固定されるとともに、接地タンク3と電気的にも接続されている。
【0069】
金属板19a,19b,19cの下部に位置する接地タンク3の内面には粘着層21が設置されている。ここで、これらの金属板19a,19b,19cの接地タンク3の底面からの高さがh、金属板19a,19b,19cの端部の間隔がdとなっており、金属板19a,19b,19c及びタンク3の内面によって形成される凹部の形状係数α、βは実施の形態1で示したものと同じ値に設定されている。
【0070】
以上のように構成することにより、高電圧導体2へのプレ印加により浮上と落下を繰り返しながら移動した金属異物は金属板19a,19b,19cで構成される凹部の底面に設置されている粘着層21に捕獲されるとともに、接地タンク3の内面を滑り落ちる金属異物も粘着層21に捕獲される。
【0071】
従って、プレ印加以外にハンマーで叩きつけるような外的な機械振動を与えることによって接地タンク3の内面に沿って金属異物を滑り落とさせることによっても金属異物の捕獲が可能になり、且つ粘着層21が設置されている位置の電界は十分に低くなっているため、粘着力の低下による金属異物の再浮上や金属異物先端で部分放電が発生することを抑制しつつ、確実に金属異物を捕獲することができるので、絶縁信頼性の高いガス絶縁電気装置を提供することができる。
【0072】
なお、金属板19a,19b,19cの上面に絶縁層をもうけることにより、金属板19a,19b,19c上に落下した金属異物の跳ね上がり高さを抑制して、プレ印加時の耐電圧性能低下を防ぐことが可能となる。
【0073】
実施の形態7.
図18はこの発明の実施の形態7によるガス絶縁電気装置を示す斜視図であり、接地タンクの一部を断面で切り取った状態を示している。本実施形態においては、接地タンク3の底面上に異物捕獲構造22が設置されているものである。異物捕獲構造22は開口部であるスリット24が設けられた金属板23と、金属板23の下部に位置する接地タンク3の内面に設置された粘着層25によって構成される。金属板23は接地タンク3の内面に沿って設置されると共に、金属板23は接地タンク3に対して熔接やボルト止めなどにより固定されており、両者は電気的に接続されているものである。
【0074】
以上のように構成することにより、高電圧導体2へのプレ印加により浮上と落下を繰り返しながら移動した金属異物はスリット24から落下して粘着層25に捕獲される。粘着層25が設置されている場所は金属板23と接地タンク3に囲まれていることにより低電界となっているため、粘着層25の劣化などによって粘着力が低下しても、金属異物が再浮上したり、あるいは金属異物先端で部分放電が発生することを抑制できるので、絶縁信頼性の高いガス絶縁電気装置を提供することができる。
【0075】
実施の形態8.
図19はこの発明の実施の形態8によるガス絶縁電気装置を示す斜視図であり、接地タンクの一部を断面で切り取った状態を示している。本実施形態においては、接地タンク3の底面上に異物捕獲構造26が設置されているものである。異物捕獲構造26は開口部である貫通穴28が設けられた金属板27と、金属板27の下部に位置する接地タンク3の内面に設置された粘着層29によって構成される。金属板27は接地タンク3の内面に沿って設置されると共に、金属板27は接地タンク3に対して熔接やボルト止めなどにより固定されており、両者は電気的に接続されているものである。
【0076】
以上のように構成することにより、高電圧導体2へのプレ印加により浮上と落下を繰り返しながら移動した金属異物は貫通穴28から落下して粘着層29に捕獲される。粘着層29が設置されている場所は金属板27と接地タンク3に囲まれていることにより低電界となっているため、粘着層29の劣化などによって粘着力が低下しても、金属異物が再浮上したり、あるいは金属異物先端で部分放電が発生することを抑制できるので、絶縁信頼性の高いガス絶縁電気装置を提供することができる。
【0077】
尚本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0078】
1 ガス絶縁開閉装置、2 高電圧導体、3 接地タンク、
5,19a〜19c 金属板、5a〜5c 凹部、6a〜6c 粘着層、
11 窪み部、12 粘着層、13a〜13e 金属棒。
【技術分野】
【0001】
この発明は、高電圧導体を接地タンク内に収納し、接地タンク内に絶縁ガスを充填することにより、高電圧導体と接地タンクを絶縁するようにしたガス絶縁電気装置に関するものであり、特に接地タンク内に侵入する異物を捕獲する構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からあるガス絶縁電気装置においては、高電圧導体を接地金属タンク内に収納し、このタンク内に絶縁ガスを充填することによって絶縁できるようにしていた。この場合ガス絶縁電気装置を組み立てたりする際において、タンク内に金属異物が侵入することがあり、高電圧導体に通電する際に発生する強電界により、金属異物は浮上して高電圧導体に付着したり、あるいは接近することにより、装置の耐電圧性能が低下することがある。そこで金属異物の浮上による耐電圧性能の低下を防ぐために、通常金属異物を捕獲するための構造がガス絶縁電気装置内に設置されている。
【0003】
従来のガス絶縁電気装置の金属異物を捕獲するための構造としては、金属容器の底部に凹形の開口部を形成し、この開口部及びその近傍に粘着性物質を塗布しており、この粘着性物質により金属異物を捕獲するものがあった(特許文献1参照)。
【0004】
また、高電圧導電部を内蔵するタンクの底部にタンクの軸方向と同じ方向に一本以上の金属棒を配置し、この金属棒の表面に絶縁被覆を施しており、この金属棒がタンクと接触する部分の低電界部分に粒子を捕獲するための粒子捕集器を設けたものもあった(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平05−091630号公報(2頁右28〜2頁右31行、図1)
【特許文献2】実開昭56−145313号公報(3頁14〜4頁4行、図5〜6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のガス絶縁電気装置は以上のように構成されているので、上記特許文献1に示されたガス絶縁電気装置においては、開口部における電界を決定する因子となる開口部の深さ及び開口部の幅と、金属異物の大きさとの関係が規定されておらず、開口部に捕獲された金属異物が位置する部分における電界の強度が、静電気力による金属異物の浮上を防ぐことが出来るほど十分に低くない場合も考えられ、粘着性物質が劣化して粘着力が低下したときに金属異物が浮上して高電圧導体に近づき、耐電圧性能を低下させるおそれがあるという問題点があった。
【0007】
また、上記特許文献2に示されたガス絶縁電気装置においては、金属棒とタンクとで構成された低電界部に捕獲された金属異物が、装置を運搬したり、あるいは動作させることによって発生する振動によって跳ね上がったり、あるいは動いたりして、電界の高い場所に移動することがあり、印加される電圧によって発生する静電気力で浮上し、耐電圧性能を低下させるという問題点があった。
【0008】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、ガス絶縁電気装置内の金属異物を確実に捕獲することができるとともに、仮に粘着材が劣化したり、あるいは装置の振動が生じても、捕獲した金属異物を再浮上させることなく、確実に捕獲し続けることのできるガス絶縁電気装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係るガス絶縁電気装置は、絶縁ガスが充填された接地タンクと、この接地タンク内に絶縁スペーサを介して設置された高電圧導体とからなるものであって、接地タンクの底部に金属異物が浮上しないような低電界部を形成するための凹部が設けられるとともに、更にこの凹部の低電界部にのみ粘着層が設けられ、凹部の幅をd、深さをh、金属異物の長さをL、α=(h−L)/dとしたとき、αが0.8以上となるように凹部を構成したのである。
【発明の効果】
【0010】
この発明に係るガス絶縁電気装置によれば、絶縁ガスが充填された接地タンクと、この接地タンク内に絶縁スペーサを介して設置された高電圧導体とからなるものであって、接地タンクの底部に金属異物が浮上しないような低電界部を形成するための凹部が設けられるとともに、更にこの凹部の低電界部にのみ粘着層が設けられ、凹部の幅をd、深さをh、金属異物の長さをL、α=(h−L)/dとしたとき、αが0.8以上となるように凹部を構成したので、金属異物は静電気力で浮上しない低い電界の位置にあるため金属異物は浮上することなく、更に金属異物は粘着層の捕獲力により確実に捕獲されるとともに、粘着層が劣化し粘着力が低下しても金属異物は低電界部において捕獲することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施の形態1によるガス絶縁電気装置を示す斜視図である。
【図2】ガス絶縁電気装置の底部を示す拡大正面一部断面図である。
【図3】タンク底面電界と最大浮上高さとの関係を示す線図である。
【図4】異物の長さと浮上電界との関係を示す線図である。
【図5】金属板凹部の形状係数と凹部底部の電界との関係を示す線図である。
【図6】金属板凹部の形状を示す断面図である。
【図7】金属板凹部形状とその電界分布、および異物が入った状態を示す断面図である。
【図8】この発明の実施の形態2によるガス絶縁電気装置を示す拡大正面一部断面図である。
【図9】この発明の実施の形態3によるガス絶縁電気装置を示す拡大正面一部断面図である。
【図10】この発明の実施の形態3によるガス絶縁電気装置を示す拡大正面一部断面図である。
【図11】この発明の実施の形態4によるガス絶縁電気装置を示す拡大正面一部断面図である。
【図12】この発明の実施の形態5によるガス絶縁電気装置を示す斜視図である。
【図13】この発明の実施の形態5によるガス絶縁電気装置を示す拡大正面一部断面図である。
【図14】この発明の実施の形態5によるガス絶縁電気装置を示す拡大正面一部断面図である。
【図15】この発明の実施の形態5によるガス絶縁電気装置を示す拡大正面一部断面図である。
【図16】この発明の実施の形態5によるガス絶縁電気装置を示す拡大正面一部断面図である。
【図17】この発明の実施の形態6によるガス絶縁電気装置を示す拡大正面一部断面図である。
【図18】この発明の実施の形態7によるガス絶縁電気装置を示す斜視図である。
【図19】この発明の実施の形態8によるガス絶縁電気装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
以下この発明の一実施形態を図に基づいて説明する。図1はこの発明の実施の形態1によるガス絶縁電気装置を示す斜視図であり、接地タンクの一部を断面で切り取った状態を示している。図2は図1に示されたガス絶縁電気装置の底部を示す拡大正面一部断面図であり、金属異物捕獲構造を示している。
【0013】
図において、本発明によるガス絶縁電気装置1においては、筒状の接地タンク3の中に絶縁ガスが充填されており、接地タンク3の中心軸に沿って高電圧導体2が配置されている。この高電圧導体2は絶縁性の部材から構成される図示しない絶縁スペーサによって接地タンク3に支持されている。
【0014】
接地タンク3内に充填される絶縁ガスとしては、SF6、乾燥空気、窒素、二酸化炭素等が使用されるが、絶縁ガスの絶縁性能を高めるとともに、ガス絶縁電気装置1全体をコンパクトに構成するため、一般に絶縁ガスの圧力を大気圧より高く設定して接地タンク3内に封止される。
【0015】
接地タンク3の底面部には異物捕獲構造4が設置され、異物捕獲構造4は接地タンク3と溶接やボルト締めにより固定されることにより、接地タンク3と電気的に接続されている。異物捕獲構造4は複数の凹部と凸部が交互に並んだ形状の金属板5と、金属板5の凹部5a、5b、5cに形成された低電界部にのみ設置された粘着層6a、6b、6cから構成され、少なくとも金属板5の凸部5e〜5hの面は滑らかな曲面になるように形成されている。尚図2においては、金属板5は波形に滑らかになるように形成した例を示しているが、凹部と凸部が交互に並んだ形状であれば、全てが滑らかな形状である必要はない。
【0016】
ここで、金属板5の凹部の幅をd(mm)、深さをh(mm)とする。また、図示していない捕捉するための最大異物の長さはL(mm)とする。金属板5において、凹部の形状を規定する尺度のひとつとして形状係数α=(h−L)/dを定義したとき、本実施形態においては、金属板5の形状係数αが、L=3mmのときα≧0.8となり、L=6mmのときα≧1.0となるように金属板5を形成するものである。α≧0.8又はα≧1.0となるように設定する理由については後述する。
【0017】
次に異物捕獲構造4の動作について説明する。高電圧導体2に電圧が印加されると、接地タンク3の内面における電界が高くなる。このとき金属異物が接地タンク3内に混入していると、金属異物が電界の作用により帯電し、接地タンク3の内面から浮上する方向に静電気力を受ける。静電気力が金属異物の重量による重力よりも大きくなると金属異物は浮上し、高電圧導体2に向かって移動を始める。
【0018】
一般に高電圧導体2における電界の方が、接地タンク3の底面における電界よりも高いため、金属異物が高電圧導体2に近づいたり接触したりすると、高電圧導体2の耐電圧性能が低下することになる。金属異物の形状が線状のときにその先端部に電界が集中するため、耐電圧性能に最も大きな影響を及ぼす金属異物の形状は線状のときである。このような線状の金属異物が高電圧導体2に向かって浮上するほど十分大きな静電気力が発生していなくても、たとえば機械的振動等をきっかけに線状の金属異物が起立すると、静電気力により起立状態が継続することがある。そして線状の金属異物が起立すると、金属異物先端の電界が局部的に大きくなって、耐電圧性能が低下してしまう。
【0019】
これに対して、本発明による異物捕獲構造4においては、金属板5の凹部5a、5b、5cであって、低電界部にのみ粘着層6a,6b,6cが設置されており、金属異物は凹部5a、5b、5cの低電界部に入ると粘着層6a,6b,6cにより捕獲されるため、跳ね返るなどして再度浮上することはない。また凹部5a、5b、5c内における電界の強さは、異物捕獲構造4が設置されていない接地タンク3の他の底面部の電界の強さよりも小さくなっており、一旦凹部5a、5b、5cに入った金属異物が再度浮上するだけの静電気力を受けにくくなっている。
【0020】
凹部5a、5b、5cの電界の強さは、凹部5a、5b、5cの幅や深さを調節することにより、異物捕獲構造4が設置されていない接地タンク3の他の底面の電界の強さの数分の1〜10数分の1、またはそれ以下にすることが可能である。
【0021】
以上のような異物捕獲構造4の効果を発揮させるためには、ガス絶縁電気装置1を運転させる前に高電圧導体2への印加電圧を徐々に上昇させるいわゆるプレ印加を実施すればよい。このようにすることにより、金属異物は静電気力で浮上・落下を繰り返しながら接地タンク3の下方に設置された異物捕獲構造4が作り出す低電界部へ徐々に導かれるようになる。またその他にも機械的振動を与えることにより、金属異物そのものの重力によって金属異物を下方に移動させることが可能となる。
【0022】
次に形状係数αがα≧0.8またはα≧1.0となるように設定する理由について説明する。タンク3の底面の電界は、ガス絶縁電気装置1の運転中に金属異物が静電気力で浮上しないような電界になるように設計する必要がある。タンク底面の電界と金属異物の浮上との関係、及び高電圧導体2への到達との関係については、例えば図3に示されるような関係となる。
【0023】
図3は金属異物の長さが3mm、径が0.2mmのアルミ線の場合のタンク底面電界(kVrms/mm)と最大浮上高さ(mm)との関係を示すものであり、実線はタンク内壁が金属のみで構成されている場合を示すとともに、点線はタンク内壁にフタル酸系樹脂をコーティングした場合を示している。
【0024】
図において、タンク内壁が金属のみで形成されている場合は、タンク底面電界が0.4kVrms/mmで金属異物は既に浮上しており、1.0kVrms/mmで高電圧導体2に到達する。一方、タンク内壁をフタル酸系樹脂でコーティングした場合は0.7kVrms/mmで金属異物は浮上しており、1.3kVrms/mmで高電圧導体2に到達する。
【0025】
このように、長さ3mmのアルミ線異物を想定した場合、タンク内壁が金属のみの場合、またはフタル酸系樹脂でコーティングされた場合のタンク設計電界の上限はおおよそ1kVrms/mmであり、これを超えるとアルミ線異物は高電圧導体2に到達して絶縁破壊が生じる恐れが生じる。
【0026】
また、3mmより長いアルミ線異物が混入していた場合は、1kVrms/mm以下の電界でもアルミ線異物が高電圧導体2に到達して絶縁破壊が生じるおそれがある。仮にタンク中に混入する可能性のある金属異物のサイズとして最大3mmを想定すると、タンク設計電界の上限は上述のように大凡1kVrms/mmである。
【0027】
一方、金属表面に直立した状態の線状金属異物が浮上するための電界Eは、金属異物の形状を半回転楕円体と想定した場合、以下の式(1)で理論的に計算することが出来る。
浮上電界E={ln(2L/r)−1}[2ρr2g/(3ε0L{ln(L/r)−0.5})]0.5・・・・(1)
ここで、r,L,ρはそれぞれ金属異物の半径、長さ、密度、gは重力加速度、ε0は真空の誘電率である。図4は式(1)を基に半径rが0.2mmのアルミの線状異物について、異物の長さLと浮上電界Eとの関係を示す図である。
【0028】
長さLが3mmの金属異物の理論的な浮上電界Eは約0.1kVrms/mm、長さ6mmの場合は約0.08kVrms/mmであり、金属異物の長さが長くなるに従い浮上電界Eは低下する。そのため異物捕獲構造4で確実に金属異物を捕獲するためには、タンク3内に存在する金属異物の最大長さが例えば3mmの場合は0.1kVrms/mm以下、6mmの場合は0.08kVrms/mm以下の領域に金属異物が入るように金属板5の形状及び寸法を設定することが必要となってくる。
【0029】
次に金属板5の凹部5a、5b、5cにおける電界分布について説明する。図5の曲線(a)はタンク3の底面の電界が1kVrms/mmの底面に異物捕獲構造4を設置した場合、金属板5の形状係数βとして、β=h/dを定義したときの、βと金属板5の凹部底部の電界との関係を電界解析により求めた結果を示す線図である。
【0030】
このような金属板凹部の電界分布の特徴をもとに、金属板凹部が備えるべき形状について説明する。例えば、最大異物の長さが3mmの場合、図4に示すように、金属板凹部の底面の電界は0.1kVrms/mm以下にする必要があるが、ここで仮に凹部の深さをh1、幅をd、凹部の底面電界を0.1kVrms/mmの金属板5を考えると、その形状係数β1は図5で明らかになったように、β1=h1/d=0.8となるように決定される。
【0031】
ところが、金属異物自体は最大3mmの長さを有しており、金属異物の全体が理論上の浮上電界である0.1kVrms/mm以下の領域に入ることにより、静電気力による金属異物の浮上力を充分弱めることができる。従って凹部の深さhとして、金属異物の長さ3mmを考慮してh≧h1+3(mm)が必要となる。つまりh1≦h−3なので、この式にh1/d=0.8を変形したh1=0.8dを代入して整理し、あらためて形状係数αとして定義すると、α=(h−3)/d≧0.8と表される。
【0032】
この条件を満たす金属板5の凹部形状とその電界分布、および金属異物Xが入った状態を図7に示す。同様に、金属異物の最大の長さが6mmの場合は、図4に示すように、金属異物全体にわたって0.08kVrms/mm以下にする必要があるので、図5に示すように0.08kVrms/mm以下にするためには、形状係数βを1.0以上にする必要があり、3mmの場合と同様に計算して、形状係数α=(h−6)/d≧1.0とする必要がある。
【0033】
あとは、凹部の深さhか幅dのいずれかを決めると必要な他方の寸法が自動的に決定する。なお金属異物の最大の長さが上記以外であっても同様の方法によって必要な形状係数が求められる。実用上は、タンク3に混入する金属異物の大きさの最大値はここで述べた3〜6mm程度であり、これ以上の大きな金属異物は製造工程で除去されるとともに、これ以下の金属異物は装置の性能に影響を与えないため、形状係数αは、例えばL=3mmのときは、α=(h−L)/d≧0.8、L=6mmのときは、α=(h−L)/d≧1.0となるように製作すればおおよそ充分である。
【0034】
又静電気力に関していえば、例えば球形などの他の形状の金属異物に比べると、起立した状態の線状の金属異物の方が発生する静電気力は大きいものであり、さらに金属異物の金属種としては、混入する可能性のある金属異物としてアルミが最も軽量であるので、線状のアルミ製金属異物を考慮しておけば、ほぼ全ての他の金属異物に対しても有効な異物捕獲構造が構成できる。
【0035】
以上のように金属板5の凹部の形状係数αをタンク3内に混入する金属異物の大きさに従って定義することにより、狙った大きさの金属異物に作用する静電気力を十分に低減することが出来るため、凹部による電界低減効果のみでも金属異物を確実に捕獲しておくことができるようになる。
【0036】
なお、凹部の電界低減効果だけで金属異物を確実に捕獲しておくためには、以上に述べたように捕獲すべき金属異物の最大の長さに従った形状係数αを満足するように凹部を構成して、金属異物全体が理論上の浮上電界以下の位置に位置するようにすることが必要となるが、必ずしも金属異物全体が理論上の浮上電界以下の位置に位置していなくても良いようにすることもできる。
【0037】
つまり凹部底部付近だけが理論上の浮上電界以下になっているだけでも、粘着層6a〜6cを設けることにより、金属異物を確実に捕獲しておくことが出来る。すなわち、この場合には凹部底部の電界のみを0.1kVrms/mm以下にすればよいので、例えば金属異物の長さが3mmであれば、β=h/d≧0.8となるように凹部を形成すればよく、α=(h−3)/d≧0.8となるように凹部を形成する必要はない。
【0038】
以上のように金属板5の凹部の形状係数を、例えば金属異物の長さが3mmであれば、β=h/d≧0.8となるように構成するとともに、又金属異物の長さが6mmであれば、β=h/d≧1.0となるように構成し、更に粘着層6a〜6cを設置することにより、金属異物に発生する静電気力を十分に低減し、更に金属異物を確実に捕獲しておくことができる異物捕獲構造を構成することができる。
【0039】
上記においては、タンク3の底面の電界及び金属異物の長さを考慮して凹部の形状を決定する場合について説明したが、以下においては、金属板の加工の効率性及び金属異物の捕獲能力という観点より凹部の形状をどのように決定するかについて説明する。図5の曲線(b)は、図6に示すような形状係数β=3の金属板凹部をタンク底面の電界が1kVrms/mmであるタンク3の底面に設置した場合、金属板5の凸部頂部からの凹部の深さをhiとしたとき、γ=hi/dと深さhiにおける電界との関係を示した線図である。図5に示すように、電界が0.1kVrms/mm以下の領域、すなわち形状係数β≧0.8の領域では曲線(a)と曲線(b)はほぼ重なる。つまり、電界が0.1kVrms/mm以下の領域では、図6に示されるような金属板5の凹部の任意の深さhiにおける電界は、幅がdであり、深さhがhiであるように形成された金属板5の凹部の底部における電界とほぼ同じであることがわかる。
【0040】
即ち凹部の底部における電界を0.1kVrms/mm以下にしようとすれば、例えば図6の例で説明するとβ=0.8となるように形成された金属板を設けても、あるいはβ=3となるように形成された金属板5を設けても同様に0.1kVrms/mm以下にすることができる。従ってβ=0.8となるように金属板5を形成した方が金属板5の大きさ自体も小さくて済むとともに、加工が容易となり効率的といえる。又図5により、本願発明による異物捕獲構造4を設けない場合にはタンク3の底面の電界が1kVrms/mmであるのに対し、異物捕獲構造4を設け、β=0.8となるように設計すると凹部の底部における電界は0.1kVrms/mmとなっており、電界は1/10になり、大きな電界低減効果が効率的に得られることとなる。尚上記説明ではタンク3の底面の電界が1kVrms/mmの場合について説明したが、タンク3の底面の電界が他の値であっても凹部の底部における電界はタンク3の底面の電界よりかなり低くなり、金属異物を捕獲することができる。以上によりタンク3の底面の電界如何にかかわらず、β≧0.8となるように構成すれば金属異物を確実に捕獲できる。又上記で示したように、金属異物の長さLを考慮した場合には、α≧0.8となるように凹部を形成すればよい。
【0041】
次に金属板5による凹部5a〜5cを形成することにより低電界部構造を構成するとともに、更にこの低電界部にのみ粘着層6a〜6cを設ける理由とその効果について説明する。工場で組み立てられたガス絶縁電気装置1は、絶縁性の良否を確認するために耐電圧試験が行われる。このとき金属異物がタンク3内に混入した状態で試験電圧を印加すると、前述の通り金属異物が浮上して高電圧導体2に達し、耐電圧性能が低下する恐れがある。
【0042】
そのため、試験電圧を印加する前に高電圧導体2への印加電圧を徐々に上昇させるいわゆるプレ印加を実施する。このようにすることにより、金属異物は静電気力で浮上・落下を繰り返しながら接地タンク3の下方に設置された異物捕獲構造4が作り出す低電界部へ徐々に導かれ、静電気力を低減されると共に、更に粘着層6a〜6cによる捕獲力により金属異物は確実に捕獲される。
【0043】
またその他にも機械的振動を与えることにより、金属異物そのものの重力によって金属異物を下方に移動させ、異物捕獲構造4に捕獲される。異物捕獲構造4により捕獲された金属異物は高電圧導体2に試験電圧を印加しても異物捕獲構造4の低電界部に固定されたままとなり、耐電圧試験において耐電圧性能を低下させることはない。耐電圧試験を含めひととおりの試験を実施されたガス絶縁電気装置1は、陸上や海上を輸送され、現地に据え付けられる。
【0044】
現地でも耐電圧試験等を行うことにより、性能に問題がないことを確認した後、運転が開始される。ここで、異物捕獲構造4に粘着層6a〜6cを設けず、低電界部を設けることによる静電気力低減効果によってのみ金属異物を捕獲する場合、輸送中の振動や傾き、場合によっては天災などによって、工場での試験時にプレ印加によって捕獲した金属異物が異物捕獲構造4の外に移動してしまう可能性がある。
【0045】
そのため、現地での据え付け後に再びプレ印加を実施して再度金属異物を異物捕獲構造4に捕獲する必要が生じる。これに対して低電界部に粘着層6a〜6cを設けておくと、工場からの出荷から現地での据え付けまでの間に金属異物が異物捕獲構造4の外に移動することなく確実に捕獲しておけるため、現地でのプレ印加作業を省略もしくは簡略化することが可能となる。
【0046】
また一方で、金属異物捕獲を接地タンク3の底面に設けた粘着層のみによって行った場合、工場出荷から現地据え付けまでの輸送中に粘着層が設置されていない場所に金属異物が移動することはないが、ガス絶縁電気装置1を長期間運転している間に粘着層が劣化して粘着力が低下すると、金属異物が静電気力によって浮上する恐れがある。さらに、例えば線状金属異物が直立した状態で粘着層に捕獲されていたりすると、その線状金属異物の先端の電界が高くなるため、耐電圧試験時に耐電圧性能が低下したり、運転中に部分放電が発生して長期的な絶縁信頼性が低下したりする恐れがある。
【0047】
これに対して本実施形態のように、低電界による静電気力低減効果のみによっても金属異物の浮上を抑制できるように凹部5a〜5cを形成した異物捕獲構造4において、更にこれら凹部5a〜5cの低電界部にのみに粘着層6a〜6cを設けることにより、粘着層6a〜6cの粘着力が運転中の経年変化により、または何らかの要因で低下したり失われたりした場合でも、金属異物は低電界部に確実に捕獲することができるため、再浮上して絶縁性能を低下させるようなことはない。
【0048】
さらに、本実施形態のような形状係数αを考慮した凹部5a〜5cを形成することにより、もし線状金属異物が直立したまま粘着層6a〜6cに固定されても、異物捕獲構造4における凹部5a〜5cは十分低電界であるために、金属異物の先端で電界が集中することを抑制でき、耐電圧性能を低下させたり部分放電が発生したりすることを防ぐことができる。
【0049】
以上に述べたように、ガス絶縁電気装置1の接地タンク3の底部に本実施形態のような形状係数αを考慮した凹部5a〜5cを設置し、且つこの凹部5a〜5cの低電界部にのみ粘着層6a〜6cを設けることにより、凹部のみを設けた場合、もしくは粘着層のみを設けた場合と比較して格段に絶縁信頼性の高いガス絶縁電気装置1を提供することができる。
【0050】
尚上記説明においては、金属板5を利用して低電界部となる凹部5a〜5cを形成した場合について説明したが、凹部の形成の方法は他の方法でも良く、例えば後述の実施の形態4で示すように、タンク3自体に上記形状係数αを満たした凹部を設けるようにしても良い。
【0051】
実施の形態2.
図8はこの発明の実施の形態2によるガス絶縁電気装置を示す拡大断面正面図である。本実施形態においては、複数の凹部と凸部が交互に並んだ形状に成形された金属板7の凹部に粘着層8b,8c,8dが設置され、更に金属板7の両端の凸部7a、7bの下部に位置する接地タンク3の内面に粘着層8a,8eが設置されているものである。
【0052】
以上のように構成することにより、図示しない高電圧導体2へのプレ印加により浮上と落下を繰り返しながら移動した金属異物は凹部における低電界部の粘着層8b,8c,8dに捕獲されるとともに、接地タンク3の内面を滑り落ちるように金属板7の両端に入り込んだ金属異物は両端の下に位置する粘着層8a,8eに捕獲される。
【0053】
従って、プレ印加以外にハンマーで叩きつけるような外的な機械振動を与えることによって接地タンク3の内面に沿って金属異物を滑り落とさせることによっても金属異物の捕獲が可能になり、且つ粘着層8a,8eが設置されている位置の電界は十分に低いため、粘着力の低下による金属異物の再浮上や金属異物先端で部分放電が発生することを抑制しつつ、確実に金属異物を捕獲することができる、絶縁信頼性の高いガス絶縁電気装置を提供することができる。
【0054】
実施の形態3.
図9はこの発明の実施の形態3によるガス絶縁電気装置を示す拡大断面正面図である。本実施形態においては、複数の凹部と凸部が交互に並んだ形状に成形された金属板7の凸部に絶縁層9a,9b,9c,9dが設けられ、凹部に粘着層8b,8c,8dが設置され、更に金属板7の両端の凸部の下部に位置する接地タンク3の内面に粘着層8a,8eが設置されているものである。
【0055】
以上のように構成することにより、図示しない高電圧導体2へのプレ印加により浮上と落下を繰り返しながら移動した金属異物が金属板7の凸部に落下した場合に、凸部には絶縁層が設けられているため金属板7からの電荷の移動は制限される。これによって金属異物が帯電することを抑制し、金属異物の静電気力が抑制されるため、金属異物が凸部に落下して跳ね上がったときの浮上高さを抑制して金属異物が高電圧導体2に到達することを防ぐことができる。したがって、プレ印加時に金属異物が高電圧導体2に達することによって発生する耐電圧性能の低下を防ぐことができるとともに、絶縁信頼性の高いガス絶縁電気装置を提供することができる。
【0056】
なお図9においては、絶縁層9a,9b,9c,9dを凸部にのみ設けた場合について説明したが、図10に示すように金属板7の上面全体に絶縁層10を施し、粘着層8b,8c,8dを絶縁層10の上に設置してもよい。
【0057】
実施の形態4.
図11はこの発明の実施の形態4によるガス絶縁電気装置を示す拡大断面正面図である。本実施形態においては、接地タンク3の底部に窪み部11が設けられるとともに、この窪み部11の底部に粘着層12が設けられているものである。この窪み部11はガス絶縁電気装置1の高電圧導体2の中心軸と同じ方向に形成された溝となるように構成されており、その幅dと深さhは実施の形態1で説明した形状係数α、βに基づいて設定されている。
【0058】
以上のように構成することにより、図示しない高電圧導体2へのプレ印加により浮上と落下を繰り返しながら移動した金属異物は窪み部11の底部に設けられた粘着層12に捕獲されるとともに、接地タンク3の内面を滑り落ちる金属異物も同じく窪み部11に落下して粘着層12に捕獲される。
【0059】
従って、プレ印加以外にハンマーで叩きつけるような外的な機械振動を与えることによって接地タンク3の内面に沿って金属異物を滑り落とさせることによっても金属異物を捕獲することが可能になり、且つ粘着層12が設置されている位置の電界は十分に低いため、粘着力の低下による金属異物の再浮上や金属異物先端での部分放電発生を抑制しつつ、確実に金属異物捕獲作業ができる、絶縁信頼性の高いガス絶縁電気装置を提供することができる。
【0060】
なお、図11においては、窪み部11の形状として高電圧導体2の中心軸と同じ方向に形成された溝形状となるように構成した場合について説明したが、形状係数α、βの上記条件を満たしていれば窪み部11の開口部の形状(図11の上方から見た形状)が例えば直径dの円形や一辺の寸法がdの正方形、及び高電圧導体2の中心軸と交差する方向に形成された溝などの形状であっても、上記と同様の効果を奏する。
【0061】
実施の形態5.
図12はこの発明の実施の形態5によるガス絶縁電気装置を示す斜視図であり、接地タンクの一部を断面で切り取った状態を示している。図13は図12に示されたガス絶縁電気装置を示す拡大正面一部断面図である。
【0062】
図において、接地タンク3の底面部に高電圧導体2の中心軸と同じ方向に金属丸棒13a,13b,13c,13d,13eが所定の間隔で配置されるとともに、接地タンク3と電気的に接続されている。これらの金属丸棒13a,13b,13c,13d,13eの間にできた凹部の底部には粘着層14b,14c,14d,14eが設置されるとともに、両端の金属丸棒13a,13eの外側には粘着層14a,14fが設置される。
【0063】
ここで、金属丸棒13a,13b,13c,13d,13eの直径と設置間隔は、図13に示すとおり直径がh、設置間隔がdとなるように設定されており、これによって形成される凹部の形状係数α、βは実施の形態1で示したように設定されている。尚金属角棒ではなく、金属丸棒を使うようにしたのは、角棒を使用すると角部に電界が集中する恐れがあるからである。
【0064】
以上のように構成することにより、高電圧導体2へのプレ印加により浮上と落下を繰り返しながら移動した金属異物は金属丸棒13a,13b,13c,13d,13e間で構成される凹部に設けられた粘着層14b,14c,14d,14eに捕獲されるとともに、接地タンク3の内面を滑り落ちる金属異物は粘着層14a,14fに捕獲される。
【0065】
従って、プレ印加以外にハンマーで叩きつけるような外的な機械振動を与えることによって接地タンク3の内面に沿って金属異物を滑り落とさせることによっても金属異物を捕獲することが可能になり、且つ粘着層14b,14c,14d,14eが設置されている位置の電界は十分に低く、また粘着層14a,14fが設置されている位置の電界も比較的低くなっているため、粘着力の低下による金属異物の再浮上や金属異物先端での部分放電発生を抑制しつつ、確実に金属異物捕獲作業ができる、絶縁信頼性の高いガス絶縁電気装置を提供することができる。
【0066】
又図14に示すように、接地タンク3の内面の一部に亘って粘着層15を設置すると共に、粘着層15の上に金属丸棒13a,13b,13c,13d,13eを載置するようにしても良い。また、図15に示すように金属丸棒13a,13b,13c,13d,13eの上面に絶縁層16a,16b,16c,16d,16eを設けるようにしてもよい。この構成により金属丸棒13a,13b,13c,13d,13eの上に落下した金属異物に金属丸棒13a,13b,13c,13d,13eから電荷が移動することを制限して金属異物の静電気力を抑制できるため、金属異物が跳ね上がるときの浮上高さを抑制することが出来る。したがってプレ印加時の絶縁性能低下を防ぐことが出来る。
【0067】
また、図16に示すように高電圧導体2に対向する面がなめらかな曲面になるように形成された金属棒17a〜17eを設置するとともに、金属棒17a〜17eの間及び金属棒17a、17eの外側に粘着層18a〜18fを設けるようにしても良い。このように高電圧導体2に対向する面がなめらかな曲面であれば金属棒に電界が集中することを抑制できるため、金属棒は必ずしも円断面である必要はない。
なお、図13〜図16においては、金属丸棒又は金属棒の設置方向として、高電圧導体2の中心軸と同じ方向に配置した場合について説明したが、中心軸と交差する方向、すなわち接地タンク3の内円周に沿って配置してもよい。
【0068】
実施の形態6.
図17はこの発明の実施の形態6によるガス絶縁電気装置を示す拡大正面一部断面図である。図において、高電圧導体2に対向する上面がなめらかな曲面になるように成形された金属板19a,19b,19cが接地タンク3の底面から所定の高さhになるように金属製の支持部材20a,20b,20cで固定されるとともに、接地タンク3と電気的にも接続されている。
【0069】
金属板19a,19b,19cの下部に位置する接地タンク3の内面には粘着層21が設置されている。ここで、これらの金属板19a,19b,19cの接地タンク3の底面からの高さがh、金属板19a,19b,19cの端部の間隔がdとなっており、金属板19a,19b,19c及びタンク3の内面によって形成される凹部の形状係数α、βは実施の形態1で示したものと同じ値に設定されている。
【0070】
以上のように構成することにより、高電圧導体2へのプレ印加により浮上と落下を繰り返しながら移動した金属異物は金属板19a,19b,19cで構成される凹部の底面に設置されている粘着層21に捕獲されるとともに、接地タンク3の内面を滑り落ちる金属異物も粘着層21に捕獲される。
【0071】
従って、プレ印加以外にハンマーで叩きつけるような外的な機械振動を与えることによって接地タンク3の内面に沿って金属異物を滑り落とさせることによっても金属異物の捕獲が可能になり、且つ粘着層21が設置されている位置の電界は十分に低くなっているため、粘着力の低下による金属異物の再浮上や金属異物先端で部分放電が発生することを抑制しつつ、確実に金属異物を捕獲することができるので、絶縁信頼性の高いガス絶縁電気装置を提供することができる。
【0072】
なお、金属板19a,19b,19cの上面に絶縁層をもうけることにより、金属板19a,19b,19c上に落下した金属異物の跳ね上がり高さを抑制して、プレ印加時の耐電圧性能低下を防ぐことが可能となる。
【0073】
実施の形態7.
図18はこの発明の実施の形態7によるガス絶縁電気装置を示す斜視図であり、接地タンクの一部を断面で切り取った状態を示している。本実施形態においては、接地タンク3の底面上に異物捕獲構造22が設置されているものである。異物捕獲構造22は開口部であるスリット24が設けられた金属板23と、金属板23の下部に位置する接地タンク3の内面に設置された粘着層25によって構成される。金属板23は接地タンク3の内面に沿って設置されると共に、金属板23は接地タンク3に対して熔接やボルト止めなどにより固定されており、両者は電気的に接続されているものである。
【0074】
以上のように構成することにより、高電圧導体2へのプレ印加により浮上と落下を繰り返しながら移動した金属異物はスリット24から落下して粘着層25に捕獲される。粘着層25が設置されている場所は金属板23と接地タンク3に囲まれていることにより低電界となっているため、粘着層25の劣化などによって粘着力が低下しても、金属異物が再浮上したり、あるいは金属異物先端で部分放電が発生することを抑制できるので、絶縁信頼性の高いガス絶縁電気装置を提供することができる。
【0075】
実施の形態8.
図19はこの発明の実施の形態8によるガス絶縁電気装置を示す斜視図であり、接地タンクの一部を断面で切り取った状態を示している。本実施形態においては、接地タンク3の底面上に異物捕獲構造26が設置されているものである。異物捕獲構造26は開口部である貫通穴28が設けられた金属板27と、金属板27の下部に位置する接地タンク3の内面に設置された粘着層29によって構成される。金属板27は接地タンク3の内面に沿って設置されると共に、金属板27は接地タンク3に対して熔接やボルト止めなどにより固定されており、両者は電気的に接続されているものである。
【0076】
以上のように構成することにより、高電圧導体2へのプレ印加により浮上と落下を繰り返しながら移動した金属異物は貫通穴28から落下して粘着層29に捕獲される。粘着層29が設置されている場所は金属板27と接地タンク3に囲まれていることにより低電界となっているため、粘着層29の劣化などによって粘着力が低下しても、金属異物が再浮上したり、あるいは金属異物先端で部分放電が発生することを抑制できるので、絶縁信頼性の高いガス絶縁電気装置を提供することができる。
【0077】
尚本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0078】
1 ガス絶縁開閉装置、2 高電圧導体、3 接地タンク、
5,19a〜19c 金属板、5a〜5c 凹部、6a〜6c 粘着層、
11 窪み部、12 粘着層、13a〜13e 金属棒。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁ガスが充填された接地タンクと、この接地タンク内に絶縁スペーサを介して設置された高電圧導体とからなるガス絶縁電気装置において、上記接地タンクの底部に金属異物が浮上しないような低電界部を形成するための凹部が設けられるとともに、更にこの凹部の低電界部にのみ粘着層が設けられ、上記凹部の幅をd、深さをh、金属異物の長さをL、α=(h−L)/dとしたとき、αが0.8以上となるように上記凹部を構成したことを特徴とするガス絶縁電気装置。
【請求項2】
上記凹部を金属板によって形成したことを特徴とする請求項1に記載のガス絶縁電気装置。
【請求項3】
上記凹部を上記接地タンクの底部に設けられた窪み部によって形成したことを特徴とする請求項1に記載のガス絶縁電気装置。
【請求項4】
上記凹部を上記接地タンク内に設置された複数本の金属棒と上記接地タンクの内壁とで構成したことを特徴とする請求項1に記載のガス絶縁電気装置。
【請求項5】
上記凹部を、上記接地タンクの底部から所定の高さに設置されるとともに上面が滑らかな曲面になるように形成された金属板と、上記接地タンクの内壁とで構成したことを特徴とする請求項1に記載のガス絶縁電気装置。
【請求項1】
絶縁ガスが充填された接地タンクと、この接地タンク内に絶縁スペーサを介して設置された高電圧導体とからなるガス絶縁電気装置において、上記接地タンクの底部に金属異物が浮上しないような低電界部を形成するための凹部が設けられるとともに、更にこの凹部の低電界部にのみ粘着層が設けられ、上記凹部の幅をd、深さをh、金属異物の長さをL、α=(h−L)/dとしたとき、αが0.8以上となるように上記凹部を構成したことを特徴とするガス絶縁電気装置。
【請求項2】
上記凹部を金属板によって形成したことを特徴とする請求項1に記載のガス絶縁電気装置。
【請求項3】
上記凹部を上記接地タンクの底部に設けられた窪み部によって形成したことを特徴とする請求項1に記載のガス絶縁電気装置。
【請求項4】
上記凹部を上記接地タンク内に設置された複数本の金属棒と上記接地タンクの内壁とで構成したことを特徴とする請求項1に記載のガス絶縁電気装置。
【請求項5】
上記凹部を、上記接地タンクの底部から所定の高さに設置されるとともに上面が滑らかな曲面になるように形成された金属板と、上記接地タンクの内壁とで構成したことを特徴とする請求項1に記載のガス絶縁電気装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2012−210152(P2012−210152A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−172435(P2012−172435)
【出願日】平成24年8月3日(2012.8.3)
【分割の表示】特願2008−116854(P2008−116854)の分割
【原出願日】平成20年4月28日(2008.4.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年8月3日(2012.8.3)
【分割の表示】特願2008−116854(P2008−116854)の分割
【原出願日】平成20年4月28日(2008.4.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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