説明

ガス配管の破孔検知方法、塗装材

【課題】ガス配管の破孔を早期に検知する。
【解決手段】ガス配管1の外周面2に塗装する塗装材3に、還元剤となるCu2O、SnOの少なくとも一つ、及び着色剤となるAg2CO3、AgNO3、Ag3PO4の少なくとも一つを添加する。これにより、ガス配管1が腐食によって破孔が生じ、副生ガスドレン中に含まれる腐食物質(S、Cl)が配管の外周面に漏出すると、Ag2SやAgCl等の黒色物質が発生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫黄(S)や塩素(Cl)などの腐食成分を有する副生ガス配管における腐食による破孔を検知する破孔検知方法、及びガス配管の外周面に塗装する塗装材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガスの検知装置としては、例えば白金線コイルの電気抵抗値の変化を監視することで、一酸化炭素(CO)を検知する接触燃焼式が知られている(特許文献1)。これは、触媒で被覆した白金線コイルが一酸化炭素と接触すると、その反応熱によって白金線コイルの温度が上昇し、電気抵抗値が増加することを利用したものである。
また、特定波長の赤外線を吸収するメタンの特性を利用し、ガス配管に対して赤外線を照射し、ガス配管からの反射光に基づいて赤外線の吸収率を測定することでメタンガス(CH4)を検知するものもある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−146271号公報
【特許文献2】特開2007−240200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、副生ガスには配管腐食の原因となる硫黄(S)や塩素(Cl)が含まれており、また副生ガスは過飽和であるため、管内を流れるドレン中や配管下部に堆積したダスト中に腐食成分が溶け込んでいる。これにより、ガス配管の内側から腐食が進展し、破孔が生じることで副生ガスが漏出がする。
しかしながら、破孔が小さい初期の段階ではドレンのみが漏出するだけなので、この段階では副生ガスは漏出しない。したがって、上記の特許文献1、2に記載された従来技術は、ガスが漏出してからでなければ、ガス配管の破孔を検知することができないので、破孔を早期に検知することはできない。なお、漏出したドレンは雨滴や飛散水と区別するのが困難であり、点検員の目と経験に頼っているのが現状である。
本発明の課題は、ガス配管の破孔を早期に検知することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明に係るガス配管の破孔検知方法は、ガス配管の外周面に塗装される塗装材に、前記ガス配管から漏出する腐食物質との反応によって着色物質を発生させる着色剤を添加することを特徴とする。
また、前記着色剤は、銀を含むことを特徴とする。
また、前記塗装材に、前記ガス配管から漏出する腐食物質をイオン化させる還元剤を添加することを特徴とする。
【0006】
また、前記還元剤は、銅又は錫を含むことを特徴とする。
また、本発明に係る塗装材は、ガス配管の外周面に塗装する塗装材であって、前記ガス配管から漏出する腐食物質との反応によって着色物質を発生させる着色剤を添加したことを特徴とする。
また、前記ガス配管から漏出する腐食物質をイオン化させる還元剤を添加したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るガス配管の破孔検知方法は、ガス配管の塗装材に、腐食物質との反応によって着色物質を発生させる着色剤を添加するので、腐食物質が漏出した時点で、着色剤と反応し、配管の外周面に着色物質が現れる。これにより、着色物質を目視によって容易に確認できるので、破孔の小さい初期の段階から破孔を検知することができる。
例えば、着色剤に銀を含めることで、腐食物質となる塩素や硫黄と反応するときに、黒色物質が現れ、目視によって容易に確認することができる。
【0008】
また、ガス配管の塗装材に、ガス配管から漏出する腐食物質をイオン化させる還元剤を添加することで、腐食物質と着色剤との反応を得ることができる。
例えば、還元剤に銅又は錫を含めることで、腐食物質となる塩素や硫黄と着色剤との反応を得ることができる。
【0009】
また、本発明に係る塗装材は、ガス配管から漏出する腐食物質との反応によって着色物質を発生させる着色剤を添加しているので、この塗装材をガス配管の外周面に塗装すれば、腐食物質が漏出した時点で、着色剤と反応し、配管の外周面に着色物質が現れる。これにより、着色物質を目視によって容易に確認できるので、破孔の小さい初期の段階から破孔を検知することができる。
また、ガス配管から漏出する腐食物質をイオン化させる還元剤を添加しているので、腐食物質と着色剤との反応を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】ガス配管の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、ガス配管の断面図である。
ガス配管1の外周面2に塗装する塗装材3に、還元剤となるCu2O、SnOの少なくとも一つ、及び着色剤となるAg2CO3、AgNO3、Ag3PO4の少なくとも一つを添加する。
【0012】
これにより、ガス配管1が腐食によって破孔が生じ、副生ガスドレン中に含まれる腐食物質(S、Cl)が配管の外周面に漏出すると、直ちにAg2SやAgClの黒色物質に反応するので、目視確認ができる。
《塗装材に混合する物質》
還元剤(Re):酸化銅(I) Cu2O、
酸化錫(II) SnO
着色剤:炭化銀 Ag2CO3
硝酸銀 AgNO3
燐酸銀 Ag3PO4
【0013】
《腐食性物質との反応》
(1)腐食性物質の還元
・Cl2 + Re → 2Cl- + Ox
・SO42- + Re → S2- + Ox
(2)着色剤との反応
・Cl- + Ag+ → AgCl↓
AgCl(塩化銀):紫〜黒色沈殿
・H2S + 2Ag+ → Ag2S↓ + 2H+
Ag2S(硫化銀):黒色沈殿。常温で容易に反応
【0014】
したがって、ガス配管に破孔が生じ、ドレンが漏出した時点で、還元剤及び着色剤と反応し、配管に黒色物質が現れるので、破孔の小さい初期の段階から破孔を検知することができる。すなわち、副生ガスが漏出する前段階から目視によって確認できるので、応急処置の迅速化が図れる。また、配管の外周面に黒色模様が形成されるので、見た目にも分りやすく、点検員による見落としを低減することができる。
【0015】
なお、本実施形態では、イオン化させるために還元剤を添加しているが、既にイオン化されていれば、還元剤の添加は省いてもよい。
また、ガス配管1の全ての外周面に、還元剤及び着色剤を混入する必要はなく、腐食による破孔が生じやすい部位に限定して混入してもよい。例えば、ガス配管1のコーナ部や勾配最下部、ガス配管1の下面などは、ドレンが溜まりやすく腐食が生じやすいので、こうした部位に限定して還元剤及び着色剤を混入すればよい。
【0016】
また、本実施形態では、ドレンが漏出したときに黒色物質が発生する化学反応式について説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、ガス配管1の色と容易に識別可能な物質が発生すれば、破孔が生じた部位を点検員が容易に確認できるので、他の色の物質が発生する化学反応式であっても構わない。例えば、ガス配管1が黒色であれば、白色物質が発生する化学反応式であってもよい。逆に言えば、ドレンとの反応によって発生する物質の色が際立つように、ガス配管1の色を決定してもよい。
【符号の説明】
【0017】
1 配管
2 外周面
3 塗装材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス配管の外周面に塗装する塗装材に、前記ガス配管から漏出する腐食物質との反応によって着色物質を発生させる着色剤を添加することを特徴とするガス配管の破孔検知方法。
【請求項2】
前記着色剤は、銀を含むことを特徴とする請求項1に記載のガス配管の破孔検知方法。
【請求項3】
前記塗装材に、前記ガス配管から漏出する腐食物質をイオン化させる還元剤を添加することを特徴とする請求項1又は2に記載のガス配管の破孔検知方法。
【請求項4】
前記還元剤は、銅又は錫を含むことを特徴とする請求項3に記載のガス配管の破孔検知方法。
【請求項5】
ガス配管の外周面に塗装する塗装材であって、
前記ガス配管から漏出する腐食物質との反応によって着色物質を発生させる着色剤を添加したことを特徴とする塗装材。
【請求項6】
前記ガス配管から漏出する腐食物質をイオン化させる還元剤を添加したことを特徴とする請求項5に記載の塗装材。

【図1】
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