説明

ガラスの成形装置及びガラスの成形方法

【課題】低粘性ガラスを薄く幅広に成形できるガラスの成形装置及びガラスの成形方法を提供すること。
【解決手段】本発明に係るガラスの成形装置は、金型内へ溶融ガラスを流し込んで固化させるガラスの成形装置であって、所定の位置から金型内へ溶融ガラスを流し込む流込手段及び金型を所定の速度で搬送する搬送手段とを備え、金型は、矩形状の底面と、該底面から垂直方向に延在し、底面の少なくとも三方を囲む側面から形成される第1の金型と、第1の金型の底面上に配置され、第1の金型の側面との間で溶融ガラスの成形領域を形成し、第1の金型の搬送方向に対して平行移動可能な第2の金型とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスの成形装置及びガラスの成形方法に関し、特に、低粘性ガラスの成形装置及び成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
低粘性ガラスとしては、例えば、リン酸ガラスを用いた光学ガラスがある。また、近年では、この光学ガラスに近赤外線を吸収する物質を添加し、近赤外線領域の光(以下、近赤外線と称する)をカットする近赤外線カットフィルタガラスが用いられている。近赤外線カットフィルタガラスは、例えば、高出力レーザやデジタルカメラの固体撮像素子(例えば、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ)の光学系に用いられている。
【0003】
近赤外線カットフィルタガラスは、高出力レーザの光学系では、固体レーザから発振される1050nm付近の近赤外線をカットするために用いられている。また、固体撮像素子の光学系では、近赤外線をカットし、撮像画像の色を補正する色補正フィルタとして用いられている。
【0004】
そして、近赤外線の吸収率を向上させるために、近赤外線を吸収する物質として、アルミノリン酸塩系ガラスやフツリン酸塩系ガラスにCuO(酸化銅)を添加した光学ガラスが提案されている(特許文献1、2参照)。また、このような近赤外線カットフィルタガラスの製造方法として、コンベア上に溶融ガラスを流出させ、この溶融ガラスを圧延ローラで圧延することにより成形及び急冷を行うことが提案されている(特許文献3、4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−16451号公報
【特許文献2】特開平6−234546号公報
【特許文献3】特開2010−6665号公報
【特許文献4】特開2010−6666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近赤外線カットフィルタガラスは、通常板形状のものが使用されるため、近赤外線カットフィルタガラスを板状に幅広に成形することで生産性を大幅に向上することができる。しかしながら、溶融ガラスを薄く幅広に金型に流し込もうとすると、溶融ガラスが広がる際に金型に熱を奪われるため、金型内に薄く、幅広に溶融ガラスを流し込むことが難しく、ガラスを薄く幅広に成形することが困難であった。
【0007】
本発明は、低粘性ガラスを薄く幅広に成形できるガラスの成形装置及びガラスの成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のガラスの成形装置は、金型内へ溶融ガラスを流し込んで固化させるガラスの成形装置であって、所定の位置から金型内へ溶融ガラスを流し込む流込手段及び金型を所定の速度で搬送する搬送手段とを備え、金型は、矩形状の底面と、該底面から垂直方向に延在し、底面の少なくとも三方を囲む側面から形成される第1の金型と、第1の金型の底面上に配置され、第1の金型の側面との間で溶融ガラスの成形領域を形成し、第1の金型の搬送方向に対して平行移動可能な第2の金型とを有する。
【0009】
本発明のガラスの成形方法は、溶融ガラスを固化させるための第1の金型と、第1の金型内に配置され、第1の金型内で移動可能な第2の金型とから構成される金型を備え、該金型内へ溶融ガラスを流し込んで固化させるガラスの成形方法であって、金型を所定の速度で搬送する工程と、所定の位置から金型内へ溶融ガラスを流し込む工程と、溶融ガラスの流し込み開始と共に、第2の金型を所定の位置に保持して第2の金型を第1の金型に対して後方に移動させる工程とを有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、矩形状の底面と、該底面から垂直方向に延在し、底面の少なくとも三方を囲む側面から形成される第1の金型と、第1の金型の底面上に配置され、第1の金型の側面との間で溶融ガラスの成形領域を形成し、第1の金型の搬送方向に対して平行移動可能な第2の金型とから構成される金型を有するように構成したので、低粘性ガラスを薄く幅広に成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態に係るガラスの成形装置の斜視図。
【図2】実施形態に係るガラスの成形装置の上面図。
【図3】実施形態に係るガラスの成形装置の断面図。
【図4】実施例で成形したガラスの板厚の測定結果。
【図5】実施例で説明した方法により成形したガラスの分光特性図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態)
図1は、実施形態に係るガラスの成形装置1の斜視図である。図2は、ガラスの成形装置1の上面図である。図3は、図2の線分X−Xにおけるガラスの成形装置1の断面図である(徐冷装置14を除く)。以下、図1〜図3を参照して、実施形態に係るガラスの成形装置1の構成について説明する。なお、以下の説明では、後述するコンベア12の進行方向(金型11が進む方向)を前方と定義する。
【0013】
(ガラスの成形装置1)
ガラスの成形装置1は、ガラス溶融装置(不図示)に接続された流出ノズル2(流込手段)から流し込まれる溶融ガラスGを成形するための金型11と、金型11を搬送するためのコンベア12(搬送手段)と、該コンベア12の両脇に配置されたシリンダ13a、13b(保持手段)と、金型11内に流し込まれた溶融ガラスGを徐冷(アニーリング)する徐冷装置14とを備える。
【0014】
金型11は、高温の溶融ガラスを成形するため、耐熱性及び耐食性に優れる材料、例えば、SS鋼材(一般構造用圧延鋼)やカーボンで形成される。金型11は、上面が解放された箱型の第1の金型11aと、第1の金型11a内に配置された第2の金型11bとを備える。第1の金型11aは、矩形の底面A及びこの底面Aの四辺から底面Aに対して垂直方向に延在し、底面Aの四方を囲う側面B〜側面Eから構成される。なお、この実施形態では、矩形の底面Aの四方を囲むようにしているが、底面Aの少なくとも三方を囲うように構成されていればよく、側面Eはなくてもよい(理由は、後述する)。
【0015】
第2の金型11bは、一端H及び他端Hの一部がそれぞれ側面B及び側面Dに当接した棒形状の部材であり、一端H及び他端Hの一部がそれぞれ側面B及び側面Dに当接した状態で、第1の金型11aの底面A上に配置される。第2の金型11bは、矢印α(図1〜図3参照)の方向、すなわち金型11の搬送方向に平行な方向に第1の金型11aに対して移動可能に構成されている。
【0016】
第2の金型11bの中央部には、後方から前方に向かって傾斜する斜面が形成されていてもよい。このようにした場合、流出ノズル2から流し込まれる溶融ガラスGは、この斜面を経由して金型11内へ流れ込むように構成される。なお、第2の金型11bは、第1の金型11aの側面B〜側面Dとの間で溶融ガラスGの成形領域を形成するので側面Eはなくてもよい。
【0017】
コンベア12は、短冊状の複数のプレート12aがレール上で連結されたエンドレスのチェーンである。個々のプレート12aは、耐熱性及び耐食性に優れた材料、例えば、SS鋼材やステンレス鋼、鋳鉄等で構成されている。コンベア12は、プレート12a上に配置された金型11を矢印β(図1〜図3参照)の方向に所定の速度Vで搬送する。
【0018】
なお、コンベア12の搬送速度Vは、可変できることが好ましい。また、コンベア12は、複数の金型11を所定の速度Vで搬送できるものであればよく、プレート12aを連結する代わりに、例えば、金型11の搬送方向に沿って複数のローラを備え、この複数のローラが所定の速度で回転することにより金型11を搬送する構成としてもよい。
【0019】
コンベア12を、矢印β方向、すなわち金型11が搬送される側が高くなるよう傾斜させてもよい。このようにすることで、金型11に流し込んだ溶融ガラスGが、第2の金型11b側に寄った状態となり、溶融ガラスGが幅方向へ進展する効果を促進することができる。
【0020】
コンベア12の傾斜角度を0°(水平に設置)とした場合、金型11に流し込まれた溶融ガラスGは、幅方向(β方向に直交する方向)のみならず矢印β方向へも進展する。この場合、後述する領域Rを形成するβ方向に進展したガラスが十分に固化されずに軟化した状態となる虞がある。β方向に進展したガラスが十分に固化されないと、溶融ガラスGが矢印β方向へ進展するのを確実に規制することができず、溶融ガラスGの幅方向への進展を妨げてしまうこととなる。
【0021】
コンベア12を矢印β方向、すなわち金型11が搬送される側が高くなるよう傾斜させることで、金型11へ流し込まれた溶融ガラスGが矢印β方向へ進展するのを抑制し、溶融ガラスGがより確実に幅方向へ進展する。なお、コンベア12を傾斜させる場合のコンベア12の好ましい傾斜角度は、0°〜3°である(但し、0°を除く)。
【0022】
シリンダ13は、外部から供給されるエア(空気)により矢印γ(図1、図2参照)の方向に伸縮駆動する。シリンダ13a,13bは、伸びた状態で第2の金型11bの一端H及び他端Hとそれぞれ当接する。
【0023】
シリンダ13は、金型11内への溶融ガラスGの流し込み開始とともに、第2の金型11bを所定の位置に保持して、該第2の金型11bを第1の金型11aに対して後方に移動させるための保持手段であり、第2の金型11bが、第1の金型11aの後端部まで移動すると、第2の金型11bの保持を解除する。
【0024】
上記のようにシリンダ13a,13bを動作させることにより、第2の金型11bを金型11内への溶融ガラスGの流し込み量に比例して、第1の金型11aに対して後方に移動することができる。言い換えると、第2の金型11bを、第1の金型11aの側面B〜側面D及び第1の金型11a内に流し込まれ固化した溶融ガラスGとの間で形成される領域の面積が一定となるように、第1の金型11aに対して後方に移動することができる。
【0025】
このように第2の金型11bを第1の金型11aに対して相対的に後方へ移動させることで、溶融ガラスGを金型11の幅方向(第1の金型11aの側面B及び側面Dの方向)に進展させて容易に第1の金型11の幅方向に広げることができる。また、金型11の幅方向に広がった溶融ガラスGは、金型11に熱を奪われるため、その場で冷え固まり固化する。すなわち、固化したガラスは、第2の金型11bの前面との間で、その後流し込まれる溶融ガラスGが流し込まれる領域Rを形成するので、連続的に溶融ガラスGを金型11の幅で形成することができる。
【0026】
溶融ガラスGが流し込まれる領域Rは、第1の金型11aの側面Cもしくは固化したガラスと第2の金型11bの前面との間の幅(β方向の幅)に対し、第1の金型11aの側面Bと側面Eとの幅(β方向に直交する幅)を十分に大きくすることが重要である。このようにすることで、流し込まれた溶融ガラスGは、金型内におけるβ方向への進展が抑制され、β方向に直交する幅方向に確実に行きわたるため、幅広のガラスを成形することが可能となる。
【0027】
徐冷装置14は、金型11内で固化したガラスを所望の温度までゆっくりと冷却(アニーリング)する。
【0028】
(ガラスの成形工程)
次に、実施形態に係るガラスの成形装置1を利用したガラスの成形方法について説明する。なお、下記ガラスの成形工程において、流出ノズル2からは溶融ガラスGが連続的に流し込まれているものとする。
【0029】
コンベア12に金型11を配置し、コンベア12を稼働させる。コンベア12稼働後は、金型11を所定の間隔で順次コンベア12上に配置する。なお、金型11は、第2の金型の前面が第1の金型の側面Cに当接した状態でコンベア12上に配置される。
【0030】
コンベア12により金型11が搬送され、流出ノズル2下に金型11最前面が位置すると同時に、シリンダ13a、13bへエアが供給される。エアが供給されるとシリンダ13a、13bが伸長する。また、流出ノズル2から流し込まれる溶融ガラスGは、第1の金型11aの側面B〜側面D及び第2の金型11bの前面とで構成される領域Rに流れ込む。
【0031】
流出ノズル2から溶融ガラスGが流し込まれた状態で、第1の金型11aは、コンベア12により矢印β(図1〜図3参照)の方向へ所定の速度Vで搬送される。しかし、第2の金型11bは、一端H及び他端Hが伸長したシリンダ13a、13bに当接するためコンベア12により搬送されずにその位置に留まる。つまり、第2の金型11bは、第1の金型11aに対して相対的に後退する(実際は、第2の金型11bがシリンダ13により停止した状態で、第1の金型11aがコンベア12により前方に移動している)ことになる。
【0032】
流出ノズル2から流し込まれ、コンベア12の進行方向へ進展する溶融ガラスGの流れは、第2の金型11bにより堰き止められる。このため、溶融ガラスGは、金型11の幅方向(第1の金型11aの側面B及び側面Dの方向)に進展し、容易に第1の金型11の幅方向に広がる。
【0033】
また、金型11の幅方向に広がった溶融ガラスGは、金型11に熱を奪われるため、その場で冷え固まり固化する。すなわち、固化したガラスは、第2の金型11bの前面との間で、その後流し込まれる溶融ガラスGが流し込まれる領域Rを形成するので、連続的に溶融ガラスGを金型11の幅で形成することができる。
【0034】
その後、コンベア12により第1の金型11aが搬送され、第2の金型11bの後面が第1の金型11aの側面Eに当接もしくは当接寸前の位置まで相対的に移動すると、シリンダ13a、13bへのエアの供給を調整してシリンダ13a、13bが縮むことで第2の金型11bの保持が解放される。
【0035】
金型11は、コンベア12により搬送されて徐冷装置14内を通り、徐冷装置14内において金型11内で固化したガラスが所望の温度となるまでゆっくりと冷却される。上記工程は、コンベア12上に配置された金型11ごとに繰り返され連続的にガラスが成形される。
【0036】
なお、上記工程では、第2の金型11bが、金型11内への溶融ガラスGの流し込み量に比例して、第1の金型11aに対して後方に移動する、言い換えると、第2の金型11bが、第1の金型11aの側面B〜側面D及び第1の金型11a内に流し込まれ固化した溶融ガラスGとの間で形成される領域の面積が一定となるように第1の金型11aに対して後方に移動するようにコンベア12の搬送速度V及び流出ノズル2からの溶融ガラスGの流し込み量を予め調整しておく。
【0037】
また、本実施形態においては、金型11の少なくとも一部を断熱構造にし、この金型11をコンベア12上に配置する前に所定の温度まで予熱しておくように構成してもよい。この場合、金型11が予熱されているので、溶融ガラスGを流し込んだ際に溶融ガラスGが流出ノズル2の直下ですぐに固化することを抑制することができる。このため、溶融ガラスGが金型11の幅方向に進展する作用を補助することができる。
【0038】
特に、粘性曲線が急峻なリン酸系ガラスを成形する場合には、金型11内に流し込まれた溶融ガラスGが金型11に熱を奪われ、金型11との界面(接触面)にて部分的に固化し、成形されたガラス製品の底面が凹凸状となってしまう虞がある。しかし、上述のように金型11を断熱構造とし、予め予熱しておくことで溶融ガラスGが金型11との界面(接触面)にて部分的に固化することを防止できるため、成形後のガラス製品の形状品質が向上する。
【0039】
本発明のガラスの成形装置およびガラスの成形方法は、ガラスを成形する際の粘性が比較的低いガラス(低粘性ガラス)に対して好適に用いることが可能である。ここで低粘性ガラスとは、溶融ガラスを金型に流し込む際のガラスの粘性ηが0.4〜0.8Pa・sのガラスのことであり、このような粘性特性を備えるガラスとして、例えば、リン酸ガラスやフツリン酸ガラス等が挙げられる。
【0040】
(実施例)
次に、実施例を挙げて、本発明をより詳細に説明する。この実施例では、図1〜図3を参照して説明したガラスの成形装置1を用いて実際にガラスを成形した。この際、第1の金型11aの材料としてSS鋼材(一般構造用圧延鋼)又はカーボンを使用した。第2の金型11bの材料としてSS鋼材を使用した。
【0041】
金型11は、第1の金型11aの底面A(底面)を断熱構造とし、予め300℃にまで予熱した。また、金型11で成形されたガラスは、徐冷装置14で徐冷した。また、金型11が備える第1の金型11aのガラス成型部の寸法は、幅500mm、奥行き500mm、高さ20mmである。ここで、幅とは、金型11の進行方向に対して垂直方向の長さのことであり、奥行きとは、金型11の進行方向に対して平行方向の長さのことである。なお、溶融ガラスGには、リン酸系のガラスを使用した。使用したリン酸ガラスの組成は、以下の通りである。
【0042】
:61.4mol%
: 2.8mol%
Al :10.9mol%
O :14.7mol%
BaO : 9.5mol%
CuO : 0.6mol%
SbO : 0.2mol%
【0043】
リン酸系のガラスを1150℃で20時間溶融した後、撹拌、清澄を行い、流出ノズル2から金型11へ流し込んだ。このとき、溶融ガラスGの流量は、約80〜100Kg/h(キログラム毎時)とし、コンベア12の送り速度は、10〜15cm/min(センチメートル毎分)とした。また、ガラスを金型11に流し込んだ際のガラス温度は1150℃であり、ガラスの粘性ηは0.6Pa・sであった。
【0044】
(比較例)
次に、比較例について説明する。この比較例では、金型11の第2の金型11bを使用せずに、第1の金型11a内へそのまま溶融ガラスをキャストしてガラスを成形した。その他は、実施例と同様にしてガラスを成形した。
【0045】
(比較結果)
図4は、実施例のガラスの幅方向の板厚分布測定結果である。ガラスの板厚は、金型11の進行方向対して垂直の方向(ガラスの幅方向)に測定した。ガラスの板厚は、金型11の進行方向対して、前方、中央、後方の3か所において測定した。図4の縦軸は、成形したガラスの板厚(単位:mm)、横軸は、金型11の幅方向の距離(単位:cm)である。また、図4では、コンベア12の進行方向(金型11の進む方向)を前方として、金型11の中心線から左側への距離をマイナスで表示し、右側への距離をプラスで表示した。また、図4には、前方、中央、後方の板厚の測定結果を、ぞれぞれ実線、鎖線、一点鎖線で示した。
【0046】
図4の結果から、実施例では、第1の金型11aのガラス成形領域の前方、中央、後方におけるガラスの板厚の最大値と最小値との差が、それぞれ約1.20mm(最大値16.60mm、最小値15.40mm)、約1.25mm(最大値15.25mm、最小値14.00mm)、約0.95mm(最大値15.4mm、最小値14.45mm)と非常に小さくなっていることがわかる。
【0047】
これに対し、比較例で成形したガラスは、溶融ガラスが第1の金型11aの幅方向(金型11の進行方向に対して垂直方向)に十分に行きわたらず、ガラスの幅方向の板厚差が非常に大きくなっていた。具体的には、実施例と同様に測定した中央におけるガラスの板厚の最大値と最小値との差が、10mm以上でとなっていた。
【0048】
以上より、比較例のガラスに比べて、実施例のガラスのほうが板厚が薄く、かつ、均一に成形できていることがわかる。
【0049】
図5は、実施例のガラスの分光特性図である。図5に示すように、実施例のガラスは、400〜600nmでの透過率が高く、かつ、700nm以上の波長領域の光、すなわち近赤外線のカット性に優れていることがわかる。また、発明者らは、実施例で説明した方法により成形したガラスを拡大鏡等により拡大し、該ガラスに脈理や泡、異物等の不良欠点が内在していないことを目視確認している。
【0050】
以上のように、本発明を上記具体例に基づいて詳細に説明したが、本発明は上記具体例に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいてあらゆる変形や変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明のガラスの成形装置及びガラスの成形方法は、低粘性ガラス、例えば、近赤外線カットフィルタガラスの製造に好適である。
【符号の説明】
【0052】
1…ガラスの成形装置、2…流出ノズル(流込手段)、11…金型、11a…第1の金型、11b…第2の金型、12…コンベア(搬送手段)、12a…プレート、13a、13b…シリンダ(保持手段)、14…徐冷装置、A…底面、B〜E…側面、G…溶融ガラス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型内へ溶融ガラスを流し込んで固化させるガラスの成形装置であって、
所定の位置から前記金型内へ溶融ガラスを流し込む流込手段及び前記金型を所定の速度で搬送する搬送手段とを備え、
前記金型は、
矩形状の底面と、該底面から垂直方向に延在し、前記底面の少なくとも三方を囲む側面から形成される第1の金型と、
前記第1の金型の底面上に配置され、前記第1の金型の側面との間で前記溶融ガラスの成形領域を形成し、前記第1の金型の搬送方向に対して平行移動可能な前記第2の金型と
を有することを特徴とするガラスの成形装置。
【請求項2】
前記第2の金型は、前記金型内への前記溶融ガラスの流し込み量に比例して、前記第1の金型に対して後方に移動することを特徴とする請求項1に記載のガラスの成形装置。
【請求項3】
前記第2の金型は、前記第1の金型の側面及び前記第1の金型内に流し込まれ固化した前記溶融ガラスとの間で形成される領域の面積が略一定となるように、前記第1の金型に対して後方に移動することを特徴とする請求項1に記載のガラスの成形装置。
【請求項4】
前記金型内への前記溶融ガラスの流し込み開始とともに、前記第2の金型を所定の位置に保持して、該第2の金型を前記第1の金型に対して後方に移動させるため保持手段をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のガラスの成形装置。
【請求項5】
前記保持手段は、前記第2の金型が、前記第1の金型の後端部まで移動すると、前記第2の金型の保持を解除することを特徴とする請求項4に記載のガラスの成形装置。
【請求項6】
溶融ガラスを固化させるための第1の金型と、前記第1の金型内に配置され、前記第1の金型内で移動可能な第2の金型とから構成される金型を備え、該金型内へ溶融ガラスを流し込んで固化させるガラスの成形方法であって、
前記金型を所定の速度で搬送する工程と、
所定の位置から前記金型内へ溶融ガラスを流し込む工程と、
前記溶融ガラスの流し込み開始と共に、前記第2の金型を所定の位置に保持して前記第2の金型を前記第1の金型に対して後方に移動させる工程と
を有することを特徴とするガラスの成形方法。
【請求項7】
前記第2の金型を移動させる工程は、前記金型内への前記溶融ガラスの流し込み量に比例して、前記第2の金型を前記第1の金型に対して後方に移動することを特徴とする請求項6に記載のガラスの成形方法。
【請求項8】
前記第2の金型を移動させる工程は、前記第1の金型の側面及び前記第1の金型内に流し込まれ固化した前記溶融ガラスとの間で形成される領域の面積が略一定となるように、前記第2の金型を前記第1の金型に対して後方に移動することを特徴とする請求項6に記載のガラスの成形方法。
【請求項9】
前記第2の金型が、前記第1の金型の後端部まで移動すると、前記第2の金型の保持を解除する工程をさらに有することを特徴とする請求項6乃至請求項8のいずれか1項に記載のガラスの成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−1586(P2013−1586A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−132061(P2011−132061)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)