説明

ガラス成形法における成形体からの輻射熱損失を低減するための装置

【課題】ガラス製造法における輻射熱損失、特に、ダウンドロー法における楔形の成形体からの輻射熱損失を低減する。
【解決手段】
シートの形成に用いられる成形体からの輻射熱損失を最小限に抑えるための熱遮蔽体を備えた、ガラスシートを生産するための装置について開示する。熱遮蔽体は、典型的には一対で配置され、成形体から連続的なリボンとして下降する溶融ガラスの流れの両側に位置する。各熱遮蔽体は、末端セグメントおよび中央セグメントを含む複数のセグメントを備え、ここで、末端セグメントは中央セグメントに対して別々に移動可能であり、リボンに隣接した熱遮蔽体の辺縁を可変にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス製造法における輻射熱損失の低減方法、特に、ダウンドロー法における楔形の成形体からの輻射熱損失を低減する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
溶融ダウンドロー法は、板ガラスの生産のためにガラス製造分野で用いられる方法の1つである。例えばフロート法およびスロットドロー法などの他の方法と比較して、本溶融法は、成形後処理(研磨、艶出しなど)することなく、その表面に優れた平坦性および滑らかさを有するガラスシートを生産する。結果として、本溶融法は、表面品質が厳しく制御されることを要する、液晶ディスプレイ(LCD)の製造に使用するものなど、薄いガラス基板の生産に特に重要になってきている。
【0003】
溶融法、特に、オーバーフローダウンドロー溶融法は、Stuart M.Dockerty氏に付与され、本願と同一の譲受人に譲渡された特許文献1および特許文献2の対象である。そこに記載されるように、ガラスシートは、耐熱性の成形体から溶融ガラスを溢れさせることによって形成される。
【0004】
典型的な溶融ダウンドロー法では、ガラス溶融物を、耐熱性の成形体で作られるトラフに供給する。溶融ガラスはトラフの上端部からトラフ本体の両側に溢れ出て2枚のガラスの半シートを形成し、それが下方に流れ、その後、前記成形体の外表面に沿って内側に流れる。2枚のシートは成形体の底またはルートで合流し、ここで単一のガラスシートへと融合する。次に、単一のシートをドロー装置に供給する。シートの厚さは、とりわけ、ドロー装置によってシートをルートから引き離す速度によって、および、ガラスの温度(粘度)を調節することにより、調整される。
【0005】
ドロー工程の間、最終的なガラスシートの外側の、外向きの表面は、前記成形体の外表面とは接触しない。むしろ、これらの表面は周囲雰囲気とだけ接触する。最終的なシートを形成する、2枚の半シートの内表面は、成形体と接触するが、これらの内表面はアイソパイプのルートで融合し、最終的なシートの本体内部に埋め込まれ、最終的なシートの外表面の優れた特性が達成される。
【0006】
溶融法に用いられる成形体は、溶融ガラスがそのトラフ内、およびその外表面を越えて流れるときに、高温および実質的な機械的負荷にさらされる。これらの厳しい条件に耐えられるように、成形体は、典型的には、静水圧プレス成形された、耐熱材料の焼結ブロックでできている。特に、成形体は静水圧プレス成形されたジルコン耐火物、すなわち、ZrOおよびSiOを主成分とする耐火物で作られうる。例えば、成形体はジルコン耐火物で作られて差し支えなく、ここで、ZrO・SiOまたは、同等にZrSiOである材料の理論的組成で、ZrOおよびSiOを合わせて材料の少なくとも95重量%を含む。
【0007】
板ガラス、特にLCD基板として利用するための製造おける損失の原因は、ガラスがジルコン成形体内を通過し、貫通することに起因する、ガラス中のジルコン結晶内包物の存在である(本明細書では「ジルコンの二次結晶」または「二次的なジルコン欠陥」または簡単に「二次的ジルコン」と称される)。ジルコンの二次結晶の問題は、より高温で形成される必要がある失透感受性のガラスでは、さらに顕著である。すなわち、高い液相線温度のガラスは、二次的ジルコンの形成の傾向にある。
【0008】
完成したガラスシートに見られるジルコンの二次結晶の原因となるジルコンは、ジルコン成形体の上位部に由来することが判明した。特に、これらの欠陥は、成形体のトラフおよび成形体の外側の上部壁に沿って生じる温度および粘度において、ガラス溶融物内に溶解したジルコニア(すなわち、ZrOおよび/またはZr+4+2O-2)が原因となって最終的に生じる。ガラスは成形表面を下方に移動する際に冷却され、より粘性になることから、成形体のこれらの上位部では、成形体の下位部と比較して、ガラスの温度はより高く、その粘度はより低い。この冷却は、成形装置の性質によって増大されうる。典型的な配置では、成形体は五角錐のボックスに封入され、ここで、成形体はボックス壁の上部と側部で囲まれる。しかしながら、ボックスの底は、少なくともある程度開かれ、ガラスシートが成形体(すなわち成形体のルート)から下降できるようになっている。その結果、熱は、この開口を通じてルートおよびルートに近接した領域から放射され、その後、ルートは冷却する。
【0009】
ガラス溶融物におけるジルコニアの溶解性および拡散性は、ガラスの温度および粘度の関数である(すなわち、ガラスの温度が低下し、粘度が増大すると、ほとんどのジルコニアは溶液に保持することができず、拡散率は低下する)。ガラスが成形体の底(ルート)に近いときには、前述の冷却に起因して、ジルコニアで過飽和されうる。ジルコン結晶(すなわちジルコンの二次結晶)は核を形成し、ジルコン成形体の底部(例えばルート)上で成長しうる。最終的には、これらの結晶は十分な長さに成長し、折れてガラスの流れに混入し、欠陥となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第3,338,696号明細書
【特許文献2】米国特許第3,682,609号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
ガラスシートの生産に用いる成形体からの輻射熱損失を調節するため、成形体を収納する筺体の真下の開口を部分的に閉じる熱遮蔽体について開示する。開口サイズを狭小なスリットに縮小することによって、筺体の外側から成形体の底への「視界」は最小化されるが、それでもなお、ガラスシートはスリットを通じて成形体から下降することが可能である。すなわち、筺体の外側から筺体内への見通し線の範囲を縮小することにより、成形体および成形体を伝って流れる溶融ガラスが熱を外側に放射し、それによって成形体およびガラスを冷却することを顕著に低減する。
【0012】
さらに具体的には、溶融ダウンドロー法における典型的な成形体は、成形体の底で合流する表面を備える。成形体の側面を越えて流れる溶融ガラスは、成形表面全体にわたって流れる。成形表面を下降する分離した流れは 収束線において融合し、ガラスシートを形成する。熱遮蔽体は、典型的には2つ一組で、シートの1つの表面に1つの遮蔽体が近接して配置され、もう1つの遮蔽体はシートのもう1つの側に近接して配置され、それによって、狭小な開口またはスリットを形成し、そこを通じてガラスが流れる。熱遮蔽体はガラスシートの表面に十分に近接して配置され、著しい輻射熱損失を最小限に抑えるが、溶融ガラスの流れと接触可能なほどには近接しない。
【0013】
1つの実施の形態では、ガラスシートを形成するための装置であって、成形体の周囲に配置された筺体であって、前記筺体が前記成形体の下に開口を備え、溶融ガラスの流れが前記成形体から下降して筺体から出ることを可能にする筐体を有してなる装置が開示される。成形体は任意のダウンドロー工程を含んでいて差し支えなく、ここで、溶融ガラスは耐熱性の表面全体にわたって流れ、重力の影響下で下降してリボンを形成し、これが冷却されてガラスのシートを形成する。熱遮蔽体は、成形体からの輻射熱損失を最小限に抑えるために、成形体の下に配置され、各熱遮蔽体は少なくとも1つのセグメントを備え、溶融ガラスの流れに対して移動可能になっている。すなわち、熱遮蔽体は筺体の開口に隣接して配置され、かつ、下降するガラスリボンに近接して配置されて、 熱遮蔽体の前縁とリボンの間に狭小なギャップを生じさせる。狭小なギャップは、成形体、特に、筺体開口に近接する成形体の底からの輻射熱損失の量を制限する。各熱遮蔽体は、末端部分および中心部分を備え、前記末端部分および中心部分のそれぞれは溶融ガラスの流れに対して前縁を備えている。前記末端部分の前縁(下降するリボンに近接する辺縁)は、前記中心部分の前縁よりも溶融ガラスの流れの平面近くに延在しない。
【0014】
本発明の実施の形態に従った熱遮蔽体は、連続的な直線の前縁を有しうる。あるいは、前記末端部分の前縁の少なくとも一部は、前記中心部分の前縁に対して陥凹している。いずれにせよ、末端部分は中央区域の前縁を越えて突出しない。
【0015】
各熱遮蔽体は、複数のセグメントを備えうる。前記複数のセグメントはまた、末端セグメントおよび中央セグメントを備え、ここで、末端セグメントおよび中央セグメントのそれぞれは、溶融ガラスの流れの平面に対する前縁を備え、ここで、前記末端セグメントの前縁は前記中央セグメントの前縁に対して陥凹している。末端セグメントの位置は、中央セグメントに対して可変でありうる。言い換えれば、末端セグメントは中央セグメントとは別々でありうる。さらには、各末端セグメントは、もう1つの末端セグメントとは別々に(例えば独立して)動くように構成されうる。各熱遮蔽体は、別の熱遮蔽体とは別々に移動可能であることが好ましい。
【0016】
装置は、熱遮蔽体に加えて、熱遮蔽体に隣接して配置される冷却部材をさらに備えていてもよい。熱遮蔽体は、冷却部材の上に配置されるか、あるいは、冷却部材の下に配置されうる。
【0017】
各熱遮蔽体は、上部部材、下部部材、および上部部材と下部部材の間に配置される絶縁層を備えることが好ましい。好ましくは、上部部材、下部部材、または上部および下部部材の両方は、遮蔽体またはセグメントの温度変化の際の熱遮蔽体の反りを防止するための拡張スロット(または個別のセグメント)を備えることが好ましい。剛性を提供するため、上部部材および下部部材は嵌合湾曲部を備える。
【0018】
熱遮蔽体を、成形体の筺体の底における開口に関連付けて配置するためには、熱遮蔽体は、平行移動、回転、または平行移動と回転の両方の動きをすることができる。
【0019】
成形体は耐熱材料で構成される。成形体は、ZrO・SiOまたはZrSiOを含むことが好ましい。成形体はAlを含みうる。成形体は、溶融ダウンドロー装置を含みうる。あるいは、成形体は、スロットダウンドロー法または任意の他の現行の、または将来のダウンドロー法を含みうる。
【0020】
別の実施の形態では、ダウンドローガラス製造法に用いられる成形体からの輻射熱損失を防止するための熱遮蔽体が開示され、前記熱遮蔽体は、
少なくとも1つのセグメントを備え、前記少なくとも1つのセグメントは、第1および第2の末端セグメントおよび中央セグメントを含み、
第1および第2の末端セグメントおよび中央セグメントのそれぞれが前縁部分を備え、前記第1および第2の末端セグメントは中央セグメントに対して陥凹している。前記熱遮蔽体の上部部材および下部部材は、熱遮蔽体の反りを防止するための拡張スロットを備えうる。中央セグメントの上部および下部部材は嵌合し、中央セグメントの上部および下部部材に連結するカール部分を備えていて差し支えなく、前記嵌合したカール部分は中央区域上に直線の辺縁を形成する。
【0021】
さらにもう1つの実施の形態では、ダウンドロー法によってガラスを形成する方法が開示され、該方法は、
成形体全体に溶融ガラスを流し、前記溶融ガラスが、前記成形体から連続的なリボンの形態で下降する工程と、
前記成形体の下位部からの輻射熱損失を低減するために、前記リボンの向き合う表面に隣接する前記成形体の下に熱遮蔽体を配置する工程であって、各熱遮蔽体が少なくとも1つのセグメントを備え、かつ、末端部分および中心部分をさらに備える工程と、
を有してなり、
前記末端部分が、前記中心部分よりも前記連続的なリボンの平面の近くに延在しないことを特徴とする。各熱遮蔽体は、複数のセグメントを含みうる。各熱遮蔽体の厚み全体にわたる温度差は、少なくとも100℃である。
【0022】
シートの厚みを調節するため、冷却部材は熱遮蔽体に隣接して配置されうる。熱遮蔽体は、冷却部材の下に配置されるか、あるいは、冷却部材の上に配置されてもよい。熱遮蔽体は、冷却部材とは別々に移動可能であることが好ましい。
【0023】
さらに別の実施の形態では、 ガラス製造装置の成形体における、溶解した耐熱材料の再結晶化を防止する方法であって、
前記成形体の下に開口を備えた筺体に配置される成形体全体に溶融ガラスを流して、溶融ガラスの流れが前記成形体から下降して前記筺体から出ることを可能にする工程と、
前記筺体開口において前記成形体の下に熱遮蔽体を位置合わせすることによって前記成形体からの輻射熱損失を低減する工程であって、前記熱遮蔽体が末端部分および中心部分を含む工程と、
を有してなり、
前記末端部分が前記成形体から下降する溶融ガラスの流れに対して前記中心部分の前縁を越えて延在しない、
ことを特徴とする方法について記載する。
【0024】
熱遮蔽体の位置合わせは、例えば、熱遮蔽体の平行移動を含みうる。あるいは、成形体の筺体に対する熱遮蔽体の位置合わせは、熱遮蔽体を回転させること、または移動および回転の両方を含みうる。
【0025】
成形体は、例えばZrO・SiOまたはZrSiOを含みうる。成形体はAlを含みうる。
【0026】
本発明の実施の形態は、さらに容易に理解されるであろうし、それらの他の目的、特性、細部、および利点は、添付の図面に関して多少なりとも限定を暗示することなく与えられる、以下の典型的な記載の過程においてさらに明確になるであろう。これらすべての追加のシステム、方法、特徴、および利点は、この記載内に含まれ、本発明の範囲内にあり、添付の特許請求の範囲によって保護されることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態に従った溶融ダウンドローガラスの融解過程における典型的な成形体の斜視図および部分断面側面図。
【図2】冷却部材の下に位置する熱遮蔽体を備えた図1の成形体を含む本発明の実施の形態に従った典型的な溶融成形装置の断面側面図。
【図3】図2の成形装置の一部の断面図。
【図4】本発明の別の実施の形態に従った、熱遮蔽体を回転させた図1の成形体を含む典型的な溶融成形装置の断面側面図。
【図5A】本発明の実施の形態に従った単一のセグメントを有する熱遮蔽体の上面図。
【図5B】間にガラスのシート断面が配置された一対の熱遮蔽体の上面図。
【図6A】本発明の別の実施の形態に従った単一のセグメントを有する熱遮蔽体の上面図。
【図6B】間にガラスのシート断面が配置された図6Aの一対の熱遮蔽体の上面図。
【図7A】本発明のさらに別の実施の形態に従った単一のセグメントを有する熱遮蔽体の上面図。
【図7B】間にガラスのシート断面が配置された図7Aの一対の熱遮蔽体の上面図。
【図8A】本発明の実施の形態に従った複数のセグメントを有する熱遮蔽体の上面図。
【図8B】間にガラスのシート断面が配置された図8Aの一対の熱遮蔽体の上面図。
【図9A】本発明の実施の形態に従った複数のセグメントを有する熱遮蔽体の上面図。
【図9B】間にガラスのシート断面が配置された図9Aの一対の熱遮蔽体の上面図。
【図10】層状の構造を示す熱遮蔽体セグメントの一部の断面側面図。
【図11】拡張スロットを示す熱遮蔽体セグメントの一部の上面図。
【図12】本発明のさらに別の実施の形態に従った、冷却部材の上に配置される熱遮蔽体を備えた図1の成形体を含む、典型的な溶融成形装置の断面側面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下の詳細な説明では、説明の目的であって、限定の目的ではないが、特定の詳細についての開示例となる実施の形態が、本発明の十分な理解を提供するために記載される。しかしながら、本発明が、本明細書に開示される特定の詳細から逸脱した他の実施の形態においても実施されうることは、本開示の利益を有する当業者には明らかであろう。さらには、周知の装置、方法、および材料についての記載は、本発明の説明を不明瞭にしないために省かれる場合がある。最後に、適用可能な同様の参照番号は、常に、同様の要素について言及するものである。
【0029】
本発明の実施の形態に従ったガラスシートを製造するための典型的な溶融ダウンドロー法では、ガラス形成前駆体(バッチ)は加熱炉で溶融されて、融液原料、またはガラス溶融物を形成し、これがその後に成形体を越えて流れ出て、ガラスシートを形成する。一般に、このような成形体は、溶融物が流れ出る上部成形表面を備えている。例えば、溶融ダウンドローシート成形法では、溶融物が成形表面を流れ出し、成形体の底で交わる。成形表面は、成形体の底またはルートで収束して楔形の形状を形成する、傾斜した、または収束した成形表面を有する。上部成形表面は、実質的に垂直かつ互いに平行であって差し支えない。
【0030】
成形体の設計は、多くの競合する利益を考慮する必要がある。融液原料は、ダム(堰)によって側面で境界された成形体におけるトラフに取り込まれる。融液原料は、ガラス溶融物が堰の上端(トラフを境界する上部壁)からの流出を生み出すためには、十分に低い粘度、すなわち十分に高い温度で成形体に取り込まれなければならない。その後、融液原料は、収束した成形表面を備えた成形体の外側の成形表面を伝わって成形体の底まで流れる。
【0031】
一方、融液原料が首尾よくドローされることを可能にするためには、成形体の底またはルートを離れた融液原料は、十分に高い粘度、すなわち十分に低い温度を有しなければならないが、融液原料の粘度は、ガラス溶融物の結晶化を生じうる、融液原料の液相線粘度を超える程には低くない粘度を有する必要がある。
【0032】
成形体を越えて流れるガラス溶融物が、高温で長すぎる時間、成形表面を下降する状態にある場合には、成形体を含めた材料が溶解し、その後、ルートなどの成形体の下位部の低温部分において「二次的ジルコン」として再結晶化する可能性がある。二次的ジルコン結晶は、ガラスの流れを破壊するのに十分な長さに成長し、ガラスの流れの中に取り込まれ、完成したガラス製品に欠陥を生じうる。
【0033】
これは、溶融ガラスが筺体を出る、成形体を収納する筺体の底の開口に隣接していること、および、開口を通じた放射によって熱が失われることから、特に厄介である。開口は必要であることから、成形体、特に成形体のルートからの輻射熱損失の軽減のために努力しなければならない。手法の1つは、ルートを加熱して熱損失を補うことであるが、これは部分的にしか有効ではない。さらには、ルートに印加される追加の熱エネルギーは対流を通じて上方に流れ、成形体の上位部の温度を上昇させうる。成形体の上端における温度上昇は、成形体の溶解の増大につながり、二次的ジルコンの問題を悪化させうることから、実際には逆効果であることが示されうる。それはまた、ガラスの上部および下部粘度(成形体の上端における粘度と成形体の底における粘度)の間の微妙なバランスも変化させうる。二次的ジルコン形成のメカニズムは他の成形体の材料の溶解および凝縮にも適用でき、ジルコニアに限定されないことに着目されたい。
【0034】
図1は、1つの実施の形態に従った典型的な成形体10を示している。成形体10は、供給(図示せず)から、入口16、堰18、20、上部成形表面22、24および下部成形表面26、28を通じて溶融ガラス14を受け入れるためのトラフ12を備える。下部成形表面26、28は、成形体の底またはルート30で交わる。ルート30はドローライン、またはガラスシートが成形体から引き込まれるラインを形成する。
【0035】
成形体10に供給されたガラス溶融物14は、堰18、20を越えて流れ出し、2つの区別できる流れとして、成形表面22、24および26、28を伝って下方に流れ、1つの流れは成形体の各長い側面を下降する。その後、1つの流れは成形表面22および26を伝って下降すると同時に、もう1つの流れは成形表面24および28を伝って下降する。2つのガラスの流れはルート30において再び一体化または融合して、ガラスシート32を形成し、これがプルロール34に代表される引き込み装置によって下方へと引き込まれる。シートの縁部分36には表面張力が生じ、シートの内側部分38よりも厚くなる。厚くなった縁部分、またはビードは、成形体の下流に配置されたプルロールにグリップされ、プルロールは下向きのけん引力をガラスシートに及ぼす。ビード領域36はガラスから切断されて廃棄されるか、またはカレットとして利用されて融解過程のバッチ材料に加えられるのに対し、ビードの内側のガラスシートの領域38は、その後に販売可能なガラスとなる領域である。下降するガラスシート32は、最終的には切断線37で個別のガラス枠39へと分離される。
【0036】
成形体10は、典型的にはジルコンまたはアルミナなどのセラミック耐熱材料から成り、筺体40に収納される(図2参照)。筺体40は、内壁の後方に配置される加熱素子42(マッフル44)を備える。加熱素子は、成形体の成形表面の溶融ガラス温度を調節し、したがって溶融ガラスの粘度を調節するために用いられ、必要に応じて筺体全体にわたって配置されうる。典型的には、加熱素子は、筺体内の温度を筺体の垂直位置の関数として調節することができるように、層状に垂直に配置される。
冷却部材46は筺体40の下に位置し、下降するガラスシート32から適切な距離だけ離して部材を配置することができるように、可動であって差し支えなく、図2の破線の円で囲んだ部分を示す図3に最もよく示されている。破線33は成形体を二等分し、ルート30および溶融ガラスの流れ32を貫通する面を表している。冷却部材46は、冷却部材の表面、特に冷却部材のフェイス48を冷却する冷房設備を備える。冷却部材のフェイス48の冷却は、言い換えれば、温度を調節し、したがってガラスの幅に沿って(例えば、水平に)成形体から下降するガラスの粘度を調節する。例えば冷却部材は、1つ以上の冷却剤供給ライン50、および冷却部材の長手方向に沿って延在する排出口を備えていて差し支えない。各排出口は、排出口に隣接した各冷却部材のフェイス48の一部分を冷却する、冷却剤(典型的には空気)を放出する。各排出口から排出される冷却剤の体積は、冷却部材のフェイスの温度がフェイスにおける位置(例えば水平位置)の関数として調節できるように、個別に調節して構わない。一部の実施の形態では、単一の供給ラインが複数の排出口を備えた排気マニホルドを供給してもよく、各排出口は遠隔操作バルブによって調節されうる。
【0037】
上記冷房の配置は、冷却部材フェイス48が、ガラスシートの幅全体にわたる位置の関数としての、成形体から下降するガラスの温度および粘度を変化させられるようにし、例えば、ガラスシート全体にわたる厚みの調節に使用することができる。冷却部材は水平移動することができ(矢印52によって表示)、ガラスシートの主要表面に対する冷却部材の位置合わせを可能にし、ひとたび最適位置に設定した後は、冷却部材は、動かすことがシートの特性(例えば、形状、厚みなど)に影響を与えかねないことから、ほとんど動かさない。むしろ、冷却部材の機能性の大部分は、冷却部材への冷却剤の流れを調節すること、すなわち温度を調節することによって得られる。最適位置は特定のドロー設定に応じて決まり、ドローに応じて変化するであろう。
【0038】
筺体40内の熱環境、および特に、成形体のルート30の温度についてのさらに精密な調節を提供するため、熱遮蔽体54は、成形体からの輻射熱損失、特に成形体のルート領域からの輻射熱損失を調節するため、冷却部材46に隣接して、冷却部材の上または下のいずれかに配置される。熱遮蔽体54は、独立して移動可能であることが好ましい。すなわち、1つの熱遮蔽体は、向き合う熱遮蔽体(シートのもう1つの側)とは独立して移動可能であり、冷却部材と同様に、ガラスシートの方へ、およびガラスシートから離れて外向きに可動である。シートの方へ向かう動きまたはシートから離れる動きは、いくつかの方法で規定することができる。
【0039】
上記説明によって認識されるように、冷却および加熱は、同時に、互いに非常に近接した領域に存在することができる。熱遮蔽体54は、成形体の底からの放射熱損失を最小限に抑えて、成形体のルートにおける溶融ガラスの冷却を防止するが、冷却部材46は、厚み調節の補助として、下降するシートの幅全体にわたるガラスを積極的に冷却するために使用される。実際、冷却部材46および熱遮蔽体54の動作は、特定の熱環境を維持するために協調させることができる。
【0040】
図2に示すように、熱遮蔽体は水平に動かすことができ、その際に前記熱遮蔽体が移動して熱遮蔽体の間のギャップが増減する。このような水平の動きは矢印56に示されている。
【0041】
図4に例示する別の実施の形態では、熱遮蔽体は回転軸55の周りを回転しうる。各回転軸55は、溶融ガラスの流れから最も遠い各熱遮蔽体の辺縁に沿っていることが好ましく、それによって、溶融ガラスに最も近い、各熱遮蔽体の前縁が下方に落下可能になる。
【0042】
さらに別の実施の形態(図示せず)では、熱遮蔽体は平行移動と回転の両方が可能でありうる。
【0043】
各熱遮蔽体は、単一のセグメントまたは複数のセグメントを備えていて構わない。図5Aに示す1つの実施の形態では、各熱遮蔽体は末端部分54a、54bおよび中心部分54cを含む単一のセグメントを備える。末端部分の前縁76a、76bは、中心部分と一致していて差し支えないが、末端部分の前縁が前記中心部分の前縁よりも溶融ガラスの流れの平面からさらに離れるように、陥凹していることが好ましい。図5Bは、熱遮蔽体の間を通るガラスリボンの断面と共に、図5Aの一対の熱遮蔽体を描いている。
図6Aおよび7Aは、単一のセグメントの熱遮蔽体の代替となる実施の形態を描いており、陥凹した末端部分を例証している。例えば、図6は、ある実施の形態を示し、ここで、末端部分54a、54bのそれぞれの前縁部分76a、76bは、距離δの分だけ、中心部分54cの前縁部分76aより後方に陥凹している。この実施の形態では、前縁部分76a〜76cのそれぞれは、セグメントのもう1つの前縁部分に沿っている。
【0044】
図7Aは、ある実施の形態を示し、ここで、末端部分54a、54bの前縁76a、76bは、それぞれ陥凹し、かつ、中心部分54cの前縁76cに対して傾斜している。末端部分の前縁が湾曲した辺縁を備えるものなど、他の構成もまた採用して差し支えない。
【0045】
図6Bおよび7Bは、それぞれ熱遮蔽体を貫通するガラスリボンの断面と共に、図6Aおよび7Aの一対の熱遮蔽体を描いている。
【0046】
他の実施の形態では、各熱遮蔽体は複数のセグメントまたはブレードを備えていて構わない。各熱遮蔽体の各セグメントは、隣接する区域とは独立して移動可能であって差し支えない。各熱遮蔽体は、構成において、もう一方の(反対の)遮蔽体と実質的に同一であり、単一の熱遮蔽体についての言及は、その記述が対応する反対側の熱遮蔽体(すなわち、反対側の下降シートに配置された熱遮蔽体)にも適用されるという了解の下で、なされている。
【0047】
図8Aは、典型的なセグメント化された熱遮蔽体54の実施の形態を示している。セグメント化された熱遮蔽体54は、1つ以上のセグメント、例えば末端部材58a,58bおよび中央部材58cを備える。末端部材58a,58bは、中央部材58cに対して別々に移動可能であって構わない。加えて、典型的には、末端部材58a,58bは一体となって動くが、末端部材58aは、末端部材58bとは別々に移動可能であり、中央部材58cと一体となって動いてもよい。動きは、多くの方法によって達成することができる。例えば、熱遮蔽体の各セグメントは、適切な連結62(例えば1つまたは複数のシャフト62)および/または1つまたは複数の変速装置64を介して 、操作によって、ガラスシートに向かって内向きに、またはガラスシートから離れて外向きに延在する1つまたは複数の区域を生じうる作動装置66に連結されて差し支えない。例えば、作動装置66は単一の手回しクランクまたはレバーであって差し支えなく、あるいは、作動装置は、コンピュータまたは他の電気プロセッサを介して調節されることが好ましい場合には、電気モーターまたはサーボであってもよい。図8Bは、熱遮蔽体を貫通するガラスリボンの断面と共に、遮蔽体が配置された場合の、図8Aの一対の熱遮蔽体を示している。
【0048】
図9Aは、末端部材58a,58bが、中央部材58cの前縁77cに対して傾斜し、陥凹した前縁77a,77bを備えている以外は、図8Aの熱遮蔽体と同様の、複数セグメントの熱遮蔽体54を例証している。図9Bは、熱遮蔽体を貫通するガラスリボンの断面と共に、図9Aの一対の熱遮蔽体を描いている。
【0049】
先に簡潔に述べたように、溶融ダウンドロー法を通じたガラスシートのドローは、成形体から下降する際に、ガラスを取り囲む熱環境の正確な調節を活用する。そのためには、各熱遮蔽体は、熱遮蔽体の寸法完全性を維持するための特徴を備えていて差し支えない。そうでなければ、熱遮蔽体の形状または位置の変更は、処理温度を変化させるであろう。例えば、熱遮蔽体の任意の部分の反りは 、熱環境の乱れを生じうる。
【0050】
一般に、熱遮蔽体の断面を描いている図10に示すように、単一のセグメントの遮蔽体または複数セグメントの遮蔽体のいずれかの、熱遮蔽体54の各セグメントまたは部分は、それ自体、複数の部材:上部部材70、絶縁中間層または部材72、および下部部材74によって形成されうる。上部および下部部材70,74は、先端または前縁77(または単一のセグメントの実施の形態では76)に沿って連結され、ここで前縁は、上部および下部部材それぞれに形成される湾曲部78、80の嵌合を介して、流れるガラスに最も近接した辺縁である。嵌合する湾曲部は、いくつかの目的を有する。第1に、それらは上部セグメントと下部セグメントを連結する。しかしながら、それらはまた、各部分またはセグメントの前縁77(または前縁76)の強化を補助し、辺縁の反りを防止する。少しの反りであっても、ガラスシートに対する熱遮蔽体の辺縁の位置をわずかに変化させることによる工程には有害となりうる。しかしながら、各実施の形態の中心部分またはセグメントは、直線(線形)の前縁を備えている。
【0051】
図11に示すように、末端セグメントおよび中央セグメントの上部部材70および下部部材74のそれぞれは、個別の部分またはセグメントの反りを生じることなく上部および下部部材の膨張を促すために、拡張スロット79を備えることが好ましい。各拡張スロットはまた、スロットの末端における部材の応力破壊を防止するために、円形切り抜きなどの切り抜き81で終了して差し支えない。
【0052】
上部および下部部材70,74はまた、後縁82に沿って接続される。図10に示すように、後縁82に沿った接続は、辺縁に沿って配置される、ボルトなどの締め具84を介してもよい。しかしながら、溶着など、後縁に沿って上部および下部部材を固定する他の方法もまた使用して差し支えない。熱遮蔽体が高温環境に配置されることから(上部部材における温度は約1000℃、下部部材における温度は約900℃でありうる)、十分な耐用年数を確保するために、上部および下部部材は、高温および酸化に対して耐性の材料で構成されるべきである。例えば、上部部材および下部部材70,74は、ヘインズ(Haynes(登録商標))合金番号214または「ヘインズ」合金番号230など、1つ以上の高温金属合金を含みうる。例えばFiberfrax(登録商標)Durablanket(登録商標)2600などの絶縁材料は、絶縁層72にとって適切な絶縁材料である。上部部材は下部部材よりも高温に曝露されることから、上部部材は下部部材よりも熱および酸化に対してより大きな耐性を有する材料で形成されうる。熱遮蔽体の厚さ全体にわたる典型的な温度差は約100℃であるが、温度差は100℃を超えてもよい。
【0053】
成形表面20、22を伝って流れ落ちるガラス溶融物の温度は、実質的一定である。一方、成形表面24、26は、成形体の下では、より低い温度に曝露される。すなわち、成形表面24、26は、垂直成分と同様、それらの方向に対して水平成分も有する。したがって、成形表面24、26を伝って流れる溶融ガラスは、成形表面を下降する際に冷却される。例えば、ルートおよびルートに隣接した領域など、成形体のもっとも下位部は、筺体の底において開口に「視界」を有し、ルートにおいて、ルートおよび溶融ガラスの望ましくない冷却につながる、開口を通じた熱の放射を生じる。
【0054】
上述のように、ガラスシートの品質領域を取り囲む熱環境の破壊を防止するため、熱遮蔽体の中央セグメント58cの前縁 77cは、直線的な、平坦な辺縁になっている。中央セグメントの前縁は、少なくともガラスシートの品質部分全体にわたって延在し、シートの幅全体に一貫性のある熱環境を確保することが好ましい。操作においては、末端部材58a,58bの前縁77aおよび77bは、典型的には、中央セグメント58cの前縁77cより距離δだけ後方に陥凹している。末端部材58a,58bおよびそれらの各前縁の、中央セグメントよりもガラスシートからさらに離れた位置合わせは、ガラスシートのビード領域の厚みの増大に対応し、成形体自体についての追加の隙間も提供することができる。距離δは、特定の設計、成形体およびドロー設備の設定、およびドローされるガラスの組成に応じて各ドローについて別々に決定される。同様に、中央セグメントの前縁77とガラスシートの表面との間の距離dは、筺体からの熱損失を最小限に抑え、それと同時に、シートの流れの途絶を防止するように選択されるべきであり、典型的には、個別の成形体それぞれの特定の操作条件、関係するドロー設備、およびガラスの組成に応じて決まる。
【0055】
図12に示す別の実施の形態では、熱遮蔽体は、成形体のルート30の下であり、かつ、冷却部材46の上に配置される。先の実施の形態の場合には、図12の実施の形態の各熱遮蔽体54は、末端セグメントおよび中央セグメントを含む複数のセグメントを備えていてもよく、ここで、末端セグメントは、中央セグメントとは別々に移動可能であって差し支えなく、あるいは、一体となって動いてもよい。中央セグメントは、少なくとも、ガラスシートの品質領域の幅全体にわたって延在することが好ましい。あるいは、熱遮蔽体は、末端部分および中心部分を有する単一のセグメントのみを有していてもよい。いずれの実施の形態においても、末端部分または末端セグメントは、末端セグメントまたは末端部分の前縁が、中心部分またはセグメントよりもガラスシートからさらに離れて陥凹するように構成されて差し支えない。
【0056】
したがって、非限定的な、典型的な実施の形態として以下のものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
C1.ガラスシートを形成するための装置であって、
成形体の周囲に配置された筺体であって、溶融ガラスの流れが前記成形体から下降して前記筺体から出ることができるように前記成形体の下に開口を備えた筺体と、
前記成形体からの輻射熱損失を最小限に抑えるために前記成形体の下に配置される熱遮蔽体であって、各熱遮蔽体が少なくとも1つのセグメントを備え、溶融ガラスの流れに対して移動可能であり、ここで、各熱遮蔽体が末端部分および中心部分を含み、前記末端部分および中心部分のそれぞれが溶融ガラスの流れに対して前縁を備えている、熱遮蔽体と
を備え、
前記末端部分の前縁が、前記中心部分の前縁よりも溶融ガラスの流れの平面近くに延在しない
ことを特徴とする装置。
【0058】
C2.前記末端部分の前縁の少なくとも一部が、前記中心部分の前縁に対して陥凹していることを特徴とするC1記載の装置。
【0059】
C3.各熱遮蔽体が複数のセグメントを備えることを特徴とするC1記載の装置。
【0060】
C4.前記複数のセグメントが末端セグメントおよび中央セグメントを含み、
前記末端セグメントおよび中央セグメントのそれぞれが、溶融ガラスの流れの平面に対する前縁を備え、
前記末端セグメントの前縁が、前記中央セグメントの前縁に対して陥凹している
ことを特徴とするC3記載の装置。
【0061】
C5.前記末端セグメントの一部分が、前記中央セグメントに対して可変であることを特徴とするC3記載の装置。
【0062】
C6.前記熱遮蔽体のそれぞれが 別の熱遮蔽体とは別々に移動可能であることを特徴とするC1〜C5のいずれかに記載の装置。
【0063】
C7.前記複数のセグメントの各セグメントの一部が 前記複数のセグメントの別のセグメントに対して可変であることを特徴とするC3記載の装置。
【0064】
C8.前記熱遮蔽体に隣接して配置される冷却部材をさらに備えることを特徴とするC1〜C7のいずれかに記載の装置。
【0065】
C9.前記熱遮蔽体が前記冷却部材の上に配置されることを特徴とするC8記載の装置。
【0066】
C10.前記熱遮蔽体が前記冷却部材の下に配置されることを特徴とするC8記載の装置。
【0067】
C11.各熱遮蔽体が、上部部材、下部部材、および前記上部部材と下部部材の間に配置される絶縁層を備えることを特徴とするC1〜C10のいずれかに記載の装置。
【0068】
C12.前記上部部材および下部部材が拡張スロットを備えることを特徴とするC11記載の装置。
【0069】
C13.前記上部部材および下部部材が嵌合湾曲部を備えることを特徴とするC11記載の装置。
【0070】
C14.前記熱遮蔽体が平行移動することを特徴とするC1〜C13のいずれかに記載の装置。
【0071】
C15.前記熱遮蔽体が回転することを特徴とするC1〜C14のいずれかに記載の装置。
【0072】
C16.前記成形体がZrO・SiOまたはZrSiOを含むことを特徴とするC1〜C15のいずれかに記載の装置。
【0073】
C17.前記成形体がAlを含むことを特徴とするC1〜C15のいずれかに記載の装置。
【0074】
C18.前記成形体が溶融ダウンドロー装置を含むことを特徴とするC1〜C17のいずれかに記載の装置。
【0075】
C19.前記成形体がスロットダウンドロー工程を含むことを特徴とするC1〜C17のいずれかに記載の装置。
【0076】
C20. ダウンドローガラス製造法に用いられる成形体からの輻射熱損失を防止するための熱遮蔽体であって、
前記熱遮蔽体が、
第1および第2の末端セグメントおよび中央セグメントを含む複数のセグメントを備え、前記第1および第2の末端セグメントおよび中央セグメントのそれぞれが前縁部分を備え、
前記第1および第2の末端セグメントの前縁部分が、前記中央セグメントに対して陥凹していることを特徴とする、熱遮蔽体。
【0077】
C21.各熱遮蔽体が、上部部材、下部部材、および、上部部材と下部部材の間に位置する絶縁層を備え、前記上部部材および下部部材が拡張スロットを備えることを特徴とするC20記載の熱遮蔽体。
【0078】
C22.前記中央セグメントの前記上部部材および下部部材が、前記中央セグメントの前記上部部材および下部部材を嵌合し、連結させたカール部分を含むことを特徴とするC21記載の熱遮蔽体。
【0079】
C23.前記嵌合カール部分が、前記中央区域における直線の辺縁を形成することを特徴とするC22記載の熱遮蔽体。
【0080】
C24.ダウンドロー法によってガラスを形成する方法であって、
成形体全体に溶融ガラスを流し、前記溶融ガラスが、前記成形体から連続的なリボンの形態で下降する工程と、
前記成形体の下位部からの輻射熱損失を低減するために、前記リボンの向き合う表面に隣接する前記成形体の下に熱遮蔽体を配置する工程であって、各熱遮蔽体が少なくとも1つのセグメントを備え、かつ、末端部分および中心部分をさらに備える、工程と、

を有してなり、
前記末端部分が、前記中心部分よりも前記連続的なリボンの平面近くに延在しないことを特徴とする方法。
【0081】
C25.各熱遮蔽体が複数のセグメントを備えることを特徴とするC24記載の方法。
【0082】
C26.各熱遮蔽体の厚み全体にわたる温度差が少なくとも100℃であることを特徴とするC24またはC25記載の方法。
【0083】
C27.前記熱遮蔽体に隣接して配置される冷却部材を使用して前記リボンの厚みを調節する工程をさらに有してなることを特徴とするC24〜C26のいずれかに記載の方法。
【0084】
C28.前記熱遮蔽体が前記冷却部材の下に配置されることを特徴とするC27記載の方法。
【0085】
C29.前記熱遮蔽体が前記冷却部材の上に配置されることを特徴とするC27記載の方法。
【0086】
C30.前記熱遮蔽体が前記冷却部材とは別々に移動可能であることを特徴とするC27記載の方法。
【0087】
C31.各末端セグメントの前縁と前記リボンとの距離が可変であることを特徴とするC14記載の方法。
【0088】
C32.ガラス製造装置の成形体における、溶解した耐熱材料の再結晶化を防止する方法であって、
溶融ガラスの流れが前記成形体から下降して前記筺体から出ることを可能にするために、前記成形体の下に開口を備えた筺体に配置された成形体全体に溶融ガラスを流す工程と、
前記筺体開口における前記成形体の下に熱遮蔽体を位置合わせすることによって前記成形体からの輻射熱損失を低減する工程であって、前記熱遮蔽体が末端部分および中心部分を含む、工程と、
を有してなり、
前記末端部分が前記成形体から下降する溶融ガラスの流れに対して前記中心部分の前縁を越えて延在しない
ことを特徴とする方法。
【0089】
C33.前記位置合わせが、前記熱遮蔽体を平行移動させることを含むことを特徴とするC32記載の方法。
【0090】
C34.前記位置合わせが、前記熱遮蔽体を回転させることを含むことを特徴とするC33記載の方法。
【0091】
C35.前記成形体が、ZrO・SiOまたはZrSiOを含むことを特徴とするC32〜C34のいずれかに記載の方法。
【0092】
C36.前記成形体がAlを含むことを特徴とするC32〜C34のいずれかに記載の方法。
【0093】
本発明の上述の実施の形態、特に任意の「好ましい」実施の形態は、単なる実施可能な例であって、単に本発明の原理を明白に理解するために記載されるものであることを強調しておく。本発明の上述の実施の形態には、本発明の精神および原理から実質的に逸脱することなく、多くの変形および変更がなされうる。これらすべての変形および変更は、本開示および本発明の範囲内に含まれ、添付の特許請求の範囲によって保護されることが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスシートを形成するための装置であって、
成形体の周囲に配置される筺体を含み、前記筺体が、溶融ガラスの流れが前記成形体から下降して前記筺体から出ることができるように前記成形体の下に開口を備えており、
前記装置が、
前記成形体からの輻射熱損失を最小限に抑えるために前記成形体の下に配置される熱遮蔽体であって、各熱遮蔽体が少なくとも1つのセグメントを備え、かつ、溶融ガラスの流れに対して移動可能である、熱遮蔽体によって特徴付けられ、
各熱遮蔽体が末端部分および中心部分を含み、前記末端部分および中心部分のそれぞれが溶融ガラスの流れに対して前縁を備え、
前記末端部分の前縁が、前記中心部分の前縁よりも溶融ガラスの流れの平面近くに延在しないことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記末端部分の前縁が、前記中心部分の前縁に対して陥凹していることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項3】
各熱遮蔽体が複数のセグメントを備えることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項4】
前記熱遮蔽体が末端セグメントおよび中央セグメントを含み、
前記末端セグメントおよび中央セグメントのそれぞれが、溶融ガラスの流れの平面に対する前縁を備え、
前記末端セグメントの前縁が、前記中央セグメントの前縁に対して陥凹していることを特徴とする請求項3記載の装置。
【請求項5】
前記末端セグメントの一部分が、前記中央セグメントに対して可変であることを特徴とする請求項4記載の装置。
【請求項6】
ダウンドローガラス製造法に用いられる成形体からの輻射熱損失を防止するための熱遮蔽体であって、前記熱遮蔽体が、
第1および第2の末端セグメントおよび中央セグメントを含む複数のセグメントを備え、
前記第1および第2の末端セグメントおよび中央セグメントのそれぞれが前縁部分を備え、
前記第1および第2の末端セグメントの前縁部分が、前記中央セグメントの前縁部分よりも陥凹していることを特徴とする熱遮蔽体。
【請求項7】
各熱遮蔽体が、上部部材、下部部材、および、上部部材と下部部材の間に位置する絶縁層を備え、およびここで、前記上部部材および下部部材が拡張スロットを備えることを特徴とする請求項6記載の熱遮蔽体。
【請求項8】
ダウンドロー法によってガラスを形成する方法であって、
成形体全体に溶融ガラスを流し、前記溶融ガラスが前記成形体から連続的なリボンの形態で下降する工程と、
前記成形体の下位部からの輻射熱損失を低減するために、前記リボンの向き合う表面に隣接する前記成形体の下に熱遮蔽体を配置する工程であって、各熱遮蔽体が少なくとも1つのセグメントを備え、かつ、末端部分および中心部分をさらに備える工程と、
を有してなり、
前記末端部分が、前記中心部分よりも前記連続的なリボンの平面近くに延在しないことを特徴とする方法。
【請求項9】
各熱遮蔽体が末端セグメントおよび中央セグメントを含む複数のセグメントを備え、
前記末端セグメントの前縁が、前記中央セグメントの前縁よりも前記リボンからさらに離れて陥凹していることを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項10】
各末端セグメントの前縁と前記リボンとの距離が可変であることを特徴とする請求項9記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−269998(P2010−269998A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−117131(P2010−117131)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【復代理人】
【識別番号】100116540
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 香
【復代理人】
【識別番号】100139723
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 洋