説明

ガラス板の搬送状態再現装置

【課題】合紙などの緩衝材に起因するガラス板への傷の発生を簡便かつ正確に模擬的に再現する装置を提供すること。
【解決手段】緩衝材を連続的または間欠的に供給する緩衝材供給部と、ガラス板を保持する第1のガラス板保持部と、前記緩衝材を挟んで前記第1のガラス保持部に対向する平面を有する平面部とを備え、前記ガラス板保持部および/または平面部を前記緩衝材に近接する方向に移動させ、前記ガラス板保持部と平面部との間で緩衝材を押圧するガラス板の搬送状態再現装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板を包装する際に用いられる緩衝材に起因して、ガラス板に生じる傷の発生状況を模擬的に再現するための搬送状態再現装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイ用ガラス基板、液晶用ガラス基板等のフラットパネルディスプレイ(FPD)用ガラス基板は、保管中および/または搬送中に表面に傷が発生して欠陥となりやすい。特に液晶ディスプレイのパネルに使用される無アルカリガラス基板のように、その表面に薄膜トランジスタ(TFT)などの電気回路を形成して用いる場合には、その表面に微細な傷があっても断線やパターニング不良が発生する。そのため、このようなガラス基板には極めて高い表面特性が要求される。
【0003】
ガラス基板の保管中や搬送中の傷を防止するために、積層されるガラス基板間に紙を挟み込み、隣接するガラス基板表面を分離する、いわゆる合紙等の緩衝材を介装する方法が従来から採用されている。
【0004】
合紙に起因する傷を低減するため、例えば特許文献1には、パルプ原料を主成分とするガラス用合紙であって、坪量が30〜60g/mであり、JIS・P・8118に準拠した、ガラス用合紙の巾方向の紙厚を2cm間隔で測定した、隣接する測定点の最大紙厚差が8μm以下かつ紙厚の最大値と最小値の差が16μm以下であることを特徴とするガラス用合紙が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−184704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、合紙に起因する傷の評価を行うにあたっては、簡易的に合紙をガラスと接触させてその後の変化を測定する方法が行われているに過ぎず、前述の特許文献1においては、ガラスへの傷入り性の評価方法として、ガラスを分割し洗浄した後、ガラス表面の状態を拡大顕微鏡で観察して傷の平均個数を数える方法が開示されているものの、その具体的な装置や評価方法は開示されていない。
【0007】
そのため、実際の保管・搬送状態におけるガラス表面の傷の発生を評価するには、合紙を介装させて包装し容器に積載した多数のガラス基板を実際にトラック等の車両で搬送して評価せざるを得なかった。しかし、このようなトラック輸送での評価の場合、結果に再現性がない、所望のタイミングで評価できない、時間とコストがかかる、などの問題があった。
【0008】
本発明は、前述の課題を解決するためのガラス板の搬送状態再現装置を提供することを目的とするものであり、具体的には、実際の輸送時の状況に類似した負荷をガラス板および緩衝材に与えることによって、合紙などの緩衝材に起因するガラス板への傷の発生を正確かつ簡便に、模擬的に再現するための搬送状態再現装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するため、本発明は、
ガラス板搬送時における、緩衝材に起因するガラス板への傷の発生を再現する装置であって、
緩衝材を連続的または間欠的に供給する緩衝材供給部と、
ガラス板を保持する第1のガラス板保持部と、
前記緩衝材を挟んで前記第1のガラス保持部に対向する平面を有する平面部と、を備え、
前記ガラス板保持部および/または平面部を前記緩衝材に近接する方向に移動させ、前記ガラス板保持部と平面部との間で緩衝材を押圧することを特徴とするガラス板の搬送状態再現装置を提供する。
【0010】
前記平面部は、ガラスを保持する第2のガラス保持部であることが好ましい。
また、前記緩衝材供給部は、ロール状の緩衝材を解いて送り出す送出部と、前記緩衝材を前記第1のガラス板保持部と前記平面部との間隙を、水平または略水平に移動させる一つ以上のガイド部材と、緩衝材を回収する回収部と、を備えるものであることが好ましい。
【0011】
さらに、前記第1のガラス保持部は、緩衝材の下方に位置し、前記第2のガラス保持部は、緩衝材の上方に位置するものであることが好ましい。
【0012】
前記第1のガラス保持部は、ガラスを載置するプレートと、該プレートを載置するテーブルとを備え、該テーブル上面に設けられた孔から吹き出される流体によって前記プレートが浮上可能であることが好ましい。
【0013】
また、前記第1のガラス保持部および/または前記第2のガラス保持部は、ガラス板との接触部分に多孔質シートが貼付されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、合紙を介装してガラス板を複数枚積層・載置した容器をトラック等の輸送機で搬送する際の状態を正確かつ簡便に再現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態にかかるガラス板の搬送状態再現装置の概略説明図。
【図2】本発明の他の実施形態にかかるガラス板の搬送状態再現装置の概略説明図。
【図3】ガラス板保持部を下方から加圧可能に構成した態様にかかるガラス板の搬送状態再現装置の概略説明図。
【図4】図3の概略説明図におけるガラス板保持部の周辺を拡大した概略模式説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。ただし、以下の説明は本発明の実施形態の代表例であり、本発明がそれらに限定されるものではない。まず、図1に基づいて本発明のガラス板の搬送状態再現装置1(以下、単に再現装置ともいう。)の構成を説明する。
【0017】
前記の再現装置1は、緩衝材供給部2、ガラス板保持部3および平面部4を備える。前記緩衝材供給部2は、緩衝材5を連続的または間欠的に供給するものである。前記緩衝材5としては、紙(合紙)が広く用いられており、ガラス板とガラス板の間に介装され、ガラス板同士の接触によって傷が発生することを防止するために用いられるものである。前記の紙としては、カレンダー機によって圧縮・平滑化されたグラシン紙(Glassine)なども使用できる。
【0018】
また、前記の緩衝材5としては、合紙の他に、アイオノマーフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、エチレン酢酸ビニル共重合体フィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム、エチレン−メタクリル酸共重合体フィルム、ポリアミドフィルム、ポリエチレン発泡樹脂製シート等も用いることができる。
【0019】
前記のガラス板としては、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイなどのフラットパネルディスプレイ(FPD)用ガラス基板、建築用ガラス板、輸送機用ガラス板等を含む、平板状のガラス板が挙げられる。
【0020】
ガラス板を包装して搬送する際、緩衝材5は、一般的に製紙メーカー等からロール状で提供されたものを所望の寸法に切断して包装対象のガラス板と概ね相似形の矩形形状で用いられるが、本発明の再現装置においては切断前のロールの状態からときほどかれた状態の連続シートの形態で供給される。
【0021】
前記ガラス板保持部3はガラス板6を保持するものであり、前記緩衝材5に近接して配設される。ガラス板6を保持するため、前記ガラス板保持部3は金属等の高剛性のプレートに多孔質シートなどが貼り付けられている形態が好ましい。そして、前記緩衝材5を挟んで前記第1のガラス保持部3に対向する位置に、平面部4を配設する。
【0022】
前記ガラス保持部3のガラス保持面、緩衝材5および平面部4の平面の三者は平行になるように配置される。前記緩衝材の移動方向は特に限定されるものではないが水平に移動するように設定されていることが好ましい。そのため、前記ガラス保持部3のガラス保持面と平面部4の平面も水平であることが好ましい。図1においては前記三者が水平に配置された態様が図示されている。
【0023】
また、前記緩衝材5が所望の経路を移動するよう、適切な位置にガイド部材7が一つ以上配設されていることが好ましい。
【0024】
以上が本発明の再現装置1の主要部の構成である。前記ガラス板保持部3および平面部4の少なくとも一方は、駆動手段(図示しない)に接続されており、緩衝材5に近接する方向および離間する方向、すなわち緩衝材5の表面の法線方向に往復運動できるように構成されており、所望の力でガラス板6を緩衝材5に押しつけることによって実際の輸送時に近い負荷を再現できる。
【0025】
上記の説明では、第1のガラス板保持部3と平面部4との間に緩衝材5を挟むように構成した再現装置の例を示したが、図2に示すように、前記平面部4についてもガラス板6を保持する第2のガラス板保持部8として構成されているとより好ましい。このような構成とすることにより、緩衝材5の両面からガラス板を押しつけることができるので、実際の輸送時に一層近い負荷を再現できる。
【0026】
さらに前記ガラス板保持部3は、テーブル9の上に載置され、該テーブル9の上面に設けられた孔10から流体を供給加圧できる構造であることが好ましい。このような構造によって、前記の孔10から供給された流体により前記ガラス板保持部3が加圧される。前記孔10は複数設けられ、格子状に配置したり放射状に配置したりできる。そして、前記の孔10に接続されたポンプ(図示しない)から流体を供給する。このとき流体の流量と流速の分布を適宜制御することにより、緩衝材5に対してガラス板6を均一に押しつけることができ加圧力の偏在を解消できる。
【0027】
前記の流体としては気体が好ましい。流体として液体を用いると緩衝材5が湿潤状態となることにより破損や脆化を招く可能性があるためである。前記の気体は特に限定されず、通常は空気が用いられる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の装置によれば、実際の輸送時の状況に類似した負荷をガラス板および合紙に与えることによって、合紙などの緩衝材に起因するガラス板への傷の発生を簡便かつ正確に再現することができる。特に、空気などの流体を用いた加圧によってガラス板を緩衝材に押しつける構造とすることにより、均一な加圧が可能となるため、より正確な再現が可能となる。
【符号の説明】
【0029】
1:搬送状態再現装置
2:緩衝材供給部
3:(第1の)ガラス板保持部
4:平面部
5:緩衝材
6:ガラス板
7:ガイド部材
8:第2のガラス板保持部
9:テーブル
10:孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス板搬送時における、緩衝材に起因するガラス板への傷の発生を再現する装置であって、
緩衝材を連続的または間欠的に供給する緩衝材供給部と、
ガラス板を保持する第1のガラス板保持部と、
前記緩衝材を挟んで前記第1のガラス保持部に対向する平面を有する平面部と、を備え、
前記ガラス板保持部および/または平面部を前記緩衝材に近接する方向に移動させ、前記ガラス板保持部と平面部との間で緩衝材を押圧する
ことを特徴とするガラス板の搬送状態再現装置。
【請求項2】
前記平面部は、ガラスを保持する第2のガラス保持部である請求項1記載のガラス板の搬送状態再現装置。
【請求項3】
前記緩衝材供給部は、
ロール状の緩衝材を解いて送り出す送出部と、
前記緩衝材を前記第1のガラス板保持部と前記平面部との間隙を、水平または略水平に移動させる一つ以上のガイド部材と、
緩衝材を回収する回収部と、
を備える請求項1または2に記載のガラス板の搬送状態再現装置。
【請求項4】
前記第1のガラス保持部は、緩衝材の下方に位置し、前記第2のガラス保持部は、緩衝材の上方に位置する請求項2または3に記載のガラス板の搬送状態再現装置。
【請求項5】
前記第1のガラス保持部は、ガラスを載置するプレートと、該プレートを載置するテーブルとを備え、該テーブル上面に設けられた孔から吹き出される流体によって前記プレートが浮上可能である請求項1〜4のいずれか1項に記載のガラス板の搬送状態再現装置。
【請求項6】
前記第1のガラス保持部は、ガラス板との接触部分に多孔質シートが貼付されている請求項1〜5のいずれか1項に記載のガラス板の搬送状態再現装置。
【請求項7】
前記第2のガラス保持部は、ガラス板との接触部分に多孔質シートが貼付されている請求項2〜6のいずれか1項に記載のガラス板の搬送状態再現装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−136361(P2012−136361A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288254(P2010−288254)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】