説明

ガラス板の製造装置及び方法

【課題】ガラス板の製造装置に関するものであって、フロートチャンバー106内部の温度勾配を間接的に確認できるように構造が改善したガラス板の製造装置を提供する。
【解決手段】溶融ガラスが流動可能な溶融金属が貯蔵されたボトムブロック110と、上記ボトムブロック110を覆うことができるルーフブロック120と、上記ボトムブロック110及び上記ルーフブロック120が形成するフロートチャンバー106の内部雰囲気の温度勾配を測定及び/または制御するために上記ルーフブロック120の温度を測定できるように、上記ルーフブロック120に予め決定されたパターンで埋設された複数の熱電対とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板の製造装置及び方法に関するものであって、より詳しくは、フロートチャンバー(float chamber)内部の温度勾配などのような、生産されるガラスリボンの主な品質を一定に維持するために、フロートチャンバー内部のガラスリボンの状態に応じてさらに精密な運転条件の確認ができるように構造が改善したガラス板の製造装置及び方法に関する。
【0002】
本出願は、2010年06月01日出願の韓国特許出願第10‐2010‐0051988号に基づく優先権を主張し、該当出願の明細書および図面に開示された内容は、すべて本出願に援用される。
【背景技術】
【0003】
一般に、車両、建築物などの窓ガラス(例えば、ソーダ石灰シリカガラス)のような、産業に利用されるほとんどの平板ガラス(flat glass)は、公知のフロートガラス法で生産されている。また、TFT液晶ディスプレイなどのための薄い板ガラス(thin glass pane)またはガラスフィルム(glass film)(例えば、無アルカリガラス)もフロートガラス法によるガラス、即ち、「フロートガラス」である。
【0004】
従来のガラス板の製造装置の場合、フロート槽(float bath)内部の成形条件を確認する方法は、熱電対を利用して溶融金属の温度を測定する方法と、高温計(pyrometer)を利用してガラスリボンの温度を測定する方法とに分けられる。
【0005】
ところが、熱電対を溶融金属に直接沈殿させて溶融金属の温度を直接確認する方式、または高温計を利用してガラスリボンの温度を直接確認する方式は、その測定位置が制限されるなど様々な制約条件が多いことから、フロートチャンバーの運転条件の変化を検出し、成形される溶融ガラスの全体厚さの変化などの主な品質を一定に維持できないという問題点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するために創案されたものであって、フロートチャンバー内部の雰囲気温度をより正確に測定及び管理するために、設置場所の制約が相対的に少ないルーフブロック(roof block)を活用することで、フロートチャンバー内部の温度勾配を間接的に確認できるように構造が改善したガラス板の製造装置及び方法を提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記のような目的を達成するために、本発明の望ましい実施例によるガラス板の製造装置は、溶融ガラスが流動可能な溶融金属が貯蔵されたボトムブロック(bottom block)と、上記ボトムブロックを覆うことができるルーフブロックと、上記ボトムブロック及び上記ルーフブロックが形成するフロートチャンバーの内部雰囲気の温度勾配を測定及び/または制御するために上記ルーフブロックの温度を測定できるように、上記ルーフブロックに予め決定されたパターンで埋設された複数の熱電対とを備える。
【0008】
望ましくは、上記熱電対は、上記ルーフブロックの幅方向及び/または長手方向に一定の間隔で配置される。
【0009】
上記目的を達成するための本発明の望ましい実施例によるガラス板の製造方法は、ガラス板の製造装置の入口から上記溶融金属の上に溶融状態のガラスを連続的に供給するステップと、上記溶融金属の上で上記ガラスをガラスリボンに成形するステップと、上記ガラスリボンを上記ガラス板の製造装置の出口から連続的に引き出すステップとを含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によるガラス板の製造装置及び方法は、次のような効果を奏する。
【0011】
第一、耐火煉瓦から構成されたルーフブロックの長手方向及び/または幅方向に所定パターンで配置された複数の熱電対を利用することで、設置場所に制約がなくガラスリボンの状態に応じた、一層精度よく運転条件の確認が可能である。
【0012】
第二、フロート槽に設けられたヒーターと内部雰囲気とを精度よく調節できることから、精度の高い運転条件の制御が可能であり、これを操業条件に反映することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本明細書に添付される下記の図面は本発明の望ましい実施例を例示するものであって、発明の詳細な説明とともに本発明の技術思想をさらに理解させる役割を果たすものであるため、本発明はそのような図面に記載された事項にのみ限定されて解釈されてはいけない。
【図1】本発明の望ましい実施例によるガラス板の製造装置を概略的に示す分離斜視図である。
【図2】図1の側断面図である。
【図3】図1及び図2に示す熱電対がルーフ煉瓦に分布されたパターンを示すルーフブロックの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付した図面を参照しながら本発明の望ましい実施例によるガラス板の製造装置及び方法を詳しく説明する。
【0015】
本明細書及び請求範囲に使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはいけず、発明者は自らの発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に則して、本発明の技術的思想に符合する意味と概念とに解釈されなければならない。従って、本明細書に記載された実施例は本発明の最も望ましい一実施例に過ぎず、本発明の技術的思想の全てを代弁するものではないため、本出願時点においてこれらに代替できる多様な均等物と変形例があり得ることを理解しなければならない。
【0016】
図1は本発明の望ましい実施例によるガラス板の製造装置を概略的に示す分離斜視図であり、図2は図1の側断面図であり、図3は図1及び図2に示す熱電対がルーフ煉瓦に分布されたパターンを示すルーフブロックの平面図である。
【0017】
図1から図3を参照すれば、本実施例によるフロート槽100は、溶融金属Mが貯蔵され流動するボトムブロック110と、ボトムブロック110を覆うようにその上部に位置したルーフブロック120と、ルーフブロック120とボトムブロック110との間に介されるサイドシール(side seal)130とを備える。
【0018】
ボトムブロック110、ルーフブロック120、及びサイドシール130は、全体的に入口102と出口104とを有する密閉構造のフロートチャンバー106を構成する。フロートチャンバー106の内部雰囲気は窒素と水素との混合気体からなり、このような混合気体は外部大気より若干高い圧力に維持され、溶融金属M及びリボン状の溶融ガラスGはルーフブロック120の煉瓦層に設けられたヒーター122によって約600〜1300℃程度に維持される。溶融ガラスGは無アルカリガラスまたはソーダ石灰ガラス(soda‐lime glass)などである。フロートチャンバー106の内部における溶融金属Mの流動発生原理と構造、及び溶融ガラスGの投入、リボン化、移動及び排出などは一般的なフロートガラス法で公知されているため、本実施例ではその詳細な説明を省略する。部材番号141は溶融ガラスGを成形するためのトップローラー、部材番号142はヒーター122に電源を供給及び/または調節するためのトランスフォーマー、部材番号143はトランスフォーマー150とヒーター122とを電気的に連結するバスバー(bus bar)、部材番号145は溶融金属Mの流動方向を制御する錫バリア(tin barrier)、部材番号146はフロートチャンバー106内部のガスを外部に排出させるためのベンティングシステム(venting system)、部材番号147はボトムブロック110を冷却させるための冷却部材をそれぞれ示す。
【0019】
ボトムブロック110は、例えば、溶融スズ、溶融スズ合金などのような溶融金属Mを貯蔵可能にフロートチャンバー106の長手方向に長く配置された複数の煉瓦Bから構成され、このような煉瓦Bは金属ケーシング(図示せず)によって囲まれる。
【0020】
サイドシール130は、ボトムブロック110の上面とルーフブロック120の下面とに位置することで、フロートチャンバー106の内部を外部と実質的に遮断して密閉させるためのものである。サイドシール130は実質的に立方体形状を持つ複数の構造物がフロートチャンバー106の長手方向に隣接して配置される。サイドシール130の数箇所にはベンティングシステム146と連通する排出口(図示せず)が形成できる。
【0021】
ルーフブロック120は、フロートチャンバー106が設けられた建物の梁などの上部構造物(図示せず)にぶら下げられている鋼鉄製ルーフケーシング124と、ルーフケーシング124の下部空間に配置されたライニング保温煉瓦製サイドブロック126とを備える。ルーフブロック120の内部空間は、ルーフ煉瓦層によって上部空間と下部空間とに分けられる。
【0022】
本発明の望ましい実施例によるフロートチャンバー106のルーフブロック120は、フロートチャンバー106の内部雰囲気の温度勾配を間接的に確認するために、すなわち、ルーフブロック120の温度を通じてフロートチャンバー106内部の雰囲気温度を正確に測定及び管理するために、ルーフブロック120の長手方向及び幅方向に所定パターンで配列された複数の熱電対150を備える。
【0023】
それぞれの熱電対150は、その一端がルーフブロック120の上部空間からルーフブロック120を貫通してルーフブロック120のほぼ下端まで至るようにルーフブロック120の内部に設けられる。
【0024】
図3を参照すれば、ルーフブロック120の幅方向に5つの熱電対150が実質的に平行に配列される。フロート槽100の長手方向に隣接して配列される熱電対150は、フロートチャンバー106の成形条件上、内部雰囲気の温度測定をさらに精密に行う必要のある区域においてはフロートチャンバー106の長手方向に稠密に配置され、そうではない下流側区域においてはフロートチャンバー106の長手方向の間隔は疎らに配置される。
【0025】
上記熱電対150としては、フロート槽の内部雰囲気温度を測定するのに適した公知の熱電対を用いることができる。部材番号160は、高温計設置のための孔を示す。
【0026】
本発明のフロートガラス成形方法の場合、前述の実施例で説明されたフロートチャンバー106を用い、成形温度が600〜1300℃であるガラスをフロートガラス法によって製造する。すなわち、溶融ガラスGは、溶融金属Mよりも低い粘度を有し、溶融金属Mよりも2/3程度さらに軽い。溶融ガラスGはフロートチャンバーの入口3から連続的にフロートチャンバー106の内部へ供給され、溶融金属Mの上で浮動及び展開されながらフロートチャンバー106の下流側に進む。この過程において、溶融ガラスGは自分の表面張力と重力によって平衡厚さの付近に到逹することになり、ある程度凝固されたガラスストリップまたはガラスリボンGRが形成され、このようなガラスリボンGRはフロートチャンバー106の出口104に隣接したリフトアウトローラー(図示せず)によって引き出されて徐冷炉(図示せず)に向けて引っ張られる。また、入口102から投入される溶融ガラスGの量、リフトアウトローラーの回転速度によって決定される引っ張り速度、及びフロートチャンバー106の内部に設けられたトップローラー140のような成形手段の調節及び変化によって、生産されるガラスリボンGRの厚さを変化させることができる。従って、ガラス板の製造装置100は、循環且つ連続的な工程を含み、絶え間なく永続的に作動でき、可能な限り中断することなく数年以上平板ガラスを製造することができる。ここで、ガラスリボンGの引き出し速度は通常1〜200トン/日程度である。この過程において、フロートチャンバー106のルーフブロック120に所定パターンで設けられた熱電対150を利用してそれぞれの該当する場所におけるルーフブロック120の温度を測定することができ、このような測定値によって、その場所に該当するフロートチャンバー106内部の雰囲気温度が間接的に確認できるので、該当する部分における溶融金属Mの温度及び/または溶融ガラスGの温度勾配が確認できる。このような測定値は、成形されるガラスリボンの必要な厚さと比較することもでき、該当する部分におけるヒーター(122)の温度調節のためのデータ値として参照することもできる。
【0027】
以上のように、本発明は、たとえ限定された実施例と図面とによって説明されたが、本発明はこれによって限定されず、本発明が属する技術分野において通常の知識を持つ者により本発明の技術思想と特許請求範囲の均等範囲内で多様な修正及び変形が可能なのは言うまでもない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融金属が流動可能に貯蔵されたボトムブロックと、
上記ボトムブロックを覆うことができるルーフブロックと、
上記ボトムブロック及び上記ルーフブロックが形成するフロートチャンバーの内部雰囲気の温度勾配の測定及び制御の少なくとも一方を行うために、上記ルーフブロックに予め決定されたパターンで埋設されて、上記ルーフブロックの温度を測定する複数の熱電対と
を備えることを特徴とするガラス板の製造装置。
【請求項2】
上記熱電対は、上記ルーフブロックの幅方向及び長手方向の少なくとも一方に一定の間隔で配置されたことを特徴とする請求項1に記載のガラス板の製造装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2のガラス板の製造装置の入口から上記溶融金属の上に溶融状態のガラスを連続的に供給するステップと、
上記溶融金属の上で上記ガラスをガラスリボンに成形するステップと、
上記ガラスリボンを上記ガラス板の製造装置の出口から連続的に引き出すステップと
を含むことを特徴とするガラス板の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の製造方法に従って製造されたガラス板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−251894(P2011−251894A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123196(P2011−123196)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)