説明

キッチン用水栓

【課題】本発明は、煩雑な作業の多いキッチンにおいても、より精度良く止水や吐水継続を行うことを実現するためのキッチン用水栓を提供すること。
【解決手段】
シンク底面に対して斜め下方に向けて吐水する吐水部と、被検知体の情報を検知信号として収集するセンサ部と、前記センサ部からの検知信号に基づきバルブを開閉し、前記吐水部からの吐止水の制御を行う制御部と、を有するキッチン用水栓であって、前記シンクには、作業台が隣接して設けられており、前記センサ部は、前記作業台と隣接するシンク側面に設けられ、前記吐水部から吐水される吐水流の流れに対して上面視で略直交に、且つシンク底面方向に電波を放射する構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ部を搭載したキッチン用水栓であって、センサ部はマイクロ波等の電波を用いて水流の状態を検知して、吐止水を制御するキッチン用水栓に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来、シンクに光電センサを一対設け、光電センサの近傍に手や食器等の被検知物をかざすことにより、光電センサからの光を遮断することで物体を検知してバルブを開動作させるキッチン用水栓があった(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、特許文献1のように光電センサからの光を遮断が発生すると吐水を開始し、光の遮断が無い場合には止水を行う構成であると、シンク内部に食器や調理器具が多量に入った場合に、光電センサからの光を調理器具等で遮ってしまうために、吐水行われたままの状態となってしまい、使用者が吐水を行いたくない状況においても吐水を行ってしまう恐れがあった。
【0003】
また、一般的に使用されている自動水栓のように、吐水口近傍の物体の有無を検知して吐止水を制御する水栓においても、キッチンのようにシンク内部や吐水口近傍にて様々な動作を行う場所では、使用者が止水を行いたい場面であってもセンサの検知範囲に物体が存在する等が発生し、タイムリーに止水を行なうことができない恐れがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭61−75570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、上記問題を解決するために成されたものであり、煩雑な作業の多いキッチンにおいても被検知体の状態をより精度良く検知し、止水や吐水継続を判断する止水制御をより厳密に行うことを実現するためのキッチン用水栓を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、シンク底面に対して斜め下方に向けて吐水する吐水部と、被検知体の情報を検知信号として収集するセンサ部と、前記センサ部からの検知信号に基づきバルブを開閉し、前記吐水部からの吐止水の制御を行う制御部と、を有するキッチン用水栓であって、前記シンクには、作業台が隣接して設けられており、前記センサ部は、前記作業台と隣接するシンク側面に設けられ、前記吐水部から吐水される吐水流の流れに対して上面視で略直交に、且つシンク底面方向に電波を放射することにより、使用者が洗浄水を使用しているか否かの判定を容易に行なうことが可能となる。本発明においては、吐水部から斜め下方に吐水を行うため、吐水流はシンク底面に対して斜め方向に吐水されている。この吐水流に対して上面視で略直交に電波を放射すると、吐水流の進行方向に対して略直交に電波が当たるため、吐水流のみの動きに対する信号が得られにくくなる。しかし、本発明においては、更に電波をシンク底面方向に電波を放射しているため、シンク底面に対して略直交に落下する物体に対する大きな信号を得ることが可能となる。ここで、洗浄中においては、吐水流は被洗浄体に衝突した際に散乱水となって鉛直方向に落下するため、この散乱水に対する信号は大きく出力される。このため、吐水流を使用している際に発生する散乱水に対しての信号を大きく出力し、吐水流を使用していない吐水流のみの状態に対しての信号を小さく出力することが可能なため、吐水流の状態から吐水流の使用状態を判別することが可能となるため、バルブの開閉制御を行う際に厳密な開閉制御を行なうことが可能となる。
【0007】
また、請求項2記載の発明によれば、前記制御部は、前記センサ部にて検知される吐水流の情報に基づく検知信号に応じてバルブを閉動作させることによって、最適な止水制御を実現することが可能となる。ここで、センサ部からの電波を、上面視で吐水流に略直交に、且つシンク底面方向に下方に電波を放射することで、散乱水の検出がより厳密に行なうことが可能となる。よって、散乱水の情報を基に、被洗浄体が吐水流と衝突していることを認識すれば、シンク上方における吐水流と関与しない動作があった場合においても、止水を精度良く行なうことが可能となるため、使用者に意思に沿った止水制御を実現することが可能となる。
【0008】
また、請求項3記載の発明によれば、前記制御部は、前記センサ部が配置された前記シンクの側面近傍の検知情報に基づいてバルブを開動作させることによって、吐水と止水を判定する基準を明確に分離し、吐水/止水制御をより厳密に行なうことが可能となる。ここで、シンク側面近傍においては、壁近傍であるため調理作業等を行なうことが困難であるため、シンク側面近傍における動作は頻繁に発生しない。よって、吐水判定を行う検知情報をシンク側面近傍の検知情報とすることで、その他のキッチンにおける調理作業等と判別することが可能となるため、一般的に行われるキッチン作業において誤って吐水を開始してしまうといった不具合を解消することが可能となる。
【0009】
また、請求項4記載のように、前記センサ部は、前記作業台と隣接するシンク側面のシンク上方に配置したことによって、止水を行うか否かの判定をより厳密に行なうことが可能となる。ここで、センサ部をシンク側面の上方に設置することで、センサ部から送信される電波の送信範囲は、シンクの上下方向に対してシンク上方からシンク底面までの範囲に放射することが可能となる。これにより、シンク内部を落下する散乱水に対して電波を確実に送信することが可能となるため、散乱水が発生する高さによって検知精度が低下することを抑制することが可能となり、より厳密に止水制御に使用する情報を入手することが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、センサ部から電波を吐水流に対して略直交で、且つシンク下方に対して送信することにより、洗浄中に発生する散乱水の落下方向に電波を送信することが可能となり、且つ吐水流のみに対しては吐水流の進行方向と略直交方向に電波を放射することとなるため、吐水流のみの状態から得られる検知信号よりも散乱水によって得られる検知信号が大きくなり、散乱水を確実に検知することが可能となる。これにより、吐水流を使用している状態を確実に検知することが可能となるため、散乱水がなくなったことを検知すれば、使用者の意図したタイミングにて止水を行なうことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のキッチン用水栓の概略構成図
【図2】本発明のキッチン用水栓の上面視図
【図3】本発明のキッチン用水栓の正面視図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。図1に本発明のキッチン用水栓の概略構成図、図2に図1に示した概略構成図の上面視図、図3に図1に示した概略構成図の正面視図を示す。図1から3は、シンク2底面に対して斜め下方に向けて吐水する吐水部1と、被検知体の情報を検知信号として収集するセンサ部3と、センサ部3からの検知信号に基づきバルブ5を開閉し、吐水部1からの吐止水の制御を行う制御部6と、を有するキッチン用水栓であって、シンク2には、作業台10が隣接して設けられており、センサ部3は、作業台10と隣接するシンク側面に設けられ、吐水部1から吐水される吐水流の流れに対して上面視で略直交に、且つシンク底面方向に電波を放射する構成となっている。ここで、本発明のキッチン用水栓は、シンク底面に対して斜め下方に向けて吐水する吐水部1を有する。斜め下方に吐水ができることによって、例えば、図1のようにシンク後縁側に水栓本体を搭載した場合に、水栓本体の前縁側への突出量が少ない場合においても、吐水を使用する使用者の方向へ吐水を供給することが可能なため、シンク上方に水栓本体が存在しない形態においても使用者が使いやすい場所へ吐水を供給することが可能となる。また、シンク上方に、シンク前縁方向への突出量を持たない水栓本体にすることが可能になるため、シンク内部、又はシンク開口面近傍における調理作業において、水栓本体が視界に入る、調理作業の動線に存在するといった円滑な調理作業の妨げとなることがなくなり、水栓本体を回転させて作業空間から除くといった行動を低減することが可能となる。
【0013】
さらに、本発明においては、シンクに作業台10が隣接して設けられており、センサ部は、作業台10と隣接するシンク側面に設けられている。調理作業においては、作業台10前に立った状態で行う切る、混ぜる、食材や器材をサッと洗うといった作業や、水栓本体の直前に立って調理器具や食材を洗うといった作業があり、調理台と水栓本体の直前、すなわちシンク前縁側に立った状態で吐水を利用することが多くなる。そこで、調理台、シンク前縁からバルブ5の開閉が可能な場所にセンサ部を設置することが望ましい。本発明のように、作業台10と隣接するシンク側面にセンサ部を設置することにより、調理台から操作する際にも水栓に向かう移動の途中で操作を行なうことが可能なため、操作のためだけに大きく身体を移動させるといった身体負荷を低減させることが可能となる。特に、調理台からの洗い作業は、約2から3秒程度の短い時間の洗浄回数が多いため、身体負荷を大幅に低減することが可能となる。また、シンク前縁からの洗いにおいても、シンク後縁側に手を伸ばすといった身体負荷を低減することが可能となる。また、シンク側面に設置しているため、シンク内における調理作業においても邪魔になることなくセンサ部を設置でき、シンク前縁から容易に操作することが可能となる。
【0014】
次に、本発明においては、図2のようにセンサ部から放射される電波が、吐水部1から吐水される吐水流の流れに対して上面視で略直交となるような構成としている。ここで、電波を用いたセンシングにおいて、電波の送信方向と略平行の方向に移動する物体に対して得られる信号は、動いている速度と略同一の速度にて出力されるため、信号レベルも大きく出力される。しかし、電波を用いたセンシングにおいて、電波の送信方向と略直交に移動する物体に対しては、略静止状態と同じように速度成分がほとんど現れない信号が出力される。ここで、センサからは物体が動いていないように見えるため、信号もほとんど現れず、結果として信号レベルが小さな信号として出力される。よって、吐水される流れに対して上面視で略直交に電波を放射することで、吐水流のみの動きに対してはセンサ部から出力される信号が出なくなる傾向になる。
【0015】
次に、図3のようにシンク底面方向に電波を放射する構成としている。ここで、吐水を用いた洗浄作業の際に、被洗浄体を吐水流に挿入すると、吐水流は被洗浄体や被洗浄体を支持する手に衝突し、吐水流の勢いは低減するため、散乱水となってシンク底面に対して略直交に落下する。本発明においては、シンク側面に設置したセンサ部からシンク底面方向に電波を送信しているため、電波の進行方向は鉛直方向のベクトルを持って放射されることとなる。そのため洗浄中に発生する散乱水の移動方向と電波の送信方向が、少なくとも鉛直方向に対して同じベクトルを有するため、散乱水に対するセンサ部からの検知信号には、散乱水の落下速度に該当する速度成分を持った検知信号が出力され、レベルの大きな検知信号を出力することが可能となる。
【0016】
以上のように、図2、及び図3の構成のように、センサ部から放射される電波を、吐水流の流れに対して上面視で略直交、且つシンク底面方向に向けることで、吐水を使用している際に発生する散乱水を検出でき、吐水を使用していない状態の吐水流のみを検出できないこととなる。よって、使用者が吐水を使用しているか否かの判断を吐水流の状態、すなわち散乱水か吐水流のみかで判断することが可能なため、使用者の吐水の使用状況に適したバルブ5の開閉制御を行なうことが可能となる。更に、一般的な物体の有無情報を用いてバルブ5の開閉制御を行う手法では、シンク近傍における調理作業にて、センサ部の検知範囲に進入してしまい、吐水を使用したくない状況において吐水を行ってしまうといった誤検知が起こる可能性が高かったが、本発明の構成にて、吐水流の挙動に応じてバルブ5の開閉制御を行うことが可能な構成にすることにより、煩雑な作業の多いキッチンにおいても、使用者の意思に沿ったバルブ5の制御を実現することが可能となる。
【0017】
ここで、本発明における吐水開始、すなわちバルブ5の開動作制御について記載する。前述したように、キッチンにおける作業は非常に煩雑なため、シンク近傍の使用者の有無などを用いてバルブ5の開動作を制御すると、使用者の意図しないタイミングにて吐水を行ってしまうといった不具合が発生する可能性があった。また、水栓の上方で、作業が行われない場所における使用者の有無等を用いてバルブ5の開動作を制御すると、操作するために大きく手を伸ばすといった動作を行う必要があったり、水栓上方から棚が昇降するような機器を備えた場合には、棚の昇降状態に応じて吐水が不用意に発生する可能性があった。
【0018】
そこで、本発明においては、吐水操作の際に使用者の身体負荷を低減でき、且つ周囲の環境、及び動作にて誤検知しないようにするために、センサ部が設置されたシンク側面近傍の情報に基づいてバルブ5の開動作をする構成としている。ここで、シンク側面近傍においては、作業を行うと手や調理器具が側壁と衝突する恐れがあり、シンク側面近傍における調理作業が少ないことが分かっている(発明者の調査結果に基づく)。そこで、シンク側面近傍における使用者の動作に基づいてバルブ5の開動作制御を行うことで、シンク内部の調理作業があっても誤検知を低減できるキッチン用水栓を提供することが可能となる。
【0019】
ここで、シンク側面に設置されたセンサ部に対して、使用者が吐水を行うために操作を行う場合、シンク側面近傍に対して操作を行うために、操作するために接近した手はシンク側面に対して衝突することを抑制するために減速を行うことになる。本発明においては、このシンク側面に対して手が減速する動きを検知することで、シンク側面に対して使用者が操作を行うために接近したと判断し、この動きをバルブ5の開動作を行うための検知信号として利用する。その後、使用者はシンク側面に対して、手かざしやスナップ動作のような手の加速動作を行うため、バルブ5の開動作を実施するための制御方法としては、まず手の減速を検知し、その後所定の動作を行うことを検知した場合にのみバルブ5の開動作を行うものとしている。このような制御方法により、シンク内部における調理作業での煩雑な動きに反応して使用者の意図しないタイミングで吐水を行なうことが防止することができる。なお、上記のように、センサ部からの検知信号が使用者のどのような動きになっているかを判断するために、制御部6に信号処理回路を設けており、この信号処理回路においては、フィルタやFFTを用いて使用者の動きを時系列に収集し、時間毎の動きの変化(周波数や信号強度)によって、上記のような使用者の動きを判定するものである。
【0020】
また、本発明のキッチン用水栓においては、図3のようにセンサ部をシンク側面のシンク上方に設置する構成としている。センサ部をシンク上方、すなわちシンク開口部近傍に設置することにより、シンク底面に対して下方に放射する電波は、シンク開口面近傍よりシンク底面までの範囲で放射可能となる。これにより、シンク開口面からシンク底面に至る鉛直方向に対しての散乱水の動きに対してセンサ部から検知信号を出力することが可能なため、使用者が吐水をどの場所で使用しても、使用場所にて発生する散乱水がシンク底面まで落下する動きを確実に検知することが可能となるため、使用者が吐水を領しているか否かの判断を確実に行なうことが可能となる。
【0021】
更に、シンク上方にセンサ部を設置することにより、使用者がセンサ部に対して吐水操作を行う際に、シンク内部に対して手を挿入するといった身体負荷を低減することが可能となるため、調理作業中に操作を行うために大きな身体移動を伴うことなくキッチン用水栓を使用することが可能となる。更に、シンク上方に設置をするため、シンク内部に調理器具等を設置した場合にも、センサ部直前に調理器具が積み重なるような状態を回避することが可能となるため、センサ部からの電波をシンク内部に放射することが可能となり、散乱水の動きをより厳密に検出することが可能となる。
【0022】
以上の構成により、センサ部からの電波をシンク底面方向に向けて放射することにより、使用者が吐水を使用した際に発生する散乱水の動きに伴う検知信号を確実に検出することが可能となり、使用者の吐水の利用状況に応じた止水制御を確実に行なうことが可能となる。更に、センサ部の設置されたシンク側面近傍の動きに伴い、吐水制御を行うことが可能な構成のため、シンク内部の調理作業に伴う煩雑な動きに応じて、使用者の意図しないタイミングでの吐水を抑制することが可能なため、使用者の意思に沿った吐止水の制御を実現することが可能なキッチン用水栓を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0023】
1…吐水部、2…シンク、3…センサ部、4…吐水流、5…バルブ、6…制御部、7…電波の放射方向、8…給水管、9…シングルレバー、10…作業台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シンク底面に対して斜め下方に向けて吐水する吐水部と、
被検知体の情報を検知信号として収集するセンサ部と、
前記センサ部からの検知信号に基づきバルブを開閉し、前記吐水部からの吐止水の制御を行う制御部と、
を有するキッチン用水栓であって、
前記シンクには、作業台が隣接して設けられており、
前記センサ部は、前記作業台と隣接するシンク側面に設けられ、
前記吐水部から吐水される吐水流の流れに対して上面視で略直交に、且つシンク底面方向に電波を放射することを特徴とするキッチン用水栓。
【請求項2】
前記制御部は、前記センサ部にて検知される吐水流の情報に基づく検知信号に応じてバルブを閉動作させることを特徴とする請求項1記載のキッチン用水栓。
【請求項3】
前記制御部は、前記センサ部が配置された前記シンクの側面近傍の検知情報に基づいてバルブを開動作させることを特徴とする請求項1から2何れか1項記載のキッチン用水栓。
【請求項4】
前記センサ部は、前記作業台と隣接するシンク側面のシンク上方に配置したことを特徴とする請求項1から3何れか1項記載のキッチン用水栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−21389(P2011−21389A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−167471(P2009−167471)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】