説明

キメライソプレノイド合成酵素およびその使用

【課題】改変されたイソプレノイド合成酵素を提供する。
【解決手段】第二の異種性のイソプレノイド合成酵素に由来する第二のドメインに結合している、第一のイソプレノイド合成酵素に由来する第一のドメインを含むキメライソプレノイド合成酵素ポリペプチドであって、該キメライソプレノイド合成酵素により、第二の異種性のイソプレノイド合成酵素に由来する第二のドメインの非存在下では産生されないイソプレノイド反応産物の産生が触媒される、キメライソプレノイド合成酵素ポリペプチド、また、非対称的な位置に置かれた同種性のドメインを含み、このドメインが、イソプレノイド合成酵素ポリペプチドにおける本来の部位に置かれている場合は産生されないイソプレノイド反応産物の産生を触媒することのできる、キメライソプレノイド合成酵素。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府による助成研究であることの声明
本発明は、一部、政府の資金によって成されたものであり、このため政府は、本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
本発明は、改変されたイソプレノイド合成酵素、それらをコードする遺伝子、およびそれらの使用に関する。
【0003】
イソプレノイドという用語は、イソプレン構成単位に由来する化合物のファミリーを指すのに用いられる。特に、植物のイソプレノイドは、一次および二次代謝物のクラスに分類することができる構造的に多様な化合物のグループを含む(図1)。一次代謝物であるイソプレノイドには、ステロール、カロテノイド、成長調節因子、ならびにドリコール、キノン、および蛋白質のポリプレノール置換基が含まれる。これらの化合物は、それぞれ、膜の完全性、光保護、発生プログラムの調和、および特異的な膜システムへの必須の生化学的官能基の固定のために必須である。二次代謝物に分類されるイソプレノイドには、モノテルペン、セスキテルペン、およびジテルペンが含まれる。これらの化合物は、植物とその環境との間の重要な相互作用を媒介すると言われている。例えば、特異的なテルペノイドは、植物-植物(stevens, 植物のイソペントイド(Isopentoids in Plants)、Nes, W.D., Fuller, G., およびTsai, L.-S.編、Marcel Dekker, ニューヨーク、65〜80頁、1984年より(非特許文献1))、植物-昆虫(GibsonとPickett, Nature 302:608, 1983(非特許文献2))、および植物-病原菌(Stoesslら、Phytochemistry 15:855, 1976(非特許文献3))の相互作用と相関している。
【0004】
これらの多様な一連の化合物に共通な特徴は、それらに普遍的な5個の炭素をもつ構成単位のイソプレンである。「生物起源のイソプレン則」を用いて、イソプレンに由来するすべてのテルペノイドの生合成起源が説明された(Ruzicka, Experienta 10: 357,1953(非特許文献4))。2個の二リン酸化されたイソプレン構成単位(例えば、IPPおよびジメチルアリル)を重合すると、モノテルペンを代表する、環状もしくは直鎖状の最終産物ゲラニル二リン酸(GPP)に転化させることのできる、またはさらに重合するのに用いられる直鎖状C10中間産物が生成される。3つ目のイソプレン単位をGPPに付加すると、ファルネシル二リン酸(FPP)が生成され、これはまたセスキテルペン類を代表する、環状または直鎖状の産物に転化させることができる。重合と化学的な分化を進めてゆくと、例えば、3つ目のIPPをFPPに付加すると、ゲラニルゲラニル二リン酸(GGPP)が生成されるなど、それらの生合成をもたらしたイソプレン構成単位の数によって命名される、その他のクラスのテルペノイド類が産生される。
【0005】
これらの重合反応は、カルボカチオン(ある基質のリン酸部分が失われることによって生じた、電子を持たない炭素原子)の攻撃を、IPP分子上の二重結合の電子を多く持つ炭素原子へと向かわせるプレニルトランスフェラーゼによって触媒される(図2)。これらの反応の求電子性は、より一般的な求核縮合反応に較べて普通ではないと言われているが、イソプレノイド生合成酵素、特に、さまざまなイソプレノイド中間体の環状化の触媒に関与する酵素においては共通の反応であると考えられている(GershenzonとCroteau, 植物における脂質代謝(Lipid Metabolism in Plant)、Moore編、CRCプレス、フロリダ州ボッカレイトン(Boca Raton)340〜388頁(非特許文献5))。GPP、FPPおよびGGPPの環状化をもたらす酵素は、モノテルペン合成酵素、セスキテルペン合成酵素、ジテルペン合成酵素、または合成酵素と呼ばれ、それぞれ、一般的なイソプレノイド経路からの炭素を、モノテルペン類、セスキテルペン類、およびジテルペン類の最終産物に付与する反応を行っている。
【0006】
プレニルトランスフェラーゼと合成酵素反応との間の2つの重要な生化学的区別が、図2に示されている。プレニルトランスフェラーゼは、2つの基質分子の間の炭素-炭素結合形成を触媒するが、一方、合成酵素は、分子内での炭素-炭素結合形成を触媒する。また、プレニルトランスフェラーゼは、結果的にできるポリマーの立体化学または長さに、ほとんど変異のない反応を触媒する。プレニルトランスフェラーゼは、これらの反応を開始するときに許容されうるアリル基基質の長さが異なっている。また、合成酵素は、基質特異的である。しかし、例えば、さまざまなセスキテルペン合成酵素が、異なる反応産物を産生するために同一の基質を使用することができる。
【0007】
環状テルペンなどのイソプレノイドの生合成は、テルペン合成酵素と呼ばれる重要な分枝点酵素によって決定されると言われている。テルペン合成酵素によって触媒される反応は、いくつかの部分的反応を含む複雑な分子内環状化である。例えば、2つのセスキテルペン合成酵素によるFPPの環状化に関する生物有機化学的根拠を、図3に示してある。段階1では、まず、FPPをイオン化した後、二リン酸部分を有する炭素と、離れた位置にある二重結合との間に起こる、分子内での求電子攻撃によって、大環状の中間生成物であるゲルマシンA(germacene A)が形成される。内部的な閉環と、オイデスマン・カルボニウムイオンの形成が段階2を構成する。タバコの5-エピ-アリストロキン合成酵素(TEAS)では、最後の段階は、水素化物移行、メチル基移動、およびC9における脱プロトン化で、段階3aに図示したような5-エピ-アリストロキンが生じる。ヒヨシアマス・ムティカス(Hyoscyamus muticus)のベティスピラジエン(vetispiradiene)合成酵素(HVS)は、段階1と2では同じ機序を有するが、3番目の一部の反応で、電子対の選択的な移動によって、環の縮小が起こるという点で、TEASと異なっている。どちらの場合でも、約64kDのモノマー蛋白質が、部分反応の全ての段階を触媒し、Mg+2以外の補助因子を必要としない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】stevens, 植物のイソペントイド(Isopentoids in Plants)、Nes, W.D., Fuller, G., およびTsai, L.-S.編、Marcel Dekker, ニューヨーク、65〜80頁、1984年
【非特許文献2】GibsonとPickett, Nature 302:608, 1983
【非特許文献3】Stoesslら、Phytochemistry 15:855, 1976
【非特許文献4】Ruzicka, Experienta 10: 357,1953
【非特許文献5】GershenzonとCroteau, 植物における脂質代謝(Lipid Metabolism in Plant)、Moore編、CRCプレス、フロリダ州ボッカレイトン(Boca Raton)340〜388頁
【発明の概要】
【0009】
一般的に、本発明は、第二の異種性のイソプレノイド合成酵素に由来する第二のドメインに結合している、第一のイソプレノイド合成酵素に由来する第一のドメインを含むキメライソプレノイド合成酵素ポリペプチドであって、該キメライソプレノイド合成酵素が、第二の異種性のイソプレノイド合成酵素の第二のドメインの非存在下では産生されないイソプレノイド反応産物の産生を触媒することのできる、キメライソプレノイド合成酵素ポリペプチドを特徴とする。好ましい態様において、このキメライソプレノイド合成酵素は、少なくとも2つの異なるイソプレノイド反応産物を触媒することができ;これらのイソプレノイド反応産物が環状であり;第二の異種性のイソプレノイド合成酵素に由来する第二のドメインも、キメライソプレノイド合成酵素のイソプレノイド反応産物の比率を決定し;第一のイソプレノイド合成酵素に由来する第一のドメインが、植物のイソプレノイド合成酵素であり、かつ第二の異種性のイソプレノイド合成酵素に由来する第二のドメインも、植物のイソプレノイド合成酵素由来である。
【0010】
好ましくは、キメライソプレノイド合成酵素は、すべて本明細書において説明されている、(a)タバコ-ヒヨシアマス(Hyoscyamus)CH4キメライソプレノイド合成酵素;(b)タバコ-ヒヨシアマス(Hyoscyamus)CH10キメライソプレノイド合成酵素;(c)タバコ-ヒヨシアマス(Hyoscyamus)CH11キメライソプレノイド合成酵素;(d)タバコ-ヒヨシアマス(Hyoscyamus)CH12キメライソプレノイド合成酵素;(e)タバコ-ヒヨシアマス(Hyoscyamus)CH13キメライソプレノイド合成酵素;または(f)タバコ-ヒヨシアマス(Hyoscyamus)CH14キメライソプレノイド合成酵素からなる群より選択される。
【0011】
好ましい態様において、キメライソプレノイド合成酵素は、農業上、薬学上、商業上、または産業上、有意なイソプレノイド反応産物(例えば、抗真菌剤、抗細菌剤、または抗腫瘍剤)の産生を触媒する。
【0012】
関連する別の局面において、本発明は、キメライソプレノイド合成酵素ポリペプチドをコードするか、またはこれを含むDNA、ベクター、および細胞(例えば、大腸菌、パン酵母(Saccharomyces cerevisiae)、動物、または植物の細胞)を特徴とする。
【0013】
別の局面において、本発明は、非対称的な位置にある同種性のドメインを含むキメライソプレノイド合成酵素ポリペプチドであって、該ドメインが、イソプレノイド合成酵素ポリペプチドにおける本来の部位に置かれている場合にはイソプレノイド反応産物(好ましくは、環状の産物)の産生を触媒することができるキメライソプレノイド合成酵素のポリペプチドを特徴とする。
【0014】
さらに別の局面において、本発明は、キメライソプレノイド合成酵素ポリペプチドを産生するための方法であって、(a)キメライソプレノイド合成酵素をコードし、細胞内で発現するような位置に置かれたDNAで形質転換された細胞を提供する段階;(b)このDNAが発現されるような条件下で、形質転換細胞を培養する段階;および、(c)キメライソプレノイド合成酵素を回収する段階を含む方法を特徴とする。
【0015】
「イソプレノイド合成酵素」とは、分子内でアリル二リン酸基質(例えば、C10、C15、またはC20のアリル二リン酸基質)の炭素-炭素結合が形成され、イソプレノイド産物(例えば、モノテルペン、ジテルペン、セスキテルペン、またはステロール産物)になることを含む反応を触媒することができるポリペプチドを意味する。このようなイソプレノイド合成酵素の例には、制限はないが、それぞれ、ゲラニル二リン酸(GPP)、ファルネシル二リン酸(FPP)、およびゲラニルゲラニル二リン酸(GGPP)を環状化させる、モノテルペン合成酵素(例えば、リモネン合成酵素)、ジテルペン合成酵素(例えば、カスビン(casbene)合成酵素)、およびセスキテルペン合成酵素(例えば、5-エピ-アリストロキン合成酵素、ベティスピラジエン(vetispiradiene)合成酵素、およびカジネン(cadinene)合成酵素)が含まれる。植物および微生物に由来する多数のテルペン合成酵素が、単離され特徴付けされている(例えば、MoestraとWest, Arch. Biochem. Biophys. 238:325, 1985;HohnとVan Middlesworth, Arch. Biochem. Biophys. 251:756, 1986;HohnとPlattner, Arch. Biochem. Biophys. 272:137, 1989;CaneとPargellis, Arch. Biochem. Biophys. 254:421, 1987;MunckとCroteau, Arch. Biochem. Biophys. 282:58, 1990;Alonsoら、J. Biol. Chem. 267:7582, 1992;Savageら、J. Biol. Chem. 269:4012, 1994;Croteauら、Arch. Biochem. Biophys. 309:184, 1994;Voegeliら、Plant Physiol. 93:182,1990;Guoら、Arch. Biochem. Biophys. 308:103, 1994;および、GrmblielとCroteau、J. Biol. Chem. 259:740, 1984を参照のこと)。一般的に、テルペン合成酵素は、分子量約40〜100 kDの可溶性酵素である。多くのモノテルペン、ジテルペン、およびセスキテルペン合成酵素をコードしている遺伝子について、多くの植物および微生物で報告されている(例えば、HohnとBeremand, Gene 79:131, 1989;ProctorとHohn、J. Biol. Chem. 268:4543, 1993;FacchiniとChappell、Proc. Natl. Acad. Sci. 89:11088, 1992;BackとChappell、J. Biol. Chem. 270:7375, 1995;Colbyら、J. Biol. Chem. 268:23016, 1993;MauとWest、Proc. Natl. Acad. Sci. 91:8497, 1994;Chenら、Arch. Biochem. Biophys. 324:255, 1994;および、Caneら、Biochemistry 33:5846, 1994を参照のこと)。
【0016】
「ポリペプチド」または「蛋白質」とは、長さまたは翻訳後修飾(例えば、グリコシル化またはリン酸化)に関わらず、すべてのアミノ酸鎖を意味する。
【0017】
「結合された」とは、直接的または間接的(すなわち、介在するアミノ酸配列によってドメインが隔離されている)に共有結合されていることを意味する。このようなドメインは、制限ではないが、ペプチド結合や化学結合などのいかなる手段によって結合していてもよい。
【0018】
「ドメイン」とは、ポリペプチドまたは蛋白質の中にある、アミノ酸の連続した配列を意味する。
【0019】
「イソプレノイド」とは、イソプレン構成単位に由来する化合物を意味する。特に、イソプレノイド化合物には、制限ではないが、モノテルペン、ジテルペン、セスキテルペン、およびステロールが含まれる。本明細書で説明されているように、イソプレノイドは、例えば、動物、菌類、または細菌などのさまざまな生物で見出される。
【0020】
「非対称的な位置にある」とは、キメラポリペプチドの中で、天然のポリペプチド中での位置とは異なった部位に位置していることを意味する。
【0021】
「異種性の」とは、異なる起源(この場合には、異なるポリペプチド)に由来することを意味する。
【0022】
「同種性の」とは、同一の起源(この場合には、同一のポリペプチド)に由来することを意味する。
【0023】
本発明のこの他の特徴および利点は、下記の好ましい態様の説明および請求の範囲から明らかになると思われる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
詳細な説明
まず、図面について説明する。
図面
【図1】図1は、イソプレノイド生合成経路を、最終産物のタイプと、それぞれの生理的機能に関して示す概要図である。破線の矢印は、複数の段階、または反応を示している。
【図2】図2は、プレニルトランスフェラーゼとテルペン合成酵素によって触媒される、さまざまな反応を示す概要図である。
【図3】図3は、エレモフィラン(eremophilane)(タバコの5-エピ-アリストロキン合成酵素、TEAS)、およびベティスピラジエン(ヒヨシアマス(Hyoscyamus)ベティスピラジエン合成酵素、HVS)型のセスキテルペン合成酵素の合成反応機構を示す概要図である。部分的反応1および2は、両方の合成酵素型に共通であると考えられる。反応3aと3bの機序における違いにより、示されている反応産物の違いが充分に説明される。
【図4】図4Aは、セスキテルペン合成酵素の中の触媒ドメインをマップするために用いられたキメラ構築物を示す概要図である。線図は、バクテリア発現ベクターpGBT-T19の中に人工的に組み込まれた、野生型(すなわち、TEASとHVS)とキメラ(CH1〜CH14)のセスキテルペン合成酵素遺伝子に関する合成線図を表している。使用することができる制限酵素部位を組合せ、および、PCR、ならびに、都合のよい制限酵素部位をもつPCRプライマーを用いた選択部位の増幅を用いて、遺伝子構築物を調製した。単独の制限酵素部位とアミノ酸位置との対応を記入してある。図4Bは、TEAS、HVS、およびキメラ合成酵素構築物(CH1〜CH14)を発現させる大腸菌TB1細胞の超音波破砕液において、H-FPPを用いて測定された合成酵素の酵素活性を示しているTLC実験の写真である。反応産物を銀化-TLCによって分離し、オートラジオグラフィーによって検出した。銀化-TLCプレートの各レーンにつき0.5 mmの切片における放射活性を、シンチレーション計測器で測定し、TEASおよびHVS特異的な産物に対する領域に関連する放射活性を100%に設定した。
【図5】図5は、イソプレノイド合成酵素の中の、エクソンおよび機能ドメインの関連を示す概要図である。上の線図は、TEAS遺伝子の中のエクソンの構成を示しているが、HVSとカスビン(casbene)合成酵素遺伝子の構成とほぼ一致している。エクソン番号が、上の線図に示されているが、その他のすべての番号は、アミノ酸の位置を表しており、その中のいくつかは、制限酵素部位を示したものに対応している。
【図6】図6は、非活性酵素(QH1)を生成させるために用いられたドメイン交換法を示す概要図である。エクソン4に相当する、不活性なHVSドメインをCH3に置換すると、別の酵素活性をもつ合成酵素になる。
【図7】図7は、キメラの非活性カスビン(casbene)合成酵素を産生するために用いられたドメイン交換法と、考えられる反応産物を示す概要図である。
【図8】図8は、キメラの非活性カジネン(cadinene)合成酵素を産生するために用いられたドメイン交換法と、考えられる反応産物を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
キメライソプレノイド合成酵素
タバコの5-エピ-アリストロキン合成酵素に由来するドメインをコードする遺伝子の一部を、ヒヨシアマス(Hyoscyamus)ベティスピラジエン合成酵素に由来するドメインをコードする遺伝子の一部と置き換えることによって、キメラ合成酵素を発現するよう設計されたプラスミドを作製した。これらのプラスミドは、バクテリアで発現されるため、バクテリア破砕液を調製して、セスキテルペン合成酵素活性を測定した。セスキテルペン合成酵素測定には、アリストロキンとベティスピラジエンの反応産物を区別する銀化薄層クロマトグラフィー(TLC)解析が含まれる(BackとChappell、J. Biol. Chem. 270:7375, 1995)。図4Aに示されているように、14のキメラ合成酵素構築物が作製され、以下のように測定された。
【0026】
タバコ5-エピ-アリストロキン合成酵素(TEAS)とヒヨシアマス(Hyoscyamus)ベティスピラジエン合成酵素(HVS)に対する完全長のcDNAを、pBluescript SK(ストラタジーン社(Stratagene))のEcoRI/XhoI部位にクローニングして、それぞれ、pBSK-TEASとpBSK-HVSプラスミドを作製した(BackとChappell、J. Biol. Chem. 270:7375, 1995)。これらの発現プラスミドのTEASおよびHVS cDNA挿入配列は、翻訳開始コドンがEcoRI制限酵素部位に隣接し、3'ポリAがpSKプラスミドのXhoI部位に隣接する方向になっていた。
【0027】
キメラ合成酵素CH1、CH2、CH5、およびCH7は、タバコとヒヨシアマスの遺伝子の間に見られる、保存されたHindIIIとNdeI制限酵素部位を使用して構築された。CH1は、TEAS遺伝子の5'末端部位(EcoRIからHindIIIの断片に相当する部位)を、HVS遺伝子の3'末端部位(HindIIIからKpnIの断片に相当する部位)とともに、前もってEcoRIとKpnIで制限酵素消化したバクテリア発現ベクターpGBT-T19(ゴールド・バイオテクノロジー社(Gold Biotechnology))にライゲーションして調製した。
【0028】
CH2は、TEAS遺伝子の5'末端部位(EcoRIからNdeIの断片に相当する部位)を、HVS遺伝子の3'末端部位(NdeIからKpnIの断片に相当する部位)とともに、pGBT-T19にライゲーションして調製した。
【0029】
CH5は、HVS遺伝子の5'末端部位(EcoRIからHindIIIの断片に相当する部位)を、TEAS遺伝子の3'末端部位(HindIIIからKpnIの断片に相当する部位)とともに、pGBT-T19にライゲーションして調製した。
【0030】
CH7は、HVS遺伝子の5'末端部位(EcoRIからNdeIの断片に相当する部位)を、TEAS遺伝子の3'末端部位(NdeIからKpnIの断片に相当する部位)とともに、pGBT-T19にライゲーションして調製した。
【0031】
CH3、CH4、CH12、およびCH13は、HVS遺伝子の特定の部分を増幅するために設計されたプライマーを用いて、従来からのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を用いて構築した。また、方向性をもつクローニングを容易にし、オープン・リーディング・フレームを維持するために、プライマーは、都合のよい制限酵素部位を含むように設計した。
【0032】
CH3は、以下のようにして構築した。TEAS遺伝子のEcoRI/ClaI制限酵素断片を単離して、HVS遺伝子のClaI/KpnI断片にライゲーションした。このHVSのClaI/KpnI断片は、DNA鋳型としてpBSK-HVSを用い、5'-d(GGGATCGATGACATAGCCACGTATGAGGTT; 配列番号:1)-3'(ClaI制限酵素部位に下線が施されている)を順方向プライマーに、5'-d(AATACGACTCACTATAG; 配列番号:2)-3'を逆方向プライマー(pBSKのマルチクローニング部位にあるT7配列に相当する)に用いたPCR法によって調製した。この結果生じた制限酵素断片を、pGBT-T19ベクターのEcoRI/KpnI部位の中にライゲーションした。
【0033】
CH4およびCH13も、同じ方法で構築したが、順方向の増幅プライマーとして、それぞれ、5'-d(CGAGTCAACATGGTTTATTGAGGGATA; 配列番号:3)-3'(HincII性下インコ嘘部位に下線が施されている)、および5'-d(TATTCTAGATCTCTATGACGATTATGAA; 配列番号:4)-3'(XbaI制限酵素部位に下線が施されている)を用いた。
【0034】
CH12は、TEAS遺伝子のClaI/KpnI断片を有する、CH4の最初の1326ヌクレオチドに対応するPCR断片を、pGBT-T19ベクターのEcoRI/KpnI部位にライゲーションして調製した。CH4断片は、順方向増幅プライマー、5'-d(GGGAGCTCGAATTCCATGGCCTCAGCAGCAGTTGCAAACTAT; 配列番号:5)-3'(EcoRI制限酵素部位に下線を付し、翻訳開始コドンが太字になっている)と、逆方向プライマー、5'-d(GGGATCGATAACTCTGCATAATGTAGCATT;配列番号:6)-3'(ClaI制限酵素部位に下線が施されている)とを用いて調製した。
【0035】
キメラ合成酵素CH6、CH8、CH9、CH10、CH11、およびCH14は、以下のようにして構築した。HVS遺伝子のEcoRI/HindIII断片と、CH3のHindIII/KpnI断片にライゲーションしてCH6を作製した。CH8は、HVSのEcoRI/NdeI断片を、CH3のNdeI/KpnI断片とライゲーションして作出された。CH9は、CH5のEcoRI/NdeI断片を、HVSのNdeI/KpnI断片とライゲーションして作出された。CH10は、HVSのEcoRI/HindIII断片を、CH4のHindIII/KpnI断片とライゲーションして構築された。CH11は、HVSのEcoRI/NdeI断片を、CH4のNdeI/KpnI断片にライゲーションして構築された。そして、CH14は、CH13のEcoRI/NdeI断片を、対応するpBSK-HVSのDNA断片と置換して作製された。ジデオキシヌクレオチド鎖終結キットを製造業者(U.S.バイオケミカル社(U.S. Biochemical Corp.))の指示にしたがって用い、二本鎖DNAシークエンシングによって、キメラ構築物のヌクレオチドの結合部分を確認した。
【0036】
キメラ合成酵素は、大腸菌TB1細胞の中で発現させた。細菌細胞を増殖させ、遺伝子発現を誘導し、セスキテルペン合成酵素の酵素活性を測定し、また、バクテリアの破砕液における全蛋白質を測定するための実験を、BackとChappellによって説明された方法(Arch. Biochem. Biophys. 315:527, 1994;J. Biol. Chem. 270:7375, 1995)にしたがって行った。ベンゼン:ヘキサン:ジエチルエーテル(50:50:1)中15%硝酸銀に浸漬した展開用G60シリカTLCプレートによって、反応産物を分離した。定性的な評価をするためには、En3hance表面フルオログラフィースプレー(デュポン社(Dupont))によって、TLCプレートにスプレーしてから、−70℃で2〜5日間、コダック(Kodak)XAR-5フィルムに感光させた。定量的な評価を行うためには、TLCプレートのレーン全長から0.5 mmの帯域を掻き取ってシンチレーション用バイアル瓶に入れ、パッカード(Packard)1500液体シンチレーション計測器を用いて放射活性を測定した。また、TEAS、HVS、CH4、およびCH14構築物をバクテリア破砕液で発現させてできる合成酵素活性によって生成される主要な反応産物を、チャッペル(Chappell)ら(Phytochemistry 26:2259, 1987)によって説明された条件にしたがい、ガスクロマトグラフィー(GC)およびガスクロマトグラフィー質量分析(GC-MS)によって確認した。さらに、5-エピ-アリストロキンについて公開されたもの(AnkeとStrener, Planta Med. 57:344, 1991)およびベティスピラジエンについて推定された断片化パターン(Enzellら、Mass Spectrometry Rev. 3:395, 1984)と、質量分析プロファイルを比較した。
【0037】
図4A〜Bで示されているように、タバコのTEAS遺伝子の発現によって生じる主要な反応産物は、5-エピ-アリストロキンであり、また、ベティスピラジエンが、HVS遺伝子の発現によって生じる主要な反応産物であることが判明した。CH1およびCH2の発現によって生成される主な反応産物もまた、pBSK-HVSプラスミドから発現されたHVSについて観察されたのと同じ酵素特異的活性を有しており、HVS特異的(すなわち、ベティスピラジエン)であった。これらの結果から、TEASおよびHVSのアミノ末端部分が、HVSのカルボキシ末端に関して機能的に同等であり、反応産物の特異性に寄与しないことが示された。HVSアミノ末端とTEASカルボキシ末端とを有するCH7は、CH2と逆の構築物であり、これによって生じる合成酵素活性は、TEAS特異的な産物(すなわち、5-エピ-アリストロキン)の発現をもたらすと予想された。免疫検出測定法によって、CH7の発現によって産生された合成酵素蛋白質は、正しいサイズで、予想された量存在するが、酵素活性は検出されないことが明らかにされた。酵素活性がないことは、蛋白質のカルボキシ末端部位とアミノ末端部位との相互作用が、酵素活性に寄与していることを示していた。このような解釈はさらに、CH5とCH6構築物の発現によって生成された酵素の特異的活性を比較することによって裏付けられる。CH5では、(免疫検出によって判定したところ、データは示されていない)発現蛋白質の絶対的なレベルは、他の構築物と同じであったのに、他のキメラ合成酵素よりも、合成酵素の酵素活性の特異的活性が10倍低い産物が発現された。HVSのカルボキシ末端領域を置換すると、CH6によって生成された合成酵素の特異的活性が回復することが分かった。
【0038】
CH2とCH3キメラ合成酵素の比較によって、最終産物形成の特異性が、TEASおよびHVS遺伝子内のNdeIとClaI制限酵素部位に対応する、約181アミノ酸のドメインの中に存在しているという証拠が提供された。CH4の発現は、思いがけず、TEASとHVS両酵素を反映した反応産物を生成することのできるキメラ合成酵素蛋白質の産生をもたらした。本発明者らは、この結果を、タバコ5-エピ-アリストロキン合成酵素の261から379番目のアミノ酸が、TEAS特異的産物(すなわち、cDNAのNdeIからHincIIまでの断片に相当する領域)の原因となり、また、ヒヨシアマス蛋白質の379から442番目のアミノ酸が、HVS特異的産物(すなわち、cDNAのHincIIからClaIまでの断片に相当する領域)の原因になることを示していると解釈した。
【0039】
本発明者らの解釈は、CH11とCH12の発現産物を評価することによって確かめられた。CH11は、ヒヨシアマス遺伝子のNdeIからHincIIまでの断片を、対応するタバコの遺伝子断片と置換したものの代表で、HVS-およびTEAS特異性を有する酵素の産生をもたらした。CH12は、タバコ遺伝子のHincIIからClaIまでの断片を、対応するヒヨシアマス遺伝子断片と置換したものの代表で、HVS-およびTEAS特異性を有する酵素の産生をもたらした。CH11をCH13と比較すると、TEAS特異的産物の原因となるタバコの酵素のドメインの特徴を、さらに精密に調べられる。CH13が、多機能酵素であることが判明したことにより、タバコcDNAのNdeIからXbaIまでの制限酵素部位の間にあるDNA断片によってコードされる81個のアミノ酸が、主なTEAS特異的産物の形成にとって充分であることが示された。この解釈は、CH14のNdeI/XbaI HVS cDNA制限酵素断片の中に含まれているドメインをTEAS遺伝子の断片と置換することによって確かめられた(図4A)。
【0040】
図4Bに示されているように、バクテリアで発現された野生型タバコTEAS遺伝子およびヒヨシアマスHVS遺伝子の主な反応産物を、R値が0.41および0.31である硝酸銀-TLCプレートに移動させたが、これらのR値は、以前、これらの産物をそれぞれ5-エピ-アリストロキンおよびベティスピラジエンと特徴づけたときと同じ値である(BackとChappell, J. Biol. Chem. 270:7375, 1995; Backら、Arch. Biochem. Biophys. 315:527, 1994)。GCおよびGC-MS分析によって、主なTEAS反応産物は、5-エピ-アリストロキン(GC分析からの全ピーク領域の割合に基づくと、全産物の70%)、および二環型のセスキテルペン(20%)(204 m/zにおける[M]イオン)であることが示された。主なHVS反応産物は、ベティスピラジエン(>90%)(41 m/zに基底ピークを有し、175、108、94、および68 m/zにおける一連の推定可能なイオンを有する、204 m/zにおける[M]イオン)であり、また、CH4の主な反応産物は、5-エピ-アリストロキン(18%)、二環型セスキテルペン(43%)、およびベティスピラジエン(32%)であった。
【0041】
さらに、ヒスチジンの標識をつけた組換え合成酵素蛋白質のアフィニティー精製による研究から、他に5つの少量の反応産物があり、この5つのすべてが、全ての反応測定における相対的存在量が同じで、全産物の約1%ずつを示すことが明らかになった。
【0042】
比率決定ドメイン
多機能なキメラ酵素によって産生される主な反応産物の相対比を較べて、合成酵素蛋白質の別のドメインを同定した(図4A)。例えば、構築物CH4、CH10、CH11、およびCH12を発現させて生じた反応産物は、TEAS特異的なものが60〜70%、HVS特異的なものが30〜40%という比率で生成された。これに対し、構築物CH13とCH14の発現からは、逆の比率で反応産物が生じた。この結果から、XbaIからHincIIドメインに包含される領域が、多機能キメラ合成酵素によって生成される反応産物の相対比率に影響を与えることが示された。これらの結果は、合成酵素ペプチドの中にある2つの別の離れたドメインが、生成される反応産物のタイプを決めるのに直接寄与し、また本発明者らが比率決定ドメインと呼ぶ別のドメインによって阻害されることを示している(図5)。
【0043】
部位特異的突然変異誘発
産物の特異性と比率決定ドメインの補足的な分析は、従来の部位特異的突然変異誘発法を用いて行った。この分析結果を、表1に示す(下記)。例えば、アリストロキン特異的ドメインの中に見られるDDXXDモチーフは、TEASおよびHVSを含むさまざまなテルペン生合成酵素に見られる保存配列である。この酸性アミノ酸のクラスターは、他の場合ならば疎水性ポケットにあるはずのFPPの二リン酸部分を中和するのに必要な金属補助因子を配位結合させると言われている。DDXXDモチーフの最初のアスパラギン酸残基(D301)を、グルタミン酸(全体的な電荷は保存される)残基、またはバリン(酸性電荷の正味が減る)残基で置換する(すなわち、D301-E、およびD301-V)と、不活性な酵素が形成される。また、第二のアスパラギン酸(D302)の、グルタミン酸残基(すなわち、D302-E)での保存的置換では、キメラ合成酵素の酵素活性が95%不活性化され、多機能酵素の産物分布が僅かに変化する結果となった。
【0044】
【表I】

【0045】
荷電アミノ酸残基(例えば、ヒスチジンまたはリジン)の重要性を仮定した報告を解析して、比率決定ドメイン内の置換を誘発する部位(すなわち、K347-I、H360-S、H364-S)を推量したところ、これらの部位は、TEASとHVSの一次配列を比較したときに、最も大きな電荷の違いを表すアミノ酸を示していた。解析した3つの突然変異はいずれも、全体的な触媒活性にも、形成される産物の比にも影響を与えなかった。
【0046】
HVS特異的なドメイン内でのアミノ酸置換は、HVS蛋白質とTEAS蛋白質の二次構造予測の比較をもとに選択した。変異したアミノ酸は、主に、電荷という要件のために、これら2つの蛋白質の二次構造モデルにおける構造的な歪みに不均化をもたらすように見えた。しかし、表1(上記)に示されているように、荷電したアミノ酸から非荷電のアミノ酸(すなわち、T408→A、K420→M、H422→A)、または電荷の少ないアミノ酸(N436→S、A437→T、V438→I)への置換を含む置換は、全体的な酵素活性には影響を与えず、いずれの産物の合成比率にも影響を与えなかった。
【0047】
非活性合成酵素
非活性合成酵素を作出するために、図6で概要を示したように、HVSのエクソン4に相当する不活性ドメインを、対応するCH3の活性ドメインと置換する。CH3は、TEASのエクソン6に相当する不活性ドメインをもち、所期の置換を行うために都合のよいNdeIとXbaIという制限酵素部位を持っているため、バクテリアの中で、高レベルに過剰発現させることができる。本明細書で説明されている標準的な分子的技術を用いて、ドメイン交換が行われる。特別の例において、261から342番目のアミノ酸を含み、プライマーの中に適当なNdeIとXbaI部位を含んでいる、エクソン4に相当するHVS cDNAのPCR増幅産物を、CH3の対応領域と置換する。このような構築物を作製するに当たっては、適当なアミノ酸残基と適正なオープン・リーディング・フレームを維持するように注意が払われ、構築物の発現を調べるときには、免疫ブロッティング、ならびに酵素測定法によって、バクテリア破砕液の可溶性画分と不溶性画分における蛋白質のレベルを測定することが必要である。
【0048】
さらに、大規模の酵素反応を行い、反応産物をヘキサンの中に抽出して、HPLC法で産物を精製する。非活性酵素の反応産物の補足的な評価を、TLCを用い、また、実験試料のR値を、TEASおよびHVS酵素によって生成されたR値と比較して行う。反応産物(例えば、ゲルマクリン、またはゲルマクリン様反応産物)の維持時間も、標準的な方法によって、GC、GC-MS、およびNMRを用いてモニターする。
【0049】
非活性合成酵素は、EAS反応およびVS反応に対する、化学的に合理的な説明を確認するのに充分な量のゲルマクリン反応中間産物(または、その誘導体)を提供するのに有用であり、また、全体的な合成酵素反応スキーマの中で、新しい最終段階を導入するために用いることができる鋳型キメラ合成酵素を産生する。
【0050】
キメラのカスビンおよびカジネン合成酵素
キメライソプレノイド合成酵素はまた、立体化学的特性が変化した、新規の大環状イソプレノイド、またはイソプレノイドを作製するためにも有用である。例えば、シクロプロピル側基をもつ大環状ジテルペンの合成を触媒するジテルペン合成酵素であるカスビン合成酵素、また、二環型セスキテルペンの合成を触媒するセスキテルペン合成酵素であるカジネン合成酵素などのイソプレノイド合成酵素は、立体化学的特性が変化した大環状イソプレノイド、またはイソプレノイド反応産物を産生することのできる酵素を作製するために有用なドメインを提供する。このようなキメラ合成酵素を製造するための一般的なスキーマが、図7と8に示されている。
【0051】
このようなキメラのカスビンおよびカジネン合成酵素を構築するために、従来の制限酵素部位と、上記したような選択領域のPCR増幅を用いて、非活性アミノ末端ドメイン(および、その他の必要な合成酵素ドメイン)を、カスビン合成酵素およびカジネン合成酵素のアミノ末端ドメインと置換する。カスビン合成酵素のN末端にあるプラスチド標的配列に相当する配列が、これらの構築物では欠失している。キメラ構築物をバクテリアで発現させ、バクテリアの破砕液で、キメラ合成酵素活性を調べ、また、上記のように、例えば、銀化-TLCを用いて、反応産物の特徴を調べる。バクテリアにおいて、高レベルの合成酵素活性を維持する構築物、および/または、アリストロキン、およびベティスピラジエンの標準とは異なったR値をもって移動する活性生成反応産物は、本発明において有用である。GCによって、反応産物の維持時間も解析し、必要なGC-MSおよびNMRも行う。また、独自の反応産物をもたらす、カスビン合成酵素とカジネン合成酵素のこれらのドメインにも、図4Aで示した実験法に類似した方法を用いて、微細なマッピングを行うことができる。
【0052】
その他のキメライソプレノイド合成酵素の製造
本明細書で説明されている標準的な分子的手法を用いて、既知の、または新規に単離された合成酵素に由来するドメインを含むその他のキメラ合成酵素を容易に製造することができる。例えば、当業者に既知の適当な酵素アッセイ法(例えば、本明細書で説明されているもの)を用いて、または標準的な免疫検出技術によって、このようなキメラ合成酵素の活性を調べてもよい。
【0053】
標準的なクローニング法、および当技術分野において周知の技術を用いて、付加的な合成酵素コード配列を単離することも可能である。例えば、既知の合成酵素ポリペプチドのアミノ酸配列の全部または一部を用いて、合成酵素縮退オリゴヌクレオチドプローブ(すなわち、所定のアミノ酸配列に対して可能なコーディング配列のすべてを混合したもの)を含む合成酵素特異的なオリゴヌクレオチドプローブを容易に設計することができると考えられる。これらのオリゴヌクレオチドは、どちらかのDNA鎖の配列および合成酵素の塩基配列の適当な部位をもとにすることができる。例えば、アウスウベル(Ausubel)ら、1996、分子生物学の最新プロトコール(Current Protocolsin Molecular Biology)、Wiley Interscience, ニューヨーク、およびバーガーとキンメル(Berger and Kimmel)、分子クローニング技術の手引き(Guide to Molecular Cloning Techniques)、1987、Academic Press, ニューヨークに、このようなプローブを設計し、調製するための方法が提供されている。合成酵素の相補配列にハイブリダイズすることができるプローブとして、または、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)クローニング法など、さまざまな増幅技術に対するプライマーとして用いることによって、これらのオリゴヌクレオチドは、合成酵素遺伝子を単離するために有用になる。
【0054】
ハイブリダイゼーション技術とスクリーニングの手順は、当業者に周知であり、例えば、アウスウベル(Ausubel)ら(前記);バーガーとキンメル(Berger and Kimmel)(前記);チェン(Chen)ら、Arch. Biochem. Biophys. 324:255, 1995;およびサムブルック(Sambrook)ら、分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)、Cold Spring Harbor Laboratory Press, ニューヨーク、で説明されている。必要に応じて、異なるオリゴヌクレオチドプローブを組み合わせて、組換えDNAライブラリーのスクリーニングに用いることもできる。このオリゴヌクレオチドは、当技術分野において既知の方法を用いて、検出できるように標識し、組換えDNAライブラリーからのフィルターレプリカを探索するために用いることができる。当技術分野において周知の方法、例えば、アウスウベル(Ausubel)ら(前記)によって、組換えDNAライブラリーを調製するか、商業的な供給源から取得することができる。
【0055】
上で考察したように、合成酵素のオリゴヌクレオチドは、例えば、PCRを用いた増幅クローニング法におけるプライマーとして使用することもできる。PCR法は、当技術分野において周知であり、例えば、PCR技術(PCR Technology),Erlich ed., Stockton Press, London, 1989; PCRプロトコール:方法と応用への手引き(PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications)、(イニスら)Innis et al., eds., Academic Press Inc., New York, 1990; および、アウスウベル(Ausubel)ら(前記)において説明されている。プライマーは、増幅された産物が適当なベクターの中にクローニングされるよう、例えば、適当な制限酵素部位が、(本明細書において説明されているような)増幅された断片の5'末端と3'末端に含まれるように、選択的に設計されている。必要に応じて、PCR「RACE」法、すなわち、cDNA末端の迅速な増幅(Rapid Amplification of cDNA Ends)法(例えば、イニス(Innis)ら、(前記)参照のこと)を用いて、合成酵素遺伝子を単離することができる。この方法によって、合成酵素の配列に基づくオリゴヌクレオチドプライマーが、3'方向、または5'方向に向けられ、重複するPCR断片を生成するために用いられる。これらの重複する3'および5'末端RACE産物を組み合わせて、本来の完全長cDNAを作製する。この方法は、イニス(Innis)ら、(前記);およびフローマン(Frohman)ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:8998, (1988)において記述されている。
【0056】
適当な生物から、有用な合成酵素配列を単離することができる。合成酵素のポリペプチド群との配列の関連性の確認は、従来からのさまざまな方法、例えば、配列比較によって行うことができる。さらに、本明細書で説明されているいずれかの技術によって、合成酵素蛋白質の活性を評価することができる。
【0057】
キメライソプレノイド合成酵素のポリペプチド発現
適当な発現ベクターに組み込まれたキメラ合成酵素DNA(例えば、上術されているキメラ合成酵素のcDNA)、またはインビボにおいてキメラ合成酵素ポリペプチドの発現が上昇するように作製されたプラスミド構築物によって適当な宿主細胞を形質転換して、キメラ合成酵素ポリペプチドを作出することができる。
【0058】
分子生物学の分野における当業者は、非常に多様な発現ベクターのいずれかを用いて組換え蛋白質が提供できることを認識していると思われる。用いる宿主細胞が正確に何であるかは、本発明にとって重要ではない。キメラ合成酵素蛋白質は、例えば大腸菌TB1などの原核生物宿主で産生されてもよく、または、例えばパン酵母(Saccharomyces cerevisiae)、哺乳動物の細胞(例えば、COS 1、またはNIH 3T3細胞)、もしくは、藻類、樹木種、観賞植物種、温帯果実種、熱帯果実種、野菜種、マメ科植物種、単子葉類、双子葉類、または商業上もしくは農業上重要な植物で、これらに限定されない植物を含む、多くの植物細胞のいずれかなどの真核生物宿主で産生されてもよい。適当な植物宿主の特別の例としては、針葉樹、ペチュニア、トマト、ジャガイモ、タバコ、アラビドプシス(Arabidopsis)、レタス、ヒマワリ、ナタネ、アマ、綿花、サトウダイコン、セロリ、ダイズ、アルファルファ、ウマゴヤシ(Medicago)、ハス、アズキ(Vigna)、キュウリ、ニンジン、ナス、カリフラワー、ホースラディッシュ、アサガオ、ポプラ、クルミ、リンゴ、アスパラガス、イネ、トウモロコシ、キビ、タマネギ、オオムギ、カモガヤ、オートムギ、ライムギ、およびコムギが含まれるが、これらに限定はされない。
【0059】
このような細胞は、米国基準培養株コレクション(American Type Culture Collection)(メリーランド州ロックビル)を含む広い範囲の供給源から;または数多い種苗会社、例えばW. アトリー・ブーピー種苗会社(W. Atlee Burpee Seed Co.)(ペンシルバニア州ウォーミンスター)、パーク種苗会社(Park Seed Co.)(サウスカロライナ州グリーンウッド)、ジョニー種苗会社(Johnny Seed Co.)(メイン州アルビオン)、またはノースラップ・キング種苗会社(Northrup King Seeds)(サウスカロライナ州ハーストビル)のいずれかから入手することができる。有用な宿主細胞の説明および由来生物が、Vasil I.K.,(植物の細胞培養と体細胞遺伝学)Cell Culture and Somatic Cell Genetics of Plants, 第I、II、III、実験手順とその応用、Academic Press, ニューヨーク、1984;Dixon, R.A., 植物細胞培養・実用的方法(Plant Cell Culture-A Practical Approach), IRL Press, Oxford University, 1985; Greenら, 植物組織と細胞培養(Plant Tissue and Cell Culture), Academic Press, New York, 1987; Grasser and Fraley, Science 244:1293, (1989)に記載されている。
【0060】
原核生物で発現させるために、キメラ合成酵素ポリペプチドをコードするDNAを、原核生物宿主での発現をもたらすことができる調節シグナルに機能的に結合されたベクターに組み込む。必要に応じて、コーディング配列は、その5'末端に、発現された蛋白質を宿主細胞の細胞周辺腔へ分泌させ、それによって、蛋白質の回収と、その後の精製を容易にさせることのできる既知のシグナル配列をコードする配列を含んでいてもよい。最も頻繁に用いられる原核生物は、大腸菌のさまざまな菌株であるが、別の微生物の菌株を用いてもよい。複製開始点、選抜マーカー、および微生物宿主と親和性のある生物種に由来する調節配列を含むプラスミドベクターが用いられる。このようなベクターの例が、パウエルズ(Pouwels)ら(前記)、またはアウスウベル(Ausubel)ら(前記)に記載されている。一般的に用いられている原核生物の調節配列(「調節因子」ともいわれる)は、本明細書においては、リボソーム結合部位配列とともに、選択的にはオペレーターを伴った、転写開始に関するプロモーターを含むものと定義される。蛋白質の発現を誘発するために一般的に用いられるプロモーターには、ベータ-ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)、ラクトース(lac)プロモーターシステム(Chang et al., Nature 198:1056 (1977))、トリプトファン(Trp)プロモーターシステム(Goeddel et al., Nucl. Acids. Res. 8:4057 (1980))、およびtacプロモーターシステムが含まれ、また、ラムダ由来のPプロモーターと、N-遺伝子リボソーム結合部位とが含まれる。
【0061】
キメラ合成酵素ポリペプチドを産生するために特異的なバクテリア発現システムは、大腸菌pET発現システム(ノバジェン(Novagene)社)である。この発現システムによって、キメラ合成酵素ポリペプチドをコードするDNAをpETベクターの中に、発現が可能なように設計された方向に挿入する。キメラ合成酵素遺伝子が、T7の調節シグナルの制御下に置かれているため、キメラ合成酵素の発現は、宿主細胞の中で、T7 RNAポリメラーゼの発現を誘導することによって誘発される。これは、典型的には、IPTG誘導に応答して、T7 RNAポリメラーゼを発現させる宿主菌株を用いて行われる。組換えキメラ合成酵素ポリペプチドが産生されたら、次に、当技術分野において既知の標準的な方法、例えば、本明細書において説明されている方法によって、これを単離する。
【0062】
キメラ合成酵素ポリペプチドを製造するための、別のバクテリアの発現システムは、pGEX発現システム(ファルマシア(Pharmacia)社)である。このシステムは、遺伝子または遺伝子断片を、迅速に精製し、機能的な遺伝子産物を回収できる融合蛋白質として高レベルで発現されるように設計されたGST遺伝子融合システムを用いている。目的のキメラ合成酵素蛋白質は、日本住血吸虫(Schistosoma japonica)由来のグルタチオンS-トランスフェラーゼ蛋白質のカルボキシ末端に融合させることにより、グルタチオンセファロース4Bを用いたアフィニティークロマトグラフィーによって、バクテリアの破砕液から容易に精製される。グルタチオンを用いた溶出によって、穏やかな条件の下で、融合蛋白質を回収することができる。融合蛋白質からのグルタチオンS-トランスフェラーゼドメインの切断は、このドメインの上流に、部位特異的プロテアーゼの認識部位が存在することによって容易になる。例えば、pGEX-2Tプラスミドで発現された蛋白質は、トロンビンで切断され、pGEX-3Xプラスミドで発現された蛋白質は、第Xa因子で切断される。
【0063】
真核生物での発現では、形質転換の方法と、キメラ合成酵素ポリペプチドを発現させるためのベクターの選択は、選択した宿主システムに依存している。多くの生物の形質転換およびトランスフェクション法が、例えば、パン酵母、サッカロマイセス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)について、例えば、アウスウベル(Ausubel)ら、(前記);WeissbachとWeissbach、植物分子生物学の方法(Methods for Plant Molecular Biology)、Academic Press, 1989;Gelvinら、植物分子生物学マニュアル(Plant Molecular Biology Manual)、Kluwer Academic Publishers, 1990;Kindle, K., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 87:1228 (1990);Potrykus, I., Annu. Rev. Plant Physiol. Plant Mol. Biology 42:205 (1991);およびバイオラド(BioRad)社(カリフォルニア州ハーキュリー)技術会報#1687(バイオリスティック・パーティクル輸送システム)で説明されている。発現ベクターは、例えば、クローニングベクター:実験マニュアル(Cloning Vectors: A Laboratory Manual)(P.H. Pouwelsら、1985、補遺、1987);GrasserとFraley、(前記);クローンテック(Clonetech)社、分子生物学カタログ(カタログ1992/93 分子生物学者のためのツール(Tools for Molecular Biologist)、カリフォルニア州パロアルト);および、上記で引用された参考文献において提供されているものから選択されうる。
【0064】
好ましい真核生物の発現システムの一つに、pMAMneo発現ベクター(クローンテック(Clonetech)社)で形質転換されたマウス3T3線維芽宿主細胞がある。pMAMneoは、デキサメタゾンで誘導できるMMTV-LTRプロモーターに連結したRSV-LTRエンハンサー、哺乳動物のシステムでの複製が可能になるSV40複製開始点、選抜可能なネオマイシン遺伝子、およびSV40のスプライシング、ならびにポリアデニル化部位を提供する。キメラ合成酵素ポリペプチドをコードするDNAを、pMAMneoベクターの中に、発現が可能になるよう設計された方向に挿入する。そして、組換えキメラ合成酵素ポリペプチドを、下記で説明するようにして単離する。pMAMneo発現ベクターと関連して用いることのできる、別の好ましい宿主細胞には、COS細胞とCHO細胞が含まれる(それぞれ、ATCC寄託番号CRL1650とCCL61)。
【0065】
または必要に応じて、キメラ合成酵素ポリペプチドは、安定的に形質転換された哺乳動物の細胞系で産生される。哺乳動物細胞の安定的な形質転換に適した多くのベクターを一般に使用することができる。例えば、Pouwelsら、(前記)を参照のこと。また、このような細胞系を構築するための方法も、例えば、アウスウベル(Ausubel)ら、(前記)におけるように、一般的に使用することができる。一つの例においては、キメラ合成酵素ポリペプチドをコードするcDNAを、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子を含む発現ベクターにクローニングする。プラスミド、すなわちキメラ合成酵素をコードする遺伝子が、宿主細胞ゲノムの中に組み込まれたものを、(アウスウベル(Ausubel)ら、(前記)で説明されているようにして、)0.01〜300μMのメトトレキセートを細胞培養培地に入れることによって選抜する。この優性選抜は、ほとんどの細胞型で行うことができる。DHFRが介在する、形質転換された遺伝子の増幅によって、組換え蛋白質の発現を上昇させることができる。遺伝子増幅されたものを有する細胞系を選択するための方法が、アウスウベル(Ausubel)ら、(前記)で説明されており、このような方法には、一般的に、含有するメトトレキセートの濃度を次第に上昇させた培地の中での培養を延長することが含まれる。この目的で一般的に用いられる、DHFRを含む発現ベクターには、pCVSEII-DHrFおよびpAdD26SV(A)が含まれる(アウスウベル(Ausubel)ら、(前記)で説明されている)。上述の宿主細胞のいずれか、または好ましくは、DHFR欠失CHO細胞系(例えば、CHO DHFR細胞、ATCC寄託番号CRL9096)が、安定的に形質転換された細胞系のDHFR選抜、またはDHFRが介在する遺伝子増幅にとって好ましい宿主細胞である。
【0066】
キメラ合成酵素ポリペプチドは、好ましくは、安定的に形質転換された植物細胞系または遺伝子導入植物によって産生される。植物細胞を安定的に形質転換するのに適した、または遺伝子導入植物を構築するのに適した数多くのベクターが、一般的に利用可能であるが、このようなベクターは、パウエルズ(Pouwels)ら(前記)、WeissbachとWeissbach、(前記)、およびGelvinら、(前記)において説明されている。このような細胞系を構築するための方法は、例えば、WeissbachとWeissbach(前記)およびGelvinら(前記)において説明されている。典型的には、植物発現ベクターは、(1)5'および3'の調節配列の転写制御下にあるクローン化されたキメラ合成酵素、ならびに(2)優性の選抜マーカーを有する。このような植物発現ベクターは、必要に応じて、プロモーター調節領域(例えば、誘導的もしくは構成的な発現、環境もしくは発達段階によって調節される発現、病原体もしくは傷害によって誘導される発現、または細胞もしくは組織特異的な発現をもたらすもの)、転写開始部位、リボソーム結合部位、RNAプロセッシングシグナル、転写終結部位、および/またはポリアデニル化シグナルも含むことができる。
【0067】
本発明のキメラ合成酵素DNA配列は、必要に応じて、さまざまな方法で、他のDNA配列と組み合わせてもよい。本発明のキメラ合成酵素DNA配列を、正常には、合成酵素蛋白質と結合している遺伝子配列の全部または一部とともに用いてもよい。その構成部分において、宿主細胞における転写と翻訳を促進することが可能な転写開始調節領域を有するDNA構築物の中に、キメラ合成酵素蛋白質をコードするDNA配列を結合させる。
【0068】
一般的に、この構築物は、本明細書において考察されているキメラ合成酵素蛋白質を産生するために備えられた、植物中で機能する調節領域を含んでいる。キメラ合成酵素蛋白質、またはその機能的断片をコードするオープン・リーディング・フレームを、その5'端で、自然には、合成酵素の構造遺伝子の5'上流領域に見られるような転写開始調節領域に結合させる。構成的または誘導的な調節を行うための、その他多くの転写開始領域を使用することができる。
【0069】
発生的、細胞、組織、ホルモン、環境的、または病原体によって誘導される発現が望ましい場合に施用するため、適当な5'上流域の非コーディング領域が、別の遺伝子から、例えば、種子の発生、胚発生、葉の発生、または病原体に対する応答の過程で調節される遺伝子から得られる。
【0070】
また、本発明のDNA構築物においては、転写終結調節領域も提供される。転写終結領域は、合成酵素蛋白質をコードするDNA配列、または異なる遺伝子供給源に由来する簡便な転写終結領域によって提供されうる。転写終結領域は、好ましくは、転写終結領域が由来する構造遺伝子の3'側の、少なくとも1〜3 kbの配列を含む。このような遺伝子操作された植物は、下記で考察するような、さまざまな工業的および農業的施用にとって有用である。重要なのは、本発明は、裸子植物および被子植物に施用できることであり、新しい、または改良された、いかなる形質転換法または再生法にも容易に施用できることである。
【0071】
本発明に係る有用な植物のプロモーターの一例は、カウリモウイルスのプロモーター、例えば、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)のプロモーターである。これらのプロモーターは、ほとんどの植物組織での高レベルの発現を付与し、これらのプロモーターの活性は、ウイルスにコードされている蛋白質に依存しない。CaMVは、35Sプロモーターおよび19Sプロモーターの起源である。遺伝子導入植物のほとんどの組織において、CaMVの35Sプロモーターは、強力なプロモーターである(例えば、Odellら、Nature 313:810 (1985)を参照のこと)。CaMVプロモーターはまた、単子葉植物でも活性が高い(例えば、Dekeyserら、Plant Cell 2:591 (1990); TeradaとShimamoto, Mol. Gen. Genet. 220:389, (1990)を参照のこと)。その上、このプロモーターの活性は、CaMVの35Sプロモーターを重複させることによって、さらに上昇させることができる(例えば、Keyら、Science 236:1299 (1987); Owら、Proc. Natl.. Acad. Sci. U.S.A. 84:4870, (1987); およびFangら、Plant Cell 1:141 (1989)を参照のこと)。
【0072】
この他の有用な植物のプロモーターには、ノパリン合成酵素プロモーター(Anら、Plant Physiol. 88:547 (1988))およびオクトピン合成酵素プロモーター(Frommら、Plant Cell 1:977 (1989))が含まれるが、これらに限定はされない。
【0073】
ある施用については、適当な組織の中で、適当なレベルまたは適当な発生時期にキメラ合成酵素遺伝子産物を産生させることが望ましいかもしれない。この目的のために、それぞれが、環境、ホルモン、および/または発生上のシグナルに応答して調節されることが示されている、調節配列に具体化された明確な特徴を有する遺伝子プロモーターの取り合せがある。これらには、熱調節される遺伝子発現(例えば、Callisら、Plant Physiol. 88:965 (1988); TakahashiとKomeda, Mol. Gen. Genet. 219:365, (1989); および、Takahashiら、Plant J. 2:751 (1992)を参照のこと)、光調節される遺伝子発現(例えば、Kuhlemeierらによって説明されている、エンドウのrbcS-3A(Plant Cell 1:471 (1989));Schaeffnerとsheenによって説明されている、トウモロコシのrbcSプロモーター(Plant Cell 3:997 (1991));または、Simpsonらによって説明されている、エンドウに存在するクロロフィルa/b結合蛋白質遺伝子(EMBO J. 4:2723 (1985)))、ホルモン調節される遺伝子発現(例えば、Marcotteら(Plant Cell 1:969 (1989))によって説明されている、コムギのEm遺伝子に由来するアブシジン酸(ABA)応答性配列);Straubら(Plant Cell 6:617 (1994)), Shenら、(Plant Cell 7:295 (1994))によって、オオムギとアラビドプシスに関して説明されている、ABAによって誘導されるHVA1とHVA22、およびrd29Aプロモーター)、ならびに傷害誘導による遺伝子発現(例えば、Siebertzらによって説明されているwunI(Plant Cell 1:961 (1989)))、または器官特異的な遺伝子発現(Roshalらによって説明されている、塊茎特異的な貯蔵蛋白質遺伝子(EMBO J. 6:1155 (1987));Schernthanerらによって説明されている、トウモロコシ由来の23kDaのゼイン遺伝子(EMBO J. 7:1249 (1988));もしくは、Bustosらによって説明されている、インゲンマメのβ-ファセオリン遺伝子(Plant Cell 1:839 (1989)));本明細書によって参照として組み込まれる米国特許出願第08/471,983号、第08/443,639号、および第08/577,483号において、Chappellらによって説明されている、病原体に誘導される遺伝子発現をもたらす遺伝子プロモーターが含まれる。
【0074】
また、植物発現ベクターは、選択的に、例えば、効率的なRNA合成と蓄積にとって重要であることが判明しているイントロンなどのRNAプロセッシングシグナルを含むことができる(Callisら、Genes and Dev. 1:1183 (1987))。RNAのスプライス配列の位置は、植物における導入遺伝子の発現レベルに劇的な影響を与えることができる。この事実から考えると、遺伝子発現のレベルを調節するために、導入遺伝子のキメラ合成酵素ポリペプチドをコードする配列の上流または下流に、イントロンを置くことができよう。
【0075】
前記の5'調節制御配列に加えて、発現ベクターは、一般的に、植物遺伝子の3'領域に存在する'調節制御領域を包含することもできる(Thornburgら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 84:744 (1987); Anら、Plant Cell 1:115 (1989))。例えば、mRNAの安定性を高めるために、発現ベクターの中に、3'ターミネーター領域を包含させることができる。このようなターミネーター領域の一つに、ジャガイモのPI〜IIターミネーター領域に由来するものがある。さらに、一般的に用いられるターミネーターには、オクトピンまたはノパリンの合成酵素のシグナルに由来するものがある。
【0076】
植物の発現ベクターは、典型的には、形質転換された細胞を同定するために用いられる優性の選抜マーカーも含んでいる。植物システムにとって有用な選抜用遺伝子には、抗生物質抵抗性遺伝子、例えば、ハイグロマイシン、カナマイシン、ブレオマイシン、G418、ストレプトマイシン、またはスペクチノマイシンをコードする遺伝子が含まれる。光合成に必要な遺伝子も、光合成欠損株の選抜マーカーとして用いることができる。または、クラゲの、アエクオレア・ビクトリア(Aequorea victoria)に由来する緑色蛍光蛋白質を選抜マーカーとして用いることもできる(Sheenら、Plant J. 8:777, 1995; Chiuら、Current Biology 6:325 (1996))。最後に、除草剤抵抗性をコードする遺伝子を選抜マーカーとして用いることもできるが、有用な除草剤抵抗性遺伝子には、ホスフィノトリシン(phosphinothricin)アセチルトランスフェラーゼ酵素をコードし、広範な適用範囲をもつ除草剤の商標登録バスタ(Basta)(ホエヒスト(Hoechst)社、ドイツのフランクフルト)に対する抵抗性を付与するbar遺伝子が含まれる。
【0077】
特定の選抜用薬剤に対する植物細胞の感受性を判定し、また、この薬剤が、形質転換細胞の全部ではなくとも、そのほとんどを効果的に死滅させる濃度を判定することによって、選抜マーカーの効率的な使用が容易になる。タバコの形質転換に対する有用な抗生物質濃度には、例えば、75〜100μg/ml(カナマイシン)、20〜50μg/ml(ハイグロマイシン)、または5〜10μg/ml(ブレオマイシン)が含まれる。除草剤抵抗性に関する形質転換体を選抜するために有用な方法が、例えば、Vasilら、前記によって説明されている。
【0078】
分子生物学の技術分野、特に、植物分子生物学の技術分野の当業者には、遺伝子発現のレベルは、プロモーターの組合せや、RNAプロセッシングシグナル、および終結因子に依存するだけでなく、選抜マーカーの遺伝子発現のレベルを高めるために、これらの因子が、どのように用いられているかに依存する。
【0079】
植物の形質転換
植物の発現ベクターの構築に当たって、植物宿主の中にベクターを導入するためにいくつかの標準的な方法を用いることができ、それによって、遺伝子導入植物を作出することができる。これらの方法には、(1)アグロバクテリウム媒介による形質転換(A.ツメファシエンス(A. tumefaciens)またはA.リゾゲネス(A. Rhizogenes))(例えば、LichtensteinとFuller、遺伝子工学(Genetic Engineering)、第6巻、PWJ Rigby編、ロンドン、Academic Press, 1987; および、Lichtenstein, C.P.,とDraper, J.、DNAクローニング(DNA Cloning)、第II巻、D.M. Glover編、オクスフォード、IRI Press, 1985を参照のこと)、(2)パーティクル輸送システム(例えば、Gordon-Kammら、Plant Cell 2:603 (1990); または、バイオラド(BioRad)社(カリフォルニア州ハーキュリー)技術会報#1687、前記を参照のこと)、(3)マイクロインジェクションプロトコール(例えば、Greenら、前記を参照のこと)、(4)ポリエチレングリコール(PEG)法(例えば、Draperら、Plant Cell Physiol. 23:451 (1982); または、例えば、ZhangとWu, Theor. Appl. Genet. 76:835 (1988)を参照のこと)、(5)リポソームが媒介するDNA取り込み(例えば、Freemanら、Plant Cell Physiol. 25:1353 (1984)を参照のこと)、(6)エレクトロポレーションプロトコール(例えば、Gelvinら、前記;Dekeyserら、前記;Frommら、Nature 319:791 (1986); Sheen, Plant Cell 2:1027 (1990); または、JangとSheen、Plant Cell 6:1665(1994)を参照のこと)、および(7)ボルテックス法(例えば、Kindle、前記を参照のこと)が含まれる。形質転換の方法は、本発明にとって重要ではない。効率的な形質転換を提供する方法であれば、いかなる方法を用いてもよい。作物やその他の宿主細胞を形質転換するために、より新しい方法が使用できれば、それらを直接用いることができる。
【0080】
以下は、特定の技術の一つのである、アグロバクテリウム媒介による植物形質転換の概略を示す実施例である。この技術によると、植物細胞のゲノムの中に移行すべき遺伝子を操作するための一般的な処理は2つの段階で行われる。まず、大腸菌の中で、クローニングとDNAの改変が行われ、目的の遺伝子構築物を含むプラスミドを、接合またはエレクトロポレーションによって、アグロバクテリウムの中に移行させる。次に、この結果できたアグロバクテリウム菌株を用いて、植物細胞を形質転換させる。このように、汎用化された植物発現ベクター用に、プラスミドは、アグロバクテリウムの中での複製を可能にする複製開始点と、大腸菌において機能する高コピー数複製開始点とを有する。これによって、アグロバクテリウムに移行させ、その後、植物に導入する前に、大腸菌の中で、導入遺伝子の製造および試験を容易に行うことができる。一つは、バクテリアでの選抜を行うために、例えば、ストレプトマイシンに抵抗性の遺伝子を、もう一つは、植物の中で機能する抵抗性遺伝子、例えば、カナマイシン抵抗性、または除草剤抵抗性をコードする遺伝子を、ベクターに含ませることができる。また、ベクター上には、1個以上の導入遺伝子を付加し、またアグロバクテリウムの移行機能によって認識されると、植物に移行するDNA領域の範囲が定められる、方向性をもったT-DNAの境界配列を付加するための制限酵素部位が存在する。
【0081】
別の実施例においては、クローニングされたDNAが沈着しているタングステン製のミクロ発射物を細胞の中に打ち込むことによって植物細胞を形質転換する。打ち込みに用いられるバイオリスティック装置(バイオラド(Bio-Rad)社)において、火薬の装填(22口径のパワーピストンツールチャージ(Power Piston Tool Charge))または空気発破により、プラスチック製のマクロ発射物が銃身を通過する。その上にDNAが沈積しているタングステン粒子の懸濁液のアリコートを、プラスチック・マクロ発射物の前部に配置する。後者は、マクロ発射物が通り抜けるのには小さすぎる穴の開いたアクリル製の停止板のところで発火する。その結果、プラスチック製のマクロ発射物は、停止板に打ち付けられて、タングステン製のミクロ発射物が、停止板の穴を通り抜けて、その標的に向かって進み続ける。本発明にとって、標的は、植物細胞、組織、種子、または胚のいずれであってもよい。細胞の中に導入された、ミクロ発射物上のDNAは、核またはクロロプラストのいずれかに組み込まれる。
【0082】
一般的に、植物細胞における導入遺伝子の移行および発現は、当業者にとって、今や日常的な作業であり、植物における遺伝子発現実験を行い、農業的または商業的な利益をもたらす改良された植物変種を作出するための主要な手段となっている。
【0083】
トランスジェニック植物の再生
植物発現ベクターで形質転換された植物細胞は、例えば、単細胞、カルス組織、または葉片から、標準的な植物組織培養技術によって再生させることができる。ほとんどの植物から、さまざまな細胞、組織、および器官をうまく培養して、全植物体を再生させることができ、このような技術は、例えば、Vasil、前記;Greenら、前記;WeissbachとWeissbach、前記;およびGelvinら、前記において説明されている。
【0084】
特定の実施例において、EAS4プロモーターおよびノパリン合成酵素ターミネーターの制御下にあり、選抜マーカー(例えば、カナマイシン抵抗性)を有しているクローン化されたキメラ合成酵素ポリペプチドを、アグロバクテリウムに形質転換する。ベクターを有するアグロバクテリウムによる葉片(例えば、タバコの葉片)の形質転換を、Horschら(Science 227:1229 (1985))によって説明されているようにして行う。数週間後(例えば、3〜5週間後)、カナマイシン(例えば、100μg/ml)を含む植物組織培養培地上で、形質転換されたと推定されるものを選抜する。次に、カナマイシン抵抗性の実生を、発根させるためのホルモンを含まない植物組織培養培地上に置く。そして、温室で生育させるために、カナマイシン抵抗性植物体を選抜する。必要に応じて、自殖させた遺伝子導入植物から採取した種子を、土を含まない培地に播いて、温室で育てることもできる。ホルモンを含まずカナマイシンを含む培地上に、表面滅菌した種子を播いて、カナマイシン抵抗性の後代を選抜する。導入遺伝子の組み込みの解析を、標準的な手法で行う(例えば、Ausubel、前記;Gelvinら、前記を参照のこと)。
【0085】
次に、標準的な免疫ブロットおよびDNA検出技術によって、選抜マーカーを発現させているトランスジェニック植物をスクリーニングする。陽性のトランスジェニック植物およびそのトランスジェニック後代は、いずれも、同じ導入遺伝子について構築されたその他のトランスジェニック植物体に較べてユニークである。植物のゲノムDNAへの導入遺伝子DNAの組み込みは、ほとんどの場合無作為で、組み込まれた部位が、導入遺伝子の発現レベルや、組織および発生における発現パターンに大きく影響する可能性がある。このため、最も適当な発現プロファイルをもつ植物体を同定し、選抜するためには、通常、各導入遺伝子について、数多くのトランスジェニック系統をスクリーニングする。
【0086】
トランスジェニック系統は、導入遺伝子の発現レベルに関して、広く評価される。まず、発現陽性植物を同定し定量するために、RNAレベルでの発現が評価される。RNA解析を行うための標準的な技術が用いられ、これには、導入遺伝子のRNA鋳型のみを増幅するように設計されたオリゴヌクレオチドプライマーを用いたPCR増幅アッセイ法、および導入遺伝子特異的なプローブを用いた溶液ハイブリダイゼーションアッセイ法(例えば、Ausubel、前記を参照のこと)が含まれる。次に、RNA陽性植物体を、キメラ合成酵素特異的な抗体を用いたウエスタン免疫ブロット解析(例えば、Ausubel、前記を参照のこと)によって、蛋白質発現に関する解析を行う。さらに、遺伝子導入組織の中での発現部位の位置を見るために、それぞれ、導入遺伝子特異的なヌクレオチドプローブと抗体を用いて、標準的なプロトコールに従ったインサイチューハイブリダイゼーションおよび免疫細胞化学法を行うことができる。
【0087】
いずれかの細胞または遺伝子導入植物体(例えば、上記したもの)の中で、組換えキメラ合成酵素蛋白質が発現されると、例えば、アフィニティークロマトグラフィーを用いて、それを単離することができる。一つの実施例において、(例えば、Ausubel(前記)で説明されているようにして、または、いずれかの標準的な技術によって産生された)抗キメラ合成酵素抗体をカラムに付着させ、ポリペプチドを単離するために用いることができる。アフィニティークロマトグラフィーを行う前に、標準的な方法(例えば、Ausubel(前記)を参照のこと)によって、キメラ合成酵素を産生する細胞の破砕および分画を行うことができる。単離されたら、必要に応じて、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって(例えば、Fisher、生化学および分子生物学における実験技術(Laboratory Techniques In Viochemistry And Molecular Biology)、WorkとBurdon編、Elsevier、1980を参照のこと)、さらに組換え蛋白質を精製することができる。
【0088】
ポリペプチドの発現および精製に関するこれらの一般的な技術を用いて、有用なキメラ合成酵素の断片または相同化合物を産生し単離することもできる。
【0089】
用途
本明細書において説明されている本発明は、さまざまな農業上、薬学上、工業上、および商業上の目的にとって有用である。例えば、方法、DNA構築物、蛋白質、ならびに本明細書において説明されている細菌、酵母および植物を含む遺伝子導入生物は、イソプレノイド合成酵素を改良し、製造し、産生するために有用である。
【0090】
上記に示した本発明者らの結果は、キメラ合成酵素を提供することによって、イソプレノイド合成酵素活性を調整することが可能なことを明らかにしている。このような方法で、さまざまな合成酵素反応産物を改変し、制御し、または操作することができ、数多くの合成酵素反応産物、例えば、新規のモノテルペン、ジテルペン、およびセスキテルペンを産生させることができる。このような化合物は、ファイトアレキシン、殺虫剤、香水、ならびに抗細菌剤および抗菌剤などの薬剤として有用である。
【0091】
例えば、抗菌、抗細菌、抗マラリア、および抗腫瘍特性を有する化合物を産生するのに有用な、数多くのキメライソプレノイド合成酵素を作製することができる。例えば、抗菌イソプレノイドの産生を触媒することができるキメラ合成酵素を産生するために、カスビン合成酵素のC末端部位(MauとWest、Proc. Natl. Acad. Sci. 91:8497,1994)を、TEAS、HVS、またはCH9のN末端ドメインに結合させる。抗細菌性化合物の産生を触媒することができるキメラ合成酵素を産生するために、シクロファルネセノン(cyclofarnesenone)合成酵素(Habtermarianら、J. Nat. Prod. 56:140, 1993)のC末端部位を、TEAS、HVS、またはCH9のN末端ドメインに結合させる。抗マラリア性化合物の産生は、アルテミシアン(artemisian)合成酵素(El-Feralyら、J. Nat.Prod. 52:196, 1989)に由来するC末端ドメインと、TEAS、HVS、またはCH9に由来するN末端ドメインとを有するキメラ合成酵素を用いて行われる。抗腫瘍化合物を産生することができる合成酵素は、タクサジエン(taxadiene)合成酵素(Koeppら、J. Biol. Chem. 270:8686, 1995)、またはヘレナリン(helenalin)合成酵素(Leeら、Sciecnce 196:533, 1977)のC末端部位を、TEAS、HVS、またはCH9のN末端ドメインに結合させることによって産生される。
【0092】
本発明はまた、殺虫剤を精製することのできるキメラ合成酵素を産生するために有用である。このようなキメラ合成酵素は、カジネン合成酵素(Chenら、Arch. Biochem. Biophys. 324:255, 1995)のC末端部位を、TEAS、HVS、またはCH9のN末端ドメインに結合させることによって作製される。
【0093】
最後に、キメラ合成酵素は、新規の調味料および香料を作出するためにも有用である。ある特定の実施例において、新規の調味料および香料を産生するために、リモネン合成酵素(Colbyら、J. Biol. Chem. 268:23016, 1993)のC末端部位を、TEAS、HVS、またはCH9のC末端ドメインに結合させることによって作製される。
【0094】
本明細書において言及されている全ての出版物および特許は、各々の出版物または特許が、特別にまたは個別に、参照として組み入れられているのと全く同じように、本明細書において参照として組み入れられる。
【0095】
その他の態様
前記の説明から、当業者は、本発明の本質的な特徴を容易に確認することができ、さまざまな用法や条件に適合させるために、本発明にさまざまな変更や修正を加えることができると思われる。したがって、この他の態様も、請求の範囲に包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第二の異種性のイソプレノイド合成酵素に由来する第二のドメインに結合した、第一のイソプレノイド合成酵素に由来する第一のドメインを含むキメライソプレノイド合成酵素ポリペプチドであって、該キメライソプレノイド合成酵素が、該第二の異種性のイソプレノイド合成酵素に由来する第二のドメインの非存在下では産生されないイソプレノイド反応産物の産生を触媒することのできるものである、キメライソプレノイド合成酵素。
【請求項2】
少なくとも2つの異なるイソプレノイド反応産物を触媒することができる、請求項1記載のキメライソプレノイド合成酵素。
【請求項3】
第二の異種性のイソプレノイド合成酵素の第二のドメインが、該キメライソプレノイド合成酵素のイソプレノイド反応産物の比率も決定する、請求項1記載のキメライソプレノイド合成酵素。
【請求項4】
第一のイソプレノイド合成酵素に由来する第一のドメインが、植物のイソプレノイド合成酵素であり、第二の異種性イソプレノイド合成酵素の第二のドメインが、植物のイソプレノイド合成酵素に由来するものである、請求項1記載のキメライソプレノイド合成酵素。
【請求項5】
(a)タバコ-ヒヨシアマス(Hyoscyamus)CH4キメライソプレノイド合成酵素;(b)タバコ-ヒヨシアマス(Hyoscyamus)CH10キメライソプレノイド合成酵素;(c)タバコ-ヒヨシアマス(Hyoscyamus)CH11キメライソプレノイド合成酵素;(d)タバコ-ヒヨシアマス(Hyoscyamus)CH12キメライソプレノイド合成酵素;(e)タバコ-ヒヨシアマス(Hyoscyamus)CH13キメライソプレノイド合成酵素;または(f)タバコ-ヒヨシアマス(Hyoscyamus)CH14キメライソプレノイド合成酵素からなる群より選択される、請求項4記載のキメライソプレノイド合成酵素。
【請求項6】
抗真菌剤の製造を触媒する、請求項1記載のキメライソプレノイド合成酵素。
【請求項7】
抗細菌剤の製造を触媒する、請求項1記載のキメライソプレノイド合成酵素。
【請求項8】
抗腫瘍剤の製造を触媒する、請求項1記載のキメライソプレノイド合成酵素。
【請求項9】
請求項1記載のキメライソプレノイド合成酵素のポリペプチドをコードするDNA。
【請求項10】
請求項9記載のDNAを含むベクター。
【請求項11】
請求項9記載のDNAを含む細胞。
【請求項12】
大腸菌である、請求項11記載の細胞。
【請求項13】
非対称的な位置に置かれた同種性のドメインを含むキメライソプレノイド合成酵素であって、該キメライソプレノイド合成酵素が、該ドメインがイソプレノイド合成酵素ポリペプチドにおける本来の部位に置かれている場合は産生されないイソプレノイド反応産物の産生を触媒することのできるものである、キメライソプレノイド合成酵素ポリペプチド。
【請求項14】
キメライソプレノイド合成酵素ポリペプチドを製造するための方法であって、
(a)細胞内で発現するような位置に置かれた請求項9記載のDNAで形質転換された細胞を提供する段階、
(b)該DNAを発現させるための条件下で該形質転換細胞を培養する段階、および
(c)該キメライソプレノイド合成酵素、を回収する段階を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−5499(P2012−5499A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186897(P2011−186897)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【分割の表示】特願平9−537218の分割
【原出願日】平成9年4月11日(1997.4.11)
【出願人】(508172018)ボード オブ トラスティーズ オブ ザ ユニバーシティー オブ ケンタッキー (1)
【Fターム(参考)】