説明

キメラレチノイドX受容体および新規エクジソン受容体−ベースの誘導性遺伝子発現システムにおけるそれらの使用

【課題】新規なエクジソン受容体/キメラレチノイドX受容体−ベースの誘導性遺伝子発現システム、および遺伝子治療、蛋白質および抗体の大規模生産、細胞−ベースの高スループットスクリーニングアッセイ、機能的ゲノミクスおよびトランスジェニック生物における特性の調節のごとき適用のための宿主細胞において遺伝子発現を変調する方法を提供する。
【解決手段】i)トランス活性化ドメイン;およびii)a)脊椎動物RXRのヘリックス1−6および無脊椎動物RXRのヘリックス7−12;b)脊椎動物RXRのヘリックス1−7および無脊椎動物RXRのヘリックス8−12;またはc)脊椎動物RXRのヘリックス1−8および無脊椎動物RXRのヘリックス9−12を含むキメラレチノイドX受容体リガンド結合ドメインを含むハイブリッドポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバイオテクノロジーまたは遺伝子工学の分野に関する。具体的には、本発明は遺伝子発現の分野に関する。さらに詳しくは、本発明は新規エクジソン受容体/キメラレチノイドX受容体−ベースの誘導性遺伝子発現システムおよびこの誘導性遺伝子発現システムを用いて宿主細胞内での遺伝子の発現を変調する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の刊行物が本明細書中で引用され、その開示は出典明示によりその全体を本明細書の一部とみなす。しかしながら、本明細書中におけるいずれの文献の引用も、かかる文献が本出願に対する「先行技術」として利用できることを認めたものと理解されるべきではない。
【0003】
遺伝子工学の分野においては、遺伝子発現の正確な制御は、発生および他の生理学的プロセスを研究し、操作し、および制御するための価値があるツールである。遺伝子発現は、多数の特異的蛋白質−蛋白質相互作用に関連する複雑な生物学的プロセスである。遺伝子発現が蛋白質合成における最初の工程として必要なRNAを生産するように遺伝子発現がトリガーされるためには、転写アクチベーターが、遺伝子転写を制御するプロモーターの近くに運ばれなければならない。典型的には、転写アクチベーターそれ自体は、遺伝子のプロモーター領域に存在するDNA結合部位に結合する少なくとも1つのDNA結合ドメインを有する蛋白質に関連する。かくして、遺伝子発現が起こるためには、DNA結合ドメインおよび該DNA結合ドメインから適当な距離をおいて位置するトランス活性化ドメインを含む蛋白質が遺伝子のプロモーター領域中の正しい位置に運ばれなければならない。
【0004】
伝統的なトランスジェニックアプローチは、細胞型特異的プロモーターを利用して、設計されたトランスジーンの発現を駆動させる。トランスジーンを含有するDNA構築体が、まず、宿主ゲノムに組み込まれる。転写アクチベーターによってトリガーされると、与えられた細胞型でトランスジーンの発現が起こる。
【0005】
細胞中での外来性遺伝子の発現を調節する他の手段は誘導性プロモーターを介するものである。そのような誘導性プロモーターの使用の例は、PR1−aプロモーター、原核生物リプレッサー−オペレーターシステム、免疫抑制−イムノフィリンシステム、およびステロイドホルモン受容体システムのごとき高等真核生物転写活性化システムを含み、これは後記する。
【0006】
病原体の攻撃後の全身獲得抵抗性応答(systemic acquired resistance response)の間に、タバコからのPR1−aプロモーターが誘導される。PR1−aの使用は限定されるであろう。何故ならば、それは、しばしば、内因性物質、ならびに病原体、UV−B放射線および汚染物のごとき外来因子に応答するからである。熱ショック、インターフェロンおよび重金属によって誘導されたプロモーターに基づく遺伝子調節システムが記載されてきた(Wurnら、1986、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:5414−5418、Arnheiterら、1990、Cell 62:51−61、Filmusら、1992、Nucleic Acids Research 20:27550−27560)。しかしながら、これらのシステムは、非−標的遺伝子の発現に対するその効果のため制限を有する。これらのシステムは遺漏性(leaky)でもある。
【0007】
原核生物リプレッサー−オペレーターシステムは細菌リプレッサー蛋白質およびそれらが結合する独自のオペレーターDNA配列を利用する。細菌Escherichia coliからのテトラサイクリン(「Tet」)およびラクトース(「Lac」)リプレッサー−オペレーターシステムが、遺伝子発現を制御するために植物および動物で用いられてきた。Tetシステムにおいて、テトラサイクリンはTetRリプレッサー蛋白質に結合し、立体配座の変化をもたらし、これはオペレーターからリプレッサー蛋白質を放出させ、その結果、転写が起こるのを可能にする。Lacシステムでは、ラクトース、またはイソプロピル−b−D−チオガラクトシドのごとき合成アナログの存在に応答してlacオペロンが活性化される。あいにく、そのようなシステムの使用は、リガンド、すなわち、テトラサイクリンおよびラクトース、の不安定な化学、それらの毒性、それらの天然の存在、または誘導もしくは抑制に比較的高レベル必要であることよって制限される。同様の理由により、動物へのこのようなシステムの使用も制限される。
【0008】
FK506、ラパマイシンおよびシクロスポリンAのような免疫抑制分子は、イムノフィリンFKBP12、シクロフィリン等に結合することができる。この情報を用い、単に、FK506を2つの蛋白質の各々の上に置くことによって、またはFK506を1つの上に、およびシクロスポリンAをもう1つの上に置くことによって、任意の2つの蛋白質を一緒に運ぶ一般的戦略が工夫されてきた。次いで、FK506の合成ホモダイマー(FK1012)またはFK506−シクロスポリンの融合から得られた化合物(FKCsA)を用いて、これらの分子の二量体化を誘導することができる(Spencerら、1993、Science 262:1019−24、Belshawら、1996、Proc Natl Acad Sci USA 93:4604−7)。FKBP12に融合したGal4 DNA結合ドメインおよびシクロフィリンに融合したVP16アクチベータードメイン、ならびにFKCsA化合物を用いて、Gal4結合部位を含有するプロモーターの制御下でレポーター遺伝子のヘテロ二量体化および活性化が示された。あいにく、このシステムは、望まない副作用を有しかねない免疫抑制剤を含み、従って、種々の哺乳動物遺伝子のスイッチ適用でのその使用が制限される。
【0009】
ステロイドホルモン受容体システムのような高等真核生物転写活性化システムも使用されてきた。ステロイドホルモン受容体は核受容体スーパーファミリーのメンバーであり、脊椎動物および無脊椎動物細胞で見出される。あいにく、特に植物および哺乳動物における遺伝子発現の調節のために受容体を活性化するステロイド化合物の使用は、そのような生物における多くの他の元来の生物学的経路におけるその関与のため制限される。そのような困難を克服するために、昆虫エクジソン受容体(EcR)を用いる代替システムが開発されている。
【0010】
昆虫における成長、脱皮および発生はエクジソンステロイドホルモン(脱皮ホルモン)および幼若ホルモンによって調節される(Dhadiallaら、1998、Annu.Rev.Entomol.43:545−569)。昆虫におけるエクジソンに対する分子標的は少なくともエクジソン受容体(EcR)およびウルトラスピラクル蛋白質(USP)よりなる。EcRは、シグニチャーDNAおよびリガンド結合ドメイン、ならびに活性化ドメインによって特徴付けられる核ステロイド受容体スーパーファミリーのメンバーである(Koelleら、1991、Cell、67:59−77)。EcR受容体はポナステロンAおよびムリステロンAのごとき多数のステロイド化合物に対して応答性である。最近、エクジステロイドアゴニスト活性を持つ非−ステロイド化合物が記載されており、これは、Rohm and Haas社によって世界的に販売されている商業的に入手可能な殺虫剤テブフェノジドおよびメトキシフェノジドを含む(国際特許出願第PCT/EP96/00686号および米国特許第5,530,028号参照)。両アナログは他の生物に対して例外的な安全性プロフィールを有する。
【0011】
国際特許出願第PCT/US97/05330号(WO97/38117号)およびPCT/US99/08381号(WO99/58155号)は外因性遺伝子の発現を変調する方法を開示しており、ここに、外因性遺伝子およびエクジソン応答エレメントを含むDNA構築体が、そのためのリガンドの存在下、かつ所望によりサイレントパートナーとして作用することができる受容体の存在下で、エクジソン応答エレメントに結合して遺伝子発現を誘導するエクジソン受容体を含む第2のDNA構築体によって活性化される。選択されたエクジソン受容体はDrosophila melanogasterから単離された。典型的には、そのようなシステムは、最適な活性化を提供するためにサイレントパートナー、好ましくはレチノイドX受容体(RXR)の存在を必要とする。哺乳動物細胞では、昆虫エクジソン受容体(EcR)は、レチノイドX受容体(RXR)とでヘテロ二量体化し、リガンド依存的に標的遺伝子の発現を調節する。国際特許出願第PCT/US98/14215号(WO99/02683号)は、カイコガ Bombyx moriから単離されたエクジソン受容体が、外因性ダイマーパートナーの必要性なくして哺乳動物システムで機能できることを開示する。
【0012】
米国特許第5,880,333号は、トランス活性化ドメインおよびDNA結合ドメインが2つの異なるハイブリッド蛋白質上に位置する、植物で使用されるDrosophila melanogaster EcRおよびウルトラスピラクル(USP)ヘテロダイマーシステムを開示する。あいにく、このシステムは動物細胞においてレポーター遺伝子発現を誘導するのに効果的ではない(比較として、後記実施例1.2参照)。
【0013】
これらの場合の各々において、(国際特許出願第PCT/US98/14215号におけるごとく天然EcRとして、または国際特許出願第PCT/US97/05330号におけるごとく修飾されたEcRいずれかとして)トランス活性化ドメインおよびDNA結合ドメインが単一の分子に組み込まれ、他のヘテロダイマーパートナー(USPまたはRXRいずれか)は、その天然状態で用いられた。
【0014】
前記EcR−ベースの遺伝子調節システムの欠点は、リガンドの不存在下におけるかなりのバックグラウンド活性ならびに植物および動物双方において用いるためのこれらのシステムの非−適用性が挙げられる(米国特許第5,880,333号参照)。遺伝子発現の変調に頼るほとんどの適用では、これらのEcR−ベースのシステムは望ましくない。従って、植物ならびに動物双方において外因性遺伝子の発現を正確に変調するための改良されたシステムに対する要望が当該分野に存在する。そのような改良されたシステムは、遺伝子治療、蛋白質および抗体の大規模生産、細胞−ベースの高スループットスクリーニングアッセイ、機能的ゲノミクスおよびトランスジェニック動物における特性(trait)の調節のような適用で有用であろう。単純であり、コンパクトであり、かつ比較的安価で、容易に入手でき、かつ宿主に対して低毒性であるリガンドに依存する改良されたシステムは、生物学的システムを調節するのに有用なことが判明するであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】国際特許出願第PCT/EP96/00686号明細書
【特許文献2】米国特許第5,530,028号明細書
【特許文献3】国際特許出願第PCT/US97/05330号(WO97/38117号)明細書
【特許文献4】国際特許出願第PCT/US99/08381号(WO99/58155号)明細書
【特許文献5】国際特許出願第PCT/US98/14215号(WO99/02683号)明細書
【特許文献6】米国特許第5,880,333号明細書
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Wurnら、1986、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:5414−5418
【非特許文献2】Arnheiterら、1990、Cell 62:51−61
【非特許文献3】Filmusら、1992 Nucleic Acids Research 20:27550−27560
【非特許文献4】Spencerら、1993、Science 262:1019−24
【非特許文献5】Belshawら、1996、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:4604−7
【非特許文献6】Dhadiallaら、1998、Annu.Rev.Entomol.43:545−569
【非特許文献7】Koelleら、1991、Cell、67:59−77
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
最近、出願人は、トランス活性化およびDNA結合ドメインが、それらを2つの異なる蛋白質上に置くことによって、相互に分離されたエクジソン受容体−ベースの誘導性遺伝子発現システムが結果として、リガンドの不存在下においてバックグラウンド活性を大いに低下させ、リガンドの存在下においてバックグラウンドを超えて活性をかなり増加させたことを示した(ここに参照してその全体を本明細書の一部としてみなす係属中の出願PCT/US01/09050号)。この2−ハイブリッドシステムは、出願PCT/US97/05330号およびPCT/US98/14215号に開示された2つのシステムと比較してかなり改良された誘導性遺伝子発現変調システムである。
【0018】
出願人らは、以前、双翅目(Dipteran)(Drosophila melanogaster)または鱗翅目(Lepidopteran)(Choristoneura fumiferana)ウルトラスピラクル蛋白質(USP)と協同したエクジソン受容体−ベースの遺伝子発現システムが哺乳動物細胞において構成的に発現されるのに対し、脊椎動物レチノイドX受容体(RXR)と協同したエクジソン受容体−ベースの遺伝子発現システムが哺乳動物細胞で誘導性であることを証明した(係属中の出願PCT/US01/09050)。出願人らは、最近、非−双翅目および非−鱗翅目無脊椎動物RXRが、エクジソン受容体−ベースの誘導性遺伝子発現システムにおいて脊椎動物RXRと同様に機能することができるという驚くべき発見をなした(同時に出願された米国出願)。
【0019】
出願人らは、今回、少なくとも2つのポリペプチド断片を含むキメラRXRリガンド結合ドメイン(第1のポリペプチド断片は脊椎動物/無脊椎動物RXRの1つの種からのものであり、第2のポリペプチド断片は脊椎動物/無脊椎動物RXRの異なる種からのものであり、それにより、脊椎動物/無脊椎動物キメラRXRリガンド結合ドメイン、脊椎動物/脊椎動物キメラRXRリガンド結合ドメイン、または無脊椎動物/無脊椎動物キメラRXRリガンド結合ドメインが生じるが、エクジソン受容体−ベースの誘導性遺伝子発現システムにおいて、親脊椎動物RXRまたは親無脊椎動物RXRいずれかと同様、またはそれよりも良好に機能できることを示した。本明細書中に記載するごとく、出願人らの新規なエクジソン受容体/キメラレチノイドX受容体−ベースの誘導性遺伝子発現システムは、増大したリガンド感受性およびトランス活性化の大きさによって特徴付けられる、細菌、真菌、酵母、動物および哺乳動物細胞における誘導性遺伝子発現システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、新規なエクジソン受容体/キメラレチノイドX受容体−ベースの誘導性遺伝子発現システム、新規な誘導性遺伝子発現システムで用いる新規なキメラ受容体ポリヌクレオチドおよびポリペプチド、およびこの誘導性遺伝子発現システムを用いて宿主細胞内での遺伝子の発現を変調する方法に関する。特に、出願人らの発明は、キメラRXRリガンド結合ドメイン(LBD)をコードするポリヌクレオチドを含む新規な遺伝子発現変調システムに関する。
【0021】
具体的には、本発明は、a)i)その発現を変調すべき遺伝子と関連した応答エレメントを認識するDNA−結合ドメイン、およびii)エクジソン受容体リガンド結合ドメインを含む第1のハイブリッドポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、宿主細胞で発現させることができる第1の遺伝子発現カセット、およびb)i)トランス活性化ドメイン、およびii)キメラレチノイドX受容体リガンド結合ドメインを含む第2のハイブリッドポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む、宿主細胞で発現させることができる第2の遺伝子発現カセットを含む遺伝子発現変調システムに関する。
【0022】
また、本発明は、a)i)その発現を変調すべき遺伝子と関連した応答エレメントを認識するDNA−結合ドメイン、およびii)キメラレチノイドX受容体リガンド結合ドメインを含む第1のハイブリッドポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、宿主細胞で発現させることができる第1の遺伝子発現カセット、およびb)i)トランス活性化ドメイン、およびii)エクジソン受容体リガンド結合ドメインを含む第2のハイブリッドポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む、宿主細胞で発現させることができる第2の遺伝子発現カセットを含む遺伝子発現変調システムに関する。
【0023】
また、本発明は、さらに、c)i)第1のハイブリッドポリペプチドのDNA−結合ドメインが結合する応答エレメント、ii)第2のハイブリッドポリペプチドのトランス活性化ドメインによって活性化されるプロモーター、およびiii)その発現を変調すべき遺伝子を含む第3の遺伝子発現カセットを含む本発明による遺伝子発現変調システムに関する。
【0024】
また、本発明は、宿主細胞内で発現させることができる遺伝子発現カセットに関し、ここに、該遺伝子発現カセットはi)その発現を変調すべき遺伝子と関連した応答エレメントを認識するDNA−結合ドメイン、またはii)トランス活性化ドメインのいずれか、およびキメラレチノイドX受容体リガンド結合ドメインを含むハイブリッドポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。
【0025】
また、本発明は、i)その発現を変調すべき遺伝子と関連した応答エレメントを認識するDNA−結合ドメイン、またはii)トランス活性化ドメインのいずれか、およびキメラ脊椎動物および無脊椎動物レチノイドX受容体リガンド結合ドメインを含むハイブリッドポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドに関する。また、本発明は、本発明による単離されたポリヌクレオチドによってコードされる単離されたハイブリッドポリペプチドに関する。
【0026】
また、本発明は、トランケートされたキメラRXR LBDをコードする単離されたポリヌクレオチドに関する。特定の態様において、単離されたポリヌクレオチドはトランケートされたキメラRXR LBDをコードし、ここに、トランケーション突然変異はキメラRXR LBDのリガンド結合活性またはリガンド感受性に影響する。他の特定の態様において、単離されたポリヌクレオチドは、トランケートされたキメラRXRポリペプチドおよび二量体化パートナーを含むヘテロダイマーのリガンド感受性を増加させるトランケーション突然変異を含むトランケートされたキメラRXRポリペプチドをコードする。特定の態様において、二量体化パートナーはエクジソン受容体ポリペプチドである。
【0027】
また、本発明は、出願人らの発明によるポリヌクレオチドによってコードされる単離されたポリペプチドに関する。
【0028】
また、本発明は、i)その発現を変調すべき遺伝子と関連した応答エレメントを認識するDNA−結合ドメイン、またはii)トランス活性化ドメインのいずれか、およびキメラレチノイドX受容体リガンド結合ドメインを含む単離されたハイブリッドポリペプチドに関する。
【0029】
本発明は、トランケーション突然変異を含む単離されたトランケートされたキメラRXR LBDに関し、ここに、トランケートされたキメラRXR LBDは本発明によるポリヌクレオチドによってコードされる。
【0030】
かくして、本発明は、該トランケートされたキメラRXR LBDのリガンド結合活性またはリガンド感受性に影響するトランケーション突然変異を含む単離されたトランケートされたキメラRXR LBDに関する。
【0031】
また、本発明は、トランケートされたキメラRXR LBDおよび二量体化パートナーを含むヘテロダイマーのリガンド感受性を増加させるトランケーション突然変異を含む単離されたトランケートされたキメラRXR LBDに関する。特定の態様において、二量体化パートナーはエクジソン受容体ポリペプチドである。
【0032】
また、出願人らの発明は、本発明による遺伝子発現変調システムを用いる宿主細胞において遺伝子発現を変調する方法に関する。具体的には、出願人らの発明は、a)本発明による遺伝子発現変調システムを宿主細胞に導入し、b)i)第1のハイブリッドポリペプチドからのDNA結合ドメインによって認識されるドメインを含む応答エレメント、ii)第2のハイブリッドポリペプチドのトランス活性化ドメインによって活性化されるプロモーター、およびiii)その発現を変調すべき遺伝子を含む遺伝子発現カセットを宿主細胞に導入し、さらに、c)リガンドを宿主細胞に導入する工程を含み、それにより、リガンドの宿主への導入に際して、b)iii)の遺伝子の発現が変調されることを特徴とする宿主細胞において遺伝子の発現を変調する方法を提供する。
【0033】
また、出願人らの発明は、第1のハイブリッドポリペプチドからのDNA結合ドメインによって認識されるドメインを含む応答エレメント、第2のハイブリッドポリペプチドのトランス活性化ドメインによって活性化されるプロモーター、およびその発現を変調すべき遺伝子を含む遺伝子発現カセットを含む宿主細胞において遺伝子の発現を変調すべき方法を提供し、ここに、該方法はa)本発明による遺伝子発現変調システムを宿主細胞に導入し、さらに、b)リガンドを宿主細胞に導入する工程を含み、それにより、リガンドの宿主への導入に際して、遺伝子の発現が変調される。
【0034】
また、出願人らの発明は、本発明による誘導性遺伝子発現システムを含む単離された宿主細胞を提供する。また、本発明は、本発明による遺伝子発現カセット、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドを含む単離された宿主細胞に関する。従って、出願人らの発明は、本発明による宿主細胞を含む非−ヒト生物に関する。
【0035】
出願人らは、今回、キメラRXRリガンド結合ドメインが哺乳動物細胞においてEcR−ベースの誘導性遺伝子発現変調システム内で機能できること、およびこれらのキメラRXR LBDが有利なリガンド感受性およびトランス活性化能力を呈することを示した。かくして、出願人らの発明は、宿主細胞における注目する遺伝子の発現を変調するのに有用なキメラレチノイドX受容体リガンド結合ドメインを含む新規なエクジソン受容体−ベースの誘導性遺伝子発現システムを提供する。特に望ましい態様において、出願人らの発明は、低下したレベルのバックグラウンド遺伝子発現を有し、非−ステロイドリガンドのサブマイクロモラーの濃度に応答する誘導性遺伝子発現システムを提供する。かくして、出願人らの新規な誘導性遺伝子発現システムおよび宿主細胞において遺伝子発現を変調する方法におけるその使用は、現在利用可能な誘導性発現システムの制限を克服し、当業者に、遺伝子発現を制御するための効果的な手段を提供する。
【0036】
本発明は、遺伝子発現レベルの制御が望まれる、遺伝子治療、蛋白質および抗体の大規模生産、細胞−ベースの高スループットスクリーニングアッセイ、機能的ゲノミクス、プロテオミクス、およびメタボロミクス分析およびトランスジェニック生物における特性の調節のごとき適用で有用である。出願人らの発明の利点は、それが、遺伝子発現を調節し、発現レベルを使用者の要求に適合するように仕立てる手段を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は、非−ステロイド(GSE)リガンドの存在下における、GAL4CfEcR−CDEFおよびpFRLucと共にした、NIH3T3細胞におけるVP16LmUSP−EF、VP16MmRXRα−EFおよびVP16MmRXRα(1−7)−LmUSP(8−12)−EFの3つの独立したクローンの発現データを示す。
【図2】図2は、非−ステロイド(GSE)リガンドの存在下における、GAL4CfEcR−CDEFおよびpFRLucと共にした、NIH3T3細胞におけるVP16LmUSP−EF、VP16MmRXRα−EFおよびVP16MmRXRα(1−7)−LmUSP(8−12)−EFの2つの独立したクローンの発現データを示す。
【図3】図3は、非−ステロイド(GSE)リガンドの存在下における、GAL4CfEcR−CDEFおよびpFRLucと共にした、A549細胞におけるVP16LmUSP−EF、VP16MmRXRα−EFおよびVP16MmRXRα(1−7)−LmUSP(8−12)−EFの2つの独立したクローンの発現データを示す。
【図4A】図4Aは、6つの脊椎動物RXR(A)のEFドメインのアミノ酸配列のアラインメントを示す。B6、B8、B9、B10およびB11はβキメラのジャンクションを示す。A1はαキメラについてのジャンクションを示す。ヘリックス1−12はH1−H12として示し、βプリーツシートはS1およびS2として示す。FはFドメインのジャンクションを示す。
【図4B】図4Bは、6つの無脊椎動物RXR(B)のEFドメインのアミノ酸配列のアラインメントを示す。B6、B8、B9、B10およびB11はβキメラのジャンクションを示す。A1はαキメラについてのジャンクションを示す。ヘリックス1−12はH1−H12として示し、βプリーツシートはS1およびS2として示す。FはFドメインのジャンクションを示す。
【図5】図5は、非−ステロイド(GSE)リガンドの存在下における、pFRLucと共にした、NIH3T3細胞におけるGAL4CfEcR−CDEF/VP16キメラRXR−ベースの遺伝子スイッチ1.3−1.6の発現データを示す。
【図6】図6は、ステロイド(PonA)または非−ステロイド(GSE)リガンドの存在下における、NIH3T3細胞での、pFRLucと共にした、GAL4 DNA結合ドメインに融合したCfEcR、DmEcR、TmEcR、またはAmaEcRからのEcRのDEFドメイン、ならびにVP16活性化ドメインに融合したCfUSP、DmUSP、LmUSP、MmRXRα、MmRXRαおよびLmUSPの間のキメラ(キメラ)、AmaRXR1またはAmaRXR2からのRXR/USPのEFドメインを含む遺伝子スイッチの発現データを示す。異なるRXR/USP構築体を、GAL4CfEcR−DEFと協同させて比較した。
【図7】図7は、ステロイド(PonA)または非−ステロイド(GSE)リガンドの存在下における、NIH3T3細胞での、pFRLucと共にした、GAL4 DNA結合ドメインに融合したCfEcR、DmEcR、TmEcR、またはAmaEcRからのEcRのDEFドメイン、ならびにVP16活性化ドメインに融合したCfUSP、DmUSP、LmUSP、MmRXRα、MmRXRαおよびLmUSPの間のキメラ(キメラ)、AmaRXR1またはAmaRXR2からのRXR/USPのEFドメインを含む遺伝子スイッチの発現データを示す。異なるRXR/USP構築体を、GAL4DmEcR−DEFと協同させて比較した。
【図8】図8は、ステロイド(PonA)または非−ステロイド(GSE)リガンドの存在下における、NIH3T3細胞での、pFRLucと共にした、GAL4 DNA結合ドメインに融合したCfEcR、DmEcR、TmEcR,またはAmaEcRからのEcRのDEFドメイン、ならびにVP16活性化ドメインに融合したCfUSP、DmUSP、LmUSP、MmRXRα、MmRXRαおよびLmUSPの間のキメラ(キメラ)、AmaRXR1またはAmaRXR2からのRXR/USPのEFドメインを含む遺伝子スイッチの発現データを示す。異なるEcR構築体を、キメラRXR−EF(MmRXRα−(1−7)−LmUSP(8−12)−EF)と協同させて比較した。
【図9】図9はVP16/MmRXRα−EF(aRXR)、VP16/MmRXRα−EFおよびLmUSP−EFの間のキメラ(MmRXRα−(1−7)−LmUSP(8−12)−EF、aCh7)、VP16/LmUSP−EF(LmUSP)および5つのVP16/HsRXRβ−EFおよびLmUSP−EFの間のキメラ(キメラRXR構築体:bRXRCh6、bRXRCh8、bRXRCh9、bRXRCh10、およびbRHRCh11については表1参照)の各々からの3つの独立したクローンをGAL4/CfEcR−DEFおよびpFRLucと共にNIH3T3の細胞にトランスフェクトした発現データを示す。トランスフェクトした細胞を0、0.2、1および10μMの非−ステロイドリガンド(GSE)の存在下で増殖させた。リガンドを添加してから48時間後に、レポーター活性を定量した。
【図10】図10は、VP16/MmRXRα−EF(aRXR)、VP16/MmRXRα−EFおよびLmUSP−EFの間のキメラ(MmRXRα−(1−7)−LmUSP(8−12)−EF、aCh7)、VP16/LmUSP−EF(LmUSP)および5つのVP16/HsRXRβ−EFおよびLmUSP−EFの間のキメラ(キメラRXR構築体、bRXRCh6、bRXRCh8、bRXRCh9、bRXRCh10、およびbRXRCh11については表1参照)の各々からの3つの独立したクローンをGAL4/CfEcR−DEFおよびpFRLucと共にNIH3T3細胞にトランスフェクトした発現データを示す。トランスフェクトした細胞を0、0.2、1および10μMのステロイドリガンド(PonA)または0、0.04、0.2、1および10μMの非−ステロイドリガンド(GSE)の存在下で増殖させた。リガンドを添加して48時間後に、レポーター活性を定量した。
【図11】図11は、VP16/MmRXRα−EF(aRXR)、VP16/MmRXRα−EFおよびLmUSP−EFの間のキメラ(MmRXRα−(1−7)−LmUSP(8−12)−EF、aCh7)、VP16/LmUSP−EF(LmUSP)および5つのVP16/HsRXRβ−EFおよびLmUSP−EFの間のキメラ(キメラRXR構築体、bRXRCh6、bRXRCh8、bRXRCh9、bRXRCh10、およびbRXRCh11)の各々からの3つの独立したクローンをGAL4/DmEcR−DEFおよびpFRLucと共にNIH3T3細胞にトランスフェクトした発現データを示す。トランスフェクトした細胞を0、0.2、1および10μMのステロイドリガンド(PonA)または0、0.04、0.2、1および10μMの非−ステロイドリガンド(GSE)の存在下で増殖させた。リガンドを添加して48時間後に、レポーター活性を定量した。
【図12】図12は、非−ステロイド(GSE)および9−シス−レチノイン酸(9Cis)の存在下における、48時間での、NIH3T3細胞での、pFRLucと共にしたGAL4CfEcR−DEF/VP16HsRXRβ−(1−8)−LmUSP−(9−12)−EF(βキメラ9)遺伝子スイッチのトランス活性化能力に対する9−シス−レチノイン酸の効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
定義
本開示においては、多数の用語および略語が用いられる。以下の定義が設けられ、それは、本発明の範囲および実施を理解するのに助けとなるはずである。
【0039】
特定の態様において、用語「約」または「ほぼ」は与えられた値または範囲の20%以内、好ましくは10%以内、より好ましくは5%以内、なおより好ましくは1%以内を意味する。
【0040】
用語「実質的に含まない」は、組成物中(AおよびBが属する種のカテゴリーに応じて)少なくとも約75重量%の蛋白質、DNA、ベクターが「A」である場合に、「A」を含む組成物(ここに、「A」は単一の蛋白質、DNA分子、ベクター、組換え宿主細胞等である)が「B」(ここに、「B」は1以上の混入蛋白質、DNA分子、ベクター等を含む)を実質的に含まないことを意味する。好ましくは、「A」は、組成物においてA+B種の少なくとも約90重量%、より好ましくは少なくとも約99重量%を含んでなる。また、混入物を実質的に含まない組成物が、注目する種の活性または特徴を有する単一分子量の種のみを含有するのも好ましい。
【0041】
本発明の目的では、用語「単離された」は、その元来の環境(それが天然に存在する環境)から取り出された生物学的物質(核酸または蛋白質)を示す。例えば、植物または動物中にて天然状態で存在するポリヌクレオチドは単離されていないが、それが天然で存在する隣接核酸から分離された同一ポリヌクレオチドは「単離された」と考えられる。用語「精製された」は、他の化合物の存在を排除して、物質が絶対的純粋さを呈する形態で存在することを要しない。それはむしろ相対的な定義である。
【0042】
ポリヌクレオチドは、少なくとも1桁の大きさ、好ましくは2または3桁、より好ましくは4または5桁の大きさだけ出発物質または天然物質が精製された後に「精製された」状態にあるものである。
【0043】
「核酸」は、ヌクレオチドと呼ばれるサブユニットが共有結合したものを含んでなる高分子化合物である。核酸はポリリボ核酸(RNA)およびポリデオキシリボ核酸(DNA)を含み、共に一本鎖または二本鎖であり得る。DNAは限定されるものではないが、cDNA、ゲノムDNA、プラスミドDNA、合成DNAおよび半合成DNAを含む。DNAは直鎖状、環状またはスーパーコイルであり得る。
【0044】
「核酸分子」とは、一本鎖形態または二本鎖ヘリックスの、リボヌクレオシド(アデノシン、グアノシン、ウリジンまたはシチジン、「RNA分子」)またはデオキシリボヌクレオシド(デオキシアデノシン、デオキシグアノシン、デオキシチミジンまたはデオキシシチジン、「DNA分子」)のリン酸エステルポリマー形態、あるいはホスホロチオエートおよびチオエステルのごときそれらの任意のホスホエステルアナログもいう。二本鎖DNA−DNA、DNA−RNAおよびRNA−RNAヘリックスが可能である。用語核酸分子、特にDNAまたはRNA分子とは、分子の一次および二次構造のみをいい、それをいずれかの特定の三次形態に限定しない。かくして、この用語は、とりわけ、直鎖状または環状DNA分子(例えば、制限断片)、プラスミドおよび染色体に見出される二本鎖DNAを含む。特定の二本鎖DNA分子の構造を議論するにおいて、本明細書中では、DNAの非−転写ストランド(すなわち、mRNAに対して相同な配列を有するストランド)に沿って5’から3’への方向の配列のみを与える通常の慣例に従って配列を記載することができる。「組換えDNA分子」は、分子生物学的操作を受けたDNA分子である。
【0045】
用語「断片」は参照核酸に対して減少した長さのヌクレオチド配列を意味し、共通の部分にわたって、参照核酸と同一のヌクレオチド配列を含むと理解されるであろう。本発明に従うそのような核酸断片は、適切には、それが構成要素であるより大きなポリヌクレオチドに含まれ得る。そのような断片は、本発明による核酸の少なくとも6、8、9、10、12、15、18、20、21、22、23、24、25、30、39、40、42、45、48、50、51、54、57、60、63、66、70、75、78、80、90、100、105、120、135、150、200、300、500、720、900、1000または1500の連続的ヌクレオチドの長さの範囲のオリゴヌクレオチドを含むかあるいはそれよりなる。
【0046】
本明細書中で用いるごとく「単離された核酸断片」は、所望により合成、非天然または改変ヌクレオチド塩基を含有してもよい、一本鎖または二本鎖であるRNAまたはDNAのポリマーである。DNAのポリマーの形態である単離された核酸断片はcDNA、ゲノムDNAまたは合成DNAの1以上のセグメントを含んでなることができる。
【0047】
「遺伝子」とは、ポリペプチドをコードするヌクレオチドのアセンブリーをいい、cDNAおよびゲノムDNA核酸を含む。また、「遺伝子」とは、コーディング配列に先立つ調節配列(5’非−コーディング配列)およびコーディング配列に続く調節配列(3’非−コーディング配列)を含めた、特定の蛋白質またはポリペプチドを発現する核酸断片をいう。「天然遺伝子」とは、それ自身の調節配列を持つ天然で見出される遺伝子をいう。「キメラ遺伝子」とは、天然では一緒に見出されない調節配列および/またはコーディング配列を含む、天然遺伝子ではないいずれの遺伝子もいう。従って、キメラ遺伝子は、異なる源に由来する調節配列およびコーディング配列、または同一源に由来するが、天然で見出されるものと異なって配列された調節配列およびコーディング配列を含むことができる。キメラ遺伝子は、異なる源に由来するコーディング配列および/または異なる源に由来する調節配列を含むことができる。「内因性遺伝子」とは、生物のゲノムにおけるその天然の位置での天然遺伝子をいう。「外来性」遺伝子または「異種」遺伝子とは、宿主生物に通常は見出されないが、遺伝子導入によって宿主生物に導入された遺伝子をいう。外来性遺伝子は非天然生物に挿入された天然遺伝子、またはキメラ遺伝子を含むことができる。「トランスジーン」は、形質転換手法によってゲノムに導入された遺伝子である。
【0048】
「異種」DNAとは、細胞、または細胞の染色体部位に天然では位置しないDNAをいう。好ましくは、異種DNAは細胞に対して外来性である遺伝子を含む。
【0049】
用語「ゲノム」は染色体ならびにミトコンドリア、葉緑体およびウイルスDNAまたはRNAを含む。
【0050】
核酸分子は、当該核酸分子の一本鎖形態が、温度および溶液イオン強度の適当な条件下で他の核酸分子にアニールすることができる場合に、cDNA、ゲノムDNAまたはRNAのような他の核酸分子に「ハイブリダイズすることができる」(Sambrookら、1989、後掲参照)。ハイブリダイゼーションおよび洗浄条件はよく知られており、Sambrook,J.、Fritsch,E.F.およびManiatis,T.、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor(1989)、特にその中の第11章および表11.1(引用によりその全体を本明細書の一部とみなす)に例示されている。温度およびイオン強度の条件はハイブリダイゼーションの「ストリンジェンシー」を決定する。
【0051】
ストリンジェンシー条件は、密接に関連する生物から機能性酵素を複製する遺伝子のごとき高度に同様な断片に対して、余り関連の無い生物からの相同配列のごとき中程度に同様な断片につきスクリーニングするように調整することができる。相同核酸についての予備的スクリーニングでは、55°のTに対応する低ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件を用いることができる。例えば、5×SSC、0.1%SDS、0.25%ミルク、およびホルムアミド無し;または30%ホルムアミド、5×SSC、0.5%SDS。中程度のストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件は、より高いT、例えば、5×または6×SCCにての40%ホルムアミドに対応する。高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件は最高のT、例えば、50%ホルムアミド、5×または6×SCCに対応する。ハイブリダイゼーションは、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに依存して、塩基間のミスマッチが可能であるが、2つの核酸が相補的配列を含有することを必要とする。
【0052】
用語「相補的」は、相互にハイブリダイズすることができるヌクレオチド塩基の間の関係を記載するのに用いる。例えばDNAに関しては、アデノシンはチミジンに相補的であり、シトシンはグアニンに相補的である。従って、本発明は、本明細書中で開示するまたは用いる完全な配列ならびにそれらに実質的に同様な核酸配列に相補的な単離された核酸断片も含む。
【0053】
特定の態様において、用語「標準ハイブリダイゼーション条件」とは55℃のTをいい、前記した条件を利用する。好ましい態様において、Tは60℃であり、より好ましい態様においては、Tは65℃である。
【0054】
ポスト−ハイブリダイゼーション洗浄もストリンジェンシー条件を決定する。好ましい条件の1つの組は室温にて15分間の6×SSC、0.5%SDSで出発し、次いで、45℃にて30分間2×SSC、0.5%SDSを反復し、次いで、50℃にて30分間0.2×SSC、0.5%SDSを2回反復する一連の洗浄を用いる。ストリンジェントな条件のより好ましい組はより高い温度を用い、そこでは、0.2×SSC、0.5%SDSにおける最後の2回の30分間の洗浄の温度を60℃に上昇させる以外は洗浄は前記のものと同一である。高度にストリンジェントな条件の他の好ましい組は、65℃における0.1×SSC、0.1%SDSでの2回の最終洗浄を用いる。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに依存して塩基の間のミスマッチが可能であるが、ハイブリダイゼーションは、2つの核酸が相補的な配列を含むことを必要とする。
【0055】
核酸をハイブリダイズさせるための適当なストリンジェンシーは核酸の長さ、相補性の程度、当該分野でよく知られた変数に依存する。2つのヌクレオチド配列の間の同様性または相同性の程度が大きくなれば、それらの配列を有する核酸のハイブリッドについてのTの値は大きくなる。核酸ハイブリダイゼーションの(より高いTに対応する)相対的安定性は以下の順序で減少する:RNA:RNA、DNA:RNA、DNA:DNA。長さが100ヌクレオチドを超えるハイブリッドについては、Tを計算するための方程式が誘導されている(Sambrookら、前掲、9.50−0.51参照)。より短い核酸、すなわち、オリゴヌクレオチドでのハイブリダイゼーションでは、ミスマッチの位置はより重要であり、オリゴヌクレオチドの長さはその特異性を決定する(Sambrookら、前掲、11.7−11.8参照)。
【0056】
1つの態様では、ハイブリダイズ可能な核酸についての長さは少なくとも約10ヌクレオチドである。ハイブリダイズ可能な核酸についての好ましい最小長さは少なくとも約15ヌクレオチドであり、より好ましくは少なくとも約20ヌクレオチドであり、最も好ましくは、該長さは少なくとも30ヌクレオチドである。さらに、当業者であれば、温度および洗浄溶液塩の濃度は、プローブの長さといったファクターに従って必要に応じて調整することができる。
【0057】
用語「プローブ」とは、相補的一本鎖標的核酸とで塩基対を形成して、二本鎖分子を形成することができる一本鎖核酸分子をいう。本明細書中で用いるごとく、用語「オリゴヌクレオチド」とは、ゲノムDNA分子、cDNA分子、プラスミドDNAまたはmRNA分子にハイブリダイズすることができる、一般に少なくとも18ヌクレオチドの核酸をいう。オリゴヌクレオチドは、例えば、32P−ヌクレオチド、またはビオチンのごときラベルが共有結合したヌクレオチドで標識することができる。標識オリゴヌクレオチドをプローブとして用いて、核酸の存在を検出することができる。オリゴヌクレオチド(その一方または双方を標識することができる)を、核酸の全長または断片をクローニングするために、あるいは核酸の存在を検出するためにPCRプライマーとして用いることができる。また、オリゴヌクレオチドを用いて、DNA分子とで三重ヘリックスを形成することができる。一般に、好ましくは核酸合成器でオリゴヌクレオチドを合成により調製する。従って、オリゴヌクレオチドは、チオエステル結合などのごとき天然に生じないホスホエステルアナログ結合を有するように調製することができる。
【0058】
「プライマー」は、適当な条件下でDNA合成のための開始点として働くことができる二本鎖核酸領域を生じさせるために標的核酸配列にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドである。そのようなプライマーはポリメラーゼ連鎖反応で用いることができる。
【0059】
「ポリメラーゼ連鎖反応」はPCRと略され、酵素により特定の核酸配列を増幅するためのイン・ビトロ方法を意味する。PCRは、3つの段階:標的分子のストランドを分離するための鋳型核酸の変性、一本鎖PCRオリゴヌクレオチドのプライマーの鋳型核酸へのアニーリング、およびDNAポリメラーゼによるアニールされたプライマーの伸長を含む各サイクルに伴う一連の繰り返し温度サイクルを含む。PCRは、標的分子の存在を検出し、および定量的または半定量的条件下で、核酸の出発プール内のその標的分子の相対量を決定する手段を提供する。
【0060】
「逆転写−ポリメラーゼ連鎖反応」はRT−PCRと省略され、RNA分子から標的cDNA分子を酵素的に生産し、続いて、前記したごとく標的cDNA分子内で特定の核酸配列の酵素的増幅を行うイン・ビトロ方法を意味する。また、RT−PCRは、標的分子の存在を検出し、および定量的または半定量的条件下で、核酸の出発プール内のその標的分子の相対量を決定する手段を提供する。
【0061】
DNAの「コーディング配列」は、適当な調節配列の制御下においた場合に、イン・ビトロまたはイン・ビボにて、細胞中にて転写されて、ポリペプチドに翻訳される二本鎖DNA配列である。「適当な調節配列」とは、コーディング配列の上流(5’非−コーディング配列)、その中、または下流(3’非−コーディング配列)に位置し、かつ関連するコーディング配列の転写、RNAプロセッシングもしくは安定性、または翻訳に影響するヌクレオチド配列をいう。調節配列はプロモーター、翻訳リーダー配列、イントロン、ポリアデニル化認識配列、RNAプロセッシング部位、エフェクター結合部位およびステム−ループ構造を含むことができる。コーディング配列の境界は、5’(アミノ)末端における開始コドンおよび3’(カルボキシル)末端における翻訳停止コドンによって決定される。コーディング配列は、限定されるものではないが、原核生物配列、mRNAからのcDNA、ゲノムDNA配列、および合成DNA配列さえ含むことができる。もしコーディング配列が真核生物細胞における発現を意図するならば、ポリアデニル化シグナルおよび転写終止配列は、通常、コーディング配列に対して3’側に位置するであろう。
【0062】
「オープンリーディングフレーム」はORFと省略され、ATGまたはAUGのごとき翻訳開始シグナルまたは開始コドン、および終止コドンを含み、かつ潜在的にポリペプチド配列に翻訳されることができるある長さの核酸配列(DNA、cDNAまたはRNAいずれか)を意味する。
【0063】
本明細書中では、用語「ヘッド−対−ヘッド」は、相互に対して2つのポリヌクレオチド配列の向きを記載するために用いる。1つのポリヌクレオチドのコーディングストランドの5’末端が他のポリヌクレオチドのコーディングストランドの5’末端に隣接し、それにより、各ポリヌクレオチドの転写の方向が他のポリヌクレオチドの5’末端から遠ざかるように進行する場合、2つのポリヌクレオチドはヘッド−対−ヘッド向きに位置する。用語「ヘッド−対−ヘッド」は、(5’)−対−(5’)と省略でき、また、記号(←→)または(3’←5’5’→3’)によって示すこともできる。
【0064】
本明細書中では、用語「テール−対−テール」は、相互に対して2つのポリヌクレオチド配列の向きを記載するのに用いる。1つのポリヌクレオチドのコーディングストランドの3’末端が他のポリヌクレオチドのコーディングストランドの3’末端に隣接し、それにより、各ポリヌクレオチドの転写の向きが他のポリヌクレオチドに向かって進行する場合、2つのポリヌクレオチドはテール−対−テール向きに位置する。用語「テール−対−テール」は(3’)−対−(3’)と省略することができ、また、記号(→←)または(5’→3’3’←5’)によって示すこともできる。
【0065】
本明細書中では、用語「ヘッド−対−テール」は、相互に対して2つのポリヌクレオチド配列の向きを記載するのに用いる。1つのポリヌクレオチドのコーディングストランドの5’末端が他のポリヌクレオチドのコーディングストランドの3’末端に隣接し、それにより、各ポリヌクレオチドの転写の方向が他のポリヌクレオチドのそれと同一向きに進行する場合、2つのポリヌクレオチドはヘッド−対−テール向きに位置する。用語「ヘッド−対−テール」は(5’)−対−(3’)と省略することができ、また、記号(→→)または(5’→3’5’→3’)によって示すこともできる。
【0066】
用語「下流」とは参照ヌクレオチド配列に対して3’側に位置するヌクレオチド配列をいう。特に、下流ヌクレオチド配列は、一般に、転写の開始点に続く配列に関する。例えば、遺伝子の翻訳開始コドンは転写の開始部位の下流に位置する。
【0067】
用語「上流」とは、参照ヌクレオチド配列に対して5’側に位置するヌクレオチド配列をいう。特に、上流ヌクレオチド配列は、一般に、コーディング配列または転写の開始点の5’側に位置する配列に関する。例えば、ほとんどのプロモーターは転写の開始点の上流に位置する。
【0068】
用語「制限エンドヌクレアーゼ」および「制限酵素」とは、二本鎖DNA内の特定のヌクレオチド配列内に結合し、それを切断する酵素をいう。
【0069】
「相同組換え」とは、他のDNA分子への外来性DNA配列の挿入、例えば、染色体へのベクターの挿入をいう。好ましくは、ベクターは相同組換え用の特定の染色体部位を標的とする。特定の相同組換えでは、ベクターは、染色体の配列に対して相同性である十分に長い領域を含有して、相補的結合および染色体へのベクターの組み込みを可能とするであろう。相同性であるより長い領域、および配列同様性のより大きな程度は、相同組換えの効率を増加させることができる。
【0070】
当該分野で知られたいくつかの方法を用いて、本発明によるポリヌクレオチドを増幅させることができる。一旦適当な宿主系および増殖条件が確立されれば、組換え発現ベクターを増幅させ、定量的に調製することができる。本明細書中に記載するごとく、用いることができる発現ベクターは、限定されるものではないが、少数の名前を挙げれば、以下のベクターまたはその誘導体:ワクシニアウイルスまたはアデノウイルスのごときヒトまたは動物ウイルス、バキュロウイルスのごとき昆虫ウイルス、酵母ベクター、バクテリオファージベクター(例えば、ラムダ)、およびプラスミドおよびコスミドDNAベクターを含む。
【0071】
「ベクター」は、核酸の宿主細胞へのクローニングおよび/または導入のためのいずれかの手段である。ベクターは、他のDNAセグメントを結合させて、結合したセグメントの複製を行うことができるレプリコンであり得る。「レプリコン」は、イン・ビボでDNA複製の自律ユニットとして機能する、すなわち、それ自身の制御下で複製することができるいずれかの遺伝的エレメント(例えば、プラスミド、ファージ、コスミド、染色体、ウイルス)である。用語「ベクター」は、イン・ビトロ、エクス・ビボまたはイン・ビボにて核酸を細胞に導入するためのウイルスおよび非ウイルス手段の両方を含む。当該分野で知られた非常に多数のベクターを用いて、核酸を操作し、応答エレメントおよびプロモーターを遺伝子に組み込むなどすることができる。可能なベクターは、例えば、ラムダ誘導体といったバクテリオファージ、またはpBR322もしくはpUCプラスミド誘導体といったプラスミド、またはBluescriptベクターなどの、例えばプラスミドまたは修飾ウイルスを含む。例えば、適当なベクターへの応答エレメントおよびプロモーターに対応するDNA断片の挿入は、相補的粘着末端を有する選択されたベクターへ適当なDNA断片を連結することによって達成することができる。別法として、DNA分子の末端は酵素的に修飾することができるか、またはヌクレオチド配列(リンカー)をDNA末端に連結することによっていずれの部位も生じさせることができる。そのようなベクターは、マーカーを細胞ゲノムに組み込んだ細胞の選択を供する選択マーカー遺伝子を含有するように作成することができる。そのようなマーカーは、マーカーによってコードされた蛋白質を組み込み、それを発現する宿主細胞の同定および/または選択を可能とする。
【0072】
ウイルスベクター、特にレトロウイルスベクターは、細胞、ならびに生きた動物対象における広く種々の遺伝子送達適用で用いられてきた。用いることができるウイルスベクターは、限定されるものではないが、レトロウイルス、アデノ−随伴ウイルス、ポックス、バキュロウイルス、ワクシニア、単純ヘルペス、エプステイン−バール、アデノウイルス、ジェミニウイルスおよびカウリモウイルスベクターを含む。非−ウイルスベクターはプラスミド、リポソーム、荷電脂質(サイトフェクチン)、DNA−蛋白質複合体、およびバイオポリマーを含む。核酸に加え、ベクターは、1以上の調節領域、および/または核酸導入の結果(いずれの組織への導入、発現の持続など)を選択し、測定し、およびモニターするのに有用な選択マーカーを含むこともできる。
【0073】
用語「プラスミド」とは、細胞の中心的代謝の一部ではなく、通常、環状二本鎖DNA分子の形態である、遺伝子をしばしば運ぶ染色体外エレメントをいう。そのようなエレメントは任意の源に由来する、一本鎖もしくは二本鎖DNAもしくはRNAの自律複製配列、ゲノム組み込み配列、ファージまたはヌクレオチド配列(直鎖状、環状またはスーパーコイル)であってよく、ここに、多数のヌクレオチド配列が、適当な3’非翻訳配列と共にプロモーター断片および選択された遺伝子産物についてのDNA配列を細胞に導入することができる独自の構築物に合体または組み換えられている。
【0074】
「クローニングベクター」は、他の核酸セグメントを結合させて、結合されたセグメントの複製を行うことができる、プラスミド、ファージまたはコスミドのごとき、順次複製する核酸、好ましくは、DNAの単位長さであって、複製起点を含む「レプリコン」である。クローニングベクターは1つの細胞型で複製することができ、もう1つにおいて発現することができる(「シャトルベクター」)。
【0075】
ベクターは、当該分野で知られた方法、例えば、トランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、形質導入、細胞融合、DEAEデキストラン、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション(リソソーム融合)、遺伝子銃の使用、またはDNAベクタートランスポーターによって、所望の宿主細胞に導入されることができる(例えば、Wuら、1992、J.Biol.Chem.267:963−967、WuおよびWu、1988、J.Biol.Chem.263:14621−14624、およびHartmutら、1990年3月15日に出願されたカナダ特許出願第2,012,311号参照)。
【0076】
また、本発明によるポリヌクレオチドはリポフェクションによってイン・ビボによって導入することもできる。過去10年間、イン・ビトロでの核酸のカプセル化およびトランスフェクションのためのリポソームの使用が増大してきた。リポソーム−媒介トランスフェクションが遭遇する困難および危険を制限するように設計された合成カチオン脂質を用いて、マーカーをコードする遺伝子のイン・ビボトランスフェクション用のリポソームを調製することができる(Felgnerら、1987、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.84:7413、Mackeyら、1988、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85:8027−8031、およびUlmerら、1993、Science 259:1745−1748)。カチオン脂質の使用は負に荷電した核酸のカプセル化を促進し、また、負に荷電した細胞膜との融合も促進することができる(FelgnerおよびRingold、1989、Science 337:387−388)。核酸の導入のための特に有用な脂質化合物および組成物は国際特許公開WO95/18863号およびWO96/17823号、および米国特許第5,459,127号に記載されている。外来性遺伝子をイン・ビボで特定の器官に導入するためのリポフェクションの使用はある現実的な利点を有する。特定の細胞へのリポソームの分子標的化は利点の1つの領域を表す。トランスフェクションを特定の細胞型に向けるのは、膵臓、肝臓、腎臓および脳のごとき細胞異種性を持つ組織において特に好ましいであろうことが明らかである。脂質は、標的化の目的で他の分子に化学的にカップリングさせることができる(Mackeyら、1988、前掲)。標的化されたペプチド、例えば、ホルモンもしくは神経伝達物質、および抗体のような蛋白質、または非−ペプチド分子を化学的にリポソームにカップリングさせることができよう。
【0077】
また、カチオンオリゴペプチド(例えばWO95/21931号)、DNA結合蛋白質に由来するペプチド(例えば、WO96/25508号)、またはカチオンポリマー(例えばWO95/21931号)のごとき他の分子も、イン・ビボにて核酸のトランスフェクションを容易とするのに有用である。
【0078】
また、裸のDNAプラスミドとしてイン・ビボにてベクターに導入することも可能である(米国特許第5,693,622号、第5,589,466号および第5,580,859号参照)。また、受容体−媒介DNA送達アプローチも用いることができる(Curielら、1992、Hum.Gene Ther.3:147−154、ならびにWuおよびWu、1987、J.Biol.Chem.262:4429−4432)。
【0079】
用語「トランスフェクション」は、細胞による外来性または異種RNAまたはDNAの取り込みを意味する。外来性または異種RNAまたはDNAが細胞内部に導入された場合、細胞はそのようなRNAまたはDNAによって「トランスフェクトされている」。トランスフェクトされたRNAまたはDNAが表現型の変化をもたらす場合、細胞は外来性または異種RNAまたはDNAによって「形質転換されている」。形質転換RNAまたはDNAは染色体DNAに(共有結合的に)組み込まれ、細胞のゲノムを形成することができる。
【0080】
「形質転換」とは、宿主の生物のゲノムへの核酸断片の導入をいい、その結果、遺伝的に安定な遺伝がもたらされる。形質転換された核酸断片を含有する宿主生物を「トランスジェニック」または「組換え」または「形質転換された」生物という。
【0081】
用語「遺伝子領域」とは、ポリペプチドをコードする遺伝子を含む、核酸分子またはヌクレオチド配列の領域をいう。
【0082】
加えて、本発明によるポリヌクレオチドを含む組換えベクターは、その増幅またはその発現が求められる細胞宿主における複製用の1以上の起点、マーカーまたは選択マーカーを含むことができる。
【0083】
用語「選択マーカー」は、同定因子、マーカー遺伝子の効果、すなわち、抗生物質に対する抵抗性、除草剤に対する抵抗性、比色マーカー、酵素、蛍光マーカーなどに基づいて選択することができる因子を意味し、通常は、抗生物質または化学的抵抗性遺伝子であり、ここに、該効果を用いて、注目する核酸の遺伝を追跡し、および/または注目する核酸を受け継いだ細胞または生物を同定する。当該分野で知られ、用いられる選択マーカー遺伝子の例は、アンピシリン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ヒグロマイシン、ビアラフォス除草剤、スルホンアミドなどに対する抵抗性を供する遺伝子、および表現型マーカーとして用いられる遺伝子、すなわち、アントシアニン調節遺伝子、イソペンタニルトランスフェラーゼ遺伝子などを含む。
【0084】
用語「レポーター遺伝子」は、レポーター遺伝子の効果に基づいて同定することができる同定因子をコードする核酸を意味し、ここに、該効果を用いて、注目する核酸の遺伝を追跡し、注目する核酸を受け継いだ細胞または生物を同定し、および/または遺伝子発現の誘導または転写を測定する。当該分野で知られ、用いられるレポーター遺伝子の例はルシフェラーゼ(Luc)、緑色蛍光蛋白質(GFP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、β−ガラクトシダーゼ(LacZ)、β−グルクロニダーゼ(Gus)などを含む。選択マーカー遺伝子はレポーター遺伝子と考えることもできる。
【0085】
「プロモーター」とは、コーディング配列または機能的RNAの発現を制御することができるDNA配列をいう。一般に、コーディング配列はプロモーター配列の3’側に位置する。プロモーターは天然遺伝子からその全体が由来してもよく、あるいは天然で見出される異なるプロモーターに由来する異なるエレメントから構成されてよく、あるいは合成DNAセグメントを含んでなるものでさえよい。異なるプロモーターは、異なる組織または細胞型において、または発生の異なる段階において、または異なる環境または生理学的条件に応答して、遺伝子の発現を指令することができることは当業者に理解されている。遺伝子をほとんどの機会、ほとんどの細胞型で発現させるプロモーターは通常「構成的プロモーター」といわれる。遺伝子を特定の細胞型で発現させるプロモーターは、通常、「細胞−特異的プロモーター」または「組織−特異的プロモーター」といわれる。遺伝子を発生または細胞分化の特定の段階で発現させるプロモーターは、通常、「発生−特異的プロモーター」または「細胞分化−特異的プロモーター」といわれる。当該プロモーターを誘導する物質、生物学的分子、化学物質、リガンド、光などによる細胞の暴露または処理に続いて誘導され、遺伝子を発現させるプロモーターは、通常、「誘導性プロモーター」または「調節性プロモーター」といわれる。ほとんどの場合、調節配列の精密な境界は完全には画定されていないので、異なる長さのDNA断片が同一のプロモーター活性を有することができることはさらに認識されている。
【0086】
「プロモーター配列」は、細胞中でRNAポリメラーゼに結合し、下流(3’方向)コーディング配列の転写を開始させることができるDNA調節領域である。本発明を定義する目的では、プロモーター配列は、転写開始部位によってその3’末端において境があり、上流(5’方向)に伸びて、バックグラウンドを超えて検出可能なレベルで転写を開始させるのに必要な最少数の塩基またはエレメントを含む。プロモーター配列内には、(例えば、ヌクレアーゼS1でのマッピングによって便宜に画定される)転写開始部位、ならびにRNAポリメラーゼの結合を担う蛋白質結合ドメイン(コンセンサス配列)が見出されるであろう。
【0087】
コーディング配列は、RNAポリメラーゼがコーディング配列をmRNAに転写し、次いで、それが(もしコーディング配列がイントロンを含むならば)トランス−RNAスプライシングされ、コーディング配列によってコードされた蛋白質に翻訳される場合、細胞中での転写および翻訳制御配列の「制御下」にある。
【0088】
「転写および翻訳制御配列」は、宿主細胞におけるコーディング配列の発現を供する、プロモーター、エンハンサー、ターミネーターなどのごときDNA調節配列である。真核生物細胞においては、ポリアデニル化シグナルは制御配列である。
【0089】
用語「応答エレメント」は、第1のキメラ遺伝子のDNA−結合ドメインとの相互作用を介して媒介されたプロモーターに対する応答性を付与する1以上のシス−作用性DNAエレメントを意味する。このDNAエレメントはその配列が回文構造(完全または不完全)であるか、あるいは可変数のヌクレオチドによって分離された配列モチーフまたはハーフ部位よりなることからできる。該ハーフ部位は同様または同一であり、直接または逆転反復いずれかとして、あるいは単一ハーフ部位またはタンデムな隣接ハーフ部位のマルチマーとして配列できる。応答エレメントは、当該応答エレメントが組み込まれる細胞または生物の性質に応じて異なる生物から単離された最小プロモーターを含むことができる。第1のハイブリッド蛋白質のDNA結合ドメインは、リガンドの存在下または不存在下で、応答エレメントのDNA配列に結合して、この応答エレメントの調節下で下流の遺伝子の転写を開始または抑制する。天然エクジソン受容体の応答エレメントについてのDNA配列の例はRRGG/TTCANTGAC/ACYY(Cherbas L.ら、(1991)、Genes Dev.5、120−131参照)、AGGTCAN(n)AGGTCA(ここに、N(n)は1以上のスペーサーヌクレオチドであり得る)(D’Avino PP.ら、(1995)、Mol.Cell.Endocrinol、113、1−9参照)、およびGGGTTGAATGAATTT(Antoniewski C.ら、(1994)、Mol.Cell Biol.14、4465−4474参照)を含む。
【0090】
用語「作動可能に連結した」とは、一方の機能が他方によって影響されるような、単一核酸断片に対する核酸配列の関連をいう。例えば、プロモーターがコーディング配列の発現に影響できる(すなわち、コーディング配列がプロモーターの転写制御下にある)場合、プロモーターはコーディング配列に作動可能に連結している。コーディング配列はセンスまたはアンチセンス向きに調節配列に作動可能に連結することができる。
【0091】
本明細書中で用いるごとく、用語「発現」とは、核酸またはポリヌクレオチドに由来するセンス(mRNA)またはアンチセンスRNAの転写および安定な蓄積をいう。また、発現はmRNAの蛋白質またはポリペプチドへの翻訳もいうことができる。
【0092】
用語「カセット」、「発現カセット」および「遺伝子発現カセット」とは、特定の制限部位において、あるいは相同組換えによって、核酸またはポリヌクレオチドに挿入することができるDNAのセグメントをいう。DNAのセグメントは注目するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含み、カセットおよび制限部位は、転写および翻訳のために適切なリーディングフレームにてカセットの挿入を確実とするように設計される。「形質転換カセット」とは、注目するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含み、当該ポリヌクレオチドに加えて、特定の宿主細胞の形質転換を容易とするエレメントを有する特定のベクターをいう。本発明のカセット、発現カセット、遺伝子発現カセットおよび形質転換カセットは、宿主細胞における注目するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの増強された発現を可能とするエレメントも含むことができる。これらのエレメントは、限定されるものではないが、プロモーター、最小プロモーター、エンハンサー、応答エレメント、ターミネーター配列、ポリアデニル化配列などを含むことができる。
【0093】
本発明の目的では、用語「遺伝子スイッチ」とは、プロモーターと関連した応答エレメント、および1以上のリガンドの存在下で、応答エレメントおよびプロモーターが組み込まれる遺伝子の発現を変調するEcRベースのシステムの組合せをいう。
【0094】
用語「変調する」は、核酸または遺伝子の発現を誘導し、減少させ、または阻害し、その結果、蛋白質またはポリペプチド生産をそれぞれ誘導し、減少させまたは阻害すること意味する。
【0095】
本発明によるプラスミドまたはベクターは、さらに、宿主細胞において遺伝子の発現を駆動するのに適当な少なくとも1つのプロモーターを含むことができる。用語「発現ベクター」は、宿主への形質転換に続いて挿入された核酸配列の発現を可能とするように設計されたベクター、プラスミドまたはビヒクルを意味する。クローン化された遺伝子、すなわち、挿入された核酸配列は、通常、プロモーター、最小プロモーター、エンハンサーなどのごとき制御エレメントの制御下におかれる。所望の宿主細胞において核酸の発現を駆動するのに有用な開始制御領域またはプロモーターは数多くあり、当業者によく知られている。これらの遺伝子を駆動することができる実質的にいずれのプロモーターも本発明で適当であり、限定されるものではないが、ウイルスプロモーター、細菌プロモーター、動物プロモーター、哺乳動物プロモーター、合成プロモーター、構成的プロモーター、組織特異的プロモーター、発生特異的プロモーター、誘導性プロモーター、光調節プロモーター;CYC1、HIS3、GAL1、GAL4、GAL10、ADH1、PGK、PHO5、GAPDH、ADC1、TRP1、URA3、LEU2、ENO、TPI、(Saccharomycesにおける発現で有用な)アルカリホスファターゼプロモーター;(Pichiaにおける発現で有用な)AOX1プロモーター;(Escherichia coliにおける発現で有用な)β−ラクタマーゼ、lac、ara、tet、trp、lP、lP、T7、tacおよびtrcプロモーター、光調節−プロモーターを含み;当該分野で知られた動物および哺乳動物プロモーターは、限定されるものではないが、SV40早期(SV40e)プロモーター領域、ラウス肉腫ウイルス(RSV)の3’ロングターミナルリピート(LTR)に含まれたプロモーター、アデノウイルス(Ad)のE1Aのプロモーターまたは主要後期プロモーター(MLP)遺伝子、サイトメガロウイルス(CMV)早期プロモーター、単純ヘルペスウイルス(HSV)チミジンキナーゼ(TK)プロモーター、伸長因子1アルファ(EF1)プロモーター、ホスホグリセレートキナーゼ(PGK)プロモーター、ユビキチン(Ubc)プロモーター、アルブミンプロモーター、マウスメタロチオネイン−Lプロモーターの調節配列および転写制御領域、ユビキタスプロモーター(HPRT、ビメンチン、α−アクチン、チューブリンなど)、中間フィラメント(デスミン、ニューロフィラメント、ケラチン、GFAPなど)のプロモーター、(MDR、CFTRまたは第VIII型因子などの)治療遺伝子のプロモーター、病因または病気関連−プロモーター、および組織特異性を呈しトランスジェニック動物で利用されてきたプロモーターで、例えば膵臓腺房細胞で活性なエラスターゼI遺伝子制御領域、膵臓ベータ細胞で活性なインスリン遺伝子制御領域、リンパ細胞で活性な免疫グロブリン遺伝子制御領域、精巣、乳房、リンパ系および肥満細胞で活性なマウス乳癌ウイルス制御領域、肝臓で活性なアルブミン遺伝子、Apo AIおよびApo AII制御領域、肝臓で活性なアルファ−フェト蛋白質遺伝子制御領域、肝臓で活性なアルファ1−アンチトリプシン遺伝子制御領域、骨髄系細胞で活性なベータ−グロビン遺伝子制御領域、脳中の稀突起神経膠細胞で活性なミエリン塩基性蛋白質遺伝子制御領域、骨格筋で活性なミオシン軽鎖−2遺伝子制御領域および視床下部で活性なゴナドトロピン放出ホルモン遺伝子制御領域、ピルベートキナーゼプロモーター、ビリンプロモーター、脂肪酸結合腸蛋白質のプロモーター、平滑筋細胞α−アクチンのプロモーターなどを含む。加えて、これらの発現配列は、エンハンサーまたは調節配列などの付加によって修飾することもできる。
【0096】
本発明の態様で用いることができるエンハンサーは、限定されるものではないが、SV40エンハンサー、サイトメガロウイルス(CMV)エンハンサー、伸長因子1(EF1)エンハンサー、酵母エンハンサー、ウイルス遺伝子エンハンサーなどを含む。
【0097】
終止制御領域、すなわち、ターミネーターまたはポリアデニル化配列もまた好ましい宿主本来の種々の遺伝子に由来することができる。所望により、終止部位は必要ではないが、もし含まれれば最も好ましい。本発明の好ましい態様において、終止制御領域は合成配列、合成ポリアデニル化シグナル、SV40後期ポリアデニル化シグナル、SV40ポリアデニル化シグナル、ウシ成長ホルモン(BGH)ポリアデニル化シグナル、ウイルスターミネーター配列などを含むことができるか、またはそれに由来することができる。
【0098】
用語「3’非−コーディング配列」または「3’非翻訳領域(UTR)」とは、コーディング配列の下流(3’側)に位置するDNA配列をいい、それは、ポリアデニル化[ポリ(A)]認識配列およびmRNAプロセッシングまたは遺伝子発現に影響することができる調節シグナルをコードする他の配列を含むことができる。ポリアデニル化シグナルは、通常、mRNA前駆体の3’末端へのポリアデニル酸トラクトの付加に影響することによって特徴付けられる。
【0099】
「調節領域」は、第2の核酸配列の発現を調節する核酸配列を意味する。調節領域は、特定の核酸(相同領域)を発現することを天然で担う配列を含むことをできるか、あるいは異なる蛋白質または合成蛋白質(異種領域)でさえ発現することを担う異なる起源の配列を含むことができる。特に、該配列が原核生物、真核生物またはウイルス遺伝子の配列であり得るか、または特異的もしくは非特異的に、かつ誘導または非誘導様式で遺伝子の転写を刺激または抑制する誘導配列に由来する配列であり得る。調節領域は複製起点、RNAスプライス部位、プロモーター、エンハンサー、転写終止配列、およびポリペプチドを標的細胞の分泌経路へと向かわせるシグナル配列を含む。
【0100】
「異種源」からの調節領域は、発現された核酸と天然では関連しない調節領域である。異種調節領域内には、異なる種からの調節領域、異なる遺伝子からの調節領域、ハイブリッド調節配列および天然では生じないが当業者によって設計される調節配列が含まれる。
【0101】
「RNA転写体」とは、DNA配列のRNAポリメラーゼ−触媒転写から生じる産物をいう。RNA転写体がDNA配列の完全な相補的コピーである場合、それは一次転写体といい、あるいはそれは一次転写体の転写後プロセッシングに由来するRNA配列であってよく、これは成熟RNAという。「メッセンジャーRNA(mRNA)」とは、イントロンが無く、細胞によって蛋白質に翻訳されることができるRNAをいう「cDNA」とは、mRNAに相補的であり、それに由来する二本鎖DNAをいう。「センス」RNAとは、mRNAを含み、従って、細胞によって蛋白質に翻訳されることができるRNA転写体をいう。「アンチセンスRNA」とは、標的一次転写体またはmRNAの全てまたは一部に相補的であって、標的遺伝子の発現をブロックするRNA転写体をいう。アンチセンスRNAの相補性は特定の遺伝子転写体のいずれかの部分、すなわち、5’非−コーディング配列、3’非−コーディング配列、またはコーディング配列におけるものであり得る。「機能的RNA」とは、アンチセンスRNA、リボザイムRNA、または翻訳されていないが、細胞プロセスに対して影響を有する他のRNAをいう。
【0102】
「ポリペプチド」は、共有結合したアミノ酸残基を含んでなるポリマー化合物である。アミノ酸は以下の一般構造を有する。
【0103】
【化1】

【0104】
アミノ酸は側鎖Rに基づいて7つの群に分類される:(1)脂肪族側鎖、(2)ヒドロキシル(OH)基を含む側鎖、(3)硫黄原子を含む側鎖、(4)酸性基またはアミド基を含む側鎖、(5)塩基性基を含む側鎖、(6)芳香族環を含む側鎖、および(7)側鎖がアミノ基に融合したイミノ酸、プロリン。本発明のポリペプチドは、好ましくは、少なくとも約14のアミノ酸を含む。
【0105】
「蛋白質」は、生きた細胞において構造的または機能的役割を行うポリペプチドである。
【0106】
「単離されたポリペプチド」または「単離された蛋白質」とは、通常はその天然状態においてそれと関連する化合物(例えば、他の蛋白質またはポリペプチド、核酸、炭水化物、脂質)を実質的に含まないポリペプチドまたは蛋白質である。「単離された」とは、他の化合物との人工的もしくは合成的混合物、または生物学的活性に干渉せず、かつ例えば、不完全な精製、安定化剤の添加、または医薬上許容される製剤への調合のため存在し得る不純物の存在を排除することを意味しない。
【0107】
本発明によるポリペプチドの「断片」は、そのアミノ酸配列が参照ポリペプチドの配列よりも短く、かつこれらの参照ポリペプチドに関する全部分にわたり、同一のアミノ酸配列を含むポリペプチドを意味すると理解されるであろう。そのような断片は、適切には、それらがその一部であるより大きなポリペプチドに含まれることができる。本発明によるポリペプチドのそのような断片は、少なくとも2、3、4、5、6、8、10、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、25、26、30、35、40、45、50、100、200、240または300のアミノ酸の長さを有することができる。
【0108】
ポリペプチドまたは蛋白質の「変種」は、ポリペプチドまたは蛋白質に由来し、かつ当該ポリペプチドまたは蛋白質の少なくとも1つの生物学的特性を保持する任意のアナログ、断片、誘導体または突然変異体である。ポリペプチドもしくは蛋白質の異なる変種は天然に存在することができる。これらの変種は、蛋白質をコードする構造遺伝子のヌクレオチド配列の差によって特徴付けられる対立遺伝子変種であってもよく、あるいはディファレンシャルスプライシング(differential splicing)または翻訳後修飾を含むことができる。当業者は、単一または複数のアミノ酸置換、欠失、付加または置き換えを有する変種を生じさせることができる。これらの変種は、とりわけ、(a)1以上のアミノ酸残基が保存的または非−保存的アミノ酸で置き換えられた変種、(b)1以上のアミノ酸がポリペプチドまたは蛋白質に付加された変種、(c)1以上のアミノ酸が置換基を含む変種、および(d)ポリペプチドまたは蛋白質が血清アルブミンのごとき他のポリペプチドと融合した変種を含むことができる。遺伝的(抑制、欠失、突然変異等)、化学的および酵素的技術を含めた、これらの変種を得るための技術は当業者に知られている。変種ポリペプチドは、好ましくは、少なくとも約14のアミノ酸を含む。
【0109】
「異種蛋白質」とは、細胞中で天然では生じない蛋白質をいう。
【0110】
「成熟蛋白質」とは、翻訳後に加工されたポリペプチド;すなわち、それから、一次翻訳産物中に存在する任意のプレまたはプロペプチドが除去されたものをいう。「前駆体」蛋白質とは、mRNAの翻訳の一次産物をいう;すなわち、プレおよびプロペプチドが依然として存在する。プレおよびプロペプチドは、限定されるものではないが、細胞内局在シグナル(intracellular localization signal)であり得る。
【0111】
用語「シグナルペプチド」とは分泌される成熟蛋白質に先行するアミノ末端ポリペプチドをいう。シグナルペプチドは切断され、従って、成熟蛋白質には存在しない。シグナルペプチドは、分泌される蛋白質を細胞膜を横切るように向け、移動させる機能を有する。シグナルペプチドはシグナル蛋白質ともいう。
【0112】
「シグナル配列」は、細胞の表面に発現されるべき蛋白質のコーディング配列の始めに含まれる。この配列は成熟ポリペプチドに対してN−末端側にあり、宿主細胞に指令してポリペプチドを移動させるシグナルペプチドをコードする。用語「移動(translocation)シグナル配列」は、ここでは、この種類のシグナル配列をいうのに用いられる。移動シグナル配列は真核生物および原核生物に対して天然の種々の蛋白質と関連することが分かっており、しばしば、双方のタイプの生物で機能できる。
【0113】
用語「相同性」とは、2つのポリヌクレオチドまたは2つのポリペプチド部分の間の同一性のパーセントをいう。1つの部分からの配列およびもう1つからの配列の間の対応性は、当該分野で知られた技術によって決定することができる。例えば、相同性は、配列情報を整列させ、かつ容易に入手できるコンピュータプログラムを用いることによって、2つのポリペプチド分子の間の配列情報の直接的比較によって決定することができる。別法として、相同性は、相同領域の間で安定な二重鎖を形成する条件下でのポリヌクレオチドのハイブリライゼーション、続いての、一本鎖特異的ヌクレアーゼでの消化および消化された断片のサイズ測定によって決定することができる。
【0114】
本明細書中で用いるごとく、全てのその文法の形式およびスペリングの変化における用語「相同な」とは、スーパーファミリー(例えば、免疫グロブリンスーパーファミリー)からの蛋白質および異なる種からの相同蛋白質(例えば、ミオシン軽鎖等)を含めた、「共通の進化起源」を保有する蛋白質の間の関係をいう(Reeckら、1987、Cell 50:667)。そのような蛋白質(およびそのコーディング遺伝子)は、その高い配列同様性の程度によって反映される配列相同性を有する。しかしながら、通常の用法および本出願においては、用後「相同な」は、「高度に」のごとき副詞で修飾された場合、配列同様性を言うことができ、共通の進化起源をいわない。
【0115】
従って、全てのその文法的形式における用語「配列同様性」とは、共通の進化起源を有しても有さなくてもよい蛋白質の核酸もしくはアミノ酸配列の間の同一性または対応性の程度をいう(Reeckら、1987、Cell 50:667参照)。
【0116】
特定の態様においては、ヌクレオチドの少なくとも約50%(好ましくは少なくとも約75%、最も好ましくは少なくとも約90または95%)がDNA配列の画定された長さにわたってマッチする場合、2つのDNA配列は「実質的に相同」または「実質的に同様」である。実質的に相同な配列は、配列データバンクで入手できる標準的なソフトウェアを用いて配列を比較することによって、あるいは、例えば、その特定のシステムにつき画定された、ストリンジェントな条件下でのサザンハイブリダイゼーション実験において同定することができる。適当なハイブリダイゼーション条件の画定は当業者の技量内のものである。例えば、Sambrookら、1989、前掲参照。
【0117】
本明細書中で用いるごとく「実質的に同様な」とは、1以上のヌクレオチド塩基の変化の結果、1以上のアミノ酸が置換されるが、DNA配列によってコードされる蛋白質の機能的特性には影響しない核酸断片をいう。また、「実質的に同様な」とは、1以上のヌクレオチド塩基の変化が、アンチセンスまたは共抑制技術による遺伝子発現の改変を媒介する核酸断片の能力に影響しない核酸断片もいう。また、「実質的に同様な」とは、得られた転写体の機能的特性に実質的に影響しない1以上のヌクレオチド塩基の欠失または挿入のごとき本発明の核酸断片の修飾もいう。従って、本発明は特定の具体的配列以上のものを含むことが理解される。提案された修飾の各々は、コードされた産物の生物学的活性の保持の測定と同様に、十分に当業者のルーチン的技量内のものである。
【0118】
さらに、当業者であれば、本発明に含まれる実質的に同様な配列は、ストリンジェントな条件(0.1×SSC、0.1%SDS、65℃、および洗浄2×SSC、0.1%SDS、続いての0.1×SSC、0.1%SDS)下で、本明細書中に例示した配列にハイブリダイズするそれらの能力によって、画定されることを認識するであろう。本発明の実質的に同様な核酸断片は、そのDNA配列が本明細書に報告した核酸断片のDNA配列と少なくとも70%同一であるものである。本発明の実質的に好ましい核酸断片は、そのDNA配列が、ここに報告した核酸断片のDNA配列と少なくとも80%同一である核酸断片である。より好ましい核酸断片は、ここに報告する核酸断片のDNA配列に少なくとも90%同一である。なおより好ましいのは、ここに報告する核酸断片のDNA配列に対して少なくとも95%同一である核酸断片である。
【0119】
約40%を超えるアミノ酸が同一であるか、あるいは60%を超えて同様である(機能的に同一である)場合に、2つのアミノ酸配列は「実施的に相同」または「実質的に同様」である。好ましくは、同様または相同な配列は、例えば、GCG(Genetics Computer Group、Program Manual for the GCG Package、Version 7、Madison Wisconsin)パイルアッププログラムを用いるアラインメントによって同定される。
【0120】
用語「に対応する」は、ここでは、正確な位置が同様性または相同性が測定される分子と同一であるかまたは異なるかを問わず、同様なまたは相同な配列をいうのに用いられる。核酸またはアミノ酸配列アラインメントはスペースを含むことができる。かくして、用語「に対応する」とは、配列同様性をいい、アミノ酸残基またはヌクレオチド塩基のナンバリングをいわない。
【0121】
アミノ酸またはヌクレオチド配列の「実質的部分」は、当業者による配列の手動評価によるか、またはBLAST(Basic Local Alignment Search Tool、Altschul,S.F.ら、(1993)、J.Mol.Biol.215:403−410、また www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/参照)のごときアルゴリズムを用いるコンピュータ−自動配列比較および同定によって、そのポリペプチドまたは遺伝子を推定的に同定するのに十分なポリペプチドのアミノ酸配列または遺伝子のヌクレオチド配列を含む。一般に、10以上の連続アミノ酸または30以上のヌクレオチドの配列が、ポリペプチドまたは核酸配列が既知の蛋白質または遺伝子に相同であるかを推定的に同定するのに必要である。さらに、ヌクレオチド配列に関しては、20−30の連続ヌクレオチドを含む遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプローブを、遺伝子同定(例えば、サザンハイブリダイゼーション)および単離(例えば、細菌コロニーまたはバクテリオファージプラークのイン・サイチュハイブリダイゼーション)の配列−依存的方法で用いることができる。加えて、12−15塩基の短いオリゴヌクレオチドをPCRにおける増幅プライマーとして用いて、プライマーを含む特定の核酸断片を得ることができる。従って、ヌクレオチド配列の「実質的部分」は、該配列を含む核酸断片を特異的に同定しおよび/または単離するのに十分な配列を含む。
【0122】
当該分野で知られたごとく、用語「同一性パーセント」は、配列を比較することによって決定されるごとく、2以上のポリペプチド配列または2以上のポリヌクレオチド配列の間の関係である。当該分野においては、「同一性」とは、ポリペプチドまたポリヌクレオチド配列の間の配列関連性の程度を意味し、この場合には、かかる配列のストリングの間のマッチによって決定され得る。「同一性」および「同様性」は、Computational Molecular Biology(Lesk,A.M.編)Oxford University Press、New York(1988)、Biocomputing、Informatics and Genome Projects(Smith,D.W.編)Academic Press、New York(1993)、Computer Analysis of Sequence Data、Part I(Griffin、A.M.およびGriffin,H.G.編)Humana Press、New Jersey(1994)、Sequence Analysis in Molecular Biology(von Heinje,G.編)Academic Press(1987)、およびSequence Analysis Primer(Gribskov,M.およびDevereux,J.編)Stockton Press、New York(1991)に記載されたものを含めた公知の方法によって容易に計算することができるが、これに限定されるものではない。同一性を決定するための好ましい方法は、テストする配列の間で最良のマッチを与えるように設計される。同一性および同様性を決定する方法は、公に入手可能なコンピュータプログラムに編修されている。配列アラインメントおよび同一性パーセントの計算は、LASERGENEバイオインフォマティックスコンピューティングスイートのMegalignプログラム(DNASTAR Inc.、Madison、WI)を用いて行うことができる。配列の多重アラインメントは、デフォルトパラメーター(GAP PENALTY=10、GAP LENGTH PENALTY=10)を備えたアラインメントのClustal方法(HigginsおよびSharp(1989)CABIOS.5:151−153)を用いて行うことができる。Clustal方法を用いる一対のアラインメントについてのデフォルトパラメーターを選択することができる:KTUPLE 1、GAP PENALTY=3、WINDOW=5およびDIAGONALS SAVED=5。
【0123】
用語「配列分析ソフトウェア」とは、ヌクレオチドまたはアミノ酸配列の分析で有用ないずれのコンピューターアルゴリズムまたはソフトウェアプログラムもいう。「配列分析ソフトウェア」は、商業的に入手できるか、あるいは独立して開発することができる。典型的な配列分析ソフトウェアは、限定されるものではないが、プログラムのGCGスイート(Wisconsin Package Version 9.0、Genetics Computer Group(GCG)、Madison、WI)、BLASTP、BLASTN、BLASTX(Altschulら、J.Mol.Biol.215:403−410(1990))、およびDNASTAR(DNASTAR,Inc.1228 S.Park St.Madison、WI 53715 USA)を含むであろう。本出願の文脈内では配列分析ソフトウェアを分析に用いる場合、特に断りのない限り、分析の結果は参照されたプログラムの「デフォルト値」に基づくであろう。本明細書中で用いる「デフォルト値」とは、最初に初期化した時に最初にソフトウェアにロードされた値またはパラメーターのいずれの組も意味するであろう。
【0124】
「合成遺伝子」は、当業者に知られた手法を用いて化学的に合成されたオリゴヌクレオチドビルディングブロックから組み立てることができる。これらのビルディングブロックを連結し、アニールして、遺伝子セグメントを形成させ、次いで、これを酵素的に組み立てて全遺伝子を構築する。DNAの配列に関連する「化学的に合成された」とは、構成要素ヌクレオチドがイン・ビトロで組み立てられたことを意味する。DNAの手動化学合成はよく確立された手法を用いて達成することができるか、あるいは多数の商業的に入手可能なマシーンのうちの1つを用いて自動化学合成を行うことができる。従って、遺伝子は、宿主細胞のコドンバイアスを反映するヌクレオチド配列の最適化に基づく最適遺伝子発現となるように仕立てることができる。もし、コドン利用が宿主に好都合なコドンに偏るならば、当業者であれば首尾よい遺伝子発現の確率を認識するであろう。好ましいコドンの決定は、配列の情報が入手可能な場合には、宿主細胞に由来する遺伝子の調査に基づくことができる。
【0125】
本発明の遺伝子発現変調システム
出願人らは、以前、トランス活性化およびDNA結合ドメインを2つの異なる蛋白質上に置くことによってそれらを分離する結果、リガンドの不存在下でバックグラウンド活性が大いに低下し、リガンドの存在下でバックグラウンドを超えて活性がかなり増加することを示した(係属中の出願PCT/US01/09050)。この2−ハイブリッドシステムは、国際特許出願PCT/US97/05330およびPCT/US98/14215に開示された2つのシステムと比較してかなり改良された誘導性遺伝子発現変調システムである。2−ハイブリッドシステムは、DNA結合ドメインが遺伝子上のDNA結合部位に結合した場合、トランス活性化ドメインがより効果的にプロモーターを活性化するように、DNA結合ドメインに対してトランス活性化ドメインをより好都合な位置に運ぶ相互作用蛋白質の対の能力を開発する(例えば、米国特許第5,283,173号参照)。簡単に述べれば、2−ハイブリッド遺伝子発現システムは2つの遺伝子発現カセットを含み、第1のカセットは核受容体ポリペプチドに融合したDNA結合ドメインをコードし、第2のカセットは異なる核受容体ポリペプチドに融合したトランス活性化ドメインをコードする。リガンドの存在下において、第1のポリペプチドと第2のポリペプチドとの相互作用は、DNA結合ドメインをトランス活性化ドメインに効果的に連結させる。DNA結合およびトランス活性化ドメインは2つの異なる分子上に存在するので、リガンドの不存在下におけるバックグラウンド活性は大いに低下する。
【0126】
2−ハイブリッドエクジソン受容体−ベースの遺伝子発現変調システムはヘテロダイマーおよびホモダイマーのいずれであってもよい。機能的EcR複合体は、一般に、ステロイド受容体ファミリーである、種々の昆虫から得られたエクジソン受容体蛋白質、およびウルトラスピラクル(USP)蛋白質またはUSPの脊椎動物ホモログ、レチノイドX受容体蛋白質の2つのメンバーよりなるヘテロダイマー蛋白質複合体をいう(Yaoら(1993)Nature 366、476−479、Yaoら、(1992)Cell 71、63−72)。しかしながら、該複合体は後記するごとくホモダイマーであってもよい。また、機能的エクジステロイド受容体複合体はイムノフィリンのごときさらなる蛋白質を含んでもよい。また、(DHR38またはベータFTZ−1のごとき)転写因子として知られたステロイド受容体ファミリーの蛋白質のさらなるメンバーは、EcR、USPおよび/またはRXRにつき、リガンド依存的または非依存的パートナーであってもよい。加えて、(アダプターまたはメディエーターとも言われる)一般にコアクチベーターとしても知られた蛋白質のごとき他の補因子も必要であろう。これらの蛋白質は配列特異的にDNAには結合せず、基礎的転写に関与しない。それらは、クロマチン構造に影響することによって、またはアクチベーター−開始複合体相互作用を媒介することによって、アクチベーターのDNA−結合の刺激を含めた種々のメカニズムを通じて転写活性化に対してその効果を発揮することができる。そのようなコアクチベーターの例はRIP140、TIF1、RAP46/Bag−1、ARA70、SRC−1/NCoA−1、TIF2/GRIP/NCoA−2、ACTR/AIB1/RAC3/pCIPならびに乱交雑(promiscous)コアクチベーターC応答エレメントB結合蛋白質、CBP/p300を含む(レビューについては、Glassら、Curr.Opin.Cell Biol.9:222−232、1997参照)。また、(リプレッサー、サイレンサーまたはサイレンシングメディエーターとしても知られている)一般にコリプレッサーとしても知られた蛋白質補因子が、リガンドの不存在下において転写活性化を効果的に阻害するのに必要とされ得る。これらのコリプレッサーは非リガンド化エクジソン受容体と相互作用して、応答エレメントにおける活性をサイレントとすることができる。現在の証拠は、リガンドの結合が受容体の立体配座を変化させ、その結果、コリプレッサーが放出され、前記したコアクチベーターが動員され、それにより、それらのサイレンシング活性がなくなることを示唆する。コリプレッサーの例はN−CoRおよびSMRTを含む(レビューについては、Horwitzら、Mol Endocrinol.10:1167−1177、1996参照)。これらの補因子は細胞または生物内で内因性であってよく、あるいはトランスジーンとして外因的に添加して、調節または非調節様式にて発現させることができる。また、エクジソン受容体蛋白質、USPまたはRXRのホモダイマー複合体はある状況下で機能的であり得る。
【0127】
エクジソン受容体複合体は、典型的には、核受容体スーパーファミリーのメンバーである蛋白質を含み、ここに、全てのメンバーは、一般に、アミノ−末端トランス活性化ドメイン、DNA結合ドメイン(「DBD」)、およびヒンジ領域によってDBDから分離されたリガンド結合ドメイン(「LBD」)の存在によって特徴付けられる。本明細書中で用いるごとく、用語「DNA結合ドメイン」は、DNA結合ドメインが特定の応答エレメントと関連するように機能する限り、DNA結合蛋白質の全長までのDNA結合蛋白質の最小ポリペプチド配列を含む。また、核受容体スーパーファミリーのメンバーは4つまたは5つのドメイン:A/B、C、D、EおよびあるメンバーではFの存在によって特徴付けられる(米国特許第4,981,784号およびEvans、Science 240:889−895(1988)参照)。「A/B」ドメインはトランス活性化ドメインに相当し、「C」はDNA結合ドメインに相当し、「D」はヒンジ領域に相当し、および「E」はリガンド結合ドメインに相当する。該ファミリーのいくつかのメンバーは、「F」に対応するLBDのカルボキシ−末端側にもう1つのトランス活性化ドメインを有することもできる。
【0128】
DBDは、エクジソン受容体エレメントに対する特異性を付与する、2つのアミノ酸モチーフ、P−ボックスおよびD−ボックスの間の2つのシステイン亜鉛フィンガーの存在によって特徴付けられる。これらのドメインは天然であっても、修飾されてあっても、または異種受容体蛋白質の異なるドメインのキメラであってもよい。また、ステロイド受容体ファミリーのサブセットのように、このEcR受容体は、ヘテロ二量体化特性を担うあまりよくは画定されていない領域も保有する。EcR、USPおよびRXRのドメインは本来モジュールであるので、LBD、DBDおよびトランス活性化ドメインは相互に交換することができる。
【0129】
エクジソン受容体複合体からの成分を組み込む遺伝子スイッチシステムが知られている。しかしながら、これらの既知のシステムにおいては、EcRを用いる場合は常に、それは、同一分子上の天然もしくは修飾されたDNA結合ドメインおよびトランス活性化ドメインに関連する。USPまたはRXRは、典型的には、サイレントパートナーとして用いられる。出願人らは、以前、DNA結合ドメインおよびトランス活性化ドメインが同一分子上にある場合、リガンドの不存在下におけるバックグラウンド活性は高く、およびそのような活性は、DNA結合ドメインおよびトランス活性化ドメインが異なる分子上、すなわち、ヘテロダイマーまたはホモダイマー複合体の2つのパートナーの各々の上にある場合に劇的に低下することを示した(PCT/US01/09050参照)。また、この2−ハイブリッドシステムは、ステロイドリガンド、例えば、ポナステロンA(「PonA」)またはムリステロンA(「MurA」)と比較した場合、非−ステロイドリガンド、例えば、ジアシルヒドラジンに対して改良された感受性を供する。すなわち、ステロイドと比較した場合、非−ステロイドリガンドはより低い濃度においてより高い活性を供する。加えて、EcR遺伝子スイッチに基づくトランス活性化はしばしば細胞系依存性であるので、スイッチングシステムを仕立てて、各適用についての最大トランス活性化能力を得るのはより容易である。さらに、2−ハイブリッドシステムは未修飾RXRをスイッチングパートナーとして用いる場合にしばしば起こるRXRの過剰発現によるいくつかの副作用を回避する。2−ハイブリッドシステムの特定の態様において、EcRまたはRXRの天然DNA結合およびトランス活性化ドメインが排除され、その結果、これらのキメラ分子は、細胞に存在する他のステロイドホルモン受容体と相互作用するチャンスは低くなり、その結果、副作用は低下する。
【0130】
出願人らは、以前、双翅目(ミバエ Drosophila melanogaster)または鱗翅目(ハマキガ Choristoneura fumiferana)ウルトラスピラクル蛋白質(USP)と協同したエクジソン受容体は哺乳動物細胞において構成的に発現されるのに対し、脊椎動物レチノイドX受容体(RXR)と協同したエクジソン受容体が哺乳動物細胞で誘導性であることを示した(係属中の出願PCT/US01/09050号)。最近、出願人らは、Locusta migratoriaのウルトラスピラクル蛋白質(「LmUSP」)およびマダニ Amblyomma americanumのRXRホモログ1およびRXRホモログ2(各々、「AmaRXR1」および「AmaRXR2」)ならびに、限定されるものではないが、シオマネキ Celuca pugilator RXRホモログ(「CpRXR」)、甲虫 Tenebrio molitor RXRホモログ(「TmRXR」)、ミツバチ Apis mellifera RXRホモログ(「AmRXR」)、およびアブラムシ Myzus persicae RXRホモログ(「MpRXR」)を含めたそれらの非−双翅目、非−鱗翅目ホモログ(その全てをここでは集合的に無脊椎動物RXRという)は、哺乳動物細胞において、誘導性エクジソン受容体−ベースの誘導性遺伝子発現システムにおける脊椎動物レチノイドX受容体(RXR)と同様に機能することができるという驚くべき発見をなした(ここに、引用してその全体を本明細書の一部とみなすここに出願された米国出願)。
【0131】
ここに記載するごとく、出願人らは、今回、少なくとも2つのポリペプチド断片を含むキメラRXRリガンド結合ドメイン(第1のポリペプチド断片は脊椎動物/無脊椎動物RXRの1つの種からのものであって、第2のポリペプチド断片は脊椎動物/無脊椎動物RXRの異なる種からのものであり、それにより、脊椎動物/無脊椎動物キメラRXRリガンド結合ドメイン、脊椎動物/脊椎動物キメラRXRリガンド結合ドメイン、または無脊椎動物/無脊椎動物キメラRXRリガンド結合ドメインが生じる)が、エクジソン受容体−ベースの誘導性遺伝子発現システムにおいて機能できることを見出した。驚くべきことに、出願人らの新規なEcR/キメラRXR−ベースの誘導性遺伝子発現システムは、リガンド感受性および遺伝子誘導の大きさの点で、EcR/脊椎動物RXR−ベースの遺伝子発現システム(PCT/US01/09050)およびEcR/無脊椎動物RXR−ベースの遺伝子発現システム(ここに出願されたUS出願)双方と同様に、またはそれらよりも良好に機能できる。かくして、本発明は、細菌、真菌、酵母、動物および哺乳動物細胞で用いる改良されたEcR−ベースの誘導性遺伝子発現システムを提供する。
【0132】
特に、出願人らは、本明細書中において、キメラRXRリガンド結合ドメインを含む新規な2−ハイブリッドシステムを記載する。この新規な遺伝子発現システムは、初めて、キメラRXRリガンド結合ドメインを含むポリペプチドが酵母および哺乳動物細胞において誘導性EcR−ベースの誘導性遺伝子発現システムの構成要素として機能できることを示す。本明細書中に議論するごとく、この知見は予期せぬかつ驚くべきことである。
【0133】
具体的には、出願人らの発明は、a)宿主細胞で発現させることができる第1の遺伝子発現カセット、ここに、該第1の遺伝子発現カセットは、i)その発現を変調させるべき遺伝子と関連した応答エレメントを認識するDNA−結合ドメイン、およびii)エクジソン受容体リガンド結合ドメイン、を含む第1のハイブリッドポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含み、ならびにb)宿主細胞で発現させることができる第2の遺伝子発現カセット、ここに、該第2の遺伝子発現カセットはi)トランス活性化ドメイン、およびii)キメラレチノイドX受容体リガンド結合ドメイン、を含む第2のハイブリッドポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む、を含む遺伝子発現変調システムに関する。
【0134】
また、本発明は、a)宿主細胞で発現させることができる第1の遺伝子発現カセット、ここに、該第1の遺伝子発現カセットはi)その発現を変調すべき遺伝子と関連した応答エレメントを認識するDNA−結合ドメイン、およびii)キメラレチノイドX受容体リガンド結合ドメイン、を含む第1のハイブリッドポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含み、ならびにb)宿主細胞で発現させることができる第2の遺伝子発現カセット、ここに、該第2の遺伝子発現カセットは、i)トランス活性化ドメイン、およびii)エクジソン受容体リガンド結合ドメイン、を含む第2のハイブリッドポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む、を含む遺伝子発現変調システムに関する。
【0135】
また、本発明は、さらに、c)i)第1のハイブリッドポリペプチドのDNA−結合ドメインが結合する応答エレメント、ii)第2のハイブリッドポリペプチドのトランス活性化ドメインによって活性化されるプロモーター、およびiii)その発現を変調すべき遺伝子、を含む第3の遺伝子発現カセットを含む本発明の遺伝子発現変調システムに関する。
【0136】
特定の態様において、その発現を変調すべき遺伝子は宿主細胞に関して相同遺伝子である。他の特定の態様において、その発現を変調すべき遺伝子は宿主細胞に関して異種遺伝子である。
【0137】
後記本発明で使用するリガンドが、EcRリガンド結合ドメインおよびキメラRXRリガンド結合ドメインと一緒になって、次に、遺伝子に連結した応答エレメントに結合する場合に、遺伝子の発現の外部一時的調節のための手段を提供する。本発明の種々の構成要素が相互に結合する、(すなわち、例えば、リガンドが受容体に、第1のハイブリッドポリペプチドが応答エレメントに、第2のハイブリッドポリペプチドがプロモーターに等)結合のメカニズムまたは順序は臨界的でない。EcRリガンド結合ドメインおよびキメラRXRリガンド結合ドメインへのリガンドの結合は、遺伝子の発現または抑制を可能とする。このメカニズムは、EcRまたはキメラRXRへのリガンド結合、および活性ホモダイマー複合体の結果としての形成(例えば、EcR+EcRまたはキメラRXR+キメラRXR)の可能性を排除しない。好ましくは、1以上の受容体ドメインが変化し、ハイブリッド遺伝子スイッチを生じる。典型的には、3つのドメイン、DBD、LBDおよびトランス活性化ドメインの内の1以上は、ハイブリッド遺伝子および得られるハイブリッド蛋白質が、トランス活性化活性、リガンドの相補的結合、および特定の応答エレメントの認識につき選択された宿主細胞または生物において最適化されるように、他のドメインの源とは異なる源から選択することができる。加えて、応答エレメントそれ自体は、酵母からのGAL−4蛋白質(Sadowskiら(1988)Nature、335:563−564参照)もしくはEscherichia coliからのLexA蛋白質(BrentおよびPtashne(1985)、Cell、43:729−736)をはじめとする他のDNA結合蛋白質ドメインについての応答エレメントで、または特定の相互作用(例えば、Kimら(1997)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、94:3616−3620参照)のために設計され、修飾されおよび選択された蛋白質との標的化相互作用につき特異的な合成応答エレメントで、修飾または置換されることができ、ハイブリッド受容体を適応させる。2−ハイブリッドシステムの他の利点は、それが、所望の最終目的に従って、遺伝子発現を駆動するのに用いるプロモーターの選択を可能とすることである。そのような二重制御は、特に、細胞毒性蛋白質が生産される場合に、遺伝子治療の領域で特に重要であり得る。何故ならば、発現のタイミングならびに発現が起こる細胞の双方を制御することができるからである。適当なプロモーターに作動可能に連結した遺伝子を対象の細胞に導入すると、外因性遺伝子の発現が本発明のシステムの存在によって制御される。プロモーターは構成的にまたは誘導的に調節することができるか、あるいは組織−特異的(すなわち、特定のタイプの細胞でのみ発現される)または生物のある発生段階に特異的であり得る。
【0138】
本発明の遺伝子発現カセット
本発明の新規なEcR/キメラRXR−ベースの誘導性遺伝子発現システムは、宿主細胞で発現させることができる遺伝子発現カセットを含み、ここに、該遺伝子発現カセットは、各々、ハイブリッドポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。かくして、出願人らの発明は、本発明の遺伝子発現システムで用いられる新規な遺伝子発現カセットも提供する。
【0139】
具体的には、本発明は、ハイブリッドポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む遺伝子発現カセットを提供する。特に、本発明は宿主細胞で発現させることができる遺伝子発現カセットを提供し、ここに、該遺伝子発現カセットは、i)応答エレメントを認識するDNA−結合ドメイン、またはii)トランス活性化ドメインのいずれか、およびエクジソン受容体リガンド結合ドメインまたはキメラレチノイドX受容体リガンド結合ドメインを含むハイブリッドポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。
【0140】
特定の態様において、遺伝子発現カセットは、応答エレメントを認識するDNA−結合ドメインおよびEcRリガンド結合ドメインを含むハイブリッドポリペプチドをコードする。
【0141】
他の特定の態様において、遺伝子発現カセットは、応答エレメントを認識するDNA−結合ドメインおよびキメラRXRリガンド結合ドメインを含むハイブリッドポリペプチドをコードする。
【0142】
他の特定の態様において、遺伝子発現カセットは、トランス活性化ドメインおよびEcRリガンド結合ドメインを含むハイブリッドポリペプチドをコードする。
【0143】
他の特定の態様において、遺伝子発現カセットは、トランス活性化ドメインおよびキメラRXRリガンド結合ドメインを含むハイブリッドポリペプチドをコードする。
【0144】
好ましい態様において、リガンド結合ドメイン(LBD)はEcR LBD、キメラRXR LBD、または関連するステロイド/甲状腺ホルモン核受容体ファミリーメンバーLBDもしくはキメラLBD、またはそのアナログ、組合せもしくは修飾体である。特定の態様において、LBDはEcR LBDまたはキメラRXR LBDである。他の特定の態様において、LBDはトランケートされたEcR LBDまたはトランケートされたキメラRXR LBDからのものである。トランケーション突然変異は、限定されるものではないが、制限エンドヌクレアーゼ消化/欠失、PCR−媒介/オリゴヌクレオチド−指向性欠失、化学的突然変異誘発、DNAストランド破壊などを含めた当該分野で用いられるいずれの方法によってなすこともできる。
【0145】
EcRは、無脊椎動物EcRであり、好ましくは、節足動物(Arthropod)網から選択され得る。好ましくは、EcRは鱗翅目EcR、双翅目EcR、直翅目(Orthopteran)EcR、同翅目(Homopteran)EcRおよび半翅目(Hemipteran)EcRよりなる群から選択される。より好ましくは、用いるEcRはハマキガ Choristoneura fumiferana(トウヒシントメハマキ)EcR(「CfEcR」)、甲虫 Tenebrio molitor(チャイロコメノゴミムシダマシ)EcR(「TmEcR」)、Manduca sexta(タバコスズメガ)EcR(「MsEcR」)、Heliothies virescens(オオタバコガ)EcR(「HvEcR」)、ユスリカ Chironomus tentans(キミドリユスリカ)EcR(「CtEcR」)、カイコガ Bombyx mori EcR(「BmEcR」)、ミバエ Drosophila melanogaster(キイロショウジョウバエ)EcR(「DmEcR」)、カ Aedes aegypti(ネッタイシマカ)EcR(「AaEcR」)、クロバエ Lucilia capitata(「LcEcR」)、クロバエ Lucilia cuprina(ヒツジキンバエ)EcR(「LucEcR」)、地中海ミバエ Ceratitis capitata(チチュウカイミバエ)EcR(「CcEcR」)、バッタ Locusta migratoria(トノサマバッタ)EcR(「LmEcR」)、アブラムシ Myzus persicae(モモアカアブラムシ)EcR(「MpEcR」)、シオマネキ Celuca pugilator EcR(「CpEcR」)、マダニ Amblyomma americanum EcR(「AmaEcR」)、コナジラミ Bamecia argentifoli(シルバーリーフコナジラミ)EcR(「BaEcR」、配列番号:68)またはヨコバイ Nephotetix cincticeps(ツマグロヨコバイ)EcR(「NcEcR」、配列番号:69)である。特定の態様において、LBDはハマキガ(Choristoneura fumiferana)EcR(「CfEcR」)またはミバエ Drosophila melanogaster EcR(「DmEcR」)である。
【0146】
特定の態様において、EcR LBDは全長EFドメインを含む。好ましい態様において、全長EFドメインは、配列番号:1または配列番号:2の核酸配列を含むポリヌクレオチドによってコードされる。
【0147】
特定の態様において、LBDはトランケートされたEcR LBDからのものである。EcR LBDのトランケーションの結果、少なくとも1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、205、210、215、220、225、230、235または240のアミノ酸が欠失する。他の特定の態様において、EcR LBDのトランケーションの結果、少なくとも部分的ポリペプチドドメインが欠失する。他の特定の態様において、EcR LBDトランケーションの結果、少なくとも全ポリペプチドドメインが欠失する。より好ましくは、EcRポリペプチドのトランケーションの結果、少なくともA/B−ドメイン、C−ドメイン、D−ドメイン、F−ドメイン、A/B/C−ドメイン、A/B/1/2−C−ドメイン、A/B/C/D−ドメイン、A/B/C/D/F−ドメイン、A/B/F−ドメイン、A/B/C/F−ドメイン、部分的E−ドメイン、または部分的F−ドメインが欠失する。いくつかの部分的および/または完全なドメイン欠失の組合せも好ましい。
【0148】
1つの態様において、エクジソン受容体リガンド結合ドメインは、配列番号:1(CfEcR−EF)、配列番号:2(DmEcR−EF)、配列番号:3(CfEcR−DE)、および配列番号:4(DmEcR−DE)よりなる群から選択される核酸配列を含むポリヌクレオチドによってコードされる。
【0149】
好ましい態様において、エクジソン受容体リガンド結合ドメインは、配列番号:65(CfEcR−DEF)、配列番号:59(CfEcR−CDEF)、配列番号:67(DmEcR−DEF)、配列番号:71(TmEcR−DEF)および配列番号:73(AmaEcR−DEF)よりなる群から選択される核酸配列を含むポリヌクレオチドによってコードされる。
【0150】
1つの態様において、エクジソン受容体リガンド結合ドメインは、配列番号:5(CfEcR−EF)、配列番号:6(DmEcR−EF)、配列番号:7(CfEcR−DE)および配列番号:8(DmEcR−DE)よりなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0151】
好ましい態様において、エクジソン受容体リガンド結合ドメインは、配列番号:57(CfEcR−DEF)、配列番号:70(CfEcR−CDEF)、配列番号:58(DmEcR−DEF)、配列番号:72(TmEcR−DEF)および配列番号:74(AmaEcR−DEF)よりなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0152】
好ましくは、キメラRXRリガンド結合ドメインは、脊椎動物種RXRポリペプチド断片、無脊椎動物種RXRポリペプチド断片、および非−双翅目/非−鱗翅目無脊椎動物種RXRホモログポリペプチド断片よりなる群から選択される少なくとも2つのポリペプチド断片を含む。本発明によるキメラRXRリガンド結合ドメインは、少なくとも2つの異なる種のRXRポリペプチド断片を含むことができ、あるいは種が同一である場合、2以上のポリペプチド断片は2以上の異なるアイソフォーム種のRXRポリペプチド断片からのものであってよい。
【0153】
特定の態様において、脊椎動物種RXRポリペプチド断片はマウス Mus musculus(ハツカネズミ)RXR(「MmRXR」)またはヒト Homo sapiens RXR(「HsRXR」)からのものである。RXRポリペプチドはRXRα、RXRβまたはRXRγアイソフォームであり得る。
【0154】
好ましい態様において、脊椎動物種RXRポリペプチド断片は、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13および配列番号:14よりなる群から選択される核酸配列を含むポリヌクレオチドによってコードされる脊椎動物種RXR−EFドメインからのものである。他の好ましい態様において、脊椎動物種RXRポリペプチド断片は、配列番号:15、配列番号:16、配列番号:17、配列番号:18、配列番号:19および配列番号:20よりなる群から選択されるアミノ酸配列を含む脊椎動物種RXR−EFドメインからのものである。
【0155】
他の特定の態様において、無脊椎動物種RXRポリペプチド断片はバッタ Locusta migratoriaウルトラスピラクルポリペプチド(「LmUSP」)、マダニ Amblyomma americamum RXRホモログ1(「AmaRXR1」)、マダニ Amblyomma americanum RXRホモログ2(「AmaRXR2」)、シオマネキ Celuca pugilator RXRホモログ(「CpRXR」)、甲虫 Tenebrio molitor RXRホモログ(「TmRXR」)、ミツバチ Apis mellifera RXRホモログ(「AmRXR」)、およびアブラムシ Myzus persicae RXRホモログ(「MpRXR」)からのものである。
【0156】
好ましい態様において、無脊椎動物種RXRポリペプチド断片は、配列番号:21、配列番号:22、配列番号:23、配列番号:24、配列番号:25および配列番号:26よりなる群から選択される核酸配列を含むポリヌクレオチドによってコードされる無脊椎動物種RXR−EFドメインからのものである。他の好ましい態様において、無脊椎動物種RXRポリペプチド断片は、配列番号:27、配列番号:28、配列番号:29、配列番号:30、配列番号:31および配列番号:32よりなる群から選択されるアミノ酸配列を含む無脊椎動物種RXR−EFドメインからのものである。
【0157】
他の特定の態様において、無脊椎動物種RXRポリペプチド断片は非−双翅目/非−鱗翅目無脊椎動物種RXRホモログからのものである。
【0158】
好ましい態様において、キメラRXRリガンド結合ドメインは、少なくとも1つの脊椎動物種RXRポリペプチド断片および1つの無脊椎動物種RXRポリペプチド断片を含む。
【0159】
他の好ましい態様において、キメラRXRリガンド結合ドメインは、少なくとも1つの脊椎動物種RXRポリペプチド断片および1つの非−双翅目/非−鱗翅目無脊椎動物種RXRホモログポリペプチド断片を含む。
【0160】
他の好ましい態様において、キメラRXRリガンド結合ドメインは、少なくとも1つの無脊椎動物種RXRポリペプチド断片および1つの非−双翅目/非−鱗翅目無脊椎動物種RXRホモログポリペプチド断片を含む。
【0161】
他の好ましい態様において、キメラRXRリガンド結合ドメインは、少なくとも1つの脊椎動物種RXRポリペプチド断片および1つの異なる脊椎動物種RXRポリペプチド断片を含む。
【0162】
他の好ましい態様において、キメラRXRリガンド結合ドメインは、少なくとも1つの無脊椎動物種RXRポリペプチド断片および1つの異なる無脊椎動物種RXRポリペプチド断片を含む。
【0163】
他の好ましい態様において、キメラRXRリガンド結合ドメインは、少なくとも1つの非−双翅目/非−鱗翅目無脊椎動物種RXRポリペプチド断片および1つの異なる非−双翅目/非−鱗翅目無脊椎動物種RXRポリペプチド断片を含む。
【0164】
特定の態様において、キメラRXR LBDは、EF−ドメインヘリックス1、EF−ドメインヘリックス2、EF−ドメインヘリックス3、EF−ドメインヘリックス4、EF−ドメインヘリックス5、EF−ドメインヘリックス6、EF−ドメインヘリックス7、EF−ドメインヘリックス8、EF−ドメインヘリックス9、EF−ドメインヘリックス10、EF−ドメインヘリックス11、EF−ドメインヘリックス12、F−ドメイン、およびEF−ドメインβ−プリーツシート(β−pleated sheet)よりなる群から選択される少なくとも1つのポリペプチド断片を含むRXR LBDドメインを含み、ここに、該ポリペプチド断片はRXR LBDドメインとは異なる種のRXRからのものであり、すなわち、RXR LBDドメインに対してキメラである。
【0165】
他の特定の態様において、キメラRXRリガンド結合ドメインの第1のポリペプチド断片は本発明による第1の種のRXRのヘリックス1−6、ヘリックス1−7、ヘリックス1−8、ヘリックス1−9、ヘリックス1−10、ヘリックス1−11またはヘリックス1−12を含み、さらにキメラRXRリガンド結合ドメインの第2のポリペプチド断片は、各々、本発明による第2の種のRXRのヘリックス7−12、ヘリックス8−12、ヘリックス9−12、ヘリックス10−12、ヘリックス11−12、ヘリックス12、またはF−ドメインを含む。
【0166】
好ましい態様において、キメラRXRリガンド結合ドメインの第1のポリペプチド断片は本発明による第1の種のRXRのヘリックス1−6を含み、さらにキメラRXRリガンド結合ドメインの第2のポリペプチド断片は本発明による第2の種のRXRのヘリックス7−12を含む。
【0167】
他の好ましい態様において、キメラRXRリガンド結合ドメインの第1のポリペプチド断片は本発明による第1の種のRXRのヘリックス1−7を含み、さらにキメラRXRリガンド結合ドメインの第2のポリペプチド断片は本発明による第2の種のRXRのヘリックス8−12を含む。
【0168】
他の好ましい態様において、キメラRXRリガンド結合ドメインの第1のポリペプチド断片は本発明による第1の種のRXRのヘリックス1−8を含み、さらにキメラRXRリガンド結合ドメインの第2のポリペプチド断片は本発明による第2の種のRXRのヘリックス9−12を含む。
【0169】
他の好ましい態様において、キメラRXRリガンド結合ドメインの第1のポリペプチド断片は本発明による第1の種のRXRのヘリックス1−9を含み、さらにキメラRXRリガンド結合ドメインの第2のポリペプチド断片は本発明による第2の種のRXRのヘリックス10−12を含む。
【0170】
他の好ましい態様において、キメラRXRリガンド結合ドメインの第1のポリペプチド断片は本発明による第1の種のRXRのヘリックス1−10を含み、さらにキメラRXRリガンド結合ドメインの第2のポリペプチド断片は本発明による第2の種のRXRのヘリックス11−12を含む。
【0171】
他の好ましい態様において、キメラRXRリガンド結合ドメインの第1のポリペプチド断片は本発明による第1の種のRXRのヘリックス1−11を含み、さらにキメラRXRリガンド結合ドメインの第2のポリペプチド断片は本発明による第2の種のRXRのヘリックス12を含む。
【0172】
他の好ましい態様において、キメラRXRリガンド結合ドメインの第1のポリペプチド断片は本発明による第1の種のRXRのヘリックス1−12を含み、さらにキメラRXRリガンド結合ドメインの第2のポリペプチド断片は本発明による第2の種のRXRのFドメインを含む。
【0173】
他の特定の態様において、LBDはトランケートされたキメラRXRリガンド結合ドメインからのものである。キメラRXR LBDトランケーションの結果、少なくとも1、2、3、4、5、6、8、10、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、25、26、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、205、210、215、220、225、230、235、または240のアミノ酸が欠失される。好ましくは、キメラRXR LBDトランケーションの結果、少なくとも部分的なポリペプチドドメインが欠失する。より好ましくは、キメラRXR LBDトランケーションの結果、少なくとも全ポリペプチドドメインが欠失する。好ましい態様においては、キメラRXR LBDトランケーションの結果、少なくとも部分的E−ドメイン、完全なE−ドメイン、部分的F−ドメイン、完全なF−ドメイン、EF−ドメインヘリックス1、EF−ドメインヘリックス2、EF−ドメインヘリックス3、EF−ドメインヘリックス4、EF−ドメインヘリックス5、EF−ドメインヘリックス6、EF−ドメインヘリックス7、EF−ドメインヘリックス8、EF−ドメインヘリックス9、EF−ドメインヘリックス10、EF−ドメインヘリックス11、EF−ドメインヘリックス12、またはEF−ドメインβ−プリーツシートが欠失する。いくつかの部分的および/または完全なドメイン欠失の組合せも行うことができる。
【0174】
好ましい態様において、トランケートされたキメラRXRリガンド結合ドメインは、配列番号:33、配列番号:34、配列番号:35、配列番号:36、配列番号:37または配列番号:38の核酸配列を含むポリヌクレオチドによってコードされる。他の好ましい態様において、トランケートされたキメラRXRリガンド結合ドメインは配列番号:39、配列番号:40、配列番号:41、配列番号:42、配列番号:43または配列番号:44の核酸配列を含む。
【0175】
好ましい態様において、キメラRXRリガンド結合ドメインは、a)配列番号:45、b)配列番号:13のヌクレオチド1−348および配列番号:21のヌクレオチド268−630、c)配列番号:13のヌクレオチド1−408および配列番号:21のヌクレオチド337−630、b)配列番号:13のヌクレオチド1−465および配列番号:21のヌクレオチド403−630、e)配列番号:13のヌクレオチド1−555および配列番号:21のヌクレオチド490−630、f)配列番号:13のヌクレオチド1−624および配列番号:21のヌクレオチド547−630、g)配列番号:13のヌクレオチド1−645および配列番号:21のヌクレオチド601−630、ならびにh)配列番号:13のヌクレオチド1−717および配列番号:21のヌクレオチド613−630よりなる群から選択される核酸配列を含むポリヌクレオチドによってコードされる。
【0176】
他の好ましい態様において、キメラRXRリガンド結合ドメインは、a)配列番号:46、b)配列番号:13のアミノ酸1−116および配列番号:21のアミノ酸90−210、c)配列番号:13のアミノ酸1−136および配列番号:21のアミノ酸113−210、d)配列番号:13のアミノ酸1−155および配列番号:21のアミノ酸135−210、e)配列番号:13のアミノ酸1−185および配列番号:21のアミノ酸164−210、f)配列番号:13のアミノ酸1−208および配列番号:21のアミノ酸183−210、g)配列番号:13のアミノ酸1−215および配列番号:21のアミノ酸201−210、ならびにh)配列番号:13のアミノ酸1−239および配列番号:21のアミノ酸205−210よりなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0177】
本発明の目的では、EcR、脊椎動物RXR、無脊椎動物RXR、およびキメラRXRは合成およびハイブリッドEcR、脊椎動物RXR、無脊椎動物RXR、およびキメラRXR、およびそれらのホモログも含む。
【0178】
DNA結合ドメインは、合成およびキメラDNA結合ドメイン、またはそのアナログ、組合せまたは修飾体を含めた、公知の応答エレメントを持ついずれのDNA結合ドメインでもあり得る。好ましくは、DBDはGAL4 DBD、LexA DBD、転写因子DBD、ステロイド/甲状腺ホルモン核受容体スーパーファミリーメンバーDBD、細菌LacZ DBD、または酵母put DBDである。より好ましくは、DBDはGAL4 DBD[配列番号:47(ポリヌクレオチド)または配列番号:48(ポリペプチド)]またはLexA DBD[(配列番号:49(ポリヌクレオチド)または配列番号:50(ポリペプチド))]である。
【0179】
トランス活性化ドメイン(「AD」または「TA」と略する)はいずれのステロイド/甲状腺ホルモン核受容体AD、合成またはキメラAD、ポリグルタミンAD、塩基性または酸性アミノ酸AD、VP16 AD、GAL4 AD、NF−κB AD、BP64 AD、B42酸性活性化ドメイン(B42AD)、またはそのアナログ、組合せまたは修飾体であってもよい。好ましい態様において、ADは合成またはキメラADであるか、あるいはVP16、GAL4 NF−κBまたはB42酸性活性化ドメインADから得られる。好ましくは、ADはVP16 AD[配列番号:51(ポリヌクレオチド)または配列番号:52(ポリペプチド)]またはB42 AD[配列番号:53(ポリヌクレオチド)または配列番号:54(ポリペプチド)]である。
【0180】
好ましい態様において、遺伝子発現カセットは、GAL4 DBD(配列番号:47)およびLexA DBD(配列番号:49)よりなる群から選択される核酸配列を含むポリヌクレオチドによってコードされるDNA−結合ドメイン、および配列番号:65(CfEcR−DEF)、配列番号:59(CfEcR−CDEF)、配列番号:67(DmEcR−DEF)、配列番号:71(TmEcR−DEF)および配列番号:73(AmaEcR−DEF)よりなる群から選択される核酸配列を含むポリヌクレオチドによってコードされるEcRリガンド結合ドメインを含むハイブリッドポリペプチドをコードする。
【0181】
他の好ましい態様において、遺伝子発現カセットは、GAL4 DBD(配列番号:48)およびLexA DBD(配列番号:50)よりなる群から選択されるアミノ酸配列を含むDNA−結合ドメイン、および配列番号:57(CfEcR−DEF)、配列番号:70(CfEcR−CDEF)、配列番号:58(DmEcR−DEF)、配列番号:72(TmEcR−DEF)、および配列番号:74(AmaEcR−DEF)よりなる群から選択されるアミノ酸配列を含むEcRリガンド結合ドメインを含むハイブリッドポリペプチドをコードする。
【0182】
他の好ましい態様において、遺伝子発現カセットは、GAL4 DBD(配列番号:47)およびLexA DBD(配列番号:49)よりなる群から選択される核酸配列を含むポリヌクレオチドによってコードされるDNA−結合ドメイン、ならびにa)配列番号:45、b)配列番号:13のヌクレオチド1−348および配列番号:21のヌクレオチド268−630、c)配列番号:13のヌクレオチド1−408および配列番号:21のヌクレオチド337−630、d)配列番号:13のヌクレオチド1−465および配列番号:21のヌクレオチド403−630、e)配列番号:13のヌクレオチド1−555および配列番号:21のヌクレオチド490−630、f)配列番号:13のヌクレオチド1−624および配列番号:21のヌクレオチド547−630、g)配列番号:13のヌクレオチド1−645および配列番号:21のヌクレオチド601−630、ならびにh)配列番号:13のヌクレオチド1−717および配列番号:21のヌクレオチド613−630よりなる群から選択される核酸配列を含むポリヌクレオチドによってコードされるキメラRXRリガンド結合ドメインを含むハイブリッドポリペプチドをコードする。
【0183】
他の好ましい態様において、遺伝子発現カセットは、GAL4 DBD(配列番号:48)およびLexA DBD(配列番号:50)よりなる群から選択されるアミノ酸配列を含むDNA−結合ドメイン、ならびにa)配列番号:46、b)配列番号:13のアミノ酸1−116および配列番号:21のアミノ酸90−210、c)配列番号:13のアミノ酸1−136および配列番号:21のアミノ酸113−210、d)配列番号:13のアミノ酸1−155および配列番号:21のアミノ酸135−210、e)配列番号:13のアミノ酸1−185および配列番号:21のアミノ酸164−210、f)配列番号:13のアミノ酸1−208および配列番号:21のアミノ酸183−210、g)配列番号:13のアミノ酸1−215および配列番号:21のアミノ酸201−210、ならびにh)配列番号:13のアミノ酸1−239および配列番号:21のアミノ酸205−210よりなる群から選択されるアミノ酸配列を含むキメラRXRリガンド結合ドメインを含むハイブリッドポリペプチドをコードする。
【0184】
他の好ましい態様において、遺伝子発現カセットは、配列番号:51または配列番号:53の核酸配列を含むポリヌクレオチドによってコードされるトランス活性化ドメイン、ならびに配列番号:65(CfEcR−DEF)、配列番号:59(CfEcR−CDEF)、配列番号:67(DmEcR−DEF)、配列番号:71(TmEcR−DEF)および配列番号:73(AmaEcR−DEF)よりなる群から選択される核酸配列を含むポリヌクレオチドによってコードされるEcRリガンド結合ドメインを含むハイブリッドポリペプチドをコードする。
【0185】
他の好ましい態様において、遺伝子発現カセットは、配列番号:52または配列番号:54のアミノ酸配列を含むトランス活性化ドメイン、ならびに配列番号:57(CfEcR−DEF)、配列番号:70(CfEcR−CDEF)、配列番号:58(DmEcR−DEF)、配列番号:72(TmEcR−DEF)および配列番号:74(AmaEcR−DEF)よりなる群から選択されるアミノ酸配列を含むEcRリガンド結合ドメインを含むハイブリッドポリペプチドをコードする。
【0186】
他の好ましい態様において、遺伝子発現カセットは、配列番号:51または配列番号53の核酸配列を含むポリヌクレオチドによってコードされるトランス活性化ドメイン、ならびにa)配列番号:45、b)配列番号:13のヌクレオチド1−348および配列番号:21のヌクレオチド268−630、c)配列番号:13のヌクレオチド1−408および配列番号:21のヌクレオチド337−630、d)配列番号:13のヌクレオチド1−465および配列番号:21のヌクレオチド403−630、e)配列番号:13のヌクレオチド1−555および配列番号:21のヌクレオチド490−630、f)配列番号:13のヌクレオチド1−624および配列番号:21のヌクレオチド547−630、g)配列番号:13のヌクレオチド1−645および配列番号:21のヌクレオチド601−630、ならびにh)配列番号:13のヌクレオチド1−717および配列番号:21のヌクレオチド613−630よりなる群から選択される核酸配列を含むポリヌクレオチドによってコードされるキメラRXRリガンド結合ドメインを含むハイブリッドポリペプチドをコードする。
【0187】
他の好ましい態様において、遺伝子発現カセットは、配列番号:52または配列番号:54のアミノ酸配列を含むトランス活性化ドメイン、ならびにa)配列番号:46、b)配列番号:13のアミノ酸1−116および配列番号:21のアミノ酸90−210、c)配列番号:13のアミノ酸1−136および配列番号:21のアミノ酸113−210、d)配列番号:13のアミノ酸1−155および配列番号:21のアミノ酸135−210、e)配列番号:13のアミノ酸1−185および配列番号:21のアミノ酸164−210、f)配列番号:13のアミノ酸1−208および配列番号:21のアミノ酸183−210、g)配列番号:13のアミノ酸1−215および配列番号:21のアミノ酸201−210、ならびにh)配列番号:13のアミノ酸1−239および配列番号:21のアミノ酸205−210よりなる群から選択されるアミノ酸配列を含むキメラRXRリガンド結合ドメインを含むハイブリッドポリペプチドをコードする。
【0188】
応答エレメント(「RE」)は公知のDNA結合ドメインを持ついずれの応答エレメント、またはそのアナログ、組合せまたは修飾体であってもよい。単一REを使用することができるか、あるいは複数RE(同一REの複数コピーまたは2以上の異なるRE)を本発明で用いることができる。特定の態様において、REはGAL4からのRE(「GAL4RE」)、LexAからのRE、ステロイド/甲状腺ホルモン核受容体RE、または合成DNA結合ドメインを認識する合成REである。好ましくは、REは配列番号:55のポリヌクレオチド配列を含むGAL4RE、または配列番号:56のポリヌクレオチド配列を含むLex ARE(オペロン「op」)(2XLexAop)である。好ましくは、第1のハイブリッド蛋白質は、トランス活性化ドメインを実質的に含まず、第2のハイブリッド蛋白質はDNA結合ドメインを実質的に含まない。本発明の目的では、「実質的に含まない」とは、問題の蛋白質が、活性化または結合活性を供するのに十分な配列の問題となるドメインを含まないことを意味する。
【0189】
かくして、本発明は、i)DNA結合ドメインを含むポリペプチドが結合するドメインを含む応答エレメント、ii)トランス活性化ドメインを含むポリペプチドによって活性化されるプロモーター、およびiii)その発現を変調すべき遺伝子を含む遺伝子発現カセットに関する。
【0190】
出願人らの遺伝子発現カセットで用いる注目する遺伝子は内因性遺伝子または異種遺伝子であってよい。所望の遺伝子または蛋白質についての核酸またはアミノ酸配列の情報は、多くの公的アクセスデータベースのうちの1つ、例えば、GENBANK、EMBL、Swiss−ProtおよびPIRにおいて、または多くの生物学関連雑誌刊行物において見出すことができる。かくして、当業者であれば、実質的に全ての公知の遺伝子についての核酸配列情報にアクセスすることができる。従って、そのような情報を用いて、本明細書中に記載した出願人の方法で用いる遺伝子発現カセット内への注目する遺伝子の挿入のための所望の構築体を構築することができる。
【0191】
出願人らの遺伝子発現カセットで用いる注目する遺伝子としては、限定されるものではないが、疾患、病気、障害、機能不全、遺伝的欠陥を扱うのに使用され得る;例えば、モノクローナル抗体、酵素、プロテアーゼ、サイトカイン、インターフェロン、インスリン、エリスロポエチン、血液凝固因子、他の血液因子もしくは成分、遺伝子治療用のウイルスベクター、ワクチン用のウイルス、薬物発見用の、機能的ゲノミクス用の、ならびにプロテオミクスの分析用および適用用の標的などをはじめとする治療上望ましいポリペプチドまたは産物をコードする遺伝子が挙げられる。
【0192】
本発明のポリヌクレオチド
本発明の新規なエクジソン受容体/キメラレチノイドX受容体ベースの誘導性遺伝子発現システムは、a)DNA結合ドメインまたはトランス活性化ドメイン、およびb)EcRリガンド結合ドメインまたはキメラRXRリガンド結合ドメインを含むハイブリッドポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む遺伝子発現カセットを含む。これらの遺伝子発現カセット、それらが含むポリヌクレオチド、およびそれらがコードするハイブリッドポリペプチドは、宿主細胞内で遺伝子の発現を変調するためのEcR−ベースの遺伝子発現システムの構成要素として有用である。
【0193】
かくして、本発明は、a)本発明によるDNA結合ドメインまたはトランス活性化ドメイン、およびb)本発明によるEcRリガンド結合ドメインまたはキメラRXRリガンド結合ドメインを含むハイブリッドポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドを提供する。
【0194】
また、本発明は、本発明によるキメラRXRリガンド結合ドメインをコードする単離されたポリヌクレオチドに関する。
【0195】
また、本発明は、本発明によるトランケーション突然変異を含むトランケートされたEcR LBDまたはトランケートされたキメラRXR LBDをコードする単離されたポリヌクレオチドに関する。具体的には、本発明は、宿主細胞において遺伝子発現を変調するのに有用な、リガンド結合活性またはリガンド感受性に影響するトランケーション突然変異を含むトランケートされたEcRまたはキメラRXRリガンド結合ドメインをコードする単離されたポリヌクレオチドに関する。
【0196】
特定の態様において、EcR LBDをコードする単離されたポリヌクレオチドは、配列番号:65(CfEcR−DEF)、配列番号:59(CfEcR−CDEF)、配列番号:67(DmEcR−DEF)、配列番号:71(TmEcR−DEF)および配列番号:73(AmaEcR−DEF)よりなる群から選択されるポリヌクレオチド配列を含む。
【0197】
他の特定の態様において、単離されたポリヌクレオチドは、配列番号:57(CfEcR−DEF)、配列番号:70(CfEcR−CDEF)、配列番号:58(DmEcR−DEF)、配列番号:72(TmEcR−DEF)および配列番号:74(AmaEcR−DEF)よりなる群から選択されるアミノ酸配列を含むEcR LBDをコードする。
【0198】
他の特定の態様において、キメラRXR LBDをコードする単離されたポリヌクレオチドは、a)配列番号:45、b)配列番号:13のヌクレオチド1−348および配列番号:21のヌクレオチド268−630、c)配列番号:13のヌクレオチド1−408および配列番号:21のヌクレオチド337−630、d)配列番号:13のヌクレオチド1−465および配列番号:21のヌクレオチド403−630、e)配列番号:13のヌクレオチド1−555および配列番号:21のヌクレオチド490−630、f)配列番号:13のヌクレオチド1−624および配列番号:21のヌクレオチド547−630、g)配列番号:13のヌクレオチド1−645および配列番号:21のヌクレオチド601−630、ならびにh)配列番号:13のヌクレオチド1−717および配列番号:21のヌクレオチド613−630よりなる群から選択されるポリヌクレオチド配列を含む。
【0199】
他の特定の態様において、単離されたポリヌクレオチドは、a)配列番号:46、b)配列番号:13のアミノ酸1−116および配列番号:21のアミノ酸90−210、c)配列番号:13のアミノ酸1−136および配列番号:21のアミノ酸113−210、d)配列番号:13のアミノ酸1−155および配列番号:21のアミノ酸135−210、e)配列番号:13のアミノ酸1−185および配列番号:21のアミノ酸164−210、f)配列番号:13のアミノ酸1−208および配列番号:21のアミノ酸183−210、g)配列番号:13のアミノ酸1−215および配列番号:21のアミノ酸201−210、ならびにh)配列番号:13のアミノ酸1−239および配列番号:21のアミノ酸205−210よりなる群から選択されるアミノ酸配列を含むキメラRXR LBDをコードする。
【0200】
特に、本発明はトランケーション突然変異を含むトランケートされたキメラRXR LBDをコードする単離されたポリヌクレオチドに関し、ここに、該突然変異はトランケートされたキメラRXR LBDのリガンド結合活性またはリガンド感受性を低下させる。特定の態様において、本発明は、トランケートされたキメラRXR LBDのステロイド結合活性またはステロイド感受性を低下させるトランケーション突然変異を含むトランケートされたキメラRXR LBDをコードする単離されたポリヌクレオチドに関する。
【0201】
他の特定の態様において、本発明は、トランケートされたキメラRXR LBDの非−ステロイド結合活性または非−ステロイド感受性を低下させる、トランケーション突然変異を含むトランケートされたキメラRXR LBDをコードする単離されたポリヌクレオチドに関する。
【0202】
また、本発明は、トランケーション突然変異を含むトランケートされたキメラRXR LBDをコードする単離されたポリヌクレオチドに関し、ここに、該突然変異はトランケートされたキメラRXR LBDのリガンド結合活性またはリガンド感受性を増強させる。特定の態様において、本発明は、トランケートされたキメラRXR LBDのステロイド結合活性またはステロイド感受性を増強させるトランケーション突然変異を含むトランケートされたキメラRXR LBDをコードする単離されたポリヌクレオチドに関する。
【0203】
他の特定の態様において、本発明は、トランケートされたキメラRXR LBDの非−ステロイド結合活性または非−ステロイド感受性を増強させるトランケーション突然変異を含むトランケートされたキメラRXR LBDをコードする単離されたポリヌクレオチドに関する。
【0204】
また、本発明は、トランケートされたキメラレチノイドX受容体LBDおよび二量体化パートナーを含むヘテロダイマーのリガンド感受性を増大させるトランケーション突然変異を含むトランケートされたキメラレチノイドX受容体LBDをコードする単離されたポリヌクレオチドに関する。特定の態様において、二量体化パートナーはエクジソン受容体ポリペプチドである。好ましくは、二量体化パートナーはトランケートされたEcRポリペプチドである。より好ましくは、二量体化パートナーは、ドメインA/Bが欠失されたEcRポリペプチドである。なおより好ましくは、二量体化パートナーは配列番号:57(CfEcR−DEF)、配列番号:58(DmEcR−DEF)、配列番号:70(CfEcR−CDEF)、配列番号:72(TmEcR−DEF)または配列番号:74(AmaEcR−DEF)のアミノ酸配列を含むEcRポリペプチドである。
【0205】
本発明のポリペプチド
本発明の新規なエクジソン受容体/キメラレチノイドX受容体−ベースの誘導性遺伝子発現システムは、a)DNA結合ドメインまたはトランス活性化ドメイン、およびb)EcRリガンド結合ドメインまたはキメラRXRリガンド結合ドメインを含むハイブリッドポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む遺伝子発現カセットを含む。これらの遺伝子発現カセット、それらが含むポリヌクレオチド、およびそれらがコードするハイブリッドポリペプチドは、宿主細胞内で遺伝子の発現を変調するためのEcR/キメラRXR−ベースの遺伝子発現システムの構成要素として有用である。
【0206】
かくして、本発明は、a)本発明によるDNA結合ドメインまたはトランス活性化ドメイン、およびb)本発明によるEcRリガンド結合ドメインまたはキメラRXRリガンド結合ドメインを含むハイブリッドポリペプチドにも関する。
【0207】
また、本発明は、本発明によるキメラRXRリガンド結合ドメインを含む単離されたポリペプチドにも関する。
【0208】
また、本発明は、本発明によるトランケーション突然変異を含む単離されたトランケートされたEcR LBDまたは単離されたトランケートされたキメラRXR LBDにも関する。具体的には、本発明は、リガンド結合活性またはリガンド感受性に影響するトランケーション突然変異を含む単離されたトランケートされたEcR LBDまたは単離されたトランケートされたキメラRXR LBDに関する。
【0209】
特定の態様において、単離されたEcR LBDポリペプチドは、配列番号:65(CfEcR−DEF)、配列番号:59(CfEcR−CDEF)、配列番号:67(DmEcR−DEF)、配列番号:71(TmEcR−DEF)および配列番号:73(AmaEcR−DEF)よりなる群から選択されるポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドによってコードされる。
【0210】
他の特定の態様において、単離されたEcR LBDポリペプチドは、配列番号:57(CfEcR−DEF)、配列番号:70(CfEcR−CDEF)、配列番号:58(DmEcR−DEF)、配列番号:72(TmEcR−DEF)および配列番号:74(AmaEcR−DEF)よりなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0211】
他の特定の態様において、単離されたトランケートされたキメラRXR LBDは、a)配列番号:45、b)配列番号:13のヌクレオチド1−348および配列番号:21のヌクレオチド268−630、c)配列番号:13のヌクレオチド1−408および配列番号:21のヌクレオチド337−630、d)配列番号:13のヌクレオチド1−465および配列番号:21のヌクレオチド403−630、e)配列番号:13のヌクレオチド1−555および配列番号:21のヌクレオチド490−630、f)配列番号:13のヌクレオチド1−624および配列番号:21のヌクレオチド547−630、g)配列番号:13のヌクレオチド1−645および配列番号:21のヌクレオチド601−630、ならびにh)配列番号:13のヌクレオチド1−717および配列番号:21のヌクレオチド613−630よりなる群から選択されるポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドによってコードされる。
【0212】
他の特定の態様において、単離されたトランケートされたキメラRXR LBDは、a)配列番号:46、b)配列番号:13のアミノ酸1−116および配列番号:21のアミノ酸90−210、c)配列番号:13のアミノ酸1−136および配列番号:21のアミノ酸113−210、d)配列番号:13のアミノ酸1−155および配列番号:21のアミノ酸135−210、e)配列番号:13のアミノ酸1−185および配列番号:21のアミノ酸164−210、f)配列番号:13のアミノ酸1−208および配列番号:21のアミノ酸183−210、g)配列番号:13のアミノ酸1−215および配列番号:21のアミノ酸201−210、ならびにh)配列番号:13のアミノ酸1−239および配列番号:21のアミノ酸205−210よりなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0213】
本発明は、トランケートされたキメラRXR LBDのリガンド結合活性またはリガンド感受性を低下させるトランケーション突然変異を含む単離されたトランケートされたキメラRXR LBDに関する。
【0214】
かくして、本発明は、トランケートされたキメラRXR LBDのリガンド結合活性またはリガンド感受性を低下させるトランケーション突然変異を含む単離されたトランケートされたキメラRXR LBDに関する。
【0215】
特定の態様において、本発明は、トランケートされたキメラRXR LBDのステロイド結合活性またはステロイド感受性を低下させるトランケーション突然変異を含む単離されたトランケートされたキメラRXR LBDに関する。
【0216】
他の特定の態様において、本発明は、トランケートされたキメラRXR LBDの非−ステロイド結合活性または非−ステロイド感受性を低下させるトランケーション突然変異を含む単離されたトランケートされたキメラRXR LBDに関する。
【0217】
加えて、本発明は、トランケートされたキメラRXR LBDのリガンド結合活性またはリガンド感受性を増強させるトランケーション突然変異を含む単離されたトランケートされたキメラRXR LBDに関する。
【0218】
本発明は、トランケートされたキメラRXR LBDのリガンド結合活性またはリガンド感受性を増強させるトランケーション突然変異を含む単離されたトランケートされたキメラRXR LBDに関する。特定の態様において、本発明は、トランケートされたキメラRXR LBDのステロイド結合活性またはステロイド感受性を増強させるトランケーション突然変異を含む単離されたトランケートされたキメラRXR LBDに関する。
【0219】
他の特定の態様において、本発明は、トランケートされたキメラRXR LBDの非−ステロイド結合活性または非−ステロイド感受性を増強させるトランケーション突然変異を含む単離されたトランケートされたキメラRXR LBDに関する。
【0220】
また、本発明は、トランケートされたキメラRXR LBDおよび二量体化パートナーを含むヘテロダイマーのリガンド感受性を増大させるトランケーション突然変異を含む単離されたトランケートされたキメラRXR LBDに関する。
【0221】
特定の態様において、二量体化パートナーはエクジソン受容体ポリペプチドである。好ましくは、二量体化パートナーはトランケートされたEcRポリペプチドである。好ましくは、二量体化パートナーは、ドメインA/BまたはA/B/Cが欠失されたEcRポリペプチドである。なおより好ましくは、二量体化パートナーは配列番号:57(CfEcR−DEF)、配列番号:58(DmEcR−DEF)、配列番号:70(CfEcR−CDEF)、配列番号:72(TmEcR−DEF)または配列番号:74(AmaEcR−DEF)のアミノ酸配列を含むEcRポリペプチドである。
【0222】
本発明の遺伝子発現を変調する方法
また、出願人らの発明は、本発明による遺伝子発現変調システムを用いて宿主細胞において遺伝子発現を変調する方法に関する。具体的には、出願人らの発明は、a)本発明による遺伝子発現変調システムを宿主細胞に導入にし、さらに、b)リガンドを宿主細胞に導入する工程を含み、ここに、変調すべき遺伝子はi)第1のハイブリッドポリペプチドのDNA結合ドメインによって認識されるドメインを含む応答エレメント、ii)第2のハイブリッドポリペプチドのトランス活性化ドメインによって活性化されるプロモーター、およびiii)その発現を変調させるべき遺伝子を含む遺伝子発現カセットの構成要素であり、それにより、リガンドの宿主細胞への導入に際して、遺伝子の発現が変調されることを特徴とする、宿主細胞において遺伝子の発現を変調する方法を提供する。
【0223】
また、本発明は、a)本発明による遺伝子発現変調システムを宿主細胞に導入し、b)i)第1のハイブリッドポリペプチドからのDNA結合ドメインによって認識されるドメインを含む応答エレメント、ii)第2のハイブリッドポリペプチドのトランス活性化ドメインによって活性化されるプロモーター、およびiii)その発現を変調すべき遺伝子を含む遺伝子発現カセットを宿主細胞に導入し、さらに、c)リガンドを宿主細胞に導入する工程を含み、それにより、遺伝子の発現が宿主細胞において変調されることを特徴とする、宿主細胞において遺伝子の発現を変調する方法も提供する。
【0224】
出願人らの方法を用いる宿主細胞における発現用の注目する遺伝子は内因性遺伝子または異種遺伝子であってよい。所望の遺伝子または蛋白質についての核酸またはアミノ酸配列の情報は、多くの公的なアクセスデータベースのうちの1つ、例えば、GENBANK、EMBL、Swiss−ProtおよびPIRにおいて、または多くの生物学関連雑誌刊行物において見出すことができる。かくして、当業者であれば、実質的に全ての公知の遺伝子についての核酸配列情報にアクセスすることができる。従って、そのような情報を用いて、本明細書中に記載した出願人らの方法で用いる遺伝子発現カセット内への注目する遺伝子の挿入のための所望の構築体を構築することができる。
【0225】
出願人らの方法を用いる宿主細胞での発現用の注目する遺伝子の例は、限定されるものではないが、疾患、病気、障害、機能不全、遺伝的欠陥を扱うのに使用され得る;例えば、モノクローナル抗体、酵素、プロテアーゼ、サイトカイン、インターフェロン、インスリン、エリスロポエチン、血液凝固因子、他の血液因子もしくは成分;遺伝子治療用のウイルスベクター、ワクチン用のウイルス、薬物発見用、機能的ゲノミクス、ならびにプロテオミクスの分析および適用の標的などのような治療上望ましいポリペプチドまたは産物をコードする遺伝子が挙げられる。
【0226】
許容されるリガンドは、リガンドの存在下における応答エレメントへの2−ハイブリッドシステムのDNA結合ドメインの結合の結果、遺伝子の発現が活性化または抑制される場合に、遺伝子の発現を変調するいずれものものである。好ましいリガンドは、ポナステロン、ムリステロンA、9−シス−レチノイン酸、レチノイン酸の合成アナログ、米国特許第6,013,836号、第5,117,057号、第5,530,028号および第5,378,726号に開示されたもののごときN,N’−ジアシルヒドラジン、欧州出願第461,809号に開示されたもののごときジベンゾイルアルキルシアノヒドラジン、米国特許第5,225,443号に開示されたもののごときN−アルキル−N,N’−ジアロイルヒドラジン、欧州出願第234,994号に開示されたもののごときN−アシル−N−アルキルカルボニルヒドラジン、米国特許第4,985,461号に開示されたもののごときN−アロイル−N−アルキル−N’−アロイルヒドラジン(ここに引用してその各々を本明細書の一部とみなす)、および3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒロドキシ−N−イソブチル−ベンズアミド、8−O−アセチルハルパジドなどを含めた他の同様な物質を含む。
【0227】
好ましい態様において、遺伝子の発現を変調する出願人らの方法で用いるリガンドは式:
【化2】

の化合物である。
【0228】
式中、Eは第三級炭素を含有する(C−C)アルキルまたは第三級炭素を含有するシアノ(C−C)アルキルであり;
は、H、Me、Et、i−Pr、F、ホルミル、CF、CHF、CHCl、CHF、CHCl、CHOH、CHOMe、CHCN、CN、CCH、1−プロピニル、2−プロピニル、ビニル、OH、OMe、OEt、シクロプロピル、CFCF、CH=CHCN、アリル、アジド、SCNまたはSCHFであり;
はH、Me、Et、n−Pr、i−Pr、ホルミル、CF、CHF、CHCl、CHF、CHCl、CHOH、CHOMe、CHCN、CN、CCH、1−プロピニル、2−プロピニル、ビニル、Ac、F、Cl、OH、OMe、OEt、O−n−Pr、OAc、NMe、NEt、SMe、SEt、SOCF、OCFCFH、COEt、シクロプロピル、CFCF、CH=CHCN、アリル、アジド、OCF、OCHF、O−i−Pr、SCN、SCHF、SOMe、NH−CNであるか、またはR、ならびにRおよびRが結合したフェニル炭素と一緒になって、エチレンジオキシ、フェニル炭素に隣接する酸素を持つジヒドロフリル環、もしくはフェニル炭素に隣接する酸素を持つジヒドロピリル環を形成し;
はH、Etであるか、またはR、ならびにRおよびRが結合したフェニル炭素と一緒になってエチレンジオキシ、フェニル炭素に隣接する酸素を持つジヒドロフリル環、もしくはフェニル炭素に隣接する酸素を持つジヒドロピリル環を形成し;
、RおよびRは独立してH、Me、Et、F、Cl、Br、ホルミル、CF、CHF、CHCl、CHF、CHCl、CHOH、CN、CCH、1−プロピニル、2−プロピニル、ビニル、OMe、OEt、SMeまたはSEtである。
【0229】
他の好ましい態様において、遺伝子の発現を変調する出願人らの方法において前記した第1のリガンドに加えて第2のリガンドを用いることができ、ここに、該第2のリガンドは9−シス−レチノイン酸またはレチノイン酸の合成アナログである。
【0230】
出願人らの発明は、原核生物および真核生物宿主細胞における遺伝子発現の変調を提供する。かくして、本発明は、細菌細胞、真菌細胞、酵母細胞、動物細胞および哺乳動物細胞よりなる群から選択される宿主細胞において遺伝子発現を変調する方法にも関する。好ましくは、宿主細胞は酵母細胞、ハムスター細胞、マウス細胞、サル細胞またはヒト細胞である。
【0231】
トランスジェニック宿主細胞における発現は、限定されるものではないが、治療ポリペプチド、経路中間体を含めた注目する種々のポリペプチドの発現に、宿主を用いて以前には可能でなかった新しい生成物の合成用に宿主に既に存在する経路を変調するのに、細胞ベースのアッセイ、機能的ゲノミクスアッセイ、バイオ治療蛋白質の生産、プロテオミクスアッセイなどに有用であり得る。加えて、遺伝子産物は、宿主のより高い増殖率を付与するのに、または利用すべき別の増殖様式を可能とするのに有用であり得る。
【0232】
本発明の宿主細胞および非−ヒト生物
前記したごとく、本発明の遺伝子発現変調システムを用いて、宿主細胞において遺伝子発現を変調することができる。トランスジェニック宿主細胞における発現は、注目する種々の遺伝子の発現で有用であり得る。かくして、出願人らの発明は、本発明による遺伝子発現システムを含む単離された宿主細胞を提供する。また、本発明は、本発明による遺伝子発現カセットを含む単離された宿主細胞も提供する。また、出現人らの発明は、本発明によるポリヌクレオチドまたはポリペプチドを含む単離された宿主細胞を提供する。該単離された宿主細胞は原核生物または真核生物宿主細胞いずれかであり得る。
【0233】
好ましくは、宿主細胞は細菌細胞、真菌細胞、酵母細胞、動物細胞および哺乳動物細胞よりなる群から選択される。好ましい宿主細胞の例は、限定されるものではないが、Aspergillus、Trichoderma、Saccharomyces、Pichia、Candida、Hansenulaのごとき真菌または酵母種、またはSynechocystis、Synechococcus、Salmonella、Bacillus、Acinetobacter、Rhodococcus、Streptomyces、Escherichia、Pseudomonas、Methylomonas、Methylobacter、Alcaligenes、Synechocystis、Anabaena、Thiobacillus、MethanobacteriumおよびKlebsiella属におけるもののごとき細菌種、動物、および哺乳動物宿主細胞を含む。
【0234】
特定の態様において、宿主細胞はSaccharomyces、PichiaおよびCandida宿主細胞よりなる群から選択される酵母細胞である。
【0235】
他の特定の態様において、宿主細胞はハムスター細胞である。
【0236】
他の特定の態様において、宿主細胞はマウス(murine)細胞である。
【0237】
他の特定の態様において、宿主細胞はサル細胞である。
【0238】
他の特定の態様において、宿主細胞はヒト細胞である。
【0239】
宿主細胞の形質転換は、当該技術分野でよく知られており、エレクトロポレーション、ウイルス感染、プラスミド/ベクタートランスフェクション、非−ウイルスベクター媒介トランスフェクション、粒子衝撃等を含むがそれらに限定されない種々の方法によって達成することができる。所望の遺伝子産物の発現は、適当な条件下で形質転換された宿主細胞を培養し、形質転換された遺伝子の発現を誘導することを含む。原核生物および真核生物細胞における培養条件および遺伝子発現プロトコルは当該分野でよく知られている(実施例の一般的方法セクション参照)。遺伝子産物に特定のプロトコルに従って、細胞を回収し、遺伝子産物を単離する。
【0240】
加えて、挿入されたポリヌクレオチドの発現を変調し、または特定の望まれる様式にてポリペプチド産物を変調し加工する宿主細胞を選択することができる。異なる宿主細胞は、蛋白質の翻訳および翻訳後プロセッシングおよび修飾[例えば、グリコシル化、(例えば、シグナル配列の)切断]につき特徴的かつ特定のメカニズムを有する。適当な細胞系または宿主系を選択して、発現された外来性蛋白質の所望の修飾およびプロセッシングを確実とすることができる。例えば、細菌系における発現を用いて、非−グリコシル化コア蛋白質産物を生じさせることができる。しかしながら、細菌で発現されたポリペプチドは適切には折り畳まれていないであろう。酵母における発現はグリコシル化産物を生じさせることができる。真核生物細胞における発現は、異種蛋白質の「天然」グリコシル化および折り畳みの確率を増加させることができる。さらに、哺乳動物細胞における発現はポリペプチドの活性を復元しまたは構成するためのツールを提供することができる。さらに、異なるベクター/宿主発現系は、蛋白質分解切断のごときプロセッシング反応に異なる程度影響し得る。
【0241】
また、出願人らの発明は、本発明による単離された宿主細胞を含む非−ヒト生物に関する。好ましくは、非−ヒト生物は細菌、真菌、酵母、動物および哺乳動物よりなる群から選択される。より好ましくは、非−ヒト生物は酵母、マウス、ラット、ウサギ、ネコ、イヌ、ウシ、ヤギ、ブタ、ウマ、ヒツジ、サルまたはチンパンジーである。
【0242】
特定の態様において、非−ヒト生物はSaccharomyces、PichiaおよびCandidaよりなる群から選択される酵母である。
【0243】
他の特定の態様において、非−ヒト生物はMus musculusマウスである。
【0244】
遺伝子発現/転写の測定
本発明の出願人らの方法の1つの有用な測定は、RNA、好ましくはmRNA種の同一性および存在量を含めた細胞の転写状態の測定である。そのような測定は、いくつかの現存する遺伝子発現技術のうちのいずれかによってcDNAの存在量を測定することによって簡便に行われる。
【0245】
核酸アレイ技術は異なるmRNA発現を決定するための有用な技術である。そのような技術は、例えば、オリゴヌクレオチドチップおよびDNAマイクロアレイを含む。これらの技術は、固体支持体に固定化し、細胞、組織または全生物から抽出された合計mRNAプールから調製され、cDNAに変換されたプローブにハイブリダイズする異なる遺伝子またはcDNAに対応するDNA断片またはオリゴヌクレオチドに頼る。オリゴヌクレオチドチップは、フォトリソグラフィー技術を用いて基材上で合成されたオリゴヌクレオチドのアレイである。1700までの遺伝子につき分析できるチップが製造されている。DNAマイクロアレイは、DNA試料、典型的には、機械的に顕微鏡スライドグラス上にプリントされるPCR産物のアレイである。各遺伝子は、全長または部分長標的DNA配列によって分析される。10,000までの遺伝子についてのマイクロアレイが、今日、ルーチン的に、商業生産されている。これらの2つの技術の間の主な差は、オリゴヌクレオチドチップが、典型的には、短いDNA分子の分別を可能とする25−量体オリゴヌクレオチドを利用するのに対し、マイクロアレイのより大きなDNA標的、ほぼ1000塩基対が複雑なDNA混合物を分別するにおいてより大きな感受性を供することができることである。
【0246】
本発明の出願人らの方法の他の有用な測定は、当該分野でよく知られたプロセスを用いて細胞に存在する構成蛋白質種の存在量を測定することによって細胞の翻訳状態を測定するものである。
【0247】
種々の生理学的機能に関連する遺伝子の同定が望まれる場合、細胞増殖、アポトーシス、老化、分化、接着、特定の分子への結合、他の細胞への結合、細胞組織化、器官形成、細胞内輸送、輸送促進、エネルギー変換、代謝、筋肉形成、神経形成および/または造血のごとき機能が変化するアッセイを使用することができる。
【0248】
加えて、選択マーカーまたはレポーター遺伝子発現を用いて、出願人らの発明を用いた遺伝子発現変調を測定することができる。
【0249】
遺伝子発現の産物を検出する他の方法は当該分野でよく知られており、サザンブロット(DNA検出)、ドットまたはスロットブロット(DNA、RNA)、ノーザンブロット(RNA)、RT−PCR(RNA)、ウェスタンブロット(ポリペプチド検出)およびELISA(ポリペプチド)分析を含む。余り好ましくはないが、標識された蛋白質を用いて、それにハイブリダイズする特定の核酸配列を検出することができる。
【0250】
ある場合には、核酸配列の量を増幅する必要がある。これは、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(「PCR」)、リガーゼ連鎖反応(「LCR」)、ストランドディスプレースメント増幅(「SDA」)、転写−ベースの増幅等を含めた多数の適当な方法のうち1以上を用いて行うことができる。PCRは公知の技術に従って行われ、ここに、例えば、オリゴヌクレオチドプライマーの1つの対を用い(1つのプライマーは検出すべき特定の配列の1つのストランド(鋳型)にハイブリダイズする)、ハイブリダイズする条件下、熱安定性DNAポリメラーゼの存在下で核酸試料を処理する。プライマーは、それにハイブリダイズする特定の配列の各鋳型ストランドに十分に相補的なものである。各プライマーの伸長産物を合成し、それは、それがハイブリダイズする核酸鋳型ストランドに相補的である。また、各プライマーから合成された伸長産物は、同一プライマーを用いる伸長産物のさらなる合成用の鋳型としても働くことができる。伸長産物の十分な数のラウンドの合成に従い、試料を前記したごとく分析して、検出すべき配列または複数配列が存在するかを評価することができる。
【実施例】
【0251】
本発明の例として掲げる以下の非限定的実施例を参照して本発明はよく理解することができる。
【0252】
実施例
一般的方法
本明細書中で用いる標準的な組換えDNAおよび分子クローニング技術は当該分野でよく知られており、Sambrook,J.、Fritsch,E.F.およびManiatis、T.Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press:Cold Spring Harbor、N.Y.(1989)(Maniatis)によって、およびT.J.Silhavy、M.L.Bennan、およびL.W.Enquist、Experiments with Gene Fusions、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、N.Y.(1984)によって、およびAusubel,F.M.ら、Current Protocols in Molecular Biology、Greene Publishing Assoc.and Wiley−Interscience(1987)によって記載されている。
【0253】
細菌培養の維持および増殖に適した材料および方法は当該分野でよく知られている。以下の実施例で用いるのに適した技術は、Manual of Methods for General Bacteriology(Phillipp Gerhardt、R.G.E.Murray、Ralph N.Costilow、Eugene W.Nester、Willis A.Wood、Noel R.KriegおよびG.Briggs Phillips編)、American Society for Microbiology、Washinton,DC.(1994)、もしくはThomas D.BrockによるBiotechnology中:A Textbook of Industrial Microbiology、第2版、Sinauer Associates,Inc.、Sunderland、MA(1989)に記載されているのを見出すことができる。宿主細胞の増殖および維持で用いた全ての試薬、制限酵素および材料は、特に断りのない限り、Aldrich Chemicals(Milwaukee、WI)、DIFCO Laboratories(Detroit、MI)、GIBCO/BRL(Gaithersburg、MD)、またはSigma Chemical Company(St.Louis、MO)から入手した。
【0254】
遺伝子配列の操作は、Genetics Computer Group Inc.(Wisconsin Package Version 9.0、Genetics Computer Group(GCG)Madison、WI)から入手可能なプログラムのスイートを用いて達成することができる。GCGプログラム「Pileup」を用いる場合、12のギャップ創製デフォルト値、および4のギャップ伸長デフォルト値を用いることができる。CGC「Gap」または「Bestfit」プログラムを用いる場合、50のデフォルトギャップ創製ペナルティーおよび3のデフォルトギャップ伸長ペナルティーを用いることができる。GCGプログラムパラメーターがこれらまたはいずれかの他のGCGプログラムで迅速化されないいずれの場合においても、デフォルト値を用いることができる。
【0255】
略語の意味は以下の通りである:「h」は時間を意味し、「min」は分を意味し、「sec」は秒を意味し、「d」は日を意味し、「μl」はマイクロリットルを意味し、「ml」はミリリットルを意味し、「L」はリットルを意味し、「μM」はマイクロモラーを意味し、「mM」はミリモラーを意味し、「μg」はマイクログラムを意味し、「mg」はミリグラムを意味し、「A」はアデニンまたはアデノシンを意味し、「T」はチミンまたはチミジンを意味し、「G」はグアニンまたはグアノシンを意味し、「C」はシチジンまたはシトシンを意味し、「xg」は重力の倍数を意味し、「nt」はヌクレオチドを意味し、「aa」はアミノ酸を意味し、「bp」は塩基対を意味し、「kb」はキロベースを意味し、「k」はキロを意味し、「μ」はマイクロを意味し、および「℃」は摂氏度を意味する。
【実施例1】
【0256】
出願人らのEcR/キメラRXR−ベースの誘導性遺伝子発現変調システムは、遺伝子治療、宿主細胞における注目する蛋白質の発現、トランスジェニック生物の生産、および細胞−ベースのアッセイを含めた種々の適用で有用である。出願人らは、キメラレチノイドX受容体リガンド結合ドメインがいずれかの親RXRポリペプチドを置き換えることができ、リガンドの結合に際して、EcR/キメラRXR−ベースの遺伝子発現変調システムにおいて誘導的に機能することができるという驚くべき発見を成した。加えて、キメラRXRポリペプチドは親/ドナーRXRリガンド結合ドメインいずれかよりも良好に機能することもできる。出願人らの驚くべき発見および予期せぬ優れた結果は、細菌、真菌、酵母、動物および哺乳動物細胞適用のための新規な誘導性遺伝子発現システムを提供する。本実施例は、本発明のEcR/キメラRXR−ベースの誘導性遺伝子発現システムで用いるいくつかの遺伝子発現カセットの構築を記載する。
【0257】
出願人らは、ハマキガ Choristoneura fumiferana EcR(「CfEcR」)、C.fumiferanaウルトラスピラクル(「CfUSP」)、Drosophila melanogaster EcR(「DmEcR」)、D.melanogaster USP(「DmUSP」)、Tenebrio molitor EcR(「TmEcR」)、Amblyomma americanum EcR(「AmaEcR」)、A.americanum RXRホモログ1(「AmaRXR1」)、A.americanum RXRホモログ2(「AmaRXR2」)、マウス Mus musculusレチノイドX受容体αアイソフォーム(「MmRXRα」)、ヒト Homo sapiensレチノイドX受容体βアイソフォーム(「HsRXRβ」)、およびバッタ Locusta migratoriaウルトラスピラクル(「LmUSP」)に基づいていくつかのEcR−ベースの遺伝子発現カセットを構築した。
【0258】
調製された受容体構築体は1)EcRリガンド結合ドメイン(LBD)、脊椎動物RXR(MmRXRαまたはHsRXRβ)LBD、無脊椎動物USP(CfUSPまたはDmUSP)LBD、無脊椎動物RXR(LmUSP、AmaRXR1またはAmaRXR2)LBD、あるいは脊椎動物RXR LBD断片および無脊椎動物RXR LBD断片を含むキメラRXR LBD、ならびに2)GAL4またはLexA DNA結合ドメイン(DBD)またはVP16もしくはB42酸性アクチベータートランス活性化ドメイン(AD)を含む。レポーター構築体は、Gal4 DBDまたはLexA DBDがそれぞれ結合する、GAL4応答エレメントまたはLexA応答エレメントのいずれかを含む合成プロモーター構築体に作動可能に連結したレポーター遺伝子、ルシフェラーゼまたはLacZを含む。これらの受容体およびレポーター構築体の種々の組合せを、後記実施例2−6に記載したごとく、哺乳動物細胞に共トランスフェクトした。
【0259】
遺伝子発現カセット:当該分野で利用可能な標準的クローニング方法を用い、エクジソン受容体−ベースの遺伝子発現カセット対(スイッチ)を以下のごとく構築した。以下に、ここに記載する実施例で用いる各スイッチの調製および組成を簡単に記載する。
【0260】
1.1−GAL4CfEcR−CDEF/VP16MmRXRα−EF:ハマキガ Choristoneura fumiferana EcRからのC、D、EおよびFドメイン(「CfEcR−CDEF」、配列番号:59)をGAL4 DNA結合ドメイン(「Gal4DNABD」または「Gal4DBD」、配列番号:47)に融合させ、SV40eプロモーター(配列番号:60)の制御下においた。マウス Mus musculus RXRαからのEFドメイン(「MmRXRα−EF」、配列番号:9)をVP16からのトランス活性化ドメイン(「VP16AD」、配列番号:51)に融合させ、SV40eプロモーター(配列番号:60)の制御下においた。5つのコンセンサスGAL4応答エレメント結合部位(「5XGAL4RE」、配列番号:55を含むGAL4REの5コピーを含む)を合成E1b最小プロモーター(配列番号:61)に融合させ、ルシフェラーゼ遺伝子(配列番号:62)の上流に置いた。
【0261】
1.2−Gal4CfEcR−CDEF/VP16LmUSP−EF:MmRXRα−EFをLocusta migratoriaウルトラスピラクルからのEFドメイン(「LmUSP−EF」、配列番号:21)で置き換える以外は、この構築体は前記スイッチ1.1と同様にして調製した。
【0262】
1.3−Gal4CfEcR−CDEF/VP16MmRXRα(1−7)−LmUSP(8−12)−EF:MmRXRα−EFを、MmRXRα−EFのヘリックス1−7およびLmUSP−EFのヘリックス8−12(配列番号:45)で置き換える以外は、この構築体は前記スイッチ1:1と同様にして調製した。
【0263】
1.4−Gal4CfEcR−CDEF/VP16MmRXRα(1−7)−LmUSP(8−12)−EF−MmRXRα−F:MmRXRα−EFを、MmRXRα−EFのヘリックス1−7およびLmUSP−EFのヘリックス8−12(配列番号:45)で置き換える以外は、この構築体は前記スイッチ1:1と同様に調製し、ここに、配列番号:45の最後のC−末端18ヌクレオチド(Fドメイン)はMmRXRαのFドメイン(「MmRXRα−F」、配列番号:63)で置き換えた。
【0264】
1.5−Gal4CfEcR−CDEF/VP16MmRXRα(1−12)−EF−LmUSP−F:MmRXRα−EFをMmRXRα−EFのヘリックス1−12(配列番号:9)で置き換える以外は、この構築体は前記スイッチ1:1と同様にして調製し、ここに、配列番号:9の最後のC−末端18ヌクレオチド(Fドメイン)はLmUSPのFドメイン(「LmUSP−F」、配列番号:64)で置き換えた。
【0265】
1.6−Gal4CfEcR−CDEF/VP16LmUSP(1−12)−EF−MmRXRα−F:MmRXRα−EFをLmUSP−EFのヘリックス1−12(配列番号:21)で置き換える以外には、この構築体は前記スイッチ1:1と同様にして調製し、ここに、配列番号:21の最後のC−末端18ヌクレオチド(Fドメイン)はMmRXRαのFドメイン(「MmRXRα−F」、配列番号:63)で置き換えられた。
【0266】
1.7−GAL4CfEcR−DEF/VP16CfUSP−EF:ハマキガ Choristoneura fumiferana EcRからのD、EおよびFドメイン(「CfEcR−DEF」、配列番号:65)をGAL4 DNA結合ドメイン(「Gal4DNABD」または「Gal4DBD」、配列番号:47)に融合させ、SV40eプロモーター(配列番号:60)の制御下に置いた。C.fumiferana USPからのEFドメイン(「CfUSP−EF」、配列番号:66)をVP16からのトランス活性化ドメイン(「VP16AD」、配列番号:51)に融合させ、SV40eプロモーター(配列番号:60)の制御下に置いた。5つのコンセンサスGAL4応答エレメント結合部位(「5XGAL4RE」、配列番号:55を含むGAL4REの5コピーを含む)を合成E1b最小プロモーター(配列番号:61)に融合させ、ルシフェラーゼ遺伝子(配列番号:62)の上流に置いた。
【0267】
1.8−GAL4CfEcR−DEF/VP16DmUSP−EF:CfUSP−EFをミバエ Drosophila melanogaster USPからの対応するEFドメイン(「DmUSP−EF」、配列番号:75)で置き換える以外は、この構築体は前記スイッチ1:7と同様にして調製した。
【0268】
1.9−Gal4CfEcR−DEF/VP16LmUSP−EF:CfUSP−EFをLocusta migratoria USPからのEFドメイン(「LmUSP−EF」、配列番号:21)で置き換える以外は、この構築体は前記スイッチ1.7と同様にして調製した。
【0269】
1.10−GAL4CfEcR−DEF/VP16MmRXRα−EF:CfUSP−EFをM.musculus MmRXRαのEFドメイン(「MmRXRα−EF」、配列番号:9)で置き換える以外は、この構築体は前記スイッチ1.7と同様にして調製した。
【0270】
1.11−GAL4CfEcR−DEF/VP16AmaRXR1−EF:CfUSP−EFをマダニ Amblyomma americanum RXRホモログ1のEFドメイン(「AmaRXR1−EF」、配列番号:22)で置き換える以外は、この構築体は前記スイッチ1.7と同様にして調整した。
【0271】
1.12−GAL4CfEcR−DEF/VP16AmaRXR2−EF:CfUSP−EFをマダニ A.americanum RXRホモログ2のEFドメイン(「AmaRXR2−EF」、配列番号:23)で置き換える以外は、この構築体は前記スイッチ1.7と同様にして調製した。
【0272】
1.13−Gal4CfEcR−DEF/VP16MmRXRα(1−7)−LmUSP(8−12)−EF(「αキメラ#7」):CfUSP−EFをMmRXRα−EFのヘリックス1−7およびLmUSP−EFのヘリックス8−12(配列番号:45)で置き換える以外は、この構築体は前記スイッチ1.7と同様にして調製した。
【0273】
1.14−GAL4DmEcR−DEF/VP16CfUSP−EF:ミバエ Drosophila melanogaster EcRからのD、EおよびFドメイン(「DmEcR−DEF」、配列番号:67)をGAL4 DNA結合ドメイン(「Gal4DNABD」または「Gal4DBD」、配列番号:47)に融合させ、SV40eプロモーター(配列番号:60)の制御下に置いた。C.fumiferana USPからのEFドメイン(「CfUSP−EF」、配列番号:66)をVP16からのトランス活性化ドメイン(「VP16AD」、配列番号:51)に融合させ、SV40eプロモーター(配列番号:60)の制御下に置いた。5つのコンセンサスGAL4応答エレメント結合部位(「5XGAL4RE」、配列番号:55を含むGAL4REの5コピーを含む)を合成E1b最小プロモーター(配列番号:61)に融合させ、ルシフェラーゼ遺伝子(配列番号:62)の上流に置いた。
【0274】
1.15−GAL4DmEcR−DEF/VP16DmUSP−EF:CfUSP−EFをミバエ Drosophila melanogaster USPからの対応するEFドメイン(「DmUSP−EF」、配列番号:75)で置き換える以外は、この構築体は前記スイッチ1.14と同様にして調製した。
【0275】
1.16−Gal4DmEcR−DEF/VP16LmUSP−EF:CfUSP−EFをLocusta migratoria USPからのEFドメイン(「LmUSP−EF」、配列番号:21)で置き換える以外は、この構築体は前記スイッチ1.14と同様にして調製した。
【0276】
1.17−GAL4DmEcR−DEF/VP16MmRXRα−EF:CfUSP−EFをMus musculus MmRXRαのEFドメイン(「MmRXRα−EF」、配列番号:9)で置き換える以外は、この構築体は前記スイッチ1.14と同様にして調製した。
【0277】
1.18−GAL4DmEcR−DEF/VP16AmaRXR1−EF:CfUSP−EFをマダニ Amblyomma americanum RXRホモログ1のEFドメイン(「AmaRXR1−EF」、配列番号:22)で置き換える以外は、この構築体は前記スイッチ1.14と同様にして調製した。
【0278】
1.19−GAL4DmEcR−DEF/VP16AmaRXR2−EF:CfUSP−EFをマダニ A.americanum RXRホモログ2のEFドメイン(「AmaRXR2−EF」、配列番号:23)で置き換える以外は、この構築体は前記スイッチ1.14と同様にして調製した。
【0279】
1.20−Gal4DmEcR−DEF/VP16MmRXRα(1−7)−LmUSP(8−12)−EF:CfUSP−EFをMmRXRα−EFのヘリックス1−7およびLmUSP−EFのヘリックス8−12(配列番号:45)で置き換える以外は、この構築体は前記スイッチ1.14と同様にして調製した。
【0280】
1.21−GAL4TmEcR−DEF/VP16MmRXRα(1−7)−LmUSP(8−12)−EF:甲虫 Tenebrio molitor EcRからの対応するD、EおよびFドメイン(「TmEcR−DEF」、配列番号:71)でDmEcR−DEFを置き換え、GAL4 DNA結合ドメイン(「Gal4DNABD」または「Gal4DBD」、配列番号:47)に融合させ、SV40eプロモーター(配列番号:60)の制御下に置いた以外は、この構築体は前記スイッチ1:20と同様にして調製した。MmRXRα−EFのヘリックス1−7およびLmUSP−EFのヘリックス8−12を含むキメラEFドメイン(配列番号:45)をVP16からのトランス活性化ドメイン(「VP16AD」、配列番号:51)に融合させ、SV40eプロモーター(配列番号:60)の制御下に置いた。5つのコンセンサスGAL4応答エレメント結合部位(「5XGAL4RE」、配列番号:55を含むGAL4REの5コピーを含む)を合成E1b最小プロモーター(配列番号:61)に融合させ、ルシフェラーゼ遺伝子(配列番号:62)の上流に置いた。
【0281】
1.22−Gal4AmaEcR−DEF/VP16MmRXRα(1−7)−LmUSP(8−12)−EF:TmEcR−DEFをマダニ Amblyomma AmericanumEcRの対応するDEFドメイン(「AmaEcR−DEF」、配列番号:73)で置き換える以外は、この構築体は前記スイッチ1.21と同様にして調製した。
【0282】
1.23−GAL4CfEcR−CDEF/VP16HsRXRβ−EF:ハマキガ Choristoneura fumiferana EcRからのC、D、EおよびFドメイン(「CfEcR−CDEF」、配列番号:59)をGAL4 DNA結合ドメイン(「Gal4DNABD」または「Gal4DBD」、配列番号:47)に融合させ、SV40eプロモーター(配列番号:60)の制御下に置いた。ヒト Homo sapiens RXRβからのEFドメイン(「HsRXRβ−EF」、配列番号:13)をVP16からのトランス活性化ドメイン(「VP16AD」、配列番号:51)に融合させ、SV40eプロモーター(配列番号:60)の制御下に置いた。5つのコンセンサスGAL4応答エレメント結合部位(「5XGAL4RE」、配列番号:55を含むGAL4REの5コピーを含む)を合成E1b最小プロモーター(配列番号:61)に融合させ、ルシフェラーゼ遺伝子(配列番号:62)の上流に置いた。
【0283】
1.24−GAL4CfEcR−DEF/VP16HsRXRβ−EF:CfEcR−CDEFをC.fumiferana EcRのDEFドメイン(「CfEcR−DEF」、配列番号:65)で置き換える以外は、この構築体は前記スイッチ1.23と同様にして調製した。
【0284】
1.25−GAL4CfEcR−DEF/VP16HsRXRβ(1−6)−LmUSP(7−12)−EF(「βキメラ#6」):HsRXRβ−EFをHsRXRβ−EFのヘリックス1−6(配列番号:13のヌクレオチド1−348)およびLmUSP−EFのヘリックス7−12(配列番号:21のヌクレオチド268−630)で置き換える以外は、この構築体は前記スイッチ1.24と同様にして調製した。
【0285】
1.26−GAL4CfEcR−DEF/VP16HsRXRβ(1−7)−LmUSP(8−12)−EF(「βキメラ#8」):HsRXRβ−EFをHsRXRβ−EFのヘリックス1−7(配列番号:13のヌクレオチド1−408)およびLmUSP−EFのヘリックス8−12(配列番号:21のヌクレオチド337−630)で置き換える以外は、この構築体は前記スイッチ1.24と同様にして調製した。
【0286】
1.27−GAL4CfEcR−DEF/VP16HsRXRβ(1−8)−LmUSP(9−12)−EF(「βキメラ#9」):HsRXRβ−EFをHsRXRβ−EFのヘリックス1−8(配列番号:13のヌクレオチド1−465)およびLmUSP−EFのヘリックス9−12(配列番号:21のヌクレオチド403−630)で置き換える以外は、この構築体は前記スイッチ1.24と同様にして調製した。
【0287】
1.28−GAL4CfEcR−DEF/VP16HsRXRβ(1−9)−LmUSP(10−12)−EF(「βキメラ#10」):HsRXRβ−EFをHsRXRβ−EFのヘリックス1−9(配列番号:13のヌクレオチド1−555)およびLmUSP−EFのヘリックス10−12(配列番号:21のヌクレオチド490−630)で置き換える以外は、この構築体は前記スイッチ1.24と同様にして調製した。
【0288】
1.29−GAL4CfEcR−DEF/VP16HsRXRβ(1−10)−LmUSP(11−12)−EF(「βキメラ#11」):HsRXRβ−EFをHsRXRβ−EFのヘリックス1−10(配列番号:13のヌクレオチド1−624)およびLmUSP−EFのヘリックス11−12(配列番号:21のヌクレオチド547−630)で置き換える以外は、この構築体は前記スイッチ1.24と同様にして調製した。
【0289】
1.30−GAL4DmEcR−DEF/VP16HsRXRβ(1−6)−LmUSP(7−12)−EF(「βキメラ#6」):CfEcR−DEFをDmEcR−DEF(配列番号:67)で置き換える以外は、この構築体は前記スイッチ1:25と同様にして調製した。
【0290】
1.31−GAL4DmEcR−DEF/VP16HsRXRβ(1−7)−LmUSP(8−12)−EF(「βキメラ#8」):CfEcR−DEFをDmEcR−DEF(配列番号:67)で置き換える以外は、この構築体は前記スイッチ1:26と同様にして調製した。
【0291】
1.32−GAL4DmEcR−DEF/VP16HsRXRβ(1−8)−LmUSP(9−12)−EF(「βキメラ#9」):CfEcR−DEFをDmEcR−DEF(配列番号:67)で置き換える以外は、この構築体は前記スイッチ1:27と同様にして調製した。
【0292】
1.33−GAL4DmEcR−DEF/VP16HsRXRβ(1−9)−LmUSP(10−12)−EF(「βキメラ#10」):CfEcR−DEFをDmEcR−DEF(配列番号:67)で置き換える以外は、この構築体は前記スイッチ1:28と同様にして調製した。
【0293】
1.34−GAL4DmEcR−DEF/VP16HsRXRβ(1−10)−LmUSP(11−12)−EF(「βキメラ#11」):CfEcR−DEFをDmEcR−DEF(配列番号:67)で置き換える以外は、この構築体は前記スイッチ1:29と同様にして調製した。
【実施例2】
【0294】
出願人らは、最近、無脊椎動物RXRおよびそれらの非−鱗翅目および非−双翅目RXRホモログが、酵母および哺乳動物細胞双方において、エクジソン受容体−ベースの誘導性遺伝子発現変調システムで、脊椎動物RXRと同様に、またはそれよりも良好に機能することができるという驚くべき発見をなした(米国仮出願セリアル番号60/294,814)。事実、出願人らは、LmUSPが哺乳動物細胞においてマウスRXRよりもCfEcRにつき良好なパートナーであることを示した。しかし、ほとんどの遺伝子発現システムの適応では、特に哺乳動物細胞につき予定されているものでは、パートナーとして脊椎動物RXRを有するのが望ましい。この改良に必要なLmUSPの最小領域を同定するために、出願人らは、EcR−ベースの誘導性遺伝子発現変調システムにおいて、脊椎動物RXR/無脊椎動物RXRキメラ(ここでは、「キメラRXR」または「RXRキメラ」と相互交換的にいう)を構築し、分析した。簡単に述べれば、トランスフェクトされたNIH3T3細胞およびA549細胞において、レポーター遺伝子発現の用量依存的誘導で非−ステロイドリガンドを用い、遺伝子誘導能力(誘導の大きさ)ならびにリガンドの特異性および感受性を調べた。
【0295】
RXRキメラの第1の組において、MmRXRα−EFからのヘリックス8−12をLmUSP−EFからのヘリックス8−12で置き換えた(実施例1で調製したスイッチ1.3)。3つの独立したクローン(図1−3におけるRXRキメラCh#1、Ch#2、およびCh#3)を拾い、親MmRXRα−EFおよびLmUSP−EFスイッチ(実施例1で調製した、各々、スイッチ1.1および1.2)と比較した。RXRキメラおよび親DNAをGal4/CfEcR−CDEFおよびレポータープラスミドpFRLucと共にマウスNIH3T3細胞にトランスフェクトした。トランスフェクトした細胞を0、0.2、1、5および10μMの非−ステロイドリガンドN−(2−エチル−3−メトキシベンゾイル)−N’−(3,5−ジメチルベンゾイル)−N’−tert−ブチルヒドラジン(GS−E(商標)リガンド)の存在下で増殖させた。処理から48時間後に細胞を回収し、レポーター活性をアッセイした。バーの頂部の数はその処理についての最大活性化/誘導の倍数に対応する。
【0296】
トランスフェクション:実施例1に概説した種々のスイッチ構築体、特にスイッチ1.1−1.6に対応するDNAをマウスNIH3T3細胞(ATCC)およびヒトA549細胞(ATCC)に以下のごとくトランスフェクトした。細胞が50%密集に達した時、それを回収し、各々、10%胎児ウシ血清(FBS)を含有する2.5、1.0または0.5mlの増殖培地中にて、各々、125,000、50,000または25,000細胞にて6−、12−または24−ウェルプレートで平板培養した。NIH3T3細胞をダルベッコ変法イーグル培地(DMEM、Life Technologies)中で増殖させ、A549細胞をF12K栄養混合物(Life Technologies)中で増殖させた。翌日、細胞を増殖培地ですすぎ、4時間の間トランスフェクトした。Superfect(商標)(Qiagen Inc.)は3T3細胞およびA549細胞では最良のトランスフェクション試薬であることが判明した。12−ウェルプレートでは、4μlのSuperfect(商標)を100μlの増殖培地と混合した。分析すべき1.0μgのレポーター構築体および0.25μgの受容体対の各受容体構築体をトランスフェクションミックスに添加した。チミジンキナーゼ(TK)構成的プロモーターに作動可能に連結し、かつその制御下に置かれたRenillaルシフェラーゼ遺伝子を含む第2のレポーター構築体を添加し[pTKRL(Promega)、0.1μg/トランスフェクションミックス]を添加し、標準化のために用いた。トランスフェクションミックスの内容物を攪拌ミキサーで混合し、室温に30分間放置した。インキュベーションの最後に、400μlの増殖培地に維持した細胞にトランスフェクションミックスを添加した。細胞を37℃および5%COに4時間維持した。インキュベーションの最後に、20%FBSおよびジメチルスルフォキシド(DMSO、対照)または0.2、1、5、10および50μMのN−(2−エチル−3−メトキシベンゾイル)N’−(3,5−ジメチルベンゾイル)−N’−tert−ブチルヒドラジン非−ステロイドリガンドのDMSO溶液を含有する500μlの増殖培地を添加し、細胞を37℃および5%COに48時間維持した。細胞を回収し、レポーター活性をアッセイした。全ての試薬を6ウェルプレートでは倍にし、24−ウェルプレートでは半分に低下した以外は、同一手法を6および24ウェルプレートで同様に行った。
【0297】
リガンド:非−ステロイドリガンドN−(2−エチル−3−メトキシベンゾイル)−N’−(3,5−ジメチルベンゾイル)−N’−t−ブチルヒドラジン(GS(商標)−E非−ステロイドリガンド)は、Rohm and Haas Companyで合成された合成安定エクジステロイドリガンドである。リガンドをDMSOに溶解させ、DMSOの最終濃度は対照および処理双方において0.1%に維持した。
【0298】
レポーターアッセイ:リガンドを添加して48時間後、細胞を回収した。125、250または500μlの受動溶解緩衝液(Promega CorporationからのDual−luciferase(商標)レポーターアッセイシステムの一部)を、各々、24−または12−または6−ウェルプレートの各ウェルに添加した。プレートを15分間ロータリーシェーカーに付した。20μlの溶解物をアッセイした。製造業者の指示に従い、Promega CorporationからのDual−luciferase(商標)レポーターアッセイシステムを用い、ルシフェラーゼ活性を測定した。製造業者の指示に従い、TROPIXからのGalacto−Star(商標)アッセイキットを用い、β−ガラクトシダーゼを測定した。標準としてRenillaルシフェラーゼを用い、全てのルシフェラーゼおよびβ−ガラクトシダーゼ活性を標準化した。リガンド処理細胞における標準化された相対光単位(「RLU」)をDMSO処理細胞における標準化されたRLU(未処理対照)で割ることによって、活性の倍数を計算した。
【0299】
結果:驚くべきことに、テストしたRXRキメラ(スイッチ1.3)の3つの独立したクローンはすべて、親−ベースのスイッチ、MmRXRα−EF(スイッチ1.1)およびLmUSP−EF(スイッチ1.2)いずれよりも良好であった(図1参照)。特に、キメラRXRは、増大したリガンド感受性および増大した誘導の大きさを示した。かくして、出願人らは、EcR−ベースの誘導性遺伝子発現変調システムにおいて、脊椎動物RXRまたは無脊椎動物RXRの代わりにキメラRXRリガンド結合ドメインを用いることができるという驚くべき発見をなした。この新規なEcR/キメラRXR−ベースの遺伝子発現システムは、増大したリガンド感受性および増大した誘導の大きさ双方によって特徴付けられる改良されたシステムを提供する。
【0300】
スイッチ1.3の最良の2つのRXRキメラクローン(図2の「Ch#1」および「Ch#2」)を、反復した実験において、親−ベースのスイッチ1.1および1.2(各々、図2中「キメラ−1」および「キメラ−2」)と比較した。この実験において、キメラRXRベースのスイッチは、いずれの親−ベースのスイッチよりも非−ステロイドリガンドに対して、再度、より感受性であった(図2参照)。しかしながら、この実験においては、誘導の大きさについては、キメラRXR−ベースのスイッチは脊椎動物RXR(MmRXRα−EF)−ベースのスイッチよりも良好であるが、無脊椎動物RXR(LmUSP−EF)−ベースのスイッチと同様であった。
【0301】
同一のキメラRXR−および親RXR−ベースのスイッチをヒト肺癌腫細胞系A549(ATCC)において調べ、同様の結果が観察された(図3)。
【0302】
かくして、出願人らは、初めて、キメラRXRリガンド結合ドメインが、哺乳動物細胞中にて、誘導性遺伝子発現システムにおいてエクジソン受容体と協同して効果的に機能できることを示した。驚くべきことに、本発明のEcR/キメラRXR−ベースの誘導性遺伝子発現システムは、トランス活性化にはより少ない量のリガンドが必要なだけであり、かつトランス活性化の増大したレベルを達成することができるので、EcR/脊椎動物RXR−およびEcR/無脊椎動物RXR−ベースの遺伝子発現変調システム双方をこえる改良である。
【0303】
本明細書中に記載する出願人らの発見に基づき、当業者は、脊椎動物RXR LBD、無脊椎動物RXR LBD、または非−双翅目および非−鱗翅目無脊椎動物RXRホモログからの少なくとも2つの異なる種のRXRポリペプチド断片を含む他のキメラRXRリガンド結合ドメインもまた出願人らのEcR/キメラRXR−ベースの誘導性遺伝子発現システムで機能するであろうと予測することができる。出願人らの発明に基づき、本発明の範囲内にあるさらなるキメラRXR LBDの態様を作成する手段は、当業者の技量内のことであり、過度な実験は必要としない。事実、当業者であれば、脊椎動物または無脊椎動物RXRまたはRXRホモログLBDをコードするポリヌクレオチドをルーチン的にクローン化でき、配列決定でき、また、図4に示したものと同様な配列相同性分析に基づき、本発明の範囲内に含まれるその特定の種のRXR LBDの対応するポリヌクレオチドおよびポリペプチド断片を決定することができる。
【0304】
また、当業者であれば、出願人らの新規な誘導性遺伝子発現システムは、酵母細胞において遺伝子発現を変調するようにやはり働くであろうことを予測することができる。双翅目RXRホモログ/および鱗翅目RXRホモログ/EcR−ベースの遺伝子発現システムは、それらが哺乳動物細胞で機能する方法と同様に、酵母細胞において構成的に機能し(データは示さず)、かつ非−双翅目および非−鱗翅目無脊椎動物RXRは哺乳動物細胞においてEcRと協同して誘導的に機能するので、EcR/キメラRXR−ベースの誘導性遺伝子発現変調システムは、どのようにしてそれが哺乳動物細胞で機能するかと同様に、酵母細胞において誘導的に機能すると予測される。かくして、本発明のEcR/キメラRXR誘導性遺伝子発現システムは、遺伝子発現レベルの変調が酵母および哺乳動物細胞双方において望まれる適用で有用である。さらに、出願人らの発明では、限定されるものではないが、細菌細胞、真菌細胞および動物細胞を含めた他の細胞で働くとも考えられる。
【実施例3】
【0305】
MmRXRαおよびLmUSPの間で異なる、LBDのC−末端に6つのアミノ酸がある(図4で示した配列アラインメント参照)。これらの6つのアミノ酸がMmRXRαおよびLmUSPトランス活性化能力の間で観察される差に寄与することを証明するため、出願人らは、1つの親RXRの、Fドメインとここでは命名する、C−末端の6つのアミノ酸を他の親RXRのFドメインの代わりに置き換えたRXRキメラを構築した。MmRXRα−Fに融合したLmUSP−EF(VP16/LmUSP−EF−MmRXRα−F、スイッチ1.6)、LmUSP−Fに融合したMmRXRα−EF(VP16/MmRXRαEF−LmUSP−F、スイッチ1.5)、およびMmRXRα−Fに融合したMmRXRα−EF(1−7)−LmUSP−EF(8−12)(Chimera/RXR−F、スイッチ1.4)を含む遺伝子スイッチを実施例1に記載したごとく構築した。これらの構築体をNIH3T3細胞においてトランスフェクトし、0、0.2、1および10μMのN−(2−エチル−3−メトキシベンゾイル)N’−(3,5−ジメチルベンゾイル)−N’−tert−ブチルヒドラジン非−ステロイドリガンドの存在下で、トランス活性化能力をアッセイした。F−ドメインキメラ(遺伝子スイッチ1.4−1.6)を、遺伝子スイッチ1.3のMmRXRα−EF(1−7)−LmUSP−EF(8−12)キメラRXR LBDと比較した。ルシフェラーゼポリペプチドをコードするプラスミドpFRLUC(Stratagene)をレポーター遺伝子構築体として用い、構成的TKプロモーターの制御下にあるRenillaルシフェラーゼポリペプチドをコードするpTKRL(Promega)を用いて、前記したごとくトランスフェクションを標準化した。細胞を回収し、溶解させ、ルシフェラーゼレポーター活性を細胞溶解物において測定した。全フライルシフェラーゼ相対光単位を掲げる。各バーの頂部の数は、その処理についての最大誘導倍数である。分析は三連で行い、平均ルシフェラーゼカウント[全相対光単位(RLU)]を前記したごとく測定した。
【0306】
図5に示すごとく、LBDのC−末端における6つのアミノ酸(Fドメイン)は、脊椎動物RXRおよび無脊椎動物RXRトランス活性化能力の間で観察される差を説明しないようであり、EFドメインのヘリックス8−12は脊椎動物および無脊椎動物RXRの間のこれらの差の最もありそうな原因であることが示唆される。
【実施例4】
【0307】
本実施例は、GAL4 DNA結合ドメインに融合したChoristoneura fumiferana(Lepidoptera)、Drosophila melanogaster(Diptera)、Tenebrio molitor(Coleoptera)およびAmblyomma americanum(Ixodidae)からのDEFドメインを含む4つのEcR−DEF−ベースの遺伝子スイッチの構築を記載する。加えて、Choristoneura fumiferana USP、Drosophila melanogaster USP、Locusta migratoria USP(Orthoptera)、Mus musculus RXRα(Vertebrata)、MmRXRαおよびLmUSPの間のキメラ(スイッチ1.13のキメラ)Amblyomma americanum RXRホモログ1(Ixodidae)、Amblyomma americanum RXRホモログ2(Ixodidae)の脊椎動物RXR、無脊椎動物RXRおよび無脊椎動物USPのEFドメインをVP16活性化ドメインに融合した。0、0.2、1、または10μMのPonAステロイドリガンド(Sigma Chemical Company)または0、0.04、0.2、1または10μMのN−(2−エチル−3−メトキシベンゾイル)N’−(3,5−ジメチルベンゾイル)−N’−tert−ブチルヒドラジン非−ステロイドリガンドの存在下で、マウスNIH3T3細胞においてレポータープラスミドpFRLucをトランス活性化するそれらの能力につき、前記したごとく、受容体の組合せを比較した。細胞を回収し、溶解させ、細胞溶解物中にて、ルシフェラーゼレポーター活性を測定した。全フライルシフェラーゼ相対光単位を掲げる。各バーの頂部の数は、その処理についての最大誘導倍数である。分析は三連で行い、平均ルシフェラーゼカウント[全相対光単位(RLU)]を前記したごとく測定した。
【0308】
図6−8はこれらの分析の結果を示す。MmRXR−LmUSPキメラはCfEcR(11,000誘導倍数、図6)、DmEcR(1759誘導倍数、図7)についての最良のパートナーであった。テストした全ての他のEcRでは、RXRキメラは、リガンドの不存在下で、より高いバックグラウンドレベルを生じた(図8参照)。CfEcR/キメラRXR−ベースのスイッチ(1.13)はPonAよりも非−ステロイドに対してより感受性であり、他方、DmEcR/キメラRXR−ベースのスイッチ(スイッチ1.20)は非−ステロイドよりもPonAに対してより感受性であった。これらの2つのスイッチ様式は誘導の相当なレベルを生じ、かつステロイドおよび非−ステロイドに対して異なる感受性を示すので、これらは、2以上の遺伝子スイッチが望まれる適用のために開発することができる。
【0309】
CfEcRを除き、キメラRXRと協同した全ての他のテストしたEcRは非−ステロイドに対するよりもステロイドに対してより感受性である。TmEcR/キメラRXR−ベースのスイッチ(スイッチ1.21、図8)はPonAに対してより感受性であり、非−ステロイドに対して感受性は低く、MmRXRα、AmaRXR1またはAmaRXR2いずれかと協同した場合に最良に働く。また、AmaEcR/キメラRXR−ベースのスイッチ(スイッチ1.22、図8)はPonAに対してより感受性であり、非−ステロイドに対して感受性は低く、LmUSP、MmRXR、AmaRXR1またはAmaRXR2−ベースの遺伝子発現カセットいずれかと協同した場合に最良に働く。かくして、TmEcR/およびAmaEcR/キメラRXR−ベースの遺伝子スイッチは、鱗翅目および双翅目のEcR/キメラRXR−ベースの遺伝子スイッチ群(各々、CfEcR/キメラRXRおよびDmEcR/キメラRXR)と異なるエクジソン受容体の群を形成するようである。前記したごとく、出願人らのEcR/キメラRXR−ベースの遺伝子スイッチの異なるリガンド感受性は、2以上の遺伝子スイッチが望まれる適用で用いるのに有利である。
【実施例5】
【0310】
本実施例は、マウスNIH3T3細胞における、マウスRXRαアイソフォームポリペプチド断片またはヒトRXRβアイソフォームポリペプチド断片およびLmUSPポリペプチド断片を含む種々のキメラRXRポリペプチドをコードする遺伝子発現カセットの出願人らのさらなる分析を記載する。脊椎動物および無脊椎動物RXRの間の観察されたトランス活性化の差を説明するEFドメインのヘリックスまたは複数ヘリックスを同定する努力において、これらのRXRキメラを構築した。簡単に述べれば、キメラRXRリガンド結合ドメインをコードする5つの異なる遺伝子発現カセットを実施例1に記載するごとく構築した。これらの遺伝子発現カセットによってコードされる5つのキメラRXRリガンド結合ドメインおよびそれらが含む各脊椎動物RXRおよび無脊椎動物RXR断片を表1に示す。
【0311】
【表1】

【0312】
GAL4CfEcR−DEF(実施例1のスイッチ1.25−1.29、図9および10)またはGAL4DmEcR−DEF(実施例1のスイッチ1.30−1.34、図11)のいずれか、およびレポータープラスミドpFRLucいずれかと共に、前記したごとく、表1の各キメラRXR LBDの3つの個々のクローンをマウスNIH3T3細胞にトランスフェクトした。a)0、0.2、1もしくは10μMの非−ステロイドリガンド(図9)、またはb)0、0.2、1もしくは10μMのステロイドリガンドPonAまたは0、0.04、0.2、1もしくは10μMの非−ステロイドリガンド(図10および11)いずれかの存在下にて、トランスフェクトされた細胞を48時間培養した。レポーター遺伝子活性を測定し、合計RLUを示す。各バーの頂部の数は、その処理についての最大誘導倍数であり、三連の平均である。
【0313】
図9に示すごとく、(スイッチ1.27の)HsRXRβH1−8およびLmUSP H9−12キメラRXRリガンド結合ドメインを用いた場合に、最良の結果が得られ、これは、LmUSPのヘリックス9が感受性および誘導の大きさを担っているであろうことを示す。
【0314】
CfEcRをパートナーとして用いると、キメラ9は最大誘導を示した(図10参照)。また、キメラ6および8は良好な誘導およびより低いバックグラウンドを生じ、その結果、キメラ9と比較した場合、これらの2つのキメラについては、誘導の倍数はより高かった。キメラ10および11はより低いレベルのレポーター活性を生じた。
【0315】
DmEcRをパートナーとして用いると、キメラ8はレポーター活性を生じた(図11参照)。キメラ9もよく働き、他方、キメラ6、10および11はより低いレベルのレポーター活性を示した。
【0316】
また、特定のキメラRXRリガンド結合ドメインの選択は、特定のリガンドに応答するEcRの性能に影響し得る。具体的には、キメラ11と組み合わせたCfEcRは非−ステロイドに対してよく応答したが、PonAに対してはよく応答しなかった(図10参照)。逆に、キメラ11と組み合わせたDmEcRはPonAに対してよく応答したが、非−ステロイドに対してそうではなかった(図11参照)。
【実施例6】
【0317】
本実施例は、本発明のEcR/キメラRXR−ベースの誘導性遺伝子発現変調システムを含む宿主細胞への第2のリガンドの導入の効果を示す。特に、出願人らは、非−ステロイド(GSE)の存在下における、48時間の、NIH3T3細胞での、pFRLucと共にした、GAL4CfEcR−DEF/VP16HsRXRβ−(1−8)−LmUSP−(9−12)−EF(βキメラ9、スイッチ1.27)遺伝子スイッチのトランス活性化能力に対する9−シス−レチノイン酸の効果を測定した。
【0318】
簡単に述べれば、GAL4CfEcR−DEF、pFRLucおよびVP16HsRXRβ−(1−8)LmUSP−(9−12)−EF(キメラ#9)をNIH3T3細胞にトランスフェクトし、トランスフェクトされた細胞を0、0.04、0.2、1、5および25μMの非−ステロイドリガンド(GSE)および0、1、5および25μMの9−シス−レチノイン酸(Sigma Chemical Company)で処理した。リガンドを加えてから48時間後に、レポーター活性を測定した。
【0319】
図12に示すごとく、レチノイン酸の存在は非−ステロイドリガンドに対するCfEcR−DEFの感受性を増加させた。0.04μMの非−ステロイドリガンド濃度では、9−シス−レチノイン酸の不存在下では誘導はほとんどないが、0.04μMの非−ステロイドに加えて1μMの9−シス−レチノイン酸を添加すると、誘導は大いに増加した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)トランス活性化ドメイン;および
ii)a)脊椎動物RXRのヘリックス1−6および無脊椎動物RXRのヘリックス7− 12;
b)脊椎動物RXRのヘリックス1−7および無脊椎動物RXRのヘリックス8− 12;または
c)脊椎動物RXRのヘリックス1−8および無脊椎動物RXRのヘリックス9− 12
を含むキメラレチノイドX受容体リガンド結合ドメイン
を含むハイブリッドポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項2】
トランス活性化ドメインが、VP16トランス活性化ドメインまたはB42酸性アクチベータートランス活性化ドメインを含む、請求項1に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項3】
VP16トランス活性化ドメインが配列番号:51を含む核酸配列によりコードされ、またはB42酸性アクチベータートランス活性化ドメインが配列番号:53を含む核酸配列によりコードされた、請求項2に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項4】
ハイブリッドポリペプチドのキメラレチノイドX受容体リガンド結合ドメインが、
a)配列番号:13のヌクレオチド1−348および配列番号:21のヌクレオチド268−630、
b)配列番号:13のヌクレオチド1−408および配列番号:21のヌクレオチド337−630、または
c)配列番号:13のヌクレオチド1−465および配列番号:21のヌクレオチド403−630
を含む核酸配列によりコードされた、請求項1に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項5】
ハイブリッドポリペプチドのキメラレチノイドX受容体リガンド結合ドメインが、
a)配列番号:19のアミノ酸1−116および配列番号:27のアミノ酸90−210、
b)配列番号:19のアミノ酸1−136および配列番号:27のアミノ酸113−210、または
c)配列番号:19のアミノ酸1−155および配列番号:27のアミノ酸135−210
のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項6】
請求項1に記載の単離されたポリヌクレオチド、ならびに
i)その発現を変調すべき遺伝子と関連した応答エレメントを認識するDNA−結合ドメイン;および
ii)エクジソン受容体リガンド結合ドメイン
を含む、第2のハイブリッドポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項7】
第2のハイブリッドポリペプチドのDNA−結合ドメインが、GAL4 DNA−結合ドメインまたはLexA DNA−結合ドメインを含む、請求項3に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項8】
第2のハイブリッドポリペプチドのエクジソン受容体リガンド結合ドメイン(LBD)が、ハマキガ Choristoneura fumiferana(トウヒシントメハマキ)EcR(「CfEcR」)LBD、甲虫 Tenebrio molitor(チャイロコメノゴミムシダマシ)EcR(「TmEcR」)LBD、Manduca sexta(タバコスズメガ)EcR(「MsEcR」)LBD、Heliothies virescens(オオタバコガ)EcR(「HvEcR」)LBD、ユスリカ Chironomus tentans(キミドリユスリカ)EcR(CtEcR)LBD、カイコガ Bombyx mori EcR(「BmEcR」)LBD、ミバエ Drosophila melanogaster(キイロショウジョウバエ)EcR(「DmEcR」)LBD、カ Aedes aegypti(ネッタイシマカ)EcR(「AaEcR」)LBD、クロバエ Lucilia capitata EcR(「LcEcR」)LBD、クロバエ Lucilia cuprina(ヒツジキンバエ)EcR(「LucEcR」)LBD、地中海ミバエ Ceratitis capitata(チチュウカイミバエ)EcR(「CcEcR」)LBD、バッタ Locusta migratoria(トノサマバッタ)EcR(「LmEcR」)LBD、アブラムシ Myzus persicae(モモアカアブラムシ)EcR(「MpEcR」)LBD、シオマネキ Celuca pugilator EcR(「CpEcR」)LBD、コナジラミ Bamecia argentifoli(シルバーリーフコナジラミ)EcR(BaEcR)LBD、ヨコバイ Nephotetix cincticeps(ツマグロヨコバイ)EcR(NcEcR)LBDまたはマダニ Amblyomma americanum EcR(「AmaEcR」)LBDを含む、請求項3または4に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項9】
第2のハイブリッドポリペプチドのエクジソン受容体リガンド結合ドメインが、配列番号:65(CfEcR−DEF)、配列番号:59(CfEcR−CDEF)、配列番号:67(DmEcR−DEF)、配列番号:71(TmEcR−DEF)または配列番号:73(AmaEcR−DEF)を含む核酸によりコードされた、請求項3または5に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項10】
第2のハイブリッドポリペプチドのエクジソン受容体リガンド結合ドメインが、配列番号:57(CfEcR−DEF)、配列番号:58(DmEcR−DEF)、配列番号:70(CfEcR−CDEF)、配列番号:72(TmEcR−DEF)または配列番号:74(AmaEcR−DEF)のアミノ酸配列を含む、請求項3または5に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の単離されたポリヌクレオチド、ならびに
i)第1のハイブリッドポリペプチドのトランス活性化ドメインによって活性化されるプロモータ;
ii)第2のハイブリッドポリペプチドのDNA−結合ドメインによって認識される応答エレメント;および
iii)その発現を変調すべき遺伝子
を含む単離されたポリヌクレオチド。
【請求項12】
前記ポリヌクレオチドの1以上が染色体DNAに組み込まれている、請求項1〜11のいずれかに記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれかに記載のポリヌクレオチドを含む、1以上のベクター。
【請求項14】
前記ベクターの1以上がプラスミドである、請求項13に記載の1以上のベクター。
【請求項15】
前記ベクターの1以上がウイルスベクターである、請求項13に記載の1以上のベクター。
【請求項16】
前記ベクターの1以上がアデノウイルスベクターである、請求項15に記載の1以上のベクター。
【請求項17】
請求項1〜12のいずれかに記載のポリヌクレオチド、または請求項13〜16のいずれかに記載の1以上のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項18】
細菌細胞、真菌細胞、酵母細胞、動物細胞、または哺乳動物細胞である、請求項17に記載の宿主細胞。
【請求項19】
哺乳動物細胞が非−ヒト動物細胞である、請求項18に記載の宿主細胞。
【請求項20】
哺乳動物細胞がヒト細胞である、請求項18に記載の宿主細胞。
【請求項21】
非−ヒト生物が細菌、真菌、および酵母からなる群から選択される、請求項17〜19のいずれかに記載の宿主細胞を含む、非−ヒト生物。
【請求項22】
リガンドの存在下で用いられる請求項1〜12のいずれかに記載の単離されたポリヌクレオチドであって、該リガンドが式:
【化1】

[式中、Eは第三級炭素を含有する(C−C)アルキルまたは第三級炭素を含有するシアノ(C−C)アルキルであり;
は、H、Me、Et、i−Pr、F、ホルミル、CF、CHF、CHCl、CHF、CHCl、CHOH、CHOMe、CHCN、CN、C≡CH、1−プロピニル、2−プロピニル、ビニル、OH、OMe、OEt、シクロプロピル、CFCF、CH=CHCN、アリル、アジド、SCNまたはSCHFであり;
はH、Me、Et、n−Pr、i−Pr、ホルミル、CF、CHF、CHCl、CHF、CHCl、CHOH、CHOMe、CHCN、CN、C≡CH、1−プロピニル、2−プロピニル、ビニル、Ac、F、Cl、OH、OMe、OEt、O−n−Pr、OAc、NMe、NEt、SMe、SEt、SOCF、OCFCFH、COEt、シクロプロピル、CFCF、CH=CHCN、アリル、アジド、OCF、OCHF、O−i−Pr、SCN、SCHF、SOMe、NH−CNであるか、またはR、ならびにRおよびRが結合したフェニル炭素と一緒になって、エチレンジオキシ、フェニル炭素に隣接する酸素を持つジヒドロフリル環、もしくはフェニル炭素に隣接する酸素を持つジヒドロピリル環を形成し;
はH、Etであるか、またはR、ならびにRおよびRが結合したフェニル炭素と一緒になってエチレンジオキシ、フェニル炭素に隣接する酸素を持つジヒドロフリル環、もしくはフェニル炭素に隣接する酸素を持つジヒドロピリル環を形成し;
、RおよびRは独立してH、Me、Et、F、Cl、Br、ホルミル、CF、CHF、CHCl、CHF、CHCl、CHOH、CN、C≡CH、1−プロピニル、2−プロピニル、ビニル、OMe、OEt、SMeまたはSEtである]
の化合物である、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項23】
リガンドの存在下で用いられる請求項13〜16のいずれかに記載の1以上のベクターであって、該リガンドが式:
【化2】

[式中、Eは第三級炭素を含有する(C−C)アルキルまたは第三級炭素を含有するシアノ(C−C)アルキルであり;
は、H、Me、Et、i−Pr、F、ホルミル、CF、CHF、CHCl、CHF、CHCl、CHOH、CHOMe、CHCN、CN、C≡CH、1−プロピニル、2−プロピニル、ビニル、OH、OMe、OEt、シクロプロピル、CFCF、CH=CHCN、アリル、アジド、SCNまたはSCHFであり;
はH、Me、Et、n−Pr、i−Pr、ホルミル、CF、CHF、CHCl、CHF、CHCl、CHOH、CHOMe、CHCN、CN、C≡CH、1−プロピニル、2−プロピニル、ビニル、Ac、F、Cl、OH、OMe、OEt、O−n−Pr、OAc、NMe、NEt、SMe、SEt、SOCF、OCFCFH、COEt、シクロプロピル、CFCF、CH=CHCN、アリル、アジド、OCF、OCHF、O−i−Pr、SCN、SCHF、SOMe、NH−CNであるか、またはR、ならびにRおよびRが結合したフェニル炭素と一緒になって、エチレンジオキシ、フェニル炭素に隣接する酸素を持つジヒドロフリル環、もしくはフェニル炭素に隣接する酸素を持つジヒドロピリル環を形成し;
はH、Etであるか、またはR、ならびにRおよびRが結合したフェニル炭素と一緒になってエチレンジオキシ、フェニル炭素に隣接する酸素を持つジヒドロフリル環、もしくはフェニル炭素に隣接する酸素を持つジヒドロピリル環を形成し;
、RおよびRは独立してH、Me、Et、F、Cl、Br、ホルミル、CF、CHF、CHCl、CHF、CHCl、CHOH、CN、C≡CH、1−プロピニル、2−プロピニル、ビニル、OMe、OEt、SMeまたはSEtである]
の化合物である、1以上のベクター。
【請求項24】
リガンドを含む請求項17〜20のいずれかに記載の宿主細胞であって、該リガンドが式:
【化3】

[式中、Eは第三級炭素を含有する(C−C)アルキルまたは第三級炭素を含有するシアノ(C−C)アルキルであり;
は、H、Me、Et、i−Pr、F、ホルミル、CF、CHF、CHCl、CHF、CHCl、CHOH、CHOMe、CHCN、CN、C≡CH、1−プロピニル、2−プロピニル、ビニル、OH、OMe、OEt、シクロプロピル、CFCF、CH=CHCN、アリル、アジド、SCNまたはSCHFであり;
はH、Me、Et、n−Pr、i−Pr、ホルミル、CF、CHF、CHCl、CHF、CHCl、CHOH、CHOMe、CHCN、CN、C≡CH、1−プロピニル、2−プロピニル、ビニル、Ac、F、Cl、OH、OMe、OEt、O−n−Pr、OAc、NMe、NEt、SMe、SEt、SOCF、OCFCFH、COEt、シクロプロピル、CFCF、CH=CHCN、アリル、アジド、OCF、OCHF、O−i−Pr、SCN、SCHF、SOMe、NH−CNであるか、またはR、ならびにRおよびRが結合したフェニル炭素と一緒になって、エチレンジオキシ、フェニル炭素に隣接する酸素を持つジヒドロフリル環、もしくはフェニル炭素に隣接する酸素を持つジヒドロピリル環を形成し;
はH、Etであるか、またはR、ならびにRおよびRが結合したフェニル炭素と一緒になってエチレンジオキシ、フェニル炭素に隣接する酸素を持つジヒドロフリル環、もしくはフェニル炭素に隣接する酸素を持つジヒドロピリル環を形成し;
、RおよびRは独立してH、Me、Et、F、Cl、Br、ホルミル、CF、CHF、CHCl、CHF、CHCl、CHOH、CN、C≡CH、1−プロピニル、2−プロピニル、ビニル、OMe、OEt、SMeまたはSEtである]
の化合物である、宿主細胞。
【請求項25】
リガンドを含む請求項21に記載の非−ヒト生物であって、該リガンドが式:
【化4】

[式中、Eは第三級炭素を含有する(C−C)アルキルまたは第三級炭素を含有するシアノ(C−C)アルキルであり;
は、H、Me、Et、i−Pr、F、ホルミル、CF、CHF、CHCl、CHF、CHCl、CHOH、CHOMe、CHCN、CN、C≡CH、1−プロピニル、2−プロピニル、ビニル、OH、OMe、OEt、シクロプロピル、CFCF、CH=CHCN、アリル、アジド、SCNまたはSCHFであり;
はH、Me、Et、n−Pr、i−Pr、ホルミル、CF、CHF、CHCl、CHF、CHCl、CHOH、CHOMe、CHCN、CN、C≡CH、1−プロピニル、2−プロピニル、ビニル、Ac、F、Cl、OH、OMe、OEt、O−n−Pr、OAc、NMe、NEt、SMe、SEt、SOCF、OCFCFH、COEt、シクロプロピル、CFCF、CH=CHCN、アリル、アジド、OCF、OCHF、O−i−Pr、SCN、SCHF、SOMe、NH−CNであるか、またはR、ならびにRおよびRが結合したフェニル炭素と一緒になって、エチレンジオキシ、フェニル炭素に隣接する酸素を持つジヒドロフリル環、もしくはフェニル炭素に隣接する酸素を持つジヒドロピリル環を形成し;
はH、Etであるか、またはR、ならびにRおよびRが結合したフェニル炭素と一緒になってエチレンジオキシ、フェニル炭素に隣接する酸素を持つジヒドロフリル環、もしくはフェニル炭素に隣接する酸素を持つジヒドロピリル環を形成し;
、RおよびRは独立してH、Me、Et、F、Cl、Br、ホルミル、CF、CHF、CHCl、CHF、CHCl、CHOH、CN、C≡CH、1−プロピニル、2−プロピニル、ビニル、OMe、OEt、SMeまたはSEtである]
の化合物である、非−ヒト生物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2012−110336(P2012−110336A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−10270(P2012−10270)
【出願日】平成24年1月20日(2012.1.20)
【分割の表示】特願2002−566321(P2002−566321)の分割
【原出願日】平成14年2月20日(2002.2.20)
【出願人】(508087044)イントレキソン コーポレーション (12)
【Fターム(参考)】