説明

キャップおよびコネクターシステム

【課題】医療用コネクターなどに装着するキャップの着脱操作として、キャップ本体と環状持ち手を指で把持して軸方向に引き抜く操作と、キャップを周方向に回転させてコネクターにねじ嵌合させる操作の2種類の操作が必要であるが、手指が不自由な人でも困難を伴うことなく着脱操作が可能でなければならない。本発明の目的は、軸方向に引っ張る時にも、周方向に回転させる時にも、指で確実に把持して着脱操作を行うことができるキャップを提供することにある。さらには、医療用コネクターに適したキャップを提供することにある。
【解決手段】本発明のキャップは、一端が閉塞し他端が開放構造を有するキャップであって、その外形は、閉塞端側は略円錐台状で、これに続く開放端側は円筒状である。そして、該円錐台部と円筒部の境界付近には周方向に伸びる第1の線状リブが設けられており、さらに円筒部には第1線状リブに直行する方向に第2の線状リブが設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば医療用チューブを連結するために使用されるコネクターなどに装着して、コネクターを保護するために使用するキャップに関する。特にキャップに内蔵された消毒剤によって、コネクターの消毒・殺菌を行なうことができる保護キャップとして好適なキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野においては、複数のチューブを連結して液の移送を行ったり、再び連結を解除したりする操作を、無菌的に行う必要がしばしば生ずる。たとえば腹膜透析療法は、腹腔に連結されたカテーテルを通して腹腔内に透析液を注入し、腹膜の毛細血管を利用して透析を実施して血液中の老廃物を除去する療法であるが、透析液の交換を1日に数回行う必要がある。透析液の交換は、腹腔内に所定時間貯留した透析液を排出し、新しい透析液を注入することにより行われる。この透析液の排出・注入の操作は、細菌が腹腔内に侵入しないように無菌的に行う必要がある。もし細菌が腹腔内に侵入すると、腹膜炎を起こすおそれがあるからである。
【0003】
透析液の排出・注入においては、腹腔カテーテルに連結されているエキステンションチューブと呼ばれるチューブの先端に設けられたコネクターと透析液の入ったバッグに接続されたチューブのコネクターを着脱して行うことになるが、その際に、コネクター部から空中浮遊菌や手指に付着した細菌が侵入しないように、コネクターの着脱の際に、エキステンションチューブ側のコネクターを消毒剤で消毒・殺菌する。一般的には、ポビドンヨード液などの消毒剤を含浸したスポンジをコネクターに接触させて行うが、特許文献1に記載されているように、消毒剤を含浸したスポンジを内蔵するキャップを装着して非接触で行うシステムもある。
【0004】
特許文献1に記載されたシステムでは、透析液の注排操作後にキャップをコネクターに装着して、コネクター部の消毒・殺菌を行う。また、透析液貯留中はキャップをコネクターにそのまま装着しておくことにより、細菌の侵入を防ぐ役目も果たす。使用前のキャップ1は、図7に示すように、環状の持ち手11がついた栓10によって封止されており、消毒剤が漏出することがないようになっている。そして透析液の交換終了後に、キャップ本体と環状持ち手を指で把持して栓を引き抜き、次にキャップをコネクターに当接して回転させることによって、ねじ嵌合によりキャップをコネクターに取り付ける。キャップをねじ嵌合によってコネクターに取り付ける理由は、キャップが誤って外れないように、強固に装着するためである。
【0005】
コネクターとキャップはコンパクトに設計されており、透析液貯留中にキャップを装着したコネクターを腹部付近に収納しても嵩張らず、全体が丸みを帯びた形状とすることにより、皮膚と直接又は間接的に接触しても患者に痛みなどの不快感が生じないように設計されている。
【0006】
また、表面にリブを設けたキャップについては、特許文献2〜6にも記載されているが、これらはいずれも容器を封止するためのキャップであって、コネクターに装着するものではない。また、キャップの形状も円筒状のものが多く、コネクターとくに医療用コネクターに装着するのに適した形状ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2010/143693号公報
【特許文献2】実開昭62−125741号公報
【特許文献3】実開昭62−125742号公報
【特許文献4】実開昭62−125746号公報
【特許文献5】実開昭62−143650号公報
【特許文献6】実開平2−105847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、特許文献1に記載されたシステムのキャップに対する操作としては、キャップ本体と環状持ち手を指で把持して軸方向に引き抜く操作と、キャップを周方向に回転させてコネクターにねじ嵌合させる操作の2種類の操作がある。これらの操作はどちらも困難を伴うことなく行われなければならないが、透析患者には手指が不自由な人が多いので、参考文献1に記載されたキャップでは、キャップ本体を手指で把持して軸方向に引っ張るのが難しいという問題があることがわかった。その理由は、指で把持する目的で設けられているU字状のリブの周方向部分(U字の底に相当する部分)が、キャップの径が細くなっていく部分に設けられているために、キャップを把持して引き抜き方向に力を加えたとき、指が前記周方向部分にかかりにくいため、キャップを把持しにくくなるためである。
【0009】
本発明の目的は、軸方向に引っ張る時にも、周方向に回転させる時にも、指で確実に把持して着脱操作を行うことができるキャップを提供することにある。さらに詳しくは、医療用コネクターに適したキャップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のキャップは、一端が閉塞し他端が開放構造を有するキャップであって、その外形は、閉塞端側は略円錐台状で、これに続く開放端側は円筒状である。そして、該円錐台部と円筒部の境界付近には周方向に伸びる第1の線状リブが設けられており、さらに円筒部には第1線状リブに直行する方向に第2の線状リブが設けられていることを特徴とする。
【0011】
本発明のキャップはコネクター、とくに医療用コネクターに適したものであり、コネクターに上記の構成のキャップを装着したコネクターシステムも、本発明に含まれる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のキャップは、軸方向に引っ張る時にも、周方向に回転させる時にも、指で確実に把持して着脱操作を行うことができる。また、その形状が、閉塞端側は略円錐台状で、これに続く開放端側は円筒状であるので、コネクターのキャップに適しており、とくに医療用コネクターとして最適である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1の斜視図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態1の正面図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態1の側面図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態1の上面図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態2の正面図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態3の正面図である。
【図7】図7は、特許文献1に記載されている従来のキャップの構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のキャップは、上述した構成を基本として、以下のような態様をとることができる。
【0015】
すなわち、第1線状リブと第2線状リブを、キャップの軸に対して対称に設けることができる。
【0016】
第1線状リブと第2線状リブを、コ字を形成するように設けることができる。
【0017】
医療用コネクターの保護キャップとして、消毒剤を内蔵することができる。
【実施例】
【0018】
以下、実施例を用いて、本発明のキャップおよびコネクターシステムについて、さらに具体的に説明する。
【0019】
図1〜4に示す本発明の実施の形態1においては、キャップ1は、一方の端部が閉塞端2となっており、他端が開放端9となっている。そして形状は、閉塞端側が略円錐台状で、これに続く開放端側が円筒状になっており、その境界を仮想の一点鎖線Lで示している。コネクターにキャップを装着する際には、開放端9からコネクターを嵌挿し、円筒状部Bの内部にコネクターを密に収納する。
【0020】
キャップ1の外表面には、第1の線状リブ3と、第2の線状リブ4が設けられている。本実施形態では、図2に示されるように1本の第1線状リブと2本の第2線状リブが、コ字を形成するように一体的に設けられている。そして、第1の線状リブ3は円錐台部と円筒部の境界付近に設けられている。背面図は省略しているが、背面にも同様のリブが設けられており、図4に示すようにキャップの軸に対してリブが対称の形状に設けられている。このように、2種類の線状リブをコ字を形成するように設けた理由は、コ字部分を指で摘めば把持しやすいからである。さらに、軸に対して180度反対方向に同じ形状のリブを設けて対称形状とすることも、キャップを反対方向から指で押さえることができるので、把持しやすくする上で好ましい。
【0021】
第1線状リブを円錐台部と円筒部の境界付近に設ける理由は、以下のとおりである。すなわち、とくに医療用コネクターにおいては、指がコネクターに接触してコネクターを汚染することがないように、指でキャップを把持する部分はできるだけ閉塞端側が好ましい。しかし特許文献1に記載されているようにリブをキャップの径が細くなる円錐台部に設けると、円筒部の外径に対して第1の線状リブの高さが十分に確保できないため、キャップを把持して引き抜き方向の力を加えたときに第1の線状リブに指がかかりにくくなり、キャップを指で把持しにくくなる。そこで、キャップの太径部分であってできるだけ閉塞端に近い、円錐台部と円筒部の境界付近に設けるのである。
【0022】
本実施形態においては、上述した線状リブに加えて、線状リブ5と6が設けられている。線状リブ5は、円錐台部Aに、コ字を延長するようにU字状に設けられているが、このようにすることによって、指による把持がより一層しやすくなるので好ましい。また、線状リブ6は、第2線状リブ4とは別に設けた第2線状リブであり、図4に示すように2本が軸対称に設けられている。第2線状リブは、キャップを回転させるときに指を固定しやすくする目的で設けられているものであり、ある程度の数を設けた方が使いやすい。本実施形態では、第2線状リブは、合計6本が設けられていることになる。
【0023】
さらに本実施形態では、開放端9側に2本の全周リブ7及び8が設けられている。これらのリブは、キャップを指で把持した際に、指がキャップの開放端部あるいはコネクターに接触するのを防ぐ目的で設けられている。
【0024】
医療用コネクターの場合、略円錐台Aの内部には、必要に応じて消毒剤を含浸した部材が固定される。消毒剤としては、生体に対して安全で殺菌効果の高い消毒剤が好ましく、ポビドンヨード液が好ましく使用される。消毒剤を含浸する部材としては、スポンジのような多孔性部材が好ましい。
【0025】
図5は、本発明の実施形態2を示す正面図である。本実施形態では、実施形態1における線状リブ5に相当するリブが設けられていない点が、実施形態1とは異なっている。
【0026】
図6は、本発明の実施形態3を示す正面図である。本実施形態では、実施形態1における線状リブ3が全周にわたって連続した1本のリブとして設けられている点が、実施形態1と異なっている。線状リブ3は、このように連続した1本のリブとして設けることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明のキャップは、軸方向に引っ張る時にも、周方向に回転させる時にも、指で確実に把持して着脱操作を行うことができるので、コネクター、とくに医療用コネクターのキャップとして有用である。さらにいえば、腹膜透析において患者と透析液の入った容器を連結するために使用するコネクターのキャップとして有用である。
【符号の説明】
【0028】
1 キャップ
2 閉塞端部
3 第1の線状リブ
4 第2の線状リブ
5 U字状線状リブ
6 第2の線状リブ
7 全周リブ
8 全周リブ
9 開放端部
10 栓
11 環状持ち手

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が閉塞し他端が開放構造を有するキャップであって、その外形は、閉塞端側は略円錐台状で、これに続く開放端側は円筒状であり、該円錐台部と円筒部の境界付近には周方向に伸びる第1の線状リブが設けられており、さらに円筒部には第1線状リブに直行する方向に第2の線状リブが設けられていることを特徴とするキャップ。
【請求項2】
第1線状リブと第2線状リブが、キャップの軸に対して対称に設けられている請求項1記載のキャップ。
【請求項3】
第1線状リブと第2線状リブが、コ字を形成するように設けられている請求項1または2記載のキャップ。
【請求項4】
キャップが、医療用コネクターの保護キャップである、請求項1〜3のいずれかの項に記載のキャップ。
【請求項5】
キャップ内部に消毒剤を内蔵してなる請求項4記載のキャップ。
【請求項6】
請求項1記載のキャップと、該キャップが装着されるコネクターからなるコネクターシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−42952(P2013−42952A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−183023(P2011−183023)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(000153030)株式会社ジェイ・エム・エス (452)
【Fターム(参考)】