説明

キャップ付哺乳用乳首

【課題】
従来の哺乳用乳首では、乳児に安全に授乳できるように、殺菌処理された状態を維持する必要があり、哺乳用乳首を再使用するための殺菌処理を行うのは手間がかかるという問題があった。
【解決手段】
キャップ付哺乳用乳首1は、殺菌処理された哺乳用乳首10と、哺乳用乳首10の少なくとも乳児が口に含む部分11の外面を覆うと共に、哺乳時には哺乳用乳首10より取り外せるキャップ20とを備え、哺乳用乳首10の乳児が口に含む部分11の直径が8〜12ミリメートルとなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳用容器と一体または哺乳用容器に取り付けて使用される哺乳用乳首であって、被哺乳者である乳児に安全で、母親等の哺乳者の殺菌処理の手間を省くキャップ付哺乳用乳首に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、市販用ミルク(以下、人工乳と略す。)での授乳の場合は、哺乳用容器および哺乳用乳首を用いて授乳する必要がある。そして、哺乳用容器および哺乳用乳首については、殺菌処理をして清潔に保つことが必要とされていた。これは乳児の免疫力が大人に比較して弱いためであり、特に満1歳未満の乳児は細菌に感染しやすく、回復力も弱いとされ、殺菌を怠ると重病になるためであった。さらには、哺乳用容器および哺乳用乳首を用いて人工乳だけで育つ乳児は、母乳で育つ乳児に比べて母親が罹ったことのある病気に対する免疫が備わってないと言われており、人工乳を使用する母親等の哺乳者においては、哺乳用容器および哺乳用乳首の衛生管理に関して念入りに行う必要性を感じていた。
【0003】
ところが、哺乳用容器および哺乳用乳首を扱う母親等の哺乳者にとっては、哺乳用容器および哺乳用乳首に殺菌処理をして清潔に保つことは、大変手間のかかるものであり、細心の注意を払う作業となっていた。
【0004】
このため、哺乳用容器を使い捨てにするものについては、特許文献1に示す発明が開示されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−187273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、哺乳用容器および哺乳用乳首の殺菌処理を行う場合には、哺乳用容器よりも哺乳用乳首の方が殺菌処理を行うのが難しいという問題があった。これは、哺乳用乳首には、乳児が咥え易いように複雑な形状で成型されていること、哺乳用乳首の先端には人工乳が通過するための通過孔または通過切れ込みが設けられていること、場合によっては哺乳用乳首の根元の部分には空気孔も設けられていること等のため、哺乳用乳首を使用した後に哺乳用乳首を扱う母親等が人工乳の残滓を完全に除去するためには大変手間のいる作業となった。
【0007】
また、乳児の授乳量は月齢、体格や体調等に様々であり、用意した人工乳を、途中で休みを設けて間隔を開けて飲む場合や、哺乳者や被哺乳者の都合により授乳を中断する場合もあるため、授乳を中断した場合であっても哺乳用乳首の外面にごみ等が付着しないようにして、授乳を再開するまでの間は、人工乳が哺乳用乳首から漏れることもなく、同時に哺乳用乳首の外面を清潔に保つ必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
第1発明のキャップ付哺乳用乳首は、殺菌処理された哺乳用乳首と、前記哺乳用乳首の少なくとも乳児が口に含む部分の外面を覆うと共に、哺乳時には前記哺乳用乳首より取り外せるキャップとを備え、前記哺乳用乳首の乳児が口に含む部分の直径が8〜12ミリメートルとなっている。
第2発明のキャップ付哺乳用乳首は、第1発明において、前記哺乳用乳首から前記キャップを最初に取り外す時には、未開封であることを目視で確認できる手段を有している。
第3発明のキャップ付哺乳用乳首は、第1発明または第2発明において、前記哺乳用乳首の胴部にはオネジを有し、前記キャップは前記オネジに嵌合するメネジを有しており、前記キャップで前記哺乳用乳首先端の哺乳口が塞がれる。
第4発明のキャップ付哺乳用乳首は、第3発明において、前記哺乳用乳首の胴部には空気孔が設けられており、前記キャップを取り付けた場合には、前記キャップにより前記空気孔が塞がれる。
【発明の効果】
【0009】
以上のような技術的手段を有することにより、以下の効果を有する。
第1発明によれば、殺菌処理された哺乳用乳首と、前記哺乳用乳首の少なくとも乳児が口に含む部分の外面を覆うと共に、哺乳時には前記哺乳用乳首より取り外せるキャップとを備え、前記哺乳用乳首の乳児が口に含む部分の直径が8〜12ミリメートルとなっていることにより、前記哺乳用乳首の表面の乳児が口に含む部分において、殺菌処理された効果を保つことが可能となり、キャップ付哺乳用乳首の全体の大きさも小さくすることが出来るので携行に便利でかつ、キャップ付哺乳用乳首の使い捨ても可能となる。
第2発明によれば、第1発明を利用し、前記哺乳用乳首から前記キャップを最初に取り外す時には、未開封であることを目視で確認できる手段を有していることにより、キャップ付哺乳用乳首のキャップが未開封であること、すなわち殺菌処理をして清潔に保たれた状態あることが容易に確認可能であり、人工乳を充填させた容器にキャップ付哺乳用乳首を取り付けた場合に、前記哺乳用乳首及び人工乳の安全性が確保されていることを容易に確認することができるので、哺乳者にとって安心して使用することができる。
第3発明によれば、第1発明または第2発明を利用し、前記哺乳用乳首の胴部にはオネジを有し、前記キャップは前記オネジに嵌合するメネジを有しており、前記キャップで前記哺乳用乳首先端の哺乳口が塞がれることにより、前記哺乳用乳首からの前記キャップの着脱を自在にすることが可能であり、乳児の人工乳の授乳状況に合わせて中断した場合でも、前記哺乳用乳首の外面にごみ等の付着を防止すると共に、哺乳口から人工乳が漏れることを防ぐことができる。
第4発明によれば、第3発明を利用し、前記哺乳用乳首の胴部には空気孔が設けられており、前記キャップを取り付けた場合には、前記キャップにより前記空気孔が塞がれるので、キャップ付哺乳用乳首が接続された容器内部に、乳児の哺乳が容易になるように、容器内部に空気を入れる必要がある場合でも、前記キャップを取り付けた状態では、空気孔から人工乳が漏れることを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る実施形態を説明するための、キャップ付哺乳用乳首の外観図である。
【図2】本発明の実施形態を説明するための哺乳用乳首の分解図である。
【図3】本発明の実施形態を説明するためのキャップ付哺乳用乳首に容器を接続した場合の説明図である。
【図4】本発明の実施形態を説明するための哺乳用乳首に破断したキャップを取り付けた場合の説明図である。
【図5】本発明の実施形態を説明するための図4のA−A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
発明を実施する形態について、図面に基づいて具体的に説明する。
【実施例1】
【0012】
(全体)
本発明のキャップ付哺乳用乳首1の外観について図1を用いて説明する。図1はキャップ付哺乳用乳首1の外観を説明する図である。キャップ付哺乳用乳首1は、哺乳用乳首10とキャップ20とで構成され、図1においては、哺乳用乳首10にキャップ20を組み付けた外観を示している。組み付けた状態では、哺乳用乳首10の容器接合部13が外部に見えるだけの状態となり、キャップ20の蓋部21と破断部22とリング部23が外面に現れた状態となる。蓋部21の外面には蓋部21の回動方向と直交する方向に複数の溝が設けられている。これは、キャップ20の哺乳用乳首10への取り付け、及び蓋部21の哺乳用乳首10へ取り付け又は取り外しをする場合に、蓋部21の滑りを防止するためである。
【0013】
(哺乳用乳首)
図2は哺乳用乳首10を説明する図であり、哺乳用乳首10は天然ゴム、イソプレンゴム、シリコンゴム等の軟質材料で成型され、乳児が口に含む部分である乳首部11と、ABS樹脂、ポリプロピレン樹脂等の硬質合成樹脂で胴部12と容器接合部13が一体成型された部分で構成されている。乳首部11は直径が8〜12ミリメートルの略球状であり、乳首部11の内部は中空で、肉厚をほぼ均一にしたものとなっている。乳首部11の表面は、乳児が咥えて怪我をすることのないように滑らかに成型されている。乳首部11の一方の端には孔または切れ込みによる哺乳口14が設けられており、他方の端は、略ラッパ状に広がり胴部12と接続する接続端18が設けられている。接続端18は、中空の円筒状であり、端部近傍には円筒の外側に対して一定の高さでU字状に突出する凸部31が設けられている。
【0014】
胴部12と容器接合部13は略円管状であり、胴部12の一方の端は接続端18と接続する接続口19があり、他方の端は容器接合部13に連接されている。接続口19の内径は接続端18の外形とほぼ等しく、接続口19の内面には凸部31と嵌合して内部の人工乳が漏れ出ることを防止できる凹部32が設けられている。胴部12の外表面には2条〜5条のオネジ15が設けられている。胴部12の容器接合部13に近い部分で、オネジ15の設けられてない部分には空気孔16が設けられている。また、胴部12と容器接合部13の境界部分には板状に垂直に張り出したリング回転止め17が、2か所設けられている。
【0015】
容器接合部13は、図3のように、ラミネートフィルム製の容器5を使用する場合には、容器接合部13の円管状の外面に容器5を溶着または接着により接合するので、容器接合部13の外面は滑らかな状態となっている。容器5をガラスや硬質樹脂等で成形したものを用いる場合には、容器接合部13の外形を使用される容器の接続口径に合せると同時に、使用される容器の接続方法に嵌合する様に容器接合部13の外面又は内面にネジを設けて対応させる。
【0016】
なお、接続端18と接続口19の接合は、嵌合による方法を説明しているが、水密性の程度によっては、凸部31と凹部32の嵌合に接着を組み合わせても良く、凸部31と凹部32の嵌合ではなく接着のみとする方法や、溶着のみとする方法でも良い。また、適切な硬度の材料が選択できる場合は、乳首部11、胴部12と容器接合部13を同一の材料により一体に成形するものとしても良い。
【0017】
(キャップ)
キャップ20について、図4を用いて説明する。図4は、図1の哺乳用乳首10にキャップ20を取り付けた状態で、キャップ20を破断して、キャップ20の断面と哺乳用乳首10との関係が見えるようにしたものである。哺乳用乳首10については、すでに説明しており、同一の符号を付して説明を省略する。
【0018】
キャップ20は一端が塞がれた略円管状であり、蓋部21、破断部22とリング部23
をABS樹脂、ポリプロピレン樹脂等の硬質合成樹脂で一体成型されたものである。蓋部21の塞がれた側の最奥部の内面には、哺乳口シール24が設けられている。哺乳口シール24は、略円錐状の窪みが設けられており、キャップ20を回動させながら哺乳用乳首10に取り付けた場合に、哺乳口シール24は哺乳口14の周囲の乳首部11の外面と密着して哺乳口14から人工乳が漏れることを防止する構造となっている。
【0019】
蓋部21の胴部12に対応する内側面には、オネジ15と対応するメネジ25が設けられている。破断部22は蓋部21とリング部23との間で、蓋部21やリング部23よりも肉厚が薄く、円周方向に長い複数の角孔が穿たれており、蓋部21とリング部23を複数の略点状で繋いでいる。リング部23は短い奥行きの円管である。リング部23の内面にはリング爪27が2か所設けられており、キャップ20を回動させながら哺乳用乳首10に取り付け、最もキャップ20が締まれた所定の状態の付近では、リング回転止め17とリング爪27は当たる位置となる。
【0020】
キャップ20を回動させながら哺乳用乳首10に取り付け、その後、蓋部21を取り外した場合に、破断部22が破断してリング部23が哺乳用乳首10側に残る構造について、図4のA−A部の断面図である図5を用いて説明する。キャップ20を回動させながら哺乳用乳首10に締め込み取り付けた状態では、リング爪27の先端部は締め込む方向においては撓ってリング回転止め17を乗り越えるように、リング爪27は先端に向かうほど薄くなるよう成形されている。さらには、リング回転止め17を乗り越え易いように、リング爪27は締め込む方向に所定の傾きを有している。また、リング回転止め17についても、リング爪27の傾きに沿った方向の傾きが設けられており、哺乳用乳首10に最初にキャップ20を取り付ける場合にはリング爪27はリング回転止め17を乗り越えて奥まで締め込むことができる。
【0021】
次に哺乳用乳首10からキャップ20を取り外す場合には、リング爪27の先端はリング回転止め17と胴部12で形成される略V字状の溝に回動が妨げられ、キャップ20に取り外し方向に外力が加わることにより、蓋部21やリング部23よりも強度的に劣る破断部22が破断して、蓋部21は哺乳用乳首10より取り外すことが出来るが、リング部23は、哺乳用乳首10に残る。
【0022】
図5を用いて、空気孔16の空気孔シール26による水密性を説明する。胴部12の空気孔16の周囲は、胴部12の外面から緩い傾きで突出し、キャップ20を締め込む方向に対向する滑らかな面が設けられている。また蓋部21の内側面の一部には、キャップ20を回動させながら哺乳用乳首10に取り付けた場合において、空気孔16の周囲の滑らかな面に対応するように、空気孔シール26が設けられている。キャップ20を哺乳用乳首10に取り付け締め込んだ場合には、空気孔16の周囲の滑らかな面と空気孔シール26が密着して、空気孔16から人工乳が漏れることを防止する構造となる。
【0023】
図4において、哺乳用乳首10及びキャップ20に殺菌処理を施した後に、哺乳用乳首10にキャップ20を被せてねじ込むと、乳児が咥える乳首部11の部分及び蓋部21の内側の乳首部1で形成される空間における殺菌処理の効果は失われず維持することができることになる。また、哺乳用乳首10に接続される容器5及び容器5に充填する人工乳等が殺菌処理されていれば、哺乳用乳首10の内部も殺菌処理された状態を維持することが可能となる。
【0024】
キャップ付哺乳用乳首1は、略円筒状の形状をしている。キャップ付哺乳用乳首1の大きさについては、哺乳用乳首10の乳首部11の直径が8〜12ミリメートルであるので、キャップ付哺乳用乳首1の円形部の直径が14〜20ミリメートル、長さ25〜30ミリメートル程度の大きさとなる。よって、大きさも小さくすることが可能であり、材料費や製作も容易となることから、キャップ付哺乳用乳首1単独での使い捨てや、容器5を使い捨てにした場合には、容器5の付いたキャップ付哺乳用乳首1を併せて使い捨てにすることが可能となる。さらには、容器5の大きさによっても異なるが、図3程度の大きさの容器5とキャップ付哺乳用乳首1を接続したものの場合は、携行も容易となる。
【0025】
以上、本発明について、実施例に基づき説明してきたが、本発明は何らこれらの実施例の構成に限定するものではない。例えば、リング部23が破断部22により破断して外れることにより未開封であることを目視で確認できる手段としているが、リング部23は蓋部21から分離せずに、リング部23が複数個所で縦割れを起こすことにより、開封されたことが目視で確認できる構造としても良い。
【符号の説明】
【0026】
1:キャップ付哺乳用乳首
5:容器
10:哺乳用乳首
11:乳首部
12:胴部
13:容器接合部
14:哺乳口
15:オネジ
16:空気孔
17:リング回転止め
18:接続端
19:接続口
20:キャップ
21:蓋部
22:破断部
23:リング部
24:哺乳口シール
25:メネジ
26:空気孔シール
27:リング爪
31:凸部
32:凹部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺菌処理された哺乳用乳首と、前記哺乳用乳首の少なくとも乳児が口に含む部分の外面を覆うと共に、哺乳時には前記哺乳用乳首より取り外せるキャップとを備え、前記哺乳用乳首の乳児が口に含む部分の直径が8〜12ミリメートルであるキャップ付哺乳用乳首。
【請求項2】
前記哺乳用乳首から前記キャップを最初に取り外す時には、未開封であることを目視で確認できる手段を有した請求項1記載のキャップ付哺乳用乳首。
【請求項3】
前記哺乳用乳首の胴部にはオネジを有し、前記キャップは前記オネジに嵌合するメネジを有しており、前記キャップで前記哺乳用乳首先端の哺乳口が塞がれる請求項1または請求項2記載のキャップ付哺乳用乳首。
【請求項4】
前記哺乳用乳首の胴部には空気孔が設けられており、前記キャップを取り付けた場合には、前記キャップにより前記空気孔が塞がれる請求項3記載のキャップ付哺乳用乳首。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−235852(P2012−235852A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105778(P2011−105778)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(511114586)
【Fターム(参考)】