説明

キャビネット

【課題】 使用者の使用方法に合わせて簡単に移動可能であり、移動させない通常時には安定して載置されるトイレ用キャビネットを提供する。
【解決手段】 トイレ空間で用いられる収納用キャビネットであって、前記キャビネットは長辺と短辺を有する上面視長方形状をなし、長辺方向側面の一方に収納物を出し入れする開口部を有し、開口部と相対する側面は板部材によって覆われており、前記キャビネットの底部のうち、片方の短辺側に台足を、逆の短辺側にはキャスターを、前記キャビネットの短辺方向側面のうち、少なくとも前記台足を供える短辺方向側面に取っ手を備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャビネットに係り、特にトイレ空間に設置される移動可能なキャビネットに関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来、トイレ空間内に、物品を収納するためのキャビネットを取り付けることが知られている。(例えば、特許文献1参照。)。
近年、トイレ空間内においてインテリアの自由が求められており、壁や床に固定せずに自由にキャビネットを移動させたいという要望が高まっている。また、使い勝手の面からも、掃除用具などを収納したキャビネットを便器近傍に移動させたいという要望がある。した
【0003】
前記課題を解決するために特許文献2では、底部に車輪を設けて移動自在に構成したトイレ用キャビネットが提案されている。これにより、収納物を出し入れする際に、手元に引き寄せるなど利便性が向上するが、底面に車輪が設けられていることから、収納時にキャスターがふらついてしまい、使い勝手が悪化するという課題がある。また、キャビネット上部に人が乗ることがあった場合に、キャビネットが移動してしまい大変危険である。
【0004】
また、従来のキャスター付キャビネットにおいて、様々な固定構造が提案されている。
例えば、特許文献3ではフットペダルを操作することによってキャスターを固定できるキャビネットが提案されている。このようなキャスター固定構造を採用することで、移動による使い勝手の向上と、固定による使い勝手の維持を両立させることが可能となる。しかしながら、移動、固定のたびにキャスター固定操作を行わなければならず、またキャスターの構造も複雑になるという課題がある。
一方、特許文献4ではキャスターを箱体の内部に出し入れすることによって移動・固定を制御する構造が提案されている。しかしながら、この方法では構成が複雑になることに加えて、キャビネット内部にキャスターを収納する空間を形成する必要があり、キャビネットの収納容積が減少するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−220177号公報
【特許文献2】特開2000−189号公報
【特許文献3】特開平11−48705号公報
【特許文献4】実公昭48−13895号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、本発明の課題は、使用者の使用方法に合わせて簡単に移動可能であり、移動させない通常時には安定して載置されるトイレ用キャビネットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明によれば、トイレ空間で用いられる収納用キャビネットであって、前記キャビネットは長辺と短辺を有する上面視長方形状をなし、長辺方向側面の一方に収納物を出し入れする開口部を有し、開口部と相対する側面は板部材によって覆われており、前記キャビネットの底部のうち、片方の短辺側に台足を、逆の短辺側にはキャスターを、前記キャビネットの短辺方向側面のうち、少なくとも前記台足を供える短辺方向側面に取っ手を備えてなるトイレルーム用キャビネットが提供される。
これによれば、移動させるときは側面の把手を掴み、持ち上げることで台足が地面から離れ、自由に移動させることができる。また、キャビネットを床面に置くことで台足と床面が接触し、キャスターの固定操作などを行わずとも、軽い力で不意に動いてしまうことが防止できる。
【0008】
また、請求項2記載の発明によれば、前記キャスターは、車輪の回動を抑制された固定式キャスターであるトイレルーム用キャビネットが提供される。
これによれば、キャスターが平面方向に回転してしまうことによる蛇行移動や、二つのキャスターが互いに近寄る方向に回転してしまいバランスを崩してしまうことによる転倒などを防止できる。
【0009】
また、請求項3記載の発明によれば、前記キャスターと、前記台足はそれぞれ着脱可能であり、両者の取り付け位置を取り替えることが可能であるトイレルーム用キャビネットが提供される。
これによれば、トイレ空間のレイアウトに応じて、台足とキャスターを入替えることで、左勝手、右勝手のどちらにも対応することが可能となる。
【0010】
また、請求項4記載の発明によれば、前記取っ手は着脱可能に構成され、前記台足が取り付けられる短辺方向の側面に取っ手を取り付け、前記取っ手を相対する側面には目隠し部材を取り付けるトイレルーム用キャビネットが提供される。
これによれば、外部からキャビネット内部が見えず意匠性に優れると共に、把手を掴んだ際に手が収納物に触れてしまうことを防ぐことができる。
【0011】
また、請求項5記載の発明によれば、前記取っ手は埋め込み式であり、かつ側板を貫通していないトイレルーム用キャビネットが提供される。
これによれば、台足とキャスターの入替えに応じて、台足が装着された側の側面に把手を、キャスター側の側面に目隠しキャップを、それぞれ取り付けることで、底面を確認せずとも容易に台足側の側面を持ち上げることが可能となる。
【0012】
また、請求項6記載の発明によれば、前記キャビネット底面に四方を囲むはかま部を設けたトイレルーム用キャビネットが提供される。
これによれば、使用者の位置する上方から見た場合に、台足やキャスターを隠すことが可能となり、意匠性が向上する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、使用者の使用方法に合わせて移動可能であり、収納物の出し入れの際にも使い勝手のよいトイレ用キャビネットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のキャビネット1を示す斜視図である。
【図2】本発明のキャビネット1を示す図1とは別角度からの斜視図である。
【図3】本発明のキャビネット1の底面図である。
【図4】本発明のキャビネット1の側面図である。
【図5】本発明のキャビネット1の使用状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図を用いて本発明の実施例について説明する。
図1は本発明の実施例におけるキャビネット1の斜視図を示す。キャビネット1は上面氏略長方形状の略直方体からなり、その片面に開口部2が形成されている。この開口部2から様々な物品を出し入れすることで収納できるように形成されている。
また、キャビネット1の天板3はその角部が曲線的に加工されており、壁面と接触した際に傷をつけてしまうことや、使用者が怪我をしてしまうことを防止する効果がある。
【0016】
キャビネット1の内部には固定式の縦仕切り4及び着脱可能な棚板5が設置され、収納物のサイズによってその棚板5の位置を変更し、効率的に収納できるようになっている。図1では収納物の一例として掃除ブラシ6を収めている。このとき、掃除ブラシ6の収納容器7を固定フックにとりつけているため、キャビネット1を動かした際にも、掃除ブラシ6が転倒する恐れがない。
【0017】
図2にキャビネット1の図1と逆方向からみた斜視図をしめす。開口部2と相対する面は裏板8によって覆われており、収納時は開口部2を壁面に向けておくことで正面から内容物が見えないように出来る。
【0018】
図3にキャビネット1の底面図を示す。キャビネット1の下面にはその一つの短辺方向にキャスター9が取り付けられている。また、逆の短辺方向には台足10が取付られている。台足10の床当接面にはクッション効果のあるゴム部材が取付られており、床面との摩擦を増大させることでキャビネット1の安定性を高めている。また、キャビネット1を持ち上げた際に、不意に落下させてしまったとしても、ゴム部材によって衝撃が吸収され、床面に傷をつける恐れを低減でき、衝撃音も低減できる。
【0019】
このキャスター9と台足10はそれぞれ図示していないネジによってキャビネット1の下面に取付られている。このとき、両者のネジ取付位置を共通とすることで、キャスター9と台足10の取付位置を簡単に取り替えることが可能となっている。
また、キャビネット1の側板11、裏板8は、床面近くまで伸びて、はかま部を形成しており、キャスター1及び台足10を隠蔽し意匠性を向上させると共に、使用者が誤って足や指などを挟み込んでしまうことを防止する効果を持っている
【0020】
図4にキャビネット1の側面図を示す。キャビネット1の側板11には埋め込み式の取っ手12が取り付けられている。この際、取っ手12は収納物が外部から見えないように、完全な貫通加工とせずに、半埋め込み式としている。また、この取っ手12を半埋め込み式とすることでキャビネット1からの突出寸法を最小限に抑えることが可能となり、使用時にトイレルームの壁面や、便器などと干渉する恐れがない。
また、この取っ手12は取替え可能な構成となっており、両側面に取っ手12を取り付けることも可能であるが、片方の面には目隠し部材13を取り付けて、片側取っ手とすることも可能となっている。
【0021】
図5にキャビネット1の使用状態を示す。通常は図5(a)に示すように開口部2をトイレルームの壁面に、裏板8を使用者の方向にむけて、手洗器下や便器側方に収めておくことで狭いトイレルーム内においても使用者の邪魔になることがない。
物品の出し入れを行う際には、使用者はキャビネット1は台足10側の取っ手12を掴んで持ち上げることで、キャスター9によってのみ床面と接触する状態となり、回転・摺動させることが可能となる。つまり、使用者は台足10側の取っ手12を掴んで持ち上げながら、回転・摺動させることによって開口部2を使用者側に露呈させ、物品の収納を行う。
【0022】
このとき、台足10を備えることによって、物品の収納時にキャビネット1が不意に移動することを防止でき、作業の効率が向上している。また、台足10によってのみキャビネット1が支持されているものと比較して、キャビネット1全体を持ち上げる必要がなく、小さい力で使用位置まで移動させることが可能となっている。
【0023】
通常のトイレルームでは左勝手と右勝手が存在し、手洗器が便器の左右どちら側に取り付けられるかは、トイレルームの環境によって異なる。
本発明においれは、キャスター9と台足10をそれぞれ互いに位置を入替えて装着することが出来る構成としているため、左右勝手のどちらにも対応できるキャビネットとなっている。また、キャスター9と台足10はそれぞれネジ固定されており、特別な工具を用いずとも、一般的な使用者でも取り替えることが可能となっているため、使用者は気分によってトイレルーム内におけるキャビネット1の配置を換えた際にも、使いやすい方向に取り替えることが可能である。
【0024】
また、このときにキャスター9が車輪が固定されており、一方向にのみ摺動可能なタイプとすることでキャビネット1の安定性が向上する。車輪が回転するタイプのキャスターを採用した場合、両方の車輪がキャビネット1の内側方向へ回転してしまうと、キャビネット1の重量を支える点がキャビネット1の中心方向に近づいてしまい、重心が高くなることによって、転倒する恐れがあるからである。
また、キャスター9の車輪が固定されていることによって、キャビネット1を移動させる際に蛇行することも防止できる。
【0025】
また、同様に側板11に取り付けられる取っ手12も取替えが可能な構成となっていることから、台足10を取り付けた側の側板11にのみ取っ手12を取り付け、キャスター9を取り付けた側の側板11には目隠し部材13を取り付けることによって、使用者が誤ってキャスター9側の側面を持ち上げてしまうことを防ぐことができる。
【0026】
以上、本発明の実施例について図を用いて説明したが、本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において適宜設計変更することが出来る。
例えば、実施例ではキャビネットに台足を二つ設けたが、三つ以上でも問題なく、幅の広いひとつであってもよい。キャビネット内部の収納についても、全て固定式の棚であってもよいし、引き出しなどを設けることも出来る。
【符号の説明】
【0027】
1…キャビネット
2…開口部
3…天板
4…縦仕切り
5…棚板
6…掃除ブラシ
7…収納容器
8…裏板
9…キャスター
10…台足
11…側板
12…取っ手
13…目隠し部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トイレ空間で用いられる収納用キャビネットであって、前記キャビネットは長辺と短辺を有する上面視長方形状をなし、長辺方向側面の一方に収納物を出し入れする開口部を有し、開口部と相対する側面は板部材によって覆われており、前記キャビネットの底部のうち、片方の短辺側に台足を、逆の短辺側にはキャスターを、前記キャビネットの短辺方向側面のうち、少なくとも前記台足を供える短辺方向側面に取っ手を備えていることを特徴とするトイレルーム用キャビネット。
【請求項2】
前記キャスターは、車輪の回動を抑制された固定式キャスターであることを特徴とする請求項1に記載のトイレルーム用キャビネット。
【請求項3】
前記キャスターと、前記台足はそれぞれ着脱可能であり、両者の取り付け位置を取り替えることが可能であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のトイレルーム用キャビネット。
【請求項4】
前記取っ手は着脱可能に構成され、前記台足が取り付けられる短辺方向の側面に取っ手を取り付け、前記取っ手を相対する側面には目隠し部材を取り付けることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のトイレルーム用キャビネット。
【請求項5】
前記取っ手は埋め込み式であり、かつ側板を貫通していないことを特徴とする請求項4に記載のトイレルーム用キャビネット。
【請求項6】
前記キャビネット底面に四方を囲むはかま部を設けたことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のトイレルーム用キャビネット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−4808(P2011−4808A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−148907(P2009−148907)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】