説明

キャビン空気コンプレッサ装置およびその冷却方法

【課題】航空機の環境制御システムにおけるキャビン空気コンプレッサ(CAC)モータ28の冷却性を改善する。
【解決手段】キャビン空気コンプレッサ装置は、遠心型コンプレッサであるキャビン空気コンプレッサ(CAC)12と、CACシャフト30を介して接続されたCACモータ28と、を含む。ラムファン入口21との間の圧力差によって、ベアリング40を冷却するためのベアリング冷却流42と、ステータ巻線38を冷却するためのモータ冷却流44と、がCACモータ28を横切って流れる。出口チャネル60には、CACロータ62に固定された複数のブロワブレード70からなるブロワ68が配置されており、CAC12の運転に伴って、該ブロワ68が冷却流を付勢する。これにより、冷却流の流量が増加し、CACモータ28の冷却が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、航空機の環境制御システムに関し、より詳しくは、航空機の環境制御システムにおけるキャビン空気コンプレッサ用モータの冷却に関する。
【背景技術】
【0002】
環境制御システム(ECS)は、種々の形式の航空機においていくつかの目的のために用いられ、例えば、航空機の冷却システム内で用いられる。例えば、環境制御システムの構成要素は、航空機の種々の潤滑システムや電気システムから熱を除去したり、航空機のキャビン空気を調和するために用いられる。このようなキャビン空気調和装置は、1つあるいは複数のキャビン空気コンプレッサ(CAC)を含み、外部空気源あるいはラム空気システムからシステムに流入してくる空気をこのコンプレッサが圧縮する。圧縮された空気は、所望の温度とするために環境制御システムへ供給され、さらに航空機キャビンへ供給される。キャビンを通過した後に、この空気は、通常は外部へ排出される。キャビン空気コンプレッサは、一般に、空気冷却型電気モータによって駆動され、このモータは、通常、ラム空気システムによって引き出された冷却空気の流れによって冷却される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような冷却空気の流れ、ひいては電気モータの性能ならびにキャビン空気コンプレッサの性能は、一般に、キャビン空気コンプレッサの入口からラム空気システムへの圧力低下によって制限されてしまう。つまり、このような制限によって、キャビン空気コンプレッサの性能が低減する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一つの態様によれば、本発明に係るキャビン空気コンプレッサ装置は、コンプレッサ入口に配置されたキャビン空気コンプレッサと、このキャビン空気コンプレッサと機能的に接続されたキャビン空気コンプレッサモータと、を備える。少なくとも1つの冷却流入口が上記キャビン空気コンプレッサモータの第1の端部に配置されており、この第1の端部は、上記キャビン空気コンプレッサが位置する第2の端部とは実質的に反対側となる。上記冷却流入口は、上記キャビン空気コンプレッサモータを横切って冷却流を案内するように構成されている。また、ブロワが上記キャビン空気コンプレッサに機能的に接続されており、このブロワは、キャビン空気コンプレッサモータを横切って流れてきた冷却流を冷却流出口部へ向けて付勢し、これにより、キャビン空気コンプレッサモータを横切って流れる空気流を増加させる。
【0005】
本発明の他の一つの態様によれば、本発明に係るキャビン空気コンプレッサ装置の冷却方法は、コンプレッサ入口に配置されるキャビン空気コンプレッサと、該キャビン空気コンプレッサに機能的に接続されるキャビン空気コンプレッサモータと、を提供することを含む。キャビン空気コンプレッサが位置する第2の端部とは反対側となるキャビン空気コンプレッサモータの第1の端部へ向けてコンプレッサ入口から冷却流が付勢される。冷却流は、キャビン空気コンプレッサモータを横切るように第1の端部から第2の端部へと案内され、これにより、冷却流を介してキャビン空気コンプレッサモータから熱エネルギが除去される。冷却流は、キャビン空気コンプレッサに機能的に接続されたブロワを横切って流れ、これによって冷却流が冷却流出口部へ向けて付勢される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】航空機の環境制御システムの一部を示す構成説明図。
【図2】この発明に係るキャビン空気コンプレッサ装置の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1は、航空機の環境制御システム(以下、ECSと略記する)10の要部を示す構成説明図である。このECS10は、1つあるいは複数のキャビン空気コンプレッサ(以下、CACと略記する)12を含み、このCAC12は、いくつかの例では、遠心型コンプレッサである。外部空気流14あるいは他の空気源からの空気が、コンプレッサ入口16においてCAC12内に流入する。CAC12は、この空気流14を圧縮し、この空気流14を熱交換器入口20(これはいくつかの例ではラム空気システム22の一部である)およびエバポレータ24へと圧送し、さらに、航空機キャビン26へと供給する。CAC12の各々は、CACシャフト30を介してCAC12に機能的に接続されてなるCACモータ28によって駆動される。
【0008】
図2に示すように、CACモータ28は電気モータであり、CACシャフト30上に設けられた回転可能なロータ32と、このロータ32の外周側に配置された複数個のステータ巻線38を有するステータ36と、から構成されている。CACモータ28は、さらに、CACシャフト30を支持するように配置された1つあるいは複数のベアリング40を備えている。CACモータ28の過熱、特にステータ巻線38およびベアリング40の過熱を防止するために、CACモータ28を横切るように冷却流が引き込まれる。この冷却流は、基本的に、コンプレッサ入口16からラム空気システム22例えばラムファン入口21の間の圧力低下によって駆動される。いくつかの例においては、図2に例示するように、冷却流として、ベアリング冷却流42とモータ冷却流44とを含む。ベアリング冷却流42は、ベアリング冷却入口46を介して供給される。このベアリング冷却入口46は、CACモータ28の第1の端部48に位置し、これとは反対側となる第2の端部50にCAC12が配置されている。ベアリング冷却流42は、第1の端部48に位置するスラストベアリング52を横切って進み、かつCACシャフト30の第1の端部48側ないし第2の端部50側に位置するシャフトベアリング54を横切って進み、これらのスラストベアリング52やシャフトベアリング54から熱エネルギを除去する。このベアリング冷却流42は、冷却流出口56においてCACモータ28から出る。いくつかの例においては、上記冷却流出口56は、CACモータ28とCAC12との間における開口部として構成され、冷却流出口部を提供している。いくつかの例においては、CACモータ28は、ベアリング冷却流42を囲むシュラウド58を有しており、このシュラウド58がベアリング冷却流42をCACシャフト30へ向かって内周側へ案内し、冷却流出口56へと導く。ベアリング冷却流42は、冷却流出口56を通過した後、シュラウド58とCACロータ62との間に構成された出口チャネル60を通して、実質的に半径方向外側へ進む。そして、ベアリング冷却流42は、モータ出口64における冷却流出口部へ案内され、例えばラムファン入口21へと向かう。
【0009】
モータ冷却流44は、コンプレッサ入口16から引き出され、モータ冷却入口66および冷却管路67を介して第1の端部48においてCACモータ28内へ流入する。モータ冷却流44は、実質的に第1の端部48から第2の端部50へとCACモータ28内を通して流れ、CACモータ28のステータ巻線38や他の構成要素から熱エネルギを除去する。その後、このモータ冷却流44は、冷却流出口56、出口チャネル60およびモータ出口64へと進み、例えばラムファン入口21へと向かう。
【0010】
出口チャネル60にはブロワ68が配置されており、ベアリング冷却流42およびモータ冷却流44を、該出口チャネル60を通して外周側へ付勢している。このブロワ68は、CACロータ62に固定された複数のブロワブレード70を、出口チャネル60内に備えている。いくつかの例においては、ブロワ68のロータは遠心型ロータである。ブロワブレード70はCACロータ62に固定されているので、CAC12の作動中は、ブロワブレード70はCACシャフト30を中心としてCACロータ62とともに回転し、ベアリング冷却流42およびモータ冷却流44を出口チャネル60を通して付勢する。このようにブロワ68をCAC12内に備えることで、コンプレッサ入口16とラムファン入口21との間の圧力差が増加し、CACモータ28を横切って流れるベアリング冷却流42およびモータ冷却流44の質量流量が増加する。そして、このように圧力差および質量流量が増加することにより、CACモータ28の冷却が向上し、さらにはCAC12およびECS10の性能が向上する。
【0011】
以上、この発明の一実施例を説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンプレッサ入口に配置されたキャビン空気コンプレッサと、
このキャビン空気コンプレッサと機能的に接続されたキャビン空気コンプレッサモータと、
上記キャビン空気コンプレッサが位置する第2の端部とは実質的に反対側となる上記キャビン空気コンプレッサモータの第1の端部に配置され、かつ該キャビン空気コンプレッサモータを横切って冷却流を案内するように構成された少なくとも1つの冷却流入口と、
上記キャビン空気コンプレッサに機能的に接続され、キャビン空気コンプレッサモータを横切って流れてきた冷却流を冷却流出口部へ向けて付勢し、これにより、キャビン空気コンプレッサモータを横切って流れる空気流を増加させるように構成されたブロワと、
を備えたことを特徴とするキャビン空気コンプレッサ装置。
【請求項2】
上記ブロワは、キャビン空気コンプレッサロータに固定された複数のブロワブレードを有することを特徴とする請求項1に記載のキャビン空気コンプレッサ装置。
【請求項3】
上記複数のブロワブレードは、上記キャビン空気コンプレッサロータと上記キャビン空気コンプレッサモータとで画成される出口チャネルを、少なくとも部分的に横切って延びていることを特徴とする請求項2に記載のキャビン空気コンプレッサ装置。
【請求項4】
上記キャビン空気コンプレッサロータは遠心型ロータであることを特徴とする請求項3に記載のキャビン空気コンプレッサ装置。
【請求項5】
冷却流を冷却流出口部へ向けて案内するために、上記第2の端部に配置されたシュラウドをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のキャビン空気コンプレッサ装置。
【請求項6】
上記冷却流入口として2つ以上の冷却流入口を有することを特徴とする請求項1に記載のキャビン空気コンプレッサ装置。
【請求項7】
第1の冷却流入口が、冷却流の少なくとも一部を、上記キャビン空気コンプレッサモータの1つあるいは複数のベアリングへ向けて案内することを特徴とする請求項6に記載のキャビン空気コンプレッサ装置。
【請求項8】
第2の冷却流入口が、冷却流の少なくとも一部を、上記キャビン空気コンプレッサモータのステータ巻線へ向けて案内することを特徴とする請求項6に記載のキャビン空気コンプレッサ装置。
【請求項9】
上記キャビン空気コンプレッサはシャフトを介して上記キャビン空気コンプレッサモータに機能的に接続されていることを特徴とする請求項1に記載のキャビン空気コンプレッサ装置。
【請求項10】
少なくとも1つの冷却流入口は、冷却流の少なくとも一部を、上記キャビン空気コンプレッサモータへ向けて案内するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のキャビン空気コンプレッサ装置。
【請求項11】
上記冷却流出口部は、キャビン空気コンプレッサモータからの冷却流をラムファン入口へ向けて案内するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のキャビン空気コンプレッサ装置。
【請求項12】
コンプレッサ入口に配置されるキャビン空気コンプレッサおよび該キャビン空気コンプレッサに機能的に接続されるキャビン空気コンプレッサモータを提供し、
キャビン空気コンプレッサが位置する第2の端部とは反対側となるキャビン空気コンプレッサモータの第1の端部へ向けてコンプレッサ入口から冷却流を付勢し、
キャビン空気コンプレッサモータを横切るように第1の端部から第2の端部へと冷却流を案内し、この冷却流を介してキャビン空気コンプレッサモータから熱エネルギを除去し、
キャビン空気コンプレッサに機能的に接続されたブロワを横切って冷却流を流し、これによって冷却流を冷却流出口部へ向けて付勢する、
ことを特徴とするキャビン空気コンプレッサ装置の冷却方法。
【請求項13】
上記のブロワを横切って冷却流を流すことは、複数のブロワブレードを横切って冷却流を流すことからなり、上記のブロワブレードは、キャビン空気コンプレッサロータに固定され、かつ上記キャビン空気コンプレッサロータと上記キャビン空気コンプレッサモータとで画成される出口チャネルを、少なくとも部分的に横切って延びていることを特徴とする請求項12に記載のキャビン空気コンプレッサ装置の冷却方法。
【請求項14】
さらに、シュラウドを介して冷却流を流すことを含み、上記シュラウドは、冷却流を冷却流出口部へ向けて導くように第2の端部に配置されていることを特徴とする請求項12に記載のキャビン空気コンプレッサ装置の冷却方法。
【請求項15】
冷却流の少なくとも第1の部分を、第1の冷却入口からキャビン空気コンプレッサモータの1つあるいは複数のベアリングへ向けて導く、ことをさらに含む請求項12に記載のキャビン空気コンプレッサ装置の冷却方法。
【請求項16】
冷却流の少なくとも第2の部分を、第2の冷却入口からキャビン空気コンプレッサモータのステータ巻線へ向けて導く、ことをさらに含む請求項12に記載のキャビン空気コンプレッサ装置の冷却方法。
【請求項17】
冷却流の少なくとも一部をコンプレッサ入口からキャビン空気コンプレッサモータへ導くことをさらに含む請求項12に記載のキャビン空気コンプレッサ装置の冷却方法。
【請求項18】
キャビン空気コンプレッサモータからの冷却流をラムファン入口へ向けて案内することをさらに含む請求項12に記載のキャビン空気コンプレッサ装置の冷却方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−20728(P2012−20728A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149630(P2011−149630)
【出願日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【出願人】(500107762)ハミルトン・サンドストランド・コーポレイション (165)
【氏名又は名称原語表記】HAMILTON SUNDSTRAND CORPORATION
【住所又は居所原語表記】One Hamilton Road, Windsor Locks, CT 06096−1010, U.S.A.