説明

キャリアシート

【課題】 高湿度雰囲気中でも穿孔不良の少ない版を作成できるキャリアシートを提供する。
【解決手段】赤外線照射により感熱製版する際に原稿と感熱フィルムを積層した状態で挟んで使用するためのキャリアシートであって、透湿性シート(1)とそれに連接して重ね合わされた透明シート(1)とからなるキャリアシート。透湿性シートは、例えば、単層または複数層の多孔性シートを備えて構成される。多孔性シートは、さらに、裏打ちシートを備えてよく、この場合、多孔性シートが透明シート側に配置される。裏打ちシートは吸湿性のものが好ましい。多孔性シートは紗、紙、または、スポンジ等の連続発泡体であってよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿と感熱フィルムとを積層した状態で、赤外線製版機を用いて搬送させながら該感熱フィルムのほぼ全体に赤外線を照射して原稿に対応した穿孔を施すことにより製版する際に使用するキャリアシートに関する。
【背景技術】
【0002】
感熱フィルムを赤外線照射により製版してスクリーン印刷用または孔版印刷用の版を作成する場合、3M社製TRANSPARENCY MAKER(商品名)のように、筐体中に、感熱フィルムを搬送するための搬送装置と、搬送中の感熱フィルムに赤外線を照射するための赤外線ランプとを備えた製版装置が使用される。製版に際しては、鉛筆や顔料インクを含有するペンで手書された原稿または静電式複写機やレーザービームプリンタで印刷されたトナー原稿の印字面を感熱フィルムの表面に重ね合わせ、この積層物を製版装置に通す必要がある。その際、上記積層物を、透明な2枚のプラスチックシートからなるキャリアシートの間に挟み、上記製版装置の搬送装置に通すことが従来から一般的に行われている。このキャリアシートは、製版装置における原稿の搬送性を高めるためだけでなく、原稿が複数の原稿をコラージュのように組み合わされたものである場合にも有用である。
【0003】
しかしながら、キャリアシートを用いる場合、作業環境中の湿度が高いと、赤外線照射による熱で、原稿の用紙に含まれた水分がキャリアシートの中で水蒸気となって発生し、その結果、原稿と感熱フィルムとの密着性を低下させ、フィルムに十分な熱が加わらなくなり、製版時に原稿に対応した箇所に十分な穿孔が形成されない場合があり、特に、原稿の塗りつぶし部分、すなわち、ベタ部分で穿孔不良が顕著に現れていた。
【0004】
このような穿孔不良を防止するためには、原稿の用紙に吸湿しにくい紙を使用することも考えられる。しかし、原稿の用紙の種類は、原稿作成手段となるレーザービームプリンタや複写機等との相性が優先されることが多いため、製版には多種多様の原稿を使用できるようにする方が望ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記の従来のキャリアシートの欠点を解消し、高湿度雰囲気中でも穿孔不良の少ない版を作成できるキャリアシートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記目的の下に鋭意研究した結果、従来のキャリアシートのプラスチックシートの一方を透湿性シートから構成することにより上記欠点が解消されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明によれば、赤外線照射により感熱製版する際に原稿と感熱フィルムを積層した状態で挟んで使用するためのキャリアシートであって、透湿性シートとそれに連接して重ね合わされた透明シートとからなるキャリアシートが提供される。
【0008】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記透湿性シートは、単層または複数層の多孔性シートを備えてなる。該透湿性シートは、さらに前記多孔性シートに重ね合わされた裏打ちシートを備えていてもよく、この場合、該多孔性シートは前記透明シート側に配置される。別法として、前記透湿性シートは、単層または複数層の多孔性シートのみから構成されてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、キャリアシートを、透湿性シートとそれに連接して重ね合わされた透明シートとから構成したので、原稿の用紙に含まれた水分がキャリアシートの中で水蒸気となって発生した場合でも、その水蒸気は透湿性シートを通過して外方に逃がされるので、原稿と感熱フィルムとの密着性を低下させることが無く、穿孔不良を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本発明を更に詳細に説明する。
図1に示すように、本発明のキャリアシートは、透湿性シート1とそれに連接して重ね合わされる透明シート2とを少なくとも備えてなる。
【0011】
透湿性シートは、水蒸気を吸収して外部に透過または内部に浸透させる性質を備え、かつ、製版装置の一対の搬送ローラ間に挟まれて搬送され得る可撓性、及び、その際に皺が発生しない剛性を備える限り特に限定されるものではないが、水蒸気を吸収または透過させる多数の細孔を備えた多孔性シートが好ましい。
【0012】
多孔性シートの好適な例としては、紗、薄葉紙や普通紙等の紙の他、スポンジ等の連続発泡体が挙げられる。このうち、紗は、発生した水蒸気を吸収するとともにその横方向及び縦方向に水蒸気を逃がすので、穿孔不良を有効に防止できるので好ましい。スポンジ等の連続発泡体も、その細孔に水蒸気を吸収して内部に浸透または外部に透過させるため、穿孔不良を有効に防止できる。紗としては、例えば、ポリエステル紗、ナイロン紗、ステンレスワイヤー紗などが使用でき、30メッシュ〜300メッシュのものが好ましい。このうち、透明シートと連接させる場合の加工性や透湿性の点から、ポリエステル紗、ナイロン紗などの合成繊維製の紗が好ましい。
【0013】
透湿性シートは、単層の多孔性シートから構成されてもよく、または、重ね合わされた複数層の多孔性シートから構成されてもよい。複数層の多孔性シートは、同一種類の多孔性シートを重ね合わせたものであっても、異なる種類の多孔性シートを重ね合わせたものであってもよいが、透湿性の点から、最内層、すなわち、透明シートに面する層は紗で構成することが好ましい。
【0014】
また、透湿性シートは、単層または複数層の多孔性シートに重ね合わされた裏打ちシートを備えていてもよい。この場合、該多孔性シートは透明シート側に配置され、換言すれば、裏打ちシートは、最外層、すなわち、透明シートとは反対側の面に配置される。裏打ちシートは、柔軟な多孔性シートのみでは製版装置で搬送し得るに十分な剛性が確保できない場合に、透湿性シートの剛性を強化してキャリアシートの搬送性を確保するために有用である。裏打ちシートは、吸湿性のシートであっても、非吸湿性のシートであってもよく、また、吸湿性のシートと非吸湿性のシートを重ね合わせたものであってもよく、その場合は、吸湿性のシートを透湿性シート側に配置することが好ましい。裏打ちシートとしては、例えば、紙やプラスチックシートを使用することができる。
【0015】
透明シートは、赤外線を透過させる性質を備えるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、透明プラスチックシートが挙げられる。透明プラスチックシートとしては、例えば、軟質ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、ポリエーテル、ポリスチレン、ナイロン、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリカーボネート、ゴム等のシートが挙げられる。
【0016】
本発明のキャリアシートは、透湿性シートと透明シートとが連接されてなる。図1の例では、透湿性シート1と透明シート2の両者が一辺で連接されているが、これに限定されるものではなく、例えば、クリアホルダーのように両者が隣り合う2辺で連接されていてもよい。透湿性シート1と透明シート2の連接方法は、常法に従えばよく、例えば、両者がプラスチック製である場合は、熱接着などで連接することができる。
【0017】
本発明のキャリアシートは、公知のキャリアシートと同様の方法で使用することができる。すなわち、原稿の印字面の上に感熱フィルムを積層し、この積層物をキャリアシートの透明シートと透湿性シートとの間に挟みこむ。この時、原稿が透湿性シート側に位置し、感熱フィルムが透明フィルム側に位置するようにする。そして、キャリアシートを製版装置に入れて搬送しながら赤外線ランプをキャリアシートの透明フィルムに照射すると、原稿の印字面から発生した熱により、感熱フィルムが穿孔され、製版が完了する。この時、原稿から水蒸気が発生したとしても、水蒸気は透湿性シートに吸収されるため、原稿と感熱フィルムの密着性が損なわれることはない。その後、キャリアシートから上記積層物を取り出し、原稿と感熱フィルムを分離することにより、製版された感熱フィルムが得られる。この感熱フィルムを版として使用し、スクリーン印刷機または孔版印刷機で印刷を行うことができる。
【0018】
感熱フィルムとしては、公知のものを使用することができ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリカーボネート、エチレン−ビニルアルコール共重合体、アクリル樹脂、シリコーン樹脂等の熱可塑性樹脂フィルムが用いられる。熱可塑性樹脂フィルムの厚さは、通常、0.5〜20μm、好ましくは1〜15μmの範囲とされる。感熱フィルムは、公知の感熱孔版原紙のように、紗や薄葉紙のような多孔性支持体と積層されたものであってもよい。
【実施例】
【0019】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0020】
実施例1
図2に示すように、厚さ130μmのポリエチレンテレフタレート(PET)製シート12に60メッシュのポリエステル紗11を積層して透湿性シート1を構成した。そして、透明シート2として厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)製透明シートを用い、一辺に沿って連接してキャリアシートを作成した。
【0021】
そして、キャリアシートの透明シート2を開き、紗11の上に原稿及び感熱孔版原紙(理想スクリーンマスター100S:商品名、理想科学工業株式会社製)を順に重ねた後、透明シート2を閉じて、原稿及び感熱孔版原紙をキャリアシートに挟み込んだ。この時、原稿として、レーザービームプリンタで出力した原稿を用い、また、原稿の印刷面を感熱孔版原紙の感熱フィルム面に向けて配置した。
【0022】
そして、このキャリアシートを高温高湿下(温度35℃、湿度60%)にて、赤外線製版装置(Master/Transparency Maker 9750:商品名、3M社製)に挿入し、キャリアシートを搬送しつつ透明シート2側から赤外線を照射して製版を行った。
【0023】
製版された感熱孔版原紙を用い、スクリーン印刷機で印刷を行ったところ、感熱孔版原紙の穿孔不良が少なく、ベタ部分の白抜けがない印刷画像が得られた。
【0024】
実施例2
図3に示すように、ポリエチレンテレフタレート(PET)製シート12とポリエステル紗11の間に上質紙13を積層して透湿性シート1を構成した以外、実施例1と同様に製版及び印刷を行った。その結果、感熱孔版原紙の穿孔不良が少なく、ベタ部分の白抜けがない印刷画像が得られた。
【0025】
実施例3
図4に示すように、ポリエステル紗11を2層にした以外、実施例1と同様に製版及び印刷を行った。その結果、感熱孔版原紙の穿孔不良が少なく、ベタ部分の白抜けがない印刷画像が得られた。
【0026】
実施例4
図5に示すように、ポリエステル紗11を2層にした以外、実施例2と同様に製版及び印刷を行った。その結果、感熱孔版原紙の穿孔不良が少なく、ベタ部分の白抜けがない印刷画像が得られた。
【0027】
実施例5
図6に示すように、200メッシュのポリエステル紗11のみから透湿性シート1を構成した以外、実施例1と同様に製版及び印刷を行った。その結果、ベタ部分の白抜けが少々見られるが下記比較例1よりは白抜けの少ない印刷画像が得られた。
【0028】
比較例
図7に示すように、ポリエステル紗11を使用しない以外、実施例1と同様に製版及び印刷を行った。その結果、ベタ部分の白抜けが多い印刷画像が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明のキャリアシートは、赤外線照射により感熱フィルムを穿孔する際に使用することができ、例えば、スクリーン印刷または孔版印刷用の版を作成するのに利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明のキャリアシートを概略的に示す斜視図である。
【図2】実施例1で使用したキャリアシートを概略的に示す側面図である。
【図3】実施例2で使用したキャリアシートを概略的に示す側面図である。
【図4】実施例3で使用したキャリアシートを概略的に示す側面図である。
【図5】実施例4で使用したキャリアシートを概略的に示す側面図である。
【図6】実施例5で使用したキャリアシートを概略的に示す側面図である。
【図7】比較例で使用したキャリアシートを概略的に示す側面図である。
【符号の説明】
【0031】
1…透湿性シート、2…透明シート、11…紗、12…PETシート、13…上質紙。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感熱製版する際に原稿と感熱フィルムを積層した状態で挟んで使用するためのキャリアシートであって、透湿性シートとそれに連接して重ね合わされた透明シートとからなるキャリアシート。
【請求項2】
前記透湿性シートが、単層または複数層の多孔性シートを備えてなる請求項1に記載のキャリアシート。
【請求項3】
前記透湿性シートが、さらに前記多孔性シートに重ね合わされた裏打ちシートを備えてなり、該多孔性シートが前記透明シート側に配置されている請求項2に記載のキャリアシート。
【請求項4】
前記透湿性シートが、単層または複数層の多孔性シートのみからなる請求項2に記載のキャリアシート。
【請求項5】
前記多孔性シートが紗である請求項2乃至4の何れか1項に記載のキャリアシート。
【請求項6】
前記多孔性シートが連続発泡体である請求項2乃至4の何れか1項に記載のキャリアシート。
【請求項7】
連続発泡体がスポンジである請求項6に記載のキャリアシート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−78888(P2009−78888A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−248513(P2007−248513)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】