説明

キャリーオーバー監視方法及び監視装置

【課題】 蒸気中のpH値及び電気伝導度とからキャリーオーバーの有無を監視できるキャリーオーバー監視方法及び監視装置を提供すること。
【解決手段】 蒸気の一部を熱交換器で復水した後、pH計及び電気伝導度計によってpH値及び電気伝導度を測定し、その測定値の変化によりキャリーオーバーを検出するので蒸気のキャリーオーバーの有無を監視することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラが発生する蒸気を他の機関に熱源として供給したり、食品等の生産物に直接噴霧して加工するための蒸気に関し、特に蒸気中に不純物が混入して他の機関や加工食品に悪影響を与えるキャリーオーバーを検出することのできるキャリーオーバー監視方法及び監視装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ボイラから発生する蒸気中にボイラ水そのものが混入する現象は、キャリーオーバーといわれており、従来から問題になっている。ボイラ水はアルカリ性に保たれているところからキャリーオーバーした蒸気は、アルカリ性を示すようになる。従来は、このキャリーオーバーの検出には、現場の知識としてpH計が使用されていた。
特に、小型貫流ボイラにおいては、最大給水量に対する循環水量の比が2以下であり、ボイラ効率が極めて高い故にキャリーオーバーが発生し易いという問題があった。
【0003】
類似技術が、特開2000−28107号公報等に開示されている。この発明は、ボイラ復水をイオン交換樹脂で脱塩処理した後、復水の電気伝導率を測定して、ボイラ用補給水として使用可能かどうかを監視する技術である。
【0004】
【特許文献1】特開2000−28107号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特開2000−28107号公報に開示された発明は、得られた復水が、単にボイラの補給水として使用可能か否かを判断するものであり、キャリーオーバーの存在を検出するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、蒸気の一部を熱交換器で復水した後、pH計及び電気伝導度計によってpH値及び電気伝導度を測定し、その測定値の変化によりキャリーオーバーを監視することを特徴としている。
【0007】
また、請求項2に記載の発明において、前記pH計及び電気伝導度計による測定を同時に行うことを特徴とするものである。
【0008】
また、請求項3に記載の発明において、蒸気の一部を熱交換器で復水した後、pH計及び電気伝導度計によってpH値及び電気伝導度を測定し、その測定値の変化によりキャリーオーバーを監視するキャリーオーバー監視装置であって、前記pH計と電気伝導度計とを一体的に構成したことを特徴とするキャリーオーバー監視装置に関するものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明は前記した構成からなるので、以下に説明するような効果を奏することができる。
【0010】
本発明では、蒸気の一部を熱交換器で復水した後、pH計及び電気伝導度計によってpH値及び電気伝導度を測定し、その測定値の変化によりキャリーオーバーを監視するので、キャリーオーバーの存在を正確に監視することができる。
【0011】
また、本発明において、前記pH計及び電気伝導度計による測定を同時に行うので、より確実にキャリーオーバーを検出することができる。
【0012】
また、本発明のキャリーオーバー監視装置は、前記pH計と電気伝導度計とが一体的に構成されたので、復水のpH変化、電気伝導度の変化を同時に測定して、正確にキャリーオーバーの存在を推定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の最良の形態、図面に基づいて本発明を詳細に説明する。図1は、本発明に係るキャリーオーバー監視方法の一例を示す構成図である。まず、図外の蒸気発生部(ボイラー)で発生した蒸気をボイラーヘッダー11を介して一部がスチームコロージョンモニタ12で蒸気の腐食性をモニターした後、熱交換器13で冷却して復水に戻す。その復水を電気伝導度計15及びpH計16にて測定し、それぞれの測定値の変化によりキャリーオーバーを監視するものである。測定は、連続的でもよいし、間欠的でもよい。本発明においては、キャリーオーバーの存在を電気伝導度計とpH計とを同時に用いて測定するため、より正確にキャリーオーバーを監視することができる。
【実施例1】
【0014】
次に、小型貫流ボイラを使って食品プロセス用蒸気を2年間発生させている場所で本発明を実施した。
発生蒸気の一部をバイパス管で取り出し、熱交換器を用いて冷却して復水に戻した後、堀場製作所製計測器U−22XPを用いて常時水質を計測した。
なお、この計器には、pH計、電気伝導度計が装備されている。計測を連続的に行った結果、pH値は大部分が4.99〜5.50(正常値)の範囲内であったが、時々それ以上の8.26〜10.0(異常値)を示す時があった。また、電気伝導度は、大部分が0〜20mS/m(正常値)の範囲内であったが、時々それ以上の40〜80mS/m(異常値)を示す時があった。両者のデータを突き合わせると、pH値と電気伝導度が同時に異常値を示す回数を見ると、1日平均4回の発生を見た。これにより、この小型貫流ボイラからのキャリーオーバーが1日平均4回発生していると推定された。そこで、ブロー量を若干増やして運転して、同様の測定を行ったところ、pH値と電気伝導度が同時に異常値を示す回数が1日平均1.5回に減少することが分かった。
【0015】
このように本発明では、pH値、電気伝導度を合わせて測定するので、キャリーオーバーをより正確に監視することができた。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明に係るキャリーオーバー監視方法の一例を示す構成図。
【符号の説明】
【0017】
11 ボイラーヘッダー
12 スチームコロージョンモニタ
13 熱交換器
15 電気伝導度計
16 pH計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気の一部を熱交換器で復水した後、pH計及び電気伝導度計によってpH値及び電気伝導度を測定し、
その測定値の変化によりキャリーオーバーを監視することを特徴とするキャリーオーバー監視方法。
【請求項2】
前記pH計及び電気伝導度計による測定を同時に行うことを特徴とする請求項1に記載のキャリーオーバー監視方法。
【請求項3】
蒸気の一部を熱交換器で復水した後、pH計及び電気伝導度計によってpH値及び電気伝導度を測定し、その測定値の変化によりキャリーオーバーを監視するキャリーオーバー監視装置であって、前記pH計と電気伝導度計とを一体的に構成したことを特徴とするキャリーオーバー監視装置。

【図1】
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【公開番号】特開2006−97963(P2006−97963A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−283958(P2004−283958)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)