説明

キャンディおよびその製造方法

【課題】キシリトールの冷涼感が格段に発揮された美味しいキャンディおよび、そのような美味しいキャンディを容易に工業的に連続的に製造できる方法の提供。
【解決手段】主成分のキシリトールに、ソルビトール、マルチトール、還元バラチノース、ラクチトールから選ばれる少なくとも1つを主成分として含み、平均分子量が152以上500以下であり、キシリトール1モルに対する混合モル比が固形分換算で0.02〜0.3である結晶化制御物質を混合してなる結晶化制御されたキシリトール結晶部2を公知のキャンディ部分3でサンドイッチ積層したキャンディ1により課題を解決できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャンディおよびその製造方法に関するものであり、さらに詳しくは結晶化制御物質を混合してキシリトールの結晶化を制御したキシリトール結晶部を備えたキャンディおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、キャンディの工業的な製造方法としては、加熱混合した軟質状態の組成物を切断したり型打ち抜きして冷却する型押成型方法と、流動性のある溶融混合状態の組成物を型に流し込み、そして冷却固化後に脱型する流し込み成型方法がある。
キャンディに異質の別の層を積層させる場合にも従来から種々の方法が提案されている。
型押成型方法を用いる場合は、事前に別の層を重ねておき、それを型押成型して異質の別の層を積層したキャンディが製造される。
一方、流し込み成型方法を用いる場合は、流動性のある溶融混合状態の複数の組成物を順次型に複数回数流し込み、そして冷却固化後に脱型することにより異質の別の層を積層したキャンディが製造される。
【0003】
近年、キシリトールは味質の良さに加えて、キシリトールは結晶性の糖質であるので、結晶の溶解熱で舐めている時に冷涼感が得られることや虫歯予防効果の点でキャンディ業界で注目されている原料であり、キシリトールを含有するキャンディも提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、キシリトールを多量に含むキャンディ組成物を用いた場合、それを一旦溶融させ、流動性のある間に組成物を型に流し込み冷却固化する際に、結晶性が強すぎ、結晶化速度が大きいため、粗い結晶が一気に生成し、粘度が上昇し、流動性がなくなり、そしてすぐに固化してしまうので、前記流し込み成型方法を用いる場合は、型に流し込むのが困難になり、加工性が悪いため最悪の場合は成型できなくなり、工業的にキャンディを生産するのが困難であるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−47222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、キシリトールの冷涼感は、例えば水の結晶である氷が融解・溶解する現象と同じく、結晶の溶解熱による吸熱作用に起因するものであるので、キリシトールの結晶が大きいほど吸熱作用が大きくなり、冷涼感が大きくなる。
【0007】
しかし、前述のようにキシリトールを多量に含むキャンディ組成物は結晶性が強く、結晶化速度が大きいため、流動性のある溶融物を冷却すると結晶が一気に生成し、粘度が上昇し、流動性がなくなり、そしてすぐに固化してしまい、流し込み成型などできなくなる問題を解決し、流し込み成型などが可能な流動性のある状態を維持しつつ、ゆっくり冷却するのと同じ効果をもたせて、結晶を大きく成長させる必要がある。
【0008】
本発明の第1の目的は、従来の問題を解決し、流し込み成型などが可能な流動性のある状態を維持しつつ流動性を安定化させ、成型して、ゆっくり冷却するのと同じ効果をもたせて、キシリトールの結晶を大きく成長させて固化させて結晶化制御されたキシリトール結晶部を備え、キシリトールの冷涼感が格段に発揮された美味しいキャンディを提供することであり、
本発明の第2の目的は、そのようなキシリトールの冷涼感が格段に発揮された美味しいキャンディを容易に工業的に連続的に製造できる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解消するための本発明の請求項1に記載の発明は、主成分のキシリトールに、ソルビトール、マルチトール、還元バラチノース、ラクチトールから選ばれる少なくとも1つを主成分として含む結晶化制御物質を混合してなる結晶化制御されたキシリトール結晶部を備え、前記結晶化制御物質の平均分子量が152以上500以下であり、キシリトール1モルに対する前記結晶化制御物質の混合モル比が固形分換算で0.02〜0.3であるキャンディである。
【0010】
本発明の請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のキャンディにおいて、主成分のキシリトールに、ソルビトール、マルチトール、還元バラチノース、ラクチトールから選ばれる少なくとも1つを主成分として含む結晶化制御物質を混合してなる結晶化制御された層状のキシリトール結晶部に層状の公知のキャンディ部分を積層して2層構造とするか、あるいは前記層状のキシリトール結晶部を中間層とし、層状の公知のキャンディ部分によってサンドイッチ積層して3層構造としたことを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項3に記載の発明は、主成分のキシリトールに、ソルビトール、マルチトール、還元バラチノース、ラクチトールから選ばれる少なくとも1つを主成分として含む結晶化制御物質を溶融混合後、型にデポジットして常温まで冷却しつつ結晶化制御して固化して、結晶部と非結晶部とを含むキシリトール結晶部を備えたキャンディを製造し、前記結晶化制御物質の平均分子量が152以上500以下であり、キシリトール1モルに対する前記結晶化制御物質の混合モル比が固形分換算で0.02〜0.3である、キャンディの製造方法である。
【0012】
本発明の請求項4に記載の発明は、公知のキャンディ組成物を溶融混合後、型にデポジットし、その上に主成分のキシリトールに、ソルビトール、マルチトール、還元バラチノース、ラクチトールから選ばれる少なくとも1つを主成分として含む結晶化制御物質を溶融混合後デポジットし、常温まで冷却しつつ結晶化制御して固化して、結晶部と非結晶部とを含むキシリトール結晶部を備えた2層構造のキャンディを製造するか、あるいは公知のキャンディ組成物を溶融混合後、型にデポジットし、その上に主成分のキシリトールに、ソルビトール、マルチトール、還元バラチノース、ラクチトールから選ばれる少なくとも1つを主成分として含む結晶化制御物質を溶融混合後デポジットし、さらにその上に公知のキャンディ組成物を溶融混合後デポジットし、常温まで冷却しつつ結晶化制御して固化して、結晶部と非結晶部とを含むキシリトール結晶部を備えた3層構造のキャンディを製造し、前記結晶化制御物質の平均分子量が152以上500以下であり、キシリトール1モルに対する前記結晶化制御物質の混合モル比が固形分換算で0.02〜0.3である、キャンディの製造方法である。
【0013】
本発明の請求項5に記載の発明は、請求項3又は4に記載のキャンディの製造方法において、前記結晶化制御物質を溶融混合した後の混合物を、型にデポジットするまで60〜85℃に保つことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1に記載のキャンディは、主成分のキシリトールに、ソルビトール、マルチトール、還元バラチノース、ラクチトールから選ばれる少なくとも1つを主成分として含む結晶化制御物質を混合してなる結晶化制御されたキシリトール結晶部を備え、前記結晶化制御物質の平均分子量が152以上500以下であり、キシリトール1モルに対する前記結晶化制御物質の混合モル比が固形分換算で0.02〜0.3であるキャンディであり、キシリトールを単純にキャンディ主体の糖質(たとえば還元麦芽糖水飴)に混合するだけでは、冷涼感に乏しく、商品価値が低く、またキシリトールのような糖質に香料や着色料を配合することは常識的であるが、キシリトールの結晶を大きく成長させることができないため、冷涼感に乏しく、商品価値が低いという従来の問題を解決し、かつ、キシリトールを主成分として含むキャンディ組成物の溶融物の冷却時の加工性の問題を解決して、キシリトールの結晶の進行を制御し、流し込み成型などが可能な流動性のある状態を維持しつつ流動性を安定化させ、成型して、ゆっくり冷却するのと同じ効果をもたせることが可能になり、その結果、キシリトールの結晶を大きく成長させることができ、キシリトールの冷涼感が格段に発揮された美味しいキャンディを提供できるという、顕著な効果を奏する。
【0015】
また、本発明の請求項1に記載の発明は、キシリトールの結晶化制御を確実に行うことができ、キシリトールを主成分として含むキャンディ組成物の溶融物の冷却時におけるキシリトールの結晶の進行を制御し、流し込み成型などが可能な流動性のある状態を維持しつつ流動性を確実に安定化させ、成型して、ゆっくり冷却するのと同じ効果をもたせることが可能になる上、取り扱い性がよく、入手が容易で安価であるという、さらなる顕著な効果を奏する。
【0016】
また、本発明の請求項1に記載の発明は、分子量500以上の分子量を有する糖質や糖アルコール類を含んでいても平均分子量が前記範囲内であればよいので前記結晶化制御物質の選択の範囲が広がる利点がある上、三糖類やオリゴ糖類に比較して、キシリトールの結晶化制御をより確実に行うことができるという、さらなる顕著な効果を奏する。
【0017】
本発明の請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のキャンディにおいて、主成分のキシリトールに、ソルビトール、マルチトール、還元バラチノース、ラクチトールから選ばれる少なくとも1つを主成分として含む結晶化制御物質を混合してなる結晶化制御された層状のキシリトール結晶部に層状の公知のキャンディ部分を積層して2層構造とするか、あるいは前記層状のキシリトール結晶部を中間層とし、層状の公知のキャンディ部分によってサンドイッチ積層して3層構造としたので、口腔内で舐めた時に層状のキシリトール結晶部が融解する吸熱作用により、キシリトールを単純に公知のキャンディに混合するだけでは得られないキシリトールの冷涼感が得られるとともに、積層した公知のキャンディ部分の美味しさも同時にあるいは舐め初めと終わりでは食感が異なるなど時間をおいて変化する美味しさを味わうことができ、また3層構造の場合は、少量のキシリトール結晶部で冷涼感が得られ、キャンディを舐めてゆくにつれて冷涼感の持続が可能であるというさらなる顕著な効果を奏する。
【0018】
本発明の請求項3に記載の発明は、主成分のキシリトールに、ソルビトール、マルチトール、還元バラチノース、ラクチトールから選ばれる少なくとも1つを主成分として含む結晶化制御物質を溶融混合後、型にデポジットして常温まで冷却しつつ結晶化制御して固化して、結晶部と非結晶部とを含むキシリトール結晶部を備えたキャンディを製造し、前記結晶化制御物質の平均分子量が152以上500以下であり、キシリトール1モルに対する前記結晶化制御物質の混合モル比が固形分換算で0.02〜0.3であるキャンディの製造方法であり、キシリトールの冷涼感が格段に発揮された美味しいキャンディを容易に工業的に連続的に製造できるという、顕著な効果を奏する。
【0019】
本発明の請求項4に記載の発明は、公知のキャンディ組成物を溶融混合後、型にデポジットし、その上に主成分のキシリトールに、ソルビトール、マルチトール、還元バラチノース、ラクチトールから選ばれる少なくとも1つを主成分として含む結晶化制御物質を溶融混合後デポジットし、常温まで冷却しつつ結晶化制御して固化して、結晶部と非結晶部とを含むキシリトール結晶部を備えた2層構造のキャンディを製造するか、あるいは公知のキャンディ組成物を溶融混合後、型にデポジットし、その上に主成分のキシリトールに、ソルビトール、マルチトール、還元バラチノース、ラクチトールから選ばれる少なくとも1つを主成分として含む結晶化制御物質を溶融混合後デポジットし、さらにその上に公知のキャンディ組成物を溶融混合後デポジットし、常温まで冷却しつつ結晶化制御して固化して、結晶部と非結晶部とを含むキシリトール結晶部を備えた3層構造のキャンディを製造し、前記結晶化制御物質の平均分子量が152以上500以下であり、キシリトール1モルに対する前記結晶化制御物質の混合モル比が固形分換算で0.02〜0.3である、キャンディの製造方法であり、口腔内で舐めた時に層状のキシリトール結晶部が融解する吸熱作用により、キシリトールを単純に公知のキャンディに混合するだけでは得られないキシリトールの冷涼感が格段に発揮されるとともに、積層した公知のキャンディ部分の美味しさも同時にあるいは舐め初めと終わりでは食感が異なるなど時間をおいて変化する美味しさを味わうことができる美味しいキャンディを容易に工業的に連続的に製造できるという、顕著な効果を奏する。
【0020】
本発明の請求項5に記載の発明は、請求項3又は4に記載のキャンディの製造方法において、前記結晶化制御物質を溶融混合した後の混合物を、型にデポジットするまで60〜85℃に保つようにしたため、結晶部分の割合が一定の範囲に維持され、任意の形に自由に成型できる流動性を長時間保持することができるというさらなる顕著な効果を奏する。なお、所定の成型を行い、成型後室温まで冷却すれば速やかに固化する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のキャンディの1例を模式的に説明する断面説明図である。
【図2】本発明のキャンディの他の例を模式的に説明する断面説明図である。
【図3】本発明のキャンディの他の例を模式的に説明する断面説明図である。
【図4】本発明のキャンディの他の例を模式的に説明する断面説明図である。
【図5】本発明のキャンディの他の例を模式的に説明する断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に本発明を、図を用いて実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明のキャンディの1例を模式的に説明する断面説明図である。
図1において、1は本発明のキャンディを示し、2は、主成分のキシリトールに、単糖類、二糖類およびそれらを還元した糖アルコール類から選ばれる少なくとも1つを主成分として含む結晶化制御物質を混合してなる結晶化制御された層状のキシリトール結晶部を示し、3は層状の公知のキャンディ部分を示し、層状のキシリトール結晶部2が対応する2つの層状の公知のキャンディ部分3の間にサンドイッチされている。
【0023】
図2は本発明のキャンディの他の例を模式的に説明する断面説明図である。
図2において、1Aは本発明のキャンディを示し、2は図1に示した結晶化制御された層状のキシリトール結晶部を示し、3は図1に示した層状の公知のキャンディ部分を示し、層状のキシリトール結晶部2が対応する層状の公知のキャンディ部分3に積層されている。
【0024】
図3は本発明のキャンディの他の例を模式的に説明する断面説明図である。
図3において、1Bは本発明のキャンディを示し、2は結晶化制御された球状のキシリトール結晶部を示し、3は2の球状のキシリトール結晶部を被覆する公知のキャンディ部分を示す。
【0025】
図4は本発明のキャンディの他の例を模式的に説明する断面説明図である。
図4において、1Cは本発明のキャンディを示し、2は結晶化制御された柱状のキシリトール結晶部を示し、3は2の結晶化制御された柱状のキシリトール結晶部の外周を被覆する筒状の公知のキャンディ部分を示す。
【0026】
図5は本発明のキャンディの他の例を模式的に説明する断面説明図である。
図5において、1Dは本発明のキャンディを示し、結晶化制御された楕円状のキシリトール結晶部2のみから形成されている。
【0027】
純粋なキシリトールの結晶の融点は94℃であり、この温度以下でキシリトールの結晶が生成する。融点以上に加熱したキシリトール溶融液をキャンディ金型に流し込み急冷すると結晶化は十分に進まずキシリトールの冷涼感は小さい。
【0028】
一方、加熱溶融したキシリトール組成物を金型に流し込み、ゆっくり冷却して結晶化させる方法もあるが、この方法は効率が悪く工業的には採用できない。
そこで本発明においては、ゆっくり冷却するのと同じ効果があるように、結晶化制御物質を混合して結晶化の温度を低下させ、結晶の急激な生成を抑制して予め部分的に結晶化させ、かつ流し込み液の温度も下げて金型温度に近づけると、ゆっくり冷却させるのと同様の効果が生じて、キシリトールの結晶を大きく成長させて固化させることができるようになり、キシリトールの冷涼感が格段に発揮された美味しいキャンディを提供できる。
【0029】
本発明で用いる結晶化制御物質は、前記のような結晶化の知見からキシリトールの結晶化温度を低下させること、例えば微粉末のキシリトールを用いてもその結晶化促進作用による全面的な結晶化による固化現象で加工性が悪化するのを防ぐ作用を持つ結晶化制御物質を用いることが望ましい。
一般に結晶化は、純粋な微粉末の同一物質を混合することで進行し易いので、キシリトール以外の均質混合できる別の物質を結晶化制御物質として主成分のキシリトールに混入することは結晶化の抑制に好ましく、キシリトール結晶の結晶化温度も低下させるので好ましく使用できる。
【0030】
本発明で用いる結晶化制御物質は、キシリトールと溶融時に均質に混合できるものであって、なおかつ添加量が少なくても効果の大きいものを用いることが望ましい。結晶化温度低下の程度については、結晶化制御物質の混入比率が大きい程、結晶化温度は低下するが、その効果は質量比率ではなく、モル数比率で決まることは物理化学でよく知られている知見である。即ち、同じ質量の物質を加えても、分子量の小さい物質になるほどモル数が大きくなり効果も大きい。
【0031】
そして結晶化し始め、部分的に固体状になったキシリトールなどの糖アルコールは、まだ結晶化していない液体状の糖質の中に分散するようになる、その状態がさらに進行すると急激な結晶化が進行し、流し込み液は粘度が急上昇し、連続的に流し込み成型することが困難となる。
【0032】
結晶化制御物質が存在すると、キシリトールの結晶化が進行するにつれて、結晶化制御物質は結晶には取り込まれ難いので、液体状態の糖質の中に存在する比率が高くなる。その状態では更に結晶ができにくくなるので、撹拌しながら温度を一定に保てば、結晶化は平衡状態となり、流動性のある状態が維持され、流動性が安定化され、成型可能な状態が維持され、成型して、ゆっくり冷却するのと同じ効果をもたせることが可能になる。
【0033】
流し込み成型法の場合、流し込み液を静置すると、結晶相互の結合が進み大きな結晶に成長し、流し込み液の粘度は上昇するので、常に撹拌しておくことが好ましい。結晶化したものは結晶部と非結晶部からなるが、同じ結晶比率であっても、小さな結晶が含まれる状態の方が流し込み液の粘度が低く、加工性がよい。
【0034】
部分的な結晶化を生じさせるには結晶化制御物質として結晶の核となる微粉末のキシリトールの添加も有効である。この場合、微粉末のキシリトールを添加しても、急激に結晶化が進行しないように、金型温度制御などを含む結晶化条件を制御しておくことも必要である。
【0035】
本発明で用いる結晶化制御物質は、キャンディとの複合であるので甘味を持った糖質が好ましく使用できる。
糖質としてキシリトールに加熱時に均質混合でき、分子量の小さい単糖類と二糖類が好ましい。
【0036】
本発明で用いる単糖類は炭素原子3個以上のポリヒドロキシアルデヒドまたはポリヒドロキシケトン誘導体であり、具体的には例えば、グルコース、フラクトース、エリトロース、キシロース、ソルボース、ガラクトース、その他異性化糖などを挙げることができ、これらは単独で使用することもできるが、2つ以上の混合物を使用することもできる。
単糖類として、ブドウ糖(グルコース)、果糖(フラクトース)、エリトロース、木糖(キシロース)から選ばれる少なくとも1つを用いると結晶化制御効果が高く、取り扱い性がよく、入手が容易で安価であるので好ましい。
【0037】
本発明で用いる二糖類は単糖が2個結合した形のポリヒドロキシアルデヒドまたはポリヒドロキシケトン誘導体であり、具体的には例えば、シュークロース、マルトース、ラクトース、パラチノース、その他異性化糖などを挙げることができ、これらは単独で使用することもできるが、2つ以上の混合物を使用することもできる。
二糖類としてブドウ糖と果糖が結合してできた砂糖(シュークロース)および麦芽糖(マルトース)、乳糖(ラクトース)、パラチノースから選ばれる少なくとも1つを用いると結晶化制御効果が高く、取り扱い性がよく、入手が容易で安価であるので好ましい。
【0038】
三糖類やオリゴ糖類単独では、分子量も大きく、加熱時の糖液粘度が高いことや、前述した結晶化温度の低下効果が低いことから望ましくない。
【0039】
本発明で用いる糖アルコールは糖類のアルデヒドやケトンのカルボニル基を還元(水素添加)して得られる鎖状多価アルコールであり、具体的には例えば、ソルビトール、エリスリトール、マンニトール、ガラクチトール、マルチトール、還元バラチノース、ラクチトールなどを挙げることができ、これらは単独で使用することもできるが、2つ以上の混合物を使用することができる。糖アルコール類も結晶化制御性が高く効果的である。
キシリトールも単糖類のキシロースを還元反応させた糖アルコールであり、砂糖並の甘味を保持しており、飲食で血糖値を上昇させ難いことや、虫歯の原因になり難いなどの特長があるので、本発明で使用できる。糖アルコール類は一般的に同様の特長が認められる。
【0040】
糖アルコールとしてはブドウ糖(グルコース)を還元反応したソルビトール、異性体としてのマンニトール、エリトロースを還元反応させたエリスリトールなどの単糖類を原料とする糖アルコールが本発明において効果的である。麦芽糖(マルトース)を還元反応した還元麦芽糖(マルチトール)、パラチノースを還元反応した還元バラチノース、乳糖(ラクトース)を還元反応したラクチトールなども本発明において効果的である。
【0041】
本発明で用いる単糖類、二糖類、糖アルコール類、キシリトールなどは、食品もしくは食品添加物として、厚生省告示の「食品、添加物等の規格基準」にその性状など規格が定められている。これらは固形物あるいは液状物(水溶液)が市販されているが、いずれも使用可能である。
【0042】
以上のように、本発明で用いる結晶化制御物質は、分子量の小さな単糖類やその糖アルコールがもっとも好ましいが、二糖類やその糖アルコールにおいても遜色のない効果が得られる。糖類と糖アルコールでは結晶化制御効果には差がないが、キシリトールが糖アルコールであるので、血糖値や虫歯への特長を製品に保持させたいことから糖アルコールの使用が好ましい。
【0043】
結晶化制御物質のキシリトールに対する混合モル比が0.5を越えるとキシリトールの結晶性が大幅に損なわれ、結晶化時間の増加や結晶化程度が悪く冷涼感が低下するなど、必要以上に多くすることによるメリットはほとんどなく、その意味でキシリトール1モルに対する本発明で用いる結晶化制御物質の混合モル比は特に限定されないが、結晶化制御物質の使用は出来るだけ少なく0.3以下0.02以上にすることが望ましい。0.02未満では結晶化制御が困難となる恐れがあり、0.3を超えても多くすることによるメリットはほとんどない。
【0044】
例えば、キシリトール1モルに対するモル比率で示すと、キシリトール(分子量152)とブトウ糖(グルコース、分子量164)の場合、モル比で0.02から0.2が好ましい。質量比では0.02から0.22となる。
この比率は他の糖類や糖アルコールでも同様の傾向を示す。したがって、マルチトールでは分子量が346であるので添加量は質量比でブトウ糖(グルコース)の約2倍量となり、0.05から0.45となる。
【0045】
本発明においては、単糖類や二糖類およびそれらを還元反応させた糖アルコールを部分的に含有する糖質である水飴類であっても、単糖類や二糖類およびその糖アルコール類が固形分換算で0.02から0.2のモル比率で存在すれば同様の効果が得られる。
たとえば、還元麦芽糖水飴ではマルチトールが主成分で含有率は75%以上であり、還元水飴ではマルチトール含有率が11%のものから65%まで含まれ、ソルビトールはいずれの場合も少なく、例えば3〜10%程度含まれるが、単糖類や二糖類およびその糖アルコール類の固形分換算での含有率と使用量でキシリトールの結晶化制御効果が決まる。
【0046】
本発明で用いる結晶化制御物質の平均分子量は特に限定されないが、単糖類や二糖類およびその糖アルコールであっても、分子の炭素数が多いものは糖液の粘度が高く、キシリトールの結晶化制御効果も低いので、152(キシリトール)以上500以下であることが好ましい。152未満では結晶化の制御に効果的な入手可能で安価な結晶化制御物質がなく、500を超えると多量の添加による加工性の悪化が生じる恐れがある。
本発明で用いる結晶化制御物質が、例え前記糖質や前記糖アルコール類以外の分子量500以上の分子量を有する糖質や糖アルコール類を含んでいても平均分子量が前記152以上500以下の範囲内であればよいので結晶化制御物質の選択の範囲が広がる利点がある上、三糖類やオリゴ糖類単独の場合に比較して、キシリトールの結晶化制御をより確実に行うことができる。
【0047】
キシリトールと結晶化制御物質以外の成分については、通常キャンディの生産に用いられるもの、たとえば香料、着色料、果汁エキス、乳製品、各種薬効成分など特に限定はないが、キシリトールの結晶化に影響を与えない範囲にとどめるべきである。
【0048】
本発明のキャンディを製造する方法は特に限定されるものではない。具体的には次のような方法を挙げることができる。
(1)前記各成分を加熱溶融し、溶融状態の成分に結晶化制御物質を投入し、キシリトールなどの結晶化を進めたり、あるいは溶融状態の成分に結晶化制御物質を投入し撹拌により微細結晶を析出させながらキシリトールなどの結晶化を進めた後、所定の成型を行い、冷却固化する。
(2)結晶化制御物質を含む前記各成分を加熱溶融し、得られた溶融液をキシリトールの融点以下でかつその流動性が維持される温度に保持して、キシリトールの一部又は大部分が結晶化した流動体とし、この流動体を所望の形状に成型し、得られた成型体を室温まで冷却する。
【0049】
(2)の方法で本発明のキャンディを製造するためには、まず、結晶化制御物質を含む前記各成分を、溶融状態にする。その場合、粉体状のキシリトールと結晶化制御物質を混合し、これを加熱溶融した後に残りの他の成分を添加混合してもよいし、粉体状のキシリトールに水溶液状の結晶化制御物質と適量の水を混合し加熱溶解した後、さらに加熱および減圧濃縮によって水分を蒸発させ、これに他の成分を添加混合してもよく、各成分が均一に混合されかつ溶融状態になっていればよい。
【0050】
次に溶融状態の組成物をキシリトールの融点以下まで冷却し、含有するキシリトールの一部あるいは大部分を結晶化させる。結晶を析出させる温度は、キシリトールの含有量に対する結晶化制御物質の種類や含有量の割合によってその最適値は異なるが、およそ60〜85℃の範囲が好適である。本発明のキャンディは含有するキシリトールの一部あるいは大部分を結晶化させた後、引き続きおよそ60〜85℃の温度を保つことによって、結晶部分の割合が一定の範囲に維持され、任意の形に自由に成型できる流動性を長時間保持することができる。所定の成型を行い、成型後室温まで冷却すれば速やかに固化する。
【0051】
本発明のキャンディの成型方法は特に限定されないが、含有するキシリトールの一部あるいは大部分を結晶化させた状態で、保温により十分な流動性を保持できることから、型に流し込むことにより成型する方式に非常に適している。その他の成型方法として、流し込み成型後の型押成型にも採用できる。
【実施例】
【0052】
次に実施例および比較例により本発明を詳しく説明するが、本発明の主旨を逸脱しない限りこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
キシリトール粉末90gに、ブトウ糖を5g混合し、120℃に加熱して溶融液とし、70℃まで冷却後、微粉末のキシリトールを5g加えてよく撹拌しながら、温度を70℃に保持した。この時の流し込み液の粘度は安定していた。この状態のブドウ糖のキシリトールに対するモル比は0.05である。
別に市販の還元麦芽糖水飴(マルチトール77質量%、三糖の糖アルコール13質量%、四糖の糖アルコール1質量%、五〜十糖以上の糖アルコール6.5質量%、ソルビトール2.5質量%、平均分子量426.83)に酸味料、香料、色素を加えた糖質を150℃まで加熱した溶融糖液を用意し、テフロン(登録商標)加工した金型に1g流し込み、その上に前述のキシリトール糖液を1g流し込んだ。さらに先に流し込んだ還元麦芽糖水飴の溶融糖液を1g流し込み、空冷冷却後に脱型して3層構造のキャンディを製造した。
このようにして製造した本発明のキャンディは、口中溶解中にも、キシリトールのみが先に溶解することなく、舐め終わるまで冷涼感を持続することができ、甘味も良好であった。
【0053】
(実施例2)
実施例1で用いたブトウ糖の代わりに実施例1で用いた還元麦芽糖水飴を使い同様の試験を実施した。
キシリトール90gに対して実施例1で用いた還元麦芽糖水飴固形分換算で10g加えた。微粉末のキシリトールも5g加えると還元麦芽糖水飴のキシリトールに対するモル比は0.05である。撹拌時の粘度も実施例1と同様に安定していた。
このようにして製造した本発明の3層構造のキャンディは、口中溶解中にも、キシリトールのみが先に溶解することなく、舐め終わるまで冷涼感を持続することができ、甘味も良好であった。
【0054】
(実施例3)
実施例1で用いたブトウ糖の代わりにマルチトールを使い同様の試験を実施した。
キシリトール85gに対してマルチトールを10g加えた。微粉末のキシリトールも5gも加えるとマルチトールのキシリトールに対するモル比は0.05である。撹拌時の粘度は実施例1に比べ若干高いが流し込み成型を行なうことが可能であった。
このようにして製造した本発明の3層構造のキャンディは、口中溶解中にも、キシリトールのみが先に溶解することなく、舐め終わるまで冷涼感を持続することができ、甘味も良好であった。
【0055】
(実施例4)
実施例1で用いたブトウ糖の代わりに還元パラチノースを使い同様の試験を実施した。
キシリトール85gに対して還元パラチノース10gを加えた。微粉末のキシリトールも5g加えると還元パラチノースのキシリトールに対するモル比は0.05である。流し込み液の粘度は実施例1に比べ若干高いが流し込み成型を行なうことが可能であった。
このようにして製造した本発明の3層構造のキャンディは、口中溶解中にも、キシリトールのみが先に溶解することなく、舐め終わるまで冷涼感を持続することができ、甘味も良好であった。
【0056】
(実施例5)
実施例1で用いたブトウ糖の代わりに還元水飴を使い同様の試験を実施した。用いた還元水飴は単糖類や多糖類の糖アルコールの混合物で各種のグレードのものがあるが、単糖類の糖アルコールが5%、二糖類の糖アルコールが65%、その他の糖アルコールが30%のものを使用した。
キシリトール86gに対して固形分換算で還元水飴14gを加えた。この還元水飴の平均分子量は497であるが、単糖類の糖アルコールと二糖類の糖アルコールの比率が70%であり、有効成分のモル比は微粉末のキシリトールも5gも加えると還元水飴のキシリトールに対するモル比は0.05である。流し込み液の粘度は高く、温度を5℃高めて、流し込み成型が可能であった。
このようにして製造した本発明の3層構造のキャンディは、口中溶解中にも、キシリトールのみが先に溶解することなく、舐め終わるまで冷涼感を持続することができ、甘味も良好であった。
【0057】
(比較例1)
キシリトール粉末100gのみで結晶化制御物質を加えることなく120℃に加熱し、ゆっくりと冷却し70℃にまで低下させ、微粉末のキシリトール5gを添加すると急激に結晶化が進行してしまい流し込み液は粘度上昇を始め、ついには固化してしまった。流し込み成型は困難であった。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明のキャンディは、キシリトールを単純にキャンディ主体の糖質(たとえば還元麦芽糖水飴)に混合するだけでは、冷涼感に乏しく、商品価値が低く、またキシリトールのような糖アルコールに香料や着色料を配合することは常識的でありが、キシリトールの結晶を大きく成長させることができないため、冷涼感に乏しく、商品価値が低いという従来の問題を解決し、かつ、キシリトールを主成分として含むキャンディ組成物の溶融物の冷却時の加工性の問題を解決してキシリトールの結晶の進行を制御し、流し込み成型などが可能な流動性のある状態を維持しつつ流動性を安定化させ、成型して、ゆっくり冷却するのと同じ効果をもたせることが可能になり、その結果、キシリトールの結晶を大きく成長させることができ、キシリトールの冷涼感が格段に発揮され、美味しいという、顕著な効果を奏するので、産業上の利用価値が高い。
また、本発明のキャンディの製造方法によりキシリトールの冷涼感が格段に発揮された美味しいキャンディを容易に工業的に連続的に製造できるという、顕著な効果を奏するので、産業上の利用価値が高い。
【符号の説明】
【0059】
1、1A、1B、1C、1D 本発明の新規キャンディ
2 結晶化制御されたキシリトール結晶部
3 公知のキャンディ部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主成分のキシリトールに、ソルビトール、マルチトール、還元バラチノース、ラクチトールから選ばれる少なくとも1つを主成分として含む結晶化制御物質を混合してなる結晶化制御されたキシリトール結晶部を備え、
前記結晶化制御物質の平均分子量が152以上500以下であり、
キシリトール1モルに対する前記結晶化制御物質の混合モル比が固形分換算で0.02〜0.3であるキャンディ。
【請求項2】
主成分のキシリトールに、ソルビトール、マルチトール、還元バラチノース、ラクチトールから選ばれる少なくとも1つを主成分として含む結晶化制御物質を混合してなる結晶化制御された層状のキシリトール結晶部に層状の公知のキャンディ部分を積層して2層構造とするか、あるいは前記層状のキシリトール結晶部を中間層とし、層状の公知のキャンディ部分によってサンドイッチ積層して3層構造とする、請求項1に記載のキャンディ。
【請求項3】
主成分のキシリトールに、ソルビトール、マルチトール、還元バラチノース、ラクチトールから選ばれる少なくとも1つを主成分として含む結晶化制御物質を溶融混合後、型にデポジットして常温まで冷却しつつ結晶化制御して固化して、結晶部と非結晶部とを含むキシリトール結晶部を備えたキャンディを製造し、
前記結晶化制御物質の平均分子量が152以上500以下であり、
キシリトール1モルに対する前記結晶化制御物質の混合モル比が固形分換算で0.02〜0.3である、キャンディの製造方法。
【請求項4】
公知のキャンディ組成物を溶融混合後、型にデポジットし、その上に主成分のキシリトールに、ソルビトール、マルチトール、還元バラチノース、ラクチトールから選ばれる少なくとも1つを主成分として含む結晶化制御物質を溶融混合後デポジットし、常温まで冷却しつつ結晶化制御して固化して、結晶部と非結晶部とを含むキシリトール結晶部を備えた2層構造のキャンディを製造するか、あるいは公知のキャンディ組成物を溶融混合後、型にデポジットし、その上に主成分のキシリトールに、ソルビトール、マルチトール、還元バラチノース、ラクチトールから選ばれる少なくとも1つを主成分として含む結晶化制御物質を溶融混合後デポジットし、さらにその上に公知のキャンディ組成物を溶融混合後デポジットし、常温まで冷却しつつ結晶化制御して固化して、結晶部と非結晶部とを含むキシリトール結晶部を備えた3層構造のキャンディを製造し、
前記結晶化制御物質の平均分子量が152以上500以下であり、
キシリトール1モルに対する前記結晶化制御物質の混合モル比が固形分換算で0.02〜0.3である、キャンディの製造方法。
【請求項5】
前記結晶化制御物質を溶融混合した後の混合物を、型にデポジットするまで60〜85℃に保つ、請求項3又は4に記載のキャンディの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−55967(P2013−55967A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−286189(P2012−286189)
【出願日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【分割の表示】特願2005−101319(P2005−101319)の分割
【原出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(508293162)三星食品株式会社 (4)
【Fターム(参考)】