説明

キースイッチ装置の組立方法

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、キートップを有し、そのキートップの上下動を案内支持する案内支持部材をホルダプレート上に配設してなるキースイッチ装置の組立方法に関し、特に、案内支持部材とホルダプレートとの組立との組立が極めて容易であるとともに、キートップの操作性が良好なキースイッチ装置の組立方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より各種のキースイッチ装置が提案されており、かかるキースイッチ装置においては、一般にキートップの裏面から垂設されたキーステムをホルダプレートに形成したキーホルダ部により上下に摺動案内する構成が採られていた。
【0003】このような構成のキースイッチ装置では、キーステムがキーホルダ部により摺動案内される部分を大きくすればキー操作性は向上するもののキーボードの薄型化には対応することができず、一方、キーボードの薄型化に対応すべくキーステムがキーホルダ部により摺動案内される部分を小さくすれば両者間に生じるこじれに起因してキー操作性が低下してしまうというジレンマが存在した。
【0004】本出願人は、このような従来のキースイッチにおけるジレンマを解消するためキーステムとキーホルダ部を無くし、キーボードの薄型化に対応できるとともにキー操作性の良好なキースイッチ装置を特願平3−330160号において提案した。かかるキースイッチ装置を図9乃至図11に示す。このキースイッチ装置の詳細な構成については特願平3−330160号を参照することとして、その概略について以下に説明する。
【0005】図9において、樹脂製のキートップ1は、その裏面に設けられた2つの係止部2、3(各係止部2、3はそれぞれ一対存在する)の係止孔4、係止溝5と樹脂製のホルダプレート25の2つの係止部26、27(各係止部26、27はそれぞれ一対存在する)の係止溝28、係止孔29との間に配設された案内支持部材6(2つの樹脂製のヒンジ部材7、8からなり、ヒンジ部材7の一端に設けられた係止ピン13、14が係止孔4に、他端に設けられた係止ピン15、16が係止溝28に係止されており、ヒンジ部材8の一端に設けられた係止ピン23、24が係止溝5に、他端に設けられた係止ピン21、22が係止孔29に係止されている)により上下動案内される。
【0006】そして、両ヒンジ部材7、8の軸支部Aが、支持板32上に支持されるフレキシブル回路基板30上に載置されたラバースプリング31の頂部に配置され、キートップ1を押下することにより軸支部Aを介してラバースプリング31を座屈させてスイッチング動作を行なうものである。
【0007】ここに、ヒンジ部材7は図10に示すように、基部9の両端に2つの基端部10、11を一体に形成してなるものである。基部9の中央部の一側面からは軸12が延設されており、かかる軸12は後述する他方のヒンジ部材8に形成された軸孔20に軸支される。また、基端部10の両端延部10Aの側面からは、係止ピン13、14が延設されており、この係止ピン13、14は前記したキートップ1の係止部2に穿設された係止孔4に係止されるものである。更に、基端部11は平面視でコ字状に形成されており、コ字状の両端延部11Aの側面からは前記と同様の係止ピン15、16が延設されている。かかる係止ピン15、16はホルダプレート25に形成された係止部26に係止される。
【0008】また、ヒンジ部材8は図11に示すように、基部17の両端に2つの基端部18、19を一体に形成してなるものである。基部17の中央部には軸孔20が穿設され、この軸孔20には前記のようにヒンジ部材7の基部9に設けられた軸12が挿通される。また、基端部18は平面視コ字状に形成されており、コ字状の両端延部18Aからは係止ピン21、22が延設されている。この係止ピン21、22はホルダプレート25に形成された係止部27に係止される。
【0009】更に、基端部19の両端延部19Aから前記と同様の係止ピン23、24が延設されており、かかる係止ピン23、24は前記したキートップ1の係止部3に形成された係止溝5に摺動可能に係止されるものである。
【0010】前記したように案内支持部材6は、一方のヒンジ部材7の基部9に形成された軸12を他方のヒンジ部材8の基部17に穿設した軸孔20に挿通して構成されるものであり、両ヒンジ部材7、8は軸12と軸孔17とよりなる軸支部Aを介して相互に回動可能となる。かかるキースイッチ装置によればキーボードの薄型化に対応しつつキー操作性の良好なキースイッチ装置が実現されるものである。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記特願平3−330160号に記載されたキースイッチ装置では、ホルダプレート25と2つのヒンジ部材7、8からなる案内支持部材6との組立、及び、案内支持部材6とキートップ1との組立を簡便、且つ、容易に行なうことができないという問題があった。
【0012】即ち、前記キースイッチ装置を組み立てるには、先ず、ヒンジ部材7とヒンジ部材8とを交差状に組み立てて案内支持部材6とした後、ヒンジ部材8の基端部18における両係止ピン21、22をホルダプレート25の係止部27の係止孔29に圧入する。このとき、かかる係止ピン21、22の係止孔29に対する圧入は、端延部18A、各係止ピン21、22相互の樹脂弾性を利用して行なわれるが、各係止ピン21、22を係止孔29に位置決めするのは困難であり、それ故圧入作業が不安定となり易いものである。従って、この圧入作業はかなり煩雑なものであった。
【0013】また、ヒンジ部材7の基端部11における係止ピン15、16を係止部26の係止溝28に圧入する。かかる場合においても圧入作業は端延部11A、係止ピン15、16相互の樹脂弾性を利用して行なわれることから、前記と同様、煩雑な作業であることは否めないものであった。
【0014】このように各ヒンジ部材7、8とホルダプレート25の各係止部27、26との連結作業が終了した後、次に、ヒンジ部材7における各係止ピン13、14を係止部2の係止孔4へ圧入する作業、及び、ヒンジ部材8における各係止ピン23、24を係止部3の係止溝5へ圧入する作業が行なわれる。かかる両圧入作業も各係止ピン13、14、23、24と各係止部2、3との相互における樹脂弾性を利用して行なわれることから、煩雑な作業となることは前記作業と同じであった。
【0015】以上のように、前記特願平3−330160号のキースイッチ装置においては、案内支持部材6の各ヒンジ部材7、8とホルダプレート25、及び、キートップ1との各連結作業が全て各部材の樹脂弾性を利用して行なわれるものであり、また、各係止ピン13等を各係止孔4等の内部に位置決めしつつ係止する必要があることから、キースイッチ装置の組立作業全体に渡って煩雑な圧入作業を行なう必要があるという問題があった。
【0016】本発明は前記従来技術の問題点を解消するためになされたものであり、案内支持部材とホルダプレートとの組立が極めて容易であるとともに、キートップの操作性が良好なキースイッチ装置の組立方法を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため本発明に係るキースイッチ装置の組立方法は、裏面から第1係止部及び第2係止部が垂設されたキートップと、前記キートップの下方に配設されるとともに、前記第1係止部の対角位置に第3係止部及び前記第2係止部の対角位置に第4係止部が形成されたホルダ部材と、前記第1係止部に係止される第1係止部材及び第3係止部に係止される第3係止部材を有する第1ヒンジ部材と前記第2係止部に係止される第2係止部材及び第4係止部に係止される第4係止部材を有する第2ヒンジ部材とを相互に可動状態に配置してなるとともに、前記キートップの上下動を案内する案内支持部材と、前記キートップの上下動に伴ってスイッチング動作を行なうスイッチング部材とを備えるキースイッチ装置の組立方法において、前記第1ヒンジ部材の第3係止部材をホルダ部材の第3係止部に係止するとともに、第2ヒンジ部材の第4係止部材をホルダ部材の第4係止部に係止する工程と、前記第1ヒンジ部材の第1係止部材とキートップの第1係止部、及び、第2ヒンジ部材の第2係止部材とキートップの第2係止部とを対向させる工程と、前記キートップを押下する工程と、前記第1ヒンジ部材と第2ヒンジ部材とが略水平状態になった状態で第1ヒンジ部材の第1係止部材をキートップの第1係止部にスナップインさせるとともに、第2ヒンジ部材の第2係止部材をキートップの第2係止部にスナップインさせる工程とからなることを特徴とする。
【0018】
【作用】前記構成を有する本発明の組立方法では、キースイッチ装置の組立に際し、先ず、第1ヒンジ部材と第2ヒンジ部材とを相互に可動状態に配置して案内支持部材を組み立てた後、第1ヒンジ部材の第3係止部材をホルダ部材の第3係止部に係止するとともに、第2ヒンジ部材の第4係止部材をホルダ部材の第4係止部に係止する。この後、第1ヒンジ部材の第1係止部材とキートップの第1係止部、及び、第2ヒンジ部材の第2係止部材とキートップの第2係止部とを対向させ、キートップを押下する。
【0019】そして、第1ヒンジ部材と第2ヒンジ部材とが略水平状態になった状態で第1ヒンジ部材の第1係止部材をキートップの第1係止部にスナップインさせるとともに、第2ヒンジ部材の第2係止部材をキートップの第2係止部にスナップインさせる。
【0020】前記した組立方法によれば、キートップの第1係止部及び第2係止部は、ホルダ部材上で支持された第1ヒンジ部材と第2ヒンジ部材とを略水平状態にした状態で、それぞれ第1ヒンジ部材の第1係止部材、第2ヒンジ部材の第2係止部材にスナップインされるので、第1ヒンジ部材及び第2ヒンジ部材がホルダ部材上で最も安定した状態でキートップとの連結作業を行うことが可能となる。これより、キートップと案内支持部材との連結作業を簡便に行うことができる。
【0021】前記のように組み立てられたキースイッチ装置によりスイッチング動作を行なう場合、キートップが押下される。キートップが押下されると、その押下に伴いキートップが案内支持部材を介して下方に案内される。かかるキートップの押下に従って、案内支持部材も下方に移動され、これよりスイッチング部材を介してスイッチング動作が行なわれるものである。
【0022】
【実施例】以下、本発明を具体化した一実施例に基づいて図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は本実施例に係るキースイッチ装置の縦断面図であり、キートップ41はABS樹脂等の合成樹脂から成型されており、その上面にはアルファベット等の文字が印刷等により形成されている。また、キートップ41の裏面からは、2つの係止部42、43(それぞれの係止部42、43は紙面と垂直方向に各一対が存在し、図1中にはそれぞれの一方のみを示す)が下方に向けてキートップ41本体と一体に設けられている。
【0023】係止部42には、後述する2つのヒンジ部材47、48のうちの一方のヒンジ部材47の一端に形成された係止棒53を回動可能に係止する係止溝44が形成されており、また、係止部43には、他方のヒンジ部材48の一端に形成された係止ピン63、64を水平方向に摺動可能に係止する係止溝45が形成されている。
【0024】また、係止溝44には、その係止溝44に連続するとともに、下方に行くに従って除々に拡がるように開放された係止案内部44Aが形成されており、かかる係止案内部44Aはヒンジ部材47の係止棒53を係止溝44内にスナップインする際に係止溝44に向かって案内するものである。更に、係止部43の係止溝45の下部位置には、下方に向かって拡がる斜面を形成してなる係止案内部45Aが設けられており、かかる係止案内部45Aはヒンジ部材48の係止ピン63、64を係止溝45内にスナップインする際に係止溝45に向かって案内するものである。
【0025】キートップ41の下方には、キートップ1の上下動を案内支持する案内支持部材46が配設されており、かかる案内支持部材46は2つのヒンジ部材47、48から構成される。
【0026】一方のヒンジ部材47は図2に示すように平面視コ字状に形成され、また、一対の板状体49を有し各板状体49の一端間には係止棒53が一体に形成されるとともに、各板状体49のそれぞれの他端には係止ピン55、56が形成されてなるものである。かかる係止棒53は前記係止案内部44Aを介して係止部42の係止溝44内にスナップインされ、また、各係止ピン55、56は後述するホルダプレート65に形成された係止部66に係止される。また、各板状体49の互いに対向する側における中央部位置からは、一対の軸体52が相互に対向する位置に設けられている。これらの各軸体52は後述する他方のヒンジ部材48に形成された軸孔60に軸支される。尚、ヒンジ部材47の係止棒53と各係止ピン55、56は各軸体52からの距離が等しくなるように構成されている。
【0027】更に、他方のヒンジ部材48は図3に示すように、一対の板状体57を有し各板状体57の一端間には係止棒61が一体に形成されるとともに、各板状体57のそれぞれの他端には係止ピン63、64が形成されてなる。かかる係止棒61の両端部は後述するホルダプレート65の係止部67に係止され、また、各係止ピン63、64は前記係止案内部45Aを介して係止部43の係止溝45内にスナップインされる。
【0028】また、各板状体57の外側において相互に対向する中央部位置には、それぞれ軸孔60が形成されており、これらの各軸孔60には前記ヒンジ部材47の各板状体49に形成された各軸体52が回動可能に嵌合される。これにより、両ヒンジ部材47、48は各軸体52及び軸孔60を介して相互に交差して回動可能となるものであり、各軸体52と軸孔60とにより軸支部Aが形成される。尚、ヒンジ部材48の係止棒61と各係止ピン63、64は軸孔60からの距離が等しくなるように構成されている。
【0029】更に、各板状体57における中央部位置の間には、後述するラバースプリング71上面に載置されるとともに、キートップ41の押下時に各ヒンジ部材47、48の相互の回動に伴ってラバースプリング71を下方に押下する押下棒58が設けられている。これより、キートップ41の押下に伴って押下棒58がラバースプリング71を押下してスイッチング動作を行なうものである。
【0030】次に、案内支持部材46の下方には樹脂製のホルダプレート65が配設されており、かかるホルダプレート65には各スイッチ装置に対応して係止部66、67(各係止部66、67はそれぞれ各2つが設けられているが、図1には各1つの係止部66、67を示す)が形成されている。
【0031】係止部66には図1中右方を開放側とする摺動溝68が形成されており、かかる係止部66の摺動溝68には前記ヒンジ部材47に形成された係止ピン55、56が挿嵌される。また、係止部67には係止部66の摺動溝68と同様、図1中右方を開放側とする摺動溝69が形成されるとともに、摺動溝69内において図1R>1中右方側に傾斜面を有する係止突起69Aが形成されている。かかる係止部67の摺動溝69内には前記ヒンジ部材48に形成された係止棒61の両端部が挿嵌される。また、ホルダプレート65上において、両係止部66、67の間で、ヒンジ部材47における各板状体49の外側面を案内する一対の案内壁73(図4参照)が立設されている。
【0032】これより、案内支持部材46におけるヒンジ部材47の係止ピン55、56及びヒンジ部材48の係止棒61を、それぞれ摺動溝68と摺動溝69の開放側からヒンジ部材47の各板状体49の外側面を各案内壁73に案内させつつホルダプレート65上をスライドさせることにより、各係止ピン55、56及び係止棒61が各摺動溝68、69内に挿嵌されるものである。そして、かかる挿嵌時に係止棒61が摺動溝69内の係止突起69Aを乗り越えた後においては、係止棒61が摺動溝69から外れてしまうことはなく、これより各係止棒61及び係止ピン55、56はそれぞれ摺動溝69、68内で回動可能に保持されるものである。
【0033】前記のように構成されるホルダプレート65の下方には、図4に示すように、各キースイッチに対応してスイッチ電極70Aが形成されたフレキシブル回路基板70が配置されており、また、かかるスイッチ電極70Aに対応して逆カップ状のラバースプリング71がフレキシブル回路基板70上に載置されている。更に、回路基板70上のスイッチ電極70Aに対向してラバースプリング71の内頂壁には、可動電極71Aが固着されている。そして、ラバースプリング71の上面には、前記ヒンジ部材48に形成された押下棒58が配置されている。
【0034】これより、キートップ41の押下に伴って押下棒58が下方に移動すると、ラバースプリング71が押下棒58により押下され、一定の押下量を越えるとラバースプリング71が座屈されて可動電極71Aとフレキシブル回路基板70上のスイッチ電極70Aとが当接することによりスイッチング動作が行なわれるものである。
【0035】また、フレキシブル回路基板70の下方にはスイッチ支持板72が配設されており、かかるスイッチ支持板72はその上方に配設された各回路基板70、ホルダプレート65を支持するものである。
【0036】前記構成において、軸支部Aの中心を通る垂線Lを基準として図1中左方側に存在するキートップ41の裏面に形成された係止部42及びホルダプレート45に形成された係止部67には、それぞれ係止棒53を回動可能に係止する係止溝44及び係止棒61を係止突起69Aと協働して回動可能に係止する摺動溝69が設けられていることになる。また、垂線Lの図1中右方側に存在するキートップ41の裏面に形成された係止部43及びホルダプレート65に形成された係止部66には、それぞれ係止ピン63、64及び係止ピン55、56を水平方向に摺動可能に係止する係止溝45及び摺動溝68が設けられていることになる。
【0037】続いて、前記のように構成されるキースイッチ装置の組立方法について図5乃至図8に基づき説明する。先ず、スイッチ支持板72上にフレキシブル回路基板70、ホルダプレート65を載置するとともに、ヒンジ部材47の各軸体52をヒンジ部材48の各軸孔60に嵌合して案内支持部材46を組み立てる。
【0038】この後、各ヒンジ部材47、48相互を回動させて図5に示す水平状態にし、ヒンジ部材47の係止ピン55、56、及び、ヒンジ部材48の係止棒61を各係止部66、67における摺動溝68、69の開放側から各案内壁73により案内させながらホルダプレート65上で各摺動溝68、69内に向かってスライドさせる。そして、更にスライドさせると、ヒンジ部材48の係止棒61は摺動溝69内に形成された係止突起69Aを斜面側から乗り越える。この状態が図6に示されている。これにより、案内支持部材46とホルダプレート65との連結が終了する。
【0039】このように、ヒンジ部材48の係止棒61と摺動溝69との連結、及び、ヒンジ部材47の係止ピン55、56と摺動溝68との連結は、案内支持部材46を各摺動溝68、69の開放側からホルダプレート65上でスライドさせることのみによってなされるので、案内支持部材46とホルダプレート65との連結が極めて簡単に行い得るものである。このとき、案内支持部材46はそのスライド時において各案内壁73により案内されるので、案内支持部材46が各摺動溝68、69から外れてしまうことはなく、従ってかかる案内壁73により前記連結作業は、より容易に行い得ることとなる。
【0040】次に、図6の状態に保持されたヒンジ部材47の係止棒53とキートップ41の係止溝44とを対向させ、また、ヒンジ部材48の係止ピン63、64とキートップ41の係止溝45とを対向させた後(図7参照)、キートップ41を軽く下方に押下する。これにより、ヒンジ部材47の係止棒53は係止案内部44Aにより案内されつつ係止溝44内にスナップインされ、同時に、ヒンジ部材48の各係止ピン63、64は係止案内部45Aにより案内されつつ係止溝45内にスナップインされる。かかる状態が図8に示されている。これにより、案内支持部材46とキートップ41との連結が終了する。
【0041】このように、ヒンジ部材47の係止棒53とキートップ41の係止溝44との連結、及び、ヒンジ部材48の各係止ピン63、64とキートップ41の係止溝45との連結は、図7に示す状態からキートップ41を軽く下方に押下するのみによってなされるので、案内支持部材46とキートップ41との連結が極めて簡単に行い得るものである。
【0042】前記の作業をもってキースイッチ装置の組立が終了するが、各ヒンジ部材47、48とホルダプレート65及びキートップ41との連結作業は、いずれも極めて簡単に行ない得、これによりキースイッチ装置の組立作業を簡便化して組立時間の短縮を可能とするとともに、作業者の組立能力如何に拘らず確実にキースイッチ装置の組立がなされ得るものである。
【0043】続いて、前記のように組み立てられたキースイッチ装置の動作について説明する。キートップ41を下方に押下すると、キートップ41が下方へ移動するに伴ってヒンジ部材47の係止棒53は係止部42の係止孔44内で反時計方向に回動するとともに、ヒンジ部材48の係止ピン63、64は係止部43の係止溝45内で水平方向(図1中右方向)に摺動する。これと同時に、ヒンジ部材48の係止棒61はホルダプレート65における係止部67の摺動溝69内で係止突起69Aとの協働により時計方向に回動するとともに、ヒンジ部材47の係止ピン55、56は係止部66の摺動溝68内で水平方向(図1中右方向)に摺動する。
【0044】かかるキートップ41の押下時、案内支持部材46は各案内壁73間で図4中左右方向への規制がなされるので、キートップ41が不必要にがたつくことが防止される。
【0045】この結果、ヒンジ部材47及び48を相互に軸支する軸支部Aは下方に移動するとともにラバースプリング71を徐々に押下していき、その押下量が一定の限度を超えた時点でラバースプリング71は挫屈される。これにより、ラバースプリング71内の可動電極71Aがフレキシブル回路基板70上のスイッチ電極70Aを短絡し所定のスイッチング動作が行われる。
【0046】キートップ41の押下を解除すると、両ヒンジ部材47、48の軸支部Aはラバースプリング71の弾性復元力により上方に押し上げられる。これに伴って前記ヒンジ部材47の係止棒53、係止ピン55、56、及び、ヒンジ部材48の係止棒61、係止ピン63、64は前記したのと逆の動作を行い、この結果、キートップ41は元の位置に復帰される。
【0047】ここに、各係止棒53、61は水平方向には移動されることなく、それぞれ係止溝44及び摺動溝69内で回動するのみであるので、キートップ41は水平方向に移動されることなくキートップ1のキー面の水平状態を保持したまま上下動されるものである。
【0048】以上詳細に説明した通り本実施例に係るキースイッチ装置では、キースイッチ装置の組立の際に、ヒンジ部材47の係止ピン55、56、及び、ヒンジ部材48の係止棒61を各係止部66、67における摺動溝68、69の開放側から各案内壁73により案内させながらホルダプレート65上で各摺動溝68、69内に向かってスライドさせるとともに、ヒンジ部材48の係止棒61が摺動溝69内に形成された係止突起69Aを乗り越えるまでスライドさせることにより、案内支持部材46とホルダプレート65との連結が行なわれるので、案内支持部材46とホルダプレート65との連結作業を極めて簡単にすることができる。
【0049】特に、案内支持部材46のスライド時に、かかる案内支持部材46は各案内壁73により各摺動溝68、69に向かって確実に案内されるので、案内支持部材46が各摺動溝68、69から外れてしまうことはなく、従ってかかる案内壁73により前記連結作業は、より容易に行い得ることとなる。
【0050】また、案内支持部材46とキートップ41との連結を行なう際には、ヒンジ部材47の係止棒53とキートップ41の係止溝44とを対向させ、また、ヒンジ部材48の係止ピン63、64とキートップ41の係止溝45とを対向させた後、キートップ41を軽く下方に押下することにより、ヒンジ部材47の係止棒53は係止案内部44Aにより案内されつつ係止溝44内にスナップインされ、同時に、ヒンジ部材48の各係止ピン63、64は係止案内部45Aにより案内されつつ係止溝45内にスナップインされるので、案内支持部材46とキートップ41との連結が極めて簡単に行い得るものである。
【0051】更に、前記のように簡単な組立作業により組み立てられたキースイッチ装置では、ヒンジ部材47の係止棒53は係止部42の係止溝44内で移動することなく回動可能に保持されるとともに、ヒンジ部材48の係止棒61は摺動溝69内で係止突起69Aとの協働により移動することなく回動可能に保持され、また、案内支持部材46は一対の各案内壁73間で移動が規制されており、これによりキートップ41はそのキー操作時において前後左右のいずれの方向に対しても移動されることが防止される。この結果、キー操作性を格段に向上することができる。
【0052】尚、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。例えば、前記実施例では係止部67の摺動溝69内に係止突起69Aを形成するようにしているが、かかる係止突起は係止部66の摺動溝68内に形成するようにしてもよい。
【0053】
【発明の効果】以上説明した通り本発明の組立方法によれば、キートップの第1係止部及び第2係止部は、ホルダ部材上で支持された第1ヒンジ部材と第2ヒンジ部材とを略水平状態にした状態で、それぞれ第1ヒンジ部材の第1係止部材、第2ヒンジ部材の第2係止部材にスナップインされるので、第1ヒンジ部材及び第2ヒンジ部材がホルダ部材上で最も安定した状態でキートップとの連結作業を行うことが可能となる。これより、キートップと案内支持部材との連結作業を簡便に行うことができる。このように本発明によれば、案内支持部材とホルダプレートとの組立が極めて容易であるとともに、キートップの操作性が良好なキースイッチ装置の組立方法を提供することができ、その産業上奏する効果は大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】キースイッチ装置の縦断面図である。
【図2】一方のヒンジ部材の平面図である。
【図3】他方のヒンジ部材の平面図である。
【図4】キースイッチ装置の横断面図である。
【図5】案内支持部材をホルダプレートに連結する前の状態を示す説明図である。
【図6】案内支持部材をホルダプレートに連結した後の状態を示す説明図である。
【図7】ホルダプレートに連結した案内支持部材上にキートップを配置した状態を示す説明図である。
【図8】ホルダプレートに連結した案内支持部材にキートップを連結した状態を示す説明図である。
【図9】従来のキースイッチ装置の縦断面図である。
【図10】従来のキースイッチ装置に使用される一方のヒンジ部材の平面図である。
【図11】従来のキースイッチ装置に使用される他方のヒンジ部材の平面図である。
【符号の説明】
1、41 キートップ
2、3、26、27
42、43、66、67 係止部
6、46 案内支持部材
7、8、47、48 ヒンジ部材
13、14、15、16
21、22、23、24
55、56、63、64 係止ピン
25、65 ホルダプレート
31、71 ラバースプリング
44、45 係止溝
44A、45A 係止案内部
68、69 摺動溝
69A 係止突起
31、71 ラバースプリング
73 案内壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】 裏面から第1係止部及び第2係止部が垂設されたキートップと、前記キートップの下方に配設されるとともに、前記第1係止部の対角位置に第3係止部及び前記第2係止部の対角位置に第4係止部が形成されたホルダ部材と、前記第1係止部に係止される第1係止部材及び第3係止部に係止される第3係止部材を有する第1ヒンジ部材と前記第2係止部に係止される第2係止部材及び第4係止部に係止される第4係止部材を有する第2ヒンジ部材とを相互に可動状態に配置してなるとともに、前記キートップの上下動を案内する案内支持部材と、前記キートップの上下動に伴ってスイッチング動作を行なうスイッチング部材とを備えるキースイッチ装置の組立方法において、前記第1ヒンジ部材の第3係止部材をホルダ部材の第3係止部に係止するとともに、第2ヒンジ部材の第4係止部材をホルダ部材の第4係止部に係止する工程と、前記第1ヒンジ部材の第1係止部材とキートップの第1係止部、及び、第2ヒンジ部材の第2係止部材とキートップの第2係止部とを対向させる工程と、前記キートップを押下する工程と、前記第1ヒンジ部材と第2ヒンジ部材とが略水平状態になった状態で第1ヒンジ部材の第1係止部材をキートップの第1係止部にスナップインさせるとともに、第2ヒンジ部材の第2係止部材をキートップの第2係止部にスナップインさせる工程とからなることを特徴とするキースイッチ装置の組立方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【特許番号】第2950391号
【登録日】平成11年(1999)7月9日
【発行日】平成11年(1999)9月20日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−213356
【出願日】平成4年(1992)7月17日
【公開番号】特開平6−36647
【公開日】平成6年(1994)2月10日
【審査請求日】平成10年(1998)9月29日
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【参考文献】
【文献】特開 昭64−7441(JP,A)
【文献】実開 昭62−81330(JP,U)