説明

ギルソナイト由来薬学的送達組成物および方法

局所適用または経皮適用のためのギルソナイト油を含む医薬品製剤を開示する。さらにまた、ギルソナイト油の経皮有効量を含む組成物の局所投与を含む増強された浸透性を有する生物活性薬剤の経皮投与のための方法が提供される。局所投与または経皮投与のための組成物であって、(i)生物活性薬剤;および(ii)ギルソナイト油を含む、組成物もまた提供される。浸透増強システムであって、以下:(i)ギルソナイト油;および(ii)薬学的に受容可能なキャリアを含む、振盪増強システムもまた提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は経皮、経粘膜および局所の送達のための薬学的組成物およびその使用方法に関する。より詳しくは、これらの組成物は浸透増強剤および生物活性薬剤を含む。
【背景技術】
【0002】
(技術水準)
薬剤の非経腸送達のための経皮経路は多くの利点を与え、そして、広範な種類の薬剤の送達のための経皮システムの例は米国特許3,598,122;3,598,123;3,731,683;3,797,494;4,286,592;4,314,557;4,379,454;4,435,180;4,559,222;4,568,343;4,573,999;4,588,580;4,645,502;4,704,282;4,816,258;4,849,226;4,908,027;4,943,435;5,004,610;5,006,342;5,314,694;5,411,740;5,629,019;5,641,504;5,686,097号に記載されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。多くの場合において、経皮送達にとって理想的な候補であると思われる薬剤は、それらが合理的な量で材料の合理的なデバイスまたは適用法から治療有効量では送達されない程度に低い未損傷皮膚透過性を有することがわかっている。
【0003】
治療有効量で経皮的に薬剤が送達できるように皮膚透過性を増大させる試みにおいて、種々の薬剤で皮膚を前処理すること、または、透過増強剤の存在下で薬剤を同時送達することが提案されている。この使用のために種々の物質が示唆されており、例えば米国特許3,472,931;3,527,864;3,896,238;3,903,256;3,952,099;4,046,886;4,130,643;4,130,667;4,299,826;4,335,155;4,343,798;4,379,454;4,405,616;4,568,343;4,746,515;4,764,379;4,788,062;4,820,720;4,863,738;4,863,970;4,865,848;4,900,555;4,940,586;4,973,468;5,053,227;5,059,426;5,378,730;およびWO95/01167号に記載されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。Williamns et al,「Skin Absorption Enhancers」 Critical Review in Therapeutic Drug Carrier Systems,pp.305−353(1992)およびSantus et al.「Transdermal Enhancer Patent Litrature」, Journal of Controlled Release,pp.1−20(1993)もまた経皮透過増強剤の検討を行っている。
【0004】
有用であるとみなされるためには、透過増強剤は少なくとも1つおよび好ましくはかなりの数量の薬剤に対して、皮膚の透過性を増強する能力を有さなければならない。より重要な点として、合理的な大きさのシステム(好ましくは5〜60cm)からの薬剤の送達速度が治療有効水準であるように皮膚透過性を増強することができなければならない。さらにまた、皮膚表面に適用した場合の理想的な透過増強剤は長期間の曝露および閉塞条件下において非毒性非刺激性であり、そして、反復曝露において非感作性で無ければならない。好ましくは無臭、生理学的に不活性、そして、灼熱感またはヒリヒリ感、または他の刺激性の感覚のような感覚をもたらすことなく薬剤を送達で着なければならない。DMSOは経皮薬剤送達のための有効な透過増強剤またはキャリアとして推奨されているが、毒性の問題のために望ましくないものである。
【0005】
これらの透過増強剤−皮膚の相互作用の問題のほかに、透過増強剤はまた接着剤により皮膚に付着するパッチのような経皮システム自体内部の想定される相互作用に関して評価しなければならない。例えば、透過増強剤は送達すべき薬剤、パッチ接着剤および重合体物質または皮膚に薬剤を供給する他の貯蔵材料と適合性を有さなければならない。透過増強剤はまた、接着剤の粘着性、付着製および凝集強度の間の適当な均衡性に寄与するか、少なくともこれを妨害しないように選択しなければならない。
【0006】
透過増強剤と組み合わせた共溶媒の使用もまた開示されている。このような共溶媒はそれ自体は経皮流入を優先的に増加させる必要はないが、他の透過増強剤と組み合わせて使用された場合に薬剤の経皮流入を相乗作用的に増加させる作用を有してよい。1つの理論として、これらの共溶媒は皮膚表面における透過増強剤の利用性を増大させることにより薬剤の増強された流入をもたらすと考えられている。
【0007】
例えばWO95/09006はモノグリセリドと組み合わせた乳酸ラウリル、乳酸エチル、乳酸セチルおよび乳酸ミリスチルのような種々の乳酸エステル共溶媒の使用を開示している。しかしながら、これらの乳酸エステルは皮膚に刺激性がある場合がある。WO96/40259はグリセロールモノラウレートのようなものグリセリド透過増強剤のための共溶媒として酢酸ラウリルの使用を開示している。この組合せは、他のモノグリセリド/共溶媒の組合せと比較して増強された流入をもたらし、且つ高純度で入手可能である。しかしながら、酢酸ラウリルは製造の観点から望ましくない共溶媒であることがわかっている。酢酸ラウリルの望ましくない量がその高い蒸気圧のために製造の間に蒸発し、システム内には不十分な量の酢酸ラウリルしか残存しないことがわかっている。
【0008】
従って、これらの進歩にもかかわらず、皮膚刺激に関連する問題点およびモノグリセリドの対する種々の共溶媒を含むフィルムの加工および製造に関わるより最近発見された問題点は、代替となる浸透増強処方の必要性をなお残している。
【0009】
さらにまた、米国特許5,312,112号は合成プロゲストゲンのための透過増強剤混合物として、単独または組み合わせにおいてモノグリセリドおよび脂肪酸のエステルの使用を開示している。米国特許5,026,556号はC3−C4ジオール、C3−C6トリオールおよびこれらの混合物よりなる群から選択される極性溶媒物質;および脂肪アルコールエステル、脂肪酸エステルおよびこれらの混合物よりなる群から選択される極性脂質物質を含むキャリア中にブプレノルフィンのある量を含むブプレノルフィンの経皮送達のための組成物を開示している。パルミチン酸エチルが適当な極性脂質物質として開示されている。
【0010】
米国特許5,352,456号は薬剤の初期パルス量とそれに続く実質的により低い連続比率を与える経皮デバイスを開示している。デバイスはキャリア中に溶解した薬剤および揮発性の透過増強剤を含む薬剤リザーバを含む。揮発性透過増強剤は薬剤送達速度の低減をもたらす裏張層を通過する蒸発によりリザーバから枯渇する。揮発性透過増強剤は25℃で約10mmHgより大きい蒸気圧を有するものとして開示されている。
【0011】
米国特許5,149,538号は炭素原子8〜18個を有する飽和および不飽和の脂肪アルコール、脂肪アルコールエステルまたは脂肪酸を含む好ましい透過増強剤を用いたアヘン様物質の経皮送達を開示している。米国特許5,650,165号はアクリル共重合体、炭素原子12〜16個を有する高級脂肪酸と炭素原子1〜4個を有する低級1価アルコールとの脂肪酸エステル、および、炭素原子8〜10個を有する高級脂肪酸を含むモノグリセリドを含む経皮吸収製剤を開示している。米国特許5,747,069号は薬剤、および、モノグリセリドおよび脂肪酸を含む透過増強剤を含有する経皮吸収製剤を開示している。上記参考特許の開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記に鑑み、経皮薬剤送達のための新しく進歩したシステムが望まれていることは明らかである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の要旨)
本発明は生物活性薬剤の経皮送達のための局所適用のためのギルソナイト油および生物活性薬剤を含む医薬品製剤を提供する。さらにまた、生物活性薬剤の経皮送達のためのギルソナイト油の経皮有効量を含む組成物の局所投与を含む増強された浸透性を有する生物活性薬剤の経皮投与のための方法が提供される。本明細書においては「ギルソナイト油」とは、uintaite材料から誘導される油の1種であり、American Gilsonite Company,San Francisco,Californiaより入手できる。ギルソナイト油は粘度のような物理的活性の異なる種々の等級で入手できる。この開示の説明に従えば、適切なギルソナイト油は本発明の有効な経皮送達システムを与えるために所望の生物活性薬剤および他の成分と共に製剤するために選択できる。種々の特性のギルソナイト油を本発明において混合物として使用できるが、本明細書における開示は本発明を教示および説明するための各製剤中の単一のギルソナイト油を用いることに関する。
【0014】
組成物の1つの特徴において、本発明は生物活性薬剤およびギルソナイト油を含む局所投与または経皮投与のための組成物を提供する。好ましくは組成物はさらに、賦形剤、保存剤、抗酸化剤、芳香剤、乳化剤、染料、抗刺激剤およびそれらの浸透増強剤よりなる群から選択される薬学的に受容可能な添加剤1つ以上を場合により含有する、従来の油、ゲル、クリーム、軟膏、ローション、接着剤、重合体、ペーストまたはスプレーのような薬学的に受容可能なキャリアをさらに含む。生物活性薬剤成分は意図する用途のために有効な量、好ましくは少なくとも約0.01重量%、好ましくは約0.1%〜約50%で存在し、そして、ギルソナイト油は好ましくは少なくとも約0.01重量%、好ましくは約0.1%〜約50%で存在する。一部の製剤においては、ギルソナイト油成分は主要な比率の成分(恐らくは生物活性薬剤以外唯一の成分)として存在することができ、即ち、浸透増強剤およびキャリアまたは希釈剤の両方の機能を果たす。
【0015】
組成物の特徴の別のものにおいては、本発明はギルソナイト油および賦形剤、保存剤、抗酸化剤、芳香剤、乳化剤、染料、抗刺激剤およびそれらの浸透増強剤よりなる群から選択される薬学的に受容可能な添加剤1つ以上を場合により含有する、従来の油、ゲル、クリーム、軟膏、ローション、接着剤、重合体、ペーストまたはスプレーのような薬学的に受容可能なキャリアを含む浸透増強システムを提供する。キャリア成分は少なくとも約0.1重量%、好ましくは約1%〜約80%、より好ましくは約2%〜約50%で存在し、そして、ギルソナイト油成分は少なくとも約0.1重量%、好ましくは約1%〜約80%、より好ましくは約2%〜約50%で存在する。ギルソナイト油および薬学的に受容可能なキャリアのこの組成物は所望の生物活性薬剤と共に製剤できる本発明の基材物質を与える。
【0016】
組成物の特徴のさらに別のものにおいては本発明はギルソナイト油および賦形剤、保存剤、抗酸化剤、芳香剤、乳化剤、染料、抗刺激剤およびそれらの浸透増強剤よりなる群から選択される薬学的に受容可能な添加剤1つ以上を場合により含有する、従来の油、ゲル、クリーム、軟膏、ローション、接着剤、重合体、ペーストまたはスプレーのような薬学的に受容可能なキャリアを含む浸透増強システムと共に製剤された、ギルソナイト油および生物活性薬剤を含む増強された浸透性を有する局所投与または経皮投与のための組成物を提供する。ギルソナイト油−生物活性薬剤成分およびギルソナイト油−キャリア成分は各々、上記したとおり製剤し、次にこれらの2つの成分を約1:100〜約100:1、好ましくは約10:90〜約90:10およびより好ましくは約20:80〜約80:20の重量比において混合または製剤することができる。
【0017】
方法の特徴の1つにおいて、本発明は本明細書に記載する生物活性薬剤およびギルソナイト油を含有する浸透増強システムを含む組成物を動物の皮膚または爪に適用することを含むヒトまたは他の動物の皮膚または爪を通過する生物活性薬剤の浸透を増強するための方法を提供する。同様に本発明は本明細書に記載する生物活性薬剤およびギルソナイト油を含有する浸透増強システムを含む組成物を植物の構成部分の表面または切断開口部に適用することを含む植物系への生物活性薬剤の浸透を増強するための方法を提供する。
【0018】
別の特徴において、本発明は本明細書に記載する生物活性薬剤およびギルソナイト油を含む組成物を動物の皮膚または爪に適用することにより経皮的に生物活性薬剤を送達するための方法を提供し、そして、明細書に記載する生物活性薬剤およびギルソナイト油を含む組成物を植物の構成部分の表面または切断開口部に適用することにより植物系に生物活性薬剤を送達するための方法を提供する。本発明のこの特徴による送達の方法は、組成物の直接の適用、アプリケーターデバイスからの適用、アプリケーターデバイスからの経時的放出適用、および、本明細書の開示により適合された他の方法を包含する。
【0019】
別の方法の特徴においては、本発明は、本明細書に記載した所望の使用のための組成物を与えるのに有効な比率で生物活性薬剤およびギルソナイト油を混合することを含む生物活性薬剤の経皮送達のための組成物の製造方法を提供する。場合により、別の浸透増強添加剤、または別の薬学的に受容可能な添加剤、例えば上記したものもまた、本明細書に記載するとおり組成物と混合してよい。
【0020】
別の特徴において、本発明はギルソナイト油および生物活性薬剤を含む組成物を含有し、そして、動物の皮膚または爪の上、または、植物の構成部分の上に設置するため、および、組成物を送達するために適合されたパッチ、ストリップまたはコンテナのようなアプリケーターデバイスを含むデバイスを提供する。
【0021】
本発明の別の特徴は動物の皮膚または爪の上または植物の構成部分の上に設置するために適合したアプリケーターデバイスを準備すること、および、本発明に記載したギルソナイト油および生物活性薬剤を含む組成物をアプリケーター内に配合することを含む生物活性薬剤の投与のためのデバイスの製造方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(発明の説明)
本発明によれば、薬剤の経皮送達をもたらし、および/または、身体表面を経由、特に皮膚を経由そして指爪および足爪を経由する薬剤の透過性を増強するために効果的に種々のギルソナイト油を用いることができる。第1に、以下の用語を下記の通り定義する。
【0023】
「局所投与」という用語は、薬剤が皮膚または粘膜の外面を通過して伏在する組織に進入するように、皮膚または粘膜(鼻腔、肺および口腔の表面の膜を含む)の外表面への医薬品の適用を指す。局所投与には未損傷の皮膚または粘膜、皮膚または粘膜の損傷、未処置または開口した創傷への組成物の適用を包含する。医薬品の局所適用は皮膚および周囲の組織への薬剤の限定された分布をもたらすか、または、薬剤が血流により治療部分から除去された場合には薬剤の全身分布をもたらすことができる。局所投与の好ましい形態においては、医薬品は経皮送達により送達される。
【0024】
「経皮送達」という用語は組成物の局所投与または他の適用から生じる皮膚の障壁を通過する薬剤の拡散を指す。角質層は障壁として機能し、未損傷の皮膚に浸透することができる医薬品はほとんどない。これとは対照的に、表皮および真皮は多くの溶質に対して透過性であり、従って薬剤の吸収は、角質層が擦り取られるか、他の態様で剥離することにより表皮が曝露された皮膚を経由すればより容易に起こりえる。経皮送達は皮膚または粘膜の何れかの部分を経由する注射または他の送達、および、残余部分を経由する吸収または透過を包含する。未損傷皮膚を経由する吸収は皮膚適用の前に適切な薬学的に受容可能なビヒクル中に生物活性薬剤を入れることにより増強できる。受動的な局所投与は皮膚軟化剤または浸透増強剤と組み合わせて投与部位に直接活性剤を適用することよりなる。本明細書においては経皮送達に言及する場合は指爪および足爪の表面を経由する透過による送達を包含するものとする。
【0025】
「経粘膜送達」という用語は粘膜の障壁を通過する薬剤の拡散を指す。上皮は障壁として作用し、多くの医薬品は未損傷の粘膜に浸透できない。未損傷の粘膜を経由する吸収は粘膜への適用前にビヒクル内に活性成分を入れることにより増強できる。受動的な局所投与は、浸透増強剤と組み合わせて投与部位に直接活性剤を適用することよりなる。
【0026】
「増強」、「浸透増強」または「透過増強」という用語は皮膚を経由して薬剤が透過する速度を増大させるように薬剤に対する皮膚の透過性を増大させることに関する。このような増強剤の使用を介して達成される増強された透過は、例えば拡散セルデバイスを用いて動物またはヒトの皮膚を経由する薬剤の拡散の速度を測定することにより観察できる。拡散セルはMerritt et al.Diffusion Apparatus for Skin Penetration,J.of Controlled Release, 1(1984)pp.161−162に記載されている。
【0027】
「透過増強剤」または「浸透増強剤」という用語は、単独または組み合わせにより薬剤に対する皮膚の透過性を増強する作用を有する剤または剤の混合物を意図している。
【0028】
「薬剤」、「生物活性薬剤」または「医薬品」という用語は所望の生物学的、薬理学的または栄養学的作用を与える経皮投与に適する何れかの化学物質、化合物または組成物を指す。「薬品」、「生物活性薬剤」または「医薬品」という用語はまた、1つより多い生物活性薬剤の混合物を包含するものとする。
【0029】
「マトリックス」という用語は増強剤が内部に均質に溶解または懸濁されており、そして他の成分を含んでいてもいなくても良い生体適合性の感圧性の接着剤中において均質または徐々に複合化される組成物を指す。マトリックスシステムは通常は不透過性のフィルム裏張を有し、そして、経皮適用の前にはフィルム裏張りとは反対側の接着剤表面上に離型ライナを有する閉鎖接着パッチである。従ってマトリックスシステムは真皮、皮膚または爪との薬剤転移の関連に接着剤中の薬剤組成物を維持するために製剤される増強剤および他の成分も含有する接着剤キャリア中の薬剤組成物の単位剤型である。非閉鎖裏張りを有する接着パッチもまた特段除外しない限りこの定義の範囲に含まれるものとする。「リザーバ」、「リザーバパッチ」または「リザーバシステム」という用語は経皮適用のための透過性膜および接着剤で適切に設計された、不透過性裏張り面および反対側の面を有する閉鎖デバイス中に含有される制御された粘度の液体中の薬学的組成物を指す。従ってリザーバシステムは真皮または皮膚との薬剤転移の関連においてキャリア中に薬剤組成物を維持するための閉鎖デバイス内に製剤された増強剤および他の成分も含有する制御された粘度の液体キャリア中の薬剤組成物の単位剤型である。
【0030】
「制御された粘度の液体」という用語は単一または相分離された液体状態において医薬品製剤が含有されるキャリアを指す。液体自体が溶媒として作用してよく、或は、溶媒または共溶媒を添加しても良い。このような液体は水または有機系であることができ、適切にゲル化または濃厚化された液体または溶媒の混合物を含有してよい。換言すれば、このような液体は例えば溶液、懸濁液、エマルジョン、ゲル、軟膏、クリーム、ペーストまたは透過成分および増強剤、および、場合により溶媒または他の所望の添加剤の外側への拡散を可能にする何れかの他の同様の状態を含む。
【0031】
薬剤または透過成分の「有効」量とは、所望の局所または全身作用をもたらすために十分な生物活性薬剤の量を意味する。本明細書においては、透過増強剤の「有効」量とは、経皮透過性の所望の増強、および、相応する所望の浸透深度、投与比率および薬剤の量をもたらすように選択された量を意味する。「治療有効」量または比率は所望の治療結果を得るために必要な薬剤量または比率を指す。
【0032】
「薬剤送達システム」、「薬剤増強組成物」という用語または何れかの同様の用語は、「薬学的に受容可能なキャリア」または「薬学的に受容可能なビヒクル」、浸透増強剤、賦形剤または何れかの他の添加剤と組み合わせて経皮送達されるべき薬剤を含有する製剤された組成物を指す。
【0033】
「薬学的に受容可能なキャリアまたはビヒクル」という用語は本明細書において定義する生物活性薬剤の有効量の適切な送達を与え、生物活性薬剤の生物学的活性の有効性を妨害せず、そして宿主または患者に対して十分非毒性である何れかの製剤またはキャリア媒体を指す。当業者は例えばRemington: The Science and Practice of Pharmacy, Gennaro, ed.,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,19th ed.,1995に開示されているもののような、適切な態様において許容された慣行に従って、本発明の組成物を製剤してよい。
【0034】
「薬学的に受容可能な添加剤」という用語は薬剤製剤の分野で知られているか使用されており、生物活性薬剤の生物学的活性の有効性を過度に妨害せず、そして宿主または患者に対して十分非毒性である保存剤、抗酸化剤、芳香剤、乳化剤、染料および賦形剤を指す。
【0035】
「賦形剤」という用語は所望の用途のための薬剤組成物を製剤する際に使用されるキャリア、希釈剤および/またはビヒクルを意味するものとして従来より知られている。
【0036】
(調製および製剤)
本発明において言及し、本発明の実施を説明するために本明細書において記載する実施例において使用する特定のギルソナイト油は、ギルソナイト油1、2、A、B、C、X、YおよびQと称され、American Gilsonite Corporation, San Francisco,Californiaより入手可能な物質である。各油は色および粘度のような物理的特性において独特のものである。ギルソナイト油は種々の物理的特性を有する個々多様なギルソナイト油製品を製造する専売的工程においてAmerican Gilsonite Corporationにより製造される。入手可能なギルソナイト油は本明細書の説明および開示に従って薬剤製剤分野の当業者が本発明において使用するために選択できる。一般的に、本発明に従って使用するために設計されたギルソナイト油は通常は約5〜約5000cps(25℃)、好ましくは約5〜約1000cps、より好ましくは約5〜約100cpsの粘度を有する。ギルソナイト油の比重は通常は1.0未満であり、大部分は約0.8〜約0.95の範囲である。当然ながら、所望の用途および機能のための所望の最終的な医薬品製剤の特性は各製剤のためにどの油を選択するかにより異なる。所望の浸透性および輸送特性のために選択されたギルソナイト油をローション、クリーム、ゲルまたは接着剤組成打つ中に製剤することができ、或は、それらは、溶媒または透過増強剤を含有する液体またはスプレー用組成物中に製剤することにより皮膚または爪への適用用の極めて低粘度の組成物とすることができる。
【0037】
好ましくは、そして好都合には、皮膚または爪に適用する本発明のギルソナイト油組成物は生理学的に許容されるキャリアおよび/またはギルソナイト油と薬剤の両方を含む生物活性薬剤を用いて製剤する。しかしながら、ギルソナイト油そのものが予備投与物として適用され、その後に薬剤の製剤を適用し、次いで、それが皮膚または爪を経由する輸送のために製剤された薬剤を吸収しても良い。このような場合は、薬剤の製剤の適用部の上面にギルソナイト油の第2の適用を行うことが効果的な薬剤輸送のためには望ましい。このような方法において予備投与は省略してよく、そして薬剤製剤をまず適用し、次にギルソナイト油または油製剤を皮膚または爪に適用する。しかしながら、このようなインサイチュの製剤または多段階投与は患者に対する不都合や複雑性のために好ましくない。本発明の組成物は1工程適用のために製剤することが好ましい。製剤がキャリアを含有する場合は、キャリアはRemington: The Science and Practice of Pharmacy,19th ed.(Easton,Pa.:Mack Publishing Co.,1995)に記載されているもののような従来の局所製剤用の基材の何れか1つを含んでよい。油、ローション、溶液、クリーム、ゲル、軟膏、重合体、接着剤、ペースト、エアロゾル、坐剤および霧状化製剤が本発明の局所用製剤の代表である。本発明において使用する適当な局所用キャリアの例は、水、アルコールおよび他の非毒性の有機溶媒、グリセリン、鉱物油、シリコーン、ワセリン、ラノリン、脂肪酸、植物油、パラベン、ワックス等である。本明細書において特に好ましい製剤は軟膏、ローション、クリーム、接着剤およびゲルである。
【0038】
ギルソナイト油はキャリアとして機能しても良いことがさらに意図される。そのような製剤の例はギルソナイト油および生物活性薬剤を含む組成物である。組成物は好ましくは局所または経皮適用のために製剤するが、他の投与経路、例えば経口または静脈内投与経路も可能である。本明細書に記載する他の薬学的に受容可能な添加剤は場合によりキャリアとしてのギルソナイト油を用いた製剤中に含有させても良い。
【0039】
局所用製剤のための他の添加剤は当該分野でよく知られており、それらが薬学的に許容され、上皮細胞またはその機能に対して悪影響を及ぼさない限り、局所用製剤に添加してよい。さらにまた、それらはギルソナイト油の上皮浸透効率に悪影響を及ぼしてはならず、そして、組成物の安定性の低下をもたらしてはならない。例えば、当該分野で知られている通り、不活性充填剤、抗刺激剤、粘着性付与剤、賦形剤、芳香剤、不透明化剤、抗酸化剤、ゲル化剤、安定化剤、界面活性剤、皮膚軟化剤、着色剤、保存剤、緩衝剤、他の透過増強剤および経皮送達デバイスの他の従来の成分が挙げられる。
【0040】
他の浸透増強成分は当該分野で知られており、例えば米国特許4,424,210および4,316,893号に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。好ましい浸透増強剤化合物は1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オン(AZONE.RTM.)(Stoughton,Arch.Dermatol.,1982,118)、DMSO、プロピレングリコール、オレイルアルコールおよびメチルピロリドンを包含する。これらのさらなる浸透増強剤化合物は、本発明の組成物で望まれる場合は、局所用組成物の約0.1〜約10%、好ましくは約1.0%〜約5.0重量%の従来の範囲で使用できる。
【0041】
本発明の製剤は身体に局所適用され、そして、特定の治療における使用に適合される。例えば、指または足の爪のカビ感染症の治療のためには、爪を通過するまたは爪の下部の皮膚に至る輸送のための、殺カビ剤、ギルソナイト油および適当なキャリアを含む製剤を調整する。別の例としては、疼痛を治療するためには、疼痛緩解剤、ギルソナイト油および適当なキャリアを含む製剤を調製する。
【0042】
半固体の調製物である軟膏は典型的にはワセリンまたは他の石油由来物質を基材としている。当業者の知るとおり、使用される特定の軟膏基材は所定の製剤のために選択された生物活性薬剤の旨適送達をもたらし、そして、好ましくは他の望ましい特性、並びに、例えば皮膚軟化をもたらすものである。他のキャリアまたはビヒクルの場合と同様、軟膏基材は不活性、安定、非刺激性および非感作性でなければならない。Remington: The Science and Practice of Pharmacy,19th ed.(Easton,Pa.:Mack Publishing Co.,1995)、p.1399−1404に記載されているとおり、軟膏基材は以下の4種、即ち、油性基材、乳化性基材、エマルジョン基材および水溶性基材に分類される。油性軟膏基材は、例えば植物油、動物から得られた油脂、および石油から得られた半固体の炭化水素を包含する。乳化性軟膏基材は吸収性軟膏基材としても知られており、水を少量含むか全く含まず、そして、例えばヒドロキシステアリンスルフェート、無水ラノリンおよび親水性ワセリンを含む。エマルジョン軟膏基材は油中水(W/O)エマルジョンまたは水中油(O/W)エマルジョンの何れかであり、そして例えばセチルアルコール、グリセリルモノステアレート、ラノリンおよびステアリン酸を含む。好ましい水溶性軟膏基材は種々の分子量のポリエチレングリコールから調製し、ここでもまた詳細については上出のRemington: The Science and Practice of Pharmacyを参照できる。
【0043】
摩擦することなく皮膚表面に適用するための調製物であるローションは典型的には液体または半液体の調製物であり、その中に固体粒子、例えば生物活性薬剤が水またはアルコール基材中に存在する。ローションは通常は固体の懸濁液であり、好ましくは、本発明の目的のためには、水中油型の液体油性エマルジョンを含む。ローション中の不溶性物質は一般的には微細分割する必要がある。ローションは典型的には良好な分散を得るための懸濁剤、並びに、活性剤を皮膚に接触させて局在化させて維持するために有用な化合物、例えばメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等を含有する。
【0044】
本発明の方法による送達のための生物活性薬剤を含有するクリームは粘稠な液体または半固体の水注油または油中水の何れかのエマルジョンである。クリーム基材は水洗浄可能であり、油層、乳化剤および水層を含有する。場合により「内部」相とも称される油層は、通常はワセリンおよび脂肪アルコール、例えばセチルまたはステアリルアルコールを含有し、水層は通常は必須ではないが容量で油層を超過し、そして一般的には湿潤剤を含有する。クリーム製剤中の乳化剤は前出のRemington:The Science and Practice of Pharmacyにおいて説明されている通り、一般的にノニオン系、アニオン系、カチオン系、両性イオン系の界面活性剤である。
【0045】
ゲル製剤もまた本発明との関連において使用できる。局所用薬剤製剤の分野で周知の通り、ゲルは半固体の懸濁型の系である。単層ゲルは、典型的には水性であるが好ましくはアルコールおよび場合により油を含有するキャリア液体全体に渡り実質的に均一に分布した有機巨大分子を含む。
【0046】
本発明の有用な製剤はスプレーも包含する。スプレーは一般的には送達のために皮膚に霧吹きすることができる水性および/またはアルコール性の溶液中に生物活性薬剤を含有する。このようなスプレーは送達後に投与部位において生物活性薬剤溶液の濃縮をもたらすように製剤したものを包含し、例えばスプレー溶液は主に、薬剤または生物活性薬剤を溶解できるアルコールまたは他の同様の揮発性液体よりなる。皮膚への送達により、キャリアは蒸発し、投与部位には濃縮された生物活性薬剤が残存する。
【0047】
本発明の薬学的組成物はまた局所投与または経皮投与に適合したパッチ、ストリップおよびコンテナのようなデバイス中においても有用である。経皮薬剤送達(TDD)パッチは患者の皮膚を通過して薬剤の治療有効量を送達するように設計される。経皮パッチは典型的には薬剤を配合した液体、ゲル、固体マトリックスまたは感圧性の接着剤キャリアを使用する。最も初期のTDDシステムは薬剤放出の速度を制御するために膜を使用したリザーバ型のデバイスであった。今日では、薬剤はより一般的には感圧接着剤(PSA)マトリックス内に分散または溶解される。パッチ製剤および調製法は当該分野で知られている。例えば「Dermatological and Transdermal Formulations」(Drugs and the Pharmaceutical Sciences,Vol.119), Kenneth A.Walters(編),Marcel Dekkerおよび「Transdermal Drug Delivery」(Drugs & Pharmaceutical Sciences), Richard H.Guy(編),Jonathan Hadgraft(編) 2nd Rev&ex edition Marcel Dekkerおよび「Mechanisms of Transdermal Drug Delivery」(Drugs & the Pharmaceutical Sciences,Vol.83), Russell O.Potts、Richard H.Guy編(1997)を参照できる。
【0048】
本発明の医薬品製剤は、例えば皮膚に固着すべき薬剤送達デバイスとして機能する層状構造内に薬剤組成物および浸透増強剤が含有されるパッチとして提供してよい。このような構造においては、薬学的組成物は上側の裏張り層の下部に伏在する送達手段、即ち「リザーバ」内に含有される。層状構造は単一のリザーバを含んでよく、或は、複数のリザーバを含んでよい。薬剤の経皮送達のためのパッチ、即ち閉鎖接着デバイスはまた、米国特許4,849,224;4,983,395;5,152,997および5,302,395号に記載されている。このようなデバイスは一般的には皮膚表面への接着のためのパッチであり、そしてマトリックスまたはリザーバ型の何れかであってよい。このようなパッチは閉鎖裏張りを含んでいてもいなくても良い。
【0049】
本発明において使用するのに適する送達デバイスは当該分野で知られた従来の方法を用いて、例えば接着剤、生物活性薬剤およびキャリア/ビヒクルの液体混合物を裏張り層上に流し込み、その後離型ライナを積層することにより作成してよい。同様に接着剤混合物は離型ライナに流し込んだ後に、裏張り層を積層してもよい。或は、リザーバは医薬品製剤または賦形剤の非存在下に調製し、次に薬剤/ビヒクル混合物中に「浸積」することにより負荷してもよい。
【0050】
送達デバイスの上面として機能するパッチの積層体の裏張り層は積層構造の主要構造要素として機能し、そして特定の用途で必要とされる可撓性および剛性を有するデバイスを与えてよい。裏張り材料のために選択される材料は、それが実質的に医薬品製剤に対して不透過性であり、これによりデバイスの上面を経由する如何なる成分の損失も防止し、そして、リザーバ内の組成物の分解を抑制できるように選択しなければならない。裏張り層は薬剤送達の間に皮膚が湿潤していることが望まれるかどうかに応じて、閉鎖または非閉鎖の何れかであってよい。裏張りは好ましくは可撓性のエラストマー材料のシートまたはフィルムより作成される。裏張り層に適する重合体の例はポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等を包含する。
【0051】
保存の間、および、使用の前において、パッチは離型ライナを有する。使用直前にこの層をデバイスから除去することにより、リザーバそのものであるかまたは個別の接着剤層の何れかであってよいデバイスの皮膚接触表面を露出させ、その際、システムが皮膚に固着されるようにする。離型ライナは好ましくは製剤中の薬剤および他の成分に対して実質的に非透過性の材料、例えばポリエチレンおよびシリコーンから作成する。これらのライナは当該分野でよく知られており、例えば3M Drug Delivery Systems(Minnesota)から販売されている。
【0052】
パッチにおいて有用な接着剤は当該分野でよく知られている(例えばS.Venkatraman and R.Gale,「Skin Adhesives and Skin Adhesion, Part I:Transdermal Drug Delivery System」,Biomaterials 19,1119−1136(1998) and G.Auchter et al.,「Acrylic Adhesives」,Handbook of Pressure Sensitive Adhesive Technology,D.Statas,Ed.(Satas&Associates,Warwick,RI,3ed.,1999),pp.444−514参照)。感圧接着剤は好ましくは非刺激性、軟質および粘着性であり、そして、表面を湿潤させ、接着剤を溶解または複合体化するある程度の能力を有し、安定(即ち保存中または投与時間中に分解しない)であり、そして、除去後に残留物を与えない。TDDシステムのために最も一般的に使用されている接着剤はアクリレート、シリコーンおよびポリイソブチレンの重合体および共重合体である。アクリレートは、種々の薬剤、賦形剤および特定の生成物の要件に関して広範な性能を達成するために適切な添加剤を用いて調節することができる。感圧接着剤の一部の例としてはDuro−Tak(登録商標)87−2196、Duro−Tak(登録商標)87−2097を挙げることができる。
【0053】
ギルソナイト油またはギルソナイト油混合物と共に氏王でキル生物活性薬剤は身体表面または膜、例えば皮膚および爪の表面を経由して通常送達される広範なクラス内の薬剤を包含する。一般的に、これは主要な領域の全てにおける治療薬、例えばACE阻害剤、腺下垂体ホルモン、アドレナリン作用性ニューロンブロッキング剤、副腎皮質ステロイド、副腎皮質ステロイド生合成抑制剤、アルファアドレナリン作用性アゴニスト、アルファアドレナリン作用性拮抗剤、選択的アルファ2アドレナリンアゴニスト、鎮痛剤、抗発熱剤および抗炎症剤、アンドロゲン、局所および全身麻酔薬、抗中毒剤、抗アンドロゲン剤、抗不整脈剤、抗喘息剤、抗癌剤、抗コリン作用性剤、抗コリンエステラーゼ剤、抗業ござい、抗糖尿病剤、抗下痢剤、抗利尿剤、抗嘔吐剤およびプロ運動性薬剤、抗癲癇剤、抗エストロゲン剤、抗カビ剤、抗高血圧剤、抗微生物剤、抗偏頭痛剤、抗ムスカリン剤、抗新生物剤、抗寄生虫剤、抗パーキンソン病剤、抗血小板剤、抗プロゲスチン剤、抗工場全剤、鎮咳剤、抗ウィルス剤、非定型抗欝剤、アザスピロデカンジオン、バルビツレート、ベンゾジアゼピン、ベンゾチアジアジド、ベータ−アドレナリン作用アゴニスト、ベータ−アドレナリン作用拮抗剤、選択的ベータ−1−アドレナリン作用拮抗剤、選択的ベータ−2−アドレナリン作用アゴニスト、胆汁酸、身体水分の容量および組成に影響する薬剤、ブチロフェノン、石灰化に影響する薬剤、カルシウムチャンネルブロッカー、心臓血管剤、カテコールアミンおよび交感神経様作用性の薬剤、コリン作用アゴニスト、コリンエステラーゼ再活性化剤、皮膚科薬、ジフェニルブチルピペリジン、利尿剤、麦角アルカロイド、エストロゲン、神経節遮断剤、神経節刺激剤、ヒダントイン、胃酸制御および消化性潰瘍治療のための薬剤、増血剤、ヒスタミン、ヒスタミン拮抗剤、5−ヒドロキシトリプタミン拮抗剤、高リポ蛋白血症治療薬、催眠剤および鎮静剤、免疫抑制剤、緩下剤、メチルキサンチン、モノアミンオキシダーゼ阻害剤、神経筋肉ブロッキング剤、有機ニトレート、麻薬様鎮痛剤および拮抗剤、膵臓酵素、フェノチアジン、プロゲスチン、プロスタグランジン、精神病治療薬、レチノイド、ナトリウムチャンネルブロッカー、痙性および急性筋肉痙攣の薬剤、スクシンイミド、チオキサンチン、血栓溶解剤、甲状腺薬剤、3環抗欝剤、有機化合物の尿細管輸送の抑制剤、子宮運動性に影響する薬剤、血管拡張剤、薬草エキス、ビタミン等を包含する。
【0054】
限定を意図しない薬剤の代表は、ベプリジル、ジルチアゼム、フェロジピン、イスラジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニモジピン、ニトレジピン、ベラパミル、ドブタミン、イソプロテレノール、カテロロール、ラベタロール、レボブノロール、ナドロール、ペンブトロール、ピンドロール、プロプラノロール、ソタロール、チモロール、アセブトロール、アテノロール、ベタキソロール、エスモロール、メトプロロール、アルブテロール、ビトルテロール、イソエタリン、メタプロテレノール、ピルブテロール、リトドリン、テルブタリン、アルクロメタゾン、アルドステロン、アムシノニド、ベクロメタゾン、ジプロピオネート、ベタメタゾン、クロベタゾール、クロコルトロン、コルチゾール、コルチゾン、クロチコステロン、デソニド、デスオキシメタゾン、11−デスオキシコルチコステロン、11−デスオキシコルチゾール、デキサメタゾン、ジフロラゾン、フルドロコルチゾン、フルニソリド、フルオシノロン、フルシノニド、フルロメトロン、フルランドレノリド、ハルシノニド、ヒドロコルチゾン、メドリソン、6−α−メチルプレドニソロン、モメタゾン、パラメタゾン、プレドニソロン、プレドニソン、テトラヒドロコルチゾール、トリアムシノロン、ベノキシネート、ベンゾカイン、ブピバカイン、クロロプロカイン、コカイン、ジブカイン、ジクロニン、エチドカイン、リドカイン、メピバカイン、パラモキシン、プリロカイン、プロカイン、プロパラカイン、テトラカイン、アルフェンタニル、クロロホルム、クロニジン、シクロプロパン、デスフルラン、ジエチルエーテル、ドレペリドール、エンフルラン、エトミデート、フェンタニル、ハロタン、イソフラン、塩酸ケタミン、メピリジン、メトヘキシタール、メトキシフラン、モルヒネ、プロポフォール、セボフルラン、スフェンタニル、チアミラール、チオペンタール、アセトアミノフェン、アロプリノール、アパゾン、アスピリン、アウラノフィン、アウロチオグルコース、コルヒチン、ジクロフェナク、ジフルニサール、エトドラック、フェノプロフェン、フルビプロフェン、金ナトリウムチオマレート、イブプロフェン、インドメタシン、インスリン、ケトプロフェン、メクロフェナメート、メフェナミン酸、メセラミン、メチルサリシレート、ナブメトン、ナプロキセン、ニコチン、オキシフェンブタゾン、フェナセチン、フェニルブタゾン、ピロキシカム、サリチルアミド、サリシレート、サリチル酸、サルサレート、スルファサラジン、スリンダック、トリメトリン、アセトフェナジン、クロルプロマジン、フルフェナジン、メソリダジン、ペルフェナジン、チオリダジン、トリフルオルペラジン、トリフルプロマジン、ジソピラミド、エンカイニド、フレカイニド、インデカイニド、メキシレチン、モリシジン、フェントリン、プロカインアミド、プロパフェノン、キニジン、トカイニド、シサプリド、ドムペリドン、ドロナビノール、ハロペリドール、メトクロプラミド、ナビロン、プロクロペラジン、プロメタジン、チエチルペラジン、トリメトベンザミド、ブプレノルフィン、ブトルファノール、コデイン、デゾシン、ジフェノキシレート、ドロコード、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、レバロルファン、レボルファノール、ロペラミド、メプラジノール、メタドン、ナルブフィン、ナルメフェン、ナロルフィン、ナロキソン、ナルトレキソン、オキシブチニン、オキシコドン、オキシモルホン、ペンタゾシン、プロポキシフェン、イソソルビドジニトレート、ニトログリセリン、テオフィリン、フェニルエフェリン、エフェドリン、ピロカルピン、フロセミド、テトラサイクリン、クロルフェニラミン、ケトロラック、ブロモクリプチン、グアナベンズ、プラゾシン、ドキサゾシンおよびフルフェナミン酸を包含する。
【0055】
他の代表的薬剤はベンゾジアゼピン類、例えばアイプラゾラム、ブロチゾラム、クロルジアゼポキシド、クロバザム、クロナゼパム、クロラゼペート、デモキシパム、ジアゼパム、フルマゼニル、フルラゼパム、ハラゼパム、ロラゼパム、ミダゾラム、ニトラゼパム、ノルダゼパム、オキサゼパム、プラゼパム、クルアゼパム、テマゼパム、トリアゾラム等;抗ムスカリン剤類、例えばアニソトロピン、アトロピン、クリジニウム、シクロペントレート、ジシクロミン、フラボキセート、グリコピロレート、ヘキソサイクリウム、ハマトロピン、イプラトロピン、イソプロパミド、メペンゾレート、メタンセリン、オキシフェンサイクリミン、ピレンゼピン、プロパテリン、スコポラミン、テレゼピン、トリジヘキセチル、トロピカミド等;エストロゲン類、例えばクロロトリアニセン、シエチルスチルベストロール、メチルエストラジオール、エストロン、エストロンナトリウムスルフェート、エストロピペート、メストラノール、キネストロール、ナトリエクイリンスルフェート、17−ベータ−エストラジオール(またはエストラジオール)、半合成エストロゲン誘導体、例えば天然エストロゲンのエステル、例えばエストラジオール−17−β−エナンテート、エストラジオール−17−β−バレレート、エストラジオール−3−ベンゾエート、エストラジオール−17−β−ウンデセノエート、エストラジオール16,17−ヘミスクシネートまたはエストラジオール−17−β−シピオネート、および17−アルキル化エストロゲン類、例えばエチニルエストラジオール、エチニルエストラジオール−3−イソプロピルスルホネート等;アンドロゲン、例えばダナゾール、フルオキシメステロン、メタアンドロステノロン、メチルテストステロン、ナンドロロンデカノエート、ナンドロロンフェンプロピオネート、オキサンドロロン、オキシメトロン、スタノゾロール、テストラクトン、テストステロン、テストステロンシピオネート、テストステロンエナンテート、テストステロンプロピオネート等;またはプロゲスチン、例えばエチノジオールジアセテート、ゲストデン、ヒドロキシプロゲステロンカプロエート、レボノルゲストレル、メドロキシプロゲステロンアセテート、ノルエチンドロン、ノルエチンドロンアセテート、ノルエチノドレル、ノルゲステロール、プロゲステロン;免疫抑制剤、例えばシクロスポリン等を包含する。
【0056】
製剤中に存在し、そして治療効果を得るために必要である薬剤の量は、多くの要因、例えば特定の薬剤の最小必要用量に応じて異なり、そして、大部分では関連する状況、例えば治療すべき状態、選択された投与経路、投与する実際の化合物、個々の患者の年齢、体重および応答、患者の症状の重症度等に鑑みて医師が決定する。
【0057】
本発明の浸透増強剤製剤を使用しない場合の生理学的に活性名物質の適切な用量水準は当業者の知るとおりである。このような従来の用量水準は生理学的に活性な物質および伝統的な浸透増強剤を含む組成物の用量水準の上限に相当する。しかしながら、活性物質の送達はギルソナイト油エキスにより増強されるため、従来の製剤よりも有意に低値の薬剤濃度を含む製剤で所望の用量水準が達成できる。一般的に活性物質は使用する特定の物質に応じて、総組成物の約0.0001%〜約60%、より好ましくは約0.001%〜約20重量%の量で組成物中に存在する。しかしながら、一般的には総組成物の約0.01〜約25重量%の範囲の量であり、約0.05〜約10%の水準が好ましい。
【0058】
本発明の実施によれば、局所治療用法は皮膚または粘膜、即ち適用部位に対して、一日当たり1回〜数回直接組成物を適用することを包含する。
【0059】
本発明の製剤は疾患および状態、またはそのような疾患および状態に関わる症状、例えば疼痛、乾癬、乾燥皮膚、しゅさ、刺激、日焼け、カビ感染、細菌感染、禿頭症、ホルモン不均衡等の治療、軽減または予防のために使用できる。さらにまた、本発明は避妊製剤中にも使用できる。
【0060】
表皮の角質層および角質化粘膜を含む上皮の主要な機能は身体水分の過剰な損失を防止することである。上皮の障壁機能が崩壊または混乱すれば、それは表皮および粘膜における種々の代謝の変化を刺激し、障壁の欠陥の修復をもたらす。紫外線照射、乾燥、化学物質、摩擦および切断外傷による損傷に対する保護のためには障壁は有益である一方、それは宿主に対して潜在的に有益である局所適用された医薬の経皮および経粘膜の浸透を妨害する。生理学的活性物質が上皮に浸透できないことは、皮膚および粘膜のみならず、全身性の疾患状態および障害を治療するためのその有効利用を大きく制約する。本発明の組成物は水溶性および脂溶性の薬剤の双方の送達を増強する。
【0061】
上記の通り、経皮治療の奏功の程度が多様である種々の医薬品製剤が開発されている。当業者の知るとおり、要因には分子が上皮障壁を通過して輸送される際の速度には粒径への依存性がある。障壁を通過するより大きい分子の流入は典型的には小型分子の場合よりも低値である。後に記載する実施例3〜5はギルソナイト油が小型、中型およびより大型の分子のための有効な浸透増強剤であることを示している。カフェイン、ヒドロコルチゾンおよび分子量502〜766の一連のPEG分子をそれぞれ、小型、中型およびより大型の分子のためのモデル化合物として選択した。一連のPEGを使用して得られた結果はギルソナイト油の存在下および非存在下において、増大した分子量または粒径では低減した透過を示している。ギルソナイト油を用いた前処理は全てのPEG分子試験について有意に大きい流入をもたらした。
【0062】
ギルソナイト油を含む薬学的組成物は単独または既存の前処理製剤、例えばギルソナイト油組成物の適用前の前処理として、またはギルソナイト油組成物の適用後の後処理として、またはギルソナイト油組成物中に含まれるかその一部としてのDMSOと組み合わせた薬品製剤を用いた治療と比較して増強された浸透を可能とする。ギルソナイト油および生物活性薬剤を含む医薬品製剤はギルソナイト油を含有しない薬品製剤、または、既存の浸透増強剤、例えばDMSOを含む薬品製剤と比較して生物活性薬剤の増強された浸透を可能にする。ギルソナイト油製剤の浸透増強特性はそれらが小型分子、中型分子または大型分子であるかに関わらず、生物活性薬剤にとって有効である。
【0063】
ギルソナイト製剤の初期スクリーニングはマウスを用いた従来の経表皮水分損失(TEWL)試験により実施する。例えば各油試料を4日間1日2回マウスに局所適用する。室温で液体の試料については、約40〜約80μLの油の試料を皮膚表面に適用する。室温で固体の試料については、約40〜約60mgの油の試料を皮膚表面に適用する。TEWLおよび皮膚水分付加はMeecoデバイス(Warrington,PA)およびCorneometer(CM−820型、Courage&Khazak,Germany)をそれぞれ用いながら当該分野で知られた手法を用いて測定した。
【0064】
ギルソナイト油製剤のその後の評価は皮膚浸透試験により行う。皮膚浸透試験はフロースルー拡散セル(Laboratory Glass Apparatus, Berkeley, CA)を用いて実施できる。拡散セルは循環水浴を用いて一定温度に維持する。皮膚を表皮側をレシーバーチャンバーに向けて拡散セル上に搭載する。蠕動ポンプ(Ismatec,Glattbrug−Zurich,Switzerland)を用いて3〜4mL/hの流量でレシーバーコンパートメントを経由して等張液を送液する。外側の皮膚表面に予備投与している場合は、残余の予備投与液を除去し、皮膚表面を洗浄する。
【0065】
放射標識された被験化合物の適当な量を含有する被験溶液を皮膚表面に適用することができ、そして次に上方のドナーセルをパラフィルムで密封する。陽性対照実験においては、皮膚にジメチルスルホキシド(DMSO)を2時間予備投与する。レシーバー液を攪拌し、試料を所定の時間間隔で約12時間に渡り、RetrieverIVフラクションコレクター(ISCO,Lincoln,NE)を用いて収集する。各画分をReady Safe(登録商標)と混合し、BeckmanLS5000TA液体シンチレーションカウンターで分析する。皮膚を経由する流入を浸透薬剤の累積量vs時間の曲線の直線部分の傾きから計算する。
【0066】
本発明は上記の通りその好ましい実施形態に関して説明したが、種々の変更および改変は当業者には自明であり、そしてそのような変更および改変は添付する請求項の範囲内に属するものとする。以下の非限定的な実施例は本発明をさらに説明するために提示する。
【実施例】
【0067】
以下の実施例において、以下の略記用語は以下の通りの意味を有するものとする。略記用語が特に定義されない場合は、一般的に許容されている意味を有するものとする。
cps=センチポアズ
EtOH=エタノール
h=時間
HPLC=高速液体クロマトグラフィー
M=モル
mg=ミリグラム
min.=分
mL=ミリリットル
mm=ミリメートル
mM=ミニモルの
mmol=ミニモル
N=規定
NS=標準塩水
psi=ポンド/平方インチ
PEG=ポリエチレングリコール
μm=マイクロメートル
μM=マイクロモルの
μL=マイクロリットル
%mol=モルパーセント
TEWL=経表皮水分損失
以下の実施例および操作法において、操作に使用した従来の化合物および試薬はよく知られた入手元より販売されている。実施例中に指定して使用したギルソナイト油はAmerican Gilsonite Company,San Francisco,Californiaから入手した。
【0068】
(実施例1)
(経表皮水分損失(TEWL)および皮膚水分付加水準に対するギルソナイト油の作用の測定)
皮膚の主要機能の1つは身体内部の水分の保持である。従って、経表皮水分損失(TEWL)および皮膚水分付加の値は障壁機能を評価するための有用な手段である。本明細書に記載する実験において、皮膚水分付加およびTEWLは試験した油の反復適用の後のヘアレスマウスにおいて測定した。
【0069】
各油試料につきマウス4匹を試験し、試料は4日間1日2回マウスに局所適用した。室温で液体の試料については油60μLを皮膚表面に適用した。室温で固体の試料については、油約60mgを皮膚表面に適用した。TEWLはMeecoデバイス(Warrington,PA)で測定し、皮膚水分付加はCorneometer(CM−820型、Courage&Khazak,Germany)を用いて測定した。結果は試験した全ての油2ついて反復油投与による水分付加の一貫した低下(表1)およびTEWLの増大(表2)を示している。水分付加の低下およびTEWLの増加は測定最終日を第0日に得られた投与前値と比較した場合に統計学的に有意(t検定、p>0.95)である。
【0070】
【表1】

【0071】
【表2】

これらの結果は試験した全ての局所適用油が投与皮膚を経由する増大した水分輸送と合致して、TEWLを増大させ、皮膚水分付加を低下させたことを示している。
【0072】
(実施例2)
(PEG600の皮膚浸透に対するギルソナイト油の作用)
腹部ブタ皮膚を地元食肉処理場より入手した。皮膚入手直後に剃毛し、デルマトームを用いて皮膚を500μmの厚みに切片化した。デルマトーム処理皮膚のシートを標準塩水(NS)に浸積したティッシュペーパーの間に挟み、使用時まで−70℃で保存した。
【0073】
皮膚浸透試験は拡散面積1cm、レシーバー容量は3.6mLのフロースルー拡散セル(Laboratory Glass Apparatus,Berkeley,CA)を用いて実施した。拡散セルは循環水浴を用いて37℃の一定温度に維持した。
【0074】
拡散測定のための油試料はエタノール(EtOH)に等量の油を混合することにより調製した。平衡化の後、上澄みを用いて皮膚に予備投与した。表皮側をレシーバーチャンバーに向けながら皮膚を拡散セル上に搭載した。等張溶液(pH7.4、リン酸塩緩衝食塩水−PBS)を蠕動ポンプ(Ismatec,Glattbrug−Zurich,Switzerland)を用いて3〜4mL/hの流量でレシーバーコンパートメントを経由して等張液を送液した。外側の皮膚表面は油/EtOH溶液500μLまたはHO/EtOH(1:1体積比)の対照溶液を用いて24時間予備投与した。24時間の終了時に、残存する溶液を除去し、皮膚表面をEtOH200μLで2回、そしてNS200μLで1回洗浄した。
【0075】
皮膚予備投与および線状の後、各拡散セルの排出口をそれ自体の導入口に連結することによりレシーバーコンパートメントを閉鎖した。NS中0.25MのPEG600の溶液(500μL)を皮膚表面に適用し、ドナーセルの上面をパラフィルムで密封した。PEG600はポリエチレングリコールのオリゴマーの混合物である。レセプター液を小型のテフロン(登録商標)コーティング磁石を用いて700rpmで攪拌した。12時間終了時に、全レシーバー液を空にし、ガラス管内に収集した。陽性対照群実験においては、皮膚にジメチルスルホキシド(DMSO)を2時間予備投与した。
【0076】
PEG600試料中の個々のオリゴマーの分離および定量は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて行った。HPLCシステムの構成は510型ポンプ(Waters Co.,Milford,MA,USA)および717プラスオートサンプラー(Waters)、C8逆相カラム(Microsorb−MVc,5μm、4.6x250mm,Ranin Instrument,Woburn,MA,USA)とした。メタノール−水(40:60体積比)の移動層を1mL/分の流量で供給した。シリーズ200の屈折率検出器(Perkin Elmer Co.,Norwalk,CT,USA)を用いてカラムから溶出するPEGオリゴマーを検出した。屈折率検出器は35℃の一定温度に維持した。
【0077】
12時間の終了時に、全レシーバー液を空にし、15mLのパイレックス(登録商標)管に収集し、その後の凍結乾燥と抽出に付した。凍結乾燥の後、試料にクロロホルム10mLを添加し、その後高速で1分間回転混合することによりPEGを抽出した。次に溶媒を少なくとも30分間試料に接触させたまま残存させた。試料を10分間3000rpmで遠心分離し、上澄みを清潔な試験管に移した。クロロホルム抽出の2回目を行い、合わせた上澄みを窒素ガス気流下に50℃で蒸発乾固させた。次に残留物をHPLC移動層1mLに溶解した。この試料をHPLCに注入して分析した。
【0078】
試験標準物質は0.05〜10mg/mLの濃度範囲のPEG6001mLを凍結乾燥し、その後上記したとおり抽出することにより調製した。HPLCカラム中に注入した後、各オリゴマーの屈折率ピーク面積を標準物質の重合体濃度に対してプロットした。濃度にピーク面積を関連付ける回帰式を各オリゴマーについて計算した。未知試料中の各オリゴマーのピーク面積を計算し、回帰式を用いて存在するPEGの相対量に変換した。PEG600標準物質のクロマトグラムの最大ピークを平均値に最も近いMWを有するオリゴマー、即ち590DaのMWを有するオリゴマーに割り付けた。合計で14種のオリゴマーがPEG600試料中に検出された。しかしながら、量が限定され、低シグナルを伴っていたため、502〜766DaのMWを有するオリゴマーに関するデータのみが測定された。抽出回収率は約60%〜103%の範囲であった。
【0079】
下記に示す表からわかるとおり、油BおよびYは対照と比較してPEG流入を統計学的に有意に増大させた。
【0080】
【表3】

(実施例3)
(ヒドロコルチゾンの皮膚浸透に対するギルソナイト油の作用)
実験セットアップおよび皮膚予備投与の操作法は上記実施例2に記載の通りとした。24時間の予備投与の終了時に、残存する溶液を除去し、皮膚表面をEtOH200μLで2回、NS200μLで1回洗浄した。放射標識化合物(3H−ヒドロコルチゾン)の適量を含有するヒドロコルチゾン(NS中0.1mg/mL)溶液(500μL)を皮膚表面に適用し、ドナーセルの上面をパラフィルムで密封した。陽性対照群実験においては、皮膚にジメチルスルホキシド(DMSO)を2時間予備投与した。レシーバー液を小型のテフロン(登録商標)コーティング磁石を用いて700rpmで攪拌した。試料は12時間に渡り1時間間隔でRetrieverIVフラクションコレクター(ISCO,Lincoln,NE)を用いて収集した。各画分をReady Safe(登録商標)10mLと混合し、BeckmanLS5000TA液体シンチレーションカウンターで分析した。皮膚を経由する流入を浸透薬剤の累積量vs時間の曲線の直線部分の傾きから計算した。
【0081】
以下の表からわかるとおり、対照群と比較して流入の統計学的に有意な増大、遅れ時間の減少、および、12時間透過の増大が油1、A、B、C、X、YおよびQで観察された。
【0082】
【表4】

(実施例4)
(カフェインの皮膚浸透に対するギルソナイト油の作用)
実験セットアップおよび皮膚予備投与の操作法は上記実施例3に記載の通りとした。24時間の予備投与の終了時に、残存する溶液を除去し、皮膚表面をEtOH200μLで2回、NS200μLで1回洗浄した。放射標識化合物(14C−カフェイン)の適量を含有するカフェイン(NS中5.3mg/mL)溶液(500μL)を皮膚表面に適用し、ドナーセルの上面をパラフィルムで密封した。陽性対照群実験においては、皮膚にジメチルスルホキシド(DMSO)を2時間予備投与した。レシーバー液を小型のテフロン(登録商標)コーティング磁石を用いて700rpmで攪拌した。試料は12時間に渡り1時間間隔でRetrieverIVフラクションコレクター(ISCO,Lincoln,NE)を用いて収集した。各画分をReady Safe(登録商標)10mLと混合し、BeckmanLS5000TA液体シンチレーションカウンターで分析した。皮膚を経由する流入を浸透薬剤の累積量vs時間の曲線の直線部分の傾きから計算した。
【0083】
以下の表からわかるとおり、対照群と比較して流入の統計学的に有意な増大が油2を除く全てで観察された。統計学的に有意な遅れ時間の減少および12時間透過の増大が全油において観察された。
【0084】
【表5】

本明細書に示した開示は本発明の概念を実現可能に説明する開示であることを意図しており、添付する請求項に明示する本発明の範囲を制限する意図はない。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1A】図1Aは典型的な経表皮水分損失即ち「TEWL」vs時間のグラフである。
【図1B】図1Bは皮膚水分付加に対するギルソナイト油の作用を示すグラフである。
【図2】図2は分子量の関数としてのポリエチレングリコール(PEG)分子の12時間に渡る%浸透を示すグラフである。
【図3】図3はブタ皮膚試料中の12時間に渡るヒドロコルチゾンを含むギルソナイト油組成物からの総ヒドロコルチゾン透過を示すグラフである。
【図4】図4はブタ皮膚試料中の12時間に渡るカフェインを含むギルソナイト油組成物からの総カフェイン透過を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
局所投与または経皮投与のための組成物であって、以下:
(i)生物活性薬剤;および
(ii)ギルソナイト油
を含む、組成物。
【請求項2】
薬学的に受容可能なキャリアをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
賦形剤、保存剤、抗酸化剤、芳香剤、乳化剤、染料、接着剤、重合体およびさらなる浸透増強剤よりなる群から選択される薬学的に受容可能な添加剤をさらに含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記生物活性薬剤が約0.0001重量%〜約50重量%で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ギルソナイト油が約0.0001重量%〜約50重量%で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
浸透増強システムであって、以下:
(i)ギルソナイト油;および
(ii)薬学的に受容可能なキャリア
を含む、振盪増強システム。
【請求項7】
薬学的に受容可能なキャリアをさらに含む請求項6に記載の浸透増強システム。
【請求項8】
賦形剤、保存剤、抗酸化剤、芳香剤、乳化剤、染料、接着剤、重合体およびさらなる浸透増強剤よりなる群から選択される薬学的に受容可能な添加剤をさらに含む、請求項7に記載の浸透増強システム。
【請求項9】
前記生物活性薬剤が約0.0001重量%〜約50重量%で存在する、請求項6に記載の浸透増強システム。
【請求項10】
前記ギルソナイト油が約0.0001重量%〜約50重量%で存在する、請求項6に記載の浸透増強システム。
【請求項11】
増強された浸透性を有する、局所適用または経皮適用のための組成物であって、以下:
(a)生物活性薬剤;ならびに
(b)浸透増強システムであって、以下:
(i)ギルソナイト油;および
(ii)薬学的に受容可能なキャリア;
を含む、浸透増強システム;
を含む、組成物。
【請求項12】
前記薬学的に受容可能なキャリアがオイル、ローション、ゲル、クリームおよび軟膏よりなる群から選択される、請求項11に記載の局所適用または経皮適用のための組成物。
【請求項13】
前記薬学的に受容可能なキャリアが経皮パッチと共に使用するために適している、請求項11に記載の局所適用または経皮適用のための組成物。
【請求項14】
賦形剤、保存剤、抗酸化剤、芳香剤、乳化剤、染料、接着剤、重合体およびさらなる浸透増強剤よりなる群から選択される薬学的に受容可能な添加剤をさらに含む、請求項12に記載の局所適用または経皮適用のための組成物。
【請求項15】
前記生物活性薬剤が約0.0001%〜約50重量%で存在する、請求項12に記載の局所適用または経皮適用のための組成物。
【請求項16】
前記ギルソナイト油が約0.0001%〜約50重量%で存在する、請求項12に記載の局所適用または経皮適用のための組成物。
【請求項17】
ヒトまたは温血動物の皮膚を通しての生物活性薬剤の浸透を増強するための方法であって、以下:
(a)生物活性薬剤;ならびに
(b)浸透増強システムであって、以下:
(i)ギルソナイト油;および
(ii)薬学的に受容可能なキャリア
を含む、浸透増強システム;
を身体表面に適用することを含む、方法。
【請求項18】
前記薬学的に受容可能なキャリアがオイル、ローション、ゲル、クリーム、接着剤および軟膏よりなる群から選択される、請求項17に記載の浸透増強方法。
【請求項19】
前記薬学的に受容可能なキャリアが経皮パッチと共に使用するために適している、請求項17に記載の浸透増強方法。
【請求項20】
賦形剤、保存剤、抗酸化剤、芳香剤、乳化剤、染料、接着剤、重合体およびさらなる浸透増強剤よりなる群から選択される薬学的に受容可能な添加剤をさらに含む、請求項18に記載の浸透増強方法。
【請求項21】
前記生物活性薬剤が約0.0001重量%〜約50重量%で存在する、請求項18に記載の浸透増強方法。
【請求項22】
前記ギルソナイト油が約0.0001重量%〜約50重量%で存在する、請求項18に記載の浸透増強方法。
【請求項23】
生物活性薬剤を経皮的に送達するための方法であって、該方法は、以下:
(i)生物活性薬剤;および
(ii)ギルソナイト油
を含む組成物を皮膚に投与することを含む、方法。
【請求項24】
オイル、ローション、ゲル、クリームおよび軟膏よりなる群から選択される薬学的に受容可能なキャリアをさらに含む、請求項23に記載の生物活性薬剤を経皮的に送達するための方法。
【請求項25】
前記薬学的に受容可能なキャリアが経皮パッチと共に使用するために適している、請求項24に記載の生物活性薬剤を経皮的に送達するための方法。
【請求項26】
賦形剤、保存剤、抗酸化剤、芳香剤、乳化剤、染料、接着剤、重合体およびさらなる浸透増強剤よりなる群から選択される薬学的に受容可能な添加剤をさらに含む、請求項24に記載の経皮的に生物活性薬剤を送達するための方法。
【請求項27】
前記生物活性薬剤が約0.0001重量%〜約50重量%で存在する、請求項24に記載の経皮的に生物活性薬剤を送達するための方法。
【請求項28】
前記ギルソナイト油が約0.0001重量%〜約50重量%で存在する、請求項24に記載の経皮的に生物活性薬剤を送達するための方法。
【請求項29】
所望の使用のための組成物を与えるのに有効な比率で生物活性薬剤およびギルソナイト油を混合することを含む生物活性薬剤の経皮送達のための組成物の製造方法。
【請求項30】
オイル、ローション、ゲル、クリーム、接着剤および軟膏よりなる群から選択される薬学的に受容可能なキャリア中に混合することをさらに含む、請求項29に記載の経皮送達のための組成物の製造方法。
【請求項31】
少なくとも1つの薬学的に受容可能な浸透を増強する、添加剤、賦形剤、保存剤、抗酸化剤、芳香剤、乳化剤または染料中に混合することをさらに含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
薬学的組成物の局所投与または経皮投与のためのデバイスであって、該デバイスが、以下:
(a)皮膚または爪の上に設置するために適合したアプリケーター;ならびに
(b)薬学的組成物であって、以下:
(i)ギルソナイト油;および
(ii)生物活性薬剤
を含む、薬学的組成物;
を備える、デバイス。
【請求項33】
前記デバイスが経皮パッチ、ストリップまたはコンテナである、請求項32に記載のデバイス。
【請求項34】
前記デバイスが経皮パッチであり、そして薬学的に受容可能なキャリアが経皮パッチと共に使用するために適している、請求項33に記載のデバイス。
【請求項35】
前記生物活性薬剤が約0.0001重量%〜約50重量%で存在し、そして前記ギルソナイト油が約0.0001重量%〜約50重量%で存在する、請求項33に記載のデバイス。
【請求項36】
薬剤投与のためのデバイスの製造方法であって、皮膚または爪の上に設置するために適合したアプリケーターを提供する工程、ならびに、ギルソナイト油および生物活性薬剤を含む組成物をアプリケーター内に取り込む工程を包含する、方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−515617(P2006−515617A)
【公表日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−500782(P2006−500782)
【出願日】平成16年1月2日(2004.1.2)
【国際出願番号】PCT/US2004/000089
【国際公開番号】WO2004/062628
【国際公開日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(505250306)ディーピーシー プロダクツ, インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】