説明

クイックシフト式圧延設備

【課題】圧延ラインに直交する方向に圧延機を移動する際の位置決め精度が高く、軽量でメンテナンス性にも優れたクイックシフト式圧延設備を提供する。
【解決手段】クイックシフト式圧延設備10は、基礎架台11のシフトレール12上を車輪13で移動可能な圧延機14を有し、圧延機14のスタンド15の前後の左右両側の脚部16、16aに昇降自在な車輪ユニット19をそれぞれ設置し、車輪ユニット19には基礎架台11に掛止可能なクランプ機構20が設けられ、油圧シリンダ18で車輪ユニット19を下降させて圧延機14をシフトレール12上に浮上させて車輪13で支持すると共に、クランプ機構20の基礎架台11に対する掛合を解いて走行可能とし、油圧シリンダ18で車輪ユニット19を上昇させてスタンド15をシフトレール12上に載置しクランプ機構20を基礎架台11に掛止させて圧延機14を基礎架台11上に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の孔型を有する圧延ロールを備えた形鋼圧延機を圧延ラインに直交する方向に移動可能としたクイックシフト式圧延設備に関する。
【背景技術】
【0002】
形鋼のリバース圧延は、定位置に固定された圧延機に組み込まれた圧延用ロールに複数の孔型を備えてそれぞれの孔型位置に、圧延ラインと直角方向に圧延材料をローラーテーブル上にて横送りしながら(圧延用ロールの軸方向へ圧延材料を移動させながら)この圧延材料を各孔型へ通過させることにより行なっている。しかしながら、圧延材料を横送りしながら圧延を繰り返すため、成品に曲がりが発生すると圧延材料の中心が通過させようとする孔型の中心と一致するように圧延材料を正確に孔型へガイドできず、圧延精度が不良となる問題があった。このため、圧延用ロールの軸方向へ圧延材料を移動させる代りに、リバース圧延における圧延材料の横送りの移動距離に等しい分だけ圧延機を圧延ラインと直角方向に移動させ、圧延材料を常に圧延ライン上の一定位置で往復させる方法が提案されている。しかし、この圧延方法では、圧延材料がリバースしてくる間に、重量の大きな圧延機を油圧シリンダで急速に移動させる必要がある。
【0003】
そこで、特許文献1には、基礎架台のフレーム内に圧延機浮上用のビーム及び圧延機浮上用のビームの持上げシリンダを設置し、圧延機の移動時には、圧延機のスタンドの脚部に設けたクランプを解放し、持上げシリンダで圧延機浮上用ビームを持上げて圧延機を移動させるクイックシフト式の圧延機が提案されている。
また、特許文献2では、圧延機のスタンド脚部に偏心軸を配置し、偏心軸に車輪を有するボギー台車を遥動自在に設け、偏心軸の回転によりボギー台車を下降させて全ての車輪をシフトレールに均等に接触させて圧延機のスタンドを浮上させ、圧延機の横行きを可能とすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−286913号公報
【特許文献2】特開2008−221238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された発明では、圧延機浮上用ビームで圧延機の全重量を支えるので、圧延機浮上用ビームの変形を抑制するために圧延機浮上用ビームの剛性を高める必要があり、圧延機浮上用ビームが大型、大重量になって交換が非常に困難になるという問題がある。また、圧延機浮上用ビームが大型、大重量になるため、圧延機浮上用ビームを収容する基礎架台のフレームも大きくなるという問題がある。更に、大きな圧延機浮上用ビームが基礎架台のフレーム中に嵌め込まれた形となっているため、圧延機浮上用ビームに対するスケール対策が必要になると共に、圧延機浮上用ビームのメンテナンスの面でも難しさが存在するという問題がある。
【0006】
特許文献2に記載された発明では、圧延機の位置決めが終了して偏心軸の回転によりボギー台車を上昇させて圧延機を下降させる際に、偏心軸の回転に伴ってボギー台車は圧延機の移動方向に一度戻って返るため、圧延機を横行きさせる移動(シフト)用油圧シリンダ内の油圧作動油の油柱「小」側へのボギー台車の位置ズレ時には油圧シリンダ内の油柱の高昇圧により抵抗が高くボギー台車の移動は小さいが、移動用油圧シリンダ内の油圧作動油の油柱「大」側へのボギー台車の位置ズレ時には油圧シリンダ内の油柱の低昇圧により抵抗が小さくボギー台車の移動は大きくなって圧延機の位置決めが正確にできないという問題が生じる。また、圧延機の走行車輪部の構造がボギー台車式では、車輪部の分解及び点検に時間を要するという問題もある。ここで、油圧シリンダ内のピストン位置が油圧シリンダの一端よりL、他端よりLとする。油圧シリンダの油柱「小」とは、L>Lの場合のL側、L>Lの場合のL側をいう。また、油圧シリンダの油柱「大」とは、L>Lの場合のL側、L>Lの場合のL側をいう。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、圧延ラインに直交する方向に圧延機を移動する際の位置決め精度が高く、軽量でメンテナンス性にも優れたクイックシフト式圧延設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的に沿う本発明に係るクイックシフト式圧延設備は、複数の孔型を有する圧延用ロールを上下に備え、前後方向の圧延ラインと直交する左右方向に沿って配置された基礎架台に設けたシフトレール上を、車輪を介して移動可能に設置された圧延機を有するクイックシフト式圧延設備において、
前記圧延機のスタンドの前後の左右両側の脚部の左右外側にそれぞれ設けた収納箱の上部に取付けた油圧シリンダを介して該収納箱内に前記車輪を備えた車輪ユニットを昇降自在に設置し、しかも、前記各車輪ユニットには前記基礎架台に掛止可能なクランプ機構が設けられ、
前記油圧シリンダにより前記車輪ユニットを下降させて前記圧延機を前記シフトレール上に浮上させて前記車輪で該圧延機を支持すると共に、前記クランプ機構の前記基礎架台に対する掛合状態を解いて走行可能とし、
更に、前記油圧シリンダにより前記車輪ユニットを上昇させて前記スタンドを前記シフトレール上に載置すると共に、前記クランプ機構を前記基礎架台に掛止させて前記圧延機を該基礎架台上に固定する。
【0009】
本発明に係るクイックシフト式圧延設備において、前記車輪ユニットは前記油圧シリンダのロッドに対してそれぞれ左右外側方向に着脱可能に取付けられ、前記収納箱の左右外側開口部をそれぞれ覆う蓋部材を取外して、前記車輪ユニットを単独で前記シフトレール上に引出し可能とすることが好ましい。
【0010】
本発明に係るクイックシフト式圧延設備において、前記クランプ機構は、前記車輪ユニットのケース部材に設けられ、前記基礎架台の顎部を下方両側から掛止可能な断面L字状のクランプアームを有し、前記油圧シリンダにより前記車輪ユニットを下降させることにより、前記クランプアームの前記顎部との掛合状態を解いて前記圧延機を前記シフトレール上で移動可能とし、更に、前記油圧シリンダにより前記車輪ユニットを上昇させることにより、前記クランプアームが前記顎部に掛合して前記圧延機を前記基礎架台上に固定することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るクイックシフト式圧延設備においては、圧延機のスタンドの前後の左右両側の脚部の左右外側にそれぞれ設けた収納箱の上部に取付けた油圧シリンダを介して収納箱内に車輪を備えた車輪ユニットを昇降自在に設置するので、圧延機を支持してシフトレール上を走行する車輪を油圧シリンダで直接昇降させることができ、圧延機のシフトレール上での浮上、圧延機のスタンドのシフトレール上への載置を応答性よく行うことができると共に、スタンドはシフトレールに対して垂直に下降するので圧延機の位置決め精度を向上できる。また、圧延機自体が直接昇降するので、圧延機を載置して昇降させる駆動機構が不要になって圧延設備の装置構成が簡単になり、圧延設備の軽量化、製作コストの低減が可能になると共に、駆動機構のメンテナンスが不要になりメンテナンス性を高めることができる。
【0012】
本発明に係るクイックシフト式圧延設備において、車輪ユニットが油圧シリンダのロッドに対して左右方向に着脱可能に取付けられ、収納箱の反スタンド側に設けられた蓋部材を取外して、車輪ユニットを単独でシフトレール上に引出し可能な場合、車輪の交換を車輪ユニット毎に行うことができ、メンテナンス性を高めることができる。
【0013】
本発明に係るクイックシフト式圧延設備において、クランプ機構が、車輪ユニットのケース部材に設けられ、基礎架台の顎部を下方両側から掛止可能な断面L字状のクランプアームを有し、油圧シリンダにより車輪ユニットを下降させることにより、クランプアームの顎部との掛合状態を解いて圧延機を横行可能とし、更に、油圧シリンダにより車輪ユニットを上昇させることにより、クランプアームが顎部に掛合して圧延機を基礎架台上に固定する場合、油圧シリンダの伸動作のみで、圧延機のスタンドのクランプ解除から圧延機のスタンドを車輪で支持するまでの一連の動作が可能であり、また、油圧シリンダの縮動作のみで、圧延機のスタンドをシフトレール上へ直接載置することから圧延機のスタンドのクランプまでの一連の動作が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態に係るクイックシフト式圧延設備に設けられた圧延機の下部正面図である。
【図2】同クイックシフト式圧延設備に設けられた圧延機の下部平面図である。
【図3】車輪ユニット及び収納箱の説明図である。
【図4】(A)は車輪ユニットが下降してクランプアームと顎部との掛合が解かれて圧延機が横行可能となった状態を示す説明図、(B)は車輪ユニットが上昇してクランプアームが顎部に掛合して圧延機が基礎架台上に固定された状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1、図2に示すように、本発明の一実施の形態に係るクイックシフト式圧延設備10は、複数の孔型を有する圧延用ロール(図示せず)を上下に備え、前後方向の圧延ラインと直交する左右方向に沿って配置された基礎架台11に設けたシフトレール12上を、車輪13を介して移動可能に設置された圧延機14を有している。そして、圧延機14のスタンド15の前後の左右両側の脚部16、16a(即ち、前側の左右両側に脚部16、16aが、後側の左右両側に脚部16、16aがそれぞれ設けられている)の左右外側にそれぞれ設けた収納箱17、17aの上部に取付けた油圧シリンダ18を介して収納箱17、17a内に車輪13を備えた車輪ユニット19を昇降自在に設置し、しかも、各車輪ユニット19には基礎架台11に掛止可能なクランプ機構20が設けられている。以下詳細に説明する。
【0016】
収納箱17、17aは、下方が開口した直方体形状で、スタンド15の脚部16、16aの左右外側に形成された凹部に嵌入し締結部材の一例であるボルト21を介して脚部16、16aに垂直に固着される固定側部材22、22aと、固定側部材22、22aの上部に連接して水平に設けられ、中央部に孔が形成された天井部材23、23aと、固定側部材22、22aの幅方向両側及び天井部材23、23aの幅方向両側に連接して設けられるそれぞれ対となる側壁部材24、24aと、収納箱17、17aの左右外側開口部をそれぞれ覆うように、例えば、収納箱17、17aの左右外側開口部の縁となる側壁部材24、24aの外側端部に締結部材の一例であるボルト25を介して取付けられる蓋部材26、26aとを有している。そして、脚部16、16aの左右外側に収納箱17、17aを取付けた場合、脚部16、16a下部に設けられ、脚部16、16aがシフトレール12上に載置された際にシフトレール12に当接するライナー部47は、天井部材23、23aと平行になり、側壁部材24、24aはライナー部47に対して垂直となる。また、天井部材23、23aの上面には、油圧シリンダ18が、油圧シリンダ18のロッド27を天井部材23、23aに形成した孔に挿通させた状態で取付けられている。
【0017】
車輪ユニット19は、断面が下方に開口したコ字状で、車輪13を収納し車輪13の車軸28を水平に側部で保持するケース部材29と、ケース部材29の天井部に突出して設けられ、油圧シリンダ18のロッド27の先側に形成された溝部30を開口部から長孔31に挿入させて掛止させる掛合部32を備えた連結部材33とを有している。また、車輪ユニット19は、ケース部材29の左右外側に設けられたアーム部材34の下部に車軸方向を車輪13の車軸28と平行にして取付けられた補助輪35を有している。なお、車輪13の下端と補助輪35の下端は同一高さとなっている。
【0018】
ここで、ケース部材29の対となる前後の側部は、ケース部材29の天井部及び車軸28に対して垂直であり、連結部材33の掛合部32はケース部材29の天井部に天井部と平行になるように取付けられ、掛合部32の両側を長孔31に沿って支持する側壁部36はケース部材29の側部と平行になるように取付けられている。また、収納箱17、17aの天井部材23、23aの下部中央には、左右方向に連結部材33が嵌入可能な溝37が形成され、それぞれ対となる側壁部材24、24aの対向する面には、ケース部材29の幅(前後方向の長さ)と同等の隙間が形成されるように、厚みが調整された第1のライナー38がそれぞれ取付けられ、固定側部材22、22aの下部側には、ケース部材29の一側が嵌入する嵌入部39が形成され、嵌入部39のケース部材29の一側と対向する面には第2のライナー40が取付けられている。
以上のように構成することによって、車輪ユニット19を油圧シリンダ18のロッド27に対してそれぞれ左右外側方向に着脱可能に取付けることができ、収納箱17、17aの左右外側開口部をそれぞれ覆う蓋部材26、26aを取外して、車輪ユニット19を単独でシフトレール12上に引出すことができる。
【0019】
図3、図4(A)、(B)に示すように、クランプ機構20は、車輪ユニット19のケース部材29の両側の下部にそれぞれ連接して設けられ、シフトレール12を支持する基礎架台11の顎部41を下方両側から掛止可能な断面L字状のクランプアーム42を有している。ここで、断面L字状のクランプアーム42の長片部43の先側(上部)がケース部材29の両側の下部にそれぞれ連接され、短片部44の基側が長片部43の基側に締結部材の一例であるボルト45を介して固着されている。また、短片部44の先側(作動部)には、厚み調整可能な調厚部材46が設けられている。調厚部材46の厚みを調整することにより、顎部41に対して、車輪ユニット19の高さに対応するクランプアーム42の作動位置を調整することができ、例えば、油圧シリンダ18により車輪ユニット19を下降させることにより、クランプアーム42の顎部41との掛合状態を解いて、圧延機14のスタンド15下部のライナー部45をシフトレール12上に浮上させて圧延機14を横行可能とした際に、クランプアーム42の短片部44が顎部41の底面から一定距離(例えば、5〜10mm)下方に下がった位置に来るようにできる。
【0020】
続いて、本発明の一実施の形態に係るクイックシフト式圧延設備10に設けられた圧延機14の作用について説明する。
図3に示すように、車輪ユニット19を収納箱17aに設置する場合(車輪ユニット19を収納箱17に収納する場合も同様)、先ず、収納箱17aの蓋部材26aを取外し、短片部44が長片部43から取外された状態のクランプアーム42が設けられた車輪ユニット19をシフトレール12上に載置する。車輪ユニット19は、車輪ユニット19を車輪13を介してシフトレール12上に載置した際、シフトレール12に当接する補助輪35を有しているので、車輪ユニット19の転倒が防止され、車輪ユニット19をシフトレール12上で安定して移動させることができる。
【0021】
車輪ユニット19をシフトレール12上で移動させて、蓋部材26aが外されて形成された収納箱17aの開口から挿入すると、収納箱17aの天井部材23aの下部中央には左右方向に水平(シフトレール12に平行)の溝37が形成されているので、車輪ユニット19のケース部材29の天井部に設けられた連結部材33が溝37に嵌入して、車輪ユニット19の収納箱17a内への進入を容易にできる。また、車輪ユニット19が収納箱17aの側壁部材24aの位置まで進入すると、収納箱17aの天井部材23aを貫通して収納箱17a内に突出している油圧シリンダ18のロッド27の先側に形成された溝部30が連結部材33の掛合部32に設けられた長孔31の開口から長孔31内に進入してロッド27が連結部材33を介して車輪ユニット19と掛合する。このとき、車輪ユニット19のケース部材29の前後方向両側は、収納箱17aの対向する側壁部材24aにそれぞれ設けられた第1のライナー38に当接し、車輪ユニット19の一側が嵌入部39に進入し第2のライナー40と当接する。そして、蓋部材26aをボルト25を介して側壁部材24aに取付け、クランプアーム42の長片部43にボルト45を介して短片部44を取付ける。これによって、車輪ユニット19の収納箱17a内への設置が完了する。
【0022】
収納箱17a内に設置された車輪ユニット19に設けられた車輪13を交換する場合、圧延機14のスタンド15の前後の左右両側の脚部16、16aの左右外側にそれぞれ設けた収納箱17、17aに取付けた油圧シリンダ18を同期して駆動し、ロッド27を介して車輪ユニット19を上昇させ、スタンド15をライナー部47を介してシフトレール12上に載置する。次いで、収納箱17aに設けられた油圧シリンダ18の油圧を開放すると、車輪ユニット19は自重で下降し車輪13を車輪ユニット19に当接するので、クランプアーム42と顎部41との掛合が解除され、クランプアーム42のL字状の長片部43から短片部44を取外すことができる。
【0023】
続いて、収納箱17aの蓋部材26aを取外し、蓋部材26aが取外されて形成された開口側に向けて車輪ユニット19をシフトレール12上で移動させると、油圧シリンダ18のロッド27の先側に形成された溝部30から連結部材33の掛合部32が離脱して、ロッド27と車輪ユニット19との掛合が解除され、車輪ユニット19を収納箱17a内から外部に引出すことができる。そして、新たな車輪が取付けられた車輪ユニット19を収納箱17aに設置することで、車輪13の交換が完了する。車輪13の交換を、車輪ユニット19の交換として行うことができるので、車輪13の交換の迅速化、簡便化が達成できる。
【0024】
圧延機14をシフトレール12上の設定位置まで移動させる場合は、図4(A)に示すように、圧延機14のスタンド15の前後の左右両側の脚部16、16aにそれぞれ設けた収納箱17、17aに取付けた油圧シリンダ18を同期して駆動し、ロッド27を介して車輪ユニット19を下降させて、車輪ユニット19の車輪13をシフトレール12に当接(車輪13とシフトレール12との間の隙間δが0)させる。これにより、圧延機14のスタンド15の下部に設けられたライナー部47とシフトレール12との間に隙間が形成されて、圧延機14がシフトレール12上に浮上した状態になる。そして、車輪ユニット19が下降すると、車輪ユニット19に設けられたクランプアーム42も下降し、クランプアーム42の短片部44が顎部41の底面から下方に下がり、短片部44と顎部41との間に隙間ε(例えば、5〜10mm)が形成されてクランプアーム42の顎部41との掛合状態が解除され、圧延機14はシフトレール12上での移動が可能になる。これにより、図示しないシフト用油圧シリンダを操作することで、圧延機14を車輪13を介してシフトレール12上で設定位置まで迅速に横行移動させることができる。
【0025】
圧延機14の設定位置までの移動が完了して圧延機14を固定する場合、図4(B)に示すように、圧延機14のスタンド15の前後の左右両側の脚部16、16aにそれぞれ設けた収納箱17、17aに取付けた油圧シリンダ18を同期して駆動し、車輪ユニット19を上昇させる。車輪ユニット19の上昇により車輪13とシフトレール12との間に隙間δ(例えば、10〜20mm)が形成されると、スタンド15の脚部16、16aに設けられたライナー部47を介してスタンド15がシフトレール12上に載置される。そして、車輪ユニット19が上昇すると、車輪ユニット19に設けられたクランプアーム42も上昇し、クランプアーム42の短片部44が顎部41の底面を押圧して(短片部44と顎部41との間の隙間εが0になって)クランプアーム42と顎部41とが掛合するので、圧延機14が基礎架台11上に固定される。なお、車輪13とシフトレール12との間に隙間δが形成されているため、圧延時の圧延反力が車輪13及び車軸28に負荷されるのを防止できる。
【0026】
ここで、シフトレール12上で圧延機14を移動する車輪13を油圧シリンダ18で直接昇降させるので、圧延機14のシフトレール12上での浮上、圧延機14のスタンド15のシフトレール12上への載置及び固定を応答性よく行うことができる。また、圧延機14のスタンド15をシフトレール12上へ載置する際、スタンド15はシフトレール12に対して垂直に下降するので、シフト用油圧シリンダの油圧変動が発生せず、圧延機14の位置決め精度が向上する。更に、圧延機14自体が直接昇降するので、圧延機14を載置して昇降させる駆動機構が不要になって圧延設備10の装置構成が簡単になり、圧延設備10の軽量化、製作コストの低減が可能になると共に、駆動機構のメンテナンスが不要になりメンテナンス性を高めることができる。
【0027】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載した構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
【符号の説明】
【0028】
10:クイックシフト式圧延設備、11:基礎架台、12:シフトレール、13:車輪、14:圧延機、15:スタンド、16、16a:脚部、17、17a:収納箱、18:油圧シリンダ、19:車輪ユニット、20:クランプ機構、21:ボルト、22、22a:固定側部材、23、23a:天井部材、24、24a:側壁部材、25:ボルト、26、26a:蓋部材、27:ロッド、28:車軸、29:ケース部材、30:溝部、31:長孔、32:掛合部、33:連結部材、34:アーム部材、35:補助輪、36:側壁部、37:溝、38:第1のライナー、39:嵌入部、40:第2のライナー、41:顎部、42:クランプアーム、43:長片部、44:短片部、45:ボルト、46:調厚部材、47:ライナー部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の孔型を有する圧延用ロールを上下に備え、前後方向の圧延ラインと直交する左右方向に沿って配置された基礎架台に設けたシフトレール上を、車輪を介して移動可能に設置された圧延機を有するクイックシフト式圧延設備において、
前記圧延機のスタンドの前後の左右両側の脚部の左右外側にそれぞれ設けた収納箱の上部に取付けた油圧シリンダを介して該収納箱内に前記車輪を備えた車輪ユニットを昇降自在に設置し、しかも、前記各車輪ユニットには前記基礎架台に掛止可能なクランプ機構が設けられ、
前記油圧シリンダにより前記車輪ユニットを下降させて前記圧延機を前記シフトレール上に浮上させて前記車輪で該圧延機を支持すると共に、前記クランプ機構の前記基礎架台に対する掛合状態を解いて走行可能とし、
更に、前記油圧シリンダにより前記車輪ユニットを上昇させて前記スタンドを前記シフトレール上に載置すると共に、前記クランプ機構を前記基礎架台に掛止させて前記圧延機を該基礎架台上に固定することを特徴とするクイックシフト式圧延設備。
【請求項2】
請求項1記載のクイックシフト式圧延設備において、前記車輪ユニットは前記油圧シリンダのロッドに対してそれぞれ左右外側方向に着脱可能に取付けられ、前記収納箱の左右外側開口部をそれぞれ覆う蓋部材を取外して、前記車輪ユニットを単独で前記シフトレール上に引出し可能としたことをことを特徴とするクイックシフト式圧延設備。
【請求項3】
請求項1及び2のいずれか1項に記載のクイックシフト式圧延設備において、前記クランプ機構は、前記車輪ユニットのケース部材に設けられ、前記基礎架台の顎部を下方両側から掛止可能な断面L字状のクランプアームを有し、前記油圧シリンダにより前記車輪ユニットを下降させることにより、前記クランプアームの前記顎部との掛合状態を解いて前記圧延機を前記シフトレール上で移動可能とし、更に、前記油圧シリンダにより前記車輪ユニットを上昇させることにより、前記クランプアームが前記顎部に掛合して前記圧延機を前記基礎架台上に固定することを特徴とするクイックシフト式圧延設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−207905(P2010−207905A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−59813(P2009−59813)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【出願人】(390022873)日鐵プラント設計株式会社 (275)