説明

クイック交換装置

【解決手段】工作機械側に取り付けられたクイックカプラー(16)と、クイックカプラー(16)にロック可能にかつ機具(14)にも接続されたアダプタ(18)と、工作機械にある油圧系と機具(14)の油圧装置間の油圧コネクションを確立させる油圧カップリング(20)とを備えたクイック交換装置であって、油圧カップリング(20)が第1カップリング部材(20a)および第2カップリング部材(20b)からなり、これら両カップリング部材(20a、20b)が作動位置で相互に保持し合い、第1カップリング部材(20a)および第2カップリング部材(20b)が、このクイック交換装置(12)のロック装置とは別に形成された機械的保持手段(68、78、80)と相互作用するクイック交換装置(12)。本発明は、カップリング部材(20a、20b)が作動位置で機械的保持手段(68、78、80)によって摩擦結合により保持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1および請求項9の上位概念に記載された種類のクイック交換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のクイック交換装置は、種々の実施例が知られている。
【0003】
旋回装置およびロック装置を含むクイックカプラーとアダプタとからなるクイック交換装置の第1実施例は、例えば、欧州特許第0 483 232号明細書から公知である。
このクイックカプラーは、掘削機側のアームに取り付けられており、かつ、クイックカプラーに連結させる向かい側のアダプタは、交換可能な機具、例えば、スクリーンバケットに取り付けられている。
【0004】
上記刊行物に記載の旋回ロックには、アダプタとクイックカプラー間のロックの確立のほかに作動液のための油圧カップリングのグループ化が想定されている。
この油圧カップリングは比較的長い旋回距離にわたってグループ化されなければならない。
作動時に発生する開き力(spreizkraften)によって油圧カップリングは漏れを生じる可能性があり、かつ最終的に抜け落ちる可能性がある。
さらにその場合には著しい環境汚染がもたらされる。
【0005】
国際公開第2005/093172 A1号パンフレットからもクイック交換装置が公知であり、このクイック交換装置はクイックカプラーおよびアダプタの連結ならびに2つのカップリングブロックの連結のための旋回動作を実施している。
その場合、それらカップリングブロックは、旋回軸とは反対側の自由端に配置されており、その際、一方のカップリングブロックは浮動支持されている。
前記開き力に反対に作用させるために、油圧カップリングが開き力に反対に作用するように該油圧カップリングへの油圧を発生させる装置が備えられている。
前記力はその場合にはカップリングブロックの当たり面に対してほぼ垂直に作用している。
このことによって、使用される材料の弾性、もしくは、浮動支持が原因の相対運動が回避される。
そのうえ、動作中の確実な油圧コネクションが保証されている。
【0006】
しかしながら、この実施の場合に問題なのは、特定の使用方法にとって著しく大きな開き力が高い油圧が原因で生じることである。
油圧により発生させた圧力でこの開き力に反対に作用させるための費用は相当なものである。
【0007】
さらに独国特許出願公開第101 59 417 A1号明細書から上位概念をなすクイック交換装置が公知である。
ここでは、油圧カップリングのカップリングブロックは、一方のカップリングブロックに支持されかつ作動位置で他方のカップリングブロックのピンに掛かるフックを介して嵌合結合により保持される。
【0008】
しかしながら、発生する開き力が高い場合には前記機械的保持手段が疲労して破損するか、あるいは前記材料が流動しかつそれに伴い該機械的保持手段が引っ掛かり動かなくなるに至るということが判明した。
油圧カップリングは、その場合にはもはや解除することはできず、実施例によってはその場合にクイック交換装置もロックされる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って本発明の一態様によれば本発明の課題は、請求項1の上位概念に記載の種類によるクイック交換装置を、簡単な手段を用いて上記欠点を回避しながら連結時および作動時に発生する開き力に容易に反対に作用することによって、いかなる場合にも必要があれば油圧カップリングを解除しうることも保証されるように発展させることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、請求項1の特徴部の特徴によって該請求項1の上位概念の特徴に関連して解決される。
【0011】
従属請求項は本発明の有利な別の形態をなす。
【0012】
本発明は、油圧カップリングの連結時に有効となる摩擦結合式に相互に結合された機械的保持手段によって前記開き力の大部分を吸収することが可能であり、かつその一方でこの摩擦結合の解除によっていつでも該機械的手段を必要に応じて解除することもまた可能であるという認識に基づいている。
作動時に生ずる高い機械的な力が原因で材料が流動したとしても、相変わらず摩擦結合の解除とともに保持手段の解除も可能である。
このことは、従属請求項に従った特定の構造的な形態によって最適化することができる。
【0013】
従って本発明によれば、油圧式の前記カップリング部材は作動位置で前記機械的保持手段によって摩擦結合により保持されている。
これにより上記欠点は回避され、例えば、次に示すような更なる構造的な可能性がもたらされる。
【0014】
本発明の実施例によれば、前記機械的保持手段の少なくとも部材は交換位置から作動位置へ、および/または作動位置から交換位置へ駆動装置を介して動かすことができる。
このことは、特にユーザフレンドリーなクイック交換装置という観点で有利である。
【0015】
その場合、前記機械的保持手段を交換位置から作動位置へ、および/または作動位置から交換位置へ動かすための駆動装置は油圧駆動装置、空圧駆動装置、電気駆動装置、機械式駆動装置、および/または磁気駆動装置として形成されている。
これにより、本発明によるクイック交換装置の幅広い使用分野がもたらされる。
【0016】
第1カップリング部材は、前記クイックカプラーに結合されたカップリングブロックとして、かつ、第2カップリング部材は前記アダプタに結合されたカップリングブロックとして形成されていてもよく、その場合、これらカップリングブロックはそれぞれカップリング弁の相互に対応する部材の少なくとも一方を含む。
カップリングブロックには、前記機械的保持手段がそのことによって簡単にこれらカップリングブロックをつかむことができ、および/または該機械的保持手段がこれらカップリングブロックに組み込まれることができるという利点がある。
【0017】
油圧カップリングを著しく大きな開き力の場合にも機能正常に維持するには、付加的に開き力に反対に作用しかつ前記機械的保持手段の負担を軽減するために油圧カップリングの作動位置で機械式駆動装置によりカップリング部材に作用する反対力を生じさせる(国際公開第2005/093172 A1号パンフレット参照)場合が有利である。
この場合、スペース節約および簡単な構造という観点から該反対力を発生させるための機械式駆動装置と前記機械的保持手段を移動させるための前記駆動装置とは同じものである。
【0018】
これに対する別法として、交換位置から作動位置へ機械的保持手段を移動させるための駆動装置は同じでありかつ作動位置から交換位置へ機械的保持手段を移動させるための駆動装置は他の駆動装置、殊にエネルギー蓄積装置、例えば、ばねによって形成されていてもよい。
【0019】
本発明の実施例によれば交換位置から作動位置へ機械的保持手段を移動させるための駆動装置は単動ピストンを備えた流体駆動装置、殊に油圧式駆動装置として形成されている。
これに対する別法として、交換位置から作動位置へ、そして、作動位置から交換位置へ機械的保持手段を移動させるための駆動装置は複動ピストンを備えた流体駆動装置、殊に油圧式駆動装置として形成されていてもよい。
機械的保持手段は、この場合には工作機械側にある油圧系を用いて容易に動かすことができる。
簡単な取付がこれにより保証され、本発明によるクイック交換装置を既存の工作機械に後付けすることもまたそのことによって容易に可能である。
【0020】
機械的保持手段は殊に、前記クイックカプラーに結合された第1部材と前記アダプタに結合された第2部材とを含む。
その際、第1部材がタイボルトとして形成されかつ第2部材が該タイボルト用の受けとして形成されていることが好ましい。
前記摩擦結合による保持は、タイボルトの前端部がくさび形に斜めになっておりかつ該受けがこれに相応して形成されていることによって達成される。
付加的に該タイボルトになお作動位置方向の力が加えられる。
この力は交換位置から作動位置へ、および/またはその逆に機械的保持手段を移動させるための駆動装置によって発生させることができる。
選択的か又は付加的にこの力は、場合によって切換可能でもある、エネルギー蓄積装置によって発生させてもよい。
【0021】
前記タイボルトを簡単に製造することを可能にするために、このタイボルトは前端部が円錐形に仕上げられた円筒形のボルトとして形成されている。
【0022】
高い圧力の場合にも引っ掛かり動かなくなることは、前記タイボルトの下側で前記受けの内側までの作動位置における軸受隙間Sを準備することによって簡単に回避することができる。
軸受隙間Sは、タイボルトが常に下向きの自由度を有し、かつ、そのことによってより厳しい条件下でも解除できることを保証している。
【0023】
本発明の実施例によれば、許容誤差および摩耗の補償は、前記タイボルトの前端部と受けのこれに対応する面とが180°までの円周角を介して互いに一致する錐面として有しかつ該円周角を360°に補完する該受けの円周部分面が該タイボルトの前端部の対応する円周面をもってあらかじめ設定された軸受隙間Sを含むことによって行われる。
摩耗の場合、圧力が加えられるタイボルトは常に間隔をあけずに詰めていくことができかつ確実な保持ならびに当たり面をそのまま保証することができる。
【0024】
これに対する別法として、機械的保持手段の一方の部材がロック爪を有するロッカーとして、かつ、機械的保持手段のもう一方の部材がアバットメントとして形成されていてもよく、その場合、該爪と該アバットメントがくさび形に形成されている。
【0025】
特に、交換位置からスイング位置へおよびその逆方向に機械的保持手段の移動方法は、直線運動である。
簡単な構造がこれにより可能となる。
【0026】
クイックカプラーは、旋回軸を中心に旋回可能であり、かつ、その運動直線が該旋回軸とともに作業面を形成する少なくとも1つのタイボルトを有していてもよい。
【0027】
その場合に、該タイボルトが旋回軸に対して垂直に第1の直線に沿って可動であり、かつ、油圧カップリングの連結運動が該第1の直線に対してほぼ垂直な第2の直線に沿って行われることが好ましい。
【0028】
コンパクトな構造を可能にするために、前記第2の直線は、前記旋回軸に対して垂直に延びている。
【0029】
本発明の実施例によれば、交換位置から作動位置へのタイボルトの動きは、第3の直線に沿って行われる。
【0030】
この場合には、第3の直線は前記作業面上を延び、第1および第2の直線に対して垂直であり、かつ、前記旋回軸に対して平行に延びていてもよい。
【0031】
本発明のもう一態様によれば本発明の課題は、請求項1の上位概念に記載の種類によるクイック交換装置を、簡単な手段を用いて上記欠点を回避しながらコンパクトな構造が得られかつ連結時および作動時に発生する開き力に容易に反対に作用するように発展させることである。
【0032】
この課題は、請求項25の特徴部の特徴によって該請求項25の上位概念の特徴に関連して解決される。
【0033】
更なる従属請求項は本発明の有利な別の形態をなす。
【0034】
本発明は、油圧カップリングを保証するための前記機械的保持手段の直線運動によってコンパクトで、また効率的でもある構造が可能となるという認識に基づいている。
【0035】
従って、本発明によれば、交換位置からスイング位置へおよびその逆方向への機械的保持手段の動きは直線運動であり、その際、作動位置における機械的保持手段は摩擦結合、もしくは、嵌合結合により保持される。
【0036】
本発明は、図面に関連した本発明の実施例の記載から明らかである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
図1には、工作機械、即ち、土工機械、例えば、掘削機のブーム10が透視図で示されている。
該ブーム10の端部にクイック交換装置12が取り付けられており、このクイック交換装置は、従来の機具であるスクリーンバケット14をつかんでいる。
【0038】
クイック交換装置12は、ブーム10に接続されたクイックカプラー16とアダプタ18とからなる。
アダプタ18は、スクリーンバケット14に固定して取り付けられている。
クイック交換装置12によりブーム10は、種々の機具、例えば、図示されたスクリーンバケット14とアダプタ18を介して接続することができる。
上記スクリーンバケット14の代わりに、他の機具、殊に油圧駆動される機具、例えば、油圧ブレーカー、油圧カッターおよび類似物を使用することもできる。
【0039】
これらの機具は、工作機械により供給される油圧駆動装置を介して駆動される。
このためにクイック交換装置12は、油圧カップリング20を有している。
油圧カップリング20を介して機具、この例ではスクリーンバケット14は、土工機械の油圧系に接続されている。
スクリーンバケット14には、特定の用途のために、油圧により開かれるリヤパネル22が備えられている。
リヤパネル22の開閉は、スクリーンバケット14に組み込まれた、この場合には見えない油圧駆動装置により保証されている。
該油圧駆動装置は、油圧カップリング20を介して土工機械の油圧系に接続されている。
【0040】
油圧カップリング20は、上部カップリングブロック20aと下部カップリングブロック20bとを有している。
上部カップリングブロック20aと下部カップリングブロック20bとの相互に対応する当たり面には平面の当たり面が備えられている。
これら当たり面に油圧弁、センタリングピン24、図3および図4参照、ならびに該センタリングピン24に組み込まれた油圧カップリング20をクリーニングするためのクリーニングノズル26が設けられている。
【0041】
クイック交換装置12のアダプタ18は、ベースプレート28を含み、このベースプレート28上に一方の端部にはロッキングブロック30が、かつ、該ロッキングブロック30から離れた端部には取付ラグ32を用いて保持された旋回軸34が備えられている。
そして、ロッキングブロック30は、旋回軸34に向き合う側に締付け面36を有し、この締付け面36はアダプタ18の底面に対する任意の垂直面に対して3°〜35°、特に5°〜15°傾斜している。
【0042】
さらに、ロッキングブロック30には、互いに離して並べて配置されかつ縦断面で円錐形に形成され、互いに平行にされた2つのテーパー穴38が備えられている。
各テーパー穴38は、それぞれテーパー穴38に押し込み可能なクイックカプラー16のタイボルト40に割り当てられている。
【0043】
タイボルト40の前端部は、それぞれテーパー端部40aとして形成されている。
【0044】
錐面で取り囲まれたテーパー穴38のテーパー角は、適宜寸法決定され、本実施例の場合には5°〜15°である。
【0045】
クイックカプラー16はそのアダプタ18の旋回軸34に対応する側に該旋回軸34を取り囲む、この場合には示されていない爪を有している。
【0046】
アダプタ18の締付け面36に対応するクイックカプラー16の端面はアバットメント面42を有し、このアバットメント面は垂線に対して、締付け面36に相応して、5°〜15°傾斜して形成されているのが好ましくかつ同じく穴を2つ有し、この穴をクイックカプラー16内で縦にスライド可能に駆動される各一のタイボルト40が貫通することができる。
【0047】
クイックカプラー16をアダプタ18に下げることによる側方でのセンタリング、一次アラインメントのためにセンタリング機構が備えられており、これらセンタリング機構のうちクイックカプラー16に割り当てられたセンタリング機構はセンタリングピン44として形成されており、これらセンタリングピンはクイックカプラー16のアバットメント面42の横隣りに配置されている。
センタリングピン44は、アダプタ18のロッキングブロック30の側面と相互作用するようになっている。
【0048】
さらに、アダプタ18は、クイックカプラー16およびアダプタ18を相互に縦方向にセンタリングするためのセンタリング機構、旋回軸34と相互作用する締付け面36を有する、第2のアラインメント。
クイックカプラー16をアダプタ18に下げることにより、締付け面36およびアバットメント面42の順序でクイックカプラー16および従ってクイックカプラー16のスライド可能なタイボルト40がテーパー穴38に対して旋回軸34との相互作用でアラインメントされてセンタリングされる。
クイックカプラー16のタイボルト40とアダプタ18のテーパー穴38間の連結過程がこれにより支障なく行われることができる。
【0049】
その他の点については、クイック交換装置12の機能に関して同じ出願人に由来する欧州特許出願公開第0 569 026 A1号明細書が引用され、その開示は全内容的に本発明の開示内容に含まれるものとする。
【0050】
アダプタ18の自由端にて下部カップリングブロック20bはロッキングブロック30とサポーティングアームを介して固定して接続されている。
下部カップリングブロック20bの自由端の下側に油圧出口46が設けられている。
このために、ロッキングブロック30は、下部カップリングブロック20bと油圧出口46とに対して内側にずれており、油圧出口46は容易に油圧ホース/油圧パイプ82に接続することができる。
【0051】
上部カップリングブロック20aは、2本のアーム48を有するヨークを介してクイックカプラー16と接続されている。
上部カップリングブロック20aとアーム48との間にダンピング要素50が介在しており、その結果、上部カップリングブロック20aは浮動支持されている。
これに対する別法として、下部カップリングブロック20bがダンピング要素50を介して浮動支持されていてもよく、上部カップリングブロック20aがヨーク、即ちアーム48に直接取り付けられていてもよい。
しかしながら、図示された実施例では、上部カップリングブロック20aの浮動支持の表現に限定されている、というのも、別法としての実施例は当業者にとって容易に追体験可能であるからである。
【0052】
浮動支持によって容易に許容誤差を補償することができる。
さらにそのことによって上部カップリングブロック20aを下部カップリングブロック20bに対して簡単にセンタリングしかつアラインメントすることができる。
これにはクリーニングノズル26を有するセンタリングピン24が使用される。
【0053】
図2〜5には本発明の一実施例が示されている。
上部カップリングブロック20aに作動ピン68がスリーブ70内に支持されている。
作動ピン68は油圧駆動され、円筒形に形成されておりかつその前端部72がくさびとして仕上げられている。
【0054】
下部カップリングブロック20bは、アダプタ18に固定して結合されたサポーティングアーム78に側面でそれぞれねじ締めされている。
サポーティングアーム78は、作動ピン68のくさび72のための開口部80を有している。
該くさび72に向き合う側でサポーティングアーム78の開口部80は、その都度、くさび72に適合しており、つまり、該開口部80も上部カップリングブロック20aに向かってくさび形に開いて形成されている。
下部カップリングブロック20bの各側面にそれぞれサポーティングアーム78が配置されており、上部カップリングブロック20aに各1本の作動ピン68が備えられている。
前記部分断面図から、センタリングピン24にクリーニングノズル26があるのがわかる。
【0055】
さらに図2〜図5では、油圧接続部46が油圧パイプ82に接続されており、この油圧パイプ82はアダプタ18によってここでは示されていない機具、例えば、スクリーンバケット14につながっている。
【0056】
サポーティングアーム78のくさび形の開口部80は、作動ピン68のための貫通孔として形成されている。
作動ピン68がくさび形の開口部80に入った状態では、作動ピン68は下向きに隙間Sを有し、この隙間によってくさび形の開口部80内で作動ピン68が引っ掛かり動かなくなることがあらゆる場合に、殊に摩耗が生ずる場合にも、防止される。
【0057】
図2〜図5には、複動式の作動ピン68、つまり、油圧により、掘削機ブーム10に取り付けられたクイックカプラー16と種々のその都度1つの機具14に接続されたアダプタ18とを備えたクイック交換装置12を用いた機具交換が行われる交換位置から、クイックカプラー16がアダプタ18にしっかり接続されかつ油圧カップリング20が連結されている作動位置へ移動する作動ピン68を有する実施例が示されている。
逆方向への動きは、同じく油圧により、もう一方の側から作動ピン68に相応して圧力が加えられることによって行われる。
【0058】
これに対する別法として、ここでは示されていない単動式の油圧ピストンが備えられていてもよく、この油圧ピストンの場合にはこれに相応して作動ピン68の側面に油圧により圧力が加わることによって作動ピン68が動かされるようになっている。
逆方向への動きは、作動位置で圧縮応力が加わるばねにより得られ、このばねは作動ピン68に作用する油圧力が解除されるとこの作動ピン68を交換位置に移動させるようになっている。
このような構造は公知であり、従って詳細な記述は必要ない。
【0059】
作動ピン68は、サポーティングアーム78の開口部80との相互作用で上部カップリングブロック20aと下部カップリングブロック20bを運転時にしっかりと相互に結合している。
これにより油圧カップリング20の連結ばかりか分離もまた、アダプタ18とのクイックカプラー16のそれとほぼ同時に行われる。
クイックカプラー16がアダプタ18とロックされるのと同時に、作動ピン68は開口部80に入れられる。
同様にしてロック解除される。
ほぼ同時の移動のために、タイボルト40および作動ピン68は共通の駆動装置を有している。
【0060】
さらにタイボルト40および作動ピン68の動きは、旋回軸34を含む共通の平面上で行われる。
これにより、運転に著しく有利なコンパクトなクイック交換装置の構造がもたらされる。
【0061】
この実施例によれば、クイックカプラー16は、旋回軸34を中心に旋回可能である。
クイックカプラー16のタイボルト40は、クイック交換装置12のロックのために旋回軸34に対して垂直に第1の方向に動く。
油圧カップリング20の連結の動き、第2の方向は第1の方向に対してほぼ垂直に、そして、この場合には旋回軸34に対しても垂直に行われる。
交換位置から作動位置へのピン60の動きは、第1および第2の直線に対して垂直になっている第3の方向に直線的に行われる。
第3の方向はこの場合、旋回軸34に対して平行である。
【0062】
図6および図7には、もう1つの実施例が示されている。
この場合にはセンタリングピン24はクイックカプラー16に向き合う円錐形のテーパー受け52を有し、このテーパー受け52は下部カップリングブロック20b内でスライド可能に支持されたテンションロッド54の円錐形端部に対応している。
【0063】
テンションロッド54は、後方のストッパシャンク54aを有し、このストッパシャンクはクイックカプラー16のロッキングピン40内部の押し子56に対応している。
押し子56は、押し子56が押し込まれるとばね58が圧縮されるように、ばね58と相互作用するようになっている。
【0064】
クイックカプラー16の爪がアダプタ18に掛かりかつ旋回軸34を中心に動くと、このクイックカプラーは上記のとおりセンタリングされてロッキングピン40はテーパー穴38にアラインメントされる。
この位置で上部カップリングブロック20aは下部カップリングブロック20b上にある。
次に、ロッキングピン40はテーパー穴38内に移動し、かつクイックカプラー16とアダプタ18、ならびに上部カップリングブロック20aと下部カップリングブロック20bを相互に固定する。
この固定によって上部カップリングブロック20aと下部カップリングブロック20bの連結が行われる。
【0065】
ロッキングピン40が入るとロッキングピン40の押し子56がテンションロッド54のストッパシャンク54aに当たり、かつこのストッパシャンク54aをロッキングピン40に対してばね58の力に抗してセンタリングピン24のテーパー受け52に向かって動かす。
アダプタ18のテーパー穴38と相互作用するロッキングピン40のテーパー端部40aを介したクイックカプラー16とアダプタ18の固定と同様にして、次にさらになお上部カップリングブロック20aと下部カップリングブロック20bが固定され、この下のカップリングブロック内ではテンションロッド54のテーパー端部54bがテーパー受け52に入る。
【0066】
ばね58は、テンションロッド54に対するロッキングピン40のオーバーストローク補償として使用される。
これにより、ばね58はテンションロッド54のテーパー端部54bが完全にテーパー受け52内にはまりかつ上部カップリングブロック/弁体20aと下部カップリングブロック/弁体20bを保持する場合に先ず圧縮される。
このことによって上部カップリングブロック20aと下部カップリングブロック20bは著しく早くから開き力に対して保護されている。
ロッキングピン40はその際まだテーパー穴38内に密着しておらず、密着するまでさらに繰り出される。
それにより前述のオーバーストロークが起こり、かつばね58に荷重が加わる。
このことによって、クイックカプラー16の摩耗とこれに伴う旋回軸34を中心としたさらなる回転とによりロッキングピン40がテーパー穴38内に沈む前に、上部カップリングブロック20aと下部カップリングブロック20bが常に確実に固定されていることが保証される。
この場合、ロッキングピン40は、既にテーパー受け52内に密着しているテンションロッド54により妨害されない。
【0067】
テンションロッド54のテーパー端部54bがテーパー受け52内に入った後でテンションロッド54のテーパー端部54bはテーパー受け52に最大180°の円周角を介して面で密着する。
該円周角を360°に補完するテンションロッド54の部分面はこの場合には軸受隙間Sを形成し、この隙間によってテンションロッド54がテーパー受け52で引っ掛かり動かなくなることがあらゆる場合に、殊に摩耗が生ずる場合にも、防止される。
【0068】
図8および図9には、本発明のもう1つの実施例が示されている。
上部カップリングブロック20aに側方外向きに移動可能な作動ピン60が備えられており、この作動ピン60は油圧により動作しかつここでは示されていないばねに抗して外向きに移動する。
作動ピン60にロッカー62が割り当てられており、このロッカー62はほぼ中央で傾き可能に上部カップリングブロック20aに支持されている。
一方の側にロッカー62は作動ピン60に対応する突起部62aを有しかつ他方の側に下部カップリングブロック20bをつかむ爪62bを有している。
爪62bは、下部カップリングブロック20bの対応する下のアバットメント面に相応して面取りされている。
相互に対応する傾斜面によって引っ掛かり動かなくなることが防止され、作動ピン60を介したロッカー62への圧力によって上部カップリングブロック20aと下部カップリングブロック20bの摩擦結合による保持が可能となる。
ロッカー62はトラニオン64を中心に回転可能に支持されており、かつこの場合には見えないねじりばねを用いて、作動ピン60が入ることによりロッカー62が下部カップリングブロック20bを解放するように予荷重がかけられている。
【0069】
トラニオン64は保持アーム66を介して上部カップリングブロック20aおよび従ってクイックカプラー16に接続されている。
容易にこのことによって上部カップリングブロック20aと下部カップリングブロック20bは作動中に、即ち連結した状態でロッカー62と、トラニオン64と、保持アーム66と、下部カップリングブロック20bの面取りされたアバットメント面と相互作用する爪62bと、作動ピン60にかかる油圧力とを介して保持される。
上部カップリングブロック20aと下部カップリングブロック20bの両側でこの場合には、今ここに記述した構造が形成されている。
発生する開き力はそのことによって各側でロッカー62を介して上部カップリングブロック20aと下部カップリングブロック20bとの間で伝達されることができる。
発生する油圧力によって各作動ピン60が保持位置に保持される。
油圧力が解除されると、上部カップリングブロック20aにおけるそれぞれ作動ピン60に割り当てられたばねがこの作動ピン62を内側に動かすことによって、相応するロッカー62がトラニオン64に結合したこの場合には見えないねじりばねによって回され、そして、下部カップリングブロック20bが解放されてクイック交換装置12が開く。
【0070】
本発明の全実施例は、クイックカプラー16の中心縦軸に対して対称に形成されており、従って、例えば、横の、各側に上部カップリングブロック20aと下部カップリングブロック20bを保持するための機械的保持手段が備えられている。
別法として機械的保持手段が、種々に、もしくは、全てでクイック交換装置の前面に取り付けられることも可能である。
【0071】
図面に示された実施例は、国際公開第2005/093172 A1号パンフレットで開示されたクイック交換装置に従ったクイック交換システムを含む。
【0072】
本発明は、開き力に機械的保持手段によって反対に作用することが本発明により容易に可能であることによって特徴づけられる。
しかしながら、さらには付加的に力/圧力が機械的手段、例えば、ピンを作動および保持するために必要である。
油圧を解除することによって上部カップリングブロック20aと下部カップリングブロック20bは解放され、そして、クイック交換装置12を開くことができる。
【0073】
そのうえ、ピンが直線移動しかつその際に旋回軸を含む本質的に同一平面に配置されることによって、コンパクトな形成がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】クイックカプラーとアダプタとが備えられ、クイックカプラーは掘削機アームに、かつアダプタはスクリーンバケットに接続されている、クイック交換装置の透視図。
【図2】本発明の第1実施例の連結された状態のクイック交換装置の透視図。
【図3】図2の実施例を拡大視した部分断面図。
【図4】本発明の別の実施例の透視図。
【図5】図4を拡大視した部分断面図。
【図6】本発明の別の実施例の透視図。
【図7】図6の拡大された部分縦断面図。
【図8】本発明の別の実施例の透視図。
【図9】図8の拡大された透視図。
【符号の説明】
【0075】
10 ブーム
12 クイック交換装置
14 スクリーンバケット(機具)
16 クイックカプラー
18 アダプタ
20 油圧カップリング
20a 上部カップリングブロック
20b 下部カップリングブロック
22 リヤパネル
24 センタリングピン
26 クリーニングノズル
28 アダプタのベースプレート
30 ロッキングブロック
32 取付ラグ
34 旋回軸
36 締付け面
38 テーパー穴
40 ロッキングピン
40a テーパー端部
42 アバットメント面
44 スタッド
46 油圧接続部
48 アーム/ヨーク
50 ダンピング要素
52 テーパー受け
54 テンションロッド
54a ストッパシャンク
54b テーパー端部
56 押し子
58 ばね
60 作動ピン
62 ロッカー
62a 突起部
62b 爪
64 トラニオン
66 保持アーム
68 作動ピン(ロッキングピン)
70 スリーブ
72 作動ピンの前端部/くさび
74 ピストンロッド
76 油圧ピストン
78 サポーティングアーム
80 開口部(受け)
82 油圧パイプ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械側に取り付けられたクイックカプラー(16)と、該クイックカプラー(16)にロック可能にかつ機具(14)にも接続されたアダプタ(18)と、前記工作機械にある油圧系と該機具(14)の油圧装置間の油圧コネクションを確立させるための油圧カップリング(20)とを備えたクイック交換装置(12)であって、該油圧カップリング(20)が第1カップリング部材(20a)および第2カップリング部材(20b)から成りかつこれら両カップリング部材(20a、20b)が作動位置で相互に保持し合い、前記第1カップリング部材(20a)および前記第2カップリング部材(20b)が少なくとも、このクイック交換装置(12)のロック装置とは別に形成された機械的保持手段(68、78、80)と相互作用するクイック交換装置(12)において、
該カップリング部材(20a、20b)が作動位置で該機械的保持手段(68、78、80)によって摩擦結合により保持されていることを特徴とするクイック交換装置(12)。
【請求項2】
前記機械的保持手段(68、78、80)の少なくとも部材が交換位置から作動位置へ、および/または作動位置から交換位置へ駆動装置を介して動かすことができることを特徴とする請求項1記載のクイック交換装置(12)。
【請求項3】
前記機械的保持手段(68、78、80)を交換位置から作動位置へ、および/または作動位置から交換位置へ動かすための駆動装置が油圧駆動装置、空圧駆動装置、電気駆動装置、機械式駆動装置、および/または磁気駆動装置として形成されていることを特徴とする請求項2記載のクイック交換装置(12)。
【請求項4】
前記第1カップリング部材が前記クイックカプラー(16)に結合されたカップリングブロック(20a)として、かつ前記第2カップリング部材が前記アダプタ(18)に結合されたカップリングブロック(20b)として形成されており、その際、これらカップリングブロック(20a、20b)がそれぞれ油圧カップリング弁の相互に対応する部材の少なくとも一方を含んでいることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか記載のクイック交換装置(12)。
【請求項5】
前記交換位置から作動位置へ機械的保持手段(68、78、80)を移動させるための駆動装置および作動位置から交換位置へ機械的保持手段(68、78、80)を移動させるための駆動装置が他の駆動装置、殊にエネルギー蓄積装置、例えば、ばね(70)によって形成されていることを特徴とする請求項6記載のクイック交換装置(12)。
【請求項6】
前記交換位置から作動位置へ機械的保持手段(68、78、80)を移動させるための駆動装置が単動ピストンを備えた流体駆動装置、殊に油圧式駆動装置として形成されていることを特徴とする請求項5記載のクイック交換装置(12)。
【請求項7】
前記交換位置から作動位置へ、そして、作動位置から交換位置へ機械的保持手段(68、78、80)を移動させるための駆動装置が同じであり、かつ複動ピストンを備えた流体駆動装置、特に油圧式駆動装置として形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4までのいずれか記載のクイック交換装置(12)。
【請求項8】
前記機械的保持手段(68、78、80)が前記クイックカプラー(16)に結合された第1部材と前記アダプタ(18)に結合された第2部材とを含むことを特徴とする請求項1乃至請求項7までのいずれか記載のクイック交換装置(12)。
【請求項9】
前記第1部材がロッキングピン(68)として形成されかつ前記第2部材が該ロッキングピン(68)用の受け(80)として形成されており、
その際、作動位置におけるロッキングピン(68)が作動位置方向の力によって保持されることを特徴とする請求項1乃至請求項8までのいずれか記載のクイック交換装置(12)。
【請求項10】
前記力が交換位置から作動位置へ、および/またはその逆に前記機械的保持手段(68、78、80)を移動させるための駆動装置によって発生していることを特徴とする請求項9記載のクイック交換装置(12)。
【請求項11】
前記ロッキングピン(68)の前端部がくさび形に斜めになっておりかつ前記受け(80)がこれに相応して形成されていることを特徴とする請求項8又は請求項9記載のクイック交換装置(12)。
【請求項12】
前記ロッキングピン(68)が円筒形のピンとして形成されておりかつその前端部が円錐形に仕上げられていることを特徴とする請求項11記載のクイック交換装置(12)。
【請求項13】
前記ロッキングピン(68)が作動位置で前記受け(80)内に下向きに軸受隙間(S)を有していることを特徴とする請求項12記載のクイック交換装置(12)。
【請求項14】
前記ロッキングピン(80)の前端部と前記受け(80)のこれに対応する面とが180°までの円周角を介して互いに一致する錐面として有しかつ該円周角を360°に補完する該受けの円周部分面が該ロッキングピン(68)の前端部の対応する円周面をもってあらかじめ設定された軸受隙間(S)を含んでいることを特徴とする請求項13記載のクイック交換装置(12)。
【請求項15】
前記機械的保持手段(68、78、80)の一方の部材がロック爪(62b)を有するロッカー(62)として、かつ該機械的保持手段(68、78、80)のもう一方の部材がアバットメントとして形成されていてもよく、その場合、該爪と該アバットメントがくさび形に形成されていることを特徴とする請求項8記載のクイック交換装置(12)。
【請求項16】
前記交換位置からスイング位置へおよびその逆方向に前記機械的保持手段(68、78、80)の動きが直線運動であることを特徴とする請求項1乃至請求項15までのいずれか記載のクイック交換装置(12)。
【請求項17】
前記クイックカプラー(16)が旋回軸(34)を中心に旋回可能でありかつ、その運動直線が該旋回軸とともに作業面を形成する少なくとも1つのロッキングピン(40)を有していることを特徴とする請求項1乃至請求項16までのいずれか記載のクイック交換装置(12)。
【請求項18】
前記ロッキングピン(40)が旋回軸(34)に対して垂直に第1の直線に沿って可動であり、かつ、油圧カップリング(20)の連結運動が該第1の直線に対してほぼ垂直な第2の直線に沿って行われていることを特徴とする請求項17記載のクイック交換装置(12)。
【請求項19】
前記第2の直線が、前記旋回軸(34)に対して垂直に延びていることを特徴とする請求項18記載のクイック交換装置(12)。
【請求項20】
前記交換位置から作動位置への作動ピン(60)の動きが第3の直線に沿って行われていることを特徴とする請求項17乃至請求項19までのいずれか記載のクイック交換装置(12)。
【請求項21】
前記第3の直線が、前記作業面上を延び、前記第1および第2の直線に対して垂直であることを特徴とする請求項20記載のクイック交換装置(12)。
【請求項22】
前記第3の直線が、前記旋回軸(34)に対して平行に延びていることを特徴とする請求項21記載のクイック交換装置。
【請求項23】
前記交換位置からスイング位置へおよびその逆方向への機械的保持手段(68、78、80)の動きが直線運動であることを特徴とする請求項1の上位概念に記載のクイック交換装置(12)。
【請求項24】
前記作動位置における機械的保持手段(68、78、80)が摩擦結合、もしくは、嵌合結合により保持されていることを特徴とする請求項23記載のクイック交換装置(12)。
【請求項25】
請求項1乃至請求項21まで、特に請求項17乃至請求項21までを特徴とする請求項23又は請求項24記載のクイック交換装置(12)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−537711(P2009−537711A)
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−510357(P2009−510357)
【出願日】平成19年5月16日(2007.5.16)
【国際出願番号】PCT/EP2007/004414
【国際公開番号】WO2007/131800
【国際公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(508338603)レーンホフ ハートスタール ゲーエムベーハー アンド カンパニー カーゲー (1)
【Fターム(参考)】